○山崎恒君 緑風会を
代表いたしまして二三質疑を行います。
過ぐる九月十八日ポンド切下げが突如として発表せられたところ、我が国の対米為替レート三百六十円も、当然にこれに従いまして改訂せらるべきであるという
論議が
相当に熾烈に
なつたようであります。過日の本院におけるところの総理大臣の政策
方針によりまして、円レートの切下げは断じて行わないという旨の発表をせられたので、一応は納得をいたしたのでありまするが、我が国の現状から輸入が輸出の二倍にも達しておる、この際に、従来の貿易と異なりまして
自主的の貿易が活溌に再開せられようとする際、我が国の主要貿易のお得意先が主としてポンド地域であり、
政府の高唱するところの企業合理化によるところのコストの切下げには限度があり、すでに三百六十円レート設定の際にその合理化が強制せられたので、その余地がないのではないかと思われるのでありまするが、コストの切下げや貿易
條件の改善には一定の時間を要すると思われるのであります。その間に割安の外国製品に、そのいわゆる得意先の市場を侵蝕される虞れはないかどうかという点を、現状以上の企業の合理化を強制する場合に、失業者を現在より増大する虞れはないかどうか、又レート切下げの好機を逸しまして、却
つて我が国の経済安定を妨げる結果とならないかどうかというような諸点につきまして、総理の御所見をお伺いいたしたいと思うのであります。
次に食糧政策でありまするが、「いも」類の統制を撤廃するとか、或いはその統制方式を大幅に変更するとかいう問題が
論議され始めましてから、すでに二ケ月有余になります。その間、農林大臣その他の閣僚諸公の私見と思われるものが各方面からいろいろと流布されておりましたが、二十四年産「いも」類につきましても、二十五年度以降のものにつきましても、
政府としての決定的な態度は先般までは何ら表明されていなか
つたように思うのであります。この点は次年度の種「いも」の確保の上からも
政府の重大なる怠慢と申さねばなりません。今や「いも」類の統制撤廃の風説は、農村全体に対しまして極めて深刻なるところの
影響を與えております。これまでの
政府の一元的の買入制度によりまして、低価格ながらともかくも安心して「いも」類を作
つてお
つた農家は、来年からは作
つても売れない、或いは売れても価格は暴落するであろうというような不安に襲われまして、今後どうすればいいか全くその方途に迷
つておる現状であります。而もその結果、「いも」類に対するところの
生産意欲を失い、慌てて作付の転換を
考え、減産の
方法によ
つて損失を回避しようとしている現状であります。このことは、例えば目下進行中の本年産の種馬鈴薯の各農家の配給辞退に端的に現われておるのであります。この配給辞退の点については農林大臣も定めし御承知のことと存じております。併しながらこの
影響は單に「いも」類の減産ということに止まるのものでありません。「いも」類の作付と関連いたしまして、輪作関係にあるところの表類の作付は直接にその
影響を受け、又一般に主要食糧農産物全体に対するところの増産意欲を冷却せしめつつあることは明白であります。而して食糧増産の
努力について疑問を抱くに至
つたばかりではなく、
政府の一方的な都合によりまして、勝手にその統制を強めたり弱めたり、撤廃したりすることのできるところの供出制度はとは、一体如何なる意味を持
つておるものであろうか、供出制度そのものに対するところの不信と疑惑も又急速に深まりつつあるのであります。御承知のごとく本年産の米及び甘藷の供出
状況は、昨年に比べましても本年の計画
数字に比較いたしましても極めて惡いのであります。その原因といたしましては天候関係や作柄等が
考えられるにいたしましても、私は供出制度そのものに対するところの不信と熱意の喪失も又
相当に
影響しておるのではないかということを恐れるものであります。誠に寒心に堪えない事態と言う外はないのであります。これらの責任は当然
政府の負うべきものでありまして、
政府の反省を求めざるを得ないのであります。私は目下の農村におけるところの想像以上の混乱、或いは不安、疑惑を一掃するためには、正しい方向におきまして
政府の
方針が決定せられ、これが一日も早く天下に公表されることの必要を痛感するものであります。(
拍手)先ず本年産の甘藷に関しまして、森農林大臣は去る十月三十一日の
衆議院の本
会議におきまして、本年産の甘藷の統制撤廃は行わない、現状のままの買上制を実施する旨を
答弁せられ、又去る十一月十二
日本院におきましても、三好君の
質問に対しまして同様の
答弁をなされておりますので、我々は確認はいたしましたが、二十五年産のいわゆる次年度の「いも」類の
生産計画並びに処置につきまして如何なる
方法をとらんとするものであるか、又現に種馬鈴薯の価格の未決定の点や、二十四年産の甘藷の超過供出の数量或いは期間というような点について、農相の御所見をお伺いいたしたいと思うのであります。
最近の世論の動きを見ますると、食糧
事情の好転に伴いまして、とかく「いも」類を邪魔物扱いにするような傾向があるのでありまして、
政府も又これに同調いたしておるような観があるのは誠に遺憾であります。最近の食糧
事情の好転振りは、あの悲惨な終戰直後の状態を知る者にとりましては殆んど隔世の感がありますことは御同慶に堪えない次第でありますが、昨年から本年にかけまして、この食糧
事情の好転は果して何によ
つてもたらされたかということは、私は主として昨年産の米、本年産の麦の豊作と、一方輸入食糧の増加とによるものと
考えます。併しながら米麦等の作柄は毎年これを期待することはできないのであります。これに反しまして、外国食糧の輸入は、輸入資金、それがガリオア等の援助資金であれ、商業資金であれ、その資金の許す限度におきまして増加を期待することは、今後必ずしも困難ではありません。むしろ外国食糧に依存いたしまして、当面の食糧問題を彌縫し、又米価を低価格に抑えようとすることは最も安易な途であろうと思うのであります。そして、又伝えられるような一挙に「いも」類の統制を撤廃しようとすることは、好むと好まざるとに拘わらず結果におきまして、この途を選ぼうとするものでありまして、数日前の新聞紙の報ずるところによりますと、
政府は本年当初におきまして二百二十九万トンの輸入食糧を懇請して置きましたが、低米価政策の持続のために更に七十七万トン、計三百六万トン輸入を懇請するとの記事があ
つたのであります。問題はこの輸入食糧の依存によ
つて我が国の食糧問題を
解決しようとすることが、我が国の食糧政策として妥当なるものであろうかどうかということに発展して参るのであります。
政府は将来における我が国食糧政策の基本
方針を如何ように
考えておられるかということであります。現在主食の一般配給基準は二合七勺でありまして、輸入食糧を大体現状
通りと見まして、甘藷だけについて見ましても三十日前後を必要とするのであります。これに要する量は四億五千万貫になります。このほか工業用澱粉、アルコール、酒等に要する量も三億貫を超え、農家の自家保有のための所要量も七億貫に達します。これに加うるに一般消費者が二合七勺の配給量の不足を補充するために闇買いするところのものも無視することはできないのであります。これらの需要を賄うためには十五億貫程度の甘藷の現在
生産量は最低線といたしまして絶対に維持しなければならないと信ずるものであります。若しこれが現状に比し三割も減産されることになるといたしますると、食糧需給に及ぼすところの
影響は極めて重大となりまして、又それだけ輸入食糧の依存の度合が強化されることになるのであります。「いも」類の統制問題に関連いたしまして、我が国食糧政策の基本
方針が直ちに農業政策自体の方向を決定するものであることは言うまでもありません。私はドツジ・ラインの指向する我が国経済の自立化の基礎は、食糧自給の強化にありと
考えるのであります。(
拍手)従いまして、この
方針を貫徹するに必要なる農業助長策が強力に総合的に実施せられることを主張するものでありますが、総理大臣の説明せられました農業の基礎を確立するための適切なる各種の政策とは如何なるものであるか。いま少しく具体的なその施策と実行
方法をお示し願いたいと思うのであります。
次に私は「いも」類の急激なる統制撤廃によりまして農家経済の蒙むる打撃について申上げなければなりません。現状のままの
生産で、而も何らの経過的対策を講ずることなくして「いも」類の統制を撤廃した場合には、たとえ跛行的にせよ、そこに一種の
生産過剩恐慌の状態を現わし、価格の下落することは必至の
情勢にあります。然るに農家がこれまで無理をしてまで作
つて参りましたのは、
政府の強制的なる作付割当と供出制度に忠実に順応したことによるのでありまするが、若し誰かが「いも」類増産上の責任を負わねばならないとするならば、その責任は当然
政府にあると
考えられるのであります。その結果「いも」類は農業経営上極めて重要なる位置を占むるに至
つたのでありますが油に、その価格の下落することによる農家経営の打撃も又それだけ大きいものであります。伝えられるころによりますと、「いも」類の統制を撤廃しなければならないところの最大の
理由は、「いも」類の統制によりまして農林省の食糧管理特別会計が百億円余の赤字を出しておるということがその原因だと伝えられておりまするが、若しもさようなことがあるとしたならば、明らかに
政府の負うべき責任を農民に転嫁し、農民の一方的犠牲において
政府の配給操作の不手際等に基因するところの会計上の赤字を
解決しようとするものでありまして、本末を転倒した暴挙であると申す外はありません。(
拍手)農林大臣にその真相をお伺いいたしたいと思うのであります。
総理大臣は、「
国民の熱望するところは平和條約締結の一日も早からんことである」と述べられましたが、全く私も同感であります。而して比較的近いうちに平和條約が締結されるような機運が大分動いて来た今日、平和條約締結に対する国内
情勢の整備万遺憾なきを期する必要があると思うが、
政府は如何なる施策を実行し、又実行せんとするものであるか。これを農村に見まするに、農民解放令の指令に基きまして、農村の民主化と農業の近代化は漸くにその緒に着かんとしつつあるのでありますが、最近その傾向を強めて参りましたところの農産物価格の割安状態と課税の重圧等により農業経営は逐次惡化の傾向を辿り、農家経済は窮迫の度を加えつつあるのでありまして、農村の民主化と農業近代化も又誠に寒心に堪えないのでありますが、農家経済の維持安定、農業の将来に対する如何なる対策を講ぜられんとするものであるか。総理大臣に御所見をお伺いいたしたいのであります。
最後に薪炭関係でありますが、薪炭関係については、
政府は薪炭需給調整規則実施中に、薪炭の
政府以外への売渡を禁止し、又強力なるところの
生産割当と共に、
政府への供出を義務として置きながら、特別会計の無責任となる運営によりましてその資金を枯渇せしめ、遂に本年二月頃より一方的に買上げを停止し又は制限をいたしたのでありまして、而して四月以降は資金操作の改善と買上げの再開、或いは制限解除をするということを言明しながら、殆んど見るべき成果を上げなか
つたのであります。依然として極度の買上げ制限を継続し、遂に本年八月一日に買上げを停止したのであります。誠にその暴挙も甚だしいと言わねばなりません。而してこれによりまして、薪炭代金並びに買上げ輸送代行機関の手数料及び運賃の不拂等に基くところの、
生産者及び代行機関たる農業協同組合の受けたる物心両面の損害は誠に甚大なるものがあります。
政府は如何なる
方法によりましてこの官営
事業の不手際を償おうとするのであるか。而してかくのごとき状態から、支拂証票を発給し代金未拂のもの、受入調書を発給しながら代金未拂のもの、
生産者に対し立替拂をしておるところの農業協同組合に対する支拂、並びに代行手数料、輸送費等、合計約十八億五千万円余と、これが利子等に関しましては、急速なるところの精算をすべきだと思いますが、又その責任があると存じますが、その時期等について農相の御所見をお伺いいたしたいと思うのであります。
又
政府がかくのごとく一方的に買上げを停止し、加うるに
政府なるが故にその買上げ代金の支拂を怠
つているという点につきまして、法務総裁の法律的な御所見をお伺いいたしたいのであります。
以上を以ちまして私の
質問を終ります。(
拍手)
〔
国務大臣吉田茂君
登壇、
拍手〕