○
仲子隆君 民主党を代表いたしまして一部の
質問をさして頂きます。
総理大臣の過般の
施政演説に対して、他の多くの人々と共に不満を感ずることは同様であります。抽象的であり、
一般的なる
言葉でありまして、具体的なる
内容が示されておらない。これに対して昨日
首相は、その、
予算を見ろという御
答弁もありましたが、今日
予算の
内容を知る由もないけれども、大体この
状況を判断いたしますると、必ずしも
首相のここで宣言せられるような
事情があるとも
考えられない。(「その
通り」と呼ぶ者あり)殊に他の例をとりまして、この休会中
政府当局の多くの方々が、自分の個人の
意見であるか、或いは
政府の
方針であるか、随時適当なる放送をせられて、又
立所にこれが取消される。かの八月
朗報であるとか食糧に関する諸問題のごとき未だ決定せざることが勝手なる
方式を以て述べられるごときこと、今日の
総理大臣の御
答弁と同様、未だ
具体的内容を示さざるものについて抽象的なることを言われるのは、
国民を愚弄するものであると思うのであります。(
拍手)
先ず
外交問題について若干のお伺いをいたします。
外交の問題はまだ何とも分らないものであるということは誰にも想像つくが、
総理大臣は外電の報ずるところとしていわゆる
朗報を述べられたのであろう。併しその
朗報なるものの中には、或る一国の
考えであるか、或いは数ケ国の
考えであるか、或いは四ケ国、十一ケ国、或いは
連合諸国の
考えであるか、我々が
新聞で見る限りにおいては甚だ不明瞭なものである。これを最初に取上げて報告せられる。
演説せられるということについては、
総理大臣は相当に
自信内容を持
つての御発表であることと思うのであります。然るに昨日来次々来るところのその外電なるものの中には、我々が必ずしも簡單に了解することのできないことがある。若し今日まで現わされておる一国若しくは二国の場合においては、今日
複雜なる
国際情勢において、又極めて
危險と
考えられるべき
国際情勢において、
日本を取巻くところの
地理的條件は、ただ一国の
意思を受取る、或いは二国の
保護を受けるというようなことのみに限るものではないと思われるのであります。殊に若し或る一国が特に
單独講和をし、
我が国を
保護的なる
立場に置く場合においては、これは
保護国になるのであるか。
一つの国の
保護を受けるという場合において、その国と他の国とにおいて
一つの争いが起る場合には最も
危險なる
地理的情勢にあるものである。これらのことを
考えまして、私は
総理大臣のお
考えは、如何なる国々を
相手として
考えられて、この
朗報を我々に伝えられたのであるか。これがお伺いしたいのであります。
又、或る
地区を、これを
租借地として、ここに軍を派遣するというようなことが
考えられました場合において、残されたる他の
地区は
我が国の
国民の力によ
つて治安を保持しなければならない。
政府の
方針に
従つてこの
治安は守らなければならないのであります。然るに今日においてすら、相当十分なる
警察組織はあると言われておるに拘わらず、
実情としては
占領軍の
援助を得なければ
治安は十分に保たれない
現状にあります。まして
独立の国としてみずからこの
治安を守らねばならないという場合において、かかる場合に果して一国内の
治安さえ保たれるか。まして永世の中立的な
意味、
永久の平和の
立場にあることができるか。これは誠に私としては疑問に感ずるのであります。
次にこの戰争以来或いは
占領下におきまして、我々は非常に苦しい苦痛の
生活、小さな殻の隅に閉じ
籠つた生活をいたしております。このために
占領下においては
唯々諾々とその命に
従つて、まして若干、心の中に要求する、
希望する点がありましても述べないで、ただこれに
従つてお
つたのである。これは
戰時中における
翼賛政治組織と同じ姿にあつたように
考えるのでありまするが、今やこの
朗報を得て、やがて我々が一
独立国として立つということになれば、ここに
国民として、或いは
国家として、この
相手国に要求すべき点が多々あるものと思います。
希望をし、要求する点の諸点はすでに
政府においては
用意されてあるのであるか。ただ
單独講和をし、或いは数ケ国の
講和をする場合においては、向うの
命令に
従つてこれを鞠躬如として受ける
立場にあるのであるか。この点が我々は過般の
総理大臣の
演説においては明らかでないのであります。(「受ける
立場だ、しようがない」と呼ぶ者あり)この点を若し御
用意があるならば御
説明願いたいと思うのであります。
次に過般の
総理大臣の
演説においては、
我が国が
文化国としての位置を示さなければならない、今日までは
耐乏生活を褒められてかようなことができたのであるが、これからの
平和会議その他に参加して、
国民はその
民主国家的な
国民の
態度を示さなければならぬと言われるが、その
文化と言われるのは一体何を言われて指されておるのであるか。戰争中或いはそれ以前の
日本において、
世界の
国民に対する
日本の信用は甚だ少いのであります。平和時においても、とかく貿易上の不
信実、不良なる
生産というような点において
信頼を
失つてお
つたのであるが、
戰時中においては
日本人の不
信実、或いは詐略的な
態度、更に非人道的な
態度、場合によ
つては非人間であるというような感情を持
つて日本に向われた例が若干
考えられる。もとより今日、
世界の好意又は慈悲によ
つて、我々は相当の
恩惠と優遇とを受けていることは知
つているのでありますけれども、一例を以て申せば、過般のフイリツピンにおける
ユネスコ運動に
日本人は加わることを許さないという
主張が出たごとく、その他の
MPA会議、或いは或る一
地区の
新聞等の
内容において、今日尚、
日本人が
世界の人類としての
一員として待遇せらるるに、やや不安を感ずるがごとき傾向が感ぜられるのでありますが、これらに関して
総理大臣は如何にお
考えであるか、お示し願いたい。以上数
項目について、今日の
平和條約問題に関して
総理大臣のお説を伺いたいのであります。
次には
文教関係の問題で
文部大臣に主としてお伺いいたしたいのでありますが(「
文教は満点だ」と呼ぶ者あり)
文教の問題について過般
総理大臣は、
国際社会の
一員として恥かしからぬ
民主文化国家たることを実証せぬばならぬ、更に
文教の基本を確立し、
民主国家を担当するにふさわしい
国民を育成するということを述べられておるのであります。
文化国家たる
日本としては、先ず第一に
世界に誇るに足る
文化財というものが
我が国にあります。先人が苦心して古き昔から作り上げたこの
文化財、在るものはこれは
国宝とな
つておる、これが十分に
保護保存せられておるのであるかどうか。更に又これを
世界に示すために十分展示し、人に見せるというような
組織方法ができているのであるか、これらの点が
一つの問題であります。
次には
学問、
芸術に関する問題であ
つて、今日において
日本の
文化を進めるためには、
学問芸術一般について
政府は十分なる
努力をせられなければならない。
野口博士や
湯川博士のような
学者、その他の
芸術家の
苦心努力を、更にこれを育成しなければならないのは当然のことであります。その次に、
国民の
教育を進め、その
施設を充実して、
世界に立ち得るところの立派な
国民を育成しなければならぬ。この三つの問題について、これから若干具体的なる例を挙げてお伺いするのであります。先ず第一に
文化財についてでありますが、過般来、
国宝の問題について頻りに論議せられておる、
保存組織方法の過ちから法隆寺のあの
災害もあつた。併し現に
全国各地の
情勢を見ますと、
国宝として保つべきものが腐朽し、破損し、今日の
現状においてさえ甚だ憂慮すべきものがあるに拘わらず、尚このまま置くならば、近き将来においてすつかり腐朽し果ててしまうのではないかと思われる点があります。試みに重要なる例を挙げて見ましても、
外国人に見せるために多く利用せられているところの日光であるとか、姫路城であるとか、或いは京都、
大阪方面にある各
国宝のもの、
地方に隠れている
国宝のもの、かようなものが今日速かに手を入れなければ立ち所にこれは
永久に取返しの付かない
情勢になると
考えられるものがあります。然るにこれに関する
政府の
予算は今年一億五千万円
程度であるように
考えられる。こんな少額を以てして、この大
事業を、或いは
永久の
文化財なるものが
保護できるか、或いは
一般に見せるための
用意が整うかという問題であります。
次には
科学の
研究について、今年大体予想せられるところのものは四億四千万円であり、大学の
研究費には六億七千万円であるが、
合計十一億一千万円くらいなものを以て
日本の
科学を振興し、
芸術を進展せしめるということが果してできるのであるか、多くの
学者のグループが今日
アメリカに行き、
アメリカのいろいろな
設備資材の中において
研究したい
希望を頻りに発表せられるのは、
我が国が余りに現在貧弱であるからである。更にこれが二十四
年度の
予算において、今申したと同じ十一億一千万円が、今
年度出されるところの
予算において果してどれだけの進展でせらるるのであるか。これらについてお伺いしたいのであります。
次に
初等教育について特に力を入れるという
総理大臣の
説明であるが、本
年度の
予算は
義務教育費が二百二十二億である。二十五
年度においては僅かに十億の
追加と想像せられる。学童の
増加或いは
朝鮮人兒童の
引受け等から見て、この十億円
増加くらいを以て果して
初等教育の
施設が充実せられるという
意味になるであろうか。これは如何なるものでありますか。殊にこの新制六・三
制教育の
整備について
考えて見ますると、
教育使節団の指導によ
つて六・三制を採用いたしました二十二年二月二十四日の
吉田総理大臣を中心とする閣議において六・三制が採用せられましたときに、
文部省は当時の金を以てしても三百三十五億の必要を唱えており、
内務省は三百六十五億必要と
言つたのでありまするが、事実発足する場合においては、
文部省の五億、
内務省の三億という、ただの八億を以てこの大
組織な六・三制を始めたのであります。その当時、二十二年の秋において七億円の
追加要求が達成したのであるけれども、又二十三年において漸く五十億の
予算を得ることができた。然るに本年二十四年にな
つては、この
整備費というものはゼロとせられたのであります。この二十三
年度までの
補助金によ
つて漸く三分の一の
学校はこれを整えたのであるけれども、三分の一は
補助を切られて以来、すつかりこれをみずから賄うか或いは放棄しなければならない
状態になりました。漸く三分の一は
苦労を重ね、困難な
地方財政を更に困難にせしめてでき
上つたのであるが、
残りの三分の一は、今日でも
馬小屋教育、
青空教育というような、或いは民家を借り倉庫を借りながら誠に不正常なる
教育が施されているのであります。この
実情を今少し詳しく申上げて見ますると、二十三
年度における
地方財政の
混乱は、当初
予算において
道府県市町村の大体
平均が二五%であり、貧弱なる町村においては三五%を
学校建築費に充てている。更に特に
学校建築を施さなければならない村においては五〇%を
建築費にかけている。併しかくのごとき
苦労をして設備し得るものはいいのでありますが、これのできないものは多くこれを
寄附に仰いでいる。
一戸当り平均一万円以上の過重なる
寄附を以てこの
整備に当
つており、或るものは遂にその村の
財政の
基礎であるところの林野一切を売
拂つて漸くこれをや
つたのであるけれども、遂にこのできないものが
地方自治の
混乱、
財政の
混乱を招きまして、
村長で辞職した人が百七十七人、これは六・三
制予算によ
つて辞職した者であるが、其の他或いは
病気とか家庭の都合という
言葉を以てやめました
村長のことを
考えると、
合計約三百人を超するのであります。最も気の毒な者は彼の香川県三豊郡和田村の
村長藤井梅吉氏とか岡山県阿哲郡
石蟹郷村長の
村下泰通氏、山梨県中巨摩郡
睦沢村長飯沼國行氏のごときは遂に其の責任を負うて自殺しておられるのであります。かかる困難なる
地方財政事情は、先に
総理大臣の言われる
初等教育を
整備完遂するということによ
つて国民教育を施すと言われるのであるが、これは果して今年の
予算が削られ、又二十五
年度においてどれ程の御
用意があるのであるか。これが承わりたいのであります。更にこれらに対する
陳情というもの、
請願というものを集めて見ますると、本月十一日までに参議院が受取
つておるところの
請願は二百九万八千六百五十五通であります。
電報、葉書その他を加えて見ると、すでに三百五十万以上の
請願、
陳情が出ておる。
政治が
国民の要望によ
つて行われるものであるならば、この三、四百万というものは
国民の一部の
代表者の調印によ
つてできた書類であるならば、
全国隅から隅までの者がこの
学校整備に対して非常なる熱願を持
つていることを御了解の上に、
十分文部大臣の御
説明を求むる次第であります。
次にこの問題は
地方財政法に対してどういう形にな
つておるものであるか。同法の第三十四條においては
義務教育年限延長に伴う
施設の
建設費は国と
地方が
負担するとな
つており、第三十三條では、
義務教育年限の
延長に伴う
施設の
建設費は
起債を認めるということにな
つておる。然るに五十億が二十三年に出され、
起債が許されてお
つたのであるが、本年は
補助も
起債も如何なることになるか分らない
事情にあります。これらに対してこの
財政法は
政府は存在を認めておるのか。更にこれに対して何らかの手を打つのであるか。すでに時期が経過してこの
延長に対する
補助若しくは
起債は認められないのであるか。これらについて御
答弁が願いたいのであります。又
学校財政法というものが
考えられなければ、そのときの
情勢によ
つて混乱せられるが、
財政法を設ける
意思があるかどうか。
教育委員会等の
制度が設けられておるのであるが、その
主張希望が
考えられておらない。殊に
地方の
教育委員会なるものは今日
財政権を持たないために、ただ計画し、
主張し、実行においては他の
制肘を受ける以外に
方法がない
状態にあります。これについて御
意見が承わりたいのであります。昨夜
新聞において
政府は
教員の整理を行わないということを発表せられておる。
政府が発表したのか、
新聞記者が書いたのか、これは存じませんが、さようなことを見て若しこれが事実であるならば非常に喜ばしい次第であります。今日の
教員の
定員定額というものが行われて、本年六月二十八日に各府県に宛てこの
定員定額が指示された。これは本年の五月七日に
義務教育費国庫負担法施行令というものが制定せられ、四月一日に遡
つて行われるというのである。一県の兒童数を五十で割り、その数を
学級数とするという
方針である。然るに
日本の地理的、
地勢的情勢は、
山間部落の小さな村においては、一
学校においての
生徒数は僅かであり、一
学級としては誠に少数である。こういう場合において果してこの
定員定額制が妥当であるかどうか。
教育の
実情を知らずして機械的に行われたものであると思います。若しこれが廃止或いは変更せられるということであるならば、誠に
国家教育のために喜ぶべきことであります。尚、時間の
関係上端折りまして申上げますが、
私立学校に関して如何なる
財政的援助が
考えられておるか。本年
私立学校の
貸付金は二億七千万円
程度であると伺
つております。
国家の重要な
教育を
負担し、公共的な大きな仕事をしておるものに対してこの取扱は非常に貧弱なものであり、尚又
私立学校法案なるものが
考えられる、この場合においては、その
自主性、
財政的基礎に対して、監督し或いは圧迫する風が
考えられるのである。これに対して如何なる
方式をとられるのであるか。
文部大臣の御
説明を願います。
総理大臣は、今年は
災害復旧に対して十分なる力を入れると言われる。二十四
年度の当初
予算において、
過年度災害費は、当初
予算ではありませんが、当初において
過年度の
災害費は七百四十億でありました。そのうち拂われて
明年度に承け継がれるところのものが、二十三
年度以前の
災害費を承け継がれるものが五百七十一億であり、二十四
年度の台風その他の被害が六百八十五億であ
つて、これにすでに六十億が出されておる。
残りのものが六百二十五億である。
従つて二十五
年度に繰り越されるところの
災害費の
合計は千百九十六億に
当ります。これに
事業費を加えるならば大方三千五百億円に及ぶものと見られるのであります。
明年度においても更に
災害がないとは限らない。これらに対して
建設大臣は如何なる
方策、施策が
考えられておるか。更に又
戰災復興の
都市において、今年は百十六
都市から八十五
都市に減少され、
補助金は減らされたのでありますが、今日まですでにこの
復興の
事業を進展しておるその途中において、こういうことにせられたために、非常に困るものがある。殊に又この
補助が減らされた部分については、
復興の
費用の二〇%で……二〇%が
地方の
負担であ
つたのを今回は五〇%
地方負担とな
つておる。一方において
起債は許されないということにな
つておる。
シヤウプ案によ
つて、税制から見て、
地方財政の
基礎は
住民税或いは
地租、
家屋から取るというのであるが、
災害を受けた燒野原のバラツクにおいては、
住民税の
負担においても、
家屋税の
負担においても、
地租の
負担においても、到底
地方の
財政を賜うわけに行かない。これによ
つてこの
災害を復旧することはできない。これらの
状況に対して
建設大臣は如何なる
考えがあるか。住宅は三百五十万戸
不足のうち、来
年度十二万戸、以後五ケ年間に六十万戸建てられる。尚
不足の後の三百万は如何なる
方式で
考えられるか。多数の者は家をなくして今日も困
つておるのであります。
次に
恩給についてでございます。
公務員法第百八條によ
つて、
恩給はその
生活を維持するに必要なる所得を與えられることにな
つております。現在
国庫の
恩給を受けておる者の
平均一ケ月は七百四十四円四十七銭で、一日割り二十四円八十二銭であります。これが適当なりや否やについて、
生活保護法の算盤から見れば、
月当り一人一千四百七十円、一日四十九円、夫婦二人あるような場合には二千三百二十五円、一日七十七円、
恩給によ
つて老後を
生活しておる者の
費用は一日
当り二十四円八十二銭であり、
保護法による者は今申しました四十円又は七十円という
程度であり、ここに非常な差額のあることが
考えられる。更に又六千三百円ペースによ
つて受けられる人の
恩給と二十一年以前の
恩給によ
つて受ける者との間においては、四分の一の、つまり新らしい
制度の人が受けるものと古いものと比較して見ますと、四倍の差がある。これらの不公平に対して如何なる是正の
方針があるか。
もう
一つ附け加えさして頂きます。第五国会において
衆参両院において
戰争犠牲者の遣
家族を
保護するという
決議案が出たのでありますが、この二千八百三十四万人という
犠牲者の遣
家族は今日
総理大臣の言われるような経済が安定したという際において、ますます苦しい
生活をしておるのである。これに対して各種の
項目、年金、
弔慰金、
育英資金、
職場授與、
課税軽減、
農地返還、
生産資金の貸
與等を挙げて、過般
両院は
決議をいたして
政府に要求したのであるが、これに対して何らの
方策が示されておらないのであります。これについて御親切なる御
答弁を頂きまして、私の
質問を終ります。(
拍手)
〔
国務大臣吉田茂君
登壇〕