○
大野幸一君 私は
日本社会党といたしまして、
只今の
動議に、即ち四人に対する
懲罰動議に対して
反対の意思を表明いたします。
中西功君に対して
除名の
極刑動議が提出されましたが、私はこの
動議提出も亦非常に遺憾なことであると思います。これは
議場を騒がせたあの
騒擾事件の
責任を問われると共に、場合によ
つてはこの
除名こそ又非常に遺憾であ
つて、むしろ
反省すべきものではないかとさえ考えるのであります。何故かと申しますと、一体
我我が
仲間を死刑に処する、こういう結果であります。民主主義的な
投票によ
つて国民の支持を受けて議席にある
お互いであります。その何万票か、何十万票かの
投票の効果を失わしめることである。それが我々
仲間によ
つて失わせることであります。成る程
除名の
制度はありまするが、これは容易に行使すべき事柄ではありません。私は
参議院が本
会議においてこの
除名は否決されることを希うものでありまするが、
委員会においてもこの
動議が提出されたることは遺憾に堪えないと思うのであります。我々はこれから仲良くして
円滿に
議事を
進行して行かなければならないのです。これが
参議院の
権威を保つゆえんのものでありまして、決して
共産党の
中西君一人を
除名して、
我我の
参議院の
権威は高まらないのであります。これはそうではありませんでしようが、見ようによ
つては
中西君を
除名にするのではない、
共産党を追い出すのだというような、こういうふうに考えられないわけでもありません。(「絶対にそういうことはない」と呼ぶ者あり)本
会議において、
提案者草葉隆圓君は
共産党、
社会党、以上の
諸君がこれらの暴挙をなさいましたことに対しては、こういう
発言をされましたときに、我が
社会党の中村君から、その取消を求められて、あつさりこれを取消されておるのであります。併し私はこの
委員会において考えましたことは、
板野君の
懲罰、これこそ我々の考から以てすれば、
壇上に
上つた三十二名の
議員と大同小異である、若し
板野君にして
懲罰に付せられるものならば、何故に
民主自由党や
緑風会の
人々は、あれと同じ
程度にあ
つた人に対する
懲罰動機に対して賛成せられなか
つたかと考えます。どこに区別がありましたでしようか、ここを考えると、
板野君が
懲罰に付されたのではなくて、
板野君がたまたま
共産党に席があ
つたということの以外に何物もないように考えられる。そこで私は
政治的考慮も拂いまして、そうして
板野君に対しては
懲罰に付せぬ、こういう
結論が欲しか
つたのであります、仮に私が
板野君と同様にいわゆる
壇上、嚴格な
意味においての
壇上でなくても、いわゆる
壇上に立
つた人々が
民自党に何人
おいでになりましよう。九名
おいでになります。
写真に現われた、川村、
遠山、北村、淺岡、堀、城、
加藤、池田、小林、各
議員達、この人達は立派な人であります。立派な人でありまするけれども、その
議場の雰囲気に捲き込まれて
おいでになるようであります。
緑風会でも
松井、岡元、矢野、岡本、この四名のお方、日頃崇拜する
人々もあの
壇上に
おいでになるではありませんか。
壇上に
上つたというだけでは到底
懲罰に値することは他の権衡上許されないと私は考うるのであります。
只今読上げましたのは、
民自党或いは
緑風会、それはあなた方が
除名の
動議を出されてから、あなた方の党にもこういう人があ
つたということを私は申上げておるに過ぎません。総計合せれば三十三名の人が同じ
壇上に現われておるのであります。私達はこれから仲よくしようというその日から、その日というのは、今
日本会議にかかるその日から、どうか一人の同志も失わずして仲よくしなければならない、こういう
基本的観念から、
中西君に対する
除名には絶対
反対であります。大きく国際的にこれを考えて例をとりまするならば、私は
日本は平和にこれから向う、世界が平和に向うその終点こそ、或いは
東京裁判の結果であ
つたのではないかと思いまするが、あの
裁判において
マツカーサー元帥の一番不愉快な日を推察して見るならば、東條以下のあの
戰犯被告に対して、
死一等を減ずることができなか
つた悲しさであ
つたろうと思うのであります。
死一等を減ずる、即ち
民主党の
議員から言われましたように、たとえ
懲罰の
事犯であ
つても、
同僚の
情けを以て
死一等を減じて、その以外の
最高刑を科するという、この
情けこそ私は必要じやないかと考えるのであります。この
情けある人のみが本当にこれから
参議院を平和に導く資格のある人ではないかと私はそう考えるのであります。
従つて中西君の
除名には
反対であります。他の
カニエ及び
金子君についての
皆さんの御
討論の中に、やや事実が違
つておる点があるのであります。
カニエ君に対して、
緑風会の
松井君から、
議長を阻止した結果とな
つた、
議長の前に立ち
塞つたのでなくて倒れたということは、あれは結果論から見てそうであ
つたけれども、
カニエ君が
故意に倒れたのではない、こういうことの私は
討論をされたことに対して敬意を表しますが、これは
委員長も報告の中に、多数
委員の
意見も一致することでありましようから、
カニエ君の名誉のためにこれは報告して貰いたい。こう思いのであります。さて、
カニエ君が、若し不意な出来事から
自分の意思でなくて倒れたとするなれば、それは
カニエ君の言う
通り、
カニエ君の陳弁努むる
通り、これはむしろ
自分が被害者であ
つた。こういうことであるのであります。我々が人の迷惑を見て同情すべきことではあるけれども、それを
懲罰にするというか、咎めることはできません。ここに
カニエ君を調べまして、得たる資料の中から、廣元衞視班長の
証言を以てすれば、私は
議長の南左側にいた。そのときは大分揉み合
つておる最中で、暫くすると、
カニエ議員が
議長の右側の方から左側にかけてよろよろと倒れました。私は倒れたから危險だと思い、直ちに助け起そうとしたが、最初は人に揉まれて失敗して、二度目に助け起そうとしたときに、助けて呉れというようなことを
カニエ議員が
言つており、一生懸命助け起した。
カニエ議員が助けて呉れと言うのは本当に聞いた。これは私と
遠山委員の質問に対して、こういう答弁をしております。岡田
委員の質問に対して、その倒れ方は、人混みの電車の中で急に電車が停り、足が固定されていて、身体の中心が保たれなくな
つたような形で倒れたというような感じであ
つた。又
議長は、足下にまつわるような気がした。股なんかにちよつとしがみ付いたようなことはあるが、始終押えていたわけではない。その人が倒れたとき、どちらから来てどうだということは全く分らない。ただいきなり足下にぱつと人が来ただけだと、こういうことになりまして、全
委員がこれこそ一致いたしておることであ
つて、少くとも
カニエ議員が
故意に倒れたのではない。空間の明いたところ、人間が揉み合
つておる間に空間があいて、その空間のあいた
理由によ
つて倒れたということであ
つて、最初
草葉議員の提案の
理由にあるような、
故意に飛込んで
議長の足を掴えた、こういうようなことがないんです。若しそれがなか
つたならば、又他の
壇上に
上つた大方の
議員達とどんな大同小異のことがあるでしようか。ここで又いや
カニエ君に対しては、
運営委員会において、
加藤君とのいわゆる毆り合があ
つたと言いまするが、若し当時の状況で、誰でも
議院運営委員会だけのことであ
つたら、これは一週間かせいぜい十日の問題であろうとは異口同音に全
議員が話し合
つていたことであります。あの
議院運営委員会におけるものは、
民主党議員の言を以てすれば、エキサイトされたる雰囲気であ
つたことは、私が日頃敬愛して止まないところの西田天香先生ですら、あの日には北側の窓の枠まで
上つて、土足で
上つて、あれを見物されてお
つた、私はその姿を見て、あの西田天香先生ですら上られるから、
自分もちよつと
上つて見たいと、こういうように考えたのでありますが、当時の情勢からい
つて非常に皆が興奮していたのでありまして、これは
カニエ君の三十日の
除名処分に付するまでには非常に私はまだ程遠いいものではないかと、こう考えるのであります。
金子君の弁解に至りましても、
金子君は劇作家であ
つて……
自分の言いたいことはこうである、劇作家であ
つて、何とい
つても副
議長が
上つたということは、これは
政治的陰謀である。こう考えたのであります。この点についてはいろいろ議論もありましようけれども、あのときに若し
民自党ではなくて、野党の副
議長だ
つたら上らなか
つた、こういうようなことまで彼は考えたのでしよう。そうして説得するために行
つたので、平素の
金子君の性格からして、決して暴力を振うのが主でなか
つた、説き伏せるために人間は肩に手をかけ、手を引くという
金子君の弁解は、これは全
議員が彼の人となりから了解して呉れるだろうと思うのであります。
かようにいたしまして、本
委員会の自由党から出されました
動議は、その当を得ないものであると断言いたします。当時の空気から言いまして、ここに参考資料二通までを私は
皆さんに御紹介したいと思いますのですが、
民自党と
緑風会と
社会党一名が加わる宗教家
議員団の名において声明書が発表されております。
第五
国会の終末における
参議院の紛糾は真に遺憾に堪えない。
本件は院全体の
責任として深く
反省自粛し、今後超党派的和衷情神を以て本院の円満なる運営を期し、も
つて国民の信頼に応えたい。
宗教家
議員団
岩本 月洲
西田 天香
堀越 儀郎
小野 光洋
柏木 庫治
梅原 眞隆
來馬 琢道
草葉 隆圓
山下 義信
左藤 義詮
提案者の
草葉隆圓先生もここに署名されております。僧侶から成るところのこの十名の
議員は、すでに当時こういうような院全体の
責任として深く
反省自粛しようではないか、和衷情神というこそ、これは
除名を
意味しているものではないのでありまして、又人を責める意思が現われていないのであります。
由来婦人は何と
言つても冷静であります。三十三名中婦人
議員は一人もまだ暴力を振
つた人はありません。又
壇上に登
つた人もありません。併しその人こそむしろ寛大であります。
只今委員長から拜見したのですが、懇願書が
懲罰委員会委員長太田敏兄殿宛として提出されております。
懇請書
この度の
参議院での紛糾は、私達婦人
議員としても深く
反省自粛を痛感致します。不敏にして
懲罰委員会附託の
議員を出したことはまことに遺憾のかぎりでありますが、すべての者が将来かかる不祥事を絶対に繰り返さず、本院の
権威と品位の保持を堅く心にちか
つておりますのでこの度は
愼重に御勘考のうえ何卒御寛大なる御処置をたまわりたく右心から懇請申し上げます。
昭和二十四年五月三十一日
参議院婦人
議員
木内キヤウ
深川タマヱ
赤松 常子
河崎 ナツ
こういう四名の婦人
委員から成る懇願書も我々の
委員長に提出されております。以上のように次第でございますから、
日本社会党として不幸にして二名の
懲罰に付せられたる
同僚を出したことは遺憾でありまして、この点については遺憾の意を表しますが、今提出せられた
動議に対しては
反対をいたさざるを得ない次第であります。