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1949-11-24 第6回国会 参議院 人事委員会 第6号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十四年十一月二十四日(木曜 日)    午後二時十五分開会   —————————————   本日の会議に付した事件 ○国家公務員職階制に関する法律案  (内閣送付) ○国家公務員法附則第九條の規定によ  る試験に関する件   —————————————
  2. 中井光次

    委員長中井光次君) これより委員会を開きます。前日に引続いて質問を続行いたします。
  3. 寺尾博

    寺尾博君 淺井総裁に伺います。過日の委員会で私が淺井総裁に伺いましたときのお答えでは……それを速記録についてもう一遍調べて見ると「あと職階法案国会に出して御採決を願いますれば、即ちこの計画についても御承認願つたということになろうと、私はその経緯に鑑みて考えている次第でございますから、別にこの法案の外に職種一覧表その他をお手許に出しまして、国会の御承認を経るという手続はとらなくてもいいのじやないかというわけでございます。」こういうふうにお答えになつておりますが、以前の国会におきまして、衆議院人事委員会岡部法制局長の御説明のところと食違つておる点がございます。それは昭和二十三年十一月二十七日の衆議院人事委員会で、これを速記録で調べて見ますと岡部法制局長は「根本的な職階に関する計画は、今鋭意作成中でございますので、取敢えずの計画といたしましては、第二国会においても御審議、御制定を頂きました新給與実施法に関する職階制を以ちまして、取敢えずこの職階制に関する計画として頂いたわけでありまして、そのことは新給與実施法の第一條にも謳つてございますし、その趣旨を又重ねてこの改正法の第五項におきまして謳つたわけでございます。即ち国家公務員法第二十九條第五項」として、これは長いから読むのを止めますが、第五項に規定してあり通りでありまして「今後職階制に関しまして詳細なる計画ができます場合におきましては、その計画をやはり国会に提出いたしまして御承認を頂くことになつておるわけでございます。」とこういうふうに衆議院では岡部法制局長が御説明されております。即ち具体的な計画国会に提出するのであると、こういうふうになつておる。先頃の総裁の御説明はもうそういうようなものは出さなくても済んでいる、よろしいと思うと、こういうふうなことでありますが、ここに何か食違いがあるように思うのでございますが、その点についての御意見はどうですか。
  4. 淺井清

    政府委員淺井清君) 誠に御尤もな御質疑でございまして、その点は非常に国会公務員法二十九條の解釈のおける「計画」という意味の問題でありまして、もう一度この二十九條の成立過程を申上げますれば、そもそも二十九條の政府原案の形はこの第一項の「職階制は、法律でこれを定める。」というのはございませんでした。そうしてその次の第二項が第一項になつておりました。それからその次の第三項が第二項になつておりました。それから只今の第四項、即ち寺尾さんの御質疑の「前三項に関する計画は、国会に提出して、その承認を得なければならない。」今御質疑の要点でございまするが、これは政府原案にはございませんでした。それからその次の第五項は、これは後の昨年の十二月三日の改正で入りましたものでございまして、無論第一回国会に提出いたしました政府原案にはございませんでした。そこで只今引用岡部法制局長が申上げましたことは、この第五項が法律となります前のことであるということを、まあ先に一言申上げて置きたいと思います。そこで問題が元に返りまして、第一回国会で出しました最初の政府案と申しますのは、お手許の二十九條の第二項と第三項とだけがあつたわけでございます。そして職階制法律で定めるということはないのでございまするからして、私共といたしましては或いは法律で定まることもあろうし、或いは人事院規則で定まることもあろうと、かように考えてこの案を提出したわけでございます。ところが国会におかれましてやはり職階制というものは法律で決めなければなるまいと、アメリカにおいても法律で決まつておるからというような御趣旨で、この第一項即ち「職階制は、法律でこれを定める。」とこういう項が入つたわけでございます。そこで更に国会の御修正によりまして「前三項に関する計画は、この法律実施前に国会に提出して、その承認を得なければならない。」つまり只今手許にあります二十九條の第四項は「この法律実施前」という言葉がとれておるのでございます。これは昨年の十二月三日に公布いたしました改正によつてとれましたので、第一回国会成立いたしましたものには「前三項に関する計画は、この法律実施前に国会に提出して、その承認を得なければならない。」つまり職階制計画というものを、この国家公務員法が全面的に施行されまする以前に国会へ提出しなければならんと、このように書いてあつたわけでございます。ところがこの法律実施前に国会に対して計画を出しますることは、これは技術的に到底不可能なことでございます。それから又この国会の御意思でございまする計画というのは、どういうことを言うのであろうかということもいろいろ問題になります。私共の考えといたしましては法律が即ち計画で、それ以外のことは人事院にお委せを願つていいのじやないか、かようにまあ考えておりまして、この計画という言葉意味は当時最も疑問であつたわけでございます。ところが最後に第五項が昨年の十二月三日改正で入りました。つまりこの計画というのは新給與実施に関る法律の第九條の規定による職務分類、これが即ち計画である。このように認定されたわけでございます。ですから前三項の計画とは、即ち第五項のこの給與実施に関する法律の第九條の規定による職務分類である、こういうような立憲解釈と申しまするか、立法解釈と申しまするか、これが第五項で附加わつておるわけでございます。で只今寺尾さんの御引用になりました岡部法制局長の申上げましたのは、それ以前の説明でございまするからして、この第五項が入りましたことによつてこの計画という意味が公に定まりました以上、それは変更しなければなるまい、かように考えておりまするので、それは食違いではないと私は思つております。でございますからして、私からここに申述べましたところは、即ちこの第五項が入りましてから後の考え方でございまするので、それを一つ了承を願いたいと思つております。
  5. 中井光次

    委員長中井光次君) ちよつと速記を止めて下さい。    〔速記中止
  6. 中井光次

    委員長中井光次君) 速記を始めて……。
  7. 赤松常子

    赤松常子君 この法案附則の第四項の條文でございますが、これは「職員給與は、この法律によつて行われる官職格付によつては、国家公務員法第六十三條に規定する給與準則実施に際して減額されることはない。」と書いてございますのですけれども、国家公務員法の八十一條の第三号には「職階制による官職格付改正の結果、降給又は降任と同一の結果となつ職員」という文句がございまして、降給という予想された言葉がございますのですが、この減額されないということと、この降給という予想された言葉の挿入それている点の矛盾についてどうお考えでいらつしやいましようか。
  8. 淺井清

    政府委員淺井清君) お答え申上げまするが、只今示し国家公務員法の方は、これが本筋でございます。ところが国家公務員法による職階制がまだでき上りませんまでは、いろいろ減給などを、減俸などをいたしますると不都合を生ずるものでございまするから、一時的な規定といたしまして附則只今示し附則の方に規定を入れてあるのでございまするからして、これは本当の職階制がすべてでき上つてそれによる給與準則成立しました後におきましては、只今申上げた国家公務員法の方が本格的に動いて来る、こういうことになつております。この附則の方の規定は、いわば応急措置と御了承を願いたいと思います。
  9. 木下源吾

    木下源吾君 今総裁の言われた職務分類ですが、それはつまり計画だ、これは給與に関する面だけの何ではないのですか。格付とか、そういうものについては、どうなるのですか。
  10. 淺井清

    政府委員淺井清君) ちよつと御質疑の点がはつきりしないのでございまするが、つまり十五級に分けております、それを指すのでございます。
  11. 木下源吾

    木下源吾君 この十五級に分けておるということだけが計画で、その他のことは計画には入らんということになるのですか。
  12. 淺井清

    政府委員淺井清君) この二十九條の五項を見ますれば、そのように解釈するより致し方がないようになつております。即ち新給與法の第九條の規定による職務分類は、これを本條、その他の條項規定された計画であつて、且つ、この法律の要請するところに適合するものとみなして、こういうふうに書いてございまするから、只今申上げたような解釈が出て来るものと、こういうふうに思つております。
  13. 木下源吾

    木下源吾君 いや、私の言うのは……そうすると計画というものの一部ではあるがだね、計画の全部ということにならないではないか。例えば格付等のことは、一体計画の中に入るのかどうか、こういうことをお伺いしておるわけであります。
  14. 淺井清

    政府委員淺井清君) 御尤ものお尋ねでございますけれども、只今申上げましたのは二十九條の前三項に関する計画と、この計画意味が第五項で限定されて来るじやないか、こういうふうに申上げただけのことでございます。
  15. 木下源吾

    木下源吾君 そうすると、ここで、つまりそのこと以外に格付等計画だということを考えるということは、必要はないということになるのですか。
  16. 淺井清

    政府委員淺井清君) つまりここに提出いたしました法律案、それを、それが即ち計画である、こういうように考えていいんじやないかと思つております。
  17. 木下源吾

    木下源吾君 そうしますとですね。この職階制ということは計画をも含んだものではないのでありますか。
  18. 淺井清

    政府委員淺井清君) 即ちこの職階法案が即ち計画と見ていい、こういうことでございます。
  19. 木下源吾

    木下源吾君 そうすると、あなたのおつしやる今の第九條の規定による職務分類云々ということは、やはり職階制の中に含まれているものなんですか。
  20. 淺井清

    政府委員淺井清君) 御示し通りでございます。
  21. 木下源吾

    木下源吾君 そうすると、それを別にする理由はどこにございますか。
  22. 淺井清

    政府委員淺井清君) その別にするとおつしやいますのは、どういう意味でございますか。
  23. 木下源吾

    木下源吾君 いや、職階法と別にそういう計画解釈する理由はどこにありますか。
  24. 淺井清

    政府委員淺井清君) 私の方では決して別に解釈はしていないのでございまして、つまり、むしろ国会方面において、職階制というものは法律案で出さなければいかん。その外に尚進んで計画をも国会の御承認を得なければならん、つまり国会方面において、これを別にするという考えがあるものですから、そこで私の方は、そうでないということを申上げたのでございます。
  25. 木下源吾

    木下源吾君 国会が別にするというのではなく、あなたの方から別にしてですね、職階制に、いわゆる法律の中に計画というものを別に、つまりせられてですね、今解釈せられておる、こういうことなんです。実際に、解釈じやない、実際に出されて来られておる。
  26. 淺井清

    政府委員淺井清君) それはどういうことでございまするか。私の方は、ただ法律案を御審議を願うために提出いたしましただけで、その外に別に計画は御承認を願う等のために提出していないように思うのでございますが、ただ御参考資料といたしましては、いろいろなものをお手許にお出ししてはおります。
  27. 木下源吾

    木下源吾君 まあ簡單に言えばですね、私共は職階法それ自体計画全部を含んだもの、こういうように考える。ところがですね、その計画だけは、別にですね、国会承認を得ることとしてこの法律が今出て来ておられるわけですね。
  28. 淺井清

    政府委員淺井清君) 別に計画国会承認を得るということは、何によつておつしやるのでございますか。そこのところが分らない。
  29. 木下源吾

    木下源吾君 いや、只今までの説明によつて……。
  30. 淺井清

    政府委員淺井清君) 木下さんのお話は、第四項の問題だろうと思うのですが、ところが第四項というのは、政府原案にはなかつたので、国会修正によつてここに入つておるわけでございます。でありまするからして、この第四項を率直に読みますと、何が職階法案の外に計画というものを出す、こういうふうになつておるのでございますが、私共といたしましては、職階法は、即ち計画それ自体であつて、それ以外に尚別に計画というものはない筈だ、かように初めから思つておるわけでございます。ところが只今申しましたように、すでに第四項は、法律の一項として、法律の明文として成立したわけでございます。そこでこれでは困るということになりまして、第五項が入つて第四項を解決したわけになつておるわけでございます。これは非常に第二十九條の成立過程に、いろいろな人のいろいろな意見が入りましたために、ちよつと分りにくくなつておるものでありますが、私共といたしましては、只今木下さんがお示し通りに、この法律が即ち職階制計画、こういうように解釈しております。
  31. 木下源吾

    木下源吾君 でありまするから、国会がこれを修正したか、どうしたか、それは今までの成立過程は別といたしまして、現われておるところでは、職階制というものの中には計画というものが入つておらないようにできて来ておるのじやないか、こういうふうに私申上げるのでございます。そこで結果から行けば、第一項と第四項とは互いに矛盾しておりやせんか。あなたのおつしやるのは、その矛盾は第五項で解決しておるのだ、こうおつしやるわけであります。併しながら私共はですね。第五項は、ただ給与に関する問題だけで、計画全般ではないのではないか、こう私は申上げておるわけであります。ですからその他のことはですね、一体計画の中に入れるのか、こういうようにお尋ねしたわけであります。若しもその他の格付一初のことが計画であるならば、これは、これだけでは法律は不十分だ、こういうように考えておるわけであります。そういう点について、私はお伺いしておつたわけであります。
  32. 淺井清

    政府委員淺井清君) それは誠に御尤もな点でございまして、率直に申しますれば、私共も第一項と第四項とは非常に解釈が、結び付けて解釈が困難だと思つております。併しながら、これは国会修正で入りましたもので、それがすでに法律になつておるわけでございまするから、第一回国会職階、この二十九條が成立しまして以来、我々としては、一体これをどう解決すればよろしいのか悩み続けて来たわけであります。そこでそれを辛うじて解決しましたのが昨年の修正の第五項なんであります。でございまするからして、この第五項で解決したということも実は無理な筋だと思つております。併しこれはそういう経緯がありますので非常にまあ辛うじて何とかしたとこういう形になつておるのでお示し通りでございます。これはそもそも二十九條が非常に複雑した経過ででき上つたためにそういうことになつておりますから、私共といたしましては、問題を本筋に立て直しまして、この職階制に関する法律案が即ち計画であると、こういうふうな意見合でこれを出したとこういうことになります。
  33. 木下源吾

    木下源吾君 総裁の言われるところはよく分るのです。で現われておることでは問題の解決になつておらないのじやないか。あなたもおつしやる通り問題の解決になつておらない。従つてこの法律審議なる上においてあらゆるところにそういう矛盾が露呈して来ている。そのことが人事管理に役立つか役立たんか、そうしてそれがスムースに行くかどうかということは私は問題だと思うのです。どうも全文を見ますと非常に役立たないことが多い。こういうふうにも解釈されるわけなので、もつとこれを根本的にあなたのおつしやるようにこれを直すというようなお考えがないのでありますか。  ただ国会つていつまでもそういう矛盾のあるものを国会が押通して行かなければならんとこう考えてはおらんと思うのです。ですから、こうしてお互い質疑応答しておつても非常に分りにくい、そうしてもう主観でこうだと決めなければ解決の付かないようなことをいつまでもこうしてやつてつたつてしようがないのじやないかと思うのですが、この点に対する御意見を承わりたい。
  34. 淺井清

    政府委員淺井清君) 誠に御同感に思つております。若し国家公務員法二十九條をもつと率直に改正することができますれば、その矛盾解決すると思つております。ですから二十九條をその形で置いておきまする限り、いつまで経つて木下さんのおつしやるような御疑念ははれないと思います。而も職階法それ自体成立を非常に急いでおりますために、止むなく現行の二十九條の下で提出したわけでございまするから、これは御質疑の点が一番問題になるところだとは思つておりました。これは将来二十九條が改正されてもつとすつきりした形ではつきりものが分るようになれば大変よいかと、こういうふうに思つております。
  35. 木下源吾

    木下源吾君 まあお互い国会がやつたんだとか、俺はこう考えておるのだということの、そういう形式の問題ではなくして、実質をよくお聞かせ願いたい。実際この現われておる面では根本的にはこういうことだと私らは了解しておるのです。人事院は独善に陥り易い、独裁的な機関である。こういうようなことはまあ一般に言われているし、それがこの法律基礎としてすべてが現われている。而もこういうような分類だとか格付でも普通の公務員ではなく、普通の労働者てあるならば、労働協約によつて成立するという工合に、これは民主的な機関においてやはり練つて、そうして作るべきものが人事院一つ考えで決定するということは非常に非民主的だ、こういうようにも言われる面があるのでございます。それでありますから、問題の根本はそういうようなことに陥らないように、若しもそうであるならば又でき上るものがもつと民主的に皆が納得行くようにできなければならない。その根本はやはり法律だと思う。でこの法律の中でどうしてそれを一つ調和をとるか、国会つまり法律で決めるということも、国会それ自体民主国会であるからよいのであるけれども、その前にもう少し民主的な方法で今人事院法律の上でやろうとする格付等においても、もつと民主的にやつて行つたならばいざこざがなくてよいのじやないか、そういうことの精神を酌み取つてこの法律において根本的にもう少し改正しなければいかん計画という面が若し別にあるとするならば、それは人事院規則に委せらるべきものの範囲ですね、重大なことはやはり国会でこれをやるというようなことがもつと限定されて、それは嚴格でなくともよいが、そういうように一つすつきりしたならば、人事院それ自体も今後非常にやり易くなる、こういうふうに考えておるわけです。それから法律の上に現われておるところではこうだ、俺の解釈はこうだ、国会はこういうふうに決めたからこういうことなのだと、そういうことの論議は幾らやつて見たところでこれは甚だ無理だ、もつと根本的なところを掘り下げて、私共は国会では今言うようなことを心配しておる。人事院が独裁をやる。何かと言えば人事院規則で、これも亦法律で決められておれば、それをやるよりしようがないということになりますが、そういう無理が行かないように、ここでは根本的に人事院というものを計画機関に止めて置く。実施までやるにしても、そのやることにおいては民主的な方法で決められてやる。又国会もそれを承認して許されるというようにしたい、こういうためにいろいろお尋ねしておるわけであります。そこであなたのお答えにおいては大体において非常に矛盾もあるし、非常に困つた点があるということでありますから、これをもつと根本的に、急いではおられるだろうけどれも、もう少し時間を割いて練つて根本的に訂す。ひとりこの参議院、ここばかりではないと思う。あなたの御心配になつておる点はやはり段々審議して行けば一般にそういう疑問を持つだろうと思う。そういう点についてどういうふうにお考えになつておりますか。
  36. 淺井清

    政府委員淺井清君) 誠に御尤もな点で御同感に存じております。問題を二つに分けて申上げますが、第一に国会に対する関係つまり人事院国会との関係でありますが、言葉を換えて申しますれば、どの辺までを法律で決め、どの辺から人事院規則その他人事院に委せるかという点が一番重大な点でございます。最近政治活動制限等規則人事院が出しましたために、非常に人事院が何でもかんでも勝手にやつてしまうというような非難も諸処にあるようでございますけれども、まあ理屈を申しますれば、あれも国会の信託によつてつたことではございますけれども、この職階制に関する問題はそのようなものではございませんで、これは純然たる技術的な問題であるとは思つておりますけれども、私共その計画というのは、これは法律であるから国会は直ちにこの法律を通して頂ければよいのだ、あとのことは何でもかんでも人事院が勝手にやるのだと、そういうふうには毛頭考えておりません。仮にこの法律だけといたしましても、それに対するいろいろな参考資料といたしまして、例えば正式の議決による御承認形式は採りませんでも、少くともこれは人事委員に対しましてはいろいろな資料を出しまして、その職階制全般がよく分るようにしたいという気持は決して変えるものではありません。  それから民主的な方法というお示しでございましたが、それも御同感に思つております。そこでこの人事院職階を担当するといたしましても、何も人事院が独善的に自分だけの考えでこの職階制を拵えるのではなく、又それでは職階制というものは到底でき上るものではございません。只今いろいろな作業をいたしておりますが、これはみんな各省各庁と十分な連絡をとりまして、いわば共同作業のような形で各省各庁の内部の実情を検討したしまして、それで職階制を拵えておるのでありますからして、只今民主的ということの意味をよく皆が納得の行くというような意味合解釈しますれば、私はみんなの納得の行くような方法でやつて参りましたし、これから先もやつて行くつもりでおるわけでございます。
  37. 木下源吾

    木下源吾君 まあ、いろいろお話がありますが、根本的にはこの職階制は技術的のものである。こう解釈すれば、あなたのおつしやることが妥当のようにも考えられるのですが、職階制基礎として、やつぱり給與の面が私は不可分だと思います。ですから、職階制は技術的であるが、給與という面に行けば、すでにあなたは今日まで勧告をされるときでも、いろいろこれは関係が、政府財政等には顧慮していないというけれども、あなたが顧慮しておらなくても国会としては、政治全体から見て十分な関係を持つておると、こう考えておるわけなんです。でこの給與の問題になりまするというと、やはり国会があなたがおつしやる通り責任があるのだということになります。でありますから、人事院は單なる、これは技術的の問題として取扱つておりますが、ここで国会が決める場合には、やはりそういう財政給與、そういうことを全体としてやつぱり考える立場から、この問題を見なければならない。こういうことになるわけであります。そこで私は政治的に、つまりあなたとお話しておるわけで、單なるこれは技術的の問題だという、こういうことに片附けてしまうと、それだからこれでいいのだということになれば、やはり調べて行つてこの條項とこの條項とぶつかるのではないか。これはどうも矛盾しておるじやないか。それを解決するためにこの項で解決しても、それは解決になつておらんじやないか。こういうことになるので、そこまで掘り下げて行つても結局私は政治的な意味で、これは給與とは密接な関係がある。その給與関係あるときがやはり国民が責任があるならば、その責任を果し得る、果し易いように、この法律も作つて行かねばならん。こういうように私は考えて申上げておるわけです。ですから、これは單なる技術の問題だと言うだけであなたの方だけ……国会が、それではそうかと言つて受入れられて、これを考えておられない。こういう事情がありますので、まあいろいろお尋ねしておるわけです。
  38. 淺井清

    政府委員淺井清君) 御尤もな点でございまするが、その技術的と申しましたのは、職階を作る作業を指して申しましたので、給與との結び付きの問題になりますと、これは全然又別な問題になつて来るだろう。何故かと申しますと、この給與職階と結び付きましたものは、いわゆる給與準則という法律の形でできるのでございますから、この給與準則国会において、詳細に御審議を願うような形になつておりますから、職階制人事院に仮にお委せ願つたといたしましても、給與も皆人事院が勝手に決めてしまうのだということは絶対にないのでございまして、この給與に関する限りは、これは給與準則という法律でやるので、仮に人事院が提出いたしましても、法律案の形で国会に出して十分御審議を願う。こういうことになつておりますから、木下さんのお示しの点は誠に御同感でございまするが、この給與をも人事院が勝手に決めてしまうのだと、こういうことには相成らんのでございまするから、その点は御了承願いたいと存じます。
  39. 木下源吾

    木下源吾君 今のは給與人事院が勝手に決めるのではなく、人事院の勧告するその給與は必ずこれが正当だとして国会も、又時の政府も受入れられるだけの権威あるものを、又それだけの條件の備つたものだということをはつきりするために、この職階制審議を愼重にやらなければならない。こう私は申上げておるのです。
  40. 羽仁五郎

    ○羽仁五郎君 私はこの人事委員会委員長及び人事委員同僚各位、それから人事院総裁、皆さんの御指導の下に、人事委員としての職責を盡すために全力を挙げて来たわけなんですが、今後そういうふうにすることができるかどうか分からないので、今日いわば或いは最後になるかも知れないので、少し根本的な点について人事院総裁の御意見をはつきりといたして置きたいと思うのであります。その第一は、人事院或いはこの人事行政の使命というものは、勿論国家公務員法一條にもありますように、民主的にして能率的な、そうして合理的な人事行政ということにあると思うのでありますが、併し現在の日本で特に人事院に私が期待するものは、久しく日本国民を苦しめておつた官僚主義の打破にあるというふうに考えて来ております。でこれが現段階における日本の人事院が持つておられる最高の使命である。勿論官僚主義の打破ということには、民主的にして能率的、合理的な官庁行政ということを含むわけですが、その点について人事院総裁はどういうふうにお考えになつておるか。それを先ず第一に伺いたいと思うのです。一つ一つ御返事を伺つて行きます。
  41. 淺井清

    政府委員淺井清君) 羽仁さんのお示しの点、誠に御尤ものことでございまして、私共はこの日本のビユウロクラシーというものの弊害を痛感いたしております。従いましてこれを打破し、いわゆる新らしいよい意味のビユウロクラシーに変えるということが必要であろうと思つております。御承知のごとく、如何なる時代におきましても、如何なる場所におきましても、職業的官吏というものは必要だろうと思つておりますが、従来の日本のビユウロクラシーというものは、この点につきましていろいろな弊害があるように思つております。そこで我々の人事院に課せられた使命が、このビユウロクラシーの改革にあるという羽仁さんのお示しの点は、全然御同感でございます。又一方から申しますれば、そのためにこそ人事院に対して強い権限が與えられておると、こういうふうにも存ぜられる次第であります。
  42. 羽仁五郎

    ○羽仁五郎君 只今の点について人事院総裁のお考えがはつきり伺うことができたことを非常に仕合せと思います。尚併しこの独立の学者としておられた時代の淺井さんと、それから社会党内閣当時に人事院総裁となられた淺井さん、それから今日民自党内閣の時代に人事院総裁となつておられる淺井さんの間に、これは或いは私の主観的な誤りかも知れませんが、多少の変化がおありになるのじやないか。その変化は勿論淺井さんの個人の人世観というだけではなく、この人事院の使命を果して行かれる上に、どうか日本の官僚主義を打破するという点においての識見を、いろいろな時代の移り変りの中にも堅持して行かれるように希望を許されたいと考えるのであります。これは私の衷心からの希望であります。  第二に伺いたいのは、アメリカの現在と日本の現在の現段階の上に若干の違いがあるのではないか。私の見るところでは、アメリカにおいてはいわゆる政党政治の弊害、それに対してこれに戰うために、或る意味においてはオートマチツクなフアンクシヨンを持つところの人事行政というものに重点があるのではないか。然るに日本においては事実は政党政治が官僚主義を圧倒したというような時代が過去においてあつたことはないので、これは淺井人事院総裁が十分御承知のように、過去において日本は官僚主義が常に支配しておつた。政党政治が支配したということは事実ない。アメリカの場合のようなものはない。つまり一言にして申せば、アメリカにおいては政党政治の弊害を打破するために、オートマチツクな合理的な人事行政というものを立てることが現段階の意義でありましようが、日本の現段階は、むしろその官僚主義を打破して、或る意味においては日本に初めて近代的な政党政治の長所をも発揮させるということに、現段階の重点があるのだと私は考えておりますが、この点について人事院総裁はどうお考えになりますか。
  43. 淺井清

    政府委員淺井清君) 御尤もの御質疑でございまして、第一の点は、誠に私は自分の微力を恥じる次第でございますが、御趣旨従つて私はまあ一生懸命やつておるつもりでございます。  第二の点は、歴史的に見て羽仁さんのお示し通りのようになつております。それは新らしい人事行政の消極的な一面を見たものでございまして、積極的の面を見ますればやはり能率的な新らしい人事行政をやるとこういう面を含んでおるように思います。御示しのようにアメリカにおきましてはこの政党の力が余りに猟官制度を発達させまして、そのために中正な人事行政というものが必要であり、従つて人事委員会のような独立性の強い機関を必要とした。これは歴状の示すところでございます。ところが日本におきましてはこの政党の猟官とか何とかということは、羽仁さんの申されましたように官僚政治と申しますか、ビユウロクラシーと申しますか、それを圧倒し得たということはなかつたのでございますからして、目標はお示しのように違つておるかも知れません。併しながらそれはいずれにしても消極的な面でございまして、積極的な面におきましては能率的な人事行政を作る、こういう点においてはやはり同じことであろうと思つております。併し羽仁さんが申されましたように、この人事院が日本の古いビユウロクラシーを破壞するために、或いは建直しをするために努力をするということを決して私共は怠つておるものではございません。
  44. 羽仁五郎

    ○羽仁五郎君 只今の点につきましても、勿論能率的な人事行政の実現に盡力して頂くのでありますけれども、併しこの官僚主義の打破が不十分でありますと、そのオートマチツクなラシヨナルなアドミニストレーシヨンというものはやはり旧官僚主義の新らしい復活というものを招くということを十分御留意願いたいのであります。  第三に伺いたいのは、国家公務員法、或いは人事院のなさるところの人事院規則というものは、絶対に身分法的の色彩を持つてはならないものだと私は確信しておりますが、総裁はどうお考えになりますか。
  45. 淺井清

    政府委員淺井清君) 問題は身分法ということでございまするが、ちよつと尚少しくお説を承わりましてお答えを申上げたいのでございますけれども……。
  46. 羽仁五郎

    ○羽仁五郎君 これは第一の問題について総裁が言及されました封建的な官僚主義と近代的な官僚制度というものとはどこが違うかという極めて重要な点になると思います。で、封建的な官僚制度は即ち身分制度であります。近代的な官僚制度というのは絶対に身分制度ではないのであつてこれは職業的な制度であります。一応この点において私の信ずるところは人事院国家公務員法、或いは人事院規則というものは封建的な官僚主義に伴うところの身分法的な色彩というものを絶対に排除すべきものであると考えております。そういう意味において伺つておるわけであります。
  47. 淺井清

    政府委員淺井清君) そういう意味でございますれば、誠は御同感に存じております。
  48. 羽仁五郎

    ○羽仁五郎君 では第四の点でありますが、只今お答えを承つたように近代人事というものは身分法的な色彩を持つてはならないということは、即ち基本的人権の尊重という問題に関連して来るわけであります。なかんずくここではつきりまあ今後この機会が余りないわけではつきり伺つて置きたいと思うのです。基本的な人権の最大なものとしての政治的自由というもののたびたびこの委員会でお考えを伺いましたが、私共としては今後も研究を続けますが、基本的人権そのものを制限するというようなことは理論上どうしても納得行かない。基本的人権の行使がその使い方が、公共の福祉等の関係によつて制限されるということはあるが、基本的人権そのものが制限されるということは私は理論上、論理上成り立たないと確信しておるのであります。従つて許されるのは基本的人権の行使が、つまり使い方が制限されるに止まると思うのでありますが、この点についてどうか総裁にいま一度愼重なる御判断を以てお答え頂きたいと思います。
  49. 淺井清

    政府委員淺井清君) 非常にこれは重大な点でございまして、軽卒なるお答えに躊躇いたす次第でございまするが、基本的人権と申しまするものを憲法が保障いたしておりましても、それは人間の共同生活において保障をいたす意味でございまするから、自分の基本的人権を保障いたされますることは又他人の基本的人権をも保障することでございまするからして、大勢のものの基本的人権がおのおの保障されまするというならその基本的人権というものは、おのずから一定の限界があろうかと思つておりまする。この限界が問題になるのでございまして、羽仁さんのお言葉によりまして、これは行使が制限されるという表現にお述べになりましたが、どちらでも私は結構だと思つておりまするけれども、要するに基本的人権というものがあつて離小島の一人に保障されておるのではなくて、大勢の人間の共同生活において保障されておりまする以上は、そこにおのずから限界があろうかと思つております。その又限界にも種々ございましようが、結局その点から見まして羽仁さんの仰せになることと私のお答えとは余り違いはないのじやないかとかように思つております。
  50. 羽仁五郎

    ○羽仁五郎君 人事院総裁が最高の責任者として特に考えて頂きたいことは、日本では基本的人権というものは十分に了解されておりません。従つてこの制限ということをたやすく行い得るものだという誤つた考え方が支配しております。従つてその点において人事院総裁が特にその最高の責任として、その点について十分お考え下すつて、基本的人権というものは容易に制限できるのだという、そういう誤つた考え方が支配しておる日本において基本的人権そのものは絶対に制限できないもので、ただその使い方が場合によつて公共の福祉等によつて制限できるものだというような点を正して明らかにして頂きたい。勿論私の考えておるところにも勿論誤りがあるかも知れませんが、総裁の今後の御研究を願いたいと思います。これは重要な点でありますからお願いをして置きます。  第四の具体的な点で伺つて置きたいのは、政治的自由の人事院規則による制限というものは、すでに総裁の十分御承知のように輿論或いは学界の批判を受けておることであります。それでそうした輿論或いは学界の批判というものを総裁は十分に考慮しておられると信じます。従つて今後においてそれらの輿論或いは学界の批判というものについて、聞くべきものがあつたならばどうか適当な機会にできるだけ早く合理的な方法に御修正になるなり、或いはその他の方法をお採りになるなり、これらについては今一々申上げません。一々ここに述べませんが、そういうふうにお考えを願いたいと思いますが、如何でありましようか。
  51. 淺井清

    政府委員淺井清君) 誠に御尤もの御質疑ではございまして、御趣旨従つて十分考慮したいと思つておりまする。速記を止めて下さい。
  52. 中井光次

    委員長中井光次君) 速記を止めて下さい。    〔速記中止
  53. 中井光次

    委員長中井光次君) 速記を始めて下さい。
  54. 羽仁五郎

    ○羽仁五郎君 人事院総裁の御努力に対して私も深く感謝するものであります。  最近ヨーロツパから帰られた大内教授の所感などを伺つても、ドイツ国民の代表者がドイツの民主化について言うべきことは言つておる立派な態度について私も多く教えられたのですが、我々日本国民の代表者としても正しいことは正しいということを飽くまで言うべきことは言つて行くことが国際的な責任でもあり、今後も十分御努力を衷心からお願いをする次第であります。尚この問題に関連しまして、私は最近人事院で開かれました公平審査を傍聽いたしました。過去の日本の官僚主義下の時代に比して非常な進歩に実は心中涙をしたわけでありますが、ああいうような新らしいやり方というものが、今後健全に生長して行かれることを心から望むものであります。なかんずく当日の人事院公平委員会委員長の、委員長としての態度は非常に親切であつて、いわゆる官僚の不親切な過去のやり方に対しては、格段の進歩を示しておられて、この親切の点に私は大変感銘をしました。要するにいろいろな理屈はありますが、併し親切に、相手の気持にもなつて、そうして悩みを抱いておる人の悩みを理解してやつて行くということがなければ、あらゆる法律規則も結局その魂が入らないということになつて行くので、こういう方向で努力して頂きたいと思います。その公平審理の席上でも私は痛感したことでありますが、矢追君、或いは石井君、こういう学者の人事というものは、これは先日寺尾委員もこの委員会でおつしやいましたが、学者が国家の官吏として仕事をして行く上の苦衷——苦痛、つらさつまり学問上の学者として認められないで国家の一官吏としてしか取扱われないということの苦しみは人事院総裁が十分御了解のことだと思う。先日も申上げましたが、北里博士の伝染病研究所が文部省所管になつたときに、福澤諭吉先生門下の北里博士以下全員連袂辞職されたというような当時の事情も、先日の公聽会で傍聽しながら、私はまだ少しも解決していないんだという感じを深くしたのであります。それで、国立研究所、或いは国立の大学その他において、日本で現在学問の研究が行われておりますが、併しどうかそれが今のお話にもありましたような学問の自由、或いは研究の自由、そういう点に重点があるのである。勿論国家公務員としての資格を全然無視して差支えないと私は言つておるのではありませんが、併しそこに非常にデリケートな又深刻な問題がある。国家公務員としての性質にどこにその学者としての職分を十分に果すところの保障というものを結び付けるかということは非常にデリケートなことであるので、今後も人事院総裁がこの点を十分御研究下さいまして、絶えず進歩的な方向に進んで行かれるように心からお願いをする次第なんであります。尚その点について日本学術会議において研究公務員特例法を立法すべきであるということの総会の決議がありました。これについては先般来人事院総裁のいろいろの御努力も頂き、そうして現代がどうなつておるかも私は十分承知しておりますが、併しどうか人事院総裁の今後の御努力によつて人事院規則においてでも、この今申上げましたような立派な学者が單なる一官吏として、まだ官僚主義の多分に残つておる日本において如何に取扱われておるか、その学者達の苦しみというものを少しでも救済せられるような方向に進んで頂きたい。そういう点において、人事院規則などについて特別の考慮を拂われるということをお考えになつているかどうか、その点を伺いたいと思います。
  55. 淺井清

    政府委員淺井清君) 段々と御尤もな仰せでございまするが、研究公務員のことにつきましては十分考慮いたしたいと思います。例えば職階につきまして、その他の点につきましても十分考慮いたすつもりで、この点は先日寺尾委員へお答えを申上げた通りでございます。尚公平委員会の点についていろいろとお話がございましたが、この矢追氏の事件は非常に我々としても重要視いたしておりまする関係上、この公平委員の顔触れを考慮してやつておるつもりでございます。
  56. 羽仁五郎

    ○羽仁五郎君 最後にこの職階制の問題でありますが、数日前に参議院において公聽会が開かれましたことは総裁も御承知のところだと思います。その公聽会において述べられました意見は、主として我々参議院議員の責任でありますが、併し総裁もその報告はお聞きになつておることと存じます。その公聽会において公述人の述べられましたことの中で、特に私は、我々自身が十分その点を考慮しなければならないとこの人事委員会に訴え、同時に又総裁にも御考慮願いたいと思います点は大体三つございます。  第一は、不幸にして、いろいろな事情からでありますが、人事院乃至国家公務員法というものが、その喜ばしい目的である官僚主義の打破という点においては一般に理解されないで、反対にこの日本官僚主義を打破するために相当の実績があり力もあつた官公庁労働組合の組織を破壞したという方面においての印象が強いということは、私は人事院のためにも国家公務員法のためにも非常に残念に考えておるものであります。で、これはやはり或る意味においては一方を叩くために他方を叩いて、最初の目的を叩こうとするようなやり方というものは、私は果して成功するかどうか、これは十分考えて頂かなければならないことだと思うのですが、この問題が具体的にこの職階制において第一に現われておりますのは、この人事院職階制、或いは職階法に対して官公庁労働組合が第一に不信の感情を持つておることであります。これはやはり私は非常に大きな問題だと思います。同じ職階法にしても、これに対して、信頼を以て迎えられるか、不信を以て迎えられるかということはこの法律が実際に効果を現わす上に非常な違いがある。第一の問題について、お答えになりましたように、合理的にして能率的な官庁行政ということの前提條件は、やはり信頼です。人事院に対するその信頼がなければ、結局目的とする合理的にして能率的な行政ということはできないと思うのです。同じものですけれども、やはり常に信頼の感情が欠けておる場合には、その能率も挙らないし、合理的にも行かない、結局サボタージユ状態というものが続いてしまうのじやないか、これがこの職階法に対する公聽会において私の痛感した第一の問題であります。この信頼を回復せられる努力を是非して頂きたい。そういう意味においては、只今問題になつております給與ベース改訂の問題のごときも、非常に重大な政治的な意義を持つておる。普通に理解されておるような政治的意義でないので、もつと根本的には、人事院に対する一般の信頼というものを回復なさるかどうか、従つてこの人事院に対する信頼というものが前提とならなければ、あらゆる合理的、能率的な人事行政の実現は不可能である。こういう点も十分考慮して頂きたいと考える。この点が第一であります。総裁人事院或いは国家公務員法というものが、今申上げましたような意味において、遺憾ながら一般官公庁に働いておられる諸君の十分の信頼を裏切られておるということがあつたことは御自覚になり、又十分御苦衷をお察しするわけでありますが、そういう意味において、信頼を回復するために、今後格別の御努力を願いたいと思う。そういう意味においても、給與ベースの改訂、或いは結局私はこの官公庁労働組合の最大の問題が給與の問題だけだとは思つておりませんが、併しその問題が解決しないと、他の問題についても十分信頼を以て考えられることがむずかしいのではないか、この点が第一であります。それから第二に私の痛感いたしましたことは、やはりこの形式を別に私は問うものではありませんが、官公庁において働いておられる諸君の問題は、できるならばやはりその官公庁で働いておられる諸君の労働組合と絶えず相談せられ、協議せられる、その形式を私は言つているのじやありません、そうしてその解決に到達されるということが必要ではないか。この点においては、勿論人事院総裁或いは人事院においては、十分御努力になつているとは思いますが、併し民間においてなされているだけの努力は、少くともやはり人事院においてもして頂きたいと、そういうふうに考えるのであります。  それから最後に、第三には、いわゆる人事院が第三的なものになる、いわゆる新官僚の牙城となるというような非難もしばしば受け、或いは国家公務員法なり、人事院規則なり、今度の職階法なりにおいて、いわゆる委任が過大である、或る意味においては、憲法違反であるというような非難が起ることも、やはりどういう点に具体的な事情があるかといえば、これも人事院総裁の非常な御苦心のおありになるところだと思いますけれども、要するに官公庁で働いておる人達が、安心して仕事をやれるようになかなかならないという点にあるのだと思うのであります。それでこの点については、日本のいわゆる経済的な現状その他いろいろな問題がありますが、併しこの点は、二つの面から努力することができる。一つは、絶えずその人々と協議することである。他の一つは、できるだけ救済の方法を確立して置くということであると思います。従つて今度の職階法の中にも、救済の規定がないということも、公述人の方も指摘されてありましたが、救済の方法として、さつき私が非常に敬意を表した人事院公平委員会の制度そのものについても、果して人事院の中に公平委員会があることが理想であろうか。もつとはつきりと第三者の、独立的な、いわゆるデスビユート・コートというものは……本当に公平を期する第三の立場に立たれる方がいいのではないか。やはり人事院が独立性を持つているとはいえ、これはやはり雇主の立場に立たれているので、雇主の立場にも立たない、又雇われる者の立場にも立たない、独立の立場に立たれるのがいいのではないか。これはあらゆる点において、国家公務員法人事院規則職階法その他で、今申上げた二つの点に、形式を私は問わないが、絶えずこういう規則或いは法律、こういうものの適用を受ける人々と十分協議するような措置をとられることをお忘れにならないでいて貰いたいということと、最後に、不満が起つて、不公平が起つた場合に、それを救済する措置を忘れないで、十分これを処置するということが望ましい。以上申上げた三点が、特にこの公述人の公述を伺つておりながら感じた点であります。これらはこの人事委員会においても、十分問題にせられることと考えますが、人事院総裁においても、十分これらの点についてお考え願つて置きたいと思います。
  57. 淺井清

    政府委員淺井清君) 段々と御親切なお言葉がございましたが、第一の点につきましては、人事院といたしまして、従来の行動が、第一に官庁の組合側に向けられておつて、いわゆるビユロクラシーの方面に向いていなかつたという点について信頼が欠けていると、このような御批判もありましたが、通常そのようなこともあろうかと思つております。併しながらこれはいろいろと、ものには順序というものもあり、いろいろな情勢もございますので、ああいうふうになつて参りましたが、私共は、最前羽仁さんにお答えをいたしましたように、そのようなビユウロクラシーの改革ということについては、決して怠つておるものではありません。殊に最近、近く施行いたしますところの国家公務員法附則九條の試験というものは、その意味において、我々としては非常に重大なものであると考えております。又ベースの勧告ということについては、近き将来において必ず勧告を国会及び内閣に提出いたしまする用意のあることをここに重ねて申上げたいと思つております。  第二の点の、官公労その他との十分な意思の疏通ということには、誠に御尤もでございます。従来これがうまく参りませんのは、その官公労の一部におきまして、非常に違つた考えの人々がおりまして、到底話合いができなかつたということもお認めを願いたいと思つております。併しこれは、今後非常によく改善されて行くし、又そのようにしなければならないと、かように思つております。  第三の点は、この人事院が、いわゆる第四官僚にならないように気をつけろというお示しでございましたが、誠に御尤ものことでありまして、我々といたしましては、そのようなことにならないように、十分自省をいたしまして、やつて行きたいと、かように思つつております。それから最後に、公平委員会というものを全然独立のものにいたしまするかどうかということは、これは非常に根本的な問題でございますが、私共といたしましては、人事院のような独立性を持つておりまする機関においてこれを取扱うことは、私はさまで不都合はなかろうかと、かように思つている次第でございます。
  58. 羽仁五郎

    ○羽仁五郎君 今この異議申立、或いは審査請求など、この救済の措置についてのお考えを伺うことができなかつたのですが、その点についてはどうですか。
  59. 淺井清

    政府委員淺井清君) お示しの点は、この職階に関する救済という、そういう意味でございましようかと思うんですが……。
  60. 羽仁五郎

    ○羽仁五郎君 その場合に……。
  61. 淺井清

    政府委員淺井清君) はあ、私はこれは必要はないんじやないかと思つておるのでございまするが、どのような場合にこの職階制の問題についてそういう必要が出て参りまするか、若し国家公務員法規定によつて救済し得るようなところが出て参りますれば、例えば不利益な処分というような問題になつて参りますれば、それは当然国家公務員法規定が働いて来るのだ、かように考えております。
  62. 羽仁五郎

    ○羽仁五郎君 尚先日の公述人の中で立教大学教授日本労務研究会常務理事大内經雄君の御意見は可なりよくまとまつておりましたし、又民間における職階制と言いますか、そういうものの研究の上からもいろいろな御意見が述べられておりましたので、それらを十分にこの委員会が尊重することは勿論ですが、人事院においても参考にせられたいというふうに希望するものであります。私人事委員として微力のために十分職務を盡すことができなかつたのでありますが、今後もこの日本の人事行政を官僚主義から解放して、合理的な人事行政を確立するということは非常に重大な問題でありますので、且つ又淺井さんのような日本において最も適任の方を人事院総裁として持つているので、どうか我々も今後も十分努力して行くつもりでありますが、淺井人事院総裁には特に自重せられ、そうして飽くまで節操を以て鬪つて行つて頂きたいと衷心からお願いをする次第であります。私自身に対していつも皆さんから指導して頂いたことを感謝する次第であります。
  63. 木下源吾

    木下源吾君 私は今の羽仁さんが言われました救済ということですが、やはり不当な格付などだつたらそういう必要があるというように考えられるのですが、その点はどうですか。
  64. 岡部史郎

    政府委員(岡部史郎君) 不当な格付と申しましても、格付の場合におきましては、これは国家公務員法にいう不利益な処分とは職員に対してはならんじやなかろうかと、こう思うのでございます。格付と申しまするのは、人事院の專門家がその職務を分析いたしまして、これはこういう職務だからこれは何級に当嵌めるということになるわけでありまして、百万近い官職をそれぞれの職級に当嵌めます場合におきまして、これはそういう職務の内容に基きまして格付を行うということでありまするから、今申しました通り個々の職員にとりましては不利益な処分ではない、従つて不利益処分としてこれを訴えることは格付実施を不当に阻害することになりはしないかという考えから国家公務員法もでき上つておるわけであります。国家公務員法の第八十一條の三号か四号にございましたが、格付によつて降給又は降任等になつた場合の職員はこれは不利益処分の訴えをすることができないと書いてありますが、その趣旨も併せて考えて参りますると、格付によつてそれが自分が不満であると言つて不利益処分のついて審査の請求はできないものと解釈しております。
  65. 赤松常子

    赤松常子君 この間の公聽会を拜聽いたしまして、非常に教えられることもございましたが、結局はこれが実施される対象の人々が本当に理解と納得の上に実施されなければならないということを痛感いたすのでございますが、人事院といたしましてそういう普及徹底と申しましようか、特によくこれが皆様に理解されるようにどういうふうな方法をお考えでございましようか。今どういうふうにそういう措置をとつていらつしやるでしようか。
  66. 瀧本忠男

    政府委員(瀧本忠男君) 只今お話でございまするが、公聽会等で述べられております実情を聞いておりますと、我々の作業の状況というものを余り詳しく御存じない向きが非常に多いのではないかというふうに考えております。それで実は我々の方の作業の状況は、先程総裁からお話がございましたように、実は人事院だけで勝手にやるわけではないのでございまして、これは関係のありまする官庁と十分連絡協議してやつておるのであります。それで組合というような向きに対しまして直接相談しておるということはないのでございますけれども、そういう作業に従事しておられまする個々の人の意見を十分聞きましてやつておる次第であります。そういうわけでございまするから、現在すべてのものが作業が完了しておるわけでない、途中の状況にございます。今後におきまして尚十分我々の方で作りましたものはこれを提出するなり、いろいろな方法によりまして意見を伺うということをいたしまして、そうして十分理解のつきましたところでいよいよ正式なものに決定して行きたい、こういうふうに考えておる次第であります。尚一般的に職階制度そのものにつきまして一般の認識が薄いということもございます。そうして職階制度が非常に耳新らしい言葉でありまするし、従来余りなじんでおらないという点がございまして、そういうことも又職階制度に対しまして十分な理解が持つて頂けないというゆえんだろうというふうに考えますが、これは單に政府職員のみならず一般の人に対してもそういうことの理解をして貰う必要がある。そういうふうに考えておりまするので、今後いよいよ弘報活動を盛んにいたしまして、そうして技術的な職階制度というものを十分理解して頂こうというふうに考えております。尚一般の政府職員の方につきましては、それよりも一層進みました立入りました講演会なり或いは研修というようなことによりまして理解をして頂くということをいたそうと思つております。尚お手許に昨日差出しましたパンフレットというものは我々の方で約十万部ばかり印刷しております。これは割に職階制度の全貌を概括的によく伝えておると思つておりますが、こういうものを一般に配付いたしまして理解を深めたいというふうに考えております。
  67. 赤松常子

    赤松常子君 皆様によく徹底していなかつたということを聞きまして、今その理由を伺つたのでありますが、個々の人々にとおつしやつておりますけれども、やはり個々におつしやつても非常に対象の数が多いわけでございますから、なかなか徹底し難いと思うのですが、そういう場合にやはり労働組合の教育部だとか、文化部だとかというものとの御協力は御考慮なさつていらつしやいませんでしようか。
  68. 瀧本忠男

    政府委員(瀧本忠男君) 我々といたしましては、只今も申上げましたように、職階制というものが非常に技術的なものである、何ら作僞を加えないものであるというふうな信念を持ちまして、又事実その通りございまするが、やつておる次第であります。従いまして我々がやつて参りまする過程の一番大きな問題は、実は只今のところ分類という問題、この分類は事実を正確にそのまま十分把握するということが一番大切な次第でございまするから、そういう意味におきましては九十万の官職を全部虱潰しにやるということは勿論不可能でございまするけれども、今我々はサンプリング的にやつておりまして、それでその研究いたしておりまする当該官職につきましては十分精細な記述を求め、尚且つ又その官職につきまして十分なる知識を得るように、当該官職に就いておられまする人とも協力いたし、尚その官職を廻る関係官職の方にもいろいろ資料の御提供を願つておるという状況でございます。尚労働組合方面から要求がございまする場合には、我々の方の資料を提供いたしておりまして、そういう場合におきましては協力いたしておるのでございます。
  69. 羽仁五郎

    ○羽仁五郎君 先日の公聽会で受けました印象でも、しばしば人事院側から御説明になつておる職階制は人によつてなれさるのではなくして、その職務の種類によつてなされるのだということはよく分つておりますが、併し実際問題としてはそこがなかなか割切れたような割切れないようなところがあると思うのです。それでそういう意味で、例えば全逓が労働科学研究所と協同して労務に関する調査をやつたのですが、その調査など少しも考慮されていないということの御意見がありましたが、それは或いはその調査は主として給與関係関係する問題であつて職階制関係する調査ではないかも知れませんが、併しやはりそういう調査があるのであれば、そういうものも参考にされるという態度を取つて頂いた方がよいのじやないかと思いますが、その点何と言いますか、余り一本調子に、例えば人間は苦情を言うかも知れないが、職級が苦情をいうことはあり得ないのだという御答弁は、私は取らないで、それは理屈から言えばそうでしようが、併しながら職級が苦情を言うこともあり得るのですよ。それはつまり若しその職級が何らかの、人間のやることですから何らかの間違いで、それで妥当な職級に組み入れられていなかつた場合には、そこに格付けられた職級に当つておる人間は、やはり愉快には仕事はできないと思うのです。それで人間は不平を言うかも知れないが、職級は不平を言う筈はない。従つて職階法の中に救済の措置は必要はないというようにあつさりお考えにならないで、職階法職階法であるが、同時に日本に新らしく職階制というものを布いて行く上には起り得るいろいろなグリイヴアンスというものがあると思います。そういうグリイヴアンスをできるだけ取上げて行くという方向に行かれるか、そういうものは取上げないという方向に行かれるかでは、やはり何しろ真空状態の中に一つの客観的なものを実行して行くのではないのですから、今までの積弊の中でやつて行くのですから、その点はとかく下の方の不平は取上げられないという形において新らしい職階制が施行されるということを十分私はお考え願つて行きたいと思います。それは併し技術的にはどういうことになるかということは又御研究を願い、我々としても研究しなければなりません。それからちよつと失念しましたが、さつき総裁お答えの中に、従来官公庁労働組合等と十分の協調がなし得なかつたのは、従来官公庁労働組合の一部の中には考え方が違う人達がおつたということを言われたのでありますが、これはどうも余り私は納得ができないのです。私共は同じ人間である限りやはり了解の途はあると思います。その立場々々が違うということを相互に尊敬しながら話合つて行けるのだというふうに、まあデスアグリーをアグリーする方法を発見する、それが政治でもあり、亦我々の智慧でもある。どうかそういう点について、先程の総裁のお言葉を別に荒立てる意味で申上げるのではないのですけれども、そういうふうな方向に行かれることを総裁のような方に対して私は期待したい。もつとスタンダードを高くお持ちになつて、実際にデスアグリーをアグリーさせるという叡智をお持ちになつておるというふうに期待して、さつきのそのお言葉は、そのまま総裁のお言葉として頂戴しないということを申上げて置きますが、今のその救済の方向についても、赤松委員も先日から繰返しおつしやつておられますのは、やはりその理由があるからなんです。その理由形式的にないということだけでは私は済まないのじやらないかと思う。それでさつきの木下委員の御質問の格付等に関する場合についても、やはり成るベく公平な審査をやらないという方向に行かないで、随分御面倒でしようし、又その事務の繁雑は大変なことだと思いますが、併しそれをやつて頂く方が、この人事行政が近代的にスムースになつて行くのじやないかというふうに考えるのです。
  70. 岡部史郎

    政府委員(岡部史郎君) ちよつと今の赤松委員及び木下委員の御質問に追加してお答え申上げたいと思うのでありますが、格付の決定が極く法律的に申上げますと、国家公務員法の九十二條に規定いたしまする審査の請求に該当するかというお尋ねに対しましては、一応この法律の建前においては該当しないと申上げるより外なかろうかと思うのでありますが、私共の気持といたしましては、やはり今羽仁委員から更にお話がありました通りのことは、誠にその通りに存ずるわけでありまして、殊に問題になりまするのは、給與に関してだろうと思うのであります。給與の決定、その実行に関しまして、給與の決定について不服がありまする場合においては、これは勿論審査の請求ができることに相成つております。又格付その他につきましても、広くそういうことについて苦情を言つたり何かする途がないかと申しますると、これは一般的な事項につきましては、国家公務員法の八十六條にもございますわけで、この八十六條に基きまして、いろいろそういう苦情を言う途はあるわけでございます。この苦情につきましては人事院の世話課というものが扱つておりまするが、この苦情に対しまして、人事院の当局といたしましては、その格付の適当であるかどうかということにつきまして絶えず調査をし、格付の改訂を行わなければならないということは、この職階法にも謳つてあります通りでありまして、絶えず適正な格付が行われるように、そういうふうな職員の不満、意向をよく取入れてやるようにはする所存でございますから、附加えて申上げます。
  71. 木下源吾

    木下源吾君 私は、今度次庁とかそういう上の人達の試験をするということでありますが、この試験について職階制法律ができなくても何ら矛盾しないのだという根拠を一つ説明を願いたい。ただ附則九條によつて、この試験をやるのだというだけで、或いは職階法ができなくても何ら矛盾はない、やれるのだこういうふうにこの間の部長からお話があつたのですが、私共はまだはつきりしないのです。その点一つ総裁から承わりたいと思います。
  72. 中井光次

    委員長中井光次君) 今公務員附則第九條の試験の問題を御質問を相成りましたが、実は先程から参議院の赤木正雄君がその問題に関連して御質問を望んでおられるので、後程許してもよろしうございますね。    〔「賛成」と呼ぶ者あり〕
  73. 木下源吾

    木下源吾君 私が今そのことをお尋ねするのは、二十九條の根本的な矛盾をやはり我々の考え方から行くと解明したい、それで一つお尋ねするのです。
  74. 淺井清

    政府委員淺井清君) この附則九條の試験は、職階制とは全く関係がないのでございまして、現職者が適任であるかどうかをつまり審査をするものでございますからして、職階制とは関係がございません。現在行うわけでございます。
  75. 中井光次

    委員長中井光次君) 速記を止めて下さい。    〔速記中止
  76. 中井光次

    委員長中井光次君) 速記を始めて下さい。
  77. 木下源吾

    木下源吾君 只今の御説明でその精神のあるところは分りますが、併し実際に行う上においては、やはり形式が整わなければならんと思う。そこでこの試験の形式は一般の試験の資格試験の形式をふんでいるのではないか、その点を一つ……。
  78. 淺井清

    政府委員淺井清君) お示し通り公開競争試験と、こういうことになつております。
  79. 木下源吾

    木下源吾君 そこで私は矛盾がないか。こういうことをお尋ねしておる。一般公開試験であるならば職階制法律によつて、それを基礎として、それを根拠として試験をすべきではないか、こういうようにも考えられます。今度の場合はここで個々人としてやるのですな、特定な試験は……。然るに一般の競争試験をやるという、この形式はどうもおかしいと思うのです。
  80. 淺井清

    政府委員淺井清君) 職階制は個々の官職を組立ることでございまするからして、これとは関係がないのでございまして、これは現在の制度の次官、局長、課長、これに最も適任者を得ると、こういう意味から来ているのでございます。それから一般公開競争試験というものは、職階制を布かなければ行えないというと、こういうふうには我々は考えていないのでございまして、職階制とは、これは全然関係ないように思つております。現に只今つておりまする試験などは一般公開競争試験でやつておりまするが、これはまだ現在では職階制はないのでございまするけれども、一般公開競争試験でやつておるわけでございまするから、職階制を布かなければ、一般公開競争試験ができないということにはなるまいと思つておるのです。
  81. 木下源吾

    木下源吾君 でもこの試験の公告を見ますというと「この試験の対象となる官職をその職務内容の類似性その他の要素により次の職類に区分します。」とありまして、六十種類挙げております。こういうことは職階制のいわゆる基礎がなければできないのじやないか。
  82. 淺井清

    政府委員淺井清君) この分類は、只今でも職階制でなくても、この給與法等において十五級の分類をとつておりまするし、それから職階制と離れて現行制度でも分類はあるわけでございまするから、これはただ試験の目的上こういうふうに分けてありまして、職階制がなければこういうことはできないということにはならないだろうと思つております。
  83. 木下源吾

    木下源吾君 そこでその給與実施法における分類ですね、これが計画であるのだ、こういうことでありますが、計画はですね、同じ計画であるならば、やはりこれは国会承認を得なければならないのじやないか。
  84. 淺井清

    政府委員淺井清君) いや、これは職階制計画では……。今試験のために分けておりまするのは、職階制計画ではないのであります。これは試験のためにやつたものに過ぎないのでございまするから、二十九條によつて国会承認を得なければならないと、そういうふうには考えておりません。
  85. 中井光次

    委員長中井光次君) 赤木さんに許してよろしゆうございましようか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  86. 赤木正雄

    ○委員外議員(赤木正雄君) 委員長及び委員各位のお許しを得まして、少しく試験関係についてお尋ねいたします。附則第九條による試験公告、この中の特に私のお尋ねしたいのは二十三頁にあります建設省の河川局砂防課長のことであります。この職類の問題であります。御承知の通りに今治水問題は大変やかましいものである、植林と砂防と河川工事とこの三つが集まつて治水はできるのであります。そこで砂防工事は一体どういう人がこれに與かつておるか、その問題なんです。この職類を見ますと、ここに土木と書いてあります。実際土木の人がこれをやつておるが、御承知の通りに土木工学では砂防に関する講義は一時間か二時間しかない。砂防に関する講義は東京帝国大学では農学部の林学科で二ケ年やつております。それから尚それではいかないというので、これは御承知の通り砂防はアメリカにはありません。イギリスにもございません。主にアルプス山系にありますから、ドイツとかスイスとかオーストリヤとか、あすこらでボーデン・クルチユール・ホホ・シユーレの中で、やはりどんな不便な所に行つても仕事をなし得るというそういう素質の人に教えておるのでありまして、土木的の学を與えるというのはボーデン・クルチユール・ホホ・シユーレで砂防をやつておるのであります。それに倣いまして日本でも京都大学で大正十五年実は私もそれに関係したのでありますが、農学部を作るときに農林工学科というのを作つた。これを作りましてどういう不便な所でも仕事し得るという素質の人を先ず入れて、而も授業は土木に非常に関係しますから土木に関係するものは特に工学部に行つて講義を開いたのであります。そこで工学科の必要な講義を聞いて、而も林業、そういうものを聞いて、農林工学科で砂防を二ケ年專修してやつておる。九州の大学でもそうです。大体そういう組織です。然るにここの試験の仕組は土木と出ておる。これは非常に間違つておりはせんか。尤も何分職類は非常に少いのでありますからして、これは十分お分けになつていないせいか、こうなつたかと思いますが、こういうふうにいたしますと、つまり土木をやつた人が段々段々と課長になる。実際砂防を專攻した人は何年経つても課長にできない。非常に実際に反しておる。こういう考えです。尚これを見ますと、例えて言いますと九十五頁の任用資格要件、この中の一般資格の中の甲のところに、やはり官職の砂防課長に適用しまして「最近十年間に土木に関する一般経験、但し旧制大学において土木に関する学科を修め卒業したものは、この教育を一年の経験とみなす。」土木はこれは誰もやつてはしない、実際は皆林学でやつているのです。それをこういうふうに間違つたこととなつておりますから、これはどうじてもうまく行かない。砂防に関する限り、そういうふうであります。むしろこれはできるならば農林工学、これは本当だと私は思うのです。そういうふうな職類と言いますか、それをお作りなさつたならば一番適当しやせんかと思います。今日の情勢でそうなさらん以上は例えて申しますと、少しもその砂防に経験のない者が今日砂防課長になつて、それが実際に当りますから、事実申しますと仕事が悪い。尚私は現場において工学を卒業した業を使つたことがありますが、併しその学士は、こんな我々は山奥に来て、こんなことをやろうとは思わなかつた。こんなことをやるならば何を学校をやるかと言つて、辞めて下に去つた人もあります。そういう実情もありますから、これは成るべく実際に適するように一つ改めて頂きたい。こういうことを申上げます。
  87. 淺井清

    政府委員淺井清君) 赤木さんは多年そちらの方に御関係でございまするから、そこにお気付きになるのは御尤もだと思います。それで只今一応こちらから説明させて御了承願いたいと思います。又そういう点について段々と御注意もございますれば、私共としては不便の点を改めることはちつとも躊躇いたしませんが、一応説明いたさせます。
  88. 岡部史郎

    政府委員(岡部史郎君) お答え申上げますが、もともとこれは職階制でも完全にできておりますれば、一層この分類が正確になつたかと思うのでありまするが、又この試験の性質上職階制による分類によらないで、極く大雑把な分類をいたしております関係上、赤木さんの今のような御不満が出て来るのは当然かと思います。他の職類の分け方についても御不満の点が非常に多うかろうと存ずるのであります。ただ建設省の仕事といたしましては、一般行政職でありますとか人事職でありますとか、そういう特別のものを除きましては、建設省プロパーの仕事は、建設と土木と建築に大体三分類してよかろうという、これは人事院だけの考えでございませんで、大体のところを建設省の首脳部とも打合をして決定したように聞いております。而も大体その土木に分ける、土木というものは私共素人でございまするが、現在におきまして單に土木というのがこれ又広過ぎまして、科学的とは言えないだろうと存ずるのでありますが、この試験の性質上から見まして、こういうものについての基礎知識を試験するという点においては、或いはこのような漠然とした不合理な分け方でも一応間に合いはせんかという考えもあつたろうかと思うのであります。  それからこのそれぞれの職類及び段階につきましての御指摘のような資格要件につきましても、いろいろ不都合な点が、殊に各省から見まして不都合な点が出て来ておるようであります。で、この試験を実施するにつきましては、或る程度まで各省で打合せましたが、試験の性質上十分打合せができなかつた。併しやつて見て、どうしてもこれは試験を円満に遂行するためには不自由な、不合理な点が甚だしいというものにつきましては、この試験公告の訂正をやることに吝かでないのでありまして、各省からのお打合せに基きまして、もう大体お打合せが完了したかと思いますが、可なり訂正を今いたす手続を取つております。で、建設省からも大分お申出がございまして、大体建設省内部からの御要求は、御希望に応ずるように取計らつたかと思いまするので、丁度赤木さんの今のお尋ねの点が、全部満足しておるかどうか知りませんが、今のところちよつと手許にございませんですが、可なり建設省からの御要求は、御尤もなものとして取入れたように私聞いております。ただこの職類を殖やしたかどうかにつきましては、今はつきり覚えておりませんですが、今職類を殖やすことは或いは困難かとも思つておりますが、大体そういうふうになつておりますから御了承願いたいと思います。
  89. 中井光次

    委員長中井光次君) 速記を止めて下さい。    〔速記中止
  90. 中井光次

    委員長中井光次君) 速記を始めて下さい。
  91. 赤木正雄

    ○委員外議員(赤木正雄君) この九十五頁の任用資格要件の特別資格のところに、「河川に関する業務の経験」とあります。河川と砂防とは大分性質が違うのです。砂防課長に対して河川の経験を示して、砂防に関する経験を少しも書いてない。これも私は非常に間違つていないかと思う。そういう実際にそぐわない点がありますから私の意のあるところをもう少し……或いは建設省に本当にそれを真相を言うものがあるかどうか、よくそこを察して下さつて正しい意見を言つて下さることを希望いたします。
  92. 中井光次

    委員長中井光次君) 本日はこれにて……。
  93. 羽仁五郎

    ○羽仁五郎君 今の試験の問題についてですが、私実は先日偶然の機会から東大の横田喜三郎君がこの今度の試験についてどういう考えを持つておるかを聞く機会があつたのでありますが、率直に言えば非常に無理解、その結果人事院に向つてお願いして置きたいことは試験の意表をやはりもう少い一般に啓蒙する必要をお認めにならないかどうか、殊に新聞紙上なんかでも御覽になつたように頓智問答をやるとか、二十の扉のようなものだとか言つております。率直に言つてただ單に新聞紙上でそういうことを言つておるばかりではない、横田君のような相当な識者もそういう気持を抱いておるからマルテプライ・チヨイスのような意義についても十分に意義を理解しておらんように思いますので、折角さつき述べられましたような、或る意味において革命的なお仕事をなさるのですから、そのお集事の意味を一般にもよく理解されて、そうして実際の所期の目的をお挙げになるようにもう少し手を盡して頂くことが至当ではないかと思います。そうして横田君と話した結果として、私の深い印象を得たのは従来の官庁のいわゆる制度にどれ程腐敗があるかということがまだ十分に一般に認識されていない。これは普通雑談なんかのときに酷いものだそうだねということは誰も言いますが、今日の東京大学中においても誰でも世間では誰の息子さんだ、誰の因縁であるとかいう人が教授、助教授になつておる。学問上のメリツトによつて教授、助教授に任命されてはいけないということを雑談なんかのときに言うのであります。單に偶然に起つていないので、制度上そういうことが腐敗があるのじやないか、現に横田君も法学部でも法学部の中に余り適任でない人もいないことはないという、それではそういうのはどうするのだと言つたら処置はないという。今は試験をしないで、或る上の人がいい場合には任命したらいいじやないかといういわゆる情実因縁派閥ということになるので、そういう意味で今の現在の日本の学校における腐敗というものを指摘して、そうして一般国民に警告を與えてこういうことでいいかどうか。まあ先日寺尾委員の御意見を伺つたところでは、今日課長、局長の中に無能な人がおるとは信じないという非常に同情的なお言葉があつたのでありますが、併し地面から考えるとスタンダードの問題でありますが、寺尾委員の同情的な御見解を或いは裏切つておるような事実もないでもないし、要するに日本の現在の官庁における腐敗というものをもう少と的確にお示しになつて、これを打破するためにメリツト・システムによつて、そうしてその意味におして能力が実際にある人がその職に就いて国民の租税、又納税者に対して国民に対して百%の能率を挙げて行くということを期待して行くという点を、もう少し啓蒙して頂きたいと思います。そうでないと頓智問答だとか、二十の扉をするのだというようなことで試験を行うということは、折角の高邁な目的を揚げられておることだから、十分に実現されるものと思うので、その点をお願いしたいと思います。一つは現在の官庁における腐敗を指摘して、もう一つはやはり試験の目的、いわゆるマルテプライ・チヨイスそれが決して單に今までの高等文官試験や、今までの筆記試験というものでなしに、その人の能力を、可なり合理的にできるものであるとか、知識を持つておるに止まらず、その知識をどの程度の実行に移すことができるか、或いはいろいろな人の意見を聞くことができるか、そういうような意味においてその人の能力を試験することができる新らしい試験方法である。それから第三に問題の作製の上にやはり最初は非常に大切ですから立派な問題をすべて作つて頂きたい。現在学校なんかで行われておるマルテプライ・チヨイスの問題は不当なものが多い、依然として暗記に傾いておるようなものだ多いのですから、どうかそういう点試験問題の作製の上にも十分な関心を拂つて頂きたい。その第一は腐敗が如何に甚だしいか、それが国民に如何に損害を與えておるかということの認識を明確に披瀝して頂きたい。第二には試験が従来のごとき多面的な資格を試験し得る新らしい方法のものであるということ。第三には、その試験問題の作製に注意を拂つて頂きたい。この三つのことをお願いして頂きたいと思います。
  94. 中井光次

    委員長中井光次君) 本日はこれにて閉会いたします。明日は午後一時から開会いたしますからよろしくお願いいたします。    午後四時十七分散会  出席者は左の通り。    委員長     中井 光次君    理事            木下 源吾君            小串 清一君            寺尾  博君    委員            赤松 常子君            羽仁 五郎君            岩男 仁藏君   委員外議員            赤木 正雄君   政府委員    人事院総裁   淺井  清君    人事院事務官    (法制局長)  岡部 史郎君    人事院事務官    (給與局長)  瀧本 忠男君