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説明員(
大澤融君) 長官が来る筈でありましたが、
司令部に
行つて遅れますので、私が事務的なことを御
説明申上げます。
この
水産資源の
こ渇防止に関する
臨時措置法案は、
差当りの、急にやらなければならない
仕事と、将来恒久的な
施策をや
つて行くための
仕事と、この二つのことがからみ合
つてできておるのであります。
水産資源が具体的に問題にな
つて参りましたのは、
東支那海、
黄海等における
漁業の問題でありまして、特にこの地域は、
漁船の
制限、
漁区の侵犯の問題があり、又これは
資源に対して、
漁船が総体的に多過ぎるというようなことから起
つてお
つたのでありまして、これに対して、
GHQの要請に基きまして、
漁船の
操業区域の
制限に関する政令を作りまして施行した
参つたのでありますが、これと併行いたしまして、
資源に対して総体的に多いところの
漁船を
整理して参るということが、日本人は
資源を愛護するような国民に
なつたというようなことは、国際的にも又国内的にも必要なことでありまして、すでに
以西底曳網漁業と
トロール漁業につきましては、具体的に
漁船の
整理ということに着手して
参つたのであります。併しながら何ら
法的根拠なく要網の形で
整理に着手した
参つたのでありまして、これの
実行を確保して行くというためには、
資源の
調査でありますとか、或いは
漁業許可の
取消の
法的根拠でありますとか、或いは
取消を受けたものに対する
損失補償の問題、これらを
法律によ
つて規定する必要があるのでありまして、同時にこの
以西底曳網漁業だけでなく、
資源が
涸渇して
漁船が多過ぎるというような他の
漁業についても、こうした
措置をとる
法的根拠を作るというような
意味で、この
法律が考え出されたのであります。一応
要綱の形に
纒めてあるのでありますが、
関係方面といろいろ折衝いたしまして、まだ
解決のつかない点がありますが、早くこれの
解決をつけて、我々の
気持としては、今国糧の期間が非常に短いのでありますが、何とかしてこの
国会に提出していろいろ御審議して頂きたいという
気持を持
つておるのでありまして、
法案が固まらない、問題が残
つている生のままを洗いざらい予め申上げておきたいという
気持であります。
そこでこの
法律が生れる直接の契機となりました
東海、
黄海の
漁業の整備の問題でありますが、
簡單にこの経過を御
説明申上げますと、ことの起りは、
戰後漁船を造ろうという場合に、比較的
漁業の中で
安定性の強い
以西の
底曳漁業へ集中して来るということは当然の
傾向であり、又この
以西で揚げた魚が、
纒まつた数量として配給に上ぼせるというような
関係もありまして、
戰後この
東海、
黄海の
底曳漁業の船というものは、急速に回復して
参つたのであります。現在では約千杯であります。
戰争前内地沿岸を
根拠にしてお
つたものが六、七百隻、中国の方の
沿岸を
根拠にしていたものを全部合せまして千五百足らずのものであ
つた、その
内地根拠のものが、昔六百或いは七百ぐらいであ
つたものが、
戰後、今申上げたような
事情で千近くに
なつた。而も
漁区は
戰争前の四割ぐらいに
制限された。いろいろ統計を見てみますと、
底曳網漁業につきまして、今の
制限された
漁区の中で取る魚と外で取る魚との
比率を見ますと、大体七対三くらいにな
つております。又
トロール漁業の方につきましては、これがもつし極端で、八・五対一・五というような
比率にな
つておるようであります。このように、
漁区は非常に
制限されておる。そうして又
制限された
漁区の中で、昔はそれほど魚を取
つていなか
つたというようなところに、
戰争前よりはより多い
内地根拠の船が入会
つて操業するというようなことになりますと、必然的に
資源の荒廃を見る。魚が取れなくなると、止むに止まれず
漁区違反をやるというようなことが出て来るわけでありまして、この
傾向がすでに
昭和二十二年の春に現われて参
つております。二十三年の初めになりまして、
政府も
業者も、
漁業用資材の欠乏というような
事情も、からみ合いまして、操業の短縮その他について、その実施の可否が研究されるようにな
つたのでありますが、更に昨年の六月になりまして、
長崎におきまして、
日本遠洋底曳協会というものがあるのでありますが、その
大会の席上で、
GHQの
水産部の
ヘリグトン氏から、
漁区違反の
防止と
資源保護の必要を強調されまして、今後
違反船が続出するようなときは、
漁区の縮小、或いは
資材を減少するとか、或いは
漁船の
減船等を考慮するというような
勧告があ
つたのであります。
業者はこの要求に基きまして、
大会の形式で、
業者は自粛しよう、
漁区を嚴守しようという誓約をして参りまして、その後暫くの間は、
漁区違反船が出るというようなことも跡を絶
つてお
つたのでありますが、二十三年の十一月になりますと、又違反してだ捕されるというような船が出て参りまして、そこで
政府も、
漁区を嚴守して
資源を維持する、又
経営の
合理化を図
つて行くというような面から、
漁業の取締りの強化又
減船整理というようなことを、真劔に検討し始めたのであります。更に今年の二月になりまして、重ねて例の
底曳協会の
大会におきまして、
ヘリグトン氏から、
違反船が再び増加しつつある、これは今の
漁区内において
漁船の数が多過ぎるからである、
漁区違反を
防止して、
漁場資源にマッチした
漁船数までに
船数を減すということについて、
業者の自主的な
措置が何らとられていない、
日本政府は
漁区違反の
防止、
資源維持、そういうことについての効果ある計画と
希望を持
つておるが、
業者の結合的な支持によ
つてこれは実を結ばなければいけない。こういうふうに
漁区の
制限緩和或いは撤廃というようなことは、こうした
法律を
はつきり
守り規則を
はつきり守り、又
資源を愛護するというようなことが継続的な履行によ
つて保障されなければ、こういうようなことは論ぜられない。こういうようなお話があ
つたのであります。こうしたようなことを受けまして、今年の三月には
業者のこれに対する
委員会が作られまして、
水産庁から、現在の船を三割
程度減らすというような案を示しまして、
業者に
相談をしかけたのであります。これをいろいろ
業者が検討いたしまして、二割の
整理をしようということに
結論がな
つたのでありますが、この二割だけを
整理するというようなことでは、
漁区違反の
防止も、
資源の恒久的な維持というような点から考えても、少な過ぎるということで、今年の六月の末でありますが、三割
減船ということを遂に
業者も呑んでくれたのでありまして、
要綱を作りまして、或いは
能率が悪い船とか、或いは沢山持
つておるものはその一割を減らすというような具体的な
整理の
基準を作りまして、これも
業者に
相談して、
業者の納得した形でやられましたが、今年の七月、八月にその
相談をいたしまして、どの船がやめるかという
船名を決定したのであります。そこでこの
廃めるという船を、
要綱によ
つて決定いたしまして、来年の六月乃至十二月までに自発的に廃業するという形を採
つて廃めるということにな
つておるのでありますが、これでや
つては自発的に
廃めないというような場合には、
減船ということも
実行が確保されないのでありまして、ここに
法的根拠が必要であり、又
廃める船は
許可を
取消されるのでありますから、それに対する
補償の問題が起
つております。これも国から
補償金を出すか、或いは又
業者が自主的に出すか、これがまだ未
解決でありますけれども、若し
業者が自主的に出すということになりますれば、
事業者国体法等の
関係がありまして、何かの形を
法律で書いて行かなければならないというような問題がありまして、そこでこの
法律を考えたのであります。こうした現実的な
整理というようなことから、直接にはこの
法律が生まれたのでありますけれども、
資源の
涸渇を
防止して、恒久的な保続を図
つて行くということは、現実の、今差迫
つての
整理の問題と切離して考えても、是非
いろいろ手を打
つて行かなければならないことがあるのでありまして、そうした恒久的な
施策をやる必要があるというような
意味をも、この
法律に盛込みまして、一応の形を考えたわけであります。
今提案にな
つております
漁業法案のうちにも、この
整理の問題が六十四條でありましたか、一條ばかりあるのでありますか、
漁業法がどういう形ででき上りますか、それができ
上つた以後におきましては、更にこの
臨時措置法を練り直して恒久的なものを作
つて行こう。今はそういう恒久的なものという狙いも、その
法律のうちには含んではおりますけれども、現行のいわば死にかか
つた漁業法の
基礎の上に考えておりますので、新らしい
漁業法ができたならば、それに乗り移
つてより恒久的な立派なものを練り直すという
意味で、一応二年間の
臨時立法措置にして行こうということに考えておるのであります。大体こうしたような
意味で生まれて参
つた法律なのでありますが、
内容をその
要綱について
簡單に御
説明申上げますと、目的は、ここに書いてありますように、
水産資源の
涸渇の
傾向にある現状に鑑み、その
防止を図り、も
つて水産資源の
恒久的保続をなすことを目的とする。その通りであります。そこで第二に書いてありますよように、
水産資源の
涸渇の惧れがあると認められるときには、
水産資源の量、或いは
当該漁業を営む者の数、その他自然的及び
社会経済的條件を総合的に勘案して、
農林大臣の
許可を要する
漁業の種類及び
海域別に、命令を以て何隻まで
許可を出すかという、その
許可の
定数を定めます。そうして若しこの
定数を定めまして
定数よりも実際に
許可を受けておる船が多い場合には、その多い部分につき船の
許可の
取消しをするとか、或いは
漁場の
制限をして行くというような
措置をとるわけでありまして、こうした
措置をとる場合の
基準といたしまして、第四に書いてあるように、各
漁業者が
当該漁業の種類及び海域につき
許可を受けておる
漁船の隻数、つまり
漁業者が沢山持
つておるか、少し持
つておるかというようなこと、或いは
当該漁業に従事する
漁船の
操業状況、
航海数が多いか、或いは非
能率であるかというようなこと、或いはその
漁業に従事する
漁船の
労働條件が、非常に極端に、誰が見ても
惡いというような
労働條件の船は切るというようなこと、或いは
漁業者の経済が
当該漁業に依存する
程度、一組しか持
つていなくて、それを
取消されたら生活の
基礎が失われるというようなものは、
取消すのを止めましようというようなことを、これで考えておるのであります。指定の
基準は、こうしたことを勘案して省令で決めて、その
基準に当て嵌めて
整理をや
つて行くという考であります。
それから第五の、ここには
共助と書きましたが、先程申上げましたように、こうした
許可を
取消すというような場合には、
憲法二十九條の
関係で国が
補償しなければならんということが、
憲法上の義務として要求せられるのではないかという議論もあるのでありますが、又一方
補償をせんでも、
憲法上の
義務違反にはならんという
見解もありまして、まだこの最終的な
結論までに到達しておらないのでありますが、一応ここでは
業者が自主的に、つまり
残存船が受益の限度において金を出して、金を集めて
廃める人に渡すという形を考えておりますが、この
共助をする場合に、そこに書いてあるように、今までどのくらい利益を受けていたか、これから他の
漁業に転換するまでに船の
保全費が必要でありましようが、
保全費を見る、或いは
乗組員が、
漁船が
整理されることによ
つて首になる、その
退職手当を一部見るというような、そうした
内容のことを考えて、
共助金を幾らというふうに決めて、それを
整理される人に渡して行こうという考であります。これをやります場合に、
業者が
自分達の
団体でやるというようなことになりますと、
事業者団体法の
関係もありますので、名前は非常に
惡いのでありますが、
整理漁船共済団というような特別の法人を作りまして、
残存業者から
負担金を取立てて、それを
廃める人に
共助金として拂う、その取立てと支拂の
仕事をやる
特別法人を設定します。この第九に書いてありますように、この
特別法人が、後に残る人から、先程申上げましたような受益を限度として
負担金を徴收して行くという形になるわけです。そうして誰々に
幾ら拂うということを
農林大臣が決めて、取上げた金を
廃めた人に拂
つて行くという形を採るわけであります。こうしたことをやる場合に、例えば
許可の
定数を決めるとか或いは指定の
基準を決めるとか、或いは今申上げた
共助金の額とか、或いは
負担金をどれだけにするかというようなことを審議して、
農林大臣の諮問に応ずるという機関を、
水産資源に
渇防止審議会というものを作りたいということを考えております。又こういうふうにいろいろの
措置をとる場合には、科学的な
水産資源調査が飽くまでも
基礎にならなければならないのでありまして、こうしたことをやる場合に、併行的に
水産資源の
調査をがつちりや
つて行くことこそが、又将来のためにもなるという
意味で、
水産資源調査の
根拠規定をこの中に織込んで行きたいというように考えております。
大体の
内容は、そういうことでありまして、非常に恒久的な、理想的なことを狙うと同時に、現実的な問題の処理をする、しなければならないという
意味で、多少筋が一貫しないという憾みが出て来るかも知れないのでありますが、その点は、
差当りの問題を
解決して新らしい
漁業法ができたならば、更に立派なものに練り直して行くということで、
臨床立法という形で、以上のような
法律を纏めて行きたいと思
つておるのであります。
簡單でありますが、この
程度で
一つ……。