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1949-11-15 第6回国会 衆議院 通商産業委員会 第7号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十四年十一月十五日(火曜日)     午前十時五十一分開議  出席委員    委員長代理 理事神田  博君    理事 有田 二郎君 理事 小金 義照君    理事 村上  勇君 理事 今澄  勇君    理事 有田 喜一君 理事 川上 貫一君    理事 永井 要造君 理事 山手 滿男君       阿左美廣治君    岩川 輿助君       門脇勝太郎君    小西 英雄君       首藤 新八君    關内 正一君       高木吉之助君    田中 彰治君       中村 幸八君    福田 篤泰君       前田 正男君    加藤 鐐造君       山口シヅエ君    高橋清治郎君       柳原 三郎君    田代 文久君       河野 金昇君  出席政府委員         通商産業政務次         官       宮幡  靖君         通商産業事務官         (通商振興局         長)      岡部 邦生君  委員外出席者         通商産業事務官 松尾泰一郎君         通商産業事務官 熊谷 典文君         專  門  員 大石 主計君         專  門  員 越田 清七君     ――――――――――――― 十一月十二日  大津市に通商産業局分室設置請願河原伊三  郎君紹介)(第一七八号)  見立鉱山鉱毒防止に関する請願佐藤重遠君  紹介)(第一八八号)  瀬田川の発電計画に関する請願河原伊三郎君  紹介)(第一八九号)  機械工業行政の一元化に関する請願小峯柳多  君紹介)(第二三七号)  中小企業に対する融資促進請願石原圓吉君  紹介)(第二三八号)  九州の電力危機緩和に関する請願川野芳滿君  紹介)(第二五五号)  山口炭鉱救済に関する請願佐竹晴記紹介)  (第二五六号)  東北地方電力編成に関する請願志田義信  君紹介)(第二五七号)  伏木港に貿易事務所設置請願橘直治君紹  介)(第二六〇号) の審査を本委員会に付託された。 同月十二日  電気事業編成反対陳情書外七件  (第一七号)  電源開発促進陳情書  (第五〇号)  中小商工業者金融援護等に関する陳情書  (第五三号)  電気銅価格調整補給金等に関する陳情書  (第七五  号)  築上火力発電所再開陳情書  (第八五号)  中小商工業金融対策に関する陳情書  (第八六号)  自家用火力発電運転再開陳情書  (第九七号) 同月十四日  通商産業局を富山県に設置陳情書  (第一〇一号)  特別鉱害復旧制度存続陳情書  (第一〇二号)  只見川水力開発促進に関する陳情書  (第一〇三号)  東北電気事業確立に関する陳情書  (第二八号)  銅補給金存続陳情書  (第一二三号)  同(  第一五二号)  中小企業者金融援護に関する陳情書  (第一六一号) を本委員会に送付された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した事件  輸出品取締法の一部を改正する法律案内閣提  出第二四号)     ―――――――――――――
  2. 神田博

    神田委員長代理 これより通商産業委員会を開会いたします。  前会に引続きまして私が委員長の職務を行います。議事に入るに先立ちまして、請願の付託、陳情書の送付についてお知らせいたします。去る十二日には、大津市に通商産業局分室設置請願外八件の請願が付託され、十二日及び十四日には、電気事業編成反対陳情書外二十件の陳情書が、本委員会に送付されております。以上お知らせいたしておきます。  ただいまより前会提案理由の説明を聽取いたしました、輸出品取締法の一部を改正する法律案を議題として質疑に入ります。門脇勝太郎君。
  3. 門脇勝太郎

    門脇委員 日本経済再建が、貿易に負うところ将来多いということは、もちろんでありまして、そういつた意味において、特にこの輸出品品位を保持するために、こういつたような取締法規を嚴重にされることについては、大体において異議がないわけでありますが、これに関連して二、三政府に向つて質問申し上げたいと存じます。  先般繊維懇談会を開催いたしまして、繊維滞貨品処置について、政府の所信をただしましたところ、当時御出席なつた係官の話によりますと、現在繊維製品が、貿易公団手持ちのものが、大体三百億円見当あり、そのほか民間滯貨が六十数億円、こういつたような厖大滯貨がある。ついては今回貿易公団が近く解散になるということを見越しになつておるので、自然手持品を処理するという必要に迫られておる。大体この厖大滯貨品は、努めて国内向け転換放出したいといつたような方針であつたところが、その後司令部の方から、これはドル獲得等考えもあるのかも存じませんが、そのうち相当数量のものを半額くらいに見切つて輸出の方に振り向けるようにといつたような指令があつたという話であります。ところがそういつたような司令部意向に便乗して、悪質のバイヤーの方が、その半分に見切つたものを、なお半分に見切つてくれ、それならば全部一ぺんに買いとろうというような折衝があるので、それについて今政府もいろいろ苦慮し、かつあらゆる方面意向を聞いておるのだ、こういつたような話があつたのでありまして、私どもそのときにいろいろ感じたのでありますが、政府機関自体が、こういつたようなダンピングに類したようなことをやつて行くことが、将来日本輸出政策として、是であるか非であるかということについて、私ども非常に危險な感じを持つたのであります。大体戰前においても、日本品は、あとからあとから値段が下つて行く。そのために初めに買つた人が非常な損をする。そういつたことが日本品に対する全般的な非常な不安を醸成する重大な原因になつてつたのでありまして、こういつたようなダンピングは嚴に警戒をして、日本品はまじめで確実で、価格の点においても、そういつたような不都合がないのだという信用を保持することが大事なことでありまして、そういつたようなときに、こういう厖大商品を公の機関がどうもダンピングみたいなことをしてはかすということは、将来日本輸出品声価を保持するという立場から言いまして、またあとから続いて出まする輸出品立場から言いましても、賛成しにくい。繊維製品大分国内にまわつているようでありますが、民需用としましては、物によりましてはまだ潤沢な域に入つておりませんから、そういつたような場合には、やはり最初の方針通り国内に放出される方が現状としましては望ましいと考えております。それらの善後措置に対しまして、政府がどういう処置をとられたか一応お聞きいたしたい。
  4. 宮幡靖

    宮幡政府委員 輸出振興対策とあわせての御配慮の点は、まことに感謝にたえないわけであります。お尋ねダンピングの問題でありますが、ダンピングをどこの限界で定めらるべきかということを考えると、これはなかなか議論が一致しないであろうと考えるわけであります。御承知のように戰前の正常の経済事情におきましては、為替相場公定平価の二対一という線を上へ行つたり、下へ行つたりしておつて、その中はきわめて狭かつたわけであります。ただいまのように一応安定はしておりましても、三百六十対一という為替相場は、日本商品コスト高であるということを表示するものであろうと考えます。従いまして国際価格さや寄せするということが、国内経済の安定をはかつた次に、ただちに構想せられなければならない問題であります。従つて公団手持ち品物にしろ、あるいは民間直接の生産品にいたしましても、これは従来の価格より安く売れたから、ただちにそれがダンピングであるとは考えられないと思うのであります。願わくば従来の価格よりも三割も、五割も、半額にもなつて行くことが、国際価格へのさや寄せであり、国際経済への参加であろうと考えております。公団等処置においてただいま御指摘のような問題については、後刻通商振興局長から具体的な問題について御説明申し上げますが、大方針といたしまして、ダンピング限界というものは、その輸出します当時の国内のその物資価格、及びもし国内のその物資の交流上の価格が、自然関係のもとにないと仮定いたしましたならば、嚴密な意味におきますそのものの生産コスト標準といたしまして、これより安くない程度に売るということが、ダンピングでないことになろうと考えております。今国会にでき得べくんば、ここ数日中に御審議に供したいと思います輸出貿易臨時措置法におきまして、これらの問題を十分御説明申し上げる機会があろうと思いますが、ただいまの対象といたしましては、国際価格さや寄せし、国際経済への参加という大目標から申しますると、しかも仕向地のその国の持つております市場における不正競争を防止いたします一つの手段や方法や、あるいは法律があると思いますので、この点に十分考慮をいたしまして、この不正競争を防止する法令、あるいは措置等に違反しない限度で、日本商品輸出することは、まずもつてダンピングでないと考えて行かなければならぬのであります。しかしながら、それがために国内産業が一時的にこうむりまする圧迫等を考慮いたしますると、單に早急に国際価格さや寄せし、国際経済への参加をねらう一本のみで、国内産業保護育成を忘れてはならぬわけでありますので、もし公団等処分価格で、概観的に見まして御異論のありました点は十分伺いまして、このような弊害を是正するように努めて参りたいと思います。しかし大方針といたしましては、現在の国内価格、現在の生産コストを維持するための貿易施策をとれということは、大方針としてはいささか疑問があるのではなかろうか、かように考えておるわけでございます。公団滯貨処理の問題につきましては、振興局長からお答えすることにいたします。
  5. 岡部邦生

    岡部(邦)政府委員 御説明申し上げます。公団滯貨の処理につきましては、輸出在庫品価格評価協議会というものを設けまして、それによりまして、どういう価格でやつたらいいだろうかということを、愼重審議してやつておるわけであります。ただこの前にも御説明いたしましたように、公団滯貨、ことに繊維品滯貨につきましては、これは見越し生産によりますものが大部分でございます。従いまして、現在の流行等から見ますと、非常に時期遅れのものが多いわけであります。従つてこれを輸出に振り向けますことは非常に困難でございますが、なおわれわれといたしましては、輸出用につくつたものでございまするから、できるだけ輸出いたしたいというように考えて、これを促進しておるわけでございますが、たとえばダマスクのテーブル・クロースのごときものは、大体需要の三年分もつくつてしまつてあるということでございまして、こういうものを適正な価格で売るということもなかなかできない、それを国内に放出いたしましても、処分することができないというような事情でございまして、そこらはひとつ商売的な観点で、できるだけ国内産業を圧迫しないような関係において、これを処分したいという考えから、せつかくつておる次第でございます。今具体的に御指摘のございましたような問題は、まだ十分には参つておりません。そういう下話はぼつぼつあるようでございますが、具体的にどのようにいたすかということについては、まだ踏み切つておりません。
  6. 門脇勝太郎

    門脇委員 まだ具体的に踏み切つたということでないということでありまするが、その辺につきましては、あまり将来の輸出弊害にならないように適当にお願いしたいと考えます。  なお政務次官から、ダンピングの問題につきまして、いろいろ御見解伺つたのでありますが、日本貿易には従来とかくダンピングということが問題になりまして、ことに英国とは、繊維製品関係において、常にダンピング関係が附随しまして、よく問題を起しておつたのでありまするが、最近円の不安というようなことに関連して、輸出関係を利用して、最近フロアープライスが撤廃されたというような時期に際して、取引きを確保するための投資と言いますか、不当に安い値段輸出して、そうして外地においてドルを保存しておくのだといつたような、あまり好ましからぬことを計画する向きがあるかのようにも聞いております。また実際的に企業を合理化して、ほんとうに安くものをつくつて、安く出すのだというまじめな業者もありまするし、また中には政策的に国内向けの利益をもつて輸出品をカバーして、ある程度ドル獲得のために便乗して行くという政策もありまして、こういう場合に、先ほどもお話があつたのでありますが、はたしてこれがダンピングであるかどうかということを検討することたは、相当難点があると思ひますけれども、これはやはり一つ基準を設けて、政府として取締り監督するということが、将来貿易を健全に、永遠に発展さす上から言つて、ぜひ必要なのであります。そこでそういつたことに対する取締りなんかは、どういう法規によつて、どういう方法によつて具体的に行われるかということにつきまして、御見解をはつきりしておきたいと思います。
  7. 宮幡靖

    宮幡政府委員 ダンピング防止についての施策は、どんなふうに考えておるか、こういうお尋ねだと思いますが、それは前回お答えいたしましたような状況で、ダンピング限界をどこに置くべきかは、フロアープライスの線をもつてダンピングの境と考えたくないのであります。要するにその問題は、来るべき貿易自由の原則、いわゆるローガン構想によつて描き出されましたところ貿易自由の原則から考えますると、正常な関係輸出せられますものは、国家がこれに規制を加うべきではない、かように考えているのが現在の方針であります。ただダンピング目標となりますものは、仕向地、いわゆる相手国貿易不正競争を防止する法令等に対する一つの目安をもつて進む。しかも業者の自主的な立場において進める方が、貿易自由の原則に沿うと思うのであります。ただ輸出を自由にいたしましたそのときにおいて起つて参ります各輸出業者立場等考えておりますので、輸出組合法とか輸出業法とかいうものの制定の機運も、ただいま順次きざして参つておりますが、これについて御意見のような点を考慮する必要がありましたならば、ぜひ考えに織り込んで参りたいと考えておりまするが、貿易自由の原則が確立して参ります以上、あえてこれに対して国家が格段の規制を加うべきでない、この方針はぜひ一貫させまして、輸出振興の大方針を貫いて参りたい、かように考えておる次第であります。
  8. 門脇勝太郎

    門脇委員 輸出振興という大目標から言いますと、ことに将来自由貿易に行くという場合において、この問題はなかなかデリケートな関係があると考えますが、要は将来貿易を健全に発達せしめ、ことに日本品声価を永久に保持するといつた建前で、適当に対策を講ぜられんことを希望する次第であります。なお今回の輸出検査強化によつて、品質については相当吟味されると考えまするが、こういつた場合に、もし不合格になつた品はどう処理されるか。永久に輸出には向かぬものか。それとも買手との話合い、また当局の了解によつては、値段によつて輸出されるものであるか。その辺の今後の方針を伺いたいと思います。
  9. 宮幡靖

    宮幡政府委員 輸出検査の結果不合格になりました品物については、本年十月十二日に制定せられ、大蔵、厚生、農林、通産、運輸省令第一号で公布実施いたしておる輸出物資流用防止規則というのがございまして、これによつて処理して参りたいと思います。この規則内容等運用につきましては、振興局長からお答えさせます。
  10. 岡部邦生

    岡部(邦)政府委員 今度の法律改正をお願いいたしております一つの問題でございますが、従来は不合格になりましたものは、政府が買取りをやつてつたのでありますが、そういうことをやめまして、結局輸出物資流用防止規則によつて、ビツトによつてこれを自由処分するということに相なつたのであります。ただし不合格と言いましても、少し問題がございまして、たとえばA級品物B級に下るという場合には、もちろんB級で出すことができるわけであります。この最低基準を設けましたもので、絶対に輸出できないというものに対しましては、これは国内処分をする以外はしかたがないと思います。
  11. 門脇勝太郎

    門脇委員 輸出検査強化されるということにつきましては、自然そこにいろいろ施設にも増強を来すということが條件になるわけでありますが、そういつた場合に所要人員はどういつたような方法にされるものか。新しく任用されるものか、あるいは従来の配置転換によつて使用されるものか、こういつたことは、今御承知のように行政整理全般的途上にありますために、非常にデリケートな関連性を持つと考えますので、一応この点について御所見を伺いたいと思います。
  12. 宮幡靖

    宮幡政府委員 ただいま御質問の点につきましては、順次国内の統制も解除せられて参りますし、また貿易が自由の原則に向つて推進いたすわけでありますので、通産省といたしましては、これに伴いまして不要とは極論いたしませんけれども、順次人員を削減し、仕事分量の減少に伴つて整理が行われることは必然的であります。ことに輸出検査対象となりますものは、おおむね雑貨という部類に属するのでありまして、ただいま通商雑貨局の方に輸出雑貨課という課もございますが、これらの人員は、早い時期におきまして、転換をいたして行きたいと存じます。ただいまその心持ちをもつて、順次手配と実行に移しておるわけであります。なお明年度予算におきましては、大阪、名古屋等の主要なところには、輸出検査所を新設あるいは増強いたしますために、所要の定員として官名予算の計上を願つております。これによりまして庁内に過剰となつて参ります人員職場変更、あるいは転換等と相合せまして、この輸出検査目的を達成して参りたい、かように考えております。
  13. 門脇勝太郎

    門脇委員 最後にこれは質問にあわせて希望的に申し上げたいと思うのでありますが、従来日本品に貼付してありますところラベルが技術的に非常に拙劣でありまして、小さいことではありまするが、いろいろな意味において、日本品に対するところの光彩を添えないというような大きな原因になつておるらしいのであります。のみならずラベルが非常に貧弱であるために、ラベルの偽造も簡單にできるということが、日本品に対するところ一つの非常にさびしい感じを與える原因になつておるのであります。こういつたことは、もちろん政府がそう弾圧的に干渉される筋合いのものではありませんが、むしろ奨励といつたような意味で、こういうラベルは世界的に非常に日本品らしい高雅な品位を保つように大いに吟味し、高揚するような施策をとられることが必要かと思います。こういつたような積極的な方面に対しましても、大いに今後貿易振興意味から言つて政府がいろいろ配慮されることがしかるべきと考えるわけであります。その点につきまして、これは希望的意見でありますが、あわせて御所見を伺いたいと思います。
  14. 宮幡靖

    宮幡政府委員 門脇委員の御読は、輸出振興立場においてきわめて適切な御意見だと思います。その商標ラベル等を光彩あるものにしろ、これはもうごもつとも千万でありまして、ただいま通商産業省といたしましては、包装の改善とあわせ、商標等の問題に重点を置きまして、一つ研究を進めております。その筋ともただいま折衝中でありまして、これが許されますならば、国立包装試験所というものを設けまして、これによつて工業技術庁において研究いたします工業技術標準化法、あるいはその他の面とあわせ考えまして梱包全体、包装全部、すなわち商標ラベルまで含みますものについて、一段と研究をこらし、お説のような方針に完全に沿うようにいたしたいとせつかく努力をいたしておる次第であります。
  15. 門脇勝太郎

    門脇委員 最後に一言特に希望として申し上げておきたいことは、政府施設検査ということになりますと、えて検査する機関が、あたかも検察庁的な一つ考えを持つて、非常に苛烈になるというようなことが、とかく従来の日本の役人の全般的な風潮として、しばしば聞くところであります。要するに輸出振興ということが基本になるのでありますから、きわめて指導的に、積極的に、融和的に、しかも民主的に検査施設が円滑に遂行されんことを望みます。少くともこの問題に関しましては、将来苛烈な検察庁的態度によつて業者から恨みを受けないようにということを、十分に念頭に置かれんことを、特に希望として申し上げておきたいと思います。
  16. 宮幡靖

    宮幡政府委員 御配慮の点まことにありがたく、こちらからもお礼を申し上げるわけであります。今度の輸出検査なるものは、これは民間検査でありまして、政府検査ではございません。従いまして民間で善意に検査をおやりくださつて等級等を正確に御表示くださる、かような方々には臨検検査ということはまずもつてやらないという方針をとつて参りたい。ただ言葉は不適当であるかもしれませんが、いわゆる悪質——表示内容と異なるようなことを常習的にやるというような方が、もしあつたといたしましたならば、これに対しましてはむしろ鋭く臨検検査を行つて参りたい。この緩急は運用の面において、はなはだむずかしい問題でありますが、お説のように検察庁的あるいは査察庁的、さような方向に進まないように、ぜひ指導もしたい、またさような方向をとらしめたいと考えております。御配慮の点に対しましては、厚くお礼を申し上げます。
  17. 神田博

  18. 山口シヅエ

    山口(シ)委員 私の質問も、ただいまの門脇さんの質問と重複する点が出て来ると存じますが、その点は意見としてお聞取り願いたいと存じます。また私が聞き漏らした点があるかもわかりませんから、その点は御説明願います。  輸出品取締法の一部を改正する法案に対しましての質問ですが、本案が提出されました理由につきましては、提案理由を拜見いたしまして、わが国輸出を恒久的に盛んにならしむるためには、当然必要な措置考えるのでございます。しかしこれを運用するにあたりまして、政府は十分な準備がおありでございましようか。どうも改正の要点は輸出品取締法強化でございます。薬も用いようによりましては毒になりますように、実施にあたりましては遺憾なきを期さなければならぬと存じます。戰前におきまする輸出は三井、三菱その他比較的大きな業者の手によつて行われて参つております。しかし輸出されました製品の約八十パーセントというものは、中小工業者の手によりまして生産されて参つておるのであります。しかるに現在は財閥が解体されまして、今後多くの中小工業者の手によりまして生産されなければならない。結局民主的な制度のもとに発展いたさなければならなくなつたと私は考えるのであります。従つて本案内容によりましても、輸出業者対象生産業者にまで及び、非常に大衆的になりまして、取締り強化が権力の強化となつて、ややともすれば弊害が起りがちになることを憂慮するものであります。弊害の事実を具体的に申し上げることは、政府当事者もよく知つておられるところであびますから、私としては申し上げにくいのでありますが、その点は御推察、御配慮願いたいと思います。  次に第二の点でございますが、従来わが国輸出品は、安かろう悪かろうという方向に進んで参つて来たのであります。このたび輸出産業の再出発にあたりまして、本案の御趣旨のごとく優良品製造に向わなければなりません。それには單に検査制度強化確立のみでは、その目的を達成することはできないのであります。ちようど子供に教育せずに、ただ責めるのみでは成人いたしませんのと同じような結果になるので、本案の真の目的を達成せしめるためには取締りと並行いたしまして、指導強化が行われなければならないと考えまするそれには政府は單なる監督をするのみではなく、官氏一体となつて業者政府共同責任をもちまして、民主的な態度をもつて進んで行かなければならないと存じます。以上申し上げましたことを要約いたしますと、取締り強化に伴うところの権力による弊害防止、並びに取締りに並行いたしまして、政府指導強化する御意思があるかについてお尋ねいたします。
  19. 宮幡靖

    宮幡政府委員 山口委員お尋ねは、一々ごもつともだと存じます。こいねがわくば山口委員の御趣旨の通りに、この取締法を運用して参りたいと思つております。また指導の面におきましては、仰せの通り官民一体と申しますか、ただいま工業技術庁が中心となりまして、この方面の技術指導、少くとも十年間は遅れているであろうという技術の指導に懸命の努力を抑つております。ただ惜しむらくは、これに関しますところ予算措置希望するだけ與えられない。この内容の中に、結果的に見ますと、まだ手ぬるいという点があるかもしれませんが、十分御意見の点は配慮の中に加えまして、順次実施に移したい、かように考えております。なお本法の運用におきましても、通商産業大臣が、たとえば第四條の指定品目について、あるいは粗惡品と燒印を押しますが、その指定ということにつきましては通商産業大臣の單独の意思でなく、必ず関係業者意見を聽取いたしまして決定する。かような方向におきまして、ぜひ民意を取入れた運用をいたしたい。これは第五條にその規定もございますので御趣旨はまことにごもつともでありますから、よく御意見を含めまして実行に移して参りたいと思います。
  20. 山口シヅエ

    山口(シ)委員 ただいまの御説明によりまして了といたしますが、重ねて御質問申します。従来の輸出価格のみにおきまして競争をいたして参つたような状態でありまして、自然労働強化によりますところの労力ダンピングとなる傾向があつたのでございますから、今後は技術的な面において優良品の生産をいたさなければなりません。それには政府におかれまして、輸出産業の育成に力を入れなければなりません。それは国家の大事業でありますから、政府においてこれを担当いたしますところの各部門に、卓越した才能を持ちますところの技術者並びに事務職員を多数必要とすると同時に、あらゆる設備を完備いたさなければならないと存じます。この点に対しましてはただいま次官より詳細な御説明がありましたので、了といたしたのでございますが、通産省といたしまして、この計画並びに予算に対しまして、でき得るならばもつと具体的な御説明を賜りたいと存じますが、いかがなものでございましようか。
  21. 宮幡靖

    宮幡政府委員 お説のようにレーバー・ダンピングの時代は過去の歴史的夢だと思つております。日本輸出振興がレーバー・ダンピングにおいて達成せられようなどとは現政府考えておりません。すなわち品質の向上、価格の低廉等によつて国家指導のもとに民業を振興いたしまして、そうして国際経済の一競争者となれる、かような心構えを持つていることは、もうお説の通りであります。これを中心といたしますことは、前段申し上げましたように工業技術庁におきまして、諸般の施策を持つております。惜しむらくは予算がまた十分でないのでありまして、現状の予算におきましては、ただいま局長の方から説明させますが、こまかいことは私は今資料を持つておりませんのでわかりませんが、大体本年度の予算において、この面において行い得ますものは、二億五千万円程度だろうと覚えております。あるいは数字が違つておれば次に訂正いたします。実は通産省といたしましては、工業技術輸出振興のために指導して行く立場で、現在の各試験所、研究所、あるいは調査所というものが、きわめて分散的で非能率でありますので、これをぜひ集中して行いたいと思つて、十億の予算を要求いたしましたけれども、それに対して許されましたのはわずかに一億五百万円、あと研究費といたしまして、これは予算の組み方が文部省方面と錯綜いたしておりますので、文部省の方と話合いをいたしまして、三千万円程度こちらへわけてもらうとか、従来の費用から移用等をいたしまして、大体二億五千万円程度のもの、これではとても仕事ができぬということは事実でありますが、この基本方針にのつとりまして、順次機会あるごとにこれの拡充強化に努力いたしたい、かように考えております。
  22. 山口シヅエ

    山口(シ)委員 ただいまの説明でよくわかりました。  次に輸出品取締法に非常に関係の深い問題でございますが、これは先ほど門脇先生の御質問でもちよつと触れられた点があつたかと存じますが、聞き漏らしましたのであらためて質問いたします。十一帰二百の各新聞に報道されたところによりますと、通産省では輸出組合制度をつくることを各方面折衝しており、次の通常国会には輸出業法案というようなものを提出したい意向であるようでありましたが、去る十一月十日の報知新聞によりますと、帰米中の総司令部及トラスト課長エドワード・ウエルシユ氏は、外国貿易の独占形態を再現する道を開くものであるとして、これに対して反対をいたしております。このような点からしまして、輸出組合制度に対する通産省の見通しは、いかがなものでありましようか、お伺いいたします。
  23. 宮幡靖

    宮幡政府委員 司令部のアンチ・トラスト課の方で輸出業法、これは仮称でありますが、というようなものに反対いたしておつたことは事実であります。しかしながら日本貿易を、もし自由貿易、あるいは完全自由貿易でなくても、現在の状態から一段と進めようとするのには、この輸出業者あるいは輸入業者というものの、経済的な力及びその他の諸條件を充実させることが必要でありますので、通商産業省といたしましては、この面についてすでに数箇月前より、関係筋との交渉をいたしておりましたが、ただいまお説にありましたように司令部意見は、これは事業者団体法というものに完全に抵触するものであるから、まかりならぬということで、一応これをひつこめなければならないような状況になりました。ところがローガン構想によります自由貿易原則の確立、という言葉はどうか知りませんが、確定して参りました結果、司令部の方で、これは朝鮮貿易一つでありまするが、名前を申し上げてもさしつかえないと思いますが、石炭の輸出につきまして、こちらの輸出業者の力が貧弱であるがために一つの混乱を来した、かような状況を改善して行くのには、どうしても輸出組合法というようなものを認むべきであろう、こういうことで当初大臣とマーケット将軍との定期会談におきまして、司令部の方からそういう御意見があつたのであります。これについてはかねてこちらはお願いをいたしておつたことでございますから、まことに朗報だと心得まして、せつかくこの線に沿つてただい底交渉を進めまして、当省独自の考えといたしましては、来るべき通常国会にぜひ提案いたしまして、皆様の御審議を願いたい。しかしこれがはたして反トラストの方の反対が解消せられてここに提案せられるかどうかは、現段階においては、はつきり申し上げられない、かような状況でございます。
  24. 山口シヅエ

    山口(シ)委員 わかりました。それでは最後に、前段に申し上げました通り、今後の輸出は戦後の産業界の事情からいたしまして、中小企業者の力にまつところが非常に大きいのであります。それがために政府は育成に力を盡していただくことはもちろんでございますが、さらにこれの保護の方法考えていただかなければならないと存じます。その一例を申し上げますと、わが国貿易が盛んになりました過程におきまして、多くの中小企業者が犠牲になつております事実を申し上げたいのであります。それはいろいろの商品において例がありますが、特にカン詰類が各国に広められますまでには、中小企業者の努力は一方ならないものがあつたのであります。しかるに各国の需要が盛んになつたときには、某財閥の外国における信用と資本によりまして一手に押えられて、基礎を築き上げましたところ中小企業者は、骨折り損のくたびれもうけになつてしまつたのであります。このような事実を是正するためには、保護をいたさなければなりません。單に保護と申しましてはまことに抽象的でありますが、これは非常に範囲の広いことでありまして、多くを申し上げる時間がございませんので、その一例を申し上げますと、輸出品商標は必ず生産者の商標をつけること、これは生産者の努力によりまして得ました信用が生権者に報いられることとなりますので、不徳義な業者に乗ぜられないことになります。要するに業者の保護の問題でありますが、民主国家といたしまして再出発いたしますにあたりまして、輸出事業は重要な使命を持つと同時に、民主的に行わなければなりませんので、政府はこの中小企業に対しまするところの保護政策をお考えでありましようか、これに対してお答え願います。
  25. 宮幡靖

    宮幡政府委員 御配慮の点しごくごもつともだと存じます。今度のこの法律改正におきましても、等級標準等の標示を生産者の一つの義務として、單に輸出業者だけにゆだねない措置をとりまして、生産者のマークをつけるということをぜひ慫慂して参りたいと思つております。但し残念なことには山口委員も御承知の通り、あるいはミシン工業であるとか、自転車工業等につきましては、先からスタンプされました商標が送られまして、せつかく日本の優秀なる技術でつくり上げましたものも外国の商標輸出される、かような面がございますが、これらをどう防いだらいいかということについては、現在の国情においては、はつきり申し上げられませんが、これは悩みの一つであろうと考えております。それから輸出に專念せられます中小企業者の保護につきましては、これも近く司令部の御承認を得られると思いまして、得られました上はただちに提案して、皆様の御審議に備えたいのでありますが、輸出金融補償法というものによりまじて、輸出契約をLCが来なくてもできる状況になるように、そういう法案をただいま準備しておりまして、代金が回収できないうちに、キャンセルとかクレームとかいう問題と関連いたしまして、業者の損害を未然に防止する。すでにこの制度業者の間の一つの相互保險制度といたしまして、最初は輸出金融補償法という名前を持つておりましたが、今度はこれを社会保険制度のようなものにいたしまして、名称もあるいは司令部意向でかわるかもしれませんが、為替銀行と政府とが一定の補償限度の契約をいたしておきまして、そうしてこれに対して手形割引等の金融措置業者に與えることにいたします。その場合に銀行は一定の補償料を政府に拂いまして、政府はこれに対する特別会計をもつてこいねがわくば独立採算で国家の赤字補填という事実が起らない運営をいたして行くところの構想であります。次には関税の問題であります。国内商品がスムーズに輸出されて行く段階には、輸出入の関税問題がただいまの状況では一番重要な問題となつておることは、想像にかたくないのであります。その他保護の策といたじましては、補給金とかあるいは補助金とかいう制度もかつてあり、また最近まであつたものでありますけれども、これは現在許されました予算措置の上におきましては、おそらく補純金、助成金は不可能であります。それでこの部分だけ除きまして、その他はあらゆる面を考案いたしまして、ぜひとも御論のような中小企業、しかも輸出に專念せられます方の立場を保護するように順次考えて行きたい、かように存じております。
  26. 山口シヅエ

    山口(シ)委員 ただいまの詳細な説明で了解いたします。一層の御研究を切望いたす次第でございます。以上質問いたしましたことは、本法案の改正案に関係のある事項でありましたが、この問題に対しましては一応質問を打切ります。但し輸出に関する一般的な質問に関しましては、次会にまわします。
  27. 神田博

    神田委員長代理 次は前田正男君。
  28. 前田正男

    ○前田(正)委員 輸出に関連いたしましてはいろいろと質問いたしたいことが、たくさんあるのでありますが、今回はさきにフロア・プライスの撤廃に伴いまして、通産省が発表されました声明につきまして、それに限定して御質問させていただきたいと思つております。過般私たちがかねてとなえて参りましたフロア・プライスが撤廃されましたことは、わが国輸出産業のために非常に喜ぶべきことであると信じております。しかしながらその直後に通産省から各新聞に発表されました声明の中に、私たちの多少了解しにくい点があるように思いますので、あるいは私の誤解であるかもわかりませんが、この点につきまして御説明を願いたい。その後の話によりますと、多少先方と折衝した結果、私たちの危惧しておるような点がなくなつて来たような話も聞くのでありますが、公の席におきまして御説明願うことが、一般の輸出業者は非常に心配しておりますので、ぜひ公の席ではつきりした御説明をお願いしたいと思います。     〔神田委員長代理退席、小金委員長代理着席〕  まず第一にダンピングの問題でありますが、過般の声明を読みますと、一般の国内市価に比べまして安い場合はダンピングとみなすということが、声明の趣旨であつたように思うのでありますが、私たち輸出をやりました者の経験から見まして、また現在の輸出の状況を見ましても、御承知の通り輸出の注文の数量が非常に多いのであります。一回の注文量は非常に多いので、従つて当然量的な値引きというものは当然あるわけであります。そういうような点から見まして、国内の一般の市価から比べまして、輸出価格というものは安いということは当然であると私どもは考えております。また業者によりましては、輸出を專業にいたしまして、輸出によつて商売をやつておる者がありまして、そうしてその製品の一部を国内にさばいておる。そういうような業者も相当多数あるのであります。そういう立場から見ますと、やはり自分の工場ないしは商店の維持、経営をやつておりますところの品目の輸出に対しましては、当然安い価格になりまして、その一部の品物としてさばきますところ国内価格が高くなるのは、当然であると私は思います。こういう点から見まして、いわゆるダンピングというものは、原価を割つた場合はダンピングである。コストを割つた場合にはダンピングでありますけれども、ダンピングというものの解釈を、国内の市価を割つた場合がダンピングである。こういうふうにちよつと私は新聞で——これは私の誤解かもわかりませんが、一般の商社等もそういうふうに心配しておるようでありますから、この点をまず第一に御説明願いたいと思います。
  29. 宮幡靖

    宮幡政府委員 前田委員の御質問ごもつともだと存じます。先刻門脇委員から同じ御質問がありまして、そのときお答えをいたしておきました。最初貿易が自由の原則に帰るというときに、輸出の面におきましては、ただいまのダンピングの問題は、お説のように国内価格、あるいはコストを割らないということの制約をなすべきであるというようなことになつておりましたが、これはすでに前田委員が御強調なさいましたような事情で、輸出振興の上においても、また輸出業者に対しましても、不合理になるであろうということを考慮いたしまして、当省からそれぞれの機関に交渉をいたしまして、先刻も申し上げましたように、ただいまでは当該貨物の最終仕向け国において適用されております不公正な競争を禁正する法令、これにぶつからなければ一応ダンピングでない、同時に貨物を輸出しておる者は、商習慣上相当と認められる限度を越えて、金銭、貨物または役務の提供、その他いかなる方法によらず、右申告書に記載された貨物の価格から値引きをしてはならない。この二点が制約されるわけでございまして、依然交渉の過程におきまして、国内価格あるいはコスト、こういつたような問題と見比べて、ダンピング限界をながめておりましたときとは、現状はかわつておりますことを御了解いただきたいと思います。
  30. 前田正男

    ○前田(正)委員 私も実は現状がかわつたというようなことを、大体は聞きましたのでありますけれども、実は世間一般の業者の方におきましては、これは公の発表があつたかどうか知りませんが、一般に徹底しておりませんので、実はここで重ねて御質問し、ぜひそういうことを徹底して、心配ないようにしてやつていただきたいということを、ひとつお願いします。  次の資本逃避の問題につきましての声明が、そのときに重ねてあつたわけでありますが、そのときに国内の大体の業者がつくりましたときの値段、その値段から特に安いものがあると、これは資本逃避とみなすということが、その趣旨にあつたように思うわけでありますが、実はこれは先ほど問題になりましたような、日本国内産業を興すために、輸出業法というような事業者団体法によりますところの特例が認められまして、そうしてそういうふうな価格協定がか行われる。あるいは資本逃避とみなして、そういうことを防止するというようなことは、確かに別な観点からは意義のあることだと思いますけれども、しかしながらそういうことは現在まだ公に認められておらないときに、業者の一部が結託いたしまして、相談してそうして安く売ろうという者に対しまして、資本逃避という名前でもつて、これを押えるということになるならば、これはいわゆる独占禁止法の精神に反することになりまして、業者の談合によつて行われるということになつて来ると思います。この点につきましては相当業者の一部にも心配しておる者があります。特にこれはどういうことかと申しますと、日本の従来の輸出というものは、中小企業を中心にいたしまして輸出されておつたのでありますが、戰後政府方針が軍需産業その他の大工業を、平和商品の製造輸出転換しようということから、終戦後輸出したものには大企業から輸出したものが相当あるのでございますが、この人たちといろいろ話合いをいたしまして、従来フロア・プライスの撤廃が行われるまでの経過におきましても、フロア・プライスの撤廃、あるいは値引き等につきましては、話合いまして、相当反対その他をいたしまして、中小企業の商売に大影響を與えたことは、皆さん御承知の通りであります。従いまして私どもフロア・プライスの撤廃を叫んだのは、中小企業のために叫んだわけであります。ところが現在におきまして、そういう資本逃避という想念から、一部の業者が話し合いました場合には、資本逃避として安いものとみなすというようなことがちよつと出ました。これも私たちの杞憂であつて、そういう心配はない。独占禁止法の精神からいつて、そういうことにはならない。よつてダンピングにならないものは資本逃避として簡単に解釈する、業者の話によつて中小企業その他の人が、せつかく商売をしようとしているものに対して、危惧の念を與えることは絶対にないと存じているのでありますが、この点につきましても、いまだに一般の業者が心配しておりますので、この席で明瞭にお答えいただきたいと思うのであります。
  31. 宮幡靖

    宮幡政府委員 御心配の点は一応ごもつともだと存じますが、輸出貿易に対します規制につきましては、先ほど申し上げました二点だけでありまして、その他には別に理論的にむずかしい考えを持つておりません。ただ輸出逃避というものが軍に商品の売買の問題だけであるかという点については、少し保留をさしていただかなければならぬと思つております。たとえば全輸出を禁止しておりました当時の、かつての平和時代の貿易におきまして、チヨツキのボタンやカフスのボタンに金が化けまして出て参つた。こういうような現実と、もし同様な事例が起つたといたしますれば、これは完全なる資本逃避と思いますので、これは法令措置いかんにかかわらず、もし法令がなかつたならば、新たにこれを設定いたしましても取締りをし、規制をしなければならぬ。こういう極端なものについての意味ではありませんが、輸出貿易というようなものが自由の原則に帰り、ただいま申し上げました二点だけが規制されるという状況でありますので、先入主となつております点については、おおむねその程度の御心配はなかろうと考えております。
  32. 前田正男

    ○前田(正)委員 ただいまのお話で、特殊の品物の資本逃避については、もちろん国家的の必要から制限されるのは、まことにけつこうであります。ただ先ほど申しました通りに、過般の声明の中に大半の業者が相談いたします価格よりも、非常に安い価格であつた場合には、資本逃避とみなすということを言つておりますが、こういうような業者の協定等が暗黙のうちに行われるということになりましたら、嚴に一つ取締りを願いたい。公の輸出組合と認められまして、みなの公の相談において協定を行うことはけつこうでありますが、そうでないかくのごとき協定によりまして、いろいろと危惧を與えるということに対しましては、嚴にお取締りを願いたいと思います。そういう点で業者が今の言明で非常に明るい気持になつておりますが、ただここに一つ関連してお聞きしたいことがあります。それは過般の声明には関税のことはなかつたように思いますが、関税の問題は、フロア・プライスの撤廃のときにも心配になつたのでありますが、今度の輸出入の問題につきましても、関税の問題がどうしても大きな問題になると思います。これは相当時間のかかることでありますので、私後刻機会を見て、あらためて詳細な御質問をさしていただきたいと思います。ここで一言お聞きしたいことは、この臨時国会に提出されるように聞いております貿易の臨時措置法といいますか、輸出入の自由になりますところ貿易に伴います措置法を、提案されるというように聞いておりますが、その法律と同時に、関税の問題につきまして、相当根本的に改訂される法案を、臨時国会に提出される御意向を持つておられるかどうか。この点についてお聞きしたいと思います。
  33. 宮幡靖

    宮幡政府委員 この問題は先刻門脇委員お尋ねのときに申し上げておきましたが、きわめて近い時期、この臨時国会の間に、輸出貿易臨時措置法の御審議を願いたいと考えております。なぜかといいますと、輸出自由という体系は、十二月一日から実施せなければならないように、指令せられております関係で、ぜひこの国会において御審議をいただかなければなりません。また蔵入の方の臨時措置法におきましても、同様ただいま構想を練つて、それぞれ交渉中でありますが、これはおそらく今国会には間に合わないであろうと思います。通常国会の冒頭において御審議を願い、一月一日より実施いたしたい、かように考えております。  それから関税の問題でありますが、これは先刻山口委員からお尋ねのときに、関税の問題は重大な問題であるということを一言申し上げておきました。しかしながら輸出貿易臨時措置法を提案すると同時に——これはもつとも大蔵省から提案されるものでありまするが、同時に併行的に法案が提出されるような国内の交渉に、ただいまはなつておりません。しかし御説の通り、これは重大な問題でありまするから、貿易を自由にするということから起つて参ります諸般の情勢、影響等を考えまして、大蔵省とも密接に連絡いたしまして、何らかの措置を講じたい、かように考えておるわけであります。
  34. 前田正男

    ○前田(正)委員 質問はこれで終りたいと思いますが、実は過般のフロア・プライス撤廃のときにも、関税の問題も同時に付らかの措置を講じていただきたいと私どもは思つてつたのであります。今のお話では同時に行われるかどうか、多少疑問があるようなお話でありますが、すでにフロア・プライス自身が撤廃されておりまして、関税の問題は輸出入の価格に相当影響のあることでありますので、どちらかといいますと、輸出貿易の自由の問題と同時に、関税の問題を先に関係方面とも話をつけて持つて来るぐらいに、ぜひ政務次官の御努力御折衝をお願いいたしまして、私の質問を終ります。
  35. 小金義照

    ○小金委員長代理 次は川上貫一君。
  36. 川上貫一

    ○川上委員 輸出品取締法の一部を改正する法律案、この問題で直接この法案に関係する部分についても、御質問いたしたいのでありますが、それ以前に貿易そのものについて少しく御質問いたしたい。もつとも政府の方ではあと輸出補償法その他の法案を用意されておるように承つておりますが、そのときにも輸出問題は出ると思いますが、そういうものが出て来るということを考慮に入れながら、輸出全体について少しく御質問をいたしたいのでありますが、私の質問したいところは非常に広範にわたつてつて、約十項目にわたりますので、非常に時間をとると思います。しかしそのうち最も重要なるものを、この際は質問してみたいと思うのであります。  第一に取締りというようなことを考えておられる。これはフロア・プライスの撤廃、こういう問題に関連し、あるいはダンピングの問題に関連して、特にこれを改正されるのであろうと思いますから、そういう点から御質問いたしたいのでありますが、政府は輸入の方式を、従来より修正される考えがありますかありませんか、この点を先に一つお尋ねしておきたいと思います。
  37. 宮幡靖

    宮幡政府委員 輸入の方式ですか。
  38. 川上貫一

    ○川上委員 ちよつと私の言葉が足らなかつたのですが、輸出入先を、方針として多少修正されるお考えがあるかどうか、言いかえれば、ポンド・ブロックの方ともおやりになる考えがあるかどうかということをお伺いいたします。
  39. 宮幡靖

    宮幡政府委員 貿易自由の原則が確立しそうになつておりますが、しかしながら現在の国情におきましては、依然として従来の貿易協定の範囲内において、実施されるものと考えております。しかしながら貿易の前途を考えますと、それだけで満足すべきでありませんから、順次貿易相手国その他等につきましても考慮いたしまして、貿易の振興の方面に進んで参りたい、かように考えております。
  40. 川上貫一

    ○川上委員 現存貿易協定ができておるのは、どこどこでありますか。
  41. 宮幡靖

    宮幡政府委員 私の記憶しておる範囲ではアメリカとの取引は、もちろんできております。それから日英協定がございます。日独協定も最近成立いたしました。時にスイング・アカウントなんか新しくできて、司令部からまだ発表がございませんので、こちらからは申し上げかねますが、日韓貿易協定も話合いは進んでおる状態であります。そのほかにありましたらただいま通商局の次長が参つておりますから、この点の御説明を申し上げます。
  42. 川上貫一

    ○川上委員 アルゼンチン、ブラジルはどうですか。
  43. 松尾泰一郎

    ○松尾説明員 政務次官のお答えと重複するかしれませんが、通商協定と申しましても、数量金額をきめる貿易協定と、ただ支拂い関係のみを規定しております決済の協定と二つにわかれております。貿易協定の国といたしましてはスターリング地域がまず第二、それから韓国がその次、それからフランス及び仏印、それからオランダ及び蘭印、それから先般発表されましたドイツ、それから中南米に参りましてウルグアイというような国でございます。それから支拂い協定の国は、今申しました貿易協定ができております国を全部含みますが、そのほかに中南米ではブラジル、アルゼンチン、メキシコ、ヨーロツパに参りましてフインランド、スエーデン、次は香港、中国の状況はああなつておりますが、中国との関係もあります。大体その程度であります。
  44. 川上貫一

    ○川上委員 今行き先の御答弁がありましたが、この中で貿易協定の方に西独も人づておるといろ御答弁でありますが、たとえば西独の場合、どういう形で協定は結ばれるのでありますか。この質問もちよつとわからぬかもしれませんが、日本からはどういう資格の者が立会い、西独からはどういう資格の者が立会つて、こういう協定ができるのでありますか。特に西独の方だけでけつこうですからお聞かせ願いたい。
  45. 松尾泰一郎

    ○松尾説明員 日本側は正式には立会つておりません。こちら側としては司令部の方と、向うからは先般見えておりましたドイツの輸出入連合機関理事長のローガン氏と、その補佐としてのシイバー氏の二人であります。こちらは司令部の方、こういうことになつております。
  46. 川上貫一

    ○川上委員 そうすると西独との協定と言いますが、これは日本側は入つておらぬのでありますか。
  47. 宮幡靖

    宮幡政府委員 日本は占領されておりますので、司令部がかわつてやることは御承知の通りであります。日本とドイツとの協定を、司令部日本に対しておやりくださるので、この点はありのままであります。
  48. 川上貫一

    ○川上委員 そういたしますと、今後できます協定も、そういう形になるのでありますか、どうでありますか。
  49. 宮幡靖

    宮幡政府委員 講和條約でも締結されました場合は格別のこと、ただいまの情勢そのままでありますと、さようなことになろうと考えております。
  50. 川上貫一

    ○川上委員 イギリスとの協定もさような形でありますか。
  51. 宮幡靖

    宮幡政府委員 日英協定も新聞紙上等でも伝えております通りに、同様な状況で協定が結ばれておるわけであります。
  52. 川上貫一

    ○川上委員 どうもそれは英米協定のようなものですが、しかし内容は省略いたします。ところでこの協定でありますが、たとえば西独の場合、どういう品物が入るように協定ができましたか。この点をちよつとお聞かせ願いたいと思います。
  53. 松尾泰一郎

    ○松尾説明員 日本から輸出する物資は絹糸、綿織糸、綿織物、鯨油及び魚粉を含みますところの農産物、繊維機械、それから金属、化学薬品、木製品、紙製品その他雑貨というのが、日本から輸出されるものであります。それから輸入品はカリがまず大きいものでございまして、その次は各種の機械類、化学薬品及び医薬品、鉄鋼製品、ケルシンワツク、ホップ、その他雑貨というようにわかれております。
  54. 川上貫一

    ○川上委員 カリとおつしやいましたのは、カリ塩でございますか。
  55. 松尾泰一郎

    ○松尾説明員 カリ塩でございます。
  56. 川上貫一

    ○川上委員 機械、化学薬品、鉄鋼製品というものが輸入されるというのですが、これは日本にいるのですか。妙なことを聞くようでありますが、日本から化学薬品を出すといつておりますのに。それから機械類はどういう機械を入れるのか。これは日本で生産ができると思うのです。ことに鉄鋼製品に至つては現在日本は幾らでもこれの生産能力があるのです。また鉄も最近までストックしておつたわけであります。そういうものを入れて来ますと、日本国内産業をただちに圧迫すると思うのですが、どういうわけでこういうものを入れて来るのですか。
  57. 宮幡靖

    宮幡政府委員 日独の問で、司令部の管理のもとにおいて交易のできます品目を、一応協定したのでありまして、具体的に輸入するとか輸出するとかの問題は、そのときの経済事情によりまして決定さるべきであります。しかも一応の貸借の限度はたしか三百万ドルつたと、かように覚えております。それ以上のお互いの貸越しはできないような協定の内容になつております。鉄鋼あるいは機械というようなものについて、こちらから輸出しなければならぬ、こういう事態もお説の通りでありますけれども、日本でできます優秀なる機械に、たとえばボール・ベアリングが、これはドイツと限りませんけれども、欧州のものがほしい。日本の機械にボール・ベアリング——SKFといいますか、こういうボール・ベアリングをつけたら非常に優秀な機械になる。そして組立てれば日本の優秀な機械として、各方面に向くというような事態もあるのでありまして、かような部分品のボール・ベアリングというようなものの、世界的に有名なものを輸入しまして、日本の機械をさらに優秀の段階に持ちこむことは、一応必要でなかろうかと思つております。国内産業を圧迫するような輸入はいたしたくない、かように考えております。
  58. 川上貫一

    ○川上委員 それはどうもちよつとおかしいと思う。なるほどカリ塩は必要でありますから、これは輸入してもらわなくちやならぬけれども、機械類、化学製品、化学薬品、あるいは鉄鋼製品のようなものは、これは輸出しなければならぬから輸入するんだとしか、われわれには受取れない。政府の方では日本の飢餓輸出、しかもこれは首切り、低賃金、労働強化というダンピングを伴つて、しかもそれに重税が加わる。こういうような條件のもとに飢餓輸出をやつておる。それは輸入しなければならぬから、輸出をしなければならぬという政府の説明なんです。ところが日独協定を見ますと、輸入しなければならぬのはカリ塩だけであつて、ほかのものは輸入しないでもいいものだとわれわれは考える。輸入しなければならぬから飢餓輸出もしなければならぬし、耐乏生活もしなければならぬと言われるが、それがどうもぴつたり来ない。こういうものは輸入する必要がないのである。なるほど優秀なるボール・ベアリングを入れて、日本の生産性を高める必要がある、こう言われますけれども、しかしそれは日本の耐乏生活と重税と低賃金と首切り、こういう国内を非常に混乱に陥れて、しかも持つて来なければならぬものだとは、われわれには考えられないのでありますが、一体協定貿易というものは実際において言えば、日本輸出しなければならぬために、何でもかんでも向うさんの言われるものを持つて来なければならぬという仕組みになつておるのではないかと思うのですが、その点はどうなのでしようか。
  59. 宮幡靖

    宮幡政府委員 これは相当考えに開きがありますので、川上委員のお気に入るような答弁ができないと思います。しかしながら特殊の機械を輸入しようという構想であるようでありますので、それが日本で全然いらないものであるかどうかというような決定は、この席で私どもの知る範囲ではできないということであります。しかもこの協定ができましても、輸出入ともに自由の原則に返えろうとする——自由の原則というのは資金の関係さえ、国家でもつて正常の国際通商経済を破壊しない限度において見守つて参りますれば、あとはそれぞれの事業者の意欲によつて商談を交えるのでありまして、計画してその物を買えというようなことは、原則としてないわけであります。これから考えますと、川上委員の御心配のようないらない物でも何でも、押しつけられて買わなければならないのではないかというような結論にはならないと思うのであります。管理貿易の上で計画輸入をやつておりましたならば、あるいは川上さんの御心配のようなことがあるかもしれませんが、貿易が自由になりまして、業者が必要な物を買い、必要な物を売るという前提において考えますと、どうも残念ながら川上委員のお説に同意が表せないわけであります。
  60. 川上貫一

    ○川上委員 これは残念ながら宮幡政務次官の答弁にちつとも同調し得ない。日本は今貿易に自主性がないのであります。しかも出発機関を持つておらない。自由に貿易すると言われますけれども、自由に貿易ができないのだ。そういう時分に協定貿易ができるからと言つて、まことに鬼の首でもとつたように政府はいつでも宣伝しておられる。ところがこの協定貿易内容たるや、西独との貿易が代表的に今の答弁で出て来ておると思う。これは実に不念下用品を持つて来て飢餓輸出をする。こういう形で行つた日本貿易をすればするほど損をする。これは鬼の首でも何でもないと思う。それについて私はさらに聞きますが、相当不急不用品が今まで入つておるし、また将来入ると思う。たとえばスエーデンからボール・ベアリングが入つておる。南阿からマガジが入つておる。アルゼンチンからとうもろこしが入つておる。また牛肉が入つておる。牛肉などを何で入れるかわけがわからぬが、朝鮮からのり、うに、ほしえびが入つている。あるいは樺太からはすずや石油や固形燃料が入つておる。これらはことごとく日本にいるものとは思えない。日本は出先機関もなければ実際においては自主性ない。こういう場合にいる物だけ買うのだ。そうして日本から出そうと思うものを出すのだ。いらぬものはちつとも買わぬのだ。こういう答弁は残念ながらごまかしである。もつと正直にひとつ答弁してもらいたいと思う。協定貿易には抱合せ輸入は今後絶対にありませんかどうですか。
  61. 宮幡靖

    宮幡政府委員 御意見は毎回申しますが御自由ですけれども、川上委員の御心配のような状態はないと思います。どうぞその点で御了承願いたいと思います。
  62. 川上貫一

    ○川上委員 これは実に奇妙な答弁だ。私は意見を述べておるのじやない。政府に聞いておるのです。今後抱合せ輸入はあるかないかということを聞いておるので意見じやない。これを聞かしてもらいたい。
  63. 宮幡靖

    宮幡政府委員 民間業者が抱合せ輸入を希望して契約するなら、抱合せ輸入も起るでありましよう。しかしながら、それを希望しなければ起らないのでありまして、貿易がお互いの業者間で、民間人同士で協定されるものでありますから、その事態を今から予測して、いずれとも申し上げられない。従つて私は御意見としか考えられないのであります。
  64. 川上貫一

    ○川上委員 そういたしますと、民間貿易になりましたならば、民間人が金もうけになりさえすれば、不急不用品でも何でも持つて来てもよろしい。奢侈品もどんどん持つて来てもけつこうだ。ダイヤモンドやバナナを持つて来てもけつこうだ。これは民間業者が金もうけでやるのだからというように、政府はお考えでありますか。
  65. 宮幡靖

    宮幡政府委員 およそ一つのものには程度というものがあります。言葉のあやから生まれて参りましたので、何でも川上さんお得意の言葉で野放しでよいのか、こういうことになりますが、国際貿易には国際貿易の正常なる国際放支を害しない限度があるのであります。それでありますから、それなら何でもかつてにやらせるのかと言われても肯定できないわけでありまして、時と場合によりまして必要なる規制を加えることは、国家があり、民族がある以上これは当然であります。それを時々変転して参ります国際経済事情をとらえて、今仮定の上に立つてこうだという方針を申し上げることは、少しはばからなければならない。かように考えております。御意見は御意見として承りますが、見解はまつたく異つております。
  66. 川上貫一

    ○川上委員 どういう手続と、どういう形で規制をお加えになるのでありますか。協定貿易の範囲内で輸出品目、輸入品目はきまつて来る。ところがこの協定貿易の相手方にはそれがない。義務づけられたものはない。こちらはどうしても出さなければならぬ。向うの方ではどういうものが日本に必要だから、どうしても輸出するという義務は少しもない。そうしますと日本貿易商あるいは生産者が輸出しようと思いましたならば、どうしても向うさんの言うものを持つて来なければ輸出することができない。しかも持つて来るところの品目の範囲は西独の例でも明らかな通り、機械があり、化学薬品があり、鉄鋼製品があるのであります。こういうことになりますと、政府日本の必要なものを持つて来るという規制をどうしてなさるのですか。
  67. 宮幡靖

    宮幡政府委員 私はこの委員会において、川上委員の御説には常に敬意を表して御答弁を申し上げておる。貿易のことも十分その内容を御承知たと思つて実は伺つてつたのでありますが、ただいまの御意見を聞きますと、この貿易外国為替管理というようなことは、少し私どもの考えを誤解せられているのじやないかと思う。ただ持つて来るのではない。物をやるか、あるいは代金決済をしなければならぬのです。資金管理は日本にも外資委員会もありますし、外国為替委員会もあつて、——先ほどこれは日英協定ではなくて、米英協定だという私語もあつたようでありますが、とにかく占領管理されています以上、資金も管理を受けておるわけであります。貿易臨時措置法は、いまだその内容をここで公表する運びになつておりませんが、大体考えておりますのは、輸入委員会というものができまして、その資金の割当をする。日本にぜひ必要なものは民間業者が相手方と契約さへすれば輸入できる。いらないものには資金のわくがないのでありますから、従つて資金の面で規制できることは貿易として当然であります。これらはほとんど議論の余地がないと私どもは考えております。いらないものにまでかつてに野放しに開放して、資金を使わせるということになるならば、外国為替委員会も輸入委員会もいらないことになる。そういう面で必要なものが入るようにやつて行くことが委員会の生命であり、国の考え貿易方策であります。この点はどうしても年間計画で行く、少くとも、第一、第二、第三、四半期というように、順次年間の計画を見まして、ぜひこれはしなければならぬ、先ほど御指摘のマガジであつても、かつてのソーダ工業の不振の時代でも輸入しなければならなかつた。現段階においてはマガジは、輸入を避けるためにあらゆる施策を講じておる。こういう生きておる経済の動きの間に考えてみますと、ほんとうに残念ながら川上委員の御意見に、少しも考慮を拂わなければならない点を発見しないのであります。どうぞさように御承知を願いたい。
  68. 川上貫一

    ○川上委員 まことに残念ながらこりくつの答弁だけです。この問題で時間をとつてはつまりませんし、実際腹の中はわかつておるのだから、もうあまり申しません。なかなか政府もうまいことを言われますが、しかし貿易協定というものの中で、政府規制して、実際いるものだけ持つて来るということにはなかなか参らぬ、今までも参つておりません。今後も参るということはおそらく考えられない。これは御意見でありますからと言われるでありましようが、なかなかそうは行かぬ。協定貿易このものでそんなにりつぱには行つておらぬという点について一つ質問したい。為替管理委員会はかつて香上銀行及びチヤータード銀行から二億一千六百万円のポンド貨を買つたのじやないかと考える、これは事実でありますか。どうでありますか。しかも買いました時分が、ポンド切下げの直前ではなかつたかと私は考える。かようなことは非常に損なことをやつておるといわなければならぬ。これは為替管理委員会がちやんとやつておる、為替管理委員会があり、その他のものがあるから、ちつとも損なんかしないというような説明でありますけれども、これははつきり損をしておると思う。なせこんなことをしたのか。
  69. 宮幡靖

    宮幡政府委員 ただいまの川上委員お尋ねは私不幸にして知つておりません。従いまして為替管理委員会委員なり、また大蔵省の関係官をお呼出しくださいましてお尋ねをいただきたい。ただいまのことは残念ながら——これこそ残念ながら知りません。知らないことを率直に申し上げます。
  70. 川上貫一

    ○川上委員 商工当局がお知りにならなければ、これは仕方がありませんから、ほかのところで伺うことにしますが、そうしますと、本年の五月までのポンド地域の出超累計は六千三百万ドルではなかつたかと思いますが、これが新聞の伝えるところによると、ポンド建に改めてこれを輸入にあてるというように承つておる。これは当然ドル建で受取るべきものであると思うのです。これが第一点。この六千三百万ドルの決済がなぜ今日まで解決されずに延び延びになつておるか。——これが第二点。かようなことをやりましたならば、協定貿易に伴う不利益が生じて来る。これをどうお考えになりますか。この三点についてお答え願いたい。
  71. 宮幡靖

    宮幡政府委員 九百万ポンドの出超だと私どもは数字で覚えております。それが六千三百万ドルになるのかもしれません。これは日英協定がしばらく足踏みの形でありまして、もしドル・フアンドを英連邦諸国におきまして持つてつて、決済が可能であるならば、もつと早く司令部のあつせんによつて日英協定ができたでありましようが、このポンド出超になつております決済が、相手国においてなされないということが、日英協定の一つの障害となつて遅れておつたように聞いております。それでこの九百万ポンドを貸勘定にしておきまして、順次取引の間に必要なものをもつて決済してもらう、こういうことを前段の條件として協定ができたように承つておりますので、これが非常に不利であるか、あるいは利益になるかといろ問題は、今後にかかる運用の問題でありまして、ただいまこれが必ず不利だという御断定には、これも残念ながら御同意できないのであります。
  72. 川上貫一

    ○川上委員 少し聞き漏らしたのですが、ポンド建に改めて、輸入に充てるという事実がありますか、どうですか。
  73. 宮幡靖

    宮幡政府委員 目下九百万ポンドでありますので、ポンドで決済できますものはポンドですべきでありますが、日本の為替管理の状況がドル建でありました関係で、これがお親のような六千三百万ドルに換算いたしております。決済はドルでしていただく関係になりますので、勘定はドル勘定だという御説はごもうともだと考えております。
  74. 川上貫一

    ○川上委員 それではあらためて聞きますが、これは今後ポンド建に改めて、そのものをポンド地域からの輸入に充てるということは新聞には伝わつておりますが、政府考えではない、こう受取つてよろしいでしようか。
  75. 宮幡靖

    宮幡政府委員 どういう御質問か、趣旨がよくわかりませんが、九百万ポンド貸越しになつておりますから……。
  76. 川上貫一

    ○川上委員 もう一ぺん言います。ドル建で受取るべきものをポンド建に改めて受取ることになるのであるかどうか、この点……。
  77. 宮幡靖

    宮幡政府委員 先ほども申しましたように、ポンド地域から参りましたものは、品物によつてはポンドで決済してさしつかえない。かように考えておるのでありまして、必ずドルにかえなければならないというほどきゆうくつなものではない。かように考えております。
  78. 川上貫一

    ○川上委員 しかしこれはポンド切下げ以前のものなのであります。それをポンド建に改めてもらうということになれば、切下げだけ日本が損をしなければならぬ。この勘定はどうなりますか。
  79. 宮幡靖

    宮幡政府委員 どうも質問がぴつたり合わないのでありますが、九百万ポンドの貸越し勘定になつておりますから、九百万ポンドで決済していただくわけであります。現在すでに行つております一小部分のものでありますが、これはみなポンド決済をやつております。しかし場合によりますれば、ドルでもとらなければならない場合があろうかというわけであります。どうぞその点は御了解いただきたい。
  80. 川上貫一

    ○川上委員 それはドル建で受取るべきものではないのでありますか。ポンドで受取るべきなんですか。
  81. 宮幡靖

    宮幡政府委員 ポンドで受取るのが原則だと考えております。
  82. 川上貫一

    ○川上委員 その点についてはちよつと考えが違いますが、しかしこれはあとに残すことにいたします。それでは私の質問はまだ残つておるのでありますが、時間の関係もあるそうでありますから、この質問を明日に繰延べさしていただきます。本日は一応これで質問を打切ります。
  83. 小金義照

    ○小金委員長代理 それでは本日はこの程度においてやめまして、次会は明十六日午前十時より開会いたしまして、質疑を継続いたします。  これにて散会いたします。     午後零時二十五分散会