○植原悦二郎君 ただいま
議題となりました
昭和二十四年度
一般会計予算補正(第一号)、同
特別会計予算補正(特第一号)、同
政府関係機関予算補正(機第一号)、これらに関し、その内容及び
委員会における審議の
経過並びに結果について御
報告申し上げます。
これらの
補正予算については、先般本
会議において
政府側より
説明があり、また「
昭和二十四年度予算
補正の
説明」という
政府提出の資料によ
つて明らかでありますから、ここでは詳細に御
説明申し上げる必要はないと思われます。ただ、今回の
補正予算は十五箇月予算と言われるように、明年度予算と並行してその編成が行われ、
昭和二十五年度予算の大綱もあわせて発表されております。この点におきましては、従来の單純な追加予算と著しくその性格を異にしておるのであります。また、さきに第五
国会において
政府が公約いたしました税制改革の一端を実現せんとするものであります。
従つて、今後わが国の金融、貿易、物価その他
国民経済の基本に重大なる影響を與えるところの種々重要な内容を持
つておるものと
考えますので、次にその大要につき簡単に御
説明申し上げます。
政府は、今次
補正予算の構想といたしましては、当初予算当時より懸案とな
つておりました価格調整費を削減し、貨物運賃、海上運賃、電気料金及び米価の改訂を行
つて物価の均衡をはかり、しかもこれらの諸方策が家計費に及ぼす影響は減税によ
つてこれを吸収し、さらに公共事業費等の経費を増額して有効需要を
増加し、も
つて本予算通過後に生ずる内外各般の
変化、すなわち災害の発生、ポンド貨切下げの影響、シヤウプ勧告等に対処するとともに、真の総合的均衡予算を実現し、ようやく軌道に乗りましたわが国の経済の安定を
強化し、さらにその復興をはからんといたしておるのであります。
かかる予算の構想によりまして計上された
補正予算額は、
一般会計において歳入
増加額七百七十八億円余、同減少額四百十四億円余、差引き
増加額三百六十三億円余であります。歳出
増加額六百八十七億円余、減少額三百二十三億円余、差引き
増加額三百六十三億円余でありまして、これを当初予算と合計いたしますと、歳入七千四百十億円余、歳出七千四百十億円余とな
つております。
また特別会計にあ
つては、歳入千三百八十七億円余、歳出千三百四十六億円余をそれぞれ
増加いたしておりまして、当初予算との合計額は、歳入二兆三千三百四十八億円余、歳出二兆三千十八億円余とな
つております。
まず
一般会計のおもなる項目につき御
説明申し上げます。
一般会計歳出においての重要項目は公共事業費であります。公共事業費は、当初予算五百十八億円余に対し、百六億円余の
増加でありまして、その
増加割合は二割強に当
つております。この
増加の内容には、本年度に発生した幾多の台風その他の災害の復旧に要する経費八十五億円を最大のものとし、これに都市復興に要する経費、新制中学校校舎建築、引揚者住宅建築等に対する補助などが含まれております。このうち、特に六・三制の経費が当初予算において全額削除されておつた点は、さきの第五
国会におきましても種々論議のあつたところでありまして、今回の
補正により相当額の計上が行われておりますことは、それらの事情にかんがみるところがあつたものと思われます。なお公共事業費については、明年度において一千億円
程度の計上が予定されておりますことは、今後の
地方経済や労働事情にも大きな示唆を與えるもののと思われます。
この公共事業費と関連するものとして失業対策費があげられます。これは、当初予算二十九億円余に対して、十七億円余の増額とな
つております。直接の失業対策費は、このうち八億五千万円でありますが、別に失業保險特別会計への繰入れ約九億円が
増加計上されております。失業問題は、わが国当面の重大社会問題でもありまして、これが解決は国家的要請でもありますので、これに対する支出は、もとより多きに越したことはないのでありますが、財政全体の均衡より見て、この
程度の増額にとどまつたものと
考えられます。
引揚者対策については、前述の公共事業費のうち、引揚者住宅建築費一億六千六百万円を計上しているほか、別に二億円が引揚者生業資金として
増加計上されております。
当初予算審議の際重要論議の対象と
なつた
地方配付税配付金は、この
補正予算において九十億円の
増加となり、これは当初予算五百七十七億円に対し、約一割六分に相当し、当初予算との合計額は六百六十七億円になります。
地方財政窮乏の現状に照し、
地方の要望にこたえんとしたものでありまして、当然の
増加のように
考えられます。
また
政府の出資金及び投資
関係におきまして合計五十二億九千万余円の
増加を見ておりますが、その内容は、肥料
配給公団及び油糧公団に対する出資金四十二億九千四百万円、
国民金融公庫出資五億円及び新設の輸出信用保險特別会計への繰入れ五億円であります。
次にこの
補正予算において注目すべき点は、インフレ抑制に対する
政府の意図が、本予算と同様になお積極的に採用されていることであります。すなわち、まず第一に、食糧管理特別会計への繰入れ増として百七十億円を計上いたしているのであります。この
増加は、輸入食糧の
増加、米価の改訂、貨物運賃の引上げ等により運転資金の
増加が見込まれたためでありまして、これが調達を借入金に求めず、
一般会計の租税収入でまかな
つていることであります。
第二には、総合予算の均衡という点を強く堅持していることであります。このことは、特別会計及び
政府関係機関収支差額を
一般会計より繰入れていることに十分現われていると思われます。すなわち、農業共済保險特別会計への七億七千四百万円、
郵政事業特別会計への四億一千二百万円、薪炭需給特別会計への五十四億七千万円、船舶
運営会への二十八億四百万円、
日本国有鉄道公社への三十億五千二百万円等が計上されていることであります。
以上のごとき
補正増加に対する財源として、
政府はまず歳出中の価格調整費を大幅に削減することをも
つてこれに応ずることにいたしております。御
承知のごとく価格調整費は、為替一本レート
決定の結果、輸入物資の価格を通じ国内物価水準に急激なる変動を與えないため、当初予算におきまして二千二十二億円が計上されていたものでありますが、その後内外の経済
情勢に照し、また
国民経済に対する国家の千與を能う限り排除し、企業の自主性を尊重せんとする
政府の方針から、本
補正予算の編成にあた
つては、これをでき得る限り
整理削減することに
なつたものであります。その結果、安定帶物資分百二十八億円余、輸入物資分百一億円余、その他合計二百三十億円の減額とな
つて現われているのであります。なお輸入食糧が当初の計画より約六十万トンの
増加を見たために、その補給金が相当増額されておりますから、これを勘案すれば、実質上の削減はかなり大きなものがあるのではないかと存じます。
次に、
政府は当初公約の減税を本年度より実現するために二百億二百万円の減税をはかり、これに対しては租税の自然増収二百十三億円余を見込み、差引き租税収入十三億一千万円の
増加とな
つております。
国民の租税負担を軽減することは当初予算以来の懸案でありまして、その後シヤウプ使節団の
報告があり、それに基き明年度税制の一大改革を行う予定と言われているものであります。本年度においても、とりあえず明年一月一日から所得税及び物品税の若干の軽減を行うとともに、シヤウプ
報告に示された期日に先立
つて、同じく明年一月一日より取引高税、織物消費税及び清涼飲料税を撤廃することにな
つております。思うに
政府は、この
補正予算編成に際し、明年一月より基準米価を四千四百五円とし、消費者価格を現行より十一%弱引上げ、貨物運賃は陸上八割、海上九割三分を引上げ、給與ベースは現在のまますえ置くことを基本方針としたのでありますが、これがために生ずる実質賃金の低下を避けんとする
考えから、年度内の減税
措置として間接税の減税に主力を置き、これにより大衆の租税負担を軽減し、も
つて物価上昇の抑制をはか
つたのみならず、進んで物価を下降の趨勢に置くようにいたしたいとのことであります。その他財源といたしまして、前年度剰余金二百六億五千百余万円のほか、官有財産拂下代、復興金融金庫納付金、価格差益納付金、雑収入等があり、また減少分には、タバコ及びアルコール専売益金十五億一千四百万円余があります。
次に特別会計につき御
説明申し上げます。今回新たに
設置されることになりました外国為替及び輸出信用保險の両特別会計を加え、合計三十一の特別会計となりましたが、その大部分にわたり
補正が行われております。しかして、これらはいずれも当初予算成立後に生じた諸般の事情により、やむを得ない予算
措置の必要を生じたものであります。そのうち薪炭需給調節特別会計は、その重要性を認めましたので、これに対する小
委員会を開き愼重審議することにいたしました。その結果、相当額の損失のあることが判明し、それがために買入れ代金の支拂いに行き詰まり、巨額の未拂金を生じております。さらに今年度内に償還すべき薪炭証券もあるのであります。これがため生産業者は極度に窮迫し、また集荷団体は、八月一日の買上げ打切りにより相当の打撃をこうむ
つておりますので、すみやかにこれに対する金融の道を開いてやることが必要とな
つたのであります。そこで、緊急やむを得ぬ
措置といたしまして、五十四億七千万円を
一般会計より繰入れ、償還すべきものは償還し、支拂うべきものは支拂うように、当局に対して嚴重に警告を発することにいたしました。
最後に
政府関係機関に関する
補正予算は、本年六月一日より
政府関係機関となりました
日本專売公社及び
日本国有鉄道の二つが、その設立とともにそれぞれ従来の專売局特別会計及び国有鉄道事業特別会計の予算をそのまま引き継いだものをしばらく別といたしますれば、価格調整公団外六公団、復興金融金庫並びに船舶
運営会に関するものであります。しかして、これらはいずれも海陸貨物運賃の改訂、輸入食糧の数量の
増加、米価の改訂等の必要やむを得ない事情のための予算
措置と
考えられます。
以上は
昭和二十四年度
補正予算案の大要でありますが、次に
委員会における審議の
経過について申し上げます。
本
補正予算案は、十一月十四日予算
委員会に付託され、以後二十六日までの間、各党
委員と
政府側との間に終始熱心なる
質疑応答がかわされました。それらの
質疑応答の詳細は
速記録によ
つて御了解を願うこととし、今その若干について御
報告いたします。
まず最初に、この予算の性格について、
委員より、本年度の当初予算はインフレ収支の予算であつたが、この
補正予算は復興予算であると言われている、
政府の所信いかんとの
質疑がありました。これに対して
政府側は、インフレもほぼ収支して、経済も安定の軌道に乗りつつあるので、この予算並びに明年度予算は復興予算としての意義を持ち、公共事業費の
増加その他により有効需要を増大せしめているとの答弁でありました。
次に租税問題について、まず
政府は本
補正予算において租税の自然増収を多額に見込んでいるが、かかる自然増収は不可能ではないかとの
質疑に対して、
政府側より、法人税の増収は法人の申告並びに納税成績がはなはだ好調なためであり、源泉所得税の増収も一部民間給與の上昇等の原因によるものであり、酒税の増収も増石によ
つて生じたものである。
従つて、これらはむりのない合理的なものであるとの答弁がありました。
さらに来年度の減税の見通しについては、来年度の租税のわくは大体四千四百億円
程度とし、本年度より七百億円の減税を見込んでいる、軽減の細目については、いまだ確定していない、所得税の軽減に関しては、できるだけ努力したいとの答弁がありました。
次に米価に関し、
政府は一定の所信を有しておらぬようだとの
質疑に対しては、
政府は主食等の価格は引上げて、国際価格にさや寄せする方針をと
つたのであるが、これを一挙に引上げると給與ベースに著しい影響を與えるので、徐々に行う予定であるとの答弁がありました。
次に金融
関係の問題について、まず最初に、最近の金詰りに対していかなる方策をとるつもりかとの
質疑に対し、金融の梗塞はある
程度やむを得ないが、見返り資金の迅速かつ有効なる活用、
日本銀行による融資のあつせん等により調整をはかりたいとの答弁がありました。さらに長期金融に関する
質疑に対しては、設備資金は企業の自己調達によるのを原則とし、不能の場合には見返り資金の放出、興業銀行の利用等によ
つて遺憾なきを期したい、興業銀行並びに特殊部門の金融機関としての農林中央金庫、商工組合中央金庫等の増資並びに債券発行限度の拡張をはかりたい、また不動産金融に関しては、勧業銀行類似の金融機関をつく
つて住宅資金の融通もつけて行きたいとの答弁がありました。
次に貿易の問題に関して、
国際情勢の
変化等により貿易が不振となり、厖大な滯貨を生じているが、この打開策いかんとの
質疑に対しては、バーター貿易の多角的通商協定への切りかえ、めくら貿易の解消、輸出入の大幅民間
委讓、その他合理的な為替管理等の諸方策によりこの難関を切り開いて行きたい、また現行為替レートは堅持する方針であるとの答弁がありました。これに関連して、見返り資金は貿易金融に
使用する
考えがあるかとの質問に対しては、見返り資金は長期投資または債務償還に
使用するのが
建前であるが、将来輸出滯貨等の処分のような貿易金融にも利用する用意がある、しかし、これを外国商社の貿易資金に
使用させるようなことは想像もしていないとの答弁がありました。
さらに年末並びに第四・四半期の通貨金融
情勢の見通しに関する
質疑に対しては、年末の通貨発行高を昨年末より低く見ているのは、本年度の税収が順調であることと、
政府支拂いが年末に集中しないためである、また第四・四半期には約一千億円くらいの徴税が見込まれる、しかし見返り資金も相当放出できる予定だから、昨年度のごとく急激な通貨収縮は起らないとの答弁がありました。
次に公共事業費に関して、明年度からの全額国庫負担の災害復旧事業は市町村の分にまで及ぶか、また過年度災害分をも含むかとの
質疑がありましたが、これに対して、災害復旧事業をどの
程度まで国庫負担とするかは目下検討中で、いまだ最終
決定に至らないとの答弁があり、さらに来年度の災害のための
地方起債のわくについても、国庫負担の分とにらみ合せて検討中であるとの答弁でありました。また農地改良費が不十分ではないかとの
質疑に対しては、本年度は財政面の制限よりやむを得ずこれを圧縮したが、明年度予算においては相当希望が持てるとの答弁がありました。
また薪炭特別会計への五十四億七千万円の繰入れについて、同会計がと
かくの疑惑を生じているこの際、その
整理の見通しもつかぬうちに、かかる巨額の繰入れをなすのは不当ではないかとの
委員よりの
質疑に対し、この繰入れは
整理とは別個のものであり、これによ
つて問題を糊塗するつもりは毛頭なく、
整理は
整理として嚴格に実施して行く方針であるとの答弁がありました。
次に失業対策の問題について、都市の雇用数の減少及び農村における厖大な半失業者に対して
政府はいかなる対策を有するかとの
質疑に対し、失業対策の有するかとの
質疑に対し、失業対策の根本は産業の振興、輸出の促進にあるが、
経過措置としては失業保險及び失業対策事業によるべきである、潜在失業者に対する対策としては、結局
政府の諸経済施策の奏功にまつべきであるとの答弁でありました。
次に
委員会におきましては、本
補正予算の重大性にかんがみ、十一月二十一日、
参考人として冨士銀行社長迫靜二君外三名の御出席を求め、忌憚のない御
意見を聽取いたしました。そのうちの若干をあげますと、復金の貸出を嚴重に回収するのは当然であるが、急激な回収は経済界に支障を来させる、
従つて、本予算案に五十億円の復金回収金の
増加を計上しているのは
賛成できない。給與所得者に対する減税は、今回の
程度では、昨年以来の物価騰貴による家計費への影響を相殺していない、加うるに米価の引上げ、価格調整費の削減等を考慮に入れると、実質賃金は低下するであろう、さらに長期の農業資金として財政資金を放出すべきであるとの
意見の開陳がありました。
質疑は本日午前中をも
つて終了し、午後
補正予算三案につき
討論を行い、
民主自由党を代表して苫米地英俊君、民主党第十控室を代表して奧村又十郎君、公正倶楽部を代表して世耕弘一君よりそれぞれ
賛成の
意見を述べられました。また
日本社会党を代表して勝間田清一君、民主党第九控室を代表して中曽根康弘君、
日本共産党を代表して風早八十二君、新
政治協
議会を代表して松本六太郎君、
労働者農民党を代表して黒田寿男君等よりそれぞれ
反対の
意見を述べられました。
討論を終り、予算三案について採決いたした結果、いずれも多数をも
つて可決いたしました。
以上御
報告申し上げます。(
拍手)