○内村清次君 私は公務員給與ベースの改訂及び定員法の問題につきまして、関係各大臣に緊急の
質問をいたしたいと思うのであります。
現下の経済情勢は、生産も漸く戰前の七十%に達しまして、インフレも安定の方向に向いつつありまするが、併しながらこの好転した情勢の裏面におきましては、労働者を初め公務員に至る勤働階級に取りまして、多大の犠牲と負担が課せられておることは見逃すことのできない事実であります。一つには大量に上る人員整理による生活不安があり、更に一つには公務員並びに労働者全般の低い賃金水準でありまして、この二つの問題は重大なる社会不安の根源をなしておることは申すまでもありません。公務員が
国家のために日夜労働するためには、当然労働力の再生産を保証すべき給與を必要とすることは、憲法及び
国家公務員法によ
つて確然と認められておることでありまして、万人の認むるところの基本的な人権でございます。然るに現状においては如何でございましようか。
只今公務員の平均賃金ベースは家族單位二、七人で六千三百七円でございまするが、これは昨年七月のCPSを基準といたしまして算出いたして十二月から実施せられたものであります。それ以來公定物価の数度の値上りによりまして、CPSは本年七月において三〇・七%上昇しておるのであります。更に民間給與におきましては、全工業五一・四%、地方私鉄におきましては四五・七%の上昇を示しておるのであります。特に国鉄におきましては、上半期におきまして九万五千と言われる大量の人員整理と、列車ダイヤの
改正によるサービスの向上のために、労働強化も激しく、民間の工業賃金ベースの八千四百円台に比較いたしますると、その不遇な地位にあることは歴然といたしておるのでございます。
從つてこのたび国鉄労働組合では、先の平均賃金ベースと同じ算定
方式によりまして、即ちCPSのその後の値上りによりまして算出いたしました九千七百円ベースの改訂を
政府に要求いたしたのであります。これに対しまして、
政府は一方的に拒否いたしておるのであります。労働組合は調停の申請をなしまして、調停
委員会はこれを受理しまして、十月の五日と六日に公聽会を開いて、公平なる第三者の
意見を聽取いたしたのであります。この公聽会におきましては、圧倒的に要求
支持の声が強くありまして、特に民自党代表でさえもその当然なることを肯定しておることは注目すべきことであると思います。この公平なる輿論に基きまして、国鉄中央調停
委員会におきましては、各種の資料及びその他の問題を検討いたしました結果、八千五十八円のベースを算出いたしたのでありまするが、この算定
方式は
国民生活の水準、即ちCPSから算出いたしたものではありませずに、それをも参照といたしまして、主として地方私鉄の給與ベース九千七百三十四円に対して、国鉄の場合には幾らになるかという修正係数を乘じまして、それより低めの八千五十八円なるベースを算出いたしたのであります。この算定
方式に対しましては、国鉄労働組合といたしましては、かずかずの不満はありましたが、この場合、調停
委員会の権威を尊重するという建設的な建前からいたしまして、このベースに同調し、承認したことは、御承知の
通りであります。然るに
政府は、この調停案に対してすらも一方的に拒否いたしております。この点につきましては、
政府は
法律的にも道義的にも重大なる背信行為を犯しておると言わざるを得ないのであります。即ち先般の
国家公務員法改正の場合に、
政府は公務員の罷業権を禁止しております。団体交渉権をも制限いたしております。これらの基本的な人権を制限した代りに、
政府は公務員の生活を
政府の責任において、当然保証すべきであり、当時の
マツカーサー元帥の
声明にも明らかでありまして、又
国家公務員法の第二十八條給與の改訂勧告の項につきましても明文化されておるのであります。第三回
国会のときに、
政府は無謀にも
国家公務員法の制定にのみ急でありまして、裏付けとなるところの公務員の生活権擁護の給與の制定を等閑に付せんとする際に、本院の皆さん方が率先して、決議を以て給與予算の速かなる
国会提出を要求せられました。その一事によ
つても明らかであります。この
政府の動かし難いところの
義務を保証するために、人事院に給與ベース改訂の勧告権が與えられてあります。人事院は八月頃、明暸に上昇するところのCPSの動きを無視することができずに、その
義務履行のために、改訂の原案を作成をして、そうしてこれを発表しようとしたのでありますが、然るに
政府は、不法にも当時の人事院の動きを闇の中に抑圧し去
つております。更に又このたびは、調停案すら拒否する暴挙に出ております。かかる法も道義をも無視した
政府の背信行為に対しまして、我々は断じて默視することはできないのであります。私は次の諸点につきまして、
政府の責任ある
態度を要求したいのであります。
第一に、
政府は、
政府が拒否したところの
態度は、
国家公務員に対する
政府の
義務不履行である、
国家公務員法第二十八條違反の違法行為であると思われるが、
政府のこれに対する所信を
吉田総理にお伺いしたいのであります。尚、人事院総裁の
説明も併せて聞きたか
つたのでありますが、今日は病気でありますが、人事官の方から責任ある
答弁をお願いしたいのであります。更に又、かかる明白なるCPSの値上りに対しまして、人事院として何らかの勧告をなすべき
義務があると思われまするが、この点について総裁の所信を伺いたいのであります。
第二には、
政府が拒否した理由といたしまして、財源の不足が述べられております。
政府が常に正当なる賃金要求につきましては、常に財源ということでごまかそうとする観が強いのであります。若し調停案
通り、本年十月以降より八千五十八円に給與ベースを引上げるといたしましたならば、全官公吏としてはどのくらいの財源が必要であるか、尚、国鉄ばかりでどのくらいの財源が必要であるか。その数字の根拠を大蔵大臣、運輸大臣にお聞きしたいのであります。第三には、
政府は、今後補正予算内に、この給與ベースの改訂について、何らかの予算的措置をしておられるかどうか。この点についても伺いたいのであります。
第四に、
政府は拒否の理由として、国鉄の独立採算制の枠があるからと申されておるようであります。現在の国鉄公社におけるところの採算
條件は、調停
委員会でも認められましたように、それは國鉄としての責任ではなく、公益性という国鉄の重要な特性から生れる
国家的な責任であります。この公益性という点からいたしまして、
政府は鉄道職員の給與ベースについては当然
国家的責任を取るべきであります。この点、その責任者であるところの運輸大臣の御
答弁を要求いたします。
生五に、労働大臣は、物価は最近落着いたから、賃金ベースの改訂は必要なしと言われておりまするが、最近の
政府資料よりいたしますると、今後の公債値下りが生活費にはね返るのが六・五%以上もあります。シヤウプ案の税の軽減による三・二五%の軽減率程度では、到底生計費の上昇をカバーすることはできないという計算にな
つております。私共の観測いたしますところによりますと、その事実というものは、まだまだ上昇するものであると思
つております。即ち資産再評価による値上りなどを考慮いたしますると、更に実効価格は上昇するものと思われます。この場合、労働大臣は賃金対策をどう考えておられるか。この点をお聞きしたいのであります。更に労働大臣は最低賃金制を確立する、又それを目下
研究中であると
言つておられますが、如何なる具体的な方法で、如何なる基準に基いてこれを打ち立てようとしておられるか。この点もお聞きしたいのであります。
最後に、現在国鉄賃金ベースの改訂は、仲裁
委員会において仲裁決定することにな
つておるのであります。公共企業体労働組合法によりますると、この仲裁
委員会は総理大臣の任命にかかる重要な機関であります。この
政府みずから任命したところのこの仲裁
委員会において今後出された裁定に対しましては、
政府は如何なる
態度と責任を以て臨むのであるか。この点特に重大でありますから、私は今日
吉田総理の
出席を求めたのでありまするが、昨日まで、その今朝の新聞にも載
つておりますように、新バツジを付けて朗らかな顏でおられた総理が今日おられないことは、実に残念であります。是非ともこの点については、最近のこの本会議が言明して頂きたいと思います。
次に、
行政整理後の結果につきまして
政府の
態度に幾多の疑義が生じておりまするが、この点につきまして
質問いたしたいと存じます。
行政整理の結果につきまして、目下人員整理せられた各職場や又
行政機関におきましては、各種の運行の不円滑と業務の澁滯が生じております。整理されまして残
つた公務員は、加重せられまして二倍三倍の労働強化を強いられておりまして、又それ以上激しい所におきましては、もう上からの命令では人員整理は到底仕事の分野からできないというような実情を調査して、不合理な点を
改正する意思があるかどうか。この点をお聞きしたい。
更に又、定員法による
行政整理が終了いたしました後にも、本多
国務大臣は今後更に馘首を行うと明言されております。
吉田総理は自治体の
行政整理を強行するように指示を與えておられます。このような社会不安を釀成するような言葉は、働いておる労働者に取
つて誠に不安定な印象を與えるものであります。誠に遺憾なことであります。一体今後更に整理されるといたしましたならば、如何なら根拠の下に整理されようとするのであるか。この点、整理の根拠を明確に示して頂きたい。この点は
吉田総理と本多国務相にお尋ねいたします。定員法はその
附則におきまして、十月一日を限り整理を終了することを定められてあります。それ以後において生ずるところの整理につきましては、この定員法によ
つて行われるものではないと解釈を我々はいたします。
政府の見解はどうであるか。この点を一つ明確にして頂きたい。この度の
行政整理によりまして、失業者は誠に国政の犠牲とな
つておりまして、且つ又最近更に激しくな
つて参りました民間企業の首切り合理化におきましても、これ又当人の責任ではなく、全く
政府のデフレ的恐慌
政策の犠牲であります。これが生活の保証は全く
国家の責任であります。然るに今回
政府が発表いたしました失業対策は残念ながら誠に杜撰極まるものでありまして、今年度におきまして十二月までに八億円、一月より十三億円、計二十一億円を支出する予定であると労働大臣は言明されておりまするが、これだけでは先に
政府の発表いたしました見込数の四百万の失業者にこれを適用いたしますると、一人当り僅かに月四十四円という極めて僅かなものにな
つてしまいます。尚、労働大臣は來年度におきまして公共事業費の一千二十億円は支出できるということを明言しておられます。これは單に人気取りの公約に過ぎないものと一般では見ておりまするが、併し苟くも一国の労働大臣がかく明言しました場合には、この公約は切実な生活苦に陥れられておりますところの数百万の失業者に取りましては、まさに生命にかかわる重大問題でありまするが故に、労働大臣の政治的生命は、かか
つてこの公然たる公約の履行にあると私は信じます。若し來年度予算においてこの公約が果されない場合においては、労働大臣は如何なる責任をお取りになるか。この点明確に御
答弁をお願いしますと同時に、労働対策の御
答弁をお願いいたしまして、私の
質問に代える次第でございます。(
拍手)
〔
国務大臣大屋晋三君、
登壇拍手〕