○足鹿覺君 ただいま上程されました
食糧確保臨時措置法の一部を改正する
法律案に対し、私は日本
社会党を代表いたしまして、絶対
反対の
意見を表明せんとするものであります。(
拍手)
本法は、すでに第二回
国会において
法律として成立し、去る第五
国会に
提出いたされました。参議院では一部これが修正可決されましたけれ
ども、本院におきましては、この
法律が追加供出を法制化し、これを強権の対象とせんとする
憲法であることにより大問題となりまして、
政党政を超越して熱烈なる
反対の空気に包まれ、継続
審議とな
つて今日に及んだのでありますが、一方院外におきましても、農業団体はもちろん、農民団体等はあげて絶対
反対を表明し、法案通過措止のために全力を盡したことは、われわれのいまだ記憶に新たなるものがありまして、
各位のすでによく御存じの通りであります。私は、いまさらあらためてこれが
反対理由について喋喋を要しないと思いますが、第五
国会提案当時と、第六
国会の今日の間には、同じ
法律でありましても、さらに
反対理由が大きく強く当時より主張せられる情勢に立ち
至つておりますし、またこの情勢の変化は、さらにさらに拡大され、確実になろうとしておりますので、かかる新しい観点から、おもなる
反対理由を鮮明にし、われわれの
態度を明確にいたしたいと存ずるものであります。
まず第一点といたしましては、
政府は本法案の改正を必要とするという客観的條件の大きな変化をま
つたく無視しておるという点であります。すなわちそれは、食糧の需給状況並びにその見通しの点についてであります。今や、国際小麦協定参加が確定的となりまして、これが実現のあかつきには、今後四箇年にわた
つて、国内小麦価格とほとんど同類あるいはそれ以下の価格でも
つて大量の輸入が約束されるに至りました一方、去る十一月二十二日、日英新通商協定の調印によ
つて、一億四千三百万ポンド、約四億ドルの取引を行うことをとりきめられ、
政府は今年度、ビルマから米十万トン、イラン、イラクから大麦三万三千トン、その他オーストラリアからの小麦を合わせますと、食糧三十万トン近くの輸入が予定されているとのことであります。これらの事情を反映して、来る二十五米穀年度においては、約三百七十五万トンの、しかもコマーシヤル・フアンドに重点を置かれた輸入の構想すら伝えられておるのであります。しかして
政府は、来年一月より、いもの自由販売を認め、穀類のみの二合七勺配給の確保の構想、あるいは米券による米の自由販売等をも
つて臨みつつありまして、このことは、国内において可能最大限の食糧確保をはかり、その不足分を輸入にまつという従来の方針は放擲せらまして、今や食糧
政策は一大転換期に直面しつつあるのであります。
かかる情勢と事実のもとにおいて、あえて追加供出の法制化を中心とする
政府の本案
提出理由によると、国内生産食糧は、可能な限り余すところなく集荷すると言
つておりますが、本政生
法律案は、
民自党及び現
内閣の公約でありまする米の自由販売、各種統制の撤廃を目ざす自由経済
政策と全然相いれないところの矛盾きわまるものであると同時に、これは公約の
放棄、
政策の
自己否定でありまして、
民主自由党としての
政策的自殺行為と断定してはばからないものであります。(
拍手)
次に、第二の
反対理由といたしまして指摘いたしたいのは、本法案は、農民が営々辛苦の成果を、強権をも
つて追加供出せしめんとすることにのみ汲吸といたし、いかにすれば農民が喜んで供出し得るか、そうして国の施策に協力することが
できるかということについては、何らの具体的な施策を講じておらないのであります。農業生産の増強を企図し、わが国過小農経営が、世界農業の一環として、それとの競争に耐え得ることがごとき農業近代化を促進し、農業の生産性を高めるための、後進産業策としての日本農業のための
国家的保護
政策が何ら構ぜられることなく、本末転倒して、かかる悪法を
提出しておる点についてであります。
すなわち、最近における現
政府の農業
政策を見るに、増産を促進し、これを協力に推進する方途とは逆行いたしまして、反動的農業
政策を採用せんとしつつあるのでありまして、その集中的現れといたしましては、
政府は農地改革の形式的完了を強調し、
予算圧縮の口火をも
つて、自作農創設維持特別措置法の破棄、農地
委員会の廃止統合等、事実上の農地改革打切りの暴挙をあえてせんとし、農村の民主化を圧殺せんといたしておるのであります。あるいはまた、増産の基盤というべき土地改良に関する公共事業費のごときを大幅に縮減し、
昭和二十四年度
補正予算の編成につきましても、土地改良
関係には何らの措置をも講じ得ず、来年度
予算についても、公共事業中に占める農地改良の
予算は、二十四年度の二〇%に対し、来二十五年度は八・五%程度しか計上いたしておらないのであります。戰時、戰後を通じて行われた掠奪生産によ
つて破壊された地方開発のために、今や農民は、自発的に、懸命に
政府に協力しておるのでありますが、この協力に、はたして何を與えたでありましよう。全国の農民
諸君の憤激はまさに高潮に達すると言
つても決して過言ではないと思うのであります。(
拍手)
第三点といたしまして、追加供出割当を法制化いたしますとき、現行事前割当制度はま
つたく無
意味なものに化するのであります。しかして、その結果は、農民は何を
努力目標にするか。その目標を見失うに至ることは、農村の実情に若干通ずる者のひとしく気のつくことであろうと存じますが、
食糧確保臨時措置法がこの改正案のままの姿で行きますならば、戦争中における作付統制合的な
性格のみを残して、
政府の一方的條件のみで供出を強制する結果とな
つて、生産意欲を著しく減退せしめ、かえ
つて政府が考えておる計画生産とは逆な結果すら来しことを、私
どもは優うるのであります。しかも、農業の保有量や生産資材配給量が、とうてい農家の切実な要望にはこたえておらない場合、事事前当を越えて農家が増産をし、供出することは、すべての資材の入手、労力の確保、ともに農民の創意と血のにじむ
努力の結晶でありまして、この粒々辛苦の農民の結晶に対して、一方的條件でも
つて供出を強要する権利は、断じて
政府にないと、私は断言してはばからないものであります。(
拍手)
かかる無謀な
法律を多数の力によ
つて成立せしめられましても、そうして農民にこれを押しつけられましても、それがたいと民主的は議会において民主的形式で決定されたと強弁をいたしましても、放そのものの実施の結果は、必ずや徳川幕府治下における封建
政治の
内容と異ならざる結果をもたらさぬと、だれが断ずることが
できましようか。
最後に私は、私の最も
反対理由として強調し、
政府、
與党の猛省を促したい点についてでありますが、本年度米価決定の経緯と、これが結果及び本年度産米の補正割当の実情をめぐ
つて、本法との関連において指摘してみたいと思います。
すなわち
政府は、米価
審議会の答申をま
つたく無視し、四千二百五十円の定米価をも
つてこれを押え、超過供出報奨金の三倍を二倍に引上げ、早期供出奨励金に対するところの検査制度の過酷等、あるいは
予算的制限措置、米券制度等、一連の国内価格抑圧の方策をと
つていることは周知の通りであります。しかも、かかる低米価各
政策のもと、予想以外の不作によ
つて減収千二百万石といわれる作況に基いて、農民の悲痛な減額補正の要請にもかかわらず、これを二百四十五万石に辛うじて抑制しつつあるところの点についてであります。
このこと自体がどこから来るかというと、申すまでもなく、ドツジ・ラインに基く急速なる自立経済は、貿易バランスを急速に発展確立することを目標といたしております。これを前提として国内経済のあり方を組み立てておるのでありますが、貿易
関係から見ました場合に、日本品の輸出先は、主として東南アジア、ポンド圈であります。この東南アジア地帯より輸出いたしますものは、ほとんどその大部分が食糧品と原料品であることは御存じの通りであります。この地帯に日本の商品を売り込まんといたしますならば、どうしてもパーターによるほかない。向こうの食糧を輸入しなければならないのでありまして、これらの輸入数量の増大は、ポンドの切下げによ
つてその影響は減殺されるとは申せ、いまだ国内生産者価格を相当上まわ
つていることも明らかであります。
また国内公債を主体として見ました場合に、農業パリテイ指数も若干上昇を見せておりまして、その結果として、食糧の国内消費者価格の値上がりを来さざるを得ない実情にあることも、また職者のよくみとめているところであります。しかも、ポンド切下げに即応して円レート切下げがただちに行われないといたしまするならば、国内輸出商工業は、これに相応するところの態勢をつくり上げて行かなければならぬ。すなわち、企業の合理化を強行せざるを得ないのでありますから、各自賃金の値上がりは、とうてい期待することが
できない。一方、生計費中のエンゲル係数について見まするならば、すでにエンゲル係数は六二%の高率に達しておりまして、これ以上上昇せしめることは、とうてい不可能な事態であります。
従つて、現在以外の労働事情の悪化は、労働者を刺激し、労働者は、生活権擁護のために、いろいろ困難なる労働情勢の続発とな
つて現れ出ることは、想像にかたくないのであります。この労働事情の不安からいたしても、ドツジ・ラインの構想が暗礁に乗り上げないと、だれが断言
できるでありましよう。(
拍手)
かくして、最後のしわは、現
政府の方針に基いて、消費者価格の値上がりを実質的に吸収するためのいろいろな施策、なかんずく所得税の軽減、主食増配の措置等によ
つて、この国内消費者価額の値上がりを一方において吸収する。すなわち、いもの統制撤廃、穀類のみによ
つて二合七勺の配給を確保するということが、この構想の裏づけとな
つていることも明らかであります。主食の値上がりの家計費へのはね返りを吸収いたしまして、賃金値上げの
要求を抑圧し、一方において低米価で農民を押え、一方において労働者の賃金値上げの
要求を圧殺し、一石二鳥の効果をねら
つたのが、今回の
食糧確保臨時措置法の根底を流れる一環した思想であると存ずるのであります。(
拍手)このためには輸入食糧価格が問題とな
つて参りまして、高い輸入食糧の数量の増加が消費者価格に及ぼす影響を
でき得る限り食いとめるためには、低い生産者価格の国内食糧を最も多く獲得する必要に迫られて来ることは明らかであります。そのためには、低米価四千二百五十円、並びに本年産米の減額補正を最小限度に食いとめようといした
政府の措置についても、これはあまりにも明らかであり、おおうことの
できない事実であろうと存じます。しかして、これが立法的な基礎を食確法の改正に求めんとしたものでありまして、本食確法の改正
法律案こそは、低米価、低賃金によ
つて、農民と労働者の犠牲の上に日本資本主義の債権をはからんとするところの、
吉田内閣の一切の反動施策に一環としての意図を持
つておることが、明瞭にうかがわれるのであります。(
拍手)
私
どもは、かかる観点から、この臨時措置法の改正
法律案を、單に農民のみの
反対の声として取上げることは
できない。少なくとも、今回の
食糧確保臨時措置法に対するところの
反対の意思表示は、單に農民大衆のみならず、働く労働者、俸給生活者、そうして現在悩み苦しんでいる小さな企業をも合せて、私
ども勤労者の名において断固本法改正の提案に対して
反対の意思表示をいたしたいのであります。
以上、これを要約いたしまするならば、本法案は
吉田内閣の農業
政策の貧困さを露骨に表明していると申してさしつかえありません。一方、農村経済を破壊せんとする最も憎むべき悪法であります。私
どもは、如上の観点に立ち、日本再建の基礎として長い間苦しい生活に耐えて来た農民にこれ以上の負担をさせることによ
つて、資本主義の再建をはからんとする残忍性をよく認識することにおいて、わが日本
社会党は、断固これが
反対を表明するとともに、労働者、農民、すべての働く勤労者の名において、これが即時撤回を
要求いたしまして、私の
反対討論を終わりたいと存ずるのであります。(
拍手)