○羽仁五郎君 最後にこの
職階制の問題でありますが、数日前に参議院において公聽会が開かれましたことは
総裁も御承知のところだと思います。その公聽会において述べられました
意見は、主として我々参議院議員の
責任でありますが、併し
総裁もその報告はお聞きにな
つておることと存じます。その公聽会において公述人の述べられましたことの中で、特に私は、我々自身が十分その点を考慮しなければならないとこの
人事委員会に訴え、同時に又
総裁にも御考慮願いたいと思います点は大体三つございます。
第一は、不幸にして、いろいろな事情からでありますが、
人事院乃至
国家公務員法というものが、その喜ばしい目的である官僚主義の打破という点においては一般に理解されないで、反対にこの日本官僚主義を打破するために相当の実績があり力もあ
つた官公庁労働組合の組織を破壞したという
方面においての印象が強いということは、私は
人事院のためにも
国家公務員法のためにも非常に残念に
考えておるものであります。で、これはやはり或る
意味においては一方を叩くために他方を叩いて、最初の目的を叩こうとするようなやり方というものは、私は果して成功するかどうか、これは十分
考えて頂かなければならないことだと思うのですが、この問題が具体的にこの
職階制において第一に現われておりますのは、この
人事院の
職階制、或いは
職階法に対して官公庁労働組合が第一に不信の感情を持
つておることであります。これはやはり私は非常に大きな問題だと思います。同じ
職階法にしても、これに対して、信頼を以て迎えられるか、不信を以て迎えられるかということはこの
法律が実際に効果を現わす上に非常な違いがある。第一の問題について、
お答えになりましたように、合理的にして能率的な官庁行政ということの前提條件は、やはり信頼です。
人事院に対するその信頼がなければ、結局目的とする合理的にして能率的な行政ということはできないと思うのです。同じものですけれども、やはり常に信頼の感情が欠けておる場合には、その能率も挙らないし、合理的にも行かない、結局サボタージユ状態というものが続いてしまうのじやないか、これがこの
職階法に対する公聽会において私の痛感した第一の問題であります。この信頼を回復せられる努力を是非して頂きたい。そういう
意味においては、
只今問題にな
つております
給與ベース改訂の問題のごときも、非常に重大な
政治的な意義を持
つておる。普通に理解されておるような
政治的意義でないので、もつと
根本的には、
人事院に対する一般の信頼というものを回復なさるかどうか、
従つてこの
人事院に対する信頼というものが前提とならなければ、あらゆる合理的、能率的な人事行政の実現は不可能である。こういう点も十分考慮して頂きたいと
考える。この点が第一であります。
総裁は
人事院或いは
国家公務員法というものが、今申上げましたような
意味において、遺憾ながら一般官公庁に働いておられる諸君の十分の信頼を裏切られておるということがあ
つたことは御自覚になり、又十分御苦衷をお察しするわけでありますが、そういう
意味において、信頼を回復するために、今後格別の御努力を願いたいと思う。そういう
意味においても、
給與ベースの改訂、或いは結局私はこの官公庁労働組合の最大の問題が
給與の問題だけだとは思
つておりませんが、併しその問題が
解決しないと、他の問題についても十分信頼を以て
考えられることがむずかしいのではないか、この点が第一であります。それから第二に私の痛感いたしましたことは、やはりこの
形式を別に私は問うものではありませんが、官公庁において働いておられる諸君の問題は、できるならばやはりその官公庁で働いておられる諸君の労働組合と絶えず相談せられ、協議せられる、その
形式を私は言
つているのじやありません、そうしてその
解決に到達されるということが必要ではないか。この点においては、勿論
人事院総裁或いは
人事院においては、十分御努力にな
つているとは思いますが、併し民間においてなされているだけの努力は、少くともやはり
人事院においてもして頂きたいと、そういうふうに
考えるのであります。
それから最後に、第三には、いわゆる
人事院が第三的なものになる、いわゆる新官僚の牙城となるというような非難もしばしば受け、或いは
国家公務員法なり、
人事院規則なり、今度の
職階法なりにおいて、いわゆる委任が過大である、或る
意味においては、憲法違反であるというような非難が起ることも、やはりどういう点に具体的な事情があるかといえば、これも
人事院総裁の非常な御苦心のおありになるところだと思いますけれども、要するに官公庁で働いておる人達が、安心して仕事をやれるようになかなかならないという点にあるのだと思うのであります。それでこの点については、日本のいわゆる経済的な現状その他いろいろな問題がありますが、併しこの点は、二つの面から努力することができる。
一つは、絶えずその人々と協議することである。他の
一つは、できるだけ救済の
方法を確立して置くということであると思います。
従つて今度の
職階法の中にも、救済の
規定がないということも、公述人の方も指摘されてありましたが、救済の
方法として、さつき私が非常に敬意を表した
人事院公平
委員会の制度そのものについても、果して
人事院の中に公平
委員会があることが理想であろうか。もつとはつきりと第三者の、独立的な、いわゆるデスビユート・コートというものは……本当に公平を期する第三の立場に立たれる方がいいのではないか。やはり
人事院が独立性を持
つているとはいえ、これはやはり雇主の立場に立たれているので、雇主の立場にも立たない、又雇われる者の立場にも立たない、独立の立場に立たれるのがいいのではないか。これはあらゆる点において、
国家公務員法、
人事院規則、
職階法その他で、今申上げた二つの点に、
形式を私は問わないが、絶えずこういう
規則或いは
法律、こういうものの適用を受ける人々と十分協議するような措置をとられることをお忘れにならないでいて貰いたいということと、最後に、不満が起
つて、不公平が起
つた場合に、それを救済する措置を忘れないで、十分これを処置するということが望ましい。以上申上げた三点が、特にこの公述人の公述を伺
つておりながら感じた点であります。これらはこの
人事委員会においても、十分問題にせられることと
考えますが、
人事院総裁においても、十分これらの点についてお
考えを
願つて置きたいと思います。