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政府委員(石井昭正君) 只今
国会に提出いたしまして御審議を願
つておりまする
運輸收入の見込みにつきましては、当初の
予算に対しまして、旅客收入におきましては八十七億の減少と
なつております。それから貨物運賃につきましては、これは一月一日から八割値上げを御承認頂くという
建前で、五十七億八千万円の増加と
なつております。一月一日から八〇%の増加額を幾らに見込んだかと申しますと、これが五十四億六千九百万円でございます。従いまして貨物收入につきましては、当初の
予算額に対しまして、現行の貨物運賃の場合で、つまり八割値上げなかりしものとして当初の
予算に対してどれだけ見込みが違
つているかと申しますと、これが三億一千万円程の実は増に
なつているのでございます。一億四千万トンの
計画に対しまして、
予算面におきましては、むしろトン数は減
つているが増加と
なつている、このことがございますが、これは実は当初
予算のときに貨物の方の一トン当りの輸送キロ、つまり貨物の足が実際よりやや多少短か目に見積られておつたわけでございます。トン数におきましては減少いたしまするが、逆に足の方におきましては当初の見積りより約十キロ
程度延長いたしておりまするために、却
つて実績といたしましては増加になるというような
数字に
なつているのでございます。それから旅客運賃の方は、これはお
言葉にございましたように、本年五月旅客運賃の六割値上を御承認頂きます際に、大体それで以て千百五十二億という旅客貨物、雑收入、いろいろ合せました
運輸收入の全体が千百五十二億となりまして、支出経費の千百五十二億と見合うということで御承認を頂いたのでございまするが、その後かような大きな欠陥を産じました理由につきましては、これは当時と雖も御
説明申上げましたように、六割値上によ
つて運輸数量が少しも減らないという
考え方ではなくして、約一〇%の收入は落ちるであろうという見込みでいたしたのであります。この一〇%の收入が落ちるという見込みは、これは人間の頭数が一〇%減る、つまりお客さんの利用が一〇%減るということには直ちにはならないかと思うのであります。と申しまするのは、若しお客さんの減り方が遠距離、近距離各距離に亘りまして、丁度近距離のお客さんも遠距離のお客さんも、平均に一〇%減るといたしますれば、これは一〇%だけやはり收入が減ることになるかと思うのであります。ところが
予算の方で御審議願いましたのは一〇%だけ減るという
予算の総額において御承認願
つたのであります。この点について当時それは見込過少ではないかというような御注意もあつたことも記憶しております。併しながら私共の方といたしましては、支出経費、收入がそれに相応いたしませねば、支出経費において何とか削減いたさなければならん。然るに御
承知のように支出経費につきましてはこれは凡そ平
年度に換算いたしまして恐らく二五%
程度の圧縮をされている本
年度の
予算でございましたので、これ以上支出経費も減らすわけにも参りかねるし、又收入の財源もこれと見合うだけのものがなくてはならんので、旅客收入の一〇%減ということも一応御指敵のような筋合もございましたが何とかや
つて行かれるだろう、かような
考え方であ
つたのでございます。ところが御
承知のように五月一日以降丁度新
年度の
予算が実施されるようになりますると、経済界の状態はいわゆるデイスインフレの様相を呈して参りました。この影響いたします
範囲がこの旅客輸送というような面に非常に端的に、又非常に急激に現われて参つた。
各種産業等におきまして企業の合理化等を行います際には、やはり何と申しましても、交通費とか或いは旅費とかいうようなものが一等先に緊縮の財源になるのではないか、まあそういうような
関係も相当影響したのではないかと思うのであります。現に官庁
方面におきます
予算などにつきましても、先ず旅費が槍玉に上るというようなことも相当影響していると思うのでありますが、そういう
関係で遠距離客は公用と申しますか、或いは社用と申しますか、私のプライベイトな
旅行とそういう公社用のような遠距離旅客との割合は、これは近距離の場合よりも遙かに私的の旅客の割合が少いのでございます。そこへそういうような
情勢になりましたために、極端に遠距離客が減じました。人の頭数におきまして一〇%減
つても、むしろ收入は更にそれよりも余計に減るというような結果を生じたのでございます。大体定期外の旅客というものに対しましてはこれは過去
昭和十一年頃からずつと戰争中この方、鉄道の定期外のお客は、一人当りの平均乗車キロが四十キロ内外、殆んど四十キロを割らないというのがずつと過去におきまして示した
実績なのでございます。私共もその後昨年の七月の運賃改正におきまして、これでまあ一応旅客運賃としては或る
程度の社会的な
意味におきまして限度に達しているのじやないかという感じを持
つたのでございます。この時以後大体旅客一人当りの平均乘車キロが多少微々たるものではございまするが減
つて参りました。三十六キロ、七キロというような
数字にな
つたのでございます。運賃改正直後におきましてそういう結果を見ますことは、これは過去の運賃改正の際常に見られる現象ではございましたが、昨年の七月の運賃改正の場合にはこれが減
つて、それから逐次回復するという様相がなかなか見られない。そうして約三十七、八キロで以て、まあ国鉄といたしましては十数年来の記録を破
つて、そういう三十八キロから九キロというようなところで落着いて参
つたのであります。そこで今回の運賃改正によりましても、或る
程度社会的な限界に近付いておりますので、運賃改正の結果として又この一人当りの輸送キロが減るということも当然
考えなければならなかつたわけでございます。それは
予算上の
考え方といたしましては、平均乘車キロで
考えるよりは、全体
予算、全体として一〇%、言い換えれば足の短かく
なつたことと、人間の減つたことと両方合せて一〇%くらい、ということで一応
予算を立てたのでございますが、この旅客の足の減り方が、長さの減り方が、非常に極端でございまして、運賃改正直後は三十キロを割
つておるのじやないか。最近やや回復はいたしておりますが、恐らく年間平均いたしましても三十キロそこそこではないか、こういうような
見通しになりまして、過去十数年間の固定した
数字から十キロも減るというような極めて大きな現象を示したのでございます。そういうようなわけでございまするので、勿論私共といたしましては、当初
予算の見込に当りまして
考え方が甘か
つたのじやないかというお叱りはこれは誠に止む得ないことかと思うのでありますが、逆に單に運賃の賃率操作に基く以外の経済現象の影響というものが相当予想を超えて広く影響して参つたということも御了承願えたら大変仕合せだと思う次第でございます。