○国務
大臣(
池田勇人君)
納税者に御迷惑を掛けた場合即ち過誤とかいろいろな問題については利子をつけてお返しするという制度を設けておりますが、行政上の問題でありますと法規でやることはなかなか困難であります。先般国税庁長官がどんな通牒を出しましたか、私見ておりません。実はこういうことがあ
つたのであります。或る我々の同僚の代議士の方でございますが、自分は納めたに拘わらず、ある人、甲という税務署員が
滯納処分に来た。自分は領收書を見せた。そうして四、五日して乙という税務署員が来て同じようなことを言
つたので、領收書を見せたら帰りました。今度は又丙という税務署員が来てまた
滯納処分をしようとした。見せたら帰つた、四回目に丁という税務署員が来まして、有無を言わせずに差押えをしてしまつた。非常に叱られまして、政務次官のところへ来られた。私丁度不在でしてお会いいたしません。私早速それを、東京都内のことでございますから、国税庁長官を通じてその四人の職員の名前と行動を書いて欲しいと言つた。でこれは調戒譴責ではいけない。情勢によつたら職を退かす、少くとも減俸しなければいかん、こういう嚴命を出したのであります。然るところ不平を訴えに来られました方が、二十三
年度分は納めたけれども、二十四
年度分に
滯納があつた、まあこの方をそうひどいことはしないようにということでありました。併し何れにしても減俸というのではないが、そういう場合は調戒されなければならない。少くとも甲というのは内部調査をしてその実績を帳簿で除いておかなければならない。そうすると乙とか丙とかいうものは行かない。また
行つた場合には、領收書を見てこれでいいんだというのでなしに、自分の持
つて行つたのは何
年度の
滯納であるかということを領收書をつき合わせて見なければならん。そういうようなだらしのないことをや
つておるから税務署員を幾ら殖やした
つて意味をなさないということを国税庁長官にきつく言
つたのであります。外の財務局にも、私旅行いたしましてその話をいたして訓戒いたしました際、自分のところにもこういうような例があるわけですから、この
委員会で、
予算委員会で問題になりましたが、
滯納が七百四十億円もある、而してその件数は何万件である。実は帳簿の
整理も何にもできていないのでございます。こんなことではいかんというので、七月以来私は嚴命を下しました、とにかく早く
整理しなければならんのであります。臨時の雇員を傭いまして
整理を大体完了したのであります。今までの税務行政が非常に不備であり不十分であつたということは、私は十分認めます。
従つて徐々に就任以来改善いたしまして御期待に副うようになる、何れにいたしましてもこういうことの、あの通牒も出ましたのは私の耳に入
つてから出たものであろうと思うのであります。民の声を十分に聞かなければならん、先般も
お話がございましたように、私はこういう事例があつたということを聞かして頂ければこの内部の指導監督によ
つて余程直ると思うのであります。
税務官吏の
税法を知らんこともさることながら、官吏の態度に矯激とか、悪いところがあるということも
納税者の感情を非常に害すると思うのであります。若しそういうようなことがありましたならば、私のところになり国税長官なりに匿名でお知らせ願いまして、そうした内部で監督するという場合におきましても、民間の人の智慧を籍りて監督して行くのが、これが一番両々相俟つやり方でありまして、従いまして苦情
処理の制度もいろいろと先般来設けて、そういう声を聞いて徐々に直して行こうといたしておるのであります。今後におきましても、前は
所得調査
委員会というものがありまして、課税に対して民意を容れておりましたが、
申告納税制度としてはそういう制度が余り感心しないという
関係方面の意見でございまして、
所得調査
委員会というものが決定したあとの苦情
処理委員会を設けて、特別の機関を設けてや
つて行こうと思
つております。而して無茶な課税と申しまするか、十万円の
所得しかないときに十三万の
所得を決定された人がありとすれば、これは苦情
処理機関の方へ訴えて、その事務官吏のやり方能力についてはつきり現れるものであります。そういうようないろいろな
方法を取りまして、法規でどうこうするよりも行政的の非違のないような制度を作り上げて行きたいと
考えておる次第であります。更に昨年、一昨年に比べまして大分良く
なつたように認められるのでありますが、併しまだまだ非常に不十分でありまして、事務官吏の素質の向上とか、或いは定員の充足とか、或いは
租税制度におきましてもできるだけ民意を直接に聞いて、そうして内外共に成るベく是正して行きたいというふうに
考えております。