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猪俣委員 今の御
説明を聞きまして、たいへん
了承したので、さもあるべきことだと思うのでありますが、二千件のうち十八件くらいしかないとしますと、今回の某
地方裁判所に行われました判決は、私どもとしてはまつたく不可解千万な判決だと思うのであります。開放を受けた人間は十数年聞そこを賃借し耕作していた人間でありまして、しかしてその土地を取上げられると、ほとんど一町何反の耕作が、農業施設がないために不可能になるような、まつたく追い込まれた
事情のものであ
つて、客観的に見まして、どういうふうに考えても開放することが至当であると思われる、地形上からもそうな
つているのでありますが、それで農地
委員会が、つまり自作農創設特別措置法の十
五條の一号であつたか一号で解放したのだが、そういうようなことを問い詰めると、農地
委員会と申しましてもしろうとの集まりでありますから、何か妙な返事をした、それによ
つてすぐ敗訴をさしたというような事案でありまして、私も
相当農地改革の問題につきましては事案を取扱つたのでありますが、まことに異例な状態でありますので、どうも何か
裁判所の空気がかわ
つて来たんだろうかというような疑問が出て来た。なおこれを政治的に見まして非常に重要なことは、これが敗訴の判決が伝わりますと、その村の地主連中が一齊に裁判をする傾向にな
つて来たのでありまして、これは大きな一つの問題であると思います。県農地
委員会も非常に驚愕いたしておるのであります。有効妥当にやりました開放問題が、
裁判所の判決によ
つてくつがえされた。そうするとどうせ取上げられる地主たちは、不愉快な思いで、ただ国法に従う意味でやつたのでありますから、
裁判所がそういう態度なら、おれもひとつや
つて見るというようなことで、続々とそういう訴訟問題が起
つておる。そうするとこの開放問題が安定しないという状態がその村に起りつつある。これはもちろん
裁判官諸公に対しまして、われわれが要求がましいことはできないのでありますけれども、いわゆる司法
行政の部面として、十二分に司法の
裁判官のそういう頭の問題につきましては、最高裁において監督指導をお願いしたい。むやみにあまりにささやかなる專門的な技術を弄しまして專門家ならざる農地
委員会の決定を、片つぱしからひつくり返して行くというようなことは、これはどうも私は時勢に沿わない動向じやないかというふうに考えられるのでありますが、今お聞きいたしますれば、全国的にはまれな事案であるということで、さもあ
つてほしいと思うのであります。農地
委員会は民主的な
委員会でありまして、まず土地の開放のごときは、実際の経験に
従つて決定いたしております農地
委員会の意思を、まず
裁判所も多分に尊重するという態度で進んでもらいたい。そういたしませんと、この開放問題は
裁判所によ
つてくつがえされて行く、日本の民主化を
裁判所がまずはばむ態度に出て来たというような印象を與えますことは、
裁判所にとりましても私は遺憾なことだと考えまして、十二分なる御指導を願いたいと要望するものであります。具体的な例はここに遠慮して申し上げないことといたしておきます。
それから次の件は、やはり自作農創設特別措置法によりまして、いわゆる自作農としてここに登場した人たちに対しまして土地の名義の書きかえをする登記手続であります。これが現在遅々として進捗いたしません。地主とされたということにな
つておりましても、登記上はほとんどそれがはばまれておるという状態でありますので、その原因と、これに対する対策というようなものを、
法務府の方々からお聞きしたいと思うのであります。