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政府委員(
木内信胤君) 御注文によりまして、今の点について知
つております限り、これは必ずしも私の
権限事項でないのでありまして、又すでに決ま
つておることばかりはありませんので、これから研究さるべきこともあるのでありますが、この
法案の
意味の御理解に資するため、私の知
つておる範囲を御参考までに述べさせて頂きます。
私、うつかりしてメモを取
つておらなか
つたので、おつしやいました点をなかなか網羅できないかと思いますが、大体現状においてはこれは適切な法律であるということをおつしや
つて下さいました方が多いので、大変嬉しく存じます。大きな問題、小さな問題、いろいろございますが、その中で先ず小さい方から申上げますと、
相場に関しては
大蔵大臣に大きな
権限をとおつしやいましたが、それは第七條第二項の
維持という問題なんですが、これは裁定
相場を決定したら、それを勝手に変えてはいけないという
意味の
維持でありまして、全体の
相場は第一項の方の基準の
相場、この問題であるのであります。これは今朝程
和田委員から御
質疑がありまして、技術的には問題はない。何となれば
予算であるのだから問題はない。但しその
相場が
日本の
経済全体として持てない
ようになるかも知れないから、これは
政府の政策全部の問題であるという
ような問題が出ましたが、これはそういう
意味であります。
それから裁定
相場について御
質問がありましたが、ここで言
つております
意味はこういうことなのであります。例えば対米三百六十円と決めたならば、国際通貨基金に登録してあるポンドの
相場はニ
ドル八十セントならば、三百六十円へニ
ドル八十セントを掛け合せて、それを対英
相場にしろ。正に御指摘のありました
通り、三角
関係のことを言
つておるのでありまして、これはそういう
意味であります。
尚
外国爲替管理委員会が
相場を決める場合もあるのでありますが、これが非常な
責任の
ように言われたのであります。
責任には違いありませんが、いずれに決めましても百分の一以上の開きがあ
つてはならないのでありまして、百分の一と申しますと、三百六十円に対してつまり三円六十銭は上下に開いてもいいということであります。これは国際通貨基金に入
つておる国々が一律にこの條件を通貨基金として謳
つておる次第でありまして、それをそのままに将来参加のことも
考えて採用したのでありまして、事実は三円六十銭開かせるという
ようなことは殆んどあり得ない、それよりずつと小さいことを
考えております。その
程度でしかないわけであります。つまり実際の
爲替に使いますときには、細かい何十銭とい
つたところで動くわけであります。その
程度のこれは商売に属することなので、それが
爲替管理委員会に任してある次第であります。大体そのくらいのことで、
相場に対して疑問にされた
ようでありますが、それを申上げて、
相場はそのくらにいたします。
あと大きな問題として、
権限の問題、これは成る程御指摘のありました
通り、この法律に現われておりますところは、
方々に
権限が分散した
ように見えておりますが、その
一つの理由は、
貿易と
爲替を一括して規定したためであります。従来は全く別の法律で規定してありましたが、それをここにこうして
一つにして規定したのであります。
貿易と
爲替とは裏腹にな
つて実は
一つなのでありますから、それを二つの法律で扱
つたものを
一つの法律にして出した方がずつと簡素にな
つておるのでありまして、この点は余り御心配下さらんでもいいと思います。ただ
権限関係が少し不明確になりましたのは、新たに
外国爲替管理委員会というものが入
つたからでありますが、これが例えば
爲替管理に関する
権限は、
大蔵大臣に一括して委して行くということにすれば、成る程見た目はそれが簡單であります、
構成的には……。併しわざわざ
管理委員会を作りましたわけは、
大蔵大臣でありますと他のこともありますが、同時に
爲替許可、つまり誰が
爲替を使
つていいかということも、おのずから言う場合が出て来るであろう。そうしますと、それが使う
立場といいますか、或いは使わせる
立場といいますか、それを使う方の
立場であります。それに対してお金の番人をする
立場というものを別個の
官庁にして、
大蔵大臣の掣肘を受けない他の
官庁にする方が監督は正確に行くのだということが、最近は諸
外国でも採用されておるそうであります、その点を採
つたのであります。そのために
権限官庁がこの法律の上では
一つ殖えたから成る程紛更する
ように見えておりますが、事実においてはその
意味でありまして、
従つて大蔵大臣と
爲替管理委員会との
権限の分界ははつきり立て得る。
外貨に関してはお金を使
つて貿易をしておる方ということになります。
相場の方の問題なんかはこれは
運営でありますが、これは
基礎的なものが
大蔵大臣であ
つて、オペレーシヨンと申しますか、
資金の
運営に属するものが
管理委員会、これは限界は必ずしも画するに難からずでありまして、先ず画し得ておるものと存じております。この点は
只今お話し下さいました
方々はこの法律だけを御覧になりまして、
爲替管理委員会の設置
法案を御覧にな
つていないのではないかとそう思うのであります。別途設立いたします
ような設置
法案がございます。その点はそれによ
つてはつきりしておると私共は
考えております。
次は
予算でありますが、
外貨予算の組み方ということは午前中も
質問がありまして、私お答えしたのですが、甚だお答えの言葉がまずか
つたと思
つておるわけでありまして、改めて言わして頂きます。すでに提出にな
つております
予算なるものは、あれは円の
予算であ
つて、最近の
予算が
貿易の総額というものを
貿易会計、それから分離しました
爲替会計というもので、
輸出は全部円の拂出し、
輸入は全部円の受入れと、こういう体裁で出すことにな
つておりますが、かくの
ごときやり方がいいか悪いかについては聊か議論がございますが、現在はそうな
つておる。その
予算が提出されておるわけであります。これは
日本の
貿易と、
貿易外を込めまして
外貨の受取、
外貨の支拂、全額を算定したその円の概算であります。それに対してこの法律で言
つております
予算なるものはそれとは少し気分が違うのであ
つて、これは
外貨を使う
予算なんであります。言い換えれば、それだけの
予定された
ような
輸出があ
つて、
従つてこれだけ
輸入し得るということが決まりましたならば、それをどういうふうに配分するのだ、
商品にすればどういうふうに配分するのだということを
月々、又時期的には月割りにすればどういうふうに配分するかということを
考えまして、最も適切に組んで行こうこうなるわけであります。これはすでに提出いたしました円の
予算で、
日本の現実に使い得る
予算である。これはまだ遺憾ながら、それがどういうものであろうかということについては十二月中に私共急いで立案をいたしまして、一月からその
構想によ
つてや
つて行きたいと
考えております。十二月中は大いに勉強を要するのでありますが、現在は遺憾ながらそこまで来ておりませんので、どうなるかということをお示しできないのを残念に思います。もう少しその点について追加いたしますと、これは今朝程も
説明がありましたが、補足の
意味でありますが、
年間の中で或る
程度の、ラフではありまし
ようが、
一つの
構想を持たなければ無論駄目であります。その
構想が
予算にな
つて、現に先程申上げました円の
予算にな
つて出ておるわけであります。それを使うに関しては現実に現在使い得る金、現実に使い得る金というものを大体三ケ月先を予想して、十二月中には一月乃至三月の
予算を組み、その実施の状況を眺めながら一月には二月乃至四月ですか、三ヶ月先を組む、一ヶ月先にずらして組んで行く、こういう
構想を
考えております。多分それになると思います。これは
審議会の決めることでありまして、私は多分そうなることであろうという、持合せております知識を申上げるわけでありますが、そうなると、それの中に
民間人の採用があるかという
お話でありましたが、その原案を作る者は多分
安本の
貿易局あたりになるのではないかと思いますが、そこにおいて
民間の
意見を十分に斟酌する余地はあると思います。多分そういうふうにお努めになるのではないかと思います。併しその
予算なるものはそういうふうに頻繁に出て来るものでありますけれども、恐らくその全貌は公表されるものと思うのであります。そうしますとその
予算を見て世間に活発な論議が行われて来るのであります。
日本の貴重なる
外貨というものをどう使うかということに対しては、
民間は敢て
官庁に出頭して
意見を述べなくても、非常な関心を持ち、知識を持ち、その結果が又時々刻々現われて来ることになりますから、
一つの輿論がそこに形成されて来るのであります。
政府にしてその輿論を巧みに取入れたならば、非常に良い
運営ができるのではないかと、こう思
つております。
それだけにしまして、あと委任立法が非常に多いという
お話、これは誠に御尤もであります。実は少し打あけ話になりますが、この法律を作ろうと決心しましたのは八月の初めでありまして、それから私共の
委員会、大蔵省、通産省、
安本、その他の省の方も時々参與して頂きましたが、研究を始めまして
一つの案でありますが作りました。その時の案の
構想は、委任立法は成るべくよそう、且つ成るべく必要な部分だけを取ろう、言い換えれば穴があ
つてもそれは敢て問わない。
日本の現状として是非必要なことだけはしつかり押えて、後はまあ多少小さな魚の逃げることは構わないで行こう。その方が
管理法というもの一切が分り易くできていい。且つその中に若干
手続のことを謳
つて、
爲替管理というものはどういうふうに行われるのだということが、一見して世間の方にも分
つて頂けるということを狙いに、実は書いてお
つたのであります。ところがその後にいろいろありましたことは、
一つはローガン氏の来朝であり、私共の
考えておりませんでした
構想を教えて貰うことができたのであります。司令部には外のミツシヨンも参りましたが、なかんずく大きな影響を與えたのは村田博士の説であります。このお方の説を伺いましたが、成る程それは私共の
考えてお
つたことも
一つの行き方であるが、それでは如何にも抜け穴が多くて、専門家が見ればそれは頼りない立法になる。成る程確かにその
通りであります。私共はその頼りなさは構わないが、素人分りといいますか、どんな者が見てもよく分るということが、尊いと
考えて来たのでありますが、余り抜け穴の多い法律を作りましたのでは、こういうぼやぼやした法律を持
つておる国であ
つて、
爲替管理はうまく行かないであろう、行かなければ例えば
日本に投資してもその利拂というものは、ついでながら申しますが、その利拂は
予算に組むことによ
つて信用を博すということになるだろうと思いますが、
管理法
自体が抜け穴が多いものであ
つては、それではやはり国際的信用は得られないということがありました。且つ諸国は実際
手続等は相手もあることでありますから、相手が例えば
爲替管理を施行する、その
手続を変える、そうするとそれに即応して変わらなければならん
ような
関係がある以上、皆委任立法にな
つておる。その点を余り気にするのは行き過ぎだという
ような
意見がありました。それでいろいろ
審議の末その
意見に磨いたわけであります。
従つてこういうふうな法律にな
つたのであります。これが打あけ話でありますが、
従つてそれを申上げたわけは、私共もできるだけ委任立法を避けたいという
意思を以て実は出発したのだということを申上げたわけであります。そこでこの委任立法の実体でありまするが、これを御覧になりますると、非常に委任の点が多くて、わけが分らんという感が非常に強いのです。その点成る程御尤もな点もあるのです。それが分らなければ
国民として困るという点も確かに多いのであります。御指摘のありました
閣僚審議会の
構想という
ようなものも確かにその
一つでありますが、併し一番ごたごたして分りにくい集中と制限禁止、この四章の二つに関しては、非常にいわゆる「ことがある」と書いてみたり「ならない」と書いてみたり、非常に複雑なんでありますが、これが分らないのを気にするのは
日本人でなく外人の
関係なんです。
日本人の方は
爲替管理の
原則は、当分
日本人として何等かの事情によ
つて外貨を取得したならば、それを円の対価にして
政府に提供して貰うという、この
原則が一本立
つているだけであ
つて、これに不平があればどうも困るのでありますが、これはどうも止むを得ない
原則で、これを取得することはいたし方がないものだと
国民が認めたならば、この法律が
政令でどう変ろうともそんなことは動かないのであります。
従つて国民から見れば
政令委任事項がどう動こうとも大して違いはないのであります。ただその
政令に任せた、こういうものは主として
政府の手に一応集めるについて、例えば為替
銀行等はおのずから
一定の
外貨資金を持たなければならないでし
ようから、その持つ
限度は時々刻々変えるかも知れない、それは
政令に任すのだ、或いはその持つものは
爲替銀行に限らず船会社であるとか、保険会社であるとか、
外貨で商売をするものが
一定のバランスを持たしてもよかろうということが
考えられますので、
国民から申しますれば軽くなるのが
政令に委任されておるわけであります。制限禁止のところではなかんずく二十一條の
ごとき「居住者たると非居住者たるとを問わず本邦にある者は」、非居住者で本邦にあるという者は大体
外国人の族行者です。その人達は本邦内にある限り貴金属を持
つていたら、それを
日本円を対価として売る義務を課せられることがあるということです。それをそのまま読みますと、旅行者が女の方で指輪をはめて来たら、それを
政令の定めるところにより売らなければならない、そうい
つたことになるのです。驚くのはこれは
外国人が驚くのです。ところがこういうことをしたら
日本に旅行者が参りませんから、族行者を除くということを言わなければならない、大体そういうのがこの委任の実態で、そうでないものもございますけれども、多くのものはそうだということを申上げて、委任立法に対する
一つの御参考にしたいと思います。尚どんなことがありましたか、外銀外商の問題があ
つたのです。外銀外商はどうするかということに関しては神野さんから初めに
お話があ
つたそうでありますから、私は遅刻してよく分りませんでしたが、これは属地主義で一様に行くのだということであります。法律面から言えば何等の差別待遇はないのですけれども、ただ
仕事の面で彼等に負けはしないかという心配が、この法律の不備ではないかという点とな
つて現われておるのですが、これは法律上は問題はないのです。ただ
仕事面ではどうかと申しますと外銀は勿論有利な点を持
つておりまして、その点は主として、彼等は二ユーヨーク、若しくはロンドンの安い
金利の資本が使えるという点であります。併しながら外銀はつらい面も又沢山持
つておるのでありまして、
日本に来て、例えば月一千
ドル給料をとる人があれば、それは月三十六万円の給料になります。それに対しては非常な税金がかかります。つまりその税金を拂
つてやらなければ雇い人はこちらに来ないでありまし
よう、非常にコストがかかるのです。その点から見ますと、
日本人が今耐乏で安い給料で我慢して働いておるのに比べまして、外銀というものは必ずしも有利でない。現に外銀は今の
ような
日本に来たのでは、皆赤字であると非常な不平をこぼしております。そういう
関係から申しますと必ずしもニューヨークの安い
金利を持つから、
日本側の
銀行よりも有利な商売をしてお客を吸收してしまうのだろう、お客を吸收して
日本の商売を脅やかすという憂えは勿論あるのでありますが、ただニューヨークの
金利と東京の
金利と比べて
考えるだけでは決して分らない。且つ
銀行というものは御
承知の
通り大体人間に依存しておる、相手のある機関でありまして、店舗の数、人の数、それによるのであります。外銀が僅かな店舗を使
つておるので、如何にニューヨークをバツクにし
ようとも、そうのさばれるものでない。その点聊か
資金の方は杞憂が多いのではないかと思います。
併しもう
一つの問題がありますのは、彼らの円
資金の問題であります。
日本側は
外貨の
資金は或いは僅少でありまし
よう。或いは円の
資金に関しても、外銀これ亦非常に僅少なのであります。如何様に彼らに円
資金を與えて、どういう手段によ
つて彼らが円
資金を得るか、その円
資金を得る手段の
一つがこの
爲替管理法でありますが、この運用に当
つて適当に
日本側と外銀側は、何もいじめることは決してよくないことでございますが、適当にフェアー・コンペティション、公正な競争でや
つて行くことが、できるのだろうと思います。
尚
輸入保証金の問題がございましたが、この
輸入保証金は法律には、「ことがある。」と書いてある。必ず取るわけではないのです。
輸入に関しては例の早い者勝ち、先着順という方式で
外貨の使用権が與えられるものと、前に
事前割当があるものと二つにな
つております。
事前割当は吟味の結果與えるのでありますから、
事前割当の場合は保証金を取ることは、恐らく殆んどないのだろうと思います。ただ早い者勝ちという頗る一見乱暴な
ような
方法によ
つて、
外貨の使用者を決めますについて
一つ心配があります。それは何かと申しますというと早い者勝ちですから、ただ
銀行に行
つて、それが
予算で決めました項目によ
つて、Aという
商品は一月に百万
ドル輸入を許すのだ。それをその中の何分の一かを一月の
最初の月曜に発表したとします、それを聞いて
輸入したいと思う人は
銀行の窓口に行
つて、その希望を申述べれば、早ければ
輸入権が貰えるわけでありますから、ともかく貰
つておこうという人が殺到して非常に困る。来た以上は本当に
輸入するのだという真面目な人だけが欲しいわけであります。そこでその真面目に実行するかどうかを保証する、法律にもそういう文句が使
つてありますが、そのために保証金ということが
考えられる。ドイツは五〇%まで取ることにしておるそうでありますが、ローガン氏自身より私聽きましたが、これは非常に大事なことであるから是非やれと言
つておられましたが、今
日本で
考えておりますことは、敢て五〇%という高いものを取らんでもいいだろう、これは
日本がインフレ状態にあるか、デフレ状態にあるかに
関係するだろうと思います。現在の
ような状態では、今
考えておりますことは、低くして五%か一〇%でいいじやないかということが、現在の一応の意図にな
つております。これはそういう
意味であり、且つそのぐらいなことを
考えておるのであ
つて、このデフレの世の中に非常に、大きな保証金を積ませられて
輸入するという
ような、大問題を起させるという意図はない。この点は十分注意して
運営されるものと、これは私の御
説明する限りでありませんが、そういうふうに聞いておりますから、御安心願いたいと思います。
大体盡したつもりでございますが、洩れておりましたら更に申上げたいと思います。