運営者 Bitlet 姉妹サービス
使い方 FAQ このサイトについて | login

1949-11-26 第6回国会 衆議院 通商産業委員会 第14号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十四年十一月二十六日(土曜日)     午後二時四十一分開議  出席委員    委員長代理理事 神田  博君    理事 有田 二郎君 理事 小金 義照君    理事 今澄  勇君 理事 有田 喜一君    理事 永井 要造君 理事 山手 滿男君       阿左美廣治君    岩川 與助君       門脇勝太郎君    關内 正一君       多武良哲三君    中村 幸八君       福田 篤泰君    福田  一君       淵上房太郎君    前田 正男君       加藤 鐐造君    山口シヅエ君       高橋清治郎君    田代 文久君       田中伊三次君    河野 金昇君  出席政府委員         通商産業政務次         官       宮幡  靖君         資源庁次長   始関 伊平君         通商産業技官         (資源庁石炭生         産局長)    田口 良明君  委員外出席者         專  門  員 谷崎  明君         專  門  員 大石 主計君         專  門  員 越田 清七君 十一月二十五日  委員關内正一君及び龍野喜一郎辞任につき、  その補欠として尾崎末吉君及び福田篤泰君が議  長の指名委員に選任された。 同月二十六日  委員尾崎末吉辞任につき、その補欠として關  内正一君が議長の指名委員に選任された。     ————————————— 本日の会議に付した事件  特別鉱害復旧臨時措置法案内閣提出第四二  号)     —————————————
  2. 神田博

    神田委員長代理 これより通商産業委員会を開きます。  前会に引続き私が委員長の職務を行います。まず委員の異動についてお知らせいたします。昨二十五日龍野喜一郎君が委員辞任せられ、新たに福田篤泰君が委員となられました。以上念のためにお知らせいたしておきます。     —————————————
  3. 神田博

    神田委員長代理 次に特別鉱害復旧臨時措置法案を議題として質疑を継続いたします。淵上房太郎君。
  4. 淵上房太郎

    淵上委員 特別鉱害につきまして委員各位愼重なる御検討願つておるのでありますが、この問題につきましては、石炭というものが国民にとつて必要な重要資材でありますので、従つて石炭国家要請に応じて出されておるという点からいたしまして、今日非常に大きな鉱害関係方面に与えておるのでありますが、これは当然国家賠償すべきものであるという考え方を持つておるのであります。国民全部が石炭を使うといつて、しかもこの春までずいぶんその筋の督励を受けて増産増産といつてつて来られたために、実に悲惨なる状態になつておるのでありまして、委員各位も適当なる時期に、なるべくすみやかな機会現地をお視察願いたいのであります。先祖伝来の美田は沈下陥没いたしまして、まるで海のようになつておる。ひどい所は五メートル、八メートルの深さになつておる。あるいは住宅のごときも倒壞傾斜いたして実にひどい状態であります。かりに福岡県のみについて見ましても、すでに一万一千町歩の耕地荒廃地になり、あるいは池になつており、二万数千戸の家屋が今や倒壊あるいは傾斜して住むにたえないような実情になつておるのでありまして、耕地家屋のみならず道路、橋梁、堤防、港湾等公共施設につきましてもその損害まことに甚大なるものがあるのであります。とうていそのままにできないので、すでに昭和八年以来国庫補助をいただいて福岡県のごときはその復旧工事をいたしております。たまたま昭和二十年、二十一年の二箇年だけ中断したのでありますが、二十二年度以降につきましても、あらゆる方法をもつてその復旧工事に苦労しておるのでありまして、国庫補助もいただくべく努力しておるのであります。また企業者立場から行きましても、すでに御案内のように配炭公団のありました期間プール資金によつて十何億円ずつの負担金を全国的に受けておるのでありますが、九州各県の大手筋炭鉱四十何鉱につきましては、その配炭公団プール資金のほかにトン当り三十六円いくらの負担金を出してもらつておるのであります。そうして復旧工事を継続いたしておるような実情にあります。もし炭鉱業者に経済的な余力がありますならば、当然できるだけの負担をしなければならないのでありますが、御承知のような産業界実情でありますので、とうてい業者負担は大きく課せられないような状態で、いつまでたつて復旧ができないのであります。地元の府県なり、市町村はあらゆる負担能力に応じて負担をいたしておるのでありますが、これまた現在の県内市町村財政立場からいつても、とうていその負担余力がないのであります。冒頭申し上げましたように国民全部が必要なために掘られた石炭であり、ことに近年数年にわたつて強行採掘され、この鉱害が特にひどくなつておるような実情からいたして、これは国民全体の負担であり、国家負担すべきものであると思うのであります。この点に立ちまして通産省当局の御意見を伺いたいと思います。
  5. 宮幡靖

    宮幡政府委員 淵上委員の御体験から、また現場の実情をよく御承知立場から、御意見につきましてつつしんで傾聽いたすわけであります。これを国の負担において全部復旧したらどうかという御意見は、一応ごもつともだと存じます。御承知のようにこの特別鉱害発生は、すでに私より淵上委員の方が詳しいわけでありまして、これは戰時におきまする濫掘——通常鉱害とは趣を異にした、名前の通り特別鉱害でありまして、これは残念ながらただいまの観点から見ますると、一般鉱害のように金銭補償をもつて償うべき範囲を超えておるのでありまして、公共事業費としてこれを支弁いたしますことは現在の状況においては不可能であります。この問題につきましてもしばしば委員会においても申しました通り、何とかして国の負担においてできないものであろうか、かようなことで最初は特別鉱害復旧ため政府の出資と申しまするか、負担金の支出をいたしまして、復旧金庫のようなものをつくりまして操作いたしたい、かようなことも考えましたが、国内の情勢及び現在の財政措置等とにらみ合せましても幾多の矛盾があります。また関係方面の御了解も得にくいような状態で、残念ながら結論におきましては、国家負担において施工いたすことができないような段階になつております。どうぞこの点は御了承いただきたいと思います。
  6. 淵上房太郎

    淵上委員 ただいま申しますように、昭和八年以来国庫補助をいただいて復旧工事をいたしておるのであります。今次官からお話のごとく、近年非常に強行されたために、その鉱害がきわめて深刻なものになつて、現在なおその鉱害の深度を深めつつ進行中であるのであります。私は特に政府当局愼重なる御検討を願いたいと思いますのは、昭和二十三年の四月十日、当時芦田内閣であつたかと思うのですが、九州山口地方における鉱害対策に対する閣議決定があつたのであります。この閣議決定は私が申し上げるまでもなく、とうていそのままに放任することができないという実情にあるがために、国費多端折柄、あるいは業者の採算が非常に不利の折柄にもかかわらず、特別の措置を講じてもらつておるのであります。現内閣が本来の御方針といたしまして、公団をできるだけ廃止する。統制をできるだけ撤廃する、この御方針であることはいろいろ論議もありましようが、まあやむを得ません。しかし公団を廃止されまするならば、この公団廃止による跡始末だけは、とにかくやつていただかなければならぬ。すでに昨年の四月から一年半にわたつて、今日まで復旧工事を継続中であるのであります。実にいろんな悲惨な実情がある。ひつくり返つてとうてい住むにたえない危險な家が相当ありましても、やがて鉱害復旧プール資金にかわるべき鉱害対策が確立されるからといつて、一応みんなを待たしております。各市町村長は実につらい立場におります。もしもこれが不幸にして鉱害復旧工事のできないようなはめに立ち至りますならば、復旧割当が一応きまつております地方といたしましては、きわめて重大なる問題が起ることを、われわれ国会としては十分認識しなければならぬと思うのであります。單に農耕地がだめになるということも大問題でありますが、それのみならず国土保全及び治安の上からきわめて重大なる問題が起る恐れがあるということを、委員各位にも十分御認識を願つておきたいのであります。本会期は日数も少いのでありますが、できますならば、一日も早く御審議願つて、あるいは政府の方もその御方針でお急ぎをいただきまして、九月十六日以降のプール資金のなくなつたのにかわるべき措置を急速に講じていただきたい。鉱害地実情を認識いたしておる私どもといたしましては、切に政府当局並びに委員会皆様方にお願い申し上げる次第であります。  もう一つ私がここにお伺いしたいと思いますことは、これが今月なり、来月なりに本法案が成立しまして、そうして鉱害復旧財源が、プール資金にかわるべきものからとることができるといたしまするならば、九月十六日以降三、四箇月にわたる間の財源のギヤツプがここにできるのであります。それに対しては政府はどういうお考えをお持ちでありますか、その点も一応御説明願いたいと思います。
  7. 宮幡靖

    宮幡政府委員 前段淵上委員の切切たる現在の特別鉱害に対する復旧の要を説かれておりますお説に対しましては、まつたく悲壮なお考えでありまして、政府当局としましても、まつたく同感でございます。  最後のお尋ねの配炭公団廃止後、この法律がかりに施行せられるとして、その問の空間をどうして埋めるかという問題でありますが、これはただいまのところ国家の費用をもちましてこの空間を補填することは、すでにしばしば申し述べるような状況で、これは不可能でありますが、この法第二十二條の中に定めましたいわゆる納付金減免規定があります中に、この九月十六日以後なお特別鉱害復旧に、鉱業権者が従来プール資金から支拂われました負担を越えて、御負担をなさるような場合には、ぜひとも減免規定を適用いたしまして、若干なりともその犠牲を緩和して参りたい、かように考えております。それ以外にはまことに遺憾でありますが、現状から申しまして、特に政府からつなぎ的な資金、あるいはつなぎ的な援助ということを、いたすことのできないような実情になつております。この点御了承を願いたいと思います。従いましてこい願わくはこの提案した法案それ自体も、現在の事情に押されまして、まずもつてこれ以上のものはないという考えで、御審議に訴えておるわけでありますが、かりにこの法律にまだ不十分の点がありましたならば、次の機会におきまして十分御審議の上御修正を決していとうものではありません。しかし事情が御説のように差迫つておりますので、本委員会に対して押しつけがましいことでありますが、この際一日も早く、この法律を施行して中断されておりますところの特別鉱害復旧を続けて行きたい。これがただいま政府当局考えておりまするところのねらいでございます。どうぞよろしくお願いいたします。
  8. 淵上房太郎

    淵上委員 私もこれ以上申し上げる必要はないかと思うのでありますが、なお他の委員の方々の御質問に関連しまして、質問させていただきたいと思うのであります。一応これで私の質問は打切りたいと思います。
  9. 神田博

    神田委員長代理 この機会に、政府側資料の御提出をあらためてお願いしたいと思います。先般来要求してありまする本法案審議に必要とする、すなわちこの被害地及び加害炭鉱名及びその被害額、また加害額等をできるだけすみやかに詳細に御提出願いたいと思います。なお政府は戰時中の強行出炭ため生じた被害であるということを、しばしば言われておりますので、これらについてはさような指示をされた書類があるだろうと思うのであります。命令書というか、指示書というかさようなものも、あるいは焼けてないものもあるかもしれませんが、できるだけ詳細に整えられまして、本委員会に配付していただくように願いたいと思いますが、いつごろまでにさような書類がいただけるか、御返事が伺えるものなら、この席で御返答願いたいと思います。
  10. 淵上房太郎

    淵上委員 資料提出を今要求されましたので、関連して申しますが、先ほど来申しますように、昭和八年から鉱害耕地だけだと思いますが、耕地復旧国庫補助金が出ております。昭和八年以降の耕地復旧補助金の調べも、あわせて御提出願いたいということを要求いたします。
  11. 宮幡靖

    宮幡政府委員 ただいま委員長から仰せの前段資料及び当時の命令書、これは大体軍需省から発した命令でありまして、二、三これを立証いたしますものが保管されております。月曜日の午後までに全資料をとりそろえて、提供いたしたいと存じます。
  12. 神田博

    神田委員長代理 重ねて伺いますが、加害炭鉱名の分、被害町村名の分は、大体わかりますけれども加害炭鉱別に集計されたもの、これはどこの山、だれが持つているか、言いかえるならば三井とか、三菱とか、何々のどこの炭鉱がいくつつて、合計してどこを加害しておるかという意味ですが、九十八億という資料が出ているから、ある程度わかると思いますが、これがわからないと、ちよつと審議上困りますから、これもお願いいたしたいと思います。  ほかに何か資料を御要求なさるなら、一括して……
  13. 加藤鐐造

    加藤(鐐)委員 私が要求したい資料は、今委員長が請求せられました加害炭鉱別の数字は、必ず調査しておられるかと思いますから、これを出していただきたい。それから濫掘命令の出たあとの毎月の出炭量、これは簡單ですから、できると思います。それからこれは簡單で、この場合でもお答え願えると思う問題でありますが、加害炭鉱の全出炭におけるパーセンテージ、これだけを資料として出していただきたいと思います。
  14. 宮幡靖

    宮幡政府委員 承知いたしました。
  15. 神田博

    神田委員長代理 それでは次は今澄勇君。
  16. 今澄勇

    今澄委員 簡單に本法案内容にわたつて、重複しない点をお聞きしたいと思います。私は本法案は至急これを実施しなければならぬと思いますが、この内容にわたつてみるときに、トン当り幾らというようなものを徴収するという点については、非常に財産権にも影響のある問題であつてちよつと簡單にやるわけには行かない部面も多多あると思うのであります。そこでまず第一点は、本法とこれまで行われておる鉱業法との関係、特に賠償の項について、事務当局の方から、詳細なお話が承れれば仕合せであります。
  17. 田口良明

    田口政府委員 従来の鉱害賠償につきましては、鉱業法規定してありますように、金銭賠償によつて補償しておつたのであります。これは炭鉱が仕事をして参ります場合に、鉱業法相当採掘個所あるいは採掘方法というような点に制限をつけまして、できる限り被害が及ばないような措置をとつておるわけであります。これは鉱業法の趣旨から申しましても、また一方鉱業権者経済的負担の面から見ましても、両方から申せるのであります。こういうできる限り被害最小限度にとどめたいというやり方をもつてしておりましても、なお被害の及んだ面につきましては、これを原状回復の責任でなく、金銭をもつて賠償することにいたしておるわけであります。具体的に申しますと、たとえば田畑鉱害をこうむつたという場合には、この田畑からとれます収穫高を計算いたしまして、その減産の額に応じまして負担炭鉱側で持つというやり方をいたしております。これが従来からまた将来に及ぶ一般鉱害に関する金銭賠償方法であります。ところが本法案規定してあります鉱害は、これを特に特別鉱害というふうに限定しておりますのは、その点でありまして、一般鉱害は時期的にも遠い過去から遠い将来にまで及ぶ連続的の鉱害であります。特別鉱害は、この案で規定しておりますのは、時間的には、昭和十六年の十二月から終戰までという、約三箇年半の期間を、ここに限定しておるわけであります。もちろんこの期間は以上の通りでありますけれども、さらにこの第三條第一項の二号には、掘採個所、あるいは掘採方法、あるいはその他の方法によつて、いわば国の要請によつてはたしてこれが原因されたのかどうかという点を、十分に認定するような措置が講ぜられておるのであります。さらに第三点におきましては、これがはたして復旧に適するかどうかという適格性考え、さらに緊急性を審査するということ、この特別の鉱害につきましては、第一の時間的問題、第二の採掘個所の問題、もしくはさらにこまかく申しますと、方法その他の措置、そういう点を十分認定する。第三番には、ただいま申しましたように、これが復旧適格性があるかどうか、これが緊急性があるかどうかという点を十分に審査いたしまして、そしてこれを特別鉱害というように認定しようというのが、本法第三條に規定してあるところであります。この特別鉱害一般鉱害と異なりまして、ただ單に金銭賠償ということで終りといたしません。あくまでもこれを復旧して、元の効用にまで回復するというのが、これまた一般鉱害と異なつた点であります。  以上の点がごくかいつまんで申しますと、一般鉱害特別鉱害の特に違つておる点であると申せるかと思います。
  18. 今澄勇

    今澄委員 今の御説明で、第三條、一項、二項の点に触れていただきましたが、第三條第一項中の第一号、二号のいま少し具体的な説明と、もしこれらの特別認定に不服があつた場合には、一体、どういうふうな処置をとつて、これに対抗できるかという点について、御説明願いたいと思います。
  19. 田口良明

    田口政府委員 第三條第一項におきましては、先ほども申しましたように、時間的な期間をここに区切つてございますが、この点につきましては、先ほど委員長から資料提出を求められましたので、追つて資料提出いたしたいと思います。ただここで概括的に申しますと、この期間につきましては、もとより昭和十六年の暮から終戰までの間には、戰局が刻々と苛烈になつて来たという現象に従いまして、増産命令なり、あるいはその他の措置におきましても、かなり後ほど著しくなつて参つたことは当然でありますが、私ども考えておりますのは、第一には生産割当、すなわち増産命令に基く強行出炭が行われたということについて、いついかなる命令なり措置が講ぜられたかという点でございます。まず第一に生産割当増産命令に基く強行出炭といたしましては、昭和十七年二月二十一日に、石炭統制会社統制規則に基く生産割当というものが決定されまして、非常に強硬な生産割当生産業者に課した。これに違反したような場合には、相当過怠金をとるというような條文もありまして、相当石炭統制会統制規定というものが強行であつたということは、また後ほど資料提出いたしたいと思います。  それから第二には、昭和十八年十月三十一日に、例の軍需会社法というものが制定されまして、この軍需会社法に基く生産命令は、相当強硬なものであつたということは、ただいまにおきましても想像されるところでありまして、この軍需会社法に基く生産命令相当強硬な命令を出しておるわけであります。また昭和十七年の四月二十七日に当時閣議決定として資料が残つておりますが、例の鉄、石炭、アルミニウムの三大資源増産確保に関する閣議決定がなされておりまして、この決定文の後半には相当この実施によつて国民生活影響を及ぼすかもしれぬがやむを得ないという條文がございます。以上が第一の生産割当増産命令に基く強行出炭の一例でございます。  第二には掘採方法強制による強行出炭ということが考えられると思うのであります。その問題につきましては、一応考えられますのが、中央からひんぴんとして現地に発せられました通牒命令指示というような方法によりまして、相当措置が講ぜられております。そうしておおむねこれは国家総動員法に基き、あるいは重要鉱物増産法に基いてなされた臨時的な措置であつたわけであります。また中央措置に引続きまして地方において、具体的に申しますと当時九州地方鉱山局あるいは中国地方鉱山局から相当な、また具体的な命令通牒が出されておるわけであります。またこの中で特にここで具体的に申し上げられると思うのでありますが十六年の六月一日に鉱業法の一部の改正によりまして、従来隣接鉱区はお互いに間隔地を設定しておつたのであります。またそれが法律によつて規定されておつたのでありますが、この十間の間隔をとつてもよろしいという措置が講ぜられたのが昭和十六年六月の一日であつたのであります。これもやはり一連の掘採方法強制による強行出炭であつた考えられるわけであります。  第三は行政査察使による強制的措置、指導、例の昭和十八年の三月十七日に行政査察使の制度が設けられまして非常に強大な、しかも広汎なる権限を行政査察使にゆだねまして、この査察使が主として九州地方、その他の主要炭田査察に参りまして、業者をしていかにして石炭が出ないか、これはいかにして出させるかということについて、これはむしろ公式な通牒その他によつてではなくて、口頭によつてなされたのが、行政査察使による強制的な措置であつたわけであります。  第四番目には一般的増産運動ということが、昭和十六年十二月の例の日栄戰争開始から始まりまして、あるときは挙国石炭増産運動といい、あるいは非常採炭増産期間といい、ありとあらゆる増産運動が夜を日に次いで連続強行されたのでありますが、このときには先ほど来申しましたようないろいろな措置によつて、すでに従来通常行わるべき採炭方式がくずれておつたということはいえるのであります。そういうような措置によつて一般的増産運動ということが、相当この国家要請による特別の鉱害発生原因をなしておつたということがいえるのであります。  最後に第五番目として、採掘跡の充填とかということについての、特別な鉱害発生しておりますが、これは当時資材労力その他が極度に逼迫して参りまして、それがために、普通なら通常講じ得るような措置が講ぜられなかつた。ということは、当時半島労務者を大量に炭鉱に入れたのが、昭和十六年から十七年にかけてであつたということがいえるのであります。また資材についても、鉄鋼材、火薬、坑木その他あらゆる資材がきゆうくつになつて参つたということが言えるのであります。ここに試みに一例を申しますと、昭和十六年までは一トンを採掘するのに投入する鉄鋼材が一トン当り二キロ三分ほどだつたのでありますが、十七年からそれが一挙半分に減りまして、二トン三分何厘というように投入資材の激減をしなければならぬということになつた。当時選炭機を備えつけるより巡洋艦をつくつた方が戰力の増強になるというようなことから、炭鉱に対する鉄の投入量がきわめて逼迫して参つたのであります。これがため炭鉱は通常講すべき措置ができなかつた労務の面において、資材の面において、そういうことをしたのは、やはり国家が強硬な増産命令を出し、非常に適当な増産割当をいたす一方、それに使う資材労務の点をきゆうくつにして、これがために講ずべき措置が講ぜられなかつたということで、これは結局国家の強硬な措置によつて、こういう鉱害を引起したということが言えると思うのであります。以上、第三條第一項の期間の問題について、ごく概畧でございますが、お答えいたしておきます。  次は第二項の問題でありますが、この問題についてもう少し具体的な点を申し上げますと、通常考えられます鉱害の起きた原因につきましては、まず第一に採掘箇所の問題が、一つの問題であると思うのであります。その採掘箇所の問題は、先ほど期間的な問題について触れましたので、さらに申し上げる必要はないかと思いますが、たとえばここの箇所保存炭坑であるということで通常掘らない。ところが強行出炭で、最少資材最少労力と、最少期間をもつて増産するがためには、ここの炭壁を拂うことが最も増産に寄与するということが考えられまして、そういう炭壁の掘採、濫掘をやつたのであります。さらに採掘方法でありますが、普通の場合には長壁式の採炭をやるのが、最も合理的でありますが、被害最小限度に及ぼすために、柱房式の採炭方法をとるということが通常考えられているにかかわらず、これを柱房式をやめて長壁式の総拂いにかえるというような一つの特殊な方法をここにとらざるを得なかつたということが言えるわけであります。またボタの積上げにつきましても、炭坑の排水の放流につきましても、先ほど来申し上げましたように、資材労力の面からこれをはしよりまして、そういうような普通の方法を、ここにとらなかつたというようなことも考えられるわけであります。  それからまた特別鉱害が起きていろいろ不服のある場合には、これをどうする。何かできるかというような御質問と承りましたが、これは裁判にかけることはできないことになつております。
  20. 今澄勇

    今澄委員 第三條の問題については、今非常に詳細な御説明で御苦労様でしたが、これの認定に不服のある者が、裁判にもかけられないということになれば、まことにどうも一方的な話で、そういうことはあり得べからざることだと思うのであります。  それからもう一点申し上げますが、今るる説明された話によつてわかるように、戰時中から日本の戰争遂行のための強硬な圧力は、やはり鉱害のみならず、中小炭鉱の上にも全部これらは強制されて働いておるにもかかわらず、今日通産大臣は見えませんが、配炭公団廃止に伴う措置においてとられたまことに血も涙もなき措置と、計画のない、ほんとうにその場当り石炭行政というものについては、事務当局の方々は胸に手を当てて、この際今の言を翻つてみると、まことに忸怩たるものがあるであろうということを反省を求めたいのであります。  それからもう一点、裁判にかけられないというだけでは、われわれも非常に不審でございますので、打合せを願つてもう一ぺんその点を御答弁願いたい。  それから特別鉱害復旧団というものの性格と仕事の内容について、簡單でよろしゆうございますが、御答弁を願います。
  21. 宮幡靖

    宮幡政府委員 ただいま政府委員から御説明申し上げまして、裁判はできないであろうというお答えをいたしましたが、これは一応裁判はできないであろうとお答えしたことに間違いはないのでありますが、これは運用の面ににおいて、裁判必ずしもできないと申し上げかねる面もあるのであります。つまり御承知のように審議会がありまして、認定権は通商産業大臣にあるわけでありまして、認定の申請をするわけであります。それでこれが認定にならなかつた場合には加害炭鉱の方々、つまり申請人というものは、何回でも、これは行政処分でありますから、認定を要求することができるのであります。ただ一回認定にならなかつたということによつて、ただちに裁判をしていただくということはできないわけであります。そこで初めて審議会の運用というものが重要になつて参ります。そこでもし最終的にこれは不認定だというような通知をいたしたと仮定いたしまして、それの行政処分に瑕疵がありました場合は、一般法規に基くもので御出訴くだすつても、一向さしつかえない、かように考えております。
  22. 今澄勇

    今澄委員 認定をされて、その認定に入らなかつた人が認定してくれと言う人もある。しかしそれがのけられたら不服であると言つて訴えて来る場合もある。
  23. 宮幡靖

    宮幡政府委員 ですから、拔かされたものは、何回でも認定の御申請を引続きやつていただく。不認定だ、これはそうでないという決定がありました場合に、もしその行政処分に欠陥があつたといたしますならば、これは裁判で通常法規の適用の通りだと、かように解釈しております。しかしながら認定ですから、申請者は認定してくれと、何回でも申請してくださつてよい。
  24. 今澄勇

    今澄委員 認定がいやだというような場合はありませんか。
  25. 宮幡靖

    宮幡政府委員 認定の解除というような場合は、ただいま予想しておりません。工事の復旧することを最終の目的といたしております。これは相当議論のありましたところで、そういう運用をして参りたいと存じております。
  26. 田口良明

    田口政府委員 復旧国の仕事についてごく簡單にお答え申し上げたいのでありますが、復旧団と申しますと、一応妙な名前でございますが、この業務は、特別鉱害の工事費は、この法案では一応国と公共団体、鉱業権者から集めました金によつて復旧することにいたしております。その中で鉱業権者の方の負担分につきまして、従来配炭公団がプール制度によつてつてつたのでありますが、配炭公団廃止後これにかわるべき適当な機関を考えたのが復旧団でありまして、要するに鉱業権者の方から納付金を取立てまして、そうしてそれを工事ごとに、復旧工事の計画に従いまして支出して行くという、要するに金銭の出納をなすのが主たる業務となるわけでございます。この復旧団というような名前は、ちよつと妙な名前のように考えられますが、当初はいろいろな名前を考えたのであります。たとえば復旧金庫とか、あるいは復旧資金とか、あるいは復旧基金とか、あるいは復旧協会とか、名前についてもいろいろと考えたのでありますが、復旧金庫というような名前にいたしますと、何か金融の機関であるというようなことに混同されやすいというようなことも考えられまして、基金と資金というような名前も考えたのでありますが、これでは單なる基金、資金のような感じもいたしますので、ここに団という名前をつけたわけであります。また何ら復旧協会というような団体ではございませんので、一つの特殊法人といたしまして、ここに復旧団という名前をつけた次第であります。
  27. 今澄勇

    今澄委員 今の第三條の認定において不服の問題や、復旧団の問題等については、資料その他をいただき、なお不審の点がありますので、これは後刻に質問を留保いたします。  次に宮幡政務次官並びに始関政府委員に聞きますが、本法の実施による責任の所在というものは、一体どこにあるわけでありますか。
  28. 宮幡靖

    宮幡政府委員 本法施行上の責任は、通商産業大臣にあるものと考えております。
  29. 今澄勇

    今澄委員 そこで本法の責任が通産相にあるとするならば、これは宮幡政府委員もしばしば言つておられますが、戰時補償打切りによつて政府にはその責任はないということを申しておられたのでありますが、これはこの前の委員会でもしきりに議論がありましたので、私は簡單政府は戰時補償を打切つたから、これに責任がないというための理由として二、三申し述べられましたけれどもどもはその理由をどうしても承認することはできません。もし通商産業省がこれらの全責任者であるとするならば、まず第一鉱害の問題は経理問題でなくて、これは社会問題でするということが第一点、それからその被害はあらかじめ予測しないうちに被害が起る場合が多く、またいかに戰時補償とは言え、そこに炭鉱というものが介在しておるだけに、炭鉱国家強制によつてつたにもかかわらず、被害者は炭鉱にその窮状を訴えるようになつて来る。だから炭鉱は何とかしなければ、その立場はどうしてもないわけであります。これらの炭鉱の窮状をながめて見て、政府は全然責任がないということは先ほど来るる述べられた、あの一切の処置の責任を通産省にありとするならば、これまたどうしても責任がないというわけには行かない。それからもしそのまま放任しておいても、その被害はそれでとまつておるというならば、これは非常によろしいのでございますが、放任するならば、その被害はますます増大するというような傾向にあるとするならば、これはどうもほうつておくわけには行かないという、以上の三点の理由からして、どのような状況にあろうとも、政府に責任がないということは言えないのであるが、それらの問題についてはどういう観点から、政府は責任がないということを主張されるか、その理論的な根拠をひとつ明らかにしてもらいたい。  それからもう一点は、全額国家補償にするということは、この際の国際情勢、日本の現実の産業政策として困難であるということであつたが、これは私どもは当然国家が全面的補償をすべきものであると思うのであるが、そういうふうな理論的の根拠の上に立つても、かつこれを行い得ないとするならば、それにかわる次善の対策として、しかるべき適当な考えをお持ちであるかどうか、以上の点についてひとつ御答弁を願いたいと思います。
  30. 宮幡靖

    宮幡政府委員 国家の責任論に対しますることについて、まずお答えをいたしますが、これは今澄委員と論議の進め方が裏、表をなしておるのであります。一般法規の限界内におきまして、この責任がいずこにありやと申せば、理論に傾きますけれども、一応戰時補償が打切りになつておる建前から考えれば、国家の責任はないということを申し上げてさしつかえない。しかしこれは無情冷酷な言葉であります。従いましてそれに対しまする特別法として、これを設けました場合には、その法の施行においては、通商産業大臣が当然その責任に任ずべきものであるということを申し上げて参つたわけであります。またそういう方針であります。もし本法を実施するとせば、また無情冷酷な言葉であるけれども、これは国家に責任がないということを一応申さねばならないような現在の法制下にある、これを御了承いただきたいのであります。それでこれは今澄委員のお説のように国家が全部やるべきものである、こういうことも理論としては十分考えられることでありますけれども、すでにしばしば述べましたような状況で、これを行うことは困難とされる。しかしながらこれを物質的な責任論でなくて、いわゆる宗教的に考えてもらいたい。いろいろな方面から行くと、りつぱな社会問題として取上げなければならぬと思う。あえてはなはだ不行届きな微温的な行為でありましても、許される限度におきまして、この法案を提案いたしまして、御審議に訴えたような次第であります。すなわち国家が補償ができないということにかわる次善の措置として、本法が提案されておるものであることを御了解をいただきたいと思うのであります。
  31. 今澄勇

    今澄委員 本法特別鉱害復旧に対する一番いい法律でないということを認められたことについては、私ももつともであると思います。私はこの法律の中において第二十二條に「その業務を行うのに要する費用に充てるため、一定の金額を復旧団に納付しなければならない。」こういう文句がありますが、これなどは先ほどの私が申し上げた政府の責任論は、これは社会論であり、道徳論であり、政治史の上に立つた論理でありますが、この第二十二條中のものについては、今度は法的な法律論が、われわれは今問題にしておるのであります。このいわゆる第二十二條中にある一定の金額を納付することについては、いろいろ論議されましたが、そういうことを法律できめるについての、何か法的な根拠を政府はお持ちでございますか。
  32. 宮幡靖

    宮幡政府委員 精神といたしましては、配炭公団廃止に伴います配炭公団の行つて参りましたプール計算に基く災害復旧対策を、そのまま継承いたしたものであります。これが何か法的根拠によつて納付金を徴収できるのかという御質問でありますが、これもやはり観念が前後しておるので、この法ができて初めて納付していただくことができるのでありまして、現にこの法制なかりせば納付を強制するところの法制はないと考えております。
  33. 今澄勇

    今澄委員 この法律案の最大の欠陥は、すなわち国家がその責任をとらなければならないような、社会的な、道徳的な、政治的な問題については国家は何らの責任なしということを、通産省当局が言い切るにもかかわらず、このような納付金的なものを強制的に寄付行為によつてとろうというようなことは、憲法上の日本国民に与えられた一つの大きな権限を侵すものではないかと思うような重大な点については、政府に最も便宜のいいようにこれをとるべきであるというようなことで、法案を国会にかけるという、この考え方の中に今日の通産省の行政の上において最も大きな欠陥を持つておると言わなければならぬのであります。われわれはこういう点については今与えられておるところの中小炭鉱に対する融資の問題、またあらゆる問題については政府は便宜的なことを常常申しておるのであつて、自分たちにぐあいのいいような問題ばかりが、こういうふうに出ておる。この点について私どもは十二分な反省を願うとともに、このようなこの法案の中における矛盾については、さらに質問を後日に留保するものであります。  最後に第二十二條第三項の規定は、この法律案運用の上において、これは政府の特殊的な配慮であろうと存じますが、私どもは中小低品位炭鉱が今日臨んでいるところの崩壞寸前の姿からして、その低品位炭鉱からこれをとるということは、さらにこれの崩壞を早めるところの方策であつて政府も一律にそれらのものからは、とり得ないであろうということは、私も了承いたしますが、それらの低品位炭鉱に対する方策で、これまでの政策のねらいというような、そうして冷酷な穴埋めにこの二十二條の三項というものができたものであろうと私は思う。しからば政府はこの低品位炭鉱と書いてある基準をこの法律においては、どの程度を基準として低品位炭鉱と言われますか、具体的にはつきりしたものがあれば、お示しを願いたいと思います。
  34. 宮幡靖

    宮幡政府委員 本法に対しまする今澄委員の痛烈なる御批判に対しましては、個人としては少からず同感のところがあるわけであります。しかしながらこの法案を提案いたしまして、衆参両院の委員の方からの御質問の中に、しばしば石炭の山だけにこういんことを心配して、他の鉱山の鉱毒病などには何ら配慮をしないでおるではないかというくらいしかられているのであります。従いましてこの法案自体が個人的に考え、若干行き詰りのような形は持つておりますが、特に石炭だけに対してこれだけの方策を考えよう、しかも畸形的な法律だとまで非難されておりますが、かような措置まで講じているということは、石炭業に対しましていかに通商産業省が特別な配慮を拂つておるかということの立証でありまして、むしろ今澄委員の仰せらるることが、はるかに当らないのではないかと考えておるのであります。第二十二條の運用については御承知のように、これによつて運用の妙をはかりたいと思つております。これは実情に照らしまして、通商産業大臣がそれぞれの意見等も聽取いたしまして、また審議会の意見も諮問いたしまして、運用して参ることでありまして、ただいまの段階でどれを低品位炭というかというようなことは、ここで軽卒にきめたくないと思つております。しかしおおむねの線はかつて配炭公団におきまして、宇部は何カロリー、常磐は何カロリー、北海道は何カロリーというようなことの運用をやつてつたことは、今澄委員の方が十分御承知であります。そこいらの線が近いではないかとお考えくだされば、当らずといえども遠からずと考えます。しかし残念ながら現段階は、この運用についてみだりに一方的な意見を申し上げる段階でないことをお知りいただきたいのであります。
  35. 今澄勇

    今澄委員 今の低品位炭の認定の基準についても、やはり本法審議する上においては、これは簡單なようでありますが、今の炭鉱実情から見れば重大な問題であるので、この点も後日に留保いたします。それから今の炭鉱の災害とその他のあるいは鉱毒あるいはトンネル掘鑿による被害等、いろいろ数えれば切りがないけれども石炭産業に対する政府の熱意とその他のものについては、まことに了承するのでありますが、しかしながら本法が持つておるところのそれらの矛盾というものについて、やはり個人的に認められたように、われわれはあくまでも理論の上に立つて、この法律の中にある二つの大きな矛盾を解決して、本法審議するという方向に進みたいものであることを、付言いたして質問を打切ります。
  36. 神田博

    神田委員長代理 ちよつと関連して、私から一言お尋ねいたしたいのですが、先ほど今澄委員の御質問は、政府増産強行をされた。そこで国がその鉱害原因をつくつておる。どういうような方法命令をやつたかという意味のお尋ねであつたようでありますが、それについて一般的の政府としての石炭行政に対する戰争中の処置をお述べになつたようでありますが、さようであるとすればこれは必ずしも九州、あるいは山口県にかかわらず、常磐方面においても、あるいは北海道方面においても、これと同じような問題がからんでおらなければならないと思います。しかるにその方面については、一つも論議されておらない。特に九州地区及び宇部等のみに起つたということになると、われわれはこれを審議しておりますのに、何かどうも割切れないものが出て来るのでありますが、これらの点につきまして御説明願いたいと思います。
  37. 宮幡靖

    宮幡政府委員 委員長として格段の御配慮からのお尋ねでありまして、当局といたしまして少からず敬意を表するものであります。  実はこの問題は言いたくもあり、言いたくもなしという問題なのであります。一般的お尋ねに対しまして、あるいは参議院の方あたりでは御説明申し上げたと思いますが、これはなぜ、かような九州と山口の地区の一部に限られておるものに、こういう一般的な負担を押し切つてまでやるのかということがただいまの御質問の中にひそんでおるように思うわけでありますが、戰時中の強行出炭命令というものは、あえて九州地区、宇部地区のみを指定すべきものではなかつた。できるならば北海道も常磐も一齊にやるべきであつた。ところが北海道は御承知のように、輸送の上におきまして宗谷海峡という隘路があります。しかも潜水艦の脅威にさらされ、御承知のように戰時中八十万トンの炭が北海道にありながら、これを運送することができなかつた。こういう意味で北海道には命令を差控えざるを得なかつた。また常磐は洪水が多いので、この強行出炭の作業に不適当である。かようなことで今から逆に考えますと、こういう條件で幸いにして北海道と常磐地区は、特別鉱害を逃れたのであります。こういうことから考えれば、あえて戰争のためといつて、指定されました九州地区、宇部地区には深い同情を拂わなければなりません。これを宗教的に考えれば、北海造や常磐の皆さんにも御負担願つても決して矛盾でないだろうということをそこに含んでの法案なのでありまして、これは言いたくもあり、言いたくもないことなのであります。
  38. 神田博

    神田委員長代理 ただいまの御答弁でやや了とする点がありますが、少し結論が飛躍しておるようにも考えられるのであります。ということは特別鉱害規定に、この法案に盛られております昭和十六年十二月八日から昭和二十年八月十五日というと、終戰の当日までということになります。そこでただいま潜水艦が出没して、北海道に石炭が八十万トン残つていながら送れなかつたということでありましたが、それはいつの時期であつたか。おそらくその時期までは平等に扱われただろうと思います。そういうところから考えると、特別鉱害の計算の指定の時期が、非常にさかのぼつていやしないかというような懸念を持つのです。少くも潜水艦の出没するまでは、一般命令として九州地区においても、北海道、常磐地区においてもこのような命令が出たと思います。そういう意味でお伺いしたわけでありますが、これらの点についてはどういうふうにお考えになつておるか。
  39. 宮幡靖

    宮幡政府委員 ただいまの御指摘はまことにごもつともであります。いつ幾日から潜水艦が出没をしたか、私はよく存じておりません。しかし八十万トンの炭は現実滯貨となつて運べなかつたことは事実なのでありまして、従いまして十六年十二月八日ということにその時期を求めたことが、もし不適当であるというような事実がございましたならば、その点については委員会の御意向等を拝聽いたしまして、善処する用意がございます。
  40. 神田博

    神田委員長代理 この際お諮りいたします。本法案審議は、本日は一応この程度にいたしまして、観光特別委員会との連合審議関係がございますので、さように扱いたいと思いますが、御異議ございませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  41. 神田博

    神田委員長代理 それでは本日はこれにて散会いたします。  なお次会は公報をもつてお知らせいたします。     午後三時四十七分散会