○
政府委員(
木内信胤君) 一―三から始めまして、
外貨予算というものがどういう形のものであるか、
雛形でもせめて示せという御註文でありました。
数字を当嵌めた
雛形というものはまだ作れないのでありますが、それがどんな
相貌を呈するであろうかということ、これは実は
関係審議会において決まることでありまして、私がここで申上げ得ることではないのでありますが、まあ大体こういうことになるのであろうという
意味においてお聽取り願いたいと思うのであります。
これは
出発点となります
数字、即ち現在の
手持外貨、この
数字が勿論
基礎となるのでありますが、これは実は私共は十一月一日から事務の一部を担当しております
関係上、これの
数字を見る機会が與えられておりました。その
意味で或る
程度知つておりますが、これを知
つておる
範囲で申上げることは実は差控えさして頂きたいと思いますのは、これは
司令部からまだこの
発表をしてもいいという正式の
許しを得てないことが
一つ。それからいろいろ
数字の中に非常に複雑なものでありますが、疑問の点がありますから、私共にも少し
数字の
意味が分らない点があるというのが
一つ、それからこれが例えば何千万あると言いましても、これに対する
負債を引いて見なければ
本当の
金額とは言えないのであります。その
負債の方がこれ又いろいろ複雑しておりますので、まだ分り得ない点があります。この
負債を引き損じて、例えば一億
ドルあるのだということを
言つた場合に、五千万
負債があ
つたら非常に
間違つた印象を国民に與える。こうなります
関係上、実はまだ公開の席で申上げてはどうかと思うのであります。殊にこの
基礎数字は、いわば
日本の国家としての懐の中を示すことでありますから、この懐の中を示すことは場合によ
つてはいいことでありましようが、場合によ
つては国際的に
国際信用の上から
言つても問題もありますので、どういうふうにこれを
発表するかは実は
政府において
最高方針として決定すべきことだと考えます。その
意味からも私はここで私が知
つているから言えとおつしやられてもこれはどうかと思います。後で若し何でしたら
祕密会でも開いて頂きまして申上げてもいいかと思います。それは後のことにいたしまして、
基礎数字のことについては
状況はそうであります。これが如何に複雑であるかということの一端として申上げますが、
ドルと
ポンドに分れておりますが、
ドルについては
本当の
現金勘定、これは
司令部の
許可において働いております
アメリカ銀行に
勘定があるのでありますが、これは間違いない
現金であります。その他に近頃
エスクロという妙な
取引方法があります。
協定の結果
一つの
勘定に売
つたならば
勘定にクレジツトを設け、それを
勘定に記帳して置いて、それを使う場合にはそれを落すという
方法があります。
エスクロは一本でありますが、その
勘定は七本に分れております。その他例の
オープン勘定というもの、相殺してやるものは現在二十四ケ国に
なつたと思います。
オープン・
アカウントでや
つておりますが、それが又例えば朝鮮のごときは五本に分れております。官庁の数においては確か三十本になります。それが
ドルについての問題であります。
ポンドについては三つに分れておりますが、
エスクロはございません。
オープン・
アカウントは十四ケ国、本数にして十四本こういうのが
状況なんであります。これらを合計したものが
ドル資金と、こうなるわけであります。そこで先程申しましたような
事情によ
つて、細かい
数字は或るべく遠慮さして頂きたいのですが、先ず大体のことを申しますと、我々の知
つている
範囲でいろいろ
プラス、
マイナスを考えて見まして、先ず一月から使える金と思
つて考えていいものが八千万
ドルは下らないだろうと思
つております。併し先程申しました
事情によ
つて余り世間に伝えて欲しくない
数字でありますが、大体の
感じを得るためにこの
数字だけ申上げて置きます。
ドルの
エスクロ勘定はこれも若干一千万
ドルに近い
取り分であります。
オープン・
アカウントはそのうち三十本というものはこれは
アカウント別取り分で、全部
取り分であるということは言えないのであります。
マイナスとな
つているものと、
プラスにな
つているものとがありますが、
プラスの方が遥かに数が多く貸す
金額も多いのであります。これも数千万
ドルに上
つております。
従つてこれは一見して相当多額な
ドル資金というものが蓄積されて来たのであります。
為替勘定、それが
日本の手に渡りまするについて、
司令部がどういうふうに配慮して呉れたのかどうか存じませんが、割合に潤沢な
資金によ
つてスタートするという
條件に恵まれておるものと考えていいのであります。今度はそれに反しまして、
キャッシュ勘定は実はまあ
マイナスになりつつあると存じます。これは例の六月末に満了いたしました第一年の
ポンド域との
協定において、
日本は相当の貸にな
つてしま
つた。貸したまま
ポンドが
切下にな
つてしま
つたということが
一つの問題にな
つていたのでありますが、その後
ポンド域からの
輸入が非常に進行しました結果、今は若干
マイナスになるのではないか。併しこれは
マイナスになりましても、
ポンドを扱
つて呉れております
英系三行がそれぞれ或る
程度の
国際信用を與えるということをすでに承知しておりますから、その
條件で実は彼らは
日本国に来て仕事をすることが許されておるわけでありますが、それが相当の
金額、千五百万
ポンドだと思いますかに達します。
マイナスにな
つても当初困ることはないわけであります。
ポンドの
オープン・
アカウントは
ポンドとお考えにな
つてもいいと思います。これが
外貨予算を組んでスタートするについての
出発点となる金の
状況であります。
そこで
外貨予算というものはどういう立場になるか。その雛型らしきものを申上げますために、その組み方についてどういう考を持
つておるかということを申上げますが、第一は
年間計画、先程からその
発表を
許して欲しいと
司令部に申込んで、まだ
許しが得られないために、その
数字は遺憾ながら申上げられないと先程
政府委員から申上げました
年間計画でありますが、これを組むことによりまして、
日本が不可欠とする物資の数量及び
金額というものが見積られて、それによ
つてアメリカの
援助というものが決定する。こういう段階になるわけであります。ですから、この
年間計画は
援助懇請のためにも実は不可欠のものである。現在はすでに七月から来年の六月に至る
年間計画を持
つておりますから、大きな
基礎というものはそれによ
つてはつきりしておるわけです。この
年間計画に基いて、その遂行のための一、二月
予算、
四半期の
予算、こういう段取になるわけでありますが、これは
年間計画がどうであるからとい
つて、それに
数字的にきちつとその通りやらなければならんという性質のものではない。事、
貿易でありますから、
輸出が捗るならば
輸入も
年間計画を超過することは一向
差支ない。即ち多々ますます弁ずという
意味において非常なフレクシビリテイを持
つたもので行きたい。こういう行き方で考えるわけであります。そこでその
意味から
予算を組むのでありますが、これについてはどういうことが
原則的に考えられるかと申しますと、
ドルと非
ドルですね。非
ドルと申しましたのは、
ドルの
キャッシュならざるものという
意味です。
ドルの
オープン・
アカウントもさつき申上げました通りでありますが、
オープン・
アカウントであります以上は、
ドルの現実に
現金が要りません
エスクロ、
ポンドの
オープン・
アカウントというものは一括して非
ドルとまあ
説明のために名付けさせて頂きまして、それは
ドルの
キャッシュとは
違つた原理で
予算が組まれるであろうということを申上げたいと思います。
第一の
ドルの
キャッシュの分でありますが、これは
現金でありますから、どうしても
輸入というものは
輸出に見合わざるを得ないのでありまして、
輸出実績というものを見て行かざるを得ません。今八千万
ドルの金があるならば、若しこれを食い込んで
行つてもいいというのが
最高方針であるならば、三月末までにそれが五千万
ドルに
減つてもいいと考えるといたしますれば、月一千万
ドルずつ
輸出以上に
輸入ができることになります。或いはこれに反して
ドルは成るべく溜める
方針がいいのだということになりますれば、一二ケ月の間に何千万
ドル輸出が増進されるか知れませんが、それよりも少いものを
輸入しろと、こうなりますが、現在持
つておる元を食う、食わないは別の問題としますれば、
輸出は別にするというのが
原則、これは当り前の話でありますが、そういうふうに考えて進む限り、非
ドルになりますと、少し違う考え方で進むことができるのでありまして、これはいわゆる
輸入先行と申しますか、近頃
流行言葉にな
つておりますが、先ず
輸入をしよう。これは
ローガン氏が説教したお蔭で、
はつきり我々も教えられたのでありますが、各国が
輸出をしようとばかりあせ
つても駄目なんだ。先ず
輸入をすることによ
つて、
相手国もこつ
ちのものを買
つて呉れるのだ。こういう
観念であります。これが
ドルでなく、
協定国、
協定貿易をしている国でありますと、大体そういうように、殊に
ローガン氏考案のスウィング・アカウトというものを持つことになりますと、非常に
工合がいいじやないか、
工合がいいと申しますのは、
協定の中に、例えば
日独の
協定は二千万
ドルの
協定がありますが、仮に三百万
ドルまでは
振子、スゥイングもいい、
つまり三百万
ドルに達したら、こつ
ちの輸入、入超三百万
ドルに達したら、それ以上
ドルで拂う、こう決めるわけであります。そうしますと、三百万
ドルになるまではクレジットを
貰つたと同じことでありまして、そこまでは安心して
輸入できる。そうすると、それ以上
向うは
輸入を急いで呉れなければ、即ちこつ
ちの輸出ができなければ、もつと買えば今度
ドルで買うのであります。
向うは
ドルが欲しいよりも自分の
輸出品がそういうふうに買われて
参つて向うに貸しにな
つてしまうのを損だと考えるのでありましようから、こつ
ちの輸出、
向うの
輸入を
向うは急いで来る。こういう
関係にな
つて、その
振子が
向うに振れるかもしれない、
向うに振れたら、ますますこつちは
輸出すればいい、
輸出が出て出超に
なつたらますます
輸入をすればよい、そういうわけでスウィング、
アカウントということはけだし名案だと思う。現在
スウィング・アカウントを持
つておりますのは三ケ国です。
ドイツと
アルゼンチンと
フィンランド、
フィンランドは極く小さいのであります、
ドイツは三百万
ドル、
アルゼンチンも三百万
ドルでありますが、これは一千万
ドルに増額される望みが非常に濃厚であります。その他シャム、オランダにしても
スウィング・アカウントを容れようということに考えられておりまして、全体として各
協定には非常に大きく
スウィング・アカウントがつくことを期待されております。そうなりますと、
輸入先行しても、一向
つまり金の要らない
輸入ができるわけでありまして、
大変工合がよく行くだろう、それか
輸入先行をして
向うもそれじやたまらないから大いに買おうというので、
輸出が出るので、ますますこつちは
輸入をするということになりますと、
貿易の
総量というものは非常に多くなる、その
意味で先程も申しました
年間計画というものを遥かに上廻る
数字が期待できるのではないか、その
意味においてフレクシビリティーということを考えているわけであります。御承知でありましようが、
ドイツは
ローガン氏の功績によ
つて僅々二年足らずの間に
貿易は七倍に
なつたということであります。
そこで
予算の問題に入りますが、
ドルと非
ドルとはそういうふうに
違つた観念で
予算を考えて行く、その中に今度はいわゆる早い
者勝ち、そうでなく予め
為替割当許可によ
つて割当てて行くものと、
割当でないものと考えるわけであります。これは何を
割当てにすべきか、何を早い者勝にすべきということが問題でありますが、それを然るべき認識の下に決定しましたならば、早い者勝で行くというのはその
商品別に出て来る。或る
商品、AならAという
商品は早い
者勝ちで行くんだ。併しながらそのAという
商品を
年間において何百万
ドル輸入する
予定であるか、或いはこの
四半期において或いは一月において何百万
ドル、何万
ドル輸入する
予定であるということは、これは別問題でありまして、早いもの勝か、そうでないかということは
割当の
方式、手順であります。早いもの勝であろうとも、それは無茶苦茶に
輸入するのではないので、それはやはり
基礎的な
予算で決められた
範囲で、何万
ドルというものが早いもの勝で
輸入者に
割当てられるというだけでありまして、何か早いもの勝という
言葉が非常に誤解を生んだように拜聽するのでありますか、そうなると何か非常に
輸入総量というものにまでごたごたが起るように思
つている方があるのではないかと思いますが、実は
輸入総量は決ま
つている。ただそれを
割当てる
方式が早いもの勝かどうか、併しいずれにしましても、
予算を組む場合には早いもの勝で行くんだ、これはそうでないということを区別させなければなりません。そこで以上のような見地に基いて
予算を組むわけでありますが、これは
勘定別に行かなければならない、その
勘定別と申しますのは、
ドルの
キャッシュであるか、
エスクロであるか、
オープン・
アカウントであるか、
ポンドであるか、
ポンドの
オープン・
アカウントであるか、先程申しましたように、
オープン・
アカウントの数が多いのであります。さつき申し落しましたが、大体いわゆる
ポンド協定というものでなされる
貿易が、
輸出で見まして、五〇%であり、
ドル及び
ポンドの
オープン・
アカウントによ
つてなされるものが三〇%ぐらいであろう。その残る二〇%が
ドルの
キャッシュです。ですから
ドルの
キャッシュは少いのでありまして、
ポンド及び
ドル・
ポンドの
オープン・
アカウントのものが多い。
従つて先程申しました
輸入先行というものがアプライされる
貿易の方が
貿易全体としては多いわけであります。
そこで
ジヤバなら
ジヤバの
オープン・
アカウントを
一つとりまして、
ジヤバから買うべきものは何であり、売るものは何であるか、
品目的に
余力嚴密たることを要しません。大体において何百万
ドル、何百万
ドル売れるであろう。その
オープン・
アカウントは貸越しである。こつ
ちの取り分である。そうするとその一―三につきこの
商品をこれだけ買うのがいいだろう、こういうふうに決めるわけであります。
オープン・
アカウント一本につきまして、受入の
差違、即ち
輸入の
差違、その
差違が
商品別にずらりと並んで、その
商品はこれは早いもの
勝ち、これは
割当、こういうふうに分れる。その下に
貿易外、即ち
商品外の
輸出輸入というものが、これは
品目別に分れて立ちましよう。その下にこの
法律にあります
通常予備費ですか、これは
ジヤバなら
ジヤバの
貿易において不足になる
状況、即ち今これを買
つて置いたら非常によか
つたであろう。乃至
予算にはこれだけ組んだけれども、もつと
買つた方がいいという
事情が発生した場合に使える
品目があてがわれておりますから、これで
品目的に新らしい
品目にあててもいいし、或いは並べてある
品目のどこかに加えてもいいのでありますが、この
予備費というものは使うつもりの
予備費であります。それでそういうふうに
輸出と
輸入と並べて
商品別にそれが早いもの
勝ちとそうでないものとの印しが付いて、その下に
商品外が書いてあ
つて、
予備費が並んで、これが食い込むつもりならばこつちに使う方が
勝ちます。貯めていくつもりならばこつちが
勝ちます。そういうものかできます。そうしてそれが一本のその国に対する
予算であります。それを
オープン・
アカウント三十本集めますと、
オープン・
アカウントは全体としてはどういうことになるのだということが分ります。それにエスグロ一本及び
キャッシュ・
アカウントというものを加えますと、
ドル全体で総
バランスが出ます。それに本年と同じことをやりまして、その
ポンドと
ドルの総
バランスをやりますと、そこに
商品別の
アカウントが出て、その
アカウントというものは大体において
基礎的に持
つております
年間計画というものの
四半期になりますから、四分の一になるであろう。但し
商品には季節がございますから、一―三に買うよりも四―六に買う方がいいということがあるので、
予算は
年間計画ですから、必ずしもその四分の一ではありませんが、大体において四分の一に相当するものがそこに現れて来る。こういうことがこの
予算の
相貌であります。ですからフレクシビリティということが問題にな
つて、何か出たらめのような
印象を作
つておりますが、そういうふうな
事情に基きまして、フレクシビリティを考えております。これは大きな
年間計画というものにぴ
つたり合うわけであります。
尚申すまでもありませんが、フレクシビリティに関しては将来の
アメリカの
援助の受け方にもよりましようし、或いは商業信用というものが、現に
ポンドに対しては
英系三銀行が千五百万
ポンドに値する信用を與える用意をしているということがありますが、
アメリカの方からもそういう商業信用が得られるかも知れません。イギリスも拡大されるかも知れません。或いは不幸にして引込むかも知れませんが、それらによ
つて実行
予算である
四半期予算というものは変
つて来る筈であります。尚国家的の借金ができるかできないか、その計画があると申すわけではありませんが、あるかないかは私は存じませんが、仮にそれができるとすれば、それにも影響をされましようし、外資導入というようなことが若しあるならば、それにも影響されるわけであります。いずれもこれは
基礎的の計画というものが拡大されるという方面にそのフレクシビリティを期待している。
輸出が非常に不首尾であ
つたらば勿論縮小の方にも変らなければなりませんが、大きな枠、計画性を持
つた枠の上において相当自由な
貿易が行われるであろう、その運営の
一つの要としてこの
予算が考えられているということは御了解願えるかと思います。
大体
外貨予算というものはどんなものであるか、その雛型を示せという御
質問に対しまして雛型ではありませんが、
言葉を以て
説明させて頂きました。