○
政府委員(
牛島辰彌君) 私から
只今大臣から
提案理由の御
説明がございました
通運事業法、
日本通運株式会社法を廃止する
法律案、
日本国有鉄道の
所有地内にある
日本通運株式会社の
施設の
処理等に関する
法律案の三者につきまして、相関連する点がございますので、補足的に御
説明申上げたいと思います。
小
運送業が
昭和十二年以前におきましては、
自由営業でございまして、
昭和十二年現在におきましては、四千数百店を数うる多数の
業者が
濫立しておつたわけでございます。当時の
鉄道省といたしましては、この
業者の
濫立から生じまする不当の
競争、或いは不公正な
取扱い、或いは
荷主、
公衆に及ぼす
不測の
損害等を考慮いたしまして、これを
免許事業といたしまして、
昭和十二年に小
運送業法を
実施いたしました。同時に
日本通運株式会社法を制定いたしまして、
両者相俟つて小
運送事業の
濫立を防ぎ、又公正な
業態にいたそうということに努めて参
つたのであります。本年の三月現在におきましては、お手許に差上げました資料の中にございますように、
一般免許を有する小
運送業者は二百二十七店、その他
限定免許と申しまして、
荷主或いは
取扱い地域を
指定する等の
限定免許を有するところの
業者が百三十二店、合計いたしまして三百五十九店と
なつております。この中に
日本通運株式会社も勿論入つておりまするが、非常に小
運送業といたしましては、家内商業的なものから
近代的経営に進みまして、当時の
経済事情並びに
輸出状態からいたしますれば、非常にその
成果を挙げたものと思うのであります。併しながら
終戰後の
事情から考えて見ますると、ややもいたしますれば独占的な
傾向が出て参りまして、その
サービスの点におきましても又
取扱いの面におきましても、いろいろと批判される
状態もございますので、
運輸省といたしましてはここ両三年の間、この小
運送業法の
改正ということにつきましては種々研究を進めて参り、又小
運送業の
公共性に鑑みまして、
免許事業の下におきまして、自由公正な
競争態勢を確立することに
努力して参つたわけでございます。昨年の十一月におきましては、
閣議決定といたしまして小
運送業の
複数制を
実施することにいたしまして、
只今これが
実現に着々進んでいるわけでございます。第一次に
全国の主要な三十三駅を
指定いたしまして、すでに十九箇所におきまして新たな小
運送業の
免許を
実施いたしております。更に現在第二次といたしまして、
全国に二十八箇所の小
運送業の
免許を
申請を受付けまして
実施準備中であります。併しながらこの
閣議決定におきましては、やがて小
運送業法の
改正を期待いたしておりました点もございましたので、
差当り新たに
免許いたしますところの
事業者は一店に限つておりまするし、又
限定免許等につきまして当分の間は行わないという暫定的の性質もありまして今回新たに漸く
通運事業法案並びに
日本通運株式会社の
法律廃止案がここに御
審議が願える
段階に
なつたわけであります。
併しながらこの二つの
法案だけによりましては、小
運送業の独占を排除いたしまして、真に自由公正な
競争態勢を確立いたします上からいたしますと、
何分にも
日本通運株式会社の機構が過大に失すると申しますか、
全国におきまして最も大きなものでありまして、他が余りにも小さいという
関係もございまするし、又
国有鉄道との関連におきましても、
国有鉄道の
施設の
所有地の中には、相当多数の
荷役機械、上屋であるとか、或いは倉庫であるとか、
労務員の詰所であるとか
荷置場であるとかというような
施設を多数所有しておりまするので、これらの
施設を
一般に開放いたしまして、新たに
免許されました
事業者に公平平等にこれを使用させませんと、真の公平な
態勢というものは確立できない
見地からいたしまして、ここに
日本国有鉄道の
所有地内にある
日本通運株式会社の
施設の
処理等の
法律案を提出したわけでございまして、平たく申しまして、
通運事業法によりまして現在一駅一店制を
とつておりましたものを、
法律に定める
基準に合致するものはこれを
免許する
建前にいたす
複数制を
実施いたしまして、又同時に
日本通運株式会社が特殊の
法人であり、
政府又は
国有鉄道といろいろ特殊の
保護を受けるような法規的な
関係にあります
特殊会社でございますから、これを断ち切りまして、
一般の商法上の
会社にしてしまう、同時に
国有鉄道の
所有地等にいろいろの
施設を持つておりまして、非常に有利な
態勢にございますから、この
施設を
国有鉄道が買受けて、
一般の新たな
業者にも平等にこれを公開しで使つて行く。そういたしまして結局この
運送業の自由公正な
競争態勢を作ろうというのがこの三
法案の相関連したところの狙いでございます。
最初に
通運事業法の要点を極めて簡單に申上げたいと思います。
通運事業法の第
一條におきましては、
只今申上げましたような
目的を明示いたしております。第
二條におきましては、旧小
運送業法等におきましては、小
運送という
名称を使つておりましたが、今回は
通運という
名称にいたしておりますが、この
通運の
定義がはつきりいたしておりませんでしたから、今回は第
二條におきまして五号を掲げまして、一から五までの間に
通運というものの
定義を掲げました。即ち第一におきましては、従来の
運送取扱業、第二におきましては
運送代弁業、第三といたしまして、陸上
鉄道によつて
運送されるところの物品の集貨、配達、勿論商法でいいますところの海上におけるものは除いております。第四は、従来の
規定によりますと
鉄道車輌へ物品を積込んだり、或いは取卸すというようなことが小
運送業であるかどうか非常に
定義が不明確でございましたので、今回はこれを明確にいたして第四号に記載いたしたわけでございます。第五号といたしましては、従来の
鉄道を
利用してする
運送契約につきまして明示いたしておるわけでございまして、一号、二号、並びに五号につきましては
法律的な行為でございまして、三号、四号においては事実行為を明記したわけでございます。これが旧法と違いまして、従来のよりも
定義をはつきりしたわけでございます。又
通運事業と申すものは、これらの
通運行為を行うところの
事業をいうと
規定いたしておりまして、これらはすべて他人の需用に応じてなす場合をいうのであります。従いまして他人の需用に応じてこれらの
通運行為を行う
事業でありますれば、これを
通運事業ということにいたしまして、有償でございましようとも又無償であろうともすべてこの
法律にいう
通運事業となるわけでございます。
次は第三條でございますが、これはこの
法律におきまして初めて
通運計算ということを
規定いたした次第でございます。
通運事業者はその
通運行為が隔地
取引の性質からいたしまして、どういたしましても
通運から生ずるところの
通運事業者間の
債権債務の決済を必要といたします。その債権、債務の決済又は債権の取立てをするという一つの
計算事業というものは想像されますので、ここに第三條に
通運計算事業の
定義を掲げまして、
通運計算事業についてのことはこの
法律におきましては、第三章におきまして明記いたしております。
それで次に申しますことは、この
法律によりますと、各所に
免許であるとか或いは
許可であるとか、
認可という言葉を使用いたしております。併しこの
法律の特色とも申しますることは、従来の小
運送業法と違いまして、従来の小
運送業法でありますればただ
免許或いは許
認可のことにつきましては、その
基準は施行令或いは施行規則等に譲つておりますけれども、今回はこれらを全部
法律の上に
基準を掲げまして、その
基準に適合いたしますものは
免許或いは許
認可等をなす
建前にいたしております。
第四條におきましては
通運事業を
経営する者に対する
運輸大臣の
経営の
免許でございますが、これは
免許に対しましてのことを書きまして、第五條にその
申請の方法を書いております。それから第六條におきまして
免許基準を掲げているのであります。
それで第六條におきましては「
運輸大臣は、前條に
規定する
申請書を受理したときは、左の
基準によつて、これを審査しなければならない」、それで第一項におきましては審査のことを書いておりますが、第一項の一号から四号までが
免許の
基準でございます。その
基準に合致しているかどうかということを
運輸大臣は審査いたしまして、第二項におきまして、「
運輸大臣は、前項の
規定により審査した結果、その
申請が、同項の
基準に適合していると認めたときは、左の場合を除いて、
通運事業の
免許をしなければならない」といたしているのであります。第一項の四つの
基準に適合いたしておりまして、第二項の一から三までのいわゆる欠格條項に該当しない場合におきましては、
運輸大臣といたしましては
通運事業の
免許をすると、こういう
建前を取つているのであります。こういう
建前が従来の小
運送業法と比べまして異
なつている点でございます。
その外に第七條におきましては
事業の譲渡、第十條におきましては
事業の管理、第十
二條におきましては
事業計画の変更、第十三條におきましては
自動車の
新規使用、第二十條におきましては運賃及び料金、第二十
一條におきましては
通運約款、こういうものの
規定におきましても、やはり許
認可いたします場合におきましては、すべて
基準を掲げてこの
基準に適合したものは許
認可をなす
建前を取つております。
又同時に三十三條におきまして、これらの許
認可をなす場合におきましては、
運輸審議会が認めました軽微なものを除きまして、すべて
運輸審議会に諮問をしなければならない、こういうふうに決めまして、従来
運輸大臣の自由裁量の
範囲が非常に広かつたこれらの権限は、これによりまして自由裁量の余地を狭めた、見方によりましては、民主的な方法に変更したということが言えると思うのであります。
第二に申上げますことは、
免許事業者の権利
義務の
関係を明確にいたしまして、
通運事業の公正な
運営を図つたことでございます。このことは例えば十七條より二十五條に掲げてある
事項でございます。十七條におきましては
通運事業者に対しまして
通運引受の
義務を課しておるのでございまして、
通運の引受を拒絶していい場合を五つ掲げてございます。従来は
通運引受の
義務は
法律の文面には出ておりませんでしたが、今回より
通運引受の
義務を課しまして、拒絶し得る場合を列挙いたしたわけであります。又十八條におきましては
通運の順序を定めてありまして、
通運の申込を受けましたならばその申込の順序によりまして
鉄道に物品を託送する。ただ
鉄道の輸送上の理由、その他正当の事由があるときは順序を変更してもよろしうございますが、
通常同じような貨物を受附けましたならば、その
鉄道託送の順序というのは必ず申込の順序によらなければならぬ、こういうふうに
通運順序につきましても
規定を設けておるのであります。
更に十九條におきましては物品の種類及び性質の確認、
通運事業者は
通運の申込があつたときは、その物品の種類及び性質をはつきり言つて貰う、又その言つて貰うことを委託者に求める権利を与えておるのであります。
内容がどういうものであるか分らないで荷物を受託いたしまして、そのために又いろいろむずかしい
法律問題等も起る場合もございますしするので、明告を委託者に求める権利を与えております。又それにつきまして委託者の同意を得て、その立会の上で点検する権利も第二項において与えておるのであります。若しも点検をいたした場合におきまして、物品の種類及び性質が委託者の明告したところと異ならないときは、これがために生じた
損害の賠償を
通運事業者はしなければならない。
通運事業者はどうも
内容がおかしいからこの
内容を点検しようというので点検をいたしましたところ、
内容が少しも申告されたものと異ならないときは
損害賠償をする。又第四項におきましては、点検した場合におきまして、物品の種類及び性質が委託者の明告したところと異
なつておる場合には、委託者は点検に要した費用を負担しなければならないということに
なつております。尚この明告を求めましてこれに応じないときは、第十七條によりまして
通運の引受を拒絶することもできる、こういうふうにいたしております。
その他二十三條におきましては物品の寄託、二十四條において競売こういうふうに
規定を設けまして、
免許事業者の権利と
義務の
関係をはつきりし、又
通運事業の公正な
運営に資しよう、こういう趣旨であります。
次は第三章でございますが、
通運計算事業に関する
規定でございまして、先程も申上げましたように、この章全部の
規定は新たなものでございます。
通運計算事業というものは
免許事業者が多数今後で営ますると必ず必要とする
事業でございまして、而もこれらのものは信用のあるしつかりした
事業でございませんと、
通運事業者延いては
公衆に及ぼす
影響も多いのでございますから、
認可事業といたしたのでございます。更にこの
通運計算事業はややもしますと
経済的な非常な力を振います
関係もございますので、三十
一條におきましては
通運計算に加入することを申込んだ場合には、その加入を承諾しなければならない、又三十
二條におきましては加入を強制して何でも自分の
計算事業に入らなければ商
取引をやらないというように脅かすというようなことがないように、又一旦加盟をいたしました
計算事業から脱退をするというような場合におきましては拒絶をしてはならない、
計算事業に加入することも又出ることも自由であるし、又加入を強制されることもない、こういうふうにいたしておるわけでございます。
次は
道路運送法との
調整でございますが、十
二條と十五條でございます。それに附則の六号と七号によりまして、従来
道路運送法によりますところの地場のトラック
業者と小
運送業との
関係におきまして二重の
手続を経なければなりませんでしたし、又小
運送業者も地場の
免許を受けなければトラツクの使用ができないという不合理がございましたので、これらの点を十三條、十五條並びに附則の六号、七号によりまして解決いたした次第でございます。
以上が
通運事業法の御
説明でございますが、次は
日本通運株式会社法を廃止する
法律案でございますが、これは誠に至つて簡単な
法律でございまして、ただ
日本通運株式会社が、この
法律の
実施は恐らく
通運事業法と同時になりますれば来年の二月一日施行になると思いまするが、その施行の日前におきまして、商法上の
会社になるために定款の変更或いはその他の株主総会の特別決議をなした場合におきましては、そのとき以後におきまして
日本通運株式会社及び
経済関係罰則の
整備に関する
法律は全然適用しないということにいたしておる点だけ申上げて置きます。
第三の
国有鉄道の
所有地内にある
日本通運株式会社の
施設の
処理等に関する
法律案でございますが、これは至つて少い六條だけの
規定でございますが、第
一條におきましては、
国有鉄道がその
所有地内にありますところの
日本通運株式会社並びにその他の
通運事業者を含めまして所有しておるところの
荷役機械その他の
施設を讓り受けまして、その譲り受けた
施設を公正且つ有効な
利用と、
通運事業に公正な
競争の確保を図らねばならないという
目的を表示しているわけであります。
第
二條におきましては、
日本国有鉄道が
日本通運の
施設のうち、どういうものを譲り受けるかという
範囲を示しております。即ちそこに書いてございますから四号までの
施設、
荷役機械、貨物の入換に使用する動力車、倉庫、上屋、
労務員詰所、荷扱所その他作業用の建物、貨物の積卸及び保管に使用する構築物、これらの一から四号までの
施設の中で
国有鉄道が
事業を
運営いたして参ります上において、
荷主又は
通運事業者に対しその共通の
利便を与えるために、有効な
利用を保障する上からしまして必要なものに限つているわけでございます。そしてその
国有鉄道が日通から譲り受ける方法は、第四條の第二項で
規定しておりまするところの交換の方法か、或いは又工事
予算の中に決められた額の中で譲り受ける必要があるということを
規定しておるのであります。
第三條は、第一項におきましては譲り受け物件は誰が
指定するかということでありまして、日通から買受けます
施設は
全国の各駅所にございますが、それをどの物件を譲り受けるかということは、
日本国有鉄道が
指定をして決めるわけでございます。第二項におきましては、譲り受け物件の
価格の評価をどうするかということを決めております。この方法は、物件の
価格の評価と、第四條によりまして、
日本国有鉄道が
日本通運株式会社の
株式を九十九万株持つておりますからこの株を処分しなければなりません。その処分をいたす場合におきましてその
対等額の
範囲内におきまして、物件と交換することを第四條で決めておりますが、その
株式の
価格の評価、日通から護り受けますところの物件の評価と、日通へ譲り渡すところの
株式の評価、その他譲り受け、譲り渡しに必要な
事項を決めなければなりません。その決めます方法は
国有鉄道と
日本通運会社と
第三者との三人によつて決めるのでありまして、その
第三者を決めます方法は、
国有鉄道と
日本通運とが
協議をいたしまして
候補者を作ります。その
候補者若干人の中から
運輸大臣が選定をして
第三者を決めるのであります。この
運輸大臣が
第三者を選定いたします場合には、国庫大臣たるところの大蔵大臣に
協議をすることといたしております。この三者によりまして
協議がまとまりますと、株の値段、
施設の値段というものが決まるわけでございますが、これは
運輸大臣の
承認を得なければいけないということにいたしております。
運輸大臣が
承認をいたします場合にはやはり大蔵大臣と
協議をするということを第二項及び第五項で書いております。若しもこの三者の
協議が整わないときには、又
協議することができない場合には、
運輸大臣が裁定をすることにいたしております。
運輸大臣の裁定をいたします場合にはやはり大蔵大臣に
協議をすることにいたしております。この裁定がございますれば実際の裁定の定めるところに従いまして効果が発生することを第四項に書いてあるわけであります。
第四條は、先程も申し上げましたが、
日本国有鉄道が日通の株を九十九万株持つておりますが、これを他に譲渡することを第一項に決めまして、第二項におきまして日通から譲り受けるところの物件と
対等額の
範囲内で交換することができるということを書いておりますが、その交換の方法によりますと、
予算を通さずして
対等額の
施設の譲り受けができるわけであります。この交換する場合におきまして
施設の
価格の方が
株式の
価格より高い場合におきましては、金銭でその差額を支拂うわけであります。この支拂の限度等につきましては工事
予算によつて決められました
予算の
範囲内でやります。若しも
株式の
価格の方が物件より高い場合におきましては
日本国有鉄道は他にこの超えただけの額の
株式を処分しなければなりません。第五項におきましては、
国有鉄道が
株式を交換によつて処分いたしました場合には証券
処理調整会議にはかけないでやる。第六項においては、第四項によりまして日通以外に
株式を譲渡いたします場合には証券
処理調整会議にかけて処分するということを
規定いたしております。
それから第五條におきましては、
国有鉄道がその
所有地内にありますところの
日本通運以外の
施設についても、やはり
予算の
範囲内で譲り受け又は賃借することを定めておりますが、この場合には必ずしも所有権を
国有鉄道が取得しないでもいい、ただ借りて全部に公開をすればよろしいという意味合であります。
第六條におきましては、地方
鉄道軌道、私鉄の
所有地内に日通が
施設を持つております場合がございますが、私鉄から日通に対しまして
施設の譲渡又は賃貸の要求がございますれば、勿論日通は別に集排
指令によりまして
義務を負うことと相成りますので、これに応ずるわけでございます。従いましてこれによつて生ずるところの譲渡又は賃貸の
価格決定の方法は、日通と私鉄の該当者の
協議によつてやることを定めておるのであります。
甚だ長くなりましたが、以上をもつて三
法案の
概畧を申上げて置きます。
〔内村清次君「議事進行について」と述ぶ〕