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国務大臣(
吉田茂君) どうも御
承知の
通り、
アメリカに
機関、外国に
在外公館もあるわけでもなし、ただ
新聞で
空気を
承知する
程度で、こういうふうにな
つておる、ああいうふうにな
つておるという具体的の通知は
司令部にも何にもないのであります。ただ来た人、訪問に来た人の話であるとか、それから
新聞で、総合しての
想像だけであ
つて、いつどういう、現在どうな
つておるかということは、全然私には
想像が付かないのであります。
想像するだけの資料がないのです。ただこういうことを言
つたんですが、
外交委員会で、今から、この前の
吉田内閣が辞める少し前の
空気では、その年というと、一九四七年になります。その年の秋には
講和会議ができる。
講和会議というような段取りになるだろうという話があ
つて、実は喜んでお
つたわけですが、併し御
承知の
通りその年も暮れて、そうして今尚
講和会議、
講和條約というようにな
つていないんですが、併し
ドイツにおいても、今度イタリアができたんですが、欧州、オーストリアにしても、現在問題にな
つておる。そういうわけで、なかなかその列国の
関係と言いますか、
国際関係が
講和会議まで、
欧洲においても
講和條約まで持
つて行けないのです。というのは、御
承知のような
国際間の
関係が微妙な
関係にな
つたためでもあるでしようけれども、欧米にして、
連合国に最も
関係の深い
ドイツ、ヨーロツパの
講和條約までもできないような
状態であるもんですから、対
日講和條約が殊に遅くな
つても、これは仕方がないことだと思います。そこで昨日
講和に関して
外交委員会において申述べたのは、
講和会議というよりは、一般の
空気を述べたのであります。その趣旨は我々が思い設けない程
日本に対する
空気は決してよくないのだ、
イギリスにしても、
イギリスから最近帰
つて来た人の話でも、相当我々の
思つたよりも
空気が惡い、それからフランス、ベルギー、
オランダなどを通
つて帰
つて来た人の話に、
オランダのごときは特に惡い、これは
インドネシア等の問題の
関係があるのでしよう。それから
ソヴイエトその他の何は別としまして、東洋においても、中国は
中共政権以来惡いようです。これに反して
国民党の方はいろいろ
日本に対して何と言いますか、従来の
関係を続けたいという話もときどき聞きますけれども、とにかくああいう今
混乱の
状態で、これは
計算に入りにくいのですが、なかなかフイリツピンにしても、或いはマレー、あの一帶の地方においては最も
空気が惡いようです。
日本のおかげで以てこれ程戰災の苦しみに
会つたにも拘わらず、
日本の方が復興が早い、我々の方はまだ復興せざる間に、我々の国を荒した
日本が我々よりも先に復興するというのは有難くないという気分が相当あるようです。我我が人の話を聞いて
想像するのでありますから、正確でないかも知れませんが、我々の聞いているところでは、
東南アジア一帯の所の国々は
日本に対して決していい
感じじやない、よくない
感じだという
感じを
計算に入れて、惡い方から惡いことを、惡い
空気を
計算に入れて
考えなければならんでありましようから、正確を期するために、或いは私の言うのは実際よりもそうひどくないのかも知れませんが、噂に聞けばそういうふうなことで、
濠洲、
ニユージーランド等は
戰争以前から
日本に対して、人口の
関係から
言つて見ても、
日本が攻撃して来やしないかというような
感じがあ
つたものですから、今尚
日本に対して一種の
誤解、疑惑を持
つているように聞いております。ただひとり
アメリカに
至つては非常に
空気はいいと聞いています。これは
日本から帰
つて行く
アメリカの
兵隊等が
日本はいい国だ、
日本人は親切だというふうな話が耳から耳に伝わ
つてのことと
承知しますが、
在留日本人に対する待遇から
言つて見ても、或いは
日本から
行つた人の話を聞いて見ても非常にいいのです。この間
ジヨセフ・キーナンが私のところに
手紙を寄越して
日本のような正直な勤勉な
国民の将来は誠に
目分として愉快に楽しめる国であるという非常にいい
手紙を寄越して呉れております。
ジヨセフ・キーナンという人は、私実は
会つたことがない、会おうと思いましたけれども、
向うが会いたくないようであ
つたから会わなか
つたのですが、又そのために職務上一種の
誤解を生じてはいけないと
思つたので、そこで会わなか
つたのですが、会わない人にも拘わらず、非常に好意ある
手紙を呉れております。その他従来の友人であるグルーとか、キヤツスルという人は絶えず同情の
手紙を寄越しておりますが、現に
向うから帰
つて来た体験を聞いて見ても、少しも
敵国人に対するというような
気持はないというそうであります。でありますから、一番熱心に
考えて呉れるのはやはり
アメリカであると思うのです。そうしてその
アメリカと
イギリスが提唱をして、そうして
講和会議促進ということに、
講和條約
促進ということになりつつあるのだろうと思いますが、何分私が今申す
通り、
新聞の情報以外に確実な具体的の
交渉はまだ
政府としては経ておらないのでありますから、
希望以上に、人の話を聞いて
希望的に早く開かれるだろうという気はしますけれども、併し何の根拠でどういう
交渉があ
つたかということは何にも今のところ
交渉がない。
従つて見通しも
希望以上に
見通しが付かないのですが、併し今日、
英米の
空気から申すと、成るべく早く
国際関係を正常化して、そうして貿易も伸張さして、
世界の経済を安定せしめたいという
気持のあることは確かでありますから、一旦
講和問題が取上げられれば存外早くはないか。これも
希望も加わりますが、早くはないか。早くありたいものだ、こう思うのであります。そこで大体来年のいつにどうだろうかとお尋ねがあ
つても、ちよつといつ頃であろう、ただ早いだろうという
気持、その
程度であります。