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1949-12-03 第6回国会 衆議院 懲罰委員会 第2号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十四年十月二十九日       大西  弘君    佐々木秀世君       高木 松吉君    内藤  隆君       佐々木更三君    志賀健次郎君       林  百郎君    大西 正男君       笹森 順造君が理事に当選した。     ————————————— 昭和二十四年十二月三日(土曜日)     午前十一時六分開議  出席委員    委員長 松木  弘君    理事 木村 公平君 理事 佐々木秀世君    理事 内藤  隆君 理事 中川 俊思君    理事 吉武 惠市君 理事 佐々木更三君    理事 大森 玉木君 理事 林  百郎君    理事 大西 正男君 理事 笹森 順造君       井手 光治君    菊池 義郎君       篠田 弘作君    福田 篤泰君       福田  一君    福永 一臣君       猪俣 浩三君    春日 正一君       島田 末信君    浦口 鉄男君  委員外出席者         議     員 椎熊 三郎君         議     員 砂間 一良君 十一月十一日  委員大西弘辞任につき、その補欠として西村  久之君が議長指名委員に選任された。 同月十五日  委員徳田球一辞任につき、その補欠として志  賀義男君が議長指名委員に選任された。 同月十八日  委員佐々木秀世辞任につき、その補欠として  青木孝義君が議長指名委員に選任された。 十二月一日  委員林百郎君辞任につき、その補欠として神山  茂夫君が議長指名委員に選任された。 同月二日  委員青木孝義君、池田勇人君、小澤佐重喜君、  高木松吉君、西村久之君、森幸太郎君、山口喜  久一郎君、山崎猛君、吉田茂君、志賀健次郎君、  神山茂夫君、志賀義雄君及び木村左衞門君辞  任につき、その補欠として福田篤泰君、菊池義  郎君、篠田弘作君、吉武惠市君、中川俊思君、  井手光治君、福田一君、木村公平君、佐々木秀  世君、大森玉木君、春日正一君、林百郎君及び  島田末信君が議長指名委員に選任された。 同月三日  委員菊池義郎辞任につき、その補欠として福  永一臣君が議長指名委員に選任された。 同日  理事大西弘君、高木松吉君及び志賀健次郎君の  補欠として木村公平君、吉武惠市及び大森玉木  君が理事に当選した。 同日  佐々木秀世君及び林百郎君が理事補欠当選し  た。 同日  委員中川俊思君理事追加選任された。     ————————————— 十二月二月  院議をもつて議員砂間一良懲罰事犯の件 の審査を本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した事件  理事追加選任  議員砂間一良懲罰事犯の件     —————————————
  2. 松木弘

    松木委員長 これより会議を開きます。  理事でございました大西君、佐々木君、高木君、志賀君、林君が、その後委員を辞されました関係から、その補欠を選任したいと思いますが、委員長において御指名をいたしまして御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 松木弘

    松木委員長 御異議がなければ。       木村 公平君    佐々木秀世君       吉武 惠市君    大森 玉木君       林  百郎君を御指名いたします。  なお、一名理事が欠けておりましたので、追加選任したいと思いますが、これも委員長において御指名してよろしゆうございますか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  4. 松木弘

    松木委員長 御異議がなければ、中川俊思君を御指名いたします。  この際暫時休憩いたしまして、十一時半に開会することにいたします。     午前十一時八分休憩      ————◇—————     午後零時四分開議
  5. 松木弘

    松木委員長 休憩前に引続き会議を開きます。  昨日院議をもつて付託されました議員砂間一良君の懲罰事犯の件を議題といたします。  まず懲罰動議提出者であります椎熊三郎君から、動議提出趣旨について説明をお願いしたいと思います。
  6. 椎熊三郎

    椎熊三郎君 私は昨夕の本会議の、引揚促決議案賛成討論の際における、共産党砂間一良君の演説の全体を聞いて、これは決議案賛成という仮面をかぶつて、実はこれに反対の言辞をなす、すなわちこの決議案に対するおおうべからざる汚点を残したものであつて、そのこと自体国会を悪用し、国会を通じての共産党の悪宣伝である。かようなる欺瞞的行動は、議員として許すべからざることであると信じます。よつて懲罰委員会においてその実否を一層深く御検討くださいまして、適当の処置をつけていただきたいと思います。これが私の動議を提出した理由であります。
  7. 林百郎

    ○林(百)委員 ちよつと椎熊議員に私の方からお聞きしたいことがあります。実は引揚委員会でこの決議案ができるまでの経過ですが、実は私の方からこういう決議案が出ていたわけです。これはあるいは知つておられるかと思いますが、   海外未帰還同胞の速やかなる帰還国民の等しく待望するところである。   今春ソヴエート社会主義共和国同盟よりは未帰還者全部、九万五千名(一部戦犯をのぞく。)本年度送還発表された。しかるに本年度四月現在でソ連地区よりの未帰還者の数は四十万八千七百二十九名とされており、その差三十余万名の所在について国民は重大なる関心をよせている。   しかるに政府がいまだ未帰還者の数に関し、責任ある数字発表していないが、これは国民の心痛をかえりみない態度である。政府は、その責任において速やかに未帰還者及びその家族の数の正確なる発表を行い、その生死所在を明らかにし、帰還促進のための具体的方策を樹立すべきである。   右決議する。 こういう決議案を私の方の党で出していたわけです。ところがこれに対して民自党諸君の方からも実は決議案が出まして、そこで私の方としては民自党の方から出ました決議案を修正するという形で、わが党の方の決議案修正案として出そうとしましたけれども、それではいろいろ手数もかかるしするから、この共産党の方の決議案趣旨を本会議で十分説明する機会を與える、いわゆる賛成討論という形で、この共産党決議案の要望しておるところを、本会議で十分説明させようという話合いのもとに、昨日の本会議に上程された決議案ができ、かつ砂間君もそういう了解のもとであつたから、日本政府独自の責任ある数字発表されたらどうか、これこれこういう点で数字食い違いがあるからということを、砂間君も強調されたと思うのですが、引揚促委員会でこの決議案ができるまでの経過は、椎熊議員としては十分了解の上で、この懲罰動議を出されたのかどうか。その点を念のためにお開きしておきたい。
  8. 椎熊三郎

    椎熊三郎君 懲罰事犯というものは、陰に隠れた内容とか何とかいうことは問題じやない。本会議自体における、その場における現実の問題以外にそれを追究してはいけない。懲罰範囲というものはおのずから限定があるのです。あなたは法律家であるから、それはよく知つておられるはずです。
  9. 木村公平

    木村(公)委員 提案者の御説明をもう少しお願いしたいと思います。提案理由の根本的なものは、きのうの決議案に対する砂間君の賛成意見が、表面は本決議案趣旨賛成であるように装つておるけれども演説全体を通じてほとんど全部の受けた印象は、まさにそのうらはらである。逆である。反対であるという印象を受けたことは、私もその一人であります。従つて椎熊議員提案はまことにごもつともと思います。そこでひとつ伺つておきたいのは、砂間君の議論を聞いておりますと、これはひとり砂間君の議論のみではなく、好んで共産党党員諸君が用いている手であるかもしれませんが、残留者の数の、ソ連側日本政府との違つている点に着目して、ことさらに日本政府数字を曲解または歪曲するとともに、できるだけ日本政府の数の信憑性を減殺し、もつてソ連数字を真実化せんとする意図が、いわば……。(「そんなばかなことがあるか」と呼ぶ者あり)まことに日本人離れのしたる、冷酷無情な考え方と言わなければならぬのですが、その考え方を根底にして、こういう議論が出て来ると思うのです。おそらく椎熊君の議論も、その点には留意されておると思いますが、その点について、御意見がありますれば、あわせて伺つておきたいと思います。
  10. 椎熊三郎

    椎熊三郎君 ただいま木村委員の言われた通り、その通りなんです。われわれはこの同胞家族のみならず、全国民が今日一人残らず故国に帰つてもらいたいというこの熱願、国民としての、それはまじめな意味の熱望です。現に全国大会を東京で開きましても、全国から何十万という家族がみな集まつて、それらはことごとく帰つてもらわれないで苦しんでおる人たちである。現実の問題もその通りソ連にいるということだけは、ほぼ想像できるという状態にある。それは今までの状態、帰つて来た人の状態、あるいはソビエト発表しておる状態日本政府考え方、それから総司令部から連合国を通じての調査の結果として、日本政府に言い渡されておること、それらを通じて、帰つていない事実は明瞭ではないか。それを帰つてもらいたいというのは、われわれ国民熱意じやないか。それをことさらに政府責任があるごとく、日本政府行動が、いかにも信憑性がないように誇張する。そうしてソビエトの方がほんとうらしく言うがごときは、共産党としてはむりからぬことだろうが、日本国民考え方としては、私どもは黙過できないというのです。
  11. 春日正一

    春日委員 椎熊議員質問しますけれども。そうするとあなたが懲罰動議を出したということは、砂間君が日本政府数字を信用しない。つまり日本政府数字を批判したから懲罰に値するというのですか。
  12. 椎熊三郎

    椎熊三郎君 そうじやない。
  13. 春日正一

    春日委員 あなたの今の御説明を聞いておりますと、そういうふうな、日本政府でこう出しておる、こうやつておるものを、これに違う数字をあげた。だから反対しておるから、懲罰に値するという印象を受けるのだけれども、そういう意味でいいのかどうか。
  14. 椎熊三郎

    椎熊三郎君 そうじやない。私の懲罰動議は冒頭に説明したことだ。今答えたことは、木村君から質問されたからそういうことがある。懲罰動議を出した真相は、数字の問題なんかに拘泥しておるのではない。あの演説全体が引揚げ促進決議案賛成する演説でないということだ。賛成仮面をかぶつてソビエト宣伝をしたり、共産主義宣伝を議会を通じてなさんとするがごときたくらみがあるということを、あくまで看破して言つておる。賛成の言葉なんか一つもないじやないか。(発言する者多し)
  15. 林百郎

    ○林(百)委員 木村君、冷静にしてください。ここでまた懲罰事犯が起きてはいかぬから……
  16. 木村公平

    木村(公)委員 君の方だろう。木村木村言つておれの名前を出すなよ。
  17. 林百郎

    ○林(百)委員 椎熊議員にお尋ねしますけれども、実は私の方も、けさ砂間君のこの演説の要旨も速記をとり、あなたの懲罰動議も全部速記をとつて調べてみたわけです。そこでよく調べてみますと、砂間君の言うのは、政府責任のある数字発表しなくて、ただ引揚げろ引揚げろといつてもいかぬから、政府がすみやかに日本政府独自の責任ある数字を出してもらいたい。それが結局引揚げを促進することになるからといつて、彼は最後結論としては、「こういうようなわけでありまして、私どもはこの引揚げの問題につきまして、もつと政府責任ある熱意をもつてほんとうに一日も早くやつてくれることを希望するわけであります。」と言つて結んでおるわけであります。私の方も、引揚者の未帰還者があるならあるで、政府責任ある数字発表してもらいたい。これはもともと私の方としては一つ決議案まで出しておつたわけなんです。その決議案民自党決議案と一緒にしたために、そのときの委員会の空気としては、そういう希望があるならば、しからばこの決議案賛成討論のとき言つてくれという話合いだつたものですから、砂間君は言つておるわけなんです。そういう意味で砂間君としてはこの責任ある数字政府発表し、一日も早く引揚げが完了することを希望するということを言つているわけなんですが、その点……。(発言する者多し)ちよつと待つてください。——その点と、それから今度は、あなたの言われている、あなたの方の懲罰動議をよく読んで見ますと、これがあなたの言われることだと思いますが、「諸君、彼らはこの神聖なる議政壇上を利用して、なお同胞引揚げ促進決議案賛成するかのごとき態度を装うて、事実は日本政府責任を追究したり、そうして腹の中ではこれに反対するという事実が、ここに明らかに表明せられておる。」というのであります。このあなたの最後結論の、日本政府責任の追究という点では、実はあなたの方から出ている並木君もこういうことを言つているわけなんです。「いくら文句でうまいことを言つたつて、実績が現われなければ、われわれとしてはがまんができないのであります。そういう意味において、私は現在の政府が口に唱えることと、実際にやつておることと一致しておるかどうか疑わざるを得ないのであります。(拍手)白たび宰相は、御殿場に帰ることは急である、大磯に帰ることは急であるけれども、この引揚げ促進のために、司令部の門を幾たびくぐつたか、われわれはその懇情の実態を知りたいのであります。」と言つて並木君も実は政府責任を追究しているわけです。そういう意味政府責任を追究したからということで、あなたの言う懲罰動議の点では何も砂間君だけ該当することにはならぬと思いますし、もう一つ、実は反対しておるということは、腹の中反対しているという事実が、ここに明らかになつたと言つておりますが、これはむしろあなたが誤解されているのではないかというふうに、われわれ考えるわけです。この点をもう一度あなたからはつきりさせてもらいたいと思います。
  18. 椎熊三郎

    椎熊三郎君 引揚げ促進決議案をつくるというのは、まだ引揚げない者がいるということを確認してのことなんですよ。いるかいないかわからないから出すというのではない。帰らない人がいるという確認のもとに、早く引揚げてくれという決議案です。砂間君のこの決議案賛成討論を見ると、引揚げ促進賛成するという字が一言もないじやないか、どこにある。私は政府責任を追究したから、懲罰動議を出したのではない。さつきから言う通り、この演説全体を通じて、賛成討論に名をかりて、この決議案を傷つけるような言動なんだということを言つておる。
  19. 林百郎

    ○林(百)委員 先ほどの椎熊議員意見ですと、砂間君は一言引揚げを促進するという意思を表明しておらないということでありますが、これはもう最初のところで、「私は日本共産党を代表いたしまして、本決議案趣旨賛成意見を述べようとするものであります。」と言つて、それから最後に……。(「それが仮面だと言うのだよ」、「全体の印象だ」、「聞いたらどうだ」と呼び、その他発言する者多し)ちよつと待つてください、ちよつと聞いてください。だんだん読んで行くんだから、そう興奮したもうな……。「この決議案の中に、その家族はもとより、全国民焦慮は今や絶頂に達しておるというような表現がしてありましたが、この国民焦慮不安に陥れている問題の一つは、未引揚者数字の問題であります。ところがこの数字の点につきまして、私ども政府にいろいろ質問いたしますけれども政府答弁はまつたくでたらめで、なつていないのであります、」こう言われまして、それでこの数字がどういう点でなつておらないか、この点が一番引揚者家族焦慮の点になつているのであるから、この点を日本政府責任をもつてはつきりさせろと、最後結論はこういうようなわけでありまして、「私どもはこの引揚げの問題につきまして、もつと政府責任ある熱意をもつてほんとうに一日も早くやつてくれることを希望する」と言つているのです。そうすると、先ほどの椎熊委員の言われるように、砂間君が一言もこの演説の中では、引揚げを真剣に促進するという意図は表現しておらないと言うことと、大分違うわけなんです。しかもあなたも速記録を読まれたかと思いますが、あのときはお互いに議場の中で興奮もしていたと思います。砂間君の演説をよく読んでもらうと、内容はほとんど数字の点なんです。これは引揚委員会でも一番問題になるのはこの数字の点の食い違いでありまして、これは大蔵委員会でも問題になつたけれども、実は日本政府独自の数字発表しないのです。調査もまだ未了だという。その点は司令部の方の数字を頼りにするほかは道がないので、日本政府としては独自の調査もしているとか、していないとか、あるいは責任を持つて日本政府独自の数字発表することは——きようここにおいてはどうか知れませんが、今までの各委員会においては、責任を持つて日本政府はこの数字発表しておらない。
  20. 椎熊三郎

    椎熊三郎君 これは今説明する。
  21. 林百郎

    ○林(百)委員 大蔵委員会でちやんとやつているんだが、あなたの意見もあるようでありますから、できるだけ意見を聞きたい。そこで砂間君はそこを突きたかつたのです。だからその点でもう一度椎熊議員誤解があつたなら誤解じやないかと言うて……。誤解がないならないでいいんですが……
  22. 椎熊三郎

    椎熊三郎君 日本の現下置かれている状態は、御承知の通り占領下にあつてソビエト連合国の一員なんです。それですから、引揚げの数というものは日本政府独自では発表できない。すべて今までの数字は総司令部数字に基いての発表なんです。日本政府独自でおれの方じやこれだけいるんだ、お前の国じやこれだけ抑留しておるということを、敗残国日本が、連合国に対して抗議できないのは君の知つている通りです。それだから日本政府自体数字言つていない。全部総司令部から出た数字なんだ。今まで予算委員会でも納得して来ているんだ。
  23. 林百郎

    ○林(百)委員 そういたしますと、たとえばここのGHQの発表ソ連発表と、大分食い違いがあるわけなんです。そこで日本政府にも独自の調査があるのかどうか。あるなら発表してと言つて実は調査も依頼しておるわけなんです。  それからこのたび大蔵委員会でも通りましたが、未帰還者家族給與予算を組みましたけれども、そのときは家族数政府発表しているんです。そうして十八歳未満の者も発表している。ですから家族発表し、十八歳未満の者もわかるから総数はどうか。これは連合国との十分の了解を得た後に、発表し得るものは発表すると言つているわけです。それだから秘密会でもいいからすみやかに日本政府独自で調査して、それを発表したらどうかということを言つておるのです。
  24. 椎熊三郎

    椎熊三郎君 林君はそこまで事情を知つてつて、なぜ君らの方では本会議において政府責任を問うているのか。そこに共産党の戰術がある。
  25. 林百郎

    ○林(百)委員 だから砂間君が聞きたがつておるのです。
  26. 椎熊三郎

    椎熊三郎君 聞いてはならないことです。それを了解して今日まで国会が来ているのです。
  27. 林百郎

    ○林(百)委員 その点を釈明する……
  28. 佐々木秀世

    佐々木(秀)委員 ただいままで椎熊議員動議趣旨説明をしているのに、林君たち椎熊君に対する質問は、何か砂間君を弁護するような、この中から来る感じ討論しているような感じが受取れます。それでは議事が進行しないと思いますので、この椎熊議員が言われた趣旨に対しての疑義があるなら、それを御質問なさつてあと共産党なら共産党の立場から弁護なさることも、意見を申し上げることも、これは後ほどの討論なりあるいは意見を述べる機会がありますので、その議事の進行を円滑ならしめるために、椎熊氏の言われた範囲内の御質問によつて議事を進行されんことを私は望むのであります。
  29. 椎熊三郎

    椎熊三郎君 特に委員長にお願いしたいのですが、ただいまアメリカの議員団国会を訪問されております。われわれ渡米議員団は、あの人々と今回行つて後のいろいろな打合せなんか今やつている最中ですが、いろいろ向うからの意見も聞きたいし、ぼくらの方からも意見を述べつつある最中です。率直にぼくの提案趣旨が鮮明されたら、早くそつちの方へ行きたいのです。そんな数字問題等は、あなた方独自の委員会でやつてもらいたい。
  30. 猪俣浩三

    猪俣委員 なおちよつと念を押すことになるのでありますが、これは重要な問題でありまして、あなたの提案根本趣旨は、共産党では腹の中では引揚げには賛成しないのであるが、賛成するがごとき態度をとつて、実は腹では反対であるのだということが重点だと思う、これは間違いありませんね。そうするとあなたがそういう認定をなされた根拠は、昨日の議場における速記録に現われた全体からそれを認定したと言われるのであるか。あるいは平素共産党のやり方を背景にして、そういう認定をなされたのであるか、どちらであるかをちよつと伺いたい。
  31. 椎熊三郎

    椎熊三郎君 いやしくも国会における懲罰事犯というものは、平素だとか、過去だとか、そういうことは取上げようとしても取上げられるものではない。現実に起つたその事態から来る。私が今度懲罰動議を出した趣旨は、きのうの演説全体を通じてそう認定したということです。
  32. 猪俣浩三

    猪俣委員 それは当然なことであるけれども、われわれはこの速記録を読んでも腹では不賛成であるが、口先だけ賛成だということが、この速記録からぴんと来ない。それでなお質問をするが、あなたは有名な共産党きらいで、自他ともに認められる方だからそれを念のためにお聞きしたい。
  33. 椎熊三郎

    椎熊三郎君 そうするとあなたと私は感覚の違いです。あなたは社会党左派か何か知りませんが、私は健全なる保守党の議員としてそう認定したということです。
  34. 木村公平

    木村(公)委員 そうするとこれは椎熊氏の提案理由説明に対する補足的質問になりますが、たとえばきのうの砂間君の速記録を見ておりますと、三ページの初めの方に数字の問題を論じたあとで、ことに一人もおらぬかもしれぬと暴言しておる、一人もおらぬということなら、引揚げを促進する必要はない、一人もおらぬということは引揚げを否定することなんです。私はそう信ずるのですが、おそらく椎熊さんもさような御意見ですか、ちよつと伺つておきたい。
  35. 椎熊三郎

    椎熊三郎君 まつたくその通りです、われわれがこの決議案を出すためには、国民全体、ことに引揚者を待つておる家族人たちは、何十万という引揚者の今日の状態を考えておる。その日本人としての心情を考えてごらんなさい、それをあなたが国会では一人もいない、おらぬかもしれぬという発言をされては、その人らの心情はどうですか。しかも国会は満場一致をもつて引揚げ促進決議をしようというのに、決議案汚点を残すような発言をどうして残しておくことができるか。これはまつたくイデオロギーとか何とかいうことを離れて、国会自体が、引揚者に対してどういう感覚を持つておるかということを、明らかにする必要があると思う。
  36. 佐々木秀世

    佐々木(秀)委員 椎熊さんに質問する前に希望するのですが、きようわれわれは議員として質問するのであつて、必ずしも社会党議員とか、社会党左派とかいうことで聞いておるのではございませんので、この点特に御了解の上に御答弁をお願いしたいと思います。私たちはこの調査にあたりましては、国会の権威において、最も公平妥当にその結論を出さなければならぬことは言うまでもないのでございます。そういう意味で、提案者椎熊さんにいろいろな角度から、現在われわれ議員は聞いておるのであります。そこであなたの提案理由説明書で見ますと、前に猪俣議員が申されましたように、大体において賛成演説で立つておるのだけれども腹の中では実際は反対しておるのだ。こういうふうに書かれておるのでございますから、われわれ懲罰委員として、あなたの提案理由書から受ける感じは、その事実ではなくして全体の感じである、こういうふうな印象を受けるのであります。しかしあなたも先ほどおつしやられた通り懲罰事犯は単なる腹の底とか、その人の思想とか、常平生の行動であるとか、こういうことではなくして、その議場における事実の上でなすべきことで、これはまことに、当然のことである。そこでこの事実は何かと申しまするならば、言うまでもなくこれは本人の砂間君の、きのうの議場における演説の、具体的な内容だと思うのでございます。そこで私は提案者にお伺いいたしたいのでございますが、全体というような漠然としたことよりも、もつと一歩突き進みまして、具体的な砂間君の発言のその点は実際は反対なんだ、こういうようなことを御指摘くださいまするならば、われわれ懲罰委員がこれから審議を進めまする参考になりまするので、でき得るならば事実の部分についてひとつここで御指摘願いたい、こう思うのでございます。
  37. 椎熊三郎

    椎熊三郎君 あなたは長い議員生活をしておるから、私は説明がましいことを言うのはいやですけれども、およそ国会行動には限度がある。反対したり賛成したりする討論なんかをやる場合には、それは、十分いろいろな意見言つてもいい。しかしその決議案が全会一致でできるというような場合には、おのずからその決議案の効果を発生せしむるというねらいがなくてはだめです。その賛成ということに名をかりて、冒頭はこの決議案賛成しておるといつて、その内容説明は、ことごとく同胞引揚げて来る数字に疑問がある。あるいは一人もいないかもしれぬ。こんなことは日本政府責任であつて、われわれ国民の要望とか、何とかいうことでないというような印象を受ける。その全体のことは、これは国会の全員一人残らず賛成しておる決議案汚点を染めているということ。こんなことはすべきものじやない。国会の儀礼からいつてもそうでしよう。われわれがたとえば死んだ人に弔辞を述べる場合、それから何かりつぱなことをして、二十五年勤続して表彰する場合、そういう満場一致で行くような場合は、よかれあしかれ、その問題の取扱いに一つ範囲がある。その範囲とは何か。その決定に効果あらしめるということなのです。それをわざわざ傷つけるような発言をして、どうしてこの決議案がりつぱに全会一致の決議案として認められるかということを私は言つておる。
  38. 大森玉木

    大森委員 大体椎熊氏の提案理由は書類によつてわかつておる。そうしてただいま各委員からいろいろとお尋ねになられた。もはやすべては明瞭であると思います。でありまするから、椎熊君に対する質問はこれで打切つていただき、次に砂間君を証人として喚問いたしたいと思います。     〔「賛成」「異議あり」と呼ぶ者あり〕
  39. 松木弘

    松木委員長 質問打切りの動議が出ましたから採決いたします。
  40. 椎熊三郎

    椎熊三郎君 諸君がこの委員会自体で採決をするというのに、証人たる私がここにさらされておる必要はない。私は退席してもよいと思います。
  41. 松木弘

    松木委員長 椎熊君、発言を許しておりません。     〔「まだ聞きたいことがある」「採決採決」と呼びその他発言する者多し〕
  42. 松木弘

    松木委員長 ただいまの大森君の質問打切りの動議賛成諸君の起立を願います。     〔賛成者起立〕
  43. 松木弘

    松木委員長 起立者多数であります。よつて質問は打切られました。
  44. 佐々木秀世

    佐々木(秀)委員 この際私は動議を提出いたします。すなわち本懲罰事犯に関連して、砂間君の発言が不適当であつたかどうかを判断するために必要でありますので、政府調査せられている残留同胞等の数字等について説明を求めるため、外務当局の御出席を要求されんことを動議として提出いたします。
  45. 松木弘

    松木委員長 ただいまの佐々木君の動議に御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  46. 松木弘

    松木委員長 御異議がなければ動議のごとく決しました。外務当局から出席説明を求めることにいたします。
  47. 林百郎

    ○林(百)委員 この懲罰事案の審議につきましては、先ほど社会党猪俣委員並びに佐々木委員からも話がありました通り、常日ごろの椎熊君のいわゆる共産党ぎらいの性格あるいはいろいろのことから言いまして、事実が曲解される危険が多分にある。しかも先ほどの木村委員発言の中で、砂間君の発言のうちの一人も残つておらないかもしれないということを言つていますが、この前に三十万おるか、五十万おるか、あるいは一人もおらないか、それは終戦当時われわれの同胞が海外に何人おつたかという基本数がはつきりしなければ、今日何人残つておるかということはわからない。このうちの一部だけを取除いて来て故意にこの審議をまげようとするようなことは、各委員が慎んで、動議提出者の弁明を聞くことはいいけれども、この委員会としてはやはり公正、冷静に判断してやつてもらいたいと思う。そういう意味木村君の発言についても前後の事情をよく聞いて、——そうでないとこの審議は非常に歪曲されると思う。そういう点で私は木村君に一言注意したいと思う。
  48. 佐々木秀世

    佐々木(秀)委員 ただいま林君からいろいろな御意見がありましたが、その通りでありまして、その意見その他発言に対しては後刻申し上げることにいたしまして、先ほど私が動議を提出してありますので、その通り運んで、ただちに砂間君をお呼び願つて議事の進行を願いたいと思います。
  49. 佐々木更三

    佐々木(更)委員 きよう私たちは本事犯を審議するにあたりまして、いうまでもなく社会党議員とか、共産党議員とか、民自党議員とか、こういう立場を離れまして、白紙の態度で公正に、嚴密に、これを審議する必要があると思うのでございます。先ほどから議事の進行を見ますると、まだ発言中に、見ようによつては相当の妨害的なやじがあるということは、最も公正なるべき、外部で言いますならば裁判に匹敵するこの委員会において、まことに好ましくないことと私は思うのであります。従つてこの事犯を公正に審理するためには、ここで委員会は申合せをいたしまして、発言を許されたる議員発言が終らぬ間は、いかなることがあつても絶対に発言をしない、やじも飛ばさない、こういうことを決議いたしまして、ひとつ本事犯を公正に審理するということの動議を提出いたします。
  50. 佐々木秀世

    佐々木(秀)委員 今社会党佐々木委員からの御発言の前段に対しましては私は賛成であります。しかし不規則発言的な、自然に出る個人の発言までも押えるという申合せだけは、これは行き過ぎかと考えますので、お互いに慎むという程度で申合せをいたしたいと思います。
  51. 佐々木更三

    佐々木(更)委員 やじを飛ばすことに反対だというならけつこうですから、採決してもらいたい。
  52. 松木弘

    松木委員長 採決しないで申合せにしたらどうです。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  53. 松木弘

    松木委員長 それでは佐々木君の動議のごとく、本委員会に砂間一良君の出席を求めて説明を聞くことにいたしたいと思いますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  54. 松木弘

    松木委員長 御異議がなければさようとりはからいます。
  55. 林百郎

    ○林(百)委員 こういうことも考慮しておいていただきたいと思います。先ほど佐々木君とも話したのですが、ここで砂間君が身上の弁明をする、そのあとで外務省の倭島管理局長ですか、その人が来て説明する。それから最後に、もし数字の点やいろいろな食い違いがある場合には、砂間君の意見も聞かないと、砂間君の意見に対して倭島局長が言いつぱなしではぐあいが悪いと思いますから、適当なときにもう一回砂間君の意見も聞くということで、議事を進行していただきたいと思います。
  56. 佐々木秀世

    佐々木(秀)委員 ただいまの林君の考えはそれでいいと思いますが、ただここでそうきめておくということでなく、必要があれば、委員独自の立場で砂間君の出席を求めるということも許されているのでありますから、そういうことをきめないで、もし必要があるならば、われわれの方でもう一回来てもらうというような自然の形でやつた方がいいと思います。
  57. 木村公平

    木村(公)委員 砂間君の身上弁明を聞いて、ただちに外務省の局長の説明を聞くというのでなく、砂間君の身上弁明に対して、たとえば数字問題等につきましては、外務省の説明を聞く以前においても、われわれに質疑の機会を與えていただきたいと思います。
  58. 松木弘

    松木委員長 それは皆さん御異議がないと思います。——砂間君が御出席になりましたから、先刻の委員会の決定に基きまして、砂間君の弁明を求めます。
  59. 砂間一良

    ○砂間一良君 昨日の引揚げ問題に関する決議案討論中、たまたま私の発言内容が問題になりまして、いろいろ各派の皆さんに御心配をおかけしておるということにつきまして遺憾の意を表します。  きのうの私の発言は、引揚げ特別委員会経過を御存じの方は、ある程度了解していただけると思うのでありますが、実はそれが中山委員長から何らその点に関して触れられなかつたために、突然私があの決議案に対しまして暴露的の演説をやつて、何かけちをつけるというふうな印象を大方の方に與えたかと思うのでありますが、実は引揚げの特別委員会におきましては、私は成規の手続を経まして、私外三十五名の提出にかかる引揚促進並びに日本政府責任ある未引揚者発表を促すの決議案というのを、たしか十一月の二十五日ごろでありましたか。そのころ提出してあつたのであります。この決議案内容はどういうふうになつておるかと申しますと、御参考までに案の内容を朗読させていただきます。    引揚促進並びに日本政府責任ある未引揚者発表を促すの決議   海外未帰還同胞の速やかなる帰還国民の等しく待望するところである。   今春ソヴエート社会主義共和国同盟よりは未帰還者全部、九万五千名(一部戦犯をのぞく。)本年度送還発表された。しかるに本年度四月現在でソ連地区よりの未帰還者の数は四十万八千七百二十九名とされており、その差三十余万名の所在については国民は重大なる関心をよせている。   しかるに政府はいまだ未帰還者の数に関し、責任ある数字発表していないが、これは国民の心痛をかえりみない態度である。政府は、その責任において速やかに未帰還者及びその家族の数の正確なる発表を行い、その生死所在を明らかにし、帰還促進のための具体的方策を樹立すべきである。   右決議する。  こういう決議案を提出しておつたのであります。ところが十一月二十九日に開かれましたところの引揚げに関する特別委員会の開会の劈頭におきまして、中山委員長が突如別の決議案を朗読されまして、これは衆議院の決議案内容とも同じであるから、従来引揚げ問題に関する決議案の慣例に従つて、ぜひこれを各派共同提案で衆議院でも提出したいから、それに御賛同を願いたいという発言があつたのであります。そこで私は中山委員長決議案内容を拝見いたしますと、いささか内容の点におきまして観点を異にしているものがあるというふうに感じたのであります。もちろんこの引揚げの促進並びに引揚げて来た人たちの定着、援護、あるいは留守家族、遺家族の援護というふうな、大きな目的におきましては同じでありますけれども、個々の内容、たとえば今未帰還者の数の問題が一つの大きな問題になつておりますが、そういう点につきましては、中山委員長の案はあまりその点を強調しておらないように見受けたのであります。私の方の決議案内容は、先ほども朗読いたしましたように、この数の点を、日本政府においてあらゆる方策をとつて正確な数を発表してもらいたいというふうなことが、この決議案内容になつているのであります。その点、多少個々の内容につきましては違つたところがある。それから中山委員長決議案内容によりますと、連合国に懇請するというようなことが非常に強調されているようであります。私どもの考えといたしましては、もちろん連合国の好意や、あるいは協力というふうなことも得なければこの事業は完成できませんので、連合国に懇請することも大いにけつこうでありますけれども、しかしまず当面の責任者として日本政府が、この問題についてはもつと積極的に、もつと努力をいたさなければならぬというように考えたのでありまして、そういう点で、力点の置き所が、個々の内容について言いますと多少異なつたものがあつたのであります。そこで私は委員会におきまして、私からこういう決議案を提出しております。これは十一月二十六日の公報にも載つて引揚げ委員会の審議に付託されている。従つてこの決議案を本日の委員会で問題にするのであるならば、決議案提出の順序に従つて、私の決議案を先に御審議願いたい、そうして、もしその案の内容において不適当なところがあるならば、皆さんの御意見に従つて修正することもけつこうである。またそれがよかつたならば皆さんに賛成していただいて、各派共同提案で出したい。またそれがいけないというならば否決されるのもやむを得ない。とにかく私の案を先に先議していただきたい。そうしてそれを結末をつけた上で、委員長決議案内容の審議に入るようなふうにしていただきたいということを、いろいろ申し上げたのでありますが、皆さんの御意見が、大体においてこの引揚げの促進とか、あるいは引揚げて来た人の定着援護というようなことで、大局においては皆一致した見解であるから、二つの決議案を一括して審議したらどうかということになりまして、そうして一括審議されたのであります。そこで私の提出したこの決議案内容につきましてもいろいろ御意見がありました。中山委員長決議案内容につきましてもいろいろ御意見がありました。結論といたしましては、結局大多数の方が中山委員長の案を支持するような空気が強かつた。そこで委員長が私に申されるのに、砂間委員もやはりこの私の案に、大局においては一致しているのであるからして、この内容の点について多少力点の置きどころが違つてつても御賛同を願えないか。問題が問題であるだけに、全員一致というふうな形で、各派共同提案で出したいから、ひとつ私の案に賛成してくれないかという意見を述べられたのであります。そこで私は、大局においては委員長の案に一致しているけれども、個々の内容につきましては、多少観点の異なる点もあるようであるからして、本会議において私に賛成討論発言機会を與えていただきたい、そしてその賛成討論の中で、私の意のあるところを力説する機会を與えていただけるならば、委員長の案に賛成してもよろしいというふうな希望條件をつけまして、そうして私はあえて自分の案を固執することなく、委員長案に賛成いたしたのであります。そのときに、これは速記録をお調べくださればわかることと思うのでありますが、中山委員長も、砂間委員の本会議における発言については、議院運営委員会その他において、私からも、砂間委員賛成討論の中で十分砂間委員の意のあるところを述べることができるような、そういう機会がつくれるように盡力いたしますということを申されまして、そうして委員長案が採択されたというふうなことになつたのであります。そこでその後、あの決議案が議院運営委員会の問題になりまして、賛成討論をやるかやらないかというふうなことが問題になりましたときにも、私は運営委員の個々の方にもお願いしたのですが、また中山委員長にも議院運営委員会へ御出席していただいて、そうしてあの特別委員会のいきさつと、私の発言については特別の御留意を願えるように盡力していただきたいということを申し上げまして、そうして昨日の運営委員会に中山委員長も御出席願つて、私からもまた委員外発言をさしていただきまして、その間の経過を申し上げ、そうして賛成討論機会を與えていただくということになつたのであります。そういうふうないきさつがありまして、私はきのうの本会議におきまして、賛成討論の中で、私が独自の立場から提出いたしましたこの決議案趣旨を織り込んで申し上げたのであります。従つてきのうの本会議における私の発言は、何も突如としてあの数の問題やその他の問題に触れたわけではありませんで、そういうふうな経過があつたのであります。きのう中山委員長が本会議であの決議案趣旨弁明をされるときに、委員長として一応この委員会経過と、そういういきさつがあつたということについて御発言があつて、そうして私の主張というものが、ある程度中山委員長趣旨弁明の中に取上げられておつたならば、本会議議場の他の議員の皆さんに、異様な感じは與えなかつたと思うのでありますが、それが不幸にしてなかつたために、突如何が私が別の問題を取上げて、そうしてあの決議案に何か暴露的な演説でもやつたかのような印象を與えたことは、はなはだ遺憾に思う次第であります。この点につきましては、私は本日のこの委員会に、中山委員長をもひとつ証人としてお呼び寄せ願いまして、委員会経過等につきまして、私のただいまの発言が正しいかどうかということにつきまして、もし皆さんが御不審をお抱きになるならば、中山委員長をこの席上にお呼びくださいまして、そうしてその間のいきさつについて詳細なるお尋ねを願いたいと思うのであります。  次に私がきのう取上げましたこの引揚げの数の問題でありますが、これも委員会経過を御存じない皆さんは、何か私がでたらめな数でも並べているかのような印象を受けられたかと思うのでありますが、しかしこの問題はきわめて重要な問題でありまして、今日三十数万の人たちがシベリヤにいるとか、いないとかいうことが問題になつておりまして、これがきのう中山委員長のあの決議案の中にもありましたように、国民の不安は焦慮の絶頂に達しているというふうな表現もございまして、これが実際留守家族はもとより、全国国民の非常に大きな関心事となつているのであります。ところでこの数の問題につきまして、私どもはあの引揚げの特別委員会におきましても、これまで何べんも問題にいたしまして、政府委員にもいろいろ質問して参つたのでありますが、それが一向要領を得ない。この間のいきさつにつきましては、あの引揚特別委員会会議録をひとつ詳細に御検討願いたいと思うのであります。きのう私が取上げましたあの数字にいたしましても、この数字が今問題になつているようでありますから一応その数字趣旨発言さしていただきますが、簡単に申し上げます。この海軍省の発表数字と厚生省発表数字に、七十万からの開きがあるというこの数字の出所でありますが、これは私は一九四六年の時事年鑑によりまして、あの中に海軍省発表数字と厚生省発表数字ということが出ております。それからもう一つは外務省の引揚渡航課が、衆議院の引揚特別委員会に提出した数字が、六百六十一万余という数字であります。これはきようもここへ持つて来て参つておりますが、この数字につきましては、私は特別委員会におきまして政府委員質問したのであります。これは国会の特別委員会政府が配付した資料でありますから、これを政府発表数字として受取つていいかということを、念を押して外務省の倭島局長にお尋ねしたのでありますが、倭島局長は一応これを政府発表数字としてみていただいてさしつかえないということを言明しております。ところが外務省発表数字が、実にでたらめと申したら少し言い過ぎかもしれませんが、絶えず変動しておりまして、これに信頼が置けないのであります。たとえば一九四九年の四月の数字を見ますと、引揚対象基本数というものが六百六十一万三千六百九となつております。これが九月の数字になると六百六十一万五千八十三人となつておりまして、千四百七十四人も違つておるのであります。また九月と十月の数字を引比べてみましても、十月の数字は六百六十一万八千九十人となつておりまして、九月と十月たつた一月の間におきましても三千七人も違つておるのであります。こういうふうなわけでありまして、引揚対象基本数というものが、私どもにははなはだ信頼が置けないような印象を受ける。引揚対象基本数というものは、これは非常に重要であります。終戦当時海外にわれわれの同胞が何人おつたか、その後何人引揚げたかということによつて、今日残留者が何人いるかということが計算されて来るのでありまして、この数字は基礎数字でありますからきわめて重要であります。この重要な基礎数字が、厚生省の発表と海軍省の発表の間にも、七十万からの開きがある。そしてまた外務省はそれとは別の、きのうも申し上げましたように、厚生省の数字よりも二十四万も多く、海軍省の数字よりも四十五万も少いような、こういう数字発表しておりまして、政府発表数字なるものに三通りあるわけでございます。一体どれを信用していいかということを、われわれは率直に申し上げて判断に苦しむわけであります。そうしてその外務省の数字が今一番正確だというふうに政府委員は申しておるのでありますが、その外務省発表数字も、月々こうやつてその対象基本数がかわつて参りまして、私どもにはどうもその点につきまして安心ができないのであります。     〔「ピントがはずれているじやないか」「一身上の弁明をさせない懲罰があるか」と呼びその他発言する者多し〕
  60. 砂間一良

    ○砂間一良君 しかし数のことが……     〔発言する者多く議場騒然〕
  61. 松木弘

    松木委員長 静粛に願います。
  62. 砂間一良

    ○砂間一良君 なるべく要点をつかんで簡単に発言さしていただきますから、しばらくお聞きを願いたいと思います。  南方方面の数字にいたしましても、きのう中国から百二十三名、台湾から二百五十名とその数字を申し上げましたが、この数字はどこから出たかということを申し上げますと、外務省の引揚渡航課が、衆議院の海外同胞引揚に関する特別委員会に配付したこの資料によるのでありますが、これが四月現在としてもらつた数字と、五月現在としてもらつた数字と、六月現在としてもらつた数字と、それをずつと比較対照して行きますと、そういうふうな開きが出て来るのであります。この点につきましては、私はあの引揚の特別委員会におきましても政府委員に、こうぐらぐらかわつておつたのでは、これは信用できない。一体これはどういうわけか。またこうやつて残数ゼロとなつているところから、続々として百人二百人ずつ帰つて来ている。ゼロのところから帰つて来るということはどういうわけだということを質問したのでありますが、その点については、政府委員一言答弁もできなかつたのであります。またこの南方方面の残留者の点につきましては、政府では一人もおらないということになつておりますけれども、ことしの正月十三日の大蔵委員会におきまして、これはたまたま未帰還者給與法などが問題になつたときでありますが、そのとき厚生省の岡林事務官はこういうふうに申しておるのであります。「それから南方関係の復員は、一応全部終つておるということになつておりますが、いわゆる状況不明として現在探究中のものが約三万あるのであります。そのほかいわゆる戦犯の関係で、現地で服務中の者、あるいは未決で抑留中の者というものが数千あるのであります。」こういうふうな言明をやつておるのでありまして、南方方面にも三万人からの人がいるということは、岡林説明員が五月十三日の大蔵委員会におきまして言明しておるところであります。こうやつて現実には南方方面にはたくさんの人が残つておる。そうして残数ゼロということになつている所から、続々と人が帰つて来ている。一方においてこういう事実がある。ところが満洲地区やソ連地区の場合におきましては、この事情が異るのであります。その点はきのう本会議におきましても簡単に触れたところでありますが、たとえば一九四九年十月一日現在におきましてソ連地区引揚総数は、政府がわれわれ引揚委員に配付した資料によりますと、百二十七万七千八百九十九人ということになつております。ところが一九四六年十二月米ソ協定後のソ連地区からの引揚者の数は、九十八万三千九百三十一人となつておりまして、その間二十九万三千九百六十八人という開きが出て来ておるのであります。ところがこの二十九万三千九百六十八人に、ソ連地区からの引揚者であるということは確実であります。何となればソ連地区引揚総数のうちに、それだけの人がソ連地区から引揚げて来たということが、政府発表数字の中にはつきり示されているのでありますから、これは私は間違いないと思う。ところが二十九万三千九百六十八人というものが、ソ連地区からの引揚げであるかということを政府質問して参りますと、これがソ連地区引揚げの中に入つておりませんので、南鮮からの引揚者だというので、南鮮地区の引揚げの中に含まれておるのでありまして、私どもはこういう点について、はなはだ疑問を持たざるを得ないのであります。ソ連地区から引揚げて来たということがはつきりしておりながら、何ゆえかそれをソ連地区引揚げの数の中に加えないで、南鮮からの引揚者のうちにつつ込んでいるかという理由につきまして、いろいろ政府質問しましたけれども、どうも釈然たらざるものがあるのであります。また一九四九年九月二十三日高砂丸で千百二十七人、十月三日に山澄丸で千七百三十四人、両方合せて二千八百六十一名大連地区から引揚げて来ております。ところがこのときも大連地区の引揚残数ゼロということになつてつて、一人もいないということになつている。二千八百六十一人どうして一人もいない所から帰つて来たか。今日海外に引揚者のいる所に満洲地区とソ連地区だけである。従つて引揚げて来たとするならば……     〔発言する者多し〕
  63. 松木弘

    松木委員長 静粛に願います。     〔発言する者多し〕
  64. 松木弘

    松木委員長 静粛に願います。なるべく簡単に願います。
  65. 砂間一良

    ○砂間一良君 ただいま申し上げましたように、大連地区の残留者はゼロということになつておりまして、ここから帰つて来るということは、事実上おかしいのであります。今日未引揚げ者が残つているところは、ソ連地区それから満洲ということだけであります。もし引揚げて来るならば、この残数があるところから引揚げて来なければならないと思うのであります。ところが政府発表数字を見ますと、満洲地区の引揚げということには入れてなくて、満洲地区の残留者数は依然としてそのままにしてありまして、そして大連地区の基本数にこの二千八百六十一名というものを加えまして、そしてその加えた数字の中から二千八百六十一名をまた差引きまして、そして残数ゼロというふうな、こういう操作がしてあるのでありまして、こういうような点につきましては、私は釈然たらざるものがあるのであります。その他数字の問題については、いろいろ疑問の点がたくさんあるのであります。たとえば、昭和二十年七月十六日南方に向つて満洲方面から出発して、そして二週間後に朝鮮海峡の沖合で、魚雷攻撃を受けて、約八千名の人が全滅したのであります。これはまた当時の部隊公報にも出ておるのでありますが、この戦死した人たちの氏名が、舞鶴援護局の台帳には、ソ連地区引揚げ帰還者としてずらりと並べられている。こういうことなんか、何か私どもは特にソ連地区の未帰還者の問題につきまして、政治的な背景がありまして、そして全国民が一致してこの超党派的な立場から、一日も引揚げを促進しなければならないこの重大問題が、何かその背後にそういう政治的な、何と言いますか、かけひきと申しますか、配慮と言いますか、そういうふうなものが利用されているような感じを強く受けたのであります。そこで私どもは、この数字の問題については、政府はあらゆる努力を拂つて、国内の留守家族調査するとか、あるいは帰還した人から情報を聞くとか、その他終戦当時の書類や資料等を十分調べまして、そして国内でも十分努力を拂つて、まずこの数の問題を明らかにすること、それにはもちろん連合国のいろいろな協力や、それからまた好意ある援助も受けなければならないと思うのでありまするが、とにかく政府はまずこの数の問題を第一に明らかにしろ、この数の問題が明らかにならなければ、どこに何人残つておるかというこの数、これがはつきりしなければ、引揚げを促進するにしても、どこの国へどう懇請していいのか、これが見当がつかないわけであります。そういうふうな建前からいたしまして、私はきのうの本会議における発言の中でも、一応この数の問題を問題にいたしまして、これは特別委員会の審議の経過からいたしましても、当然出て来る結論でありますが、この点について政府にもつと盡力して、努力して、そして正確な数の発表を願いたいという趣旨を述べたのであります。  それから、その次には、これは時間関係もありまして、幣原議長から何遍も注意されたものですから、終りの方のことにつきましては、十分私の意のあるところを述べることができなかつたのでありますが、たとえば、引揚げにつきまして愛の国民運動だとか、いろいろ申されておりますけれども政府がやつている実際の施策を見ますと、口で言うことと実行していることとが、どうも言行一致しておらないというふうな感じを私どもは持つのであります。たとえば、長いこと外地におりまして、いろいろ苦労艱難して来ている、そしてやつと懐しい母国に帰つて来て、あの舞鶴に上陸いたしますと、あそこでどういう取扱い、待遇を受けているか、あの舞鶴の援護局は……(「なぜそこまでやらなければならぬか」「発言を妨害するな」と呼び、その他発言する者多く、聴取不能)十二名が行方不明になつております。このことも特別委員会におきまして私は質問したのですが、この十二名の行方については、日本の警察官と、それから引揚検察庁の職員とが一緒に汽車に乗つて、そして東京の復員局の宿舎に、警官の監視つきで連れて来ている。この間のいきさつについては、日本政府は十分知つておつたはずであると思うのであります。それで十二名の行方不明の事件につきまして、政府にいろいろ質問いたしましても、政府は知らぬ、存ぜぬというふうなことを言つて、まるで冷淡な態度をとつている。またこの引揚げて来た人の……(「そんなことを聞いていない」と呼び、その他発言する者多く、聴取不能)ちつとも援護ということをやつておりません。そういうわけでありまして、この引揚者の援護会におきましては、愛の国民運動だとか、何とかいうふうなことを言つておりますけれども、実際はそれとは違つている。こういう問題につきましては、何も共産党の私だけがそういう発言をしているわけではないのでありまして、たとえばきのう本会議におきまして……
  66. 松木弘

    松木委員長 簡單に願います。
  67. 砂間一良

    ○砂間一良君 並木さんなんかにいたしましても、やはりそれと似たり寄つたりの御趣旨発言されているのであります。政府は口ではいろいろ言うているけれども、実際の施策というものは、はなはだ冷淡極まるものであるということは、これはほかの議員諸君もやはり強調していることでありまして、なかんずく引揚げのあの特別委員会におきましては、始終これが問題になつている。でありますから、あの引揚げの促進決議及び留守家族の援護や、それから帰つて来た人たちの定着援護というようなことにつきましては、もつと政府は積極的に盡力せよということが、私のきのうの発言趣旨でありまして、それはあの決議案の大きな目的にまさに合致するものでありまして、何らその決議案に矛盾するとか、反対するとか、あるいはけちをつけるということは、いささかも、爪の垢ほどもなかつたと私は思つておるのであります。ただそれが時間を制限されておりまして、そしてまたやじなんかが非常に飛びまして、がやがやして喧噪をきわめておつたために、私の趣旨が十分皆さんに徹底しなかつたということは遺憾でありますが、しかしもし議長が十分な時間を與えてくださいまして、そして私が十分説明する機会を得たならば、決してそういう誤解は生じなかつたと思う。何がきのうの私の本会議発言——実は私はこの懲罰委員会に多数をもつて付せられることになつたのでありますが、どこが理由で、どこがいけなくてこの懲罰に付せられたかということにつきましては、夕べもいろいろ考えて見たのでありますが……(「何を言う」「そういう感じを持つているなら持つていてもいいじやないか」その他発言する者多く、聴取不能)ただ私の申し上げたいことは、まさにあの決議案趣旨に沿う賛成討論をしたのでありまして、他の諸君発言と少しも異つた点はなかつた。ただこの数の点につきましてやや詳細に、自分の平素考えているところを述べたにとどまつたのでありまして、他の議員諸君発言と正反対なことだとか、あるいは特に特別かわつたことをやつたというふうには考えられないのであります。委員会においても始終論議されて来た問題であり、またこの決議案を提出するについても、特にあの委員会におきまして委員長にそういう希望つき條件を述べまして、そうしてその了解を得た上でやることが、何で懲罰理由になるかということにつきましては、どうも私自身懲罰の被告みたいな当人になつておるのでありますが、自分で考えてもすつきりしないものがあるのであります。ただ私がここで皆さんに御参考に申し上げておきたい点は、決してあの決議案に対して反対の気持で、反対趣旨を述べたのではない。あくまでもあの決議案賛成いたしまして、そうしてさらにその決議案内容を充実させるために、政府がもつとこまかな点にまで注意を拂つて、この引揚げの問題について、積極的に努力するようにということを強調したにとどまるのであります。引揚げの問題につきましては、きのうもちよつと申し上げたことでありますが、これは何と言いましても、さしあたり当面の第一の責任者と言つたらいけないかもしれませんけれども、第一に盡力しなければならぬのは、私ども日本政府であろうというふうに考えております。何となればあの侵略戦争を始めたのは日本政府であり、それから赤紙で国民を動員したのも日本政府でありますから……。(発言する者多く、議場騒然、聴取不能)……政府熱意をもつて積極的に取上げなければならぬ。しかる後に連合軍に懇請したり何かするというふうにならなければいかぬ。これは……。(発言する者多く、議場騒然、聴取不能)……大きな目的におきましては、少しも背馳したものはございません。共産党はこれまでの実際の運動におきましても、一番積極的にこの引揚げ問題に熱意をもつて、重大な関心をもつて、積極的な努力をやつて来ておるのでありますから、この事実を見ましても、私がただいま申し上げたことが、決してここの場合にだけでの行き当りの発言でなくて、平素のことと、きのうのこともまつたく合致しておるということを、賢明なる皆さんには御了解していただけると思うのであります。  以上まだいろいろ異を盡さない点もございますが、皆さんの方から、なるべく早く切り上げろというような御意見もありますので、この辺で一応打切る次第であります。私の一身上の弁明をする次第であります。
  68. 松木弘

    松木委員長 ただいまの砂間君の弁明に対しまして、木村公平君から第一に質疑の通告がありますが、ちよつと木村君にお諮りいたします。浦口鉄男君が運営委員会に出席の都合があるから、最初に質疑を許してもらいたいという申出がありますが、よろしゆうございますか。
  69. 佐々木秀世

    佐々木(秀)委員 議事進行について……。今から逐次各委員の質疑があると思いますが、先ほどから不規則発言で喧騒をきわめております。これはお互いに自粛するということは当然でありますが、不規則発言で同じ議員を侮辱するような言葉は、慎んだ方がいいと思います。そこで先ほど林君が篠田君に言われたばかやろうという言葉だけは取消して、すつきりしてやりたいというのが、私の議事進行の発言でありますから、委員長においておとりはからいを願います。
  70. 松木弘

    松木委員長 浦口鉄男君。
  71. 林百郎

    ○林(百)委員 私の……
  72. 松木弘

    松木委員長 浦口君に許しました。
  73. 浦口鉄男

    ○浦口委員 委員長のお許しを得ましたので、簡単に質問申し上げます。砂間さんはきのうの賛成演説の劈頭に、第一の責任者は日本政府である。こういうことをおつしやつておりますが、これは砂間さんの所属されている日本共産党におかれても、日ごろの御主張であるとわれわれは想像しております。もちろん日本政府にも相当の責任があるということは考えるわけでありますが、ポツダム宣言を引出すまでもなく、連合軍にも当然相当の責任があると考えるわけでありますが、その点について砂間さんのお考えを承りたい。
  74. 砂間一良

    ○砂間一良君 このポツダム宣言は、アメリカだとか、ソビエトだとか、イギリスだとか、そういう連合国の間で協定されて作成された宣言であると思います。その連合国間の協定に従つて、戦争が終つて武装を解いて、平和な国民に帰つたならば、全部帰還させて平和な生活に入らせるということがうたつてあるわけであります。これは連合国同士の間に義務づけられていることだと思います。しかし日本政府は、このポツダム宣言を受諾いたしまして、無條件降伏したのでありますから、この宣言を受諾したということによりまして、連合国間に協定されておるところの引揚げの問題は、連合国といたしましても、大いに努力して、一日も早く日本へ返してもらうように、日本側から懇請するということは、これはできることだと思つております。私は第一の責任者は日本政府であるということを申し上げましたけれども、それは日本政府だけがやればいいのだ、連合国の、あるいは連合国に加盟しておる国の問題ではないというふうに否定したのではないのでございまして、私は日本政府がもつとこの問題について積極的に努力しなければならぬという点を強調したわけであります。日本政府の方を素通りいたしまして、ただ連合国に懇請するとか、いかにも引揚げの問題が遅れておる。その責任連合国にある。あるいは連合国に加盟しておるある国々にあるというふうに持つて行きますと、何か連合国責任を追究しているような形になりまして、それではうまくないのじやないか。もちろん連合国の協力や好意ある援助を受けることも必要でありますけれども、もつと日本政府がこの問題について、積極的に熱意をもつてやる必要があるということを強調したのであります。きのうの発言におきましては、その間の説明が非常に不十分でありまして、私の真意が徹底しなかつたということは遺憾に存じております。
  75. 浦口鉄男

    ○浦口委員 そういたしますと、数字の問題はいろいろ議論があるわけでありますが、もちろんソ同盟にもその責任がある、こういうふうにお考えになつておりますな。
  76. 砂間一良

    ○砂間一良君 ソ同盟に責任があるかどうかということにつきましては、日本国民が、こういうことを言う権利や資格があるかどうかと思うのであります。何となれば、ポツダム宣言は連合国相互の間で協定された宣言であります。日本はそれを受諾する、そうして無條件降伏するというふうな形になつておるのであります。従つてこの日本国民があの宣言をたてにとつて、そうしてソビエトなり、アメリカなり、イギリスなりの責任を、日本国民の、ないしは日本政府の正当な権利として追究するという、強いところまで主張できるかどうかということにつきましては、私はちよつと疑問を持ちます。引揚げの問題につきましては、ソビエトにもまだ残つておる人があるかもしれませんが、これは先ほども申し上げましたように、中国にも、それから南方の方面にも、ハワイにも、あつちこつちにも、たくさんまだ残つておるのではないかと思うわけであります。それをただソビエトだけを、何か集中攻撃するような形で、三十万もシベリヤに残つておるとかなんとか申しまして、ソビエトだけを責めるような行き方は、ソビエトもやはり連合国の一員であり、日本は負けた方の国でありますから、そういうふうに引揚げ問題を持つて行くということは、引揚げ問題をスムーズに円滑に運ぶことの、かえつて障害になるのではないかというように考えているわけであります。
  77. 浦口鉄男

    ○浦口委員 そういたしますと、もちろんこれは観点の相違になるわけでありますが、砂間さんの御意見によれば、ソ同盟だけの責任を追究するように感じられる、こういうことであります。しかしまた一面から見ますと、砂間さんは何かソ同盟を特に弁護されるというふうにとられる面があるのでありますが、その点は論争になりますからやめます。昨日の演説におきましても、今三十数万の人たちが残つているというふうなことが言われております。けれども三十万いるか五十万いるか、あるいは一人もおらぬかもわからない、こういうふうにもおつしやつております。今のお言葉によると、あるいは幾らかいるかもしれぬ、こういうお話であります。そこでお尋ねしたいのは、昨日の一身上の弁明の中において「去る五月六日、日本共産党は徳田書記長の名前をもつてソビエト共産党の中央委員会に対しまして、特にこの引揚げについてのメッセージを送つておる」というこのメッセージは、どういう数字に基いてお送りになつたかというふうなことも、お聞かせ願いたい。
  78. 砂間一良

    ○砂間一良君 先ほど読み上げられました速記録の、三十万おるか、五十万おるか、あるいは一人もおらないか、それは終戦当時日本のわれわれの同胞が、海外に何人おつたかという基本数がはつきりしなければ、今日何人残つているという数字も出ないわけであります。というので、かりに三十万とか、一人とかいう数字をあげたわけでありまして、海外にどれだけ残つているかということがどうも判然としないのであります。これは引揚げの特別委員会におきまして、これまで何べんとなくしばしば問題になつて来たことでありますが、政府に尋ねましてもはつきりわからない。先ほども申しましたように、残数ゼロというところから続続と帰つて来ておるし、あるいはソ連地区からの引揚げ総数が、百二十七万ということになつており、米ソ協定後のソ連地区引揚げが九十八万で、二十九万三千何百人という開きがありますが、これがソ連地区からの引揚数字に入れてなくて、南鮮地区からの数字に入れられておるというようなこともありまして、海外にどれだけ残つているかということは、私どもはつかみ得ないのであります。だから数字を明かにしてもらいたいという一つの例証として、かりにあげた数字でありまして、私は今日ソビエトに一人も残つておらないというふうに信じ、あるいは断言したわけではないのであります。  それからあとのメッセージの点についてでありますが、このメッセージの内容につきましては、私今はつきり記憶は持つておりませんが、これはその当時の日本共産党の機関紙であるアカハタにも掲載されているはずであります。この当時はまだソ連引揚げが完了したとか何とかいうことは、問題になつてはおりません。とにかくソ連に、未帰還同胞が相当数残つているということがわかつておつた当時でありまして、あのメッセージの内容は、引揚げ促進について、ぜひ一日も早く完了するように協力していただきたい、また向うにいる人たちの生死や消息を知らしてもらいたい、手紙や何かのやりとりもできるように、いろいろお骨折りを願いたいということを、ソビエト共産党中央委員宛に、わが日本共産党の徳田書記長の名前をもつて懇請したものであります。メッセージの具体的なこまかな内容は記憶しておりませんが、あらかたの筋はそういう意味であつたのであります。
  79. 浦口鉄男

    ○浦口委員 それに対する返事がありましたか。
  80. 砂間一良

    ○砂間一良君 それに対する返事はなかつたように思います。なかつたけれども、しかしその後におきましてタス通信で、一部同胞を除いて九万五千の人たちを今年中に送還するということが、徳田書記長がメッセージを送つた後、間もなく発表されているのであります。三月、四月ごろからそれまでは、ソ連地区引揚げが今年は遅れているというふうなことを、非難がましい論法をもつて盛んに新聞で論ぜられておつたのでありますが、共産党の徳田書記長がメッセージを発した後、間もなくタス通信によつてあの発表がされたのであります。これはあのメッセージとは直接関連がないかもしれませんが、あるいはあのメッセージが一つの有力な懇請の内容となつてソビエト政府の方で、そういうふうなとりはからいをしてくださつたか、私どもその間の実情については何も関知しておりません。     〔「委員長委員長」と呼びその他発言する者あり〕
  81. 松木弘

    松木委員長 通告順により発言を許します。木村君。
  82. 木村公平

    木村(公)委員 今砂間君の身上弁明を聞いておりますと、懲罰動議提出理由根本趣旨が、まだあまりわかつておられないのではないかと思われる点があります。幸いここに提案者であります椎熊三郎君の発言速記がありますから、その一部分をあらためて読みますから、その趣旨を御了解願いたいと思います。途中からですから多少おわかりにくいかもしれませんが、「しかるにこの決議案賛成意見の中に、共産党を代表する砂間君の演説を拝聴いたしますると、その内容は、引揚げ促進賛成しておるとは私どもは受取れない。むしろ反対意見を述べておるようであります。思うに共産党の戦術は、常にしかりです。彼らはこのような引揚げ促進決議案に、表面切つて反対することはできないでしよう。しかしながら心の中ではむしろ反対なのでありましよう。」中略「この際私は不  穏当なる言辞を弄して、全国民熱願の同胞引揚げ決議案に対して、一つ汚点を残したる砂間君の行動は、ただちに懲罰委員会に付して、懲罰に処せよとの動議を提出する次第であります。」というのがあります。詳しいことは一応そこでお読み願えばわかりますが御趣旨はそういうことである。従つてわれわれは、数字の点については後ほどいろいろあなたと論議もいたしたいが、これは主たるところではありません。問題は今読み上げたところです。  そこで第一にお伺いいたしたいことは、あなたは昨日の演説中「、第一の責任者は、日本政府でなければならないと思うのであります。何となれば、あの侵略的な帝国主義戦争を始めて、国民を赤紙で動員して、兵士を外地に送つたのは、これはアメリカの政府でもなれれば、ソビエト政府でもなくて、実に天皇の政府であつたのであります。」従つて帰還の「第一の責任者は日本政府でなければならない」と結んでおるのであります。そこでお伺いいたしたいのは、今われわれが引揚げの問題を論じておりまするのは、戦争後に起つた問題として論じているのである。従つて戦争の性格であるとか、あるいは動機であるとかいうことは論外であります。われはこれが帝国主義戦争であるかいなかということは、別の機会にあなたと論議するにいたしましても、きのう決議がなされましたのは、絶対多数をもつて衆議院で可決されましたゆえんのものは、ポツダム宣言に違反するおそれあると世間から言われておる引揚げの怠慢に対して、われわれは一面においで抗議を申込む気持ちをもつて、他面においては抗議の権利がありませんから、数はどれだけあるかということはかりに不明であろうとも、おることは事実です。だから全国民の名において、一人残らずすみやかに帰していただきたいというのが、きのうの決議案なんです。しかるにその決議案賛成をしておきながら、あなたはそれに籍口してまずおつしやることに、第一の責任者は政府であつて、きわめて冷々淡々たる態度政府責任であるとかないとかいう問題よりも、国民感情にぴんと来るのは、帰つて来ないことは事実なんです。私の夫の帰つて来ぬことは事実なんです。あなたの息子の帰つて来ないことは事実なんだ。しかしそれが風のたよりによれば、あるいは書信によれば、現在ソ連におる。それに対して一日もすみやかに全部帰してもらいたい。それがやがてはポツダム宣言の根本に合う趣旨でもあるのだというので、全国民の名において衆議院は議決をしたのであります。しかるにあなたがこれに賛成をしながらも、椎熊君の言うように、表では賛成だけれども、何だかんだとりくつをこねて、結局数の問題でごまかそうとしておる。この点について私どもは、はなはだしく不満であると思うと同時に、不謹慎であると思う。従つてまず第一にお尋ねしたいのは、第一の責任者は政府であるということ。  次に政府答弁はまつたくでたらめでなつていない。これは数字の問題でありますが、でたらめと考えられる理由をひとつ伺つておきたい。  さらに政府は日にいろいろ美辞麗句を言つておりますけれども、そのなす実際のところは、何らの引揚げ促進について熱意も努力も足りないと私ども感じておるというお言葉がありますが、これに対して熱意と努力の足りない点は、しからば、それはいろいろありましようが、あなたのお説を伺つておきたい、  さらに先ほども問題になつておりましたけれども、現在三十万おるか、五十万おるか、あるいは一人もおらないか、それは終戦当時日本の云々という言葉がありますが、一人もおらないとう言葉で表現される根底には、万一一人もおらなかつたならば、引揚げというものは問題にならない。おるということを前提にして引揚げということが問題になるのでありますから、一人もおらぬかも知れないという考え方について、さらに釈明を願わなければならぬ。  それからあなたの御演説中に、私どもが研究してみたところによりますと、政府発表しておる数字は、満洲地区や、ソビエトの場合と、南方方面の発表数字では非常につくり方が違つておるような感じを受けるというお言葉がありますが、つくり方ということはほんとうのことでなく、わざわざ虚偽のことを作成したような印象を受ける。数字というものはつくるものでなくて、真実を表わすものが数字なのです。これを発表する。しかるにあなたは、これをあるものを表わすのではない。つくるのだ。意識的にこれをでつち上げたのだ。あなたの方の言葉をもつていたしますれば、でつち上げた。しからば何のためにあなたはそんなことをもつて政府を攻撃されるか。われわれにはわからないのです。つくり上げたといたしますれば、その証拠をここで御釈明を願います。  さらにあなたの演説中の末端に、国民愛の運動とか何とか、いろいろなことを言つておりますけれども、実際のやり方はちつとも愛の運動でも何でもない。四年、五年、六年、七年と外地におつて、やつと久しぶりに日本に帰つて参りますと、あの舞鶴の援護局には、大阪警察学校の生徒を三百人も動員して、みんな監視づきでやつておる。監視という言葉に対して、御説明が願いたいのであります。かりに監視ということを百歩譲つて認めるとして、なぜ監視をしなければならぬかということに対してのあなたの御説明を願いたい。われわれをもつてすれば、たとえば車中において共産党に強制入党せしめる事実、あるいは無届けデモをやつておる事実、この事実に対しては日本の法規をもつて取締る必要があると思うのでありますが、その点についても御釈明願いたいと思うのであります。  それから昨日の本会議におけるあなたの一身上の弁明の中に、共産党を除くこの議場の空気、諸君のようなそういう反ソ、反共的の考えを持つておるからして引揚げが遅れておる。すなわち反ソ反共的であるから引揚げが遅れておると言われるならば、全部が容共的になれば引揚げるとおつしやるのか。反ソ反共的であるから引揚げが遅れる。この点について御説明が願いたい。  さらに特にこの引揚げ問題を政治的なかけひきの道具にするような云々という言葉がありますが、その事実についても御説明を願つておきたい。  以上の点についてあなたの御説明を願つてからなおかつ私の質疑を続けたいと思います。
  83. 砂間一良

    ○砂間一良君 御質問がたくさんあり、頭が悪いのでときには忘れておることがあるかも知れませんが、こういう御質問も起ろうかと思いまして、私の最初の身上の弁明のときに詳しく申し上げたかつたのでありますが、それを簡単にやれ簡単にやれということになつたものですから、その趣旨が機能しなかつたと思うので、一応今の御質問についてお答え申しておきます。  第一の日本政府責任があるということでありますが、それはこういう引揚げ問題というふうなことが起るような事態をつくり出したことについて、日本政府責任があると、こういう広い意味で申しておるのでありまして、もしあの戦争が始まらなかつたならば、国民を海外に送らなかつたし、こういう引揚げという問題も起らないのでありまして、従つてこの引揚げ問題というものを起したその事態の原因の責任者は、日本政府であるということを申したのであります。しかしこの終戦後、戦争が済んで、日本は敗戦国になつて、連合軍が来て占領下にある。こういう事態にあつてまだ講和会議も開かれておりません。日本は外交上の正式な関係もありませんし、外国の国々と正式に交渉するような資格も権利もないわけであります。こういう場合におきまして、それでは海外に残留者がおる。それを帰さない責任はどこにあるということになりますと、これはなかなかむずかしい問題でありまして、先ほど浦口さんの御質問のときにもお答えしましたように、日本国民政府が、連合軍の特定の国を相手どりまして、引揚げの遅延の責任を追究して行くというふうな正当な権利が、日本国民政府にあるかどうかということにつきましては、私は国際法の方に暗いのでありますからよくわかりませんが、とにかくここで私が、第一に日本政府責任があるというふうなことを強調いたしましたのは、初めに申し上げましたような、そういう広い意味で申し上げたのであります。その点を御了承願いたいと存じます。  それから第二に数字の点につきまして、政府答弁がでたらめでなつておらないということは、これは引揚げの特別委員会でもしばしば問題になつて来たことでありますし、また先ほども私の説明の中にも一応申し上げたつもりであります。いかにでたらめであるかということは、先ほども厚生省の発表数字や、海軍省の発表数字や、あるいは外務省が引揚特別委員会発表しておるあの資料によつても、三いろの数字が出ておるのでありまして、どれを信用していいかわからぬ。外務省の引揚渡航課で配付してある数字にしましても、次々にかわりつておる、あるいはゼロの所から人が帰つて来たり、あるいは大連地区から帰つて来たり、——大連地区は残留者ゼロとなつておりますが、ここから帰つて来た人なんかも、実は満州地区あたりから帰つて来たのじやないかと思います。何となれば残留者のあるのは満州地区、ソ連地区以外にはないわけでありますから、もし政府発表数字を信用いたしますと、ゼロの所から人が帰つて来る道理がない。もしあるとすれば残留者のある所から帰つて来なければならないわけでありますが、それをゼロの所から二千何百人も帰つて来たことにして、あとからそれを修正して、また帰つて来た人数をこれから差引いてゼロにするというような計算をやつておるので、どうも私どもは一ぺん発表した数字が、もう絶対に信用のおける正確な数字であるというふうには受取れないのであります。しじゆう政府発表数字がぐらぐらかわつておる。ゼロの所から人が帰つて来たりするというようなことにつきましては、なかなか確信が持てないということを、そういうふうな言葉で表現したわけであります。  それから第三の美辞麗句を並べておるけれども熱意と努力が足りないということにつきましては、私どもは実際問題といたしましてそういう感じを受けるのであります。たとえば引揚げに対しましては国民愛の運動とか、いろいろいわれておりますが、舞鶴へ上陸した人たちの生活なんかを見ましても、隔離されて一人々々一つ部屋に入れられて、その部屋の入口に警察官が二人も三人も監視しておりまして、便所に行くまでついて歩く、あるいは大勢入れております部屋の中に三人、四人の警察官が入つておりまして、一々言動を注意しておるというふうなことは、引揚げて来る人たちを、あたかも犯罪者か囚人であるかのごとく扱つておるのであります。こういう点がはたしてあたたかい、迎える態度であるかどうか、長いことあの寒いシベリヤにおりまして、やつとなつかしい母国へ帰つて来た。それを迎えてくれる態度がそういうような態度である。あるいは十一月八日に永徳丸で帰つて来た人たちのうち、十二名が行方不明になりました。この行方不明の問題につきましては、私どもは引揚援護庁へ参りまして援護庁長官にも、ぜひこの人たちの消息を明らかにしてもらいたい。そうして留守家族が待ちわびておる家庭へ、一日も早く帰してもらうようにしたいというので、何べんもお願いした。これは引揚委員会でも問題にいたしました。ところが政府側は委員会におきまして知らぬ、存ぜぬの一点ばりなんです。そうしておつて調査してみますということを申しておりましたが、これは二十九日の引揚委員会に出て来た援護局の宮崎次長が言うところによれば、本日やつと帰つたらしいと言つておりました。しかしあとから聞けば援護局の議員日本の警察官が、汽車に同乗して一緒に東京まで連れて来て、市ヶ谷の復員局の宿舎に、警察の監視つきで入つておつたのでありまして、この間の消息、いきさつについては、政府当局は十分知つておつたはずでありますが、それを知らぬ存ぜぬというようなことで、国会に対して、議員に対して、その詳細を説明しないというような態度、こういうふうな点につきましても、私ども政府ほんとうにあたたかい愛情を持つて熱意を持つて引揚げて来る人たちを迎えておるというふうには、どうしても考えられないのであります。あるいは帰つて来た人たちの就職の問題なんかにしましても、たとえば三菱の工場であるとか、あるいは日本鋼管だとかいうところに出征前勤めておりまして、そこに籍のある人たちも、今年の六月、七月ごろになると、みんな首にしておる。こういうことになりますと帰還者の定着援護ということについて、政府の措置があまり積極的ではないように思われるのであります。こういうことが私は、口の先では美辞麗句を言つておるけれども、実際においてはその施策において熱意と努方に足りないような印象を受けるということを申した理由であります。もつともこれは印象感じでありますから、皆さんは今の政府態度がそうじやない、これは政府は大いにやつておるのだというふうにお感じになることは御自由であります。  それから第四番目の三十万おるか五十万おるか、あるいは一人もおらぬかということでありますが、この点につきましては先ほど御説明申し上げた通りであります。一人もおらないかということは、これは全部の文章の経緯からしましても、かりにそういうことをあげた言葉の上の表現でありまして、海外に今日一人もおらないということを私が信じ切つて、ここに断言したわけではないのであります。実際問題としてはおそらく海外に一人以上は残つておるでありましよう。南方の残留者はゼロという地域からでさえも、続々として大勢の人が帰つて来ておるような実情でありますから、まだ残留者のゼロという地域にもあるいはおるかもしれません。あるいは厚生省の岡村事務官の言葉を信用いたしますと、南方方面には三万人も残つておる、そのほか戦犯関係の人たちが、何千人も残つておるというようなことを、政府委員でさえも申しておるようなわけでありますから、私はまだ海外には未引揚者が実際に残つておると思います。  それから第五番目のつくり方が違つておるということでありますが、これはもう先ほどからいろいろ御説明申し上げておりますように、南方の数字、満州地区、ソビエト地区の数字の場合におきましては、どういう根拠から、何を資料にして計算されてつくられたか私どもは知らないのであります。どうも合点がいかない点がたくさん出て来るのであります。先ほども読み上げましたように、昭和二十年七月十六日、南方に向つて出発した運送船が、二週間後に朝鮮海峡の沖合で魚雷攻撃を受けて、八千名の人たちが全滅してしまつた。これは当時の部隊公報にも出ておるのでありますが、その戦没者の氏名について、舞鶴の援護庁の引場合帳の中には、ソ連地区の未帰還者として載つておるというふうなことが出ておる。南方の方は次第に引揚げが完了して残留者は減るが、そつちの方から実際にはまだ人が続々として帰つておる。ソ連にはたくさん残つているというふうに言われておるのであります。たとえば大連地区からたくさんの人が帰つて来ましても、それが満州地区や、その他の残留者があるところからの引揚げにはなつておらない。残留者がゼロとなつておるところの地区から、わざわざ基本数を滅して、そしてゼロということになつておる。そういうふうにいろいろな数字上の操作の点などを見ますと、どうも統計の数字というものは、もとより数字でありますから正確なものでなければならないと思うのでありますが、その数字を構成する、いわゆるつくり方といいますか、そこに何か割切れないものを実際問題として感ずるのであります。  それからその次に第六の愛の運動でありますが、これは先ほどの政府の美辞麗句と、熱意と努力の足りない云々というところで申し上げたので、大体わかつていただけるのではないかと思います。  それからその次の舞鶴援護局の中に監視づきになつておるということでありますが、これは事実であります。ただいま木村さんの御質問によりますと、帰つて来る人の中でも、いろいろと当局をてこずらしたり、あるいはなかなか言うことをきかないような者もあるからして、そういう場合には監視するのも必要じやないかというふうなことも申されましたけれども、しかし私は実際にこの引揚げて来た人にも幾人も会つております。それらの人からいろいろ経緯を聞いて見ますと、別に乱暴するとか、あるいは監視をつけなければならぬほどの危険人物であるようには、私の会つた人たちからの印象では思わないのであります。何のための監視だかよくわかりません。  その次に第八番目のきのうの私の一身上の趣旨弁明のところで申し上げた言葉の中の、反ソ、反共的とかの言葉でありますが、私は日本の国内に反ソ、反共的な人が一部分存在するということは、これは事実であろうと思います。もつともこの点につきましては皆様のお考えは御自由でございまして、反ソ、反共の人は一人もないというふうに確信されておる方もあるかもしれません。しかし私の感ずるところによれば、反ソ、反共的な一群の人たちがあつて、そうしてこの引揚げ問題なんかも何かそういう反ソ宣伝、反共宣伝の材料に利用し——悪い言葉で言いますと、悪用しているというふうな感じを、ときたま受けることがあるのであります。たとえば先だつてソヴエト大使館に全国引揚連盟の方々が陳情に行かれたのでありますが、それはきのうも他の議員諸君の御発言を聞いておりますと、二十四時間徹夜をなさつて、実に涙のにじむような悲痛の思いで陳情に行かれたというのでありますが、しかしまたこれは半面から考えますると、何かソヴエト代表部に対する当てつけであつて、反ソデモに行つた。そうしてあそこの門前ですわり込みをやつて、いわば集団的な脅迫、威迫によつて、何か陳情にことよせまして、強訴をやつておるというふうに見られないこともないのであります。ことに陳情団の中には参議院議員のマークをつけた人も混つておりまして、別にそれらの人たちが煽動したというふうなことはないでありましようけれども、混つておつたということも新聞なんかで見ております。こういうふうな問題はもう少し冷静に考えまして、特に連合国のある特定の一国に対してだけ、引揚げ問題を当てつけがましく持つて行くというふうな行き方には、私どもはどうも賛成しかねるのであります。何も日本共産党はソヴエトの手先でも何でもございません。私どもはやはり日本国民の一員としまして、私も静岡県の伊豆出身でございますが、先祖代々から純粋の日本人でございまして、日本の国をよくして、われわれの地位を引上げることにつきましても、いつも熱心に心配してやつておるわけでありますから、決して特定の国の手先とか、あるいは特定の国のお先棒にかつがれるような、そういうふうなことは厳重に警戒しておりまして、また自分といたしましても、そんな意思は毛頭持つておりません。ただしかし冷静に客観的に見た場合におきまして、どうも最近の引揚げ問題の扱い方というものが、何かこの問題を反ソ、反共宣伝の材料にしているような感じを受けることは私の実感であります。これは感じでありますから、皆さんはそれと反対のお感じを持たれる方があるかもしれませんが、それは主観の相違でありまして御自由でありますけれども、私どもはとにかくそういうような感じを持つているのであります。  最後の第九番目の政治的かけひき云云ということも、今の説明で大体御了解願えるのではないか。私どもの希望するところは、この引揚げの問題は非常に重大な国民の関心事でありますから、これを国際政治——と言つたら語弊があるかもしれませんが、とにかく政治的なあれに利用されたくない。これはほんとうに超党派的な立場からして一刻も早く全部日本の国に帰つてもらいたいというふうに念願しているものですから、それがほかの方面に、ほかの道に利用されるような形跡のあることにつきましては、反対せざるを得ないから、ついそういうふうな言葉が出たわけであります。  あまり木村さんの御質問がたくさんありましたので、十分私の意を盡さなかつた点があるかもしれませんが、一応お答えを申し上げた次第であります。
  84. 木村公平

    木村(公)委員 関連してちよつと一、二点だけ申し上げます。今の一番最後共産党を除くこの議場の空気、諸君のようなそういう反ソ、反共的の考えを持つているからして引揚げが遅れているとおつしやるところの言説は、きわめて重大であります。さらに私は後ほど委員諸君とも諮りまして、この点についてはあなたの最後のお答えを聞きたいと思いますが、これを要するにあなたの今のいろいろの一身上の弁明を聞いておりますと、きのうの決議案賛成意見とは受取りがたいのであります。結局あれは賛成意見ではなく、椎熊君が言うように数字をもつてごまかし——これはことに砂間君の場合のみならず、共産党諸君の大部分の場合がそうであると私は認定するのでありますが、残留者の数についてソ同盟と日本政府との間に相違点がある。これは新聞紙上等にもごらんの通りである。これに着目なさつて日本政府数字を能う限り曲解または歪曲して、それと同時にそういうことをすることによつて日本政府の封じの信憑性を極力減殺する。そうしてもつてソ連の数を真実化せんとする意図に出ていると私に考えるのであります。     〔「討論のときやれ」と呼び、その他発言する者多し〕
  85. 松木弘

    松木委員長 静粛に願います。
  86. 木村公平

    木村(公)委員 これは私の主観であれば幸いでありますが、不幸にして国民のほとんど大部分が、かくのごとく考えていることをあなた方も御承知願いたい。従つて今度のあなたの一身上の弁明を伺つても、なおかつ委員会は釈然としない。ことに私は釈然としない。本決議案に対する単なる賛成意見ではなく、まつたくある意図をもつてあなたが昨日発言したということを私は確認をして、私の質疑を終ります。
  87. 松木弘

    松木委員長 速記をやめて。     〔速記中止〕
  88. 松木弘

    松木委員長 速記を始めてください。この際休憩をいたしまして、二時四十分に開会いたします。     午後二時十七分休憩      ————◇—————     午後二時五十三分開議
  89. 松木弘

    松木委員長 休憩前に引続き会議を開きます。佐々木秀世君。
  90. 佐々木秀世

    佐々木(秀)委員 砂間さんにお聞きいたしますが、先ほどから一身上の弁明その他木村委員に対するいろいろなお答えがありました。私がまず第一にお聞きいたしたいことは、あなたの今まで陳述なさつた総体的から来る感じ——中山委員長が報告せられましたあの決議案そのものに対して、全面的に賛成であつたかどうか、また不満を持つていたかどうか、この二点をお伺いしたい。
  91. 砂間一良

    ○砂間一良君 お答えいたします。この点につきましては、先ほど来の私の御説明の中にもあつたことと思いますが、大きな線においては一致しておるのであります。私の提出した決議案も、中山さんの提出された決議案も、未帰還者引揚げの促進ということ、それから外地にいる人たちの生死、安否等を詳細に国民に知らせるようにしたいということ、それから引揚げて来た人たちの生活の問題、なかんずくその定着援護の問題、それから留守遺家族人たちの援護の問題というような点につきましては、中山さんの提出された決議案趣旨とは、みんな一致しておるのであります。このことは単にあのきのうの本会議における討論だけでなくて、これまでの何べんか開かれて参りました引揚げ委員会内における共産党委員の活動、あるいは議会外における引揚げ問題についての共産党のこれまで活動というものを見ていただけば……
  92. 佐々木秀世

    佐々木(秀)委員 なるべく簡単に、そうであつたかなかつたかということだけを……
  93. 砂間一良

    ○砂間一良君 おわかりになつていただけると思います。但しあの中山さんの決議案の個々の内容の点につきましては、問題の取上げ方において、多少重点の——見方で重く見る、軽く見るという差異はあつたと思います。その差異があればこそ、私は十一月二十九日の引揚特別委員会におきまして、私の決議案を先議していただいて、そうして私の提出した決議案委員会の全員一致の議として取上げられることを熱望したようなわけであります。
  94. 佐々木秀世

    佐々木(秀)委員 できるだけ簡単に願います。説明はずつと聞いておりますから、ほかに……
  95. 砂間一良

    ○砂間一良君 もし中山さんの案に、全面的に一分一厘違わず賛成であるならば、あえて私は二十九日の委員会でも、自分の案を固執いたしまして討議する必要はなかつたのであります。
  96. 佐々木秀世

    佐々木(秀)委員 わかりました。そうすると中山さんの委員長報告に対しては、全面的に賛成ではなかつた。しかし大綱においては大体同意ができたというのですね。
  97. 砂間一良

    ○砂間一良君 そうです。
  98. 佐々木秀世

    佐々木(秀)委員 そこで今まで言われたいろいろなあなたの考え方、あるいは共産党としての引揚げ問題に対する態度、あるいはその他の付随する問題については、十分あなたは特別委員会において申し終つていると考えますが、それでもなお足りなかつたので、本会議でそれを言いたいというお気持があつたのかどうか、お聞きしたいと思います。
  99. 砂間一良

    ○砂間一良君 引揚特別委員会におきましていろいろ論議して参りましたけれども最後のところに行きますと政府答弁に諮つてしまいまして、私どもの満足するようなお答えが得られなかつたのであります。そこで本会議におきましても、政府引揚げ問題に対する熱意の不十分な点。諸施策の不十分な点を強調いたしまして、そういう点について政府の反省を促し、今後においてさらに努力をしていただくというような意味で、本会議において発言したいと思つておつたし、また発言したような次第であります。
  100. 佐々木秀世

    佐々木(秀)委員 委員会においては、一応この決議案には同意なさつたのですね。
  101. 砂間一良

    ○砂間一良君 中山委員長決議案に同意するにつきましては、先ほどの私のお答えの中にもありましたように、希望條件をつけまして、本会議において私の提出した決議案趣旨を盛り込んだ賛成討論機会を與えていただくならば、私はあえて自分の提出した決議案を固執しないということを申し上げましたところが、中山委員長が、その点につきましては私、委員長として議院運営委員会その他において、砂間委員の御意見が、賛成討論の中で十分述べられる機会が得られるように努力いたしますという意味のことを申されましたので、それならば私は大綱において一致している問題であるからして、中山委員長の案を採択することに賛成いたします、こう申し上げたような次第であります。
  102. 佐々木秀世

    佐々木(秀)委員 中山委員長はあなたに本会議の席上においてその釈明を、あるいはあなたの意見発表する機会を與えると確約されましたか。
  103. 砂間一良

    ○砂間一良君 確約はいたされません。なんとなれば特別委員会において本会議における発言を、委員長が議院運営委員会を無視いたしまして確約するような権限は、委員会委員長にはないではないかと私は考えております。中山委員長委員会で申されたことに、御希望がかなうように努力いたしましようというふうに申されたのでありまして、その間の詳しいいきさつにつきましては、十一月二十九日の引揚げ委員会会議録をお調べ願いたいと思います。
  104. 佐々木秀世

    佐々木(秀)委員 中山委員長のあなたに約束されたことは、本会議の席上ということでなく、他の機会においてそれを表現できるように奔走いたしましようと言われたということですが、どちらがほんとうでありますか。
  105. 砂間一良

    ○砂間一良君 中山委員長のあのときに実際に使用された言葉が、本会議ということであつたか、他の機会という表現の仕方であつたかということにつきましては、私は正確な記憶を持つておりません。しかしその前に私が申しましたことは、本決議案が本会議に上程されたときに、本会議賛成討論の中で、私の意見を述べるような機会を與えていただきたいということを申し上げまして、それに対する委員長発言として取上げられた言葉でありますから、私は私の意見委員長によつておくみとりいただいた、採択されたものというふうに了解した次第であります。
  106. 佐々木秀世

    佐々木(秀)委員 なるべく簡単にお答え願いたいのですが、結論としては中山委員長が本会議であなたを発言させるということは、中山委員長の権限においてできる性質のものでもないし、またそれを約束すべきものでないと私は考えるので、本会議場において発言させるということはなかつた。しかし他の機会においてあなたのお気持というものを、十分発表できる機会に努力するということの意味にとつていいと思いますがどうですか。
  107. 砂間一良

    ○砂間一良君 私はその点について賛成いたしかねます。中山委員長があのときも使われた言葉は、他の機会というのであつたか、本会議場ということであつたか、正確な記憶は持つておりませんけれども、他の機会というふうには私はあのとき理解しなかつた。これは本会議においてということを私にはつきり申したのでありますから、本会議においてむろん発言させるような機会を與えられるように、委員長は努力してくださるものというふうに期待しておりました。
  108. 佐々木秀世

    佐々木(秀)委員 それではそれは砂間さんが個人でそう考えていたと了承いたします。  それから次に移ります。この引揚げ問題は非常に大きな問題であつて、ことに一つの法律案だけではない。全国民が関心を持つている問題であります。そういう問題を取上げる場合に、国民の代表者たるものの言葉一つ一つが、いかに大きな反響を持つかということは、あなたも御認識であろうと思いますが、考えておられるでしようね。
  109. 砂間一良

    ○砂間一良君 おつしやる通り考えております。
  110. 佐々木秀世

    佐々木(秀)委員 そういたしますと、あなたが共産党を代表して、これに賛成演説をなさるときに、それから出る言葉一つ一つを注意しなければならぬ。たとえば表現にしても三十万いるか、五十万いるか、一人もいないかもしれぬというような表現は、その留守家族の立場にすれば、もういないのかというような感じを受けることは、国会議員として当然常識としてこれを考えなくちやならぬと思うんです。それをあなた方は、その考えをあまりなさらずに、ただ五十万いるか、三十万いるか、場合によつては一人もいないかもしれぬというこの言葉自体が、国会議員としての慎重なる言葉じやないということに、現在お気づきでありますかどうかお聞きしたいのです。
  111. 砂間一良

    ○砂間一良君 私は三十万いるか、五十万いるか知らぬというふうに申し上げましたのは、何も外地に未引揚者が一人もいないとか、いるとかいうことで申し上げたのではないのでありまして、政府数字が確固たる根拠を持つていなくて、政府自身が未引揚者の数について確信を持つておらないように見えるという、それを説明するために申したことでありまして、その点につきましては今お尋ねになつたことの趣旨とは、少し場合が違うように思います。大体私が申したようなことは、何も共産党の私だけが、他の議員の方々の発言を違つた飛び離れた意見を述べたのではないのでありまして、たとえばきのうの御発言の中でも、並木さんの御意見にいたしましても、松谷さんの御意見にいたしましても、やはり数の点について、定着援護の点について、政府の努力が足りないというふうなことは、同じように発言されておるのであります。私はそれをただやや詳しく、具体的に数の問題なんかを取上げて申したにすぎないのでありまして、あの決議案趣旨と、その大綱の目的に関しましては、何ら背馳したところはなかつたというふうに今でも考えております。
  112. 佐々木秀世

    佐々木(秀)委員 それはほかの議員の言われた政府の努力が足りないとか、熱意がないという表現と同じ言葉を用いるにしても、一人もいないかもしれないというあなたの表現、しかしあなたの気持の中には、それはまだいるのだという気持はあるでしよう。しかしその表現がもし外地に残留している人たちの親、兄弟あるいは親戚、縁者を持つ人たちである身から考えれば、本会議の席上において国会議員たる者が、同じ表現をするにしても、政府のでたらめの数字によつて、三十万いるか、五十万いるか、一人もいないかもしれぬという表現が、いかにその人たちの身に大きな影響を及ぼすかということを、あなたは認識かどうか、こう聞いているのであつて、他の人の言つたことは他の人の言つたことであつて、われわれもまた考えております。ただあなた個人が今でもあの表現の仕方は誇張すぎた、少し慎重を欠いたというふうなお気持がなかつたかどうかということを聞いておるのです。
  113. 砂間一良

    ○砂間一良君 私は議場の空気に不なれでありまして、表現のうまい、まずいはあつたかと思いますが、しかしきのう私が発言した一人もいないかもしれないということは、何もそこに重点があるのではないのでありまして、ただその表現の言葉が、今もおつしやられたような、国民に何か失望を與えたように受取つた方があるとするならば、それは私の表現の拙劣な点でありまして、私の真意ではなかつたのであります。とにかく南方方面……     〔「それはいらない」と呼ぶ者あり〕
  114. 佐々木秀世

    佐々木(秀)委員 あなたは国会法の百二十條を御存じでございますか。
  115. 砂間一良

    ○砂間一良君 私はあまりそういう法規の点を研究したことはありません。
  116. 佐々木秀世

    佐々木(秀)委員 それではそれを読んでみます。「議院の会議又は委員会において、侮辱を被つた議員は、これを議院に訴えて処分を求めることができる。」と書いてあります。これをひとつ御記憶の中に入れていただいておいてあなたのきのうの発言の中に入りますが、そういたしますと、あなたの表現に、先ほど言われたように非常に表現の仕方が極端である。しかも引揚げ問題ということは、今さら私から申し上げるまでもない。過去の議会において四回にわたつて超党派的にこの決議案は上程されておる。一人の反対もなく賛成されておる。しかも政府の行き方においては、見方によつてはあるいはなまぬるい点もあるかもしれません。しかしそういうことがあつても、全国民がこの引揚げ促進に対して熱望していることはおわかりだろうと思います。また各政党においても、大なり小なりこれについては一生懸命やつております。その結果的な効果はいざしらず、各党がこれに対して全面的にやつているという事実だけは、あなたも認めていただけると思いますが、それに対してどう考えておられますか。
  117. 砂間一良

    ○砂間一良君 各党もやつていると思えばこそ、あの共同提案が出たのでありまして、それで私は賛成討論をやつたわけであります。
  118. 佐々木秀世

    佐々木(秀)委員 そういたしますと、あなたの言葉が非常に不穏当になつて来る。それはどういうことかというと、口で言うことと、実際に行つていることと言行一致しているのは、共産党だけであると言つておる。共産党だけであると思う、こうはつきり言つている。そうすれば……(「それは身上弁明だ」「弁明を見ろ」と呼ぶ者あり)弁明でも同じだ。だまつてお聞きなさい。そうするとあなたのほんとうの気持というものは、共産党だけそうなのだ。ほかの政党はこれはやつていないのだ。熱意がないのだという結論になる。そうすれば国会議員として、また日本の公党として各党が一生懸命やつていることを、あるいはまたなまぬるいがやつているということを認められた。ただいまあなたは各政党もやつているでしようということを証言されている。証言されているそのことが、きのうあなたの言われたことと違つている。言行一致しているのは共産党だけだ。それに努力しているのは共産党だけだと思う。そういうことを言われまするならば、政党も国会議員も、あなたによつて完全に面子がまるつぶれで、侮辱されたことになるのである。そうすると国会法第百二十條には、侮辱されたところの議員は当然これを訴訟する権利を持つているとある。あなたそれ自体がきのう発言したこの言葉と、それからただいま証言されたその言葉とに、大きな食い違いがあるのですが、現在のあなたの心境をお聞きしたい。
  119. 砂間一良

    ○砂間一良君 私はきのう他の党派が何もやつておらないというふうには、あえて断定しなかつたつもりであります。私のきのう言つた点は、共産党は決して引揚げ問題について反対しているのではない。何かやじの中には共産党ソ連の手先だとか、あるいはやつておらないようなこともありましたので、共産党は一生懸命やつているのだ。本決議案に対して賛成しているのだという賛成趣旨を強調したのであります。
  120. 佐々木秀世

    佐々木(秀)委員 あなたは非常に話を別な方に持つて行き、これからのがれようのがれようとしているが、要するにそのために私は国会法の百二十條を持ち出した。とにかく国会議員として自分のやつていること、努力していること、その行動が他の人において誹謗せられて、そのことが国民の前に疑いをはさむような言辞があるならば、国会議員は侮辱されたと解釈しなければならない。しかるにあなたは身上弁明にしろ、あるいは引揚げ賛成演説にしろ、この精神が十分に入つている。だからこそ身上弁明の中において、共産党だけが言行一致してやつているのだというような言葉が出るのです。だからこのことがあなたのいわゆる心境だ。しかも先ほどから政府はやつていないのだ、あるいは数字はでたらめだ、あるいは各党においては、引揚げに対してもまるで阻害するような行動をやつているのではないか、あるいはソ連大使館の前で、そういう陳情、請願することは、かえつて引揚げを遅らせるようなものだ。こうした諸般の情勢をあなたが見て、結論として共産党だけが言行一致、熱心なのだということは、すでに国会議員を侮辱しているのである。このことを今でもお認め願えると思うとあなたが言つたのだから、その点に対するはつきりした、簡単な、そうだとかそうでないということだけお聞きすればいいと思う。
  121. 砂間一良

    ○砂間一良君 私の討論内容が聞く人にどういう印象感じ、受取り方を與えたかということは、聞く人々の主観によつて千差万別であると思います。少くとも私がきのう申し述べた討論趣旨は、引揚げ問題についてもつと全国民が関心を持ち、なかんずく政府も先頭に立つて、もつと熱心にやらなければならないという熱情を込めて申したのでありまして、それが反対の結果に聞かれたような場合があつたとすれば、あるいは私の表現が拙劣であつたり、足りなかつた点があるかもしれません。また聞く人の主観によつて別な受取り方をされた方があるかもしれませんが、それはやむを得ないことだと思います。
  122. 佐々木秀世

    佐々木(秀)委員 それじやこの問題は、あなたが逃げよう逃げようとして、まるで卑怯な答弁をやつておるので、これ以上繰返せば時間をとりますから、この程度でやめておきますが、いやしくも引揚げ問題などというものは、これはお互いの政党が政略の具に供してはいかぬ、政治的にこれを利用してはいかぬということは、先ほどのあなたの表現の中にもありました。そうすると、そういう観点から見ても、共産党だけがこれをやつておるのだという言葉の表現は、政略的に政治的にうんと利用しておることになる。あなた方の神山君の言葉で言うと、大きくこれを利用しておるということになると思いますが。それに対してどうお考えですか。
  123. 砂間一良

    ○砂間一良君 私は先ほど来申し上げておる通りでありまして、御判断は御自由でありますから、それ以上申し上げられません。
  124. 佐々木秀世

    佐々木(秀)委員 もう一つこういう事実があるのです。ソ連地区から第一回に引揚げ列車が東京に入つて来るときに、各政党や団体が申し合せまして、各政党の代表は一名あるいは東京都なら東京都から二名というようなことで、あのホームに入る人員を整理いたしました。その申合せに共産党賛成したはずです。しかるに先ほどから引揚者に対しては日本政府は官憲をもつて抗しておるとか、あるいは人権を蹂躙しておるとか、いろいろあなたは多数にわたる陳述がありました。そうしたことを今考えますときに、何もしない引揚者に対して、警察が罪人扱いにするというようなことは私はないと思う。しかしそれに対しての話をすると長くなりますから申しませんが、船の中での行動とか、列車内でのいろいろな行動が、ああいうふうに警察を出さなくてはならなかつたのだと思うのです。あなたは政治的に利用してはいかぬ、しかも同等の立場でこれをあたたかい気持で迎えなければならぬ、こう言いました。しかるに共産党も同意して各党の代表が一名ずつ迎えようと申し合せたあの第一回の引揚げの東京駅頭の状況は、どうだつたですか。共産党からは中西君が代表として出て来たが、もう列車が入るか入らぬうちに、あの何百人という共産党員が、この申し合せを無視して、あの赤旗を隠しておいて、予期しないわれわれの前にずらつと、何百人も共産党が赤旗で迎えたのは、どういうことなのですか。こういうことも共産党引揚者を利用して、あなた方が党勢拡張のために党略のために、政治的な行動のために利用したと私は考えますが、こうしたことに対してあなたはどう考えられますか。
  125. 砂間一良

    ○砂間一良君 私は第一回の引揚げ出迎えのときに、各党間でどういう協定をされて、そのときの実情がどうであつたかといういきさつについては存じておりません。しかしそうやつてたくさんの共産党員が出迎えに出るということ自体が、いかに引揚げ問題について共産党があたたかい心をもつて迎えておるかという一つの例であると思います。また実際引揚げて来られた人たちからその感想を聞きますと、あの駅頭に共産党員が赤旗を持つて出迎えてくれることが一番うれしいと申しておる人が、はなはだ多いのであります。
  126. 佐々木秀世

    佐々木(秀)委員 こういう神聖なる委員会の席上において、詭弁もはなはだしいことを言われて、ああそうですかと引下る佐々木じやないです。しかもこのことに共産党だけが多数迎へたのではない。その他の団体も多数東京駅頭には迎えに来ておりました。しかしホームに入ることは各党の代表一名、団体一名ということに申合せをした。それであなたの方の共産党においてもこれに同意せられ、ちやんと約束せられた。その入つてはならないと約束したホームに、なだれを打つてつて来る。その行動共産党があたたかい気持で迎えたんだということになるならば、あなた方の考えというものは、常に一方的であつて、他方の気持とか、協約したこととか、あるいは協定したこととか、そういう相談ずくできめたものを一切無視しても、相手方からさえ好感を持たれたらいいという行動をとるのが、共産党の常套手段ですか。それを伺いたいのです。
  127. 砂間一良

    ○砂間一良君 協定を無視したり、共産党だけいい子になればいいというのが、共産党の常套手段であるということにはりません。私はその協定の当事者でもなければ、そのときの詳しいいきさつも存じておりませんので、そのときの問題を持つて来られまして、きのうの本会議における討論懲罰問題の何かにされるということにつきましては、はなはだ迷惑であります。私はその間のいきさつについてに答弁することはできません。
  128. 佐々木秀世

    佐々木(秀)委員 他の委員発言もありましようから、この辺で私は終りといたしますが、先ほどの国会法第百二十條のことにつきましては、あなたから十分なるお答えが願えなかつた。ただ要するに国会議員全体もやつており、国民もやつており、各政党もやつているということを、あなたは先ほどの証言で認めておきながら、あなたの言動において共産党だけがこれに熱心であり、共産党だけがこれを言行一致やつているという言葉は、たしかに国会法第百二十條に抵触するということだけを一言申し上げて私の質問を終ります。
  129. 砂間一良

    ○砂間一良君 私はきのう一身上の弁明をするときに、共産党を除く他の政党を誹謗する意思は全然なかつたと申したということだけを申し上げておきます。
  130. 福田一

    福田(一)委員 私は簡単に一、二お伺いしたいのですが、本会議賛成演説をなさるときには、時間を限つてあつたと思いますが、あなたの演説は何分になつておりましたか。
  131. 砂間一良

    ○砂間一良君 実は私演説をやつておつたのでありますが、私の演説をやつておるときには、ばかに議場が騒々しくなりまして、やじなんかも飛んだものですから、時計を見ておりませんでしたから、何分やつたか覚えておりません。
  132. 福田一

    福田(一)委員 何分やつていいかということをお聞きになつて演壇に上られたのではないのですか。
  133. 砂間一良

    ○砂間一良君 そのときの議院運営委員会における協定がどうであつたか、あまりはつきり覚えておらないのであります。私の聞いたところによりますと、野党の賛成討論は十分間ということになりておる。もし共産党だけがやるのであるなら、十分使つてよろしいというお話でありましたが、そのときに社会党から申入れがありまして、あとから社会党の受田さんが、共産党の控え空の私のところへ参りまして、堤さんもやりたいという希望を持つておられますから、少し時間をさいてもらいたいというお話がありました。十分のやつを二人でわけるということは非常にむりじやないか、私は少くとも十分間くらい述べたい内容を持つておるからと申しまして、できれば十分間のわくを、もう少し広げてもらいたい。十三、四分くらいに広げてもらいたい、そうすれば私が八分やつて、堤さんに三分くらいさいてもよいと考えておりました。ところが議場内に入つて行きますと、何か議場内交渉でもあつてどうかわつたか知りませんが、ほかの民主党の方や、民自党の方も賛成討論をされることになつたということになりまして、ですから最初の私の持ち時間が何分であることになつておるかということが、ちよつと判明しなかつたのであります。情勢がかわつて来まして、各派の方々が討論をやるということになつたので、私の持ち時間が最初の十分であつたのか、あるいはもつと自由に、時間の制限なしにやつていいのか、あるいは短くなつたのか、その点はつきりいたしません。
  134. 福田一

    福田(一)委員 それではちよつとお聞きしますが、これは砂間さんじやないですが、共産党の方ではそういう場合に演説者には時間をお示しになるのですか、どういうことなんですか。
  135. 林百郎

    ○林(百)委員 僕に聞いているのですか。
  136. 福田一

    福田(一)委員 ええ、あなたでもどなたからでも。
  137. 林百郎

    ○林(百)委員 私の方は必ず運営委員会の決定した時間はよく討論者に伝え、ことに共産党は時間を超過するくせがあるから、なるべく簡潔に、むしろ時間内でやるように言つておきました。ただこれは一般論です。きのうの砂間君の場合は特殊な事情があります。これはこういうことだと思います。これは実は運営委員会でも大分もめたんです。佐々木君も知つてるはずだ。この決議案を出すについては、中山さんに来てもらい、砂間君にも来てもらい、実は一昨日本会議で簡単にやるということになつておつたのを、共産党の方で、この決議案をあげる際には、砂間君に特にさせるという中山委員長との黙約もあつて、それでわざわざきのうに移しましてやつたのであります。そういう事情だから共産党の砂間君だけやるということで、十分という時間になつたわけです。ところが急に、それなら堤君もやりたいという話が出まして、それについては共産党に譲つてくれないかということで、それじや同じ野党だから、十分を分けて砂間君五分、堤君五分でやろうという話をして、場内交渉で、もしも社会党と話がついたら十分まるまるもらうことにしようということで運営委員会に入りました。その後社会党の受田君か来て、民自党と交渉した結果、三分加わつて十三分になつた。これを私の方が八分、社会党が五分ということに話がきまりましたという話がありましたから、私の方はそれを砂間君に伝えておいたのです。しかしその後各党の時間を見ると、あの日は皆超過していましたが、私の方はもし民自党からえらいむずかしい文句でも出たら、ひとつこれを言つて民自党と交渉しようと言つていたんですが、なるべく時間の範囲内で済ませるように私は言つておいたはずです。
  138. 佐々木秀世

    佐々木(秀)委員 林君の言つてることは全然でたらめで、そんなことは話になりません。どうしてかと言うと、この引揚げの問題については今まで四回もやつた、各党においては賛成なんだろう、賛成なら賛成討論をなくしよということで一応きまつた。そうしたところが、あなたの方と社会党から両方出ていたんです。砂間君とそれか堤君。堤君の方があとから出たか先から出たか——運営委員会には二人出ていた。しかし二人ともおやめ願うことにきまつたのですが、何とか一人ぐらいやらしたらどうかという交渉がありましたので、私が発言して、これは速記録を見てもらえばわかりますが、それならこうしよう、野党に対して十分與えよう、その十分を堤君とあなたと二人で五分ずつわけてもけつこう、三人なら三分とじようだんまで言つて、そうして十分というものを認めた。だから先ほど林君が共産党のやることにおいて十分を認めて、そのうちから五分を社会党に譲つてやつたなどと言つておるが、それは全然違うのであつて、野党全体に十分ということをきめたのです。それが事実なのでありますから、私はそれ以上のことは申しません。ただ最近本会議場において、ことに演壇に立たれた各党の代議士諸君が、議長の制止とか、それから議長の注意とかいうものを非常に無視する傾向があります。これは議場内において議長の権限というものをわれわれは尊重して、議長の言われることを守るということが、お互いの議事運営の秩序を守ることと私は考えております。ただ昨日においても、あなたは四回も議長から砂間君々々々と言われております。それも連呼されたのではありません。この速記録を見れば必ず一言か、二言言つては砂間君、また言つて砂間君と、こうして四回あなたは呼ばれているが、一回ごとにはいと言つて振り向いて、そうして注意に対して応じた態度速記には現われていないのです。そうなるとあなたは議長のいわゆる発言をも聞けなかつたのか、聞いたかわからなかつたのかということを、この懲罰に対する直接の関係ではありませんが、この演説全体に対する関連性もありますから、これをお聞きしたいのです。
  139. 林百郎

    ○林(百)委員 佐々木君の言うこともおかしいと思う。佐々木君は運営委員会に出ていたから知つているだろうが、なぜ中山委員長を呼び、砂間君を呼んだか。中山委員長はすベて了承済みということであつた。あなたの方は、砂間君は了承済みだから、これは修正するとか、討論するということはなくてもいいのじやないかということで、一昨日はそれでは討論なしで行こうということになつた。ところが砂間君に聞いてみたら、砂間君が了解済みというのは、こちらの決議案を向うの決議案と大分違つておる、違つておるけれども、砂間君は何もここで修正ということは言わなくて、本会議で十分討論さしてくれということを條件として了解したのだ、こういう意味の了承済みということになつたから、それでは砂間君に特に発言させなければいけないということで、砂間君の問題でわざわざ一日延ばして昨日になり、そのためにこそ中山委員長も呼び、特に砂間君も呼んで、その間の経過も聞き、そこでそれなら砂間君に発言させるように話合おうじやないかと言つたら、社会党の方から、実は俺の方で堤さんも話があるということになつた。最初は共産党の砂間君にさせるかどうかということで、きのうの運営委員会を開いた。これは懲罰にあまり関係がないから、私はくどくど申し上げませんが、そういう経過で中山委員長と砂間君が来たわけで、そこへ堤さんが入つて来たから十分を二つにわけることにして……
  140. 佐々木秀世

    佐々木(秀)委員 林君は前に論議したことを言つておるので、私はきまつたことを言つておるのです。それは共産党の立場からすれば、砂間君にやらせようとするなら、あらゆる手を打つてやらせてもらいたい、時間がどうということを主張するのは当然なことだと思う。そうしたいろいろな過程はあつたが、要するにきまつたそのことは、野党に十分やるということであつて、特に共産党にやらせるということではない。速記録を見てごらんなさい。そんなことはきまつておりません。しかも私も発言して、野党に十分與えるということにきまつたのです。それは前日かにあなた方が工作して砂間君にやらせようと努力した過程は、あなたのおつしやる通り、しかし私の言うのはきまつたことを言つておる。そうでしよう。それだけは了解してもらいたい。
  141. 砂間一良

    ○砂間一良君 きのうの本会議議場で、私が発言中に、議場が非常に騒がしくなりまして、私もやじに答える意味熱意を持つて、一生懸命にやつておつたものですから、速記録を見ると議長が何べんも注意したようなことになつておりますが、率直に申し上げまして、私は初めの方の議長の注意はよく聞えませんでした。そうしてこれはあとで、今でたらめを言つて弁解しているわけでありませんが、議長の注意が耳に入つたときにうしろを振り向いて、すぐやめますからと言つて打切つているのです。これに速記録の終りの方を見ていただいてもおわかりになりますように、十一月五日永徳丸で帰つて来た人が十二名と言つて、私はこの問題をもやりたかつたけれども、しかし議長の注意があつたものですから、この問題の結論をつけずに、十二名を言つたところて打切つて、そうして最後結論をつけましてやめておるわけでありまして、私が議長の注意を無視してあえてやつたという……(佐々木(秀)委員「聞えたのでしよう」と呼ぶ)聞えたから急いで結論に入つたのであります。(佐々木(秀)委員「それが四回続いておるのだ」と呼ぶ)その前の最初の議長の連呼がわからなかつた……(佐々木(秀)委員「最初は分らなくても四回続けておる」と呼ぶ)聞えたからすぐ議長に、今すぐやめますといつてうしろを振り向いて、それでやめたのです。(佐々木(秀)委員「それは速記録にない」と呼ぶ)
  142. 福田一

    福田(一)委員 今林さんのお話を承つておると、共産党はそういうときには時間をとると本人に通知する。ところがあなたはよく知らなかつた。こういうのですね。あなたは御了解になつておらなかつたのですね。
  143. 砂間一良

    ○砂間一良君 野党各派で十分をもらつたということを初め聞いておりました。そのときに私どもが理解したところによれば、野党各派と申しましても、共産党の私はぜひ発言さしてもらいたいということを、先日来言つておつたわけです。社会党の受田さんが参りまして、社会党では堤さんをこれに加えてほしいというお話がありまして、それでいろいろと御相談したのですが、十分を二人でわけて、五分ずつといつてもみんな中途はんぱになるが、私は十分間でも言い切れない内容を持つておるから、実はもつと時間がほしいくらいに思つておるのだから、何とか私一人にまわしてもらえないかというようにお願いしたのですが、どうしても堤さんがやらしていただきたいという話がありましたので、それで受田さんに、それでは全体のわくを三分でも四分でもふやしてもらえないかといつておりましたところが、受田さんが民自党のどなたかにお話になつて、十三分くらいの了解を得て来た。それでは堤さんが五分やつて、私が八分ということがきまつて議場の中に入つた。ところが議場の中で情勢がかわつて来たと申しますか、何か最初予定していたよりもたいへん多くの各党派の皆様が御発言なすつて、演壇の上に登壇されて、一見時間の制限もないように発言をされておりますので、私は登壇時間がどういうふうになつておるかということが、最終的にはよくわからなかつたのであります。それが実情であります。偽わらざる実情であります。
  144. 福田一

    福田(一)委員 そうするとあなたは演壇におのぼりになる前には、大体八分くらいで演説をやろう。こういうお考えでお立ちになつたのですか。
  145. 砂間一良

    ○砂間一良君 八分になるか、十分になるか、なるべく早く切上げてやる都合だつたのですが、やじや何かが入つたりして、多少興奮したかもしれません。それでやつでおつたら思わず時間が経つて議長から注意されて、気がついてすぐやめたというので——これは速記録を見ればわかりますように、はなはだ私の発言は尻切れとんぼになつてつて言い切れないで、まとまらずになつております。
  146. 福田一

    福田(一)委員 そうすると失礼なことをお伺いいたしますが、原稿をおつくりになつておいでになつたのですね。
  147. 砂間一良

    ○砂間一良君 原稿はつつておりません。
  148. 福田一

    福田(一)委員 つくつておられない——私はきのうのあなたの御演説を聞いておつて受けた印象は、木村君や同僚の佐々木君が申されたと同様でありまして、非常に何かそこに、裏に何かあるのではないかというような印象を受けた者の一人であります。そこでなぜそういう点が出て来たかというと、あなたの演説内容が、政府がはなはだ怠慢であるという点にすベての重点が置かれておつたやに聞いておる。他の賛成演説をなすつた方は、まことに家族の者も困つておる、あるいは帰つて来ないために、いろいろの社会問題が起きて困つておるのだ。少しも早く帰してもらうようにしてもらいたい。人によつては壇上で涙を流されて言われておつた方も私承知いたしておるのであります。ところがあなたの場合の賛成演説内容は、終始一貫して政府攻撃にあるやにわれわれは受取つたのであります。そこでわれわれの非常に不満を覚えた大きな原因です。そこでそういう結論を得るのでありますが、今度は演説内容について一言お伺いいたしたいのであります。速記録もありますけれども、あなたは冒頭に、「私はこの問題の第一の責任者は、日本政府でなければならないと思うのであります。」こう断定された。日本政府が悪い、第一の責任者だ、こう言つておる。「何となれば」とその理由をつけられた。これは私非常におかしいと思う。「あの侵略的な帝国主義戦争を始めて、国民を赤紙で動員して、兵士を外地に送つたのは、これはアメリカの政府でもなければ、ソビエト政府でもなくて、実に天皇の政府であつたのであります。」こうお話になつている。従つて政府責任があると、こうおつしやつた。しかし戦争前の政府と新憲法下における、しかも占領下における政府との、いわゆる政治自体の認識をあなたはどういうふうにお考えになつておられるか。現政府は旧憲法によるところの天皇の政府であるとあなたはお考えになつておるのですか。それを伺います。
  149. 砂間一良

    ○砂間一良君 まず第一の点でありますが、中山委員長決議案趣旨説明と、それから私の賛成討論内容の点におきまして、多少力点の置きどころが違つておつたかもしれないということは、これはあつたかと思います。何となれば、私はこういう別の決議案を出しておりまして、そうしてこの内容賛成討論のときに……
  150. 福田一

    福田(一)委員 それはわかつておる。私の聞きたいところは、政府だというのは、あなたはどういう意味政府であると解釈されますかというのです。
  151. 砂間一良

    ○砂間一良君 その内容をも賛成討論の中に加えてあるという了解を得て、そうしてきのうの本会議のあの演壇に上つたわけでありますから、そういう印象を受けられたことは、あるいはあつたかと思います。しかしその点についてに、きのう本会議で中山委員長があの説明をされるときに、単に決議案の案そのものの説明ばかりでなく、委員会における経過について、私の発言内容やそのいきさつをちよつと触れてくだされば、一般の議員の皆さんは異様な感じは受けなかつただろうと思のですが、この点については私は残念に思つております。  第二の点でありますが、政府責任云々というのであります。これは先ほど来何べんも御説明申し上げて来たことでありますが、この引揚げという問題が起つたということは、あの戦争を始めて、日本国民を外地へ送つたからこそ、こういう問題が起つて来たのであつて引揚げ問題ということが起つたその原因、責任日本政府にあるということを、広い意味で申しておつたのであります。ただこの問題をさらに詳しく分析いたしまして、終戦前と終戦後とでは事態がかわつておる。今日でもその引揚げの一切の責任が、日本政府だけにあるかどうかという問題になりますと、それは多少客観條件がかわつて来ておりますから、多少事態が異なつて来ると思います。しかしかわつて来ておりましても、この引揚げ責任を、連合国ないしは連合国に加盟しているある国の責任だけに限定いたしまして、そして日本国民や、日本政府連合国だけを責めるというふうな態度がはたしてよろしいかどうかという点につきましては、私は多少見解を異にするものであります。日本は何といつても戦争に負けたのでありまして、そうしてまだ正規の外交関係も打立てられていないような情勢でありますから、日本政府だけでこの引揚げ問題が解決するとは考えませんけれども、もちろん連合国の好意ある協力や援助というものが必要であろうと思います。しかも日本政府がまず第一にだれよりも積極的に熱意を持つて努力しなければならぬということは、これは言えると思います。そういうような意味で、私はそういうふうなことを申した次第であります。
  152. 福田一

    福田(一)委員 ただいまの御答弁は、私の質問ちよつとはずれておるように思います。私の言つておるのは、あなたがこの問題の第一の責任者は日本政府でなければならない。日本政府だということを断言され、その理由としてあげられたところが、侵略戦争を起したのは政府だからだと、こう言つておられる。そうすると前にやつた政府責任と、いわゆる新憲法下の政府というものが、全部それを引継いでおるのかどうか、こういうことになつて来るのでありますかと、こうお聞きしておる。違つておる。あるいは違つておらない。それだけでいい。
  153. 砂間一良

    ○砂間一良君 終戦前と終戦後では憲法も違つておりまして、いろいろ政治のやり方なんかでもかわつて来ておる点もありましようが、戦争前の問題でありましても、やはりその問題の跡始末をいかによくつけるかということにつきましては、あとで新憲法下に成立した政府でも、やはり何といいますか、政治的責任は継承して行くべきじやないかと私は思います。
  154. 福田一

    福田(一)委員 それでは私はあなたのおつしやつておることでは了解しないのであります。どうも私の答弁をおはずしになつておられるように思う。しかしわれわれはあなたの論旨で行くと、前にやつた政府責任はこの内閣にもあるのであるというようにはつきりとこの文章に出ておる。これをどこかだれでも——小学校の一年か二年の人に聞かしても、あなたのおつしやつたことを私がこういうふうに一ぺん言つてどうだどうだと聞けば、たいていわかると思う。しかしそれについては、あなたは今でもあの場合、例証としてはまずい。もしあなたの意見ならば数字発表が非常に不明瞭だ。こういうような数字発表が不明瞭なようなことでは、われわれは政府というものを信用できない。こういう意味において政府責任があると言われたのならば、われわれは了承するのであります。そのことの当否は別として、文章の趣旨としては合つておる。ところがこれを読みますと、何となれば、あの侵略的な帝国主義戦争を始めて、国民を赤紙で動員したのは、結局は実に天皇の政府であつたのであります。こう言つて、今の政府にどういうわけでそういう原因があつたかということを説明された。ここら辺から、もう演説を始められたとたんから、何かへんな印象をわれわれが受けておる。そこがいけない。それから論旨を進められて来て——ほかのことはほかの方々がみなおつしやいましたから、これ以上私は聞きませんが、これが議場が騒然になつた一番の根本原因になつておる。何もおれたち政府だけの責任ではない。ポツダム宣言もあるではないか。また占領下においてはなかなかむずかしい問題があるからという気持がみんなにあるから、それをあなたが政府だけに責任を課せられるような、いわゆる賛成演説をされたところに問題がある。そこでお伺いしたいのでありますが、あなたはこの場合、この賛成演説内容でいろいろと言つておられるが、大体八分ぐらい。そこで私は時間の問題を言うこのあとには、いわゆる非常に逸脱しておつたところがある。しやべりきれなかつたということであるが、しやべられようと思つた内容にどういうことであつたか。ここで言つていただきたい。そのあとの要旨は、どういう点とどういう点とどの点をしやべろうと思つていたか。
  155. 砂間一良

    ○砂間一良君 私にこの引揚げの問題について、今一番問題になつております一つは、やはりその数の問題を明確にするということと、それから外地に残つている未引揚者帰還を一日も早く促進するということ、それから帰つて来た人たちの定着援護の問題、それから留守家族人たちの生活援護の問題、こういうふうなことが引揚げ問題に関連した、当面のなすベき大きな問題であろうというふうに考えております。そこで私はきのうも数の問題を述べたあとで、未引揚者引揚げ促進の問題だとか、それから定着援護の問題、職業、就職の問題だとか、それから住宅の問題だとか、生活上の諸問題、それから留守遺家族問題等を触れたいと思つておつたのでありますが、それが数の問題だけやつておつたところで時間が来てしまつたものですから、途中で終つたわけであります。それは時間の観念がない、それだけの内容を持つておりながら、時間の観念がないとおつしやられれば、まことにそれは私の不明のいたすところでありまして、しろうとのゆえんでありますが、大体あとはそういうふうな点に触れたかつたのであります。
  156. 福田一

    福田(一)委員 それであなたは政府は非常に努力しなければならぬ。こういうことを言つておられるのであります。そこで政府として、たとえば共産党が内閣をおつくりになつたとすれば、一体どういうようなことをその当時の政府はできるか、またすベきであるかということをおつしやつていただきたい。
  157. 砂間一良

    ○砂間一良君 引揚げ問題は、今全国国民の重大な関心を持つている大きな問題であります。しかしそういう問題は国民が個々ばらばらにやることはできないわけでありますから、その国民の関心を持つている問題を取上げてそうして適切な措置を講ずるということが政府の役目だと思います。従つて今の民主自由党の吉田内閣が、直接戦時中の内閣ではなかつたかもしれませんが、現在この引揚げがこういう問題になつているときに、やはりその問題を国民の要望に従つて、その総意を取上げてこれを解決するように努力して行くのが、まず今政権をとつているところの政府であろうというふうに考えて、それで政府の努力、熱意というものを、大いにもつと積極的にやつてもらいたいということを強調したかつたのであります。
  158. 福田一

    福田(一)委員 私の質問一つもぴつたり来ないのですが、どういう政策、どういう事柄、内容——抽象論ではないのだ。一生懸命やらなければいかぬ。そんなことはあたりまえのことです。もつと具体的にこういうこと、こういうことをやるべきである。その中で政府はこれとこれをやつていないということを言つてもらいたい。
  159. 砂間一良

    ○砂間一良君 先ほど共産党がもし政府をとつたならば、引揚げ問題についてはどういうふうなことをやろうとしているかという御質問でありましたが、これは共産党政府をとつてもとらなくても、この引揚げ問題について、政府としてまず第一にやらなければならない当面の問題は、この未引揚者の数につきまして、正確なる数字国民発表するということが、これが一つの大きな仕事だと思います。それからその次には、残つている未引揚者帰還を一日も早く促進して、そうして引揚げ問題を完了するということ、それからその次には引揚げて来た人たちの生活援護の問題、それから留守家族人たちの援護の問題、こういうふうなことにつきまして十分なる手厚い施策をとることが政府の仕事だと思います。共産党がもし政権をとつたならば、そういうことにつきまして十分なる努力をいたすだろうと私は思つております。
  160. 佐々木秀世

    佐々木(秀)委員 数の問題ですが、今現在の政府のやつているのはでたらめだ、しかもゼロというところから百何十名帰つている、二百何十名帰つて来ていると言われている。しかしこれは戦争で、いろいろ行方不明になつた人もおりましようし、あるいは山の中に隠れていた人で出て来た人もありましよう。あるいは生きている人ですから死んで行く者もあり、病気になる人もある。それは数字を物理的に扱うことはできないと思う。ただあなたがいろいろな例をあげてこれを全部でたらめだ、なつていないという根拠は、あなた自体としてはどのくらいおるのだという数字をお持ちだろうと思う。ただ観念的にでたらめだということは、それはだれでも言える。あなた自体が大体どのくらいおるのだ、それでこれに当てはまつていないのだということになると思いますが、あなたの海外におられると思う残留者数字——これは先ほど言う通り的確じやないと思いますが、大体の数字をお持ちだからでたらめだと言うのだと思いますが、それをおつしやつてください。
  161. 砂間一良

    ○砂間一良君 私どもは野にいる国民の一人としまして、そういうふうなものを推定し、計算してみたくても、そういう材料も資料も持ち合せないのであります。今日海外にどれくらいの人が残つているかということにつきまして、あらかじめまとまつた数字というものは持つておりません。
  162. 福田一

    福田(一)委員 私はこれで発言を打切りますが、私が言つていることは、もし討論において、政府に足りない面があるというならば、こういう点が足りないから政府はこういうようにしなければならぬ、あるいは引揚げの運動としてはどうだと、建設的な意見を羅列されて、そうしてこういうことをしてもらいたい。こう言われるのならば、われわれも満腔の賛成をしたと思う。ただ演説内容が抽象論で、何もやらない、何をしているのだかわからぬというようなことを言われているので、従つてこういうような、あなたの考えとは全然反したようなことになつてしまつた。従つてわれわれが受けた印象は、何らか裏に別の意図を持つて発言されているものではないか、かようにわれわれは考えたのです。こういう意味において、論旨においても非常に不徹底である。さらにまた議長の制止があつてもこれを聞かれない。しかもその演説内容は今言つたようなことであつたということに、はなはだ遺憾であります。私はこういうふうに断定して私の質問を打切ります。
  163. 砂間一良

    ○砂間一良君 ……(「答弁は求めていない」と呼びその他発言する者あり)私の論旨が不徹底であつたということは、これは時間の関係もあつて、十分私の意見最後まで展開する時間が與えられませんでしたので、あるいは不徹底であつたかもしれませんが、私はこの数字の問題につきましては、最初にきのう討論で述べましたが、こういうふうにいろいろまちまちであるから、正確な数字政府があらゆる方面に努力を拂つて発表してもらいたいということが言いたかつたのであります。その結論の方が十分出ませんで、その前提になる、いわゆる数字のでたらめというようなところだけを強調しておつたものですから、私の趣旨が徹底しなかつたのであります。それから議長の制止を顧みずということでありますが、私は議長が制止されたことに気がつくやいなや、すぐやめております。そうしてあえて発言を要求しなかつたのであります。
  164. 木村公平

    木村(公)委員 これはたいへんな問題で、今福田君から指摘され、前に私は少し触れたのでありますが、第一の責任者は日本政府でなければならないということで、そのあとにこれに侵略戦争の結果であるから、日本政府責任があるというようなことを断定されるということは、はなはだしく不謹慎である。この点ははつきりいたしておかなければならない。今一番大事なことに、ポツダム宣言をわれわれは無條件で受諾したのだ、しかもそのポツダム宣言によりますれば、武装解除されたところの日本兵というものは、なるべくすみやかに帰さなければならぬとなつている。にもかかわらずいまなお多くの者が、敗戦後数年間も残留されているから、すみやかに一人残らず帰してくれというのが、きのうの満場一致の決議案でなければならぬにもかかわらず、砂間君の考え方によれば、責任政府にあるのであるから、帰しても帰さなくても、どうでもよいという印象を受ける。お前たちは帰せ帰せというけれども政府責任じやないか、これは侵略戦争のおかげじやないか、こういうことを本会議の席上で断定すれば、全国の留守家族はどういう感じを持つか、これが一番重大問題です。それで砂間君によくお聞きを願つおきたいのは、本日本会議場へにおいて引揚げ促進決議をなすゆえんは、わが国は負けてポツダム宣言を無條件に受諾したのだという点が一つ、そしてそのポツダム宣言の中には武装を解除せられた日本兵というものは、すみやかに帰さなければならないと書いてあるにもかかわらず、負けて数年、今日に至るもなお数十万の者がソ連領には確かにおるとわれわれは確信をしている。従つてそれに対して一日もすみやかに帰すことが、一方においてソ連の義務であると同時に、他方においては全国留守家族の熱願であるということを、きのう決議したのです。しかるにそれに対してあつさり賛成すればよいのに、第一の責任者は日本政府である。侵略戦争のおかげである。これはあたりまえではないかというような印象を與えるがごとき言辞を弄するということは、これは極刑に値するものである。全人民を侮辱することだ。
  165. 菊池義郎

    菊池委員 私も簡単に一言申します。侵略戦争のためだということを言つておられますが、侵略戦争を起したのはこの政府ではなく、前の政府である。どういうわけでもつてこの引揚げ賛成に、何も関係のないこういうことをおつしやるのであるか、その心境を伺いたいと思う。
  166. 砂間一良

    ○砂間一良君 この問題につきまして、私は政府責任であるというように述べた点につきましては、先ほど来何べんも御質問がありまして、その都度私の意のあるところを述べて来たつもりであります。今の御質問の中には、多分に御意見にわたる点もあつたように思いますけれども、侵略戦争を始めた政府と、今の吉田内閣とは別の政府でありましよう。しかし引揚げの問題の起つたということに、あの戦争を始めたからこの引揚げ、未帰還ということが問題になつておるのです。またそれが今現在の日本国民の重大な関心事となつておる場合において、この国民の熱望といいますか、総意をくみ上げて、そして連合国に懇請したり、いろいろ引揚げ促進についての手配をするということは、戦争を始めた政府であろうがなかろうが、ときの政府がこの国民的重大問題を取上げて行くのは、それは政府の役目であるというふうに考えて申しております。
  167. 菊池義郎

    菊池委員 責任政府が違うのです。それにもかかわらず、何ゆえに政府責任ありというのですか。同時に引揚げ促進賛成と何の関係もないことを、何ゆえ言われたのですか。
  168. 砂間一良

    ○砂間一良君 侵略戦争を始めた政府と今の政府と違つているということは、これはおつしやる通りであります。しかし引揚げ問題という問題がなぜ起つて来たかということは、もとをただせば、あの侵略戦争を始めたことによるわけであります。たとえば戦争を始めた政府でなくても、今立つている吉田内閣の政府としても、未引揚げの問題が問題になつていて、国民が重大な関心を持つて焦慮の絶頂に達しているという場合には、この問題の先頭に立つてこれを解決するようにして行くのが、私は一番大きな責任ではないかと思う。侵略戦争の責任が今の内閣にあるというふうには言つていない。それは天皇の政府であるからというふうに言つているわけです。この問題について、もつと日本政府が積極的にやつて行かなければいけないのだという意味言つているのです。
  169. 菊池義郎

    菊池委員 それではそれはいいとして、どうして引揚げ促進と何の関係もないことを言つたのか、その心境を聞きたい。
  170. 砂間一良

    ○砂間一良君 私は今までこの引揚げ問題について……(発言する者多く聴取不能)いろいろ協力しなければならない。(発言する者多く聴取不能)
  171. 松木弘

    松木委員長 静粛に願います。
  172. 春日正一

    春日委員 ただいま問題になつております昨日の賛成討論の一番初めの問題でありますけれども、この問題について、日本政府責任であるということで、「何となれば、あの侵略的な帝国主義戦争を」云々ということになつております。また、その前を読んでみますと、「連合国に懇請するとか、国際連合に提訴するとか、世界の人類に訴えるとか」云々という意見がありますけれども、この責任はという形で出ておつて、そうして「兵士を外地に送つたのは、これはアメリカの政府でもなければ、ソビエト政府でもなくて、」ということになつている。そうしますと、私どもの理解するところでは、ここで日本政府責任であり、侵略戦争というのが出たのは、アメリカが戦争を吹きかけて来て捕虜を持つて行つたというのでもなければ、ソ連が捕虜を持つて行つたというのでもない。最初に戦争を始めたのはこつちから始めて、そうして跡始末を今われわれが果さなくちやならぬ、そういう無味で、つまり前の政府の東篠さんたちのやつたことが、今の吉田さんに責任があるという意味ではなくて、この戦争を起して行つた、戦後の跡始末をやるべきものが日本政府責任であつてソビエト責任だとは、アメリカの責任だとかということに持つて行くのに間違いだ、こういう趣旨であなたが言われたのかどうか。
  173. 砂間一良

    ○砂間一良君 先刻来私はくどくど御説明申し上げておりますように、今春日委員のおつしやつた通りです。それは連合国責任だとか、連合国に加盟しておる国の責任だというように、その方ばかり責任を持つて行つて、そうして日本政府などは素通りして行つて知らぬ顔でおるというような態度は、どうも少し見当違いじやないかというふうに考えております。この中山さんの案の趣旨を見ましても、その方が非常に強調されているのでありますが、私ども日本政府が、もつと積極的にやらなければならぬということを強調して言つたわけであります。
  174. 笹森順造

    笹森委員 ただいま問題の中心になつておりまする責任所在に関しては、この懲罰事犯になるかならないかという問題の焦点の大事なところの一つだと思います。今までせつかく多数の人から御質問があつてもお答えははつきりしませんが、この意味でこれを掘り下げて究明しておく必要があると思います。さもなければ結論を得ないと思います。ところでこの要旨はお互いに論議されておりますように、第一の戦争を起したということについては、この書いてあつたことが一応納得せられるでしよう。しかしながら先ほどから木村君その他の方々のおつしやるように、戦争が終つた後にその現地において武装を解除して、すみやかに日本に帰つて来て、家庭に帰つて平和的なる生活につけというのが、私どもの受諾した約束なのです。ところでこの約束に従つて他の国々はいろいろな便宜をはかつて、そうして昭和二十二年の十月の未までで、少数の例外を除いて一応は帰したのです。ところがソ連だけは現地ではないのです。別のところに連れて行つたのです。ここに問題の出発点がある。一切の責任の焦点はここから出発するのです。このことに対して発言者の砂間君が、その責任日本政府にあるという、第一段階でなくて、第二段階の現場において武装を解除して帰すべき者を、国境を越えて連れて行つたということに対して、その責任がないと考えているかどうか、その点をはつきり答えてもらいたい。
  175. 砂間一良

    ○砂間一良君 そういう内容を私は取上げて言つたのではないのです。日本政府にあるのか、ソ連政府にあるのか、連合国にあるのか、どこにあるのかは別問題だと思います。ポツダム宣言を協定されたのは、ソビエトやアメリカやイギリスやその他の連合国であります。戦争が済んだならば、武装を解除して平和になつたら帰してやろうということは、連合国同士で協定されたのであります。そうして日本政府は無條件降伏いたしまして、そのポツダム宣言を受諾したわけであります。しかし受諾したからといつて、それじや引揚げの問題について、日本国民及び日本政府は、連合国だけを責めればいいのか、あるいは責める権利があるのかどうかということについては、私はあまり論じたくない。どうなつておろうが、とにかく引揚げについて、最も熱心にやつて、この引揚げ問題が一日も早く完了するように努力するのは、日本政府が大いにやらなければいかぬということを言つておるだけでありまして、その責任所在を言うというようなことは、この問題の焦点であるということについては、いささか私の趣旨内容にはずれているような感じがいたします。
  176. 笹森順造

    笹森委員 そこで責任の問題でございますが、引揚げに対して最後的に実行して、何年の何月何日に何名帰すという最後的な決定をするのは、ソ連政府であるのだと、現実に私どもは見ているのですが、砂間君はそれをどう考えていますか。これをソ連がやるのでなくて、ほかのものがやるのか、日本政府がやるのか。その点はつきりと砂間君のお考えを申し述べてもらいましよう。
  177. 砂間一良

    ○砂間一良君 そこでこの外地に残つている未引揚者の数のことが問題になつて来るわけであります。皆さんはソ連政府がとおつしやつておりますが、この未帰還者の残留数がゼロということになつている地域にも、まだ残つておる人があるというように政府でも申しておりますし、また現実に帰つて来ております。そうしたならば、何もソ連政府だけを目のかたきにして責めるというか、ソ連政府だけを取上げるということが、何か私は一方的であるような感じを受けるのであります。ですからもし外地に残留者があるならば、それはシベリアにあるのならソビエトに懇請するし、フィリピンやインドネシアや仏印の方ならば、その関係国にも懇請して、とにかく一日も早く全部の人たちに、帰つて来てもらうように努力したい。そういう努力をするのは、これは日本政府が先頭に立つてやらなければならぬのでありますというのが、私の趣旨であります。
  178. 笹森順造

    笹森委員 このことに関しては私も最後にこれだけ聞いておきます。ほかの質問あとにしておきまして、つまり私の申し上げておりますのは、ソ連政府が、この引揚げをしなければならなくなつた原因をつくつたものだという認識を持つているかいないかということをお尋ねしたら、言を左右に託してはつきりした答弁がありません。  第二の現在ソ連に幾らかいるとしたならば、また今日までソ連から引揚げさせた者の最後的数の決定をするのは、ソ連政府が決定するのだということに認識しておるかどうか、責任がどこにあるかということがそこにはつきりして来る。そのことを聞いたが言を左右にしてはつきりした御答弁がありません。  最後に御質問したいのは、一身上の弁明のときに、反ソ的感情があるので遅れることになるというお話についても、やはり徹底した御返事がなかつた。その御発言によりますると、結局するところ反ソ的な考え方があるとしてこれを遅らせているのが、ソ連政府なりあるいは共産党態度ではないか、こういうことで自分で自分の意思を現わしているのではないか、この点をお伺いしておきます。
  179. 砂間一良

    ○砂間一良君 私は今日もしソ連地区に未引揚者が残留しておるとするならば、その引揚げを一日も早く完了するためには、この引揚げを反ソ反共宣伝の材料にするような、そういう考え方では、この引揚げ問題の円滑なる、順調なる解決は困難ではないかというように考えているのであります。
  180. 林百郎

    ○林(百)委員 この砂間君の趣旨弁明を読んでみますと、こういうようにとれる。この問題の第一の責任者は……
  181. 松木弘

    松木委員長 林君、趣旨弁明は済んだから……
  182. 林百郎

    ○林(百)委員 関連で質問をいたしたい。責任所在がどこにあるかということが、砂間君の懲罰と重大な問題を持つということが、笹森委員からも言われておりますから、私は同趣旨として砂間君に答弁を求めているわけであります。そこで砂間君の賛成討論を見ますと、問題の第一の責任者は日本政府でなければならないと思うのであります。このあとを読んで行きますと先ほどのような経過でありますが、このことはわれわれの解釈するところによると、こういうようにとれるのですが、この点について砂間君の意見を第一に聞きたい。  第一には、ただ帰せ帰せというけれども、そのことについてまず日本政府が、戦争を起した責任日本政府にあるという根本的な責任感に立たなければ、国際的な好感が持てないのである。何か戦争したことも忘れ、抑留された根本原因も忘れてしまつて、ただ帰せ帰せ、帰すのが遅れているのはどこかの国の責任のようなことを言つたら、国際的感情から言つても悪い。それならまずわれわれは戦争したことの責任と抑留されたことの責任を第一に痛感して、それから国際的に懇請するならすることが必要だ。  第二としては、ことに引揚げの技術的な問題につきましても、たとえばこれを反ソ反共の材料にして、むしろ日本政府側に責任があるような場合であつても、たとえば配船問題にしても、あるいはナホトカにたくさんの抑留者がいるにもかかわらず船が行かないとか、あるいは……(「やつておる」と呼び、その他発言する者あり)ちよつと待つてください。そういうことを聞いておるわけなんだから、もしそのことがありとすれば、日本政府は第一にこの責任感じなければならない。  第三としては、連合国に対する責任というものは、日本国民としてはとることができない。敗戦国の現状として、われわれはあくまでも日本政府を通じて、連合国に対して懇請なりあるいは請願なりをするよりほか道がない。そういう意味で、まず第一にこの問題については、日本政府責任ありという立場に立つて、国際的に日本政府を通じて懇請するなり、請願するなりすべきであるという意味だと思うのです。だから私はそういう意味で、この問題の第一の責任者は日本政府だ、こういう意味で第一という言葉を砂間君が言つていると思いますが、それについての砂間君のお答えを願いたいと思います。
  183. 松木弘

    松木委員長 林君は質問でなくて、砂間君に答弁させる示唆を與えておるのです。     〔「示唆じやない」「その通り」と呼び、その他発言する者あり〕
  184. 砂間一良

    ○砂間一良君 私が責任ということを申したので、それがたいへん問題になつておるようでありますが、この責任と言うたことは、終戦後の、なかんずく現在の政府が、侵略戦争を起したその責任までも負わなければならぬというふうな意味で申したのではないのでありまして、今こういうような引揚げのことが重大な問題になつている、この問題の先頭に立つて、一番積極的にやつて行くのは、これは政府でありますから、この政府がもつと熱意を持つて、積極的に努力して行かなければならぬということを、第一にその点を強調したわけであります。  それからその次には、連合国に残つている未帰還者引揚げを促進するにつきましても、かつて戦争を始めたような、そういうようなことも忘れてしまつて、そしてソ連が悪いのだとか、どこの国が悪いのだとか、なぜ帰さぬのだとかいうふうに、ただ連合国、あるいは連合国に加盟しておるある国を責めるような、そういう態度ではうまく行かないのじやないか……。(「何を言うか」と呼び、その他発言する者あり)というふうな意味言つておるのであります。
  185. 中川俊思

    中川委員 砂間君にちよつと御注意申し上げておきますが、先ほどポツダム宣言は連合各国の協定によつて成立したものだというような御発言があつたようでありますが、一九四五年の七月二十六日にポツダムで結びましたところの協定、この宣言は、当時はソ連は参加していなかつたのです。この点はひとつ十分に頭に置いていただきたい。  それから、さらに先ほど福田君の質問に対して、砂間君はこういうことを明言されておる、連合国だけを責めるのはいけない、かように明言されておる。むろんわれわれは連合国だけを責めようとは思つていない。しかしながら、先ほどどなたかの質問にありましたように、ポツダム宣言の第九條には、明らかに、武装解除された日本国軍隊は、すみやかに本国に帰還せしめて家族につかしめるという一項目がある、そこでこのポツダム宣言というものは、私はおそらく国際法にも比すベき問題だろうと思うのです。この国際法にも比すべき問題を、戦勝国は国際法を破つてもよいが、戦敗国は国際法はあくまでも守らなければいけない、この点なんです。今問題になつておりますところの、日本政府責任だというこの点につきましては、今の第九條の問題、ポツダム宣言の問題を十分に考慮に入れていただいて、あなたの見解を述べていただきたい、このことを特にあなたに御注意申し上げておきます。
  186. 砂間一良

    ○砂間一良君 私は国際協定や国際條約を遵守するということにつきましては、戦勝国でありましようとも、戦敗国でありましようとも、世界のどこの国も厳格に守つて行かなければいけないと考えております。しかしこの引揚げの問題について、ソ連だけを今日責めるというふうな考え方が……。(「弁明するからだ」と呼び、その他発言する者あり)弁明するつもりはありません。何か少し納得できないものがあるのであります。何となれば、未帰還者が残留しておりますのは、ソ連地区にもあるかもしれませんが、他の方にもあるのであります。ですからどこの国に対しましても、いやしくも残留者のおるところの関係国に対しましては、ひとしく帰還促進について懇請し、一日も早く引揚げることをお願いするのがあたりまえではないか、こういうふうに考えておるわけであります。
  187. 中川俊思

    中川委員 そこで、なるほど砂間君のお説のごとく、私どもソ連だけを責めるべきではありません。もし現在でも、たとえばアメリカの占領地域内、あるいはイギリスの占領地域内に残留しておるとするならば、われわれはこのアメリカに対してもまたイギリスに対しても、十分にこれを懇請しなければならない。しかしながら御承知のごとく、終戦後アメリカの占領地域、イギリスの占領地域からは、まずほとんど帰つて来ておると私は考えております。但し一部の例外はあるかもしれません。たとえばジャングルの中に逃げ込んでいてわからなかつたというようなことはあるかもしれないが、これは国民のひとしく認めておるところだろうと思う。しかしながら、御承知のごとく今日では、ただソ連地区にまだ何十万というものが残つておるということは、これはむろんあなたの昨日の御演説通りはつきりした数字はわかつていない、日本政府発表したのと、ソ連政府発表したのとは違つている。しかしながら、何十万という遺家族が、風のたより、いろいろのたよりをもつてソ連地区に残つておるということを聞いておることは事実です。遺家族が今日一日も早くソ連地区から帰してもらいたいという熱願を持つておることは事実なんです、この事実を無視することはできない。そこで私どもとしましては、現在ソ連に対して宣戦を布告することもできない。また抗弁することもできない。そうするならば、徹夜してでもどうか帰してくださいという懇請の道を講ずるよりほかないじやありませんか、これ以外にないじやありませんか、日本国民としては……
  188. 砂間一良

    ○砂間一良君 私はソ連政府に対して懇請することが、悪いというふうなことは一言も申したつもりはないのであります。(「さつき言つたよ」と呼び、その他発言する者あり)もしソ連地区残留者がおるならば、連合国を通じてなり、あるいはソビエト代表部を通じてなり、帰還が一日も早く完了するように懇請することはけつこうだと思います。しかし何十万いるというふうにおつしやられますけれども、そこでこの数のことが問題になつて来るわけであります。その数がはつきりしない、だからまず第一に数を明らかにしていただきたい、数の点をまずはつきりするように政府は努力すべきであるということを申しておるのでありまして、連合国に懇請するのはいけないとか、悪いとかいうようなことを申しておるのではないのであります。
  189. 中川俊思

    中川委員 そこで関連しておりますから、一、二点お伺いをして、私の質問を終りたいと思いますが、最後にあなたの御演説の中に「またそのほかに国民愛の運動とか何とか、いろいろなことを言うておりますけれども、実際のやり方はちつとも愛の運動でも何でもない。」こういうことが明記されておる。この問題について現在のあなたは日本国民がこれだけの熱涙を振つてつておる運動を、愛の運動とお考えにならないか、共産のみやつておることが愛の運動とお考えになるかどうか。  それからもう一つ引揚者に対する監視について、舞鶴の援護局には大阪警察学校の生徒が何百人か動員されておるということの御発言があるようでありますが、これはただ現在の政府責任とあなたはお考えになるか。共産党がこの引揚者をめぐつてなしたところの行動に対しては、いささかの責任もお持ちにならないかどうか。この点は私はこまかく申し上げますと時間がかかりますから、省略いたしますが、国民がひとしく認めておるところであり、また新聞記者あたりが舞鶴に参りまして報道しておりますことも、これが歪曲されておるならば別でありますが、ある程度これは私どもも信じておる。また私も親しく舞鶴に行つて、この実情を見ておる。その私が見ておること、また各新聞社、放送局等の見ておるところを観察いたしまても、私はひとりこれが政府責任だとは考えていない。共産党に、そこに大きな責任があると思うが、この点について砂間君はどういうふうにお考えになるか。この二点をお尋ねいたします。
  190. 砂間一良

    ○砂間一良君 私は国民ほんとうにあたたかい心を持つて、愛の運動をして、引揚者を迎えるのであるならば、あの寒いシベリヤに長いこといて、そうしてやつとなつかしい故国へ帰つて参りまして、舞鶴に上陸したときに、あの鉄條網を張つたり、それから監視つきで部屋へ隔離したりするというふうなことはどうかと思うのです。もつとそれがほんとうにあたたかい愛の運動であるならば、あそこに親兄弟でも自由に入つ行つて、そうしてあたたかく出迎えてやる、また就職の問題なんかにしましても、本人が帰つて来る直前になつて、あつちこつちの工場で、どんどん首を切つて行くというふうなことは、口で定着援護だとか、あるいは就職だとかいうふうなことをやかましく言つておりますけれども、決してその言葉を実行しているというふうには受取れないのであります。ほんとう国民全体が、ひとしくあたたかい愛の心をもつて迎えるのであるならば、もつとあたたかい出迎えのやり方、そうして定着援護についてもあたたかいやり方があるだろうと考えております。そういうふうな点について、愛の運動とか何とか言うておりますけれども、実際になしておるところは、必ずしもその言葉通りには行われていないというふうに感じておるのであります。  それからあとの点につきまして、その問題が政府責任であるかどうかということにつきましては、やはりこういう運動を指導して行くのは、政府が指導して行くべきことだと思います。その点につきましては、引揚げの問題について、ほんとうにあたたかい思いやりがかりそめにも薄いとするならば、政府はもつと積極的に、そういう点も指導して行つてもらいたいというのが、私の趣旨であります。
  191. 中川俊思

    中川委員 私はこれ以上砂間君に残酷なる質問を続ける勇気を持ちません。砂間君の答弁はまつたく独善である、支離滅裂であるということを私はつけ加えておく。ことに第五国会においては、共産党から立花君の暴行事件の問題を出し、しかもまた本国会において、同じく共産党から、かような無責任なことを放言して懲罰事犯を起したことにつきましては、共産党は十分再思三省していただきたいということを、特に御注意申し上げます。これで私の質問を終ります。
  192. 大森玉木

    大森委員 議事進行ついて。先ほどから時間も四時間にわたつて、これ以上やることは、共産党の言われるつるし上げということになります。だから証人に対しましてもお気の毒であり、さらにまた先ほどからの各委員質問において、大体私ははつきりいたしたいと思うのであります。でありますから、この程度においてここに証人の質疑を打切るという動議を私は提出いたします。     〔「賛成」「そんな乱暴な話があるか」と呼び、その他発言する者多し〕
  193. 松木弘

    松木委員長 ちよつと速記をやめて。     〔速記中止〕
  194. 松木弘

    松木委員長 速記を始めて。
  195. 大森玉木

    大森委員 ただいまの質疑打切りの動議は、一応撤回いたします。
  196. 松木弘

    松木委員長 ただいまの、質疑打切りの動議を撤回することに御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  197. 松木弘

    松木委員長 御異議なしと認めます。それでは撤回に決定いたしました。大西君。
  198. 大西正男

    大西(正)委員 簡単に砂間君に御質問いたします。  まず第一は、先ほど来問題になつている点で、終戦後の日本政府——引揚げの問題は終戦後引続き今日まで問題になつているのでありまして、政府というのは、あえて吉田内閣の政府のみではなくして、社会党委員長が組織いたしました政府もまた終戦後の政府の中に入るのでありますが、砂間君は、この政府と戦争勃発前の政府、ないしは戦争を支持して参りましたいわゆる帝国主義的なる政府とは、違つているという御返答であつたと了解をいたしました。ところがわれわれは、日本語を解釈いたします場合には、やはり日本人としての語感によつて解釈いたさなければならないのであります。私は実は同じだという返答があるかもわからないというふうに憶測いたしておつたのであります。と申しますのは、共産党の方々から見るならば、終戦後の日本も五十歩百歩で同じだ、あるいは共産党の世界観、階級観からすれば、戦前も戦後も同じだという観点に立つての御議論だというふうに、解釈する余地があると考えておつたのであります。しかるに違うのだという御返答があつた。ところが私どもは、昨日の御議論を素直に、虚心に拝聴しても、また速記録を拝見いたしましても、違うという御返答があるにもかかわらず、同じだというような印象を與えているということを、語感から汲みとらざるを得ないのであります。(「その通り」と呼ぶ者あり)はたしてしかりといたしましたならば——そのような言葉を述べられたことがあなたの過失であるのか、あるいは為にするための作為的なものであるかどうかはお尋ねをいたしませんが、同じであるという印象を與えたということに、あざむくことのできない事実である、かように解釈いたす次第であります。この点どういうお考えであるかを承りたい。  次に速記録によりますると「シベリヤ地区や、ソ連地区や、満州地区の場合には、この数字つくり方が違つておるのであります。たとえば一九四九年」云々となつておりまして「ソ連地区引揚総数は」これこれということになつております。そうして「この間二十九万三千人というものは、つまり米ソ協定前に帰つて来ておるということが確認されるわけであります。また今年の九月二十三日に、大連地区から高砂丸でこれこれ、山澄丸でこれこれ帰つて来ておりますということに続きまして、「今日残留者があるのは満州地区かソ連地区だけでありますが、ところがこの数字は、満州地区から帰つて来たことにはなつておりません。それで政府はどういう苦しい数字の操作をやつておるかといいますと、この二千八百六十一人を、大連地区の基本数字に加えて、同じ数をまた差引いて、そうして残はゼロというインチキなやり方をやつておるのであります。これでは何人引揚げて来たつて、基本数をふやして行つて、その残数はいつも同じということにしますならば、これではいつまでもたくさんの人が残つておるということになるのであります。」ということが明白に現われておるのであります。ところで私のお尋ねいたしたい点は、大連地区はソ連地区に入るものであるかどうかということであります。そうしてもし大連地区がソ連地区に入らないものであるとするならば、この大連地区から帰つて参りました者も、地区は違うのだが、ソ連地区から引揚げて来たものであるかどうかということであります。と申しますのは、この大連地区から帰つて来た者が二千数百名になつているのであつて、大連地区の基本数には何らの変化がない、すなわち政府発表には変化がないのであります。この言葉を最初の言葉と彼此比べまするならば、砂間君の言わんといたしますところは、少くともこの速記録から、また昨日私どもが現に拝聴いたしましたところからの印象を申し上げまするならば、シベリヤ地区やソ連地区引揚げがどうなつているか、その基本数がどうなつているかということが問題になつているのでありまして、そうしてこれによつて、あたかもソ連地区における引揚げをあのようにやつて来ても、政府の基本数には何らの変化がないということを出したい、あるいは出しているかのごとき印象をわれわれに與えているのであります。もししかりとするならば、この点は明らかに政府を不当に誹謗するものであり、議員としてかようなことは申すべきことではないと私は存ずるのであります。この点につきましてお伺いいたしたいのであります。
  199. 砂間一良

    ○砂間一良君 きのうの私の討論内容におきまして、非常に表現が拙劣で言い足りなかつた点があつたために、いろいろ誤解を招いたことはまことに遺憾に思つております。  ただいまの二つの御質問についてでありますが、まず第一の御質問について申し上げますならば、いわゆる政府責任という問題でありますが、これが侵略戦争を始めた政府と、現在の政府と同じものであるというふうには考えておらないということは、先ほど来申しあげた通りであります。もし現在の政府が、あの侵略戦争を始めた政府と同じ責任を負わなければならない政府であるならば、今の政府もあの国際軍事法廷に引出されて、やはり戦犯として裁きを受けなければならないことになるわけでございますが、そんなことは常識から考えましてもあり得ないことでありまして、従つてこの侵略戦争を始めた政府と、現在の政府とは明らかに違つておるということは、これは先ほど来申して来ておる通りであります。そこで現在の政府責任ということについてでありますが、これは今日引揚げ問題ということが大きな重大関心事となつておる。この大きな問題を解決するについては、政府が第一に、積極的に熱意をもつて、この問題を取上げて行かなければならぬということを、私は強調したかつたのでありますが、その間多少論理の飛躍がありまして、この政府責任という抽象的な言葉のために、この侵略戦争を始めた政府か、あるいは今日の政府かということも、はつきりいたしませんで、いろいろ誤解を招いたということにつきましては、私の言葉が言い足りなかつたということを認めます。  それから第二の点のいわゆる数の問題についてでございますが、大連地区はソ連地区に入るかどうかという御質問でありましたが、大連地区はソ連地区に入つております、これは外務省から私どもに配付されたこの表を見ましても、明らかあります。しかし今日未帰還残留者が残つておりますのは、満州地区とソ連地区だけでありまして、その他の方面は全部残留者ゼロということになつております。このソ連地区の中でも、残留者が現在残つておりますのは、千島、樺太、それからシベリヤ地区ということになつておりまして、大連と北鮮とは、残留者ゼロということになつておるのであります。もしこの政府発表した資料の数字が正しいといたしますならば、残数ゼロとなつておるところの大連から、二千何百人も帰つて来るということがおかしいではないか、これは常識でも考えられるわけであります。従つて大連と満州というのは非常に近接しておりますから、満州地区には残留者が六万三百十二人も残つておるということになつておりますので、ここらへんあたりから帰つて来たのじやないかとも想像が成立つわけであします。ところがこの九月二十三日に、大連地区から高砂丸で千百二十七人、十月三日山澄丸で千七百三十四人帰つて来たのでありますが、この両方合せて二千八百六十一人というものを、満州地区の残留者、あるいはシベリヤや千島、樺太の残留者引揚げというふうなことには含めませんで、残数ゼロになつておる。残留者は一人もおらないと言つて政府が今までそう言つて来たところの、この大連地区の引揚対象基本数をふやして、大連地区の引揚対象基本数の中に二千八百六十一というものを加えて、そうしてその同じ数字を引いて、そうしてまた残数ゼロになるという、こういう操作のやり方に対しましては、何か私どもは割り切れぬものを感じておるのでございます。この点につきまして引揚特別委員会におきまして、政府委員にいろいろ御質問をしたのでありますが、最後まで納得の行くような御答弁は得られなかつたのであります。そういう点につきましても、私どもはこの数字の点についていろいろ疑問も持つておりますから、この引揚げ問題に関連して、今日国民焦慮の絶頂に達しておるこの数字の問題について、もう少し正確な数字発表していただきたいというのが、きのう私が本会議で述べた討論趣旨であります。
  200. 大西弘

    大西委員 私のお尋ねいたしました第一点につきましては、むしろ何らの答えがなかつたというふうに解釈をしてもいいと思います。  また第二の点につきましては種々御答弁がございましたが、しかしながらシベリヤ地区その他大連地区等の基本数字につきましては、こういうことがあるということを、いわゆる速記録にありますそのままを引用して、あたかもシベリヤ地区、その他の問題についても、幾ら帰つて来ても数が減らないというそういつた印象を與えることは、まことにけしからぬと私は思うのでございます。  最後に本日御弁明の中に、昨日の討論におきまして、暴露的演説をやつてそうして決議案にけちをつけるという印象を與えたということを、きよう是認なさいましたが、その通りと拝承してよろしゆうございますか。
  201. 砂間一良

    ○砂間一良君 今のお言葉はたいへん重要なのでありますが、これはきようの速記録を調べていただかなければわかりませんが、私はそういう意味で申したのではなかつたのであります。私が先ほど来申し上げたのは、きのうの私の賛成討論の中で、そしてあの決議案に対して、暴露的な演説をやつたり、あるいはけちをつけようというふうな意思は毛頭なかつたということを申し上げたのでありまして、そういう印象を與えたかもしれないということを私が確認した覚えは少しもないのであります。もしそういうふうな印象を與えたとしますならば、私はきようの速記録を調べました上で、ひとつ訂正していただきたいと思つております。
  202. 松木弘

  203. 島田末信

    島田委員 事犯処理の参考のために、ごく簡単に御質問申し上げます。  砂間君の趣旨弁明のうちでしまいの方でありますが、共産党を除くこの議場の空気、諸君のようなそういう反ソ、反共的な考えを持つておるからして引揚げが遅れておる、引揚げ遅延の最大の原因はここにあるのじやないか。共産党のようなそういうまじめな態度で……というふうなことがありますが、昨日の議場でこういう懲罰動議が出まして、その結果、いろいろ砂間君から言わせるならば、ただいま申し上げたような反ソ、反共的な言動があつた、こう解釈することは御自由であります。ところが引揚げが遅れておるという事実は、過去の嚴然たる事実として砂間君も認めておるのであります。私はきのうの言動以後において引揚げが遅れるということならば、多少うなずけるのでありますが、過去の引揚げが遅れておることは、反ソ、反共に原因しておるということは断定しておるそのお気持が、実は判断に苦しむところであります。そこで反共ということは、思想の自由上あり得るかもしれないと思いますが、反ソということは断じてあり得ないと堅く信じて参つたのであります。ところが砂間君はここに歴然と反ソ、反共というものを揚げて、過去の引揚げが送れたということをその原因にされておりますが、この点砂間君の反ソの事実はどういうことであるかということを、一応御説明願いたいと思います。
  204. 砂間一良

    ○砂間一良君 今の御質問はたいへんむずかしい御質問でありまして、個々の具体的な事実を明示せよということでありますが、これはこの問題、この問題というふうに明示するということは困難であります。しかし私はこれまででも、この引揚げ問題に関連いたしまして、反ソ、反共的な言動と解されるようなことが、日本国民の一部にあるような印象を受けていたということを——これは私の主観的な感じかもしれませんが、私はそういうふうに感じて参りました。たとえば十一月九日のソビエト代表部に対する陳情の問題についてでありますが、このときにもソビエト大使館のコテリニコフ最高政治顧問主席補佐官は、こういうようなことを申しておるのであります。現在誠意を持つて引揚げを続けておるのになぜ心配するのか、また政府から正式に発表した九万五千名という数字を信用してくれないのは残念だ。これはすべて反ソ的な意図を持つた行動だと解釈せざるを得ないが、というような言葉も申しておりますが、この陳情ということが普通に行われるならともかく、あのソビエト代表部の門前にすわり込みまして、反ソデモであるというふうに解釈されるかもしれないような態度のあつたことも、一つの具体的な例になるのではないかと思うのであります。ここに具体的に実例をあげて列挙せよとおつしやられても、今ここですぐ申し上げることは困難でありますが、少くとも私は自分の主観的な考えからしますと、そういうふうな感じをこの引揚問題に関連して受けて来たということは私の考えであります。
  205. 島田末信

    島田委員 終戦以来ポツダム宣言を忠実に遵守しており、国民あげて連合国を尊重しながら国家の再建に邁進して参つたと信ずるのであります。しかるに事実の立証もできない、はなはだあいまいな考え方をもつて反ソと言うがごとき、国民を刺激するような、あるいは国際国間を刺激するような言葉を使つて、しかもまじめに論ぜらるべき引揚促進の賛成演説において、懲罰動議に対する趣旨弁明の一端として、不用意にこういう言葉を用いるということは、私ははなはだ不謹慎であると考えるのであります。時間がありませんから私は詳しいことを申し上げませんが総合された砂間君の言動には、常に言行一致は共産党のみであるということを高々と掲げながら、言行に不一致があるということを認めざるを得ないのであります。私はこれをもつて終ります。
  206. 佐々木更三

    佐々木(更)委員 大分時間が問題になつておるようですからむろん私あまり長くできませんが、時間を制限するときは、各委員平等にこれを制限しなければならぬというふうにできておると思うのであります。それなのに與党諸君は自分の方だけはだらだらやりまして、われわれだけを制限しようとすることは、衆議院議事規則に反すると思いますので、その点は一つの抗議を提出する次第であります。  そこで私はいろいろな角度からいろいろな御質問が出ておりますが、要するにこの事犯の処理にあたりまして、私たちの取扱うべき範囲は、ほとんど椎熊君の提出いたしました理由書の範囲に限定さるべきものと思うのであります。  そこで椎熊君の懲罰動議理由は一体何かと申しますと、結局におきまして、この際私は不穏当なる言助を弄して、全国民熱願の同胞引揚げ決議案に対して、一つ汚点を残したる砂間君の行動懲罰する。こういうことに要約されておるのであります。そこでそれならば何が不穏当なる言動かと申しますと、これは椎熊君のこの理由書ではあまり判明いたしません。今まで明らかにされたところによりますれば、大体においてこの事犯の主観点に、いわゆる引揚促決議案に対して、全会一致でやつたところの趣旨に反して演説をしたという、いわゆる議会道義に違反したということに結局帰着するのではないかと思います。そこで私は砂間君にお聞きしたいのでありますが、砂間君がこの決議案説明するにあたりまして、委員会において、あるいは運営委員会におきまして、どういう内定をしておつたかということが、きわめて重要であろうかと存ずるのであります。先ほどから砂間君の御説明を聞きますと、この決議案が出るときにあたりまして、砂間君は自分の独自の決議案を出そうとした。ところが中山委員長はこれに対しまして、決議案趣旨からいたしまして、全会一致で行きたいからこれに賛成してくれることを要望する。砂間君はこれに対しまして、自分の決議案内容が本会議、つまり決議案討論の際に鮮明されるならば、これに賛成するということにつきまして、中山委員長はこれは約束ではありません。ですけれどもこれに対して努力するということを答えたというのであります。そこで中山委員長と砂間君のとりきめというものは、たとえ正式な決議ではなかろうけれども、やはり一種の協約とみるべきものと思うのでございます。この協約に基いて中山委員長は砂間君とともに運営委員会に出まして、これに擁力したという話であります。先ほどの私の聞き違いがわかりませんけれども、砂間君の御答弁では、これに対しまして大体運営委員会も了承したかのごとく受取れる節があるのでございますが、これを簡単に、明確に懲罰だけを明らかにしていただきたいと思うのでございます。
  207. 砂間一良

    ○砂間一良君 委員会の経緯につきましては、先ほど私簡単に御説明申し上げましたが、先ほども読み上げましたような引揚促進、並びに日本政府責任ある未引揚者発表を促すの決議案というのを、去る十一月二十四、五日ごろ提出いたしてありまして、これは成規の手続をとつて提出してあつたのであります。これが二十九日の引揚委員会にかかつたのであります。ところがこの日の委員会におきましては、開会劈頭委員長が別の決議案を持つて来られまして、そうしてその決議案をやはり共同で提出したいから、これに賛成してもらえないかという御提案があつたのであります。私その中山委員長決議案内容を読んで見ますと、大きな目的におきましては一致しておりますけれども、個々の内容につきましては、力の入れるところが多少違つておる。私は自分の提出した決議案をぜひ採択してもらいたいと思つておりましたので、これを提出した順序に従つて委員会で審議していただきたい。よつて私の決議案を先議していただきたいということを申したのでありますが、それが委員会におきましては、両案一括して討議しようじやないかということになりました。そこで私はこの正確な数を発表してもらいたいという点を相当重点にしておつたものですから、中山委員長の案に即時自分の決議案を撤回して賛成する気持はなかつた。あくまで自分のこの案を固執したのであります。しかし皆さんの御意見が、こういう決議案というものは、ぜひ全会一致して出したいから、砂間委員もまげて中山案に賛成してもらえないかという御意見がありました。これは過去において、やはり共同提案でいつもやつて来たし、また衆参両院の決議案にいつも同じ内容を盛つて来た。そういう慣例からして、二つの決議案を出すということよりも、中山案に、一致して一つにやつてもらえないかという御意見がありましたので、それならば本会議における中山案に対する賛成討論の中で、私の意のあるところを十分表現できるような機会を與えていただきたい。そういう希望條件が貫徹されるならば、私はあえて自分の提出した決議案を固執するものではない、撤回いたしまして中山案に賛成してもいいというふうに意見を述べたのであります。それにつきましては中山委員長は、砂間委員のただいまの希望條件が貫徹するように、私も運営委員会、その他において大いにひとつ努力しましようというふうな御言明もあつたのであります。先ほども申しましたように、この間のいきさつにつきましては、十一月二十九日の会議録をお取調べくださいまして、なお中山委員長をこの席上にお呼びいただきまして、そうしてその間のいきさつをお尋ねくださるならば、さらに鮮明に判明することと思うのであります。そういうふうないきさつがありまして、きのうの本会議における私の討論なつたわけでありますが、私は中山委員長のあの決議案の大きな趣旨、その大綱につきましては、少しも違つた見解は持つておらぬのであります。未帰還者引揚促進、あるいは数の正確な発表、帰つて来た人たちの生活援護、留守家族の援護というようなことにつきましては、全部同じであります。ですから賛成討論の当初におきまして、本決議案趣旨には、日本共産党を代表して賛成意見を述べるということを申しておるのであります。そうしてまたその内容におきましても、賛成趣旨を述べて、それが数の問題に若干こだわりまして、先ほど来いろいろ御質問があるようなことになつたのでありますが、それは私の表現が拙劣である、あるいは足りなかつたために誤解を招いたのでありまして、あの決議案反対するような意見は、少しも述べておらないと自分では考えておる次第であります。この点につきましては、他の議員の皆さんも、たとえば並木さんであるとか、あるいは松谷さんであるとか、堤さんなんかにいたしましても、政府の努力の足りないという点をそれぞれ強調をせられておられるのでありまして、そうして太いに決議案趣旨を貫徹するように、政府も努力してもらいたいということを言つておるのであります。多少意見を強調し、あるいは軽く扱うという強弱の点はありましても、私の趣旨とちつとも、ほかの議員諸君発言も違つておらぬのであります。ただ数の点などについて多少私が具体的に強調し過ぎたというきらいはあるかもしれませんが、きのうの討論内容というものは、あの決議案趣旨には、少しも私は反対するつもりはなかつたし、また反対してはおらなかつたと思うのであります。
  208. 佐々木更三

    佐々木(更)委員 そういたしますと、中山委員長があなたに対して、あなたのその案の内容を、本会議討論の際に述べられるような努力をしてくれる、こういう御約束をしたときにおきましては、むろんこれは正式な委員会であろうかと思うのでございますが、その場合に他の委員諸君から、そういうことはだめだ、こういうような反対があつたでしようか。それともみな黙つてつて、全委員会がそれに賛成を表したような形になつたのでしようか。その間のいきさつはどうでしようか。
  209. 砂間一良

    ○砂間一良君 私の賛成討論を本会議でやるということにつきましては、委員会委員の方々の中にこういう意見もありました。たとえばここに玉木委員がおられますが、玉木委員のごときは、砂間委員発言がもしこの中山委員長決議案趣旨に反するようなことであるならば、それはぐあいが悪いから困るというふうな御注意がありました。しかし私は中山委員長決議案に対して反対する気持は少しも持つておりませんでしたので、その御心配はない。私はこの趣旨に大きな点においては賛成であるから、賛成討論を述ベるんだというので、その御了解を得まして、委員会の皆さんもそれならよかろうということで、御了承くださつたような次第であります。
  210. 佐々木更三

    佐々木(更)委員 私の聞いているのは、あなたが中山委員長に対しまして、中山委員長とあなたの案とは大体の趣旨においては同一ではあるけれども内容においては少し違う。そこで自分はどうしても自分の独自の案を出したいんだが、しかし賛成する以上は、自分の独自の案の内容を本会議において討論の際述べたい。こういうことをあなたは希望した。中山委員長はそれではそういうふうに努力をすると約束をされた。その内容から申しますと、本会議におけるあなたの討論の中では、当然あなたの独自の案が出て来るということを中山委員長は予想しているはずだ。そういう委員会のとりきめの場合に、他の委員からあなたの案のようなものを並べられては困るということを述べたかどうか聞いているのです。
  211. 砂間一良

    ○砂間一良君 私の案の内容というようなことを述べられては困るという御発言はありませんでした。
  212. 佐々木更三

    佐々木(更)委員 そのことにつきまして、先ほど私の聞き違いかもしれません。砂間委員は中山委員長とともに、そのために運営委員会に参りまして、委員外発言といたしまして自分の意向を伝えた。これは私の聞き違いかどうかわかりませんが、運営委員会に対する中山委員長の努力というものは、あるいはあなたの働きかけというものは、具体的にどうなつたのでしよう。何もされなかつた。それだけの話ですか。
  213. 砂間一良

    ○砂間一良君 一昨日の運営委員会に私出席する機会を得ませんでした。党の運営委員が帰つて来ての報告によりますと、引揚げ問題についての決議案は、明日に延期になつたということを聞きましたので、実は一昨日も私は中山委員長を院内の控室、本会議場などぐるぐる探しまわつたのでありますが、お見えになりませんので、それで秘書にあした——つまりきのうでありますが、きのうもし午前中に中山委員長が見えたならば、きよう運営委員会に出て、そうしてきようの委員会の申合せといいますか、その約束を果して、私の発言ができるように特にあつせんしてもらいたいということを依頼するように申しておきまして、私はきのう午前中ちよつとほかに用事がありましたので、遅れて参つたのであります。遅れて参つたところが、ちようど運営委員会において今引揚げ決議案のことが問題になつておるからということを聞きましたので、すぐ運営委員会に参りました。そうしたらちようど中山委員長の御発言の最中でありまして、それが終つたあとで、私は委員外発言を求めまして、委員長の許可を得て、委員会におけるいきさつを一応御説明申し上げまして、特に私の本会議における発言が得られるように皆さんの御了解を得べく努力したわけであります。
  214. 佐々木更三

    佐々木(更)委員 あなたの発言を得られるように、単にあなたが本会議におきまして賛成討論をするということ、それだけに努力したのでございますか、それともあなたの持つておる独自の内容を、本会議で述べることを運営委員会に対して努力したのか、その点はどうですか。
  215. 砂間一良

    ○砂間一良君 私が運営委員会に参つたときには、正式の運営委員会でもありませんで、懇談会の形をとつておりましたので速記は中止しておつたようであります。従つてきのう私が運営委員会発言した内容については、記録の証拠は残つておらぬと思いますが、しかし私が運営委員会で申し上げた点は、委員会においても二つの決議案が出て問題になつた、私の提出した決議案は中山案とはその大綱においては一致しておるけれども、個々の点の内容については違つておるということを御説明申し上げまして、違つておるからして本会議において賛成討論の中で、その趣旨を述べられるような機会を得させてもらいたいということをお願いしたわけであります。
  216. 林百郎

    ○林(百)委員 まとめてお聞きしたいと思いますが、第一に椎熊議員懲罰動議内容は、私どもとしては腹の中では反対で、言葉の上では賛成しておるのだということを言つておるのであります。これは椎熊議員懲罰動議の大きな理由になつておると思うのであります。彼の言を聞きますと、「事実は日本政府責任を追及したり、そうして腹の中ではこれに反対するという事実が、ここに明らかに表明せられておる。」ということを言つておるのであります。なおもう一つその意味のことを言つております。「その内容は、引揚げ促進賛成しておるとは私どもは受取れない。(「その通り」拍手)むしろ反対意見を述べておるようであります。」というのです。腹の中では反対で、表は賛成だということが、懲罰理由の第一、次は政府責任を追究したということであります。政府責任追究は、これは並木議員も各議員言つておるのでありますが、私の方としては問題はない。そうすると椎熊議員懲罰理由は、腹の中反対だということが大きな理由になると思うのでありますが、この点はどういうふうであつたかということが一つ。  それから第二としては、あなたの一身上の弁明の中で、「共産党を除くこの議場の空気、諸君のようなそういう反ソ、反共的の考えを持つておるからして引揚げが遅れておる。引揚げ遅延の最大の原因は、そこにあるのじやないか。」それから佐々木君から問題になつた「私は引揚げの問題につきましては、共産党は最も熱心であつて、そうして口で言うことと実際に行つていることと、言行一致しているのは共産党だけであると思つておるくらいであります。」と言つておりますが、このことは椎熊君の懲罰動議の中で、われわれは日本の民主化のためかくのごとき者どもが」——これは共産党のことを言つておるようでありますが、「議会に跋扈するなどということは、日本の前途のために嘆かわしい。(拍手)彼らは議会の行動において、あるいは運営委員会行動において、常に侵略、戦術、虚偽、欺瞞、あらゆる術策を弄して、この国会を彼らの宣伝の具に供せんとする日ごろの行動は、まさに天人ともに許さざるところである」というような非常に誇張した表現がなされておる。これに対する反駁の意味で言われたことが一つ。  それから反ソということをなぜ一身上の弁明として言つたか、それでさらに椎熊議員——あなたの反ソと言われた理由としては、「全国から集まりましたる遺族の関係者の代表者が、ソビエトの大使館に多数行きまして、代表に面会を求めたときに、何と言つておる。多数の人たちにあの門前に一晝夜をすわり明して面会を求めておる。しかるに彼らは、多数をもつて面会を強要することは反ソ的であるからということで、面会を許さなかつたという。(「彼らとはだれだ」と呼ぶ者あり)しかるに共産党一味の者どもは、組合運動などをやる場合に、いつでも多数をもつて強要しておる事実を何と見る。(「彼らとはだれだ」と呼び、その他発言する者あり)私の言う彼らとは、共産主義一味の者どものことを言うのであります。」すなわちこの共産主義一味の者の中には、明らかにソ連代表も含まれて言つておる、こういう意味で、君たちのこういう表現を使うような反ソ的な態度では引揚げが遅れる、という意味で言つたと思いますが、この点はどうかという点が第二点。要するに椎熊君の発言の中に反ソ的なところがあり、しかも後になつて、砂間君の一身上の弁明の際に、こういう表現を使わざるを得ないような挑発的な言葉があつたということ、これがあなたの一身上の弁明の中に、先ほど佐々木委員や各委員から言われたような表現が使われたのだと思いますが、この点はどうかという点。  第三点といたしましては、例の責任問題でありますけれども日本国民としてはこの引揚げの問題についての責任を求めるには、やはり日本政府に求めるべきである。対外的な連合国との関係は別でありますが、国民としては日本政府に求めるのが当然であるという意味で、引揚げ促進の問題は、当然日本政府責任を持つべきであるということをあなたは言われたと思いますが、この点について聞きたいのであります。  もう一度整理します。第一には腹の中と表現が違うという問題であるが、腹の中はどうだつたか、これを第一に聞きたい。第二の点は、一身上の弁明の中で強い表現が使われておるというが、この強い表現というのは、椎熊君の懲罰動議における表現に、反ソ的な、ソビエト代表に対する誹謗的な言葉があり、しかも共産党に対して口をきわめての罵倒があつた、これに対して党員は反駁するのが当然であると思います。そういう意味で一身上弁明の中にそういう言葉があつたと思いますが、この点はどうかというのが第二点。第三点としては、責任問題については、日本国民日本政府に対して責任を追究するのが当然である。日本政府連合国とどういう交渉をするかということは、時の政府の問題である。日本国民としては政府に対して責任を求めるより道がないという意味で、この責任所在日本政府にあるということを言つておる。これが砂間君に質問する点でありますが、そのほか本日この委員会で特に問題になつ中川君の発言、これはあなたにお聞きしたいと思いますが、先ほどソビエトに対して宣戦布告とかなんとか言われましたが、これはどういう意味であるか。国際的な非常に重要な問題である。場合によつてはこれは取消してもらわなければいけないと思います。  まず砂間君に以上の点についてお伺いしたい。
  217. 砂間一良

    ○砂間一良君 私に関連する部分についてお答えいたします。昨日の椎熊君の懲罰動議提出理由説明の中に、今、林委員が読み上げられましたように「同胞引揚促進の決議案賛成するがごとき態度を装うて」事実はそうではなくして「腹の中ではこれに反対するという事実が、ここに明らかに表明せられておる。」というふうに椎熊君は言つておられるのでありますが、この点につきましては、私はまつたく迷惑至極であります。私の討論内容を、どういうふうに受け取り、どういうふうに解釈されるかということは、これはその人の御自由でありますけれども、しかしあの討論を率直に、冷静にお聞きくださいますならば、決して私が引揚げ反対しているというふうな結論は、どこからも出て来ないと思います。私は引揚げの問題については最初から賛成でありまして、むしろ今の政府のやり方はなまぬるいから、もつと積極的に、大いに熱意を持つてやらなければならぬということを強調しておるのであります。これは形式と内容、言うておることと実際のこととが、少しも矛盾してはおらないのでありまして、こういうふうな曲解をされ、それを懲罰動議一つの有力な理由とされるということにつきましては、何か私は納得しかねるものがあるのであります。共産党はこれまでの実際の運動のやり方を見ましても、引揚げ問題につきましては、非常に熱心にいろいろやつて来ておるのであります。これを見ましても共産党引揚げ問題について、ただ目先だけで引揚げ問題を取上げて、本心では、腹の中では反対していると言うのは、まつたく議員を侮辱するもはなはだしいというふうに、実は内心感じたわけであります。  第二の林さんの御質問の点でありますが、反共、反ソ的というふうな言葉を、私が一身上の弁明のときに用いましたのは、先ほど株さんの御質問の中にもありましたように、椎熊議員があまりにひどい捏造的な、私の受けた感じから言えば、故意に、悪意をもつて共産党を誹謗するような、ねじ曲げた表現を使つて申されたものですから、それがあまりにひどいという感じを受けたので、それを弁明する意味で申したのでありまして、あの私の一身上の弁明があるいは少し強くなつたかもしれないと思うのでありますが、それはきのうのあの議場の雰囲気と、その前後のいきさつを御存じの方は理解していただけると思います。  第三番目の政府責任という点でありますが、この点につきまして、先ほど来何べんも説明しておりましたように、引揚げの問題は今日国民全体が大きな焦慮、不安を感じており、重大な関心を持つておる。しかしそれを国民が個々ばらばらにやつたつてできつこない。ですからこれを取上げて連合国に懇請するなりあるいはいろいろな措置をとつて行く。これは日本政府がまつ先に取上げて、そして最も積極的に、熱意をもつて行かなければならぬ問題であります。こういう意味で申したということは、先ほど来私何べんも御説明申し上げておる通りであります。
  218. 中川俊思

    中川委員 ただいま林君から、私に対して光栄ある質問がありましたのでお答え申し上げます。私が先ほど申し上げましたのは、一九四五年七月二十六日ポツダムにおいて発せられましたポツダム宣言の第九條を引用したのであります。すなわち第九條におきましては、御承知のごとく「日本国軍隊は、完全に武装を解除せらたる後各自の過程に復帰し、平和的且つ生産的の生活を営むの機会を得しめらるべし。」こう明記されておる。また御承知のごとく憲法の第九條において戦争を放棄しておる。ゆえにこの引揚げの問題についてわれわれ日本国民としては、今さら武器をとつてどうすることもできない。むろんソ連に対して宣戦を布告することもできない。ゆえに先般ソ連大使館において、徹夜をして私どもが懇請をした、日本国民が懇請をしたということに、これ以外にやる方法がないじやないか。こういうことを私は申し上げたのです。そこでもしこの点におきまして御不審がありましたならば、後ほど速記録をお調べ願いたい。速記録はつきりいたしておりますから……
  219. 林百郎

    ○林(百)委員 できれば武力をもつて引揚げを強行しようというんじやないか。
  220. 中川俊思

    中川委員 そうじやない……(発言する者多し)十分に速記録をお調べになつて……(発言する者多し)興奮しないで、興奮しないで……。速記録をお調べになつていただきたいと思います。誤解のないように願います。
  221. 林百郎

    ○林(百)委員 砂間君にもう一つお聞きします。先ほどから一人もおらないかというようなことが問題になつておりますが、これは前後を読みます三十万おるか、五十万おるか、あるいは一人もおらないか、それは終戦当時のわれわれの同胞が海外に何人おつたかというこの基本数がはつきりしなければ、今日何人残つておるかという数字も出ないわけであります。ところがこの基礎的な数字について政府発表がきわめてまちまちであつて、基本的な数字はつきりしないから、それがはつきりしないならば、何人残つておるかわからないという意味で、一人もおらないという前に、三十万おるか、五十万おるかということを、言つておるということは、要するに基本的な数字をつきり出せという表のあやだと思いますが、その点についてお聞きしたいと思います。  それからもう一つはあなたの討論最後には、このようなわけでありまして、私どもはこの引揚げの問題について、もつと政府責任ある熱意を持つてほんとうに一日も早くやつてくれることを希望するわけでありますということは、あなたの腹の中もこれとまつたく一致した気持でこの討論に出られたということを確信しておりますが、その点をお聞きします。  もう一つ中川委員の問題は非常に重要なことであります。私の方はすぐ速記をとつて来たのであります。こういうふうに言つております。そこで私どもといたしましては、現在ソ連に対して宣戦を布告することもできない、また抗弁することもできない。そうするならばここで徹夜でもして、どうか帰してくださいという懇請の道を講ずるよりほかないじやありませんかと言うが、引揚げの問題についてソ連に対して宣戦を布告することもできない、また抗弁することもできないということは、もしできるならやるということじやないですか、(発言する者多く議場騒然)それでは少くとも引揚げの問題について、ソ連に対して宣戦を布告するということを言う必要はない。これこそ内心はできるなら宣戦を布告しても引揚げさせるということじやないか。(発言する者多し)ソ連に対して宣戦を布告しても……。だからただちに取消すことを要求する。これは重要な発言であります。どういう意味にしても、ソ連に対して宣戦を布告することができないというばかなことを言うことはできない。こんな重要なことを……。しかも速記に残つておるのだ。連合国の一国に対して……
  222. 木村公平

    木村(公)委員 ただいまの共産党の林委員発言はきわめて不謹慎であるのみならず、いたずらに中川委員に対する当らざるところの誹謗であるとわれわれは考えるものであります。わが国は新憲法のもと戦争を放棄したことを認めておる。従つて戦争を放棄したがゆえに、宣戦を布告することができないという事実を、率直に中川委員は述べたのである。しかるところそれをことさらに歪曲して、そうしてもこれを共産党宣伝にするというがごとき卑劣なる精神に対しましては、断固としてこれを許すことができない。のみならずこれはひとり中川委員に対する侮辱であるのみならず、わが党に対する重大なる侮辱であるから、私どもは林委員懲罰に付す意思を持つておるのである。かくのごとき公衆の面前において、いやしくも善良なる中川委員発言を歪曲するとは何事であるか。かくのごとき卑劣なるものに対しては、断固として懲罰しなければならぬ。われわれは林君に対する懲罰動議を出す。断じていかぬ。断じていかぬ。     〔「一身上の弁明をする、一身上の弁明をする。私も言う。宣戦布告のかわりにデモやるなんという、そんなばかなことがあるか、それならできれば戦争をやるということになるのじやないか、」「取消せ取消せ」、「懲罰懲罰中川君の懲罰動議を私も出す」と呼び、その他発言する者多く、議場騒然〕
  223. 松木弘

    松木委員長 林君、あなたに発言を許してないのですよ。
  224. 林百郎

    ○林(百)委員 それでは求めます。
  225. 松木弘

    松木委員長 ちよつとお待ちください。
  226. 林百郎

    ○林(百)委員 ソ連に対して宣戦布告などという言葉はどういう意味にしても、そんなことを国会の記録に残すことができるか。日本国会の記録に残つたら、それは国家の重大責任だ。
  227. 松木弘

    松木委員長 靜かにしてください。林君、靜かにしてください。
  228. 林百郎

    ○林(百)委員 発言を求める。だめだだめだ。そんなことが速記に載つて、国際的な大きな責任になつていいのか。     〔「何を言うか」「誰が戦争をやると言つた」「戦争ができないと言つてるじやないか」「そういう事実に反することを歪曲して……」「宣戦布告ができないからデモをやると言つてるじやないか、もし新聞にでも出たらどうなるんだ」と呼び、その他発言する者多く、議場騒然〕
  229. 松木弘

    松木委員長 静粛に願います。静粛に願います。  ちよつと申し上げますが、委員長はただいまの林百郎君の発言に対して、もし中川君の発言中に不穏当の点がありましたら、速記録を調べまして、適当に処理いたしたいと思います。
  230. 林百郎

    ○林(百)委員 それではそれでいいです。
  231. 大森玉木

    大森委員 議事進行について発言をいたしたいと存じます。先ほど私が議事進行について発言をいたし、そうしに証人の質問はこれで打切るということの動議を出したのでありますが、いろいろ理事会の協議によりまして、それを撤回いたしたのであります。もはやその約束の時間は過ぎたのでありますから、ここにおいて証人の尋問を打切る動議を提出いたします。
  232. 松木弘

    松木委員長 ただいま大森玉木君から質疑打切りの動議が出ておりますが、砂間君に対する……     〔「異議なし」「まだ答弁が残つておる」と呼び、その他発言する者多し〕
  233. 佐々木秀世

    佐々木(秀)委員 今の動議は砂間君に対する質疑打切りと了承いたします。
  234. 大森玉木

    大森委員 追加して申し上げます。時間も相当たつておりますから、外務省の役人に対する質問はもはや必要なし。でありますから証人に対する尋問はこれをもつて打切るという動議を提出いたします。今やかくのごとく五時間にわたつて論議いたしたのでありますから、もはや確定的の認識は得たと思いますから、砂間君に対する質問はこれをもつて全部打切るということの動議を提出いたします。
  235. 林百郎

    ○林(百)委員 実は外務省の引揚局長をここへ呼んでくれということは、民自党佐々木君から話が出たわけなんです。われわれもこの引揚げの数の問題が問題になつておるから、それじやそれを参考までに聞いて、本懲罰事犯の判断の資料にしようと思つておるのであります。政府側の数字がでたらめで、政府側の責任を追究する。それが懲罰の対象になつておる。しからば政府発表が砂間君の言う通りかということを確かめる意味——これは重要な判断の資料になるのでありますから、そういう意味で時間を制限してもいいから、最初の理事会の申合せにおきまして、われわれも民自党佐々木君から出た意見賛成しておるわけでありますからぜひ……
  236. 佐々木秀世

    佐々木(秀)委員 ただいま大森委員から出ました動議がありますが、それに対して林委員からの外務省当局の出席を要求するという発言であります。私も当初におきましては外務省の、いわゆる政府が持つておる数字を聞かなければならないと思つた根拠は、砂間君が言われております政府数字はでたらめだ、その根拠がどこにあるかということを聞きたかつた。しかるに本日砂間議員の証言を聞いておると、砂間議員自体においても、何ら根拠がない。しかもあなた方はしからばどのくらいの数字を考えておるかと言つたら、こういうのででたらめだと思うので、そう言つたというような薄弱な根拠に立つ数字であるならば、私たちは今さらこの問題は数字を主眼としての問題ではありません。昨日の砂間君の賛成討論であるべきものが、賛成の意思がなくいろいろな曲解をしたところの言葉が出たという、そこに懲罰の重点があるのでありますから、今さら外務省の数字はその必要を認めません。よつて私は大森委員動議賛成するものであります。
  237. 佐々木更三

    佐々木(更)委員 私は証人喚問打切りの動議には反対いたします。先ほどから申しますように、これは外部で申しますならば、裁判でございますから、やはり十分納得の行くような審議を進めることが必要であろうと思うのであります。そういう意味で、先ほどの理事会で民自党諸君が進んで外務省の役人を呼んで聞くということになつていた。その聞く内容は、先ほども申しましたように、今その内容が問題になつておるのですが、砂間君のいろいろな数字のあげ方が、政府発表を歪曲しておるかどうか、こういうことが提案理由にも明白になつておりますので、はたして砂間君は無根の事実をもつて、そういう言動をしたかどうかということをこの際明らかにしなければ、ここに処断するということは出来ないと考えるのでありまして、私はやはり公平を期す意味におきまして、この際外務省の役人を喚問する必要があると存ずるのであります。  なお先ほど申しましたように、この問題の焦点は、議会道義を無視したかどうか、そういう立場で反対の意思を持ちながら賛成をしたかどうか、こういうことを言つたかどうかということが要するに問題でありますので、やはりこの際私は、その重要なかぎをにぎるところの中山委員長を喚問することが必要である。かくしてわれわれはそういう事実の十分なる審査の上に議会全体、国民全体が納得するような処断をしなければならない、こう思うのであります。私はそういう意味から大森君の動議反対いたします。
  238. 松木弘

    松木委員長 ただいまの大森君の動議について採決いたします。大森君の動議賛成の方起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  239. 松木弘

    松木委員長 起立多数。よつて大森君の動議は可決されました。
  240. 松木弘

    松木委員長 この際砂間一良君に退席を望みます。
  241. 佐々木更三

    佐々木(更)委員 私はどう見ましても、先ほどからの各委員発言時間に対する制限とか、あらゆる点で、本委員会はきわめて不明瞭だ、多数党の横暴だと考えるのであります。そういう審理の方法におきましては、社会党はこの審議を進めることはできません。社会党は退席いたします。
  242. 林百郎

    ○林(百)委員 私の方も党の態度を相談いたしたいと思いますから、ちよつと十分ばかり休憩を願います。
  243. 松木弘

    松木委員長 それでは暫時休憩いたします。    午後五時五十二分休憩      ————◇—————     午後七時三十九分開議
  244. 松木弘

    松木委員長 休憩前に引続き会議を開きます。  本委員会は午前中から開会いたしまして、椎熊三郎君及び砂間一良君よりそれぞれ動議提出理由、並びに一身上の弁明を聞き、数時間にわたつて質疑応答を重ねまして、質疑はこれを打切ることに先刻決定を見ました。この際議員砂間一良君について懲罰事犯として懲罰を科すべきや否や、及び懲罰を科するとすれば、国会法第百二十二條の規定するいずれの懲罰を科すべきかについて意見を求めます。
  245. 林百郎

    ○林(百)委員 私の方は実は党の代議士会でこういう方針が決定しました。これを次に述べます。  これはこの委員会でどういう結果になるかは別として、党としては、もう一度やはり数の問題を明らかにするために、外務省の責任者、並びに砂間君がなぜあの討論に出たかという経緯を明らかにするために、中山委員長を呼ぶという、先ほどの佐々木更三委員の要求を、もう一度党としても要求しろということに私の方は決定いたしました。これを要求いたします。これについて委員長は当委員会へひとつ諮つていただいて、この問題を解決してから、懲罰の問題に入つていただきたいと思います。
  246. 佐々木秀世

    佐々木(秀)委員 ただいま林君より外務当局を呼ぶことと、中山委員長をここへ読んでもらいたい、それが党で決定したというお話でありますが、少くとも公式なる委員会におきまして、それを呼ばないという動議が採決された以上、再び一党がきめたからといつて、それを採決するような不謹慎な、しかも権威のない委員会であつてはならないと思います。どこまでもこれは一事不再議でありまして、一回きめたことは、それを尊重するのが委員会の建前でありまして、ただいまの林君の御意見は単に共産党においてきめたことを、ここで発表せられたという希望にとどめておきたい、こう私は解釈したいと思います。
  247. 林百郎

    ○林(百)委員 私の言うのは、もう一度動議を出して見る。これは当委員会が万遺漏なき審議をした結果結論を得たという、当委員会の権威を高からしめるために言つておるわけです。だからもう一度その動議を出すわけです。その動議について一事不再議なら一事不再議、もう一度採決するなら採決するで、共産党の両動議に対して委員会はつきりした結論をつけ、それから進行してもらいたいと思います。これは私は党に対する責任がありますから、この点はどこまでも再動議を提出いたします。
  248. 松木弘

    松木委員長 ただいまの林百郎君の動議は、一事不再議でありますから、採決の必要はないと思います。
  249. 井手光治

    井手委員 議員砂間一良君の懲罰事件につきましては、これに懲罰を科すべきものとして、国会法第百二十二條第二号による公開議場における陳謝を命ずべきものと議決せられんことを望みます。  その理由につきまして二、三申し上げてみたいと存じます。本日午前中から、本委員会に付託されておりまする砂間議員懲罰の審議が進められたのでありまするが、砂間議員自体も本委員会に出席をされまして、みずからの昨日本会議におきまする賛成討論内容につき、種々弁明を試みられておることは、皆様お聞きになつ通りでございます。ところがこの趣旨弁明を一貫して私どもが承るところによりますと、砂間議員は、一体みずからがいかなる理由によつて委員会懲罰に付議せられておるかということを自覚されておらない。その趣旨弁明の内容は、いたずらに昨日の本会議におきまして、あたかも引揚げ促進賛成するがごとき態度をもつて、その内容しからずとせられておるところの、本委員会に付託されたその真意を曲解をいたしまして、昨日とその内容を同じくする内容の追究と、誹謗非難を再び強調しておるにすぎない。みずからが称えられておりますところの、その審議に付されておる内容を、さらに再確認しようとする態度に出ておられることは、まことに遺憾にたえないのでございます。本人の申されておりまする討論内容の冒頭にありまする、この引揚促進に対しては、自分は賛成である。大局的には賛成であると言つておりますが、およそ国会におきまする全会一致の決議をもつてするかくのごとき重大なる決議案に対しまして、大局的に賛成であるという冒頭に賛意を表しまする以上は、この大局的に賛成をするというみずから申し述べたところの宣言に基いて、それに準じたところは、いわゆる趣旨の弁明なり、あるいは賛意を表すべきが、国会としての、あるいは国会議員としての当然の職責であり、またいかに意見がありましても、その大局において賛成をしたという、その賛成を裏書きするところの証明を述ぶることが、常識的に至当であると私どもは判断をいたします。ところが国会において全会一致の決議をすら、一日も早く同胞の方々が一切引揚げてもらいたいという国民の熱願がこり固まつて、本国会満場一致の決議案が出ておるということを承知しながら、冒頭に賛成であるという羊頭を掲げ、内容はその誹謗非難に満ち満ちたところの内容をもつて、いわゆる羊頭を掲げて狗肉を売らんとする態度が、本委員会の審査に付された重大な原因になつております。  まず第一に今日の弁明を聞いておりますると、政府発表しておりまする数時は、きわめて正確を期し得さるものがある。こう言つております。特に私どもは今日の日本現実の段階におきまして、終戦後の日本のあり方からいたしまして、東洋に、あるいはソ連地区に、中共地区にありますところの日本人が、いかなる状態において、いかなる状況において、何人の人が、あるいは何万の人がおるかということは、日本政府といたしましても、現段階において得られまするあらゆる機関を通じまして、その正確を期しつつあるのであります。従つて国民といたしましては、現在発表せられておりまする数字が、あるいは正確と言い、あるいは不正確と言われまして、それ自体に砂間君の言われまする通り不安焦慮の念があることは、もとより私どもも承知をいたしておるのであります。ところがその数字が不確実であるという原因は、単に日本政府責任であると砂間君は申しております。あにはからんや、ただいま申し上げました通り日本の置かれておりまする現実の段階から言いますると、いかに正確なる数字を集めようといたしましても、集め得る限界が示されておる。そこで集め得るだけの正確な材料をもつて数字発表する以外には方法がない。それ以上どうして一体正確な数字発表できないのであろうかということは、砂間君もよく承知をしておることと思うのであります、すなわちソビエト地区におきまする数字発表が、日本政府発表と著しく違つておる。違つておるのはソ連地区におきまする同胞数字を明確に発表していると称するところに、国民的大きな疑問が生じておるのであります。その疑問そのものに、国民焦慮がむしろあるということを私どもは考えざるを得ない。従つて政府数字が正確ならざるを責める前に、その正確ならざる原因がどこにあるかということを、まずもつてみずからこれを責めなければならぬと私どもは思うのであります。ところがその問題に触れますると、それは単なるソビエトに対しまする非難であるということで、彼は逃げておるのであります。しかも私どもが聞き捨てにならないのは、その陳述の中に、南方については政府はゼロだという数字発表しておりながら、ゼロだという所から、どんどん人が帰つて来るのはけしからぬということを言つておるのであります。(「その通り発表しておるのじやないか」と呼ぶ者あり)一体数字発表が正確か不正確かということを責めるのはまだしもであるが、帰つて来たのはけしからぬというのはよくも言えたものであると私は思います。(「そんなことは言つていない」と呼ぶ者あり)彼の腹の中には帰つて来ること自体反対しておるのではないかということを言われてもしかたがない。(「その数字がけしからぬのだ」と呼ぶ者あり)ゼロのところから帰つて来るのは、それは数字が間違つておるということを攻撃するのはいいが、何十人か何百人かという人が帰つて来るとは何ごとであるか、こういうばかなことがあるかということを言つております。つまり帰つて来るのがけしからぬということを、明らかに発表しておる。この点は私どもはどうしても承知できないのであります。まず政府に対しまして数字の不的確を追究いたしまして、政府責任を追究しておる。それからただいま言つたようにゼロのところから引揚げて来る、その引揚げて来るという事がけしからぬということを言つております。それはまず政府に対しまする非難である。  ところがその次には国民の愛の運動がなつておらぬということを言つております。一体わが国民全部をあげまして、寒地から帰つて来られますところの同胞が内地に引揚げたならば、いかにしてあたたかい手を差伸べようかということで、愛の運動というものが、一種の国民運動として展開されておる。この国民がみずからもつてしたところの愛の運動に対しまして、国民を非難しておる。この点も私どもは看過することができないと思うのであります。まず第一に政府を非難し、国民みずからもつてするところの愛の運動を非難しておる。  しかも第三番目に見逃すことができないのは、なるほど本人が陳述されます通り椎熊三郎君の共産党に対する誹謗から、感情的に自分に言い過ぎがあつたということを言つております。その言葉の中にこういうことを言うておる。連合国の一員であるところの大使館の人たちを指して彼らというような、そういう椎熊君の言動、それが引揚げを遅らせておるのである。これはなるほど椎熊君の本会議におきまする共産党に対する誹謗に対する感情的な現われとしては、私どもはあえて追究しようとは思わないのであるが、そのあとがいけない。そのあと共産党を除くこの議場の空気、諸君のようなそういう反ソ、反共の考え方を持つておるからして、引揚げが遅れておるのである。引揚げ遅延の最大の原因はそこにあるのじやないかと言つております。つまり国会の本会議におきまして、共産党を除く他の政党、つまりこの議場の空気が引揚げを遅らせておる最大の原因であると言つて、第三番目には国会を非難しておるのであります。(「とんでもないことだ」と呼ぶ者あり)いやしくも国会——(「そんなばかなことがあるか」と呼びその他発言する者多し)そうじやないか。いやしくも国会が全員の決議をもつて、この真剣な引揚げ促進決議をなさんとするときに、共産党を除くこの議場の空気、反ソ反共の考え方をもつておるからこれが遅れておつて、それが最大の原因であると言つて、三番目には国会を非難しておるのであります。第一に政府を非難し、第二に国民を非難し、最後にはその責任国会に転嫁しておる。この三つの事実をもつてしますならば、彼がいかに賛成である、賛成であると言つても、その内容はまつたく椎熊君の言う通り反対である。反対意思を持つて、冒頭に掲げてあるところの賛成なりということを、わざわざ歪曲して申し述べておるのであります。こういうことは断じて看過できない。共産党諸君が口を開くと、結果が生れるのには必ず原因があると言つておる。引揚げ促進のために、国民政府を通じ、国会と打つて一丸となつて、最善の努力をいたしておるのでありまするが、舞鶴に引揚げて来ました同胞諸君、あるいは東京駅なり、各停車場において引揚げて来た同胞諸君に対しまする共産党の集団的なあの行動は、一体どういう状態であるか。そこでその状態では、まことに引揚げ同胞に対しても相済まないし、(発言する者多し)国民全体の側から言つても相済まないということから、政府としても最初はほとんど開放的な受入れ態勢をやつておりましたのを、一部それらの不明なる者どもを取締るための手段を、とらざるを得なくなつた現状である。(発言する者多し)。そこで春秋の筆法をもつてしますと、彼らはどろぼうをしたのはおれであるが、どろぼうをさせた原因がおれをどろぼうせしめたということを言つておるのである。(「どろぼうとは何だ」と呼びその他発言する者多く、聴取不能)……これを取締るならば……(発言する者多く、聴取不能)……同じである。そこで春秋の筆法をもつてしますれば——これは例を言つたんだ。そういうふりなことを、春秋の筆法をもつて彼はいつも言つておる。そこで……(発言する者多く聴取不能)……そこで彼らの言うことは、すべてみずからに原因があることを他に転嫁し、結果によつて生じた問題は、みな第三者を非難するということに相なつておる。そこで内容は、羊頭をかかげて、確かに狗肉を売る内容になつておるのであつて、それを逃れるために、政府に対して最善の努力をせよということで結んでおるのである。その内容はまつたく反対で、そこでわれわれ国会全員の決議をもつて、この引揚げを促進しようとする国民的最高感情、最高潮のいわゆる国民感情を、国会の総意をもつて反映しようとする純真なる国会の尊厳な気持を、まことに冒涜するもはなはだしいと存ずるのであります。そこで私は冒頭に述べました国会法第百二十二條第二号によりまして、公開議場における陳謝を命ずる決議をされんことを希望いたします。(拍手)
  250. 松木弘

    松木委員長 林百郎君。
  251. 林百郎

    ○林(百)委員 私は議員砂間君は懲罰に付すベきではないという動議を提出するのであります。  昨日の椎熊議員懲罰動議理由をよく調べて見ますと、大体二つの理由があると思うのであります。一つ日本政府責任を追究して、そうして腹の中ではこれに反対するという事実がここに明らかに表明されたということであります。結局懲罰事犯理由に、日本政府責任を追究したということが一つ、もう一つ腹の中では反対して、口で賛成しておる。腹の中のことで懲罰事犯にかけておるのであります。  そこでわれわれはこの二つの理由がはたして懲罰事犯に該当するかどうかという理由をここに調べて見ますと、第一われわれ野党として政府責任を追究することは当然です。もしこれを政府責任を追究したから懲罰に付するということになれば、われわれはまつたく国会における審議権を行使することができなくなる。こんなことで懲罰に付するということは、明らかに大政党、多数政党の懲罰権の濫用である。これこそ国会の権威を傷つけるもはなはだしい。(発言する者多し)そこで当日における、たとえば政府責任の追究が懲罰事犯になるならば、民主党の並木君のごときも、もつと痛烈な言葉で政府を追及しています。たとえばこういうことを言つておる。要は実績である。いくら文句でうまいことを言つたつて、実績が現われなければわれわれとしては、がまんできないのであります。そういう意味において私は現在の政府が、口に唱えることと、実際にやつておることと一致しておるかどうか疑わざるを得ないのであります。白足袋宰相は御殿場に帰ることは急である、大磯に帰ることは急であるけれども、この引揚げ促進のために、司令部の門を幾たびくぐつたか、われわれはその懇請の実態を知りたいのであると言つている。これは明らかに政府責任を追究したもので、これまたわれわれ野党としては当然だ。こういう意味でわれわれ政府責任を追究したということに対しては、懲罰理由にならないと思う。ことに占領下におけるわれわれとしては、一切の責任日本政府に対して責任を追究するほか道がないわけです。もしわれわれが外国と対等の立場にあるならば、対外的な責任を追究することはありますけれども、われわれが占領下にある以上は、一切の対外的な交渉は、日本政府を通じてやるべきで、国民としてはこれより道がないわけであります。こういう意味において、われわれが政府責任を追究したから懲罰事犯だということには、われわれは断じて承服することができない。  第二としては腹の中では反対なのに表面は賛成だと言つていますが、われわれがもし腹の中のことだけで懲罰事犯になるというのならば、われわれはまつたく安心して議場に出ておられないわけである。あくまでもわれわれはそこで表現された言葉によつて初めて懲罰にかかるか、かからぬかという判断の資料になるわけであります。もし腹の中で君はこうだということによつて懲罰にかけられるということになると、まつたくそれこそ議員の審議権を無視するもはなはだしいと思う。しかもその表現の点においても、砂間君は最後結論においてどう言つているかというと、私ども引揚げの問題につきまして、もつと政府責任ある熱意を持つてほんとうに一日も早くやつてくれることを希望するわけでありますと言つているのであります。彼の熱意は、ほんとうに一日も早く、政府責任を持つて引揚げの問題をやつてくれることを希望している。われわれは討論最後結論こそがその人の真意だと思う。その重要な結論において砂間君は、はつきり一日も早く引揚げを促進するように望むと言つている。この表現があるにもかかわらず、君は腹の中では反対だから懲罰だということが世間に通るかどうか。これこそまつたく国会が天下の笑いものになる。私は国会の権威のためにも、かかる懲罰に対しては絶対に承服することができないのであります。  第三の問題といたしましては、たとえば砂間君が一身上の弁明で、彼が議場懲罰にかけられたことについて非難していると申しておりますが、椎熊君の言葉を見てごらんなさい。椎熊君の懲罰理由の中にこういう言葉がある。「われわれは日本の民主化のために、かくのごとき者どもが議会に跋扈するなどということは、日本の前途のために嘆かわしい。彼らは議会の行動において、あるいは運営委員会行動において、常に戦略、戦術、虚偽、欺瞞、あらゆる術策を弄して、この国会を彼らの宣伝の具に供せんとする日ごろの行動は、まさに天人ともに許さざるところである。」天下の公党が戦略、戦術、虚偽、欺瞞の方法で国会を利用しているというがごときこそ、国会を侮辱するもはなはだしいと思う。しかも公然と許されている天下の公党に対してのかかる誹謗は、断じて許し得るはずはないと思う。だから砂間君は一身上の弁明においてはつきりと党の立場を述べているのです。国会に対するかかる誹謗こそ、ソ連地区引揚げを阻害しているのであり、国を思い、国会を思うならば、砂間君の言うことは当然な話です。これをもし彼を懲罰に付するということは、しいるもはなはだしいと思う。われわれはこういう意味において、彼を懲罰事犯範囲を越えて懲罰事犯にかけ、しかも一身上の弁明のその言葉じりすらとらえて、彼を懲罰にしようということは、明らかに懲罰事犯があるかないかということよりも、あらかじめ共産党に対しては懲罰にしようという既定方針で諸君が臨んでいるのだということを言わざるを得ないのであります。これこそが国会の権威を傷付け、これこそわれわれ議員として十分に反省しなければならぬこと思うのであります。  最後に私は、皆さん方が公平な立場でこの問題を判断しようという態度ではなかつたのではないかということを疑う。ということは、先ほどの民主自由党の諸君発言にもありました通りに、政府責任追究ということの中に、数字の問題がいろいろあつて、この数字が大きな問題になつたわけであります。そこでわれわれとしては、砂間君の言うがごとく、政府数字はつきりさせて——もちろん数字にいろいろ食い違いがあるということについて、砂間君の言うのがもつともか、あるいは砂間君の言うことが間違つているかどうかということ——政府責任ある外務省の役人を呼んで、はたして日本政府責任ある数字を持つているかどうか、またそれを発表しているかどうか、またその数字に齟齬がないかどうかということを確かめなければ、砂間君の発言の最も重要な部分である数字の問題は解決しない。そこで民自党佐々木君自身が、この事態を明らかにするために、外務省の役人を呼ぼうということを言つておる。それにもかかわらず、もう彼を懲罰に付する時間がなくなるから、そんなものはどうでもよいから、すぐ打切つてやめようということは、諸君はうむを言わさず懲罰にしようという腹であつて、この国会の審議を最も慎重に、国会の権威のために過誤なからしめんという誠意がないということを断ぜざるを得ない。しかも佐々木君の動議賛成した諸君が、時間の都合があるからやめようということは、この懲罰委員会の審議そのものが一方的であり、多数党の横暴であると断ぜざるを得ないのであります。しかもわれわれがこの委員会において最も遺憾としたところは、砂間君の言つた通り、一部の諸君の中に反共、反ソ的な空気があるということは、これははつきり認めた。砂間君の言うことに間違いがない。言葉の表現はどうあろうと、ソ連に対して宣戦の布告ができないからデモをやるということは、明らかに反ソ的な気持が腹の中にあるから、こういう言葉で出るのである。それを砂間君が本会議の席上で言つたことに対して、彼がこういうことを言つたから、国会の権威を傷つけるから懲罰だということは、しいるもはなはだしい。今日のこの懲罰委員会の全体の空気から見ても、明かに反ソ的な空気をもつて、反ソ的な潜在意識をもつて質問していることは、十分見られた。この国会の一部の諸君が、反共、反ソ的な意識を持つていることが、ソ連からの引揚げを遅らしているという発言は、こういう意味から当然だと思う。こういう意味でわれわれに、この懲罰動議自体が不純である。むしろ椎熊君の、日ごろの反ソ的なイデオロギーに乗せられたのではないかというような印象を與える危険が、多分にあるのではないかと思う。私はそういう意味で、かかる国会議員の審議権を無視し、十分な審議もしないような懲罰委員会において、彼を懲罰に付するということは、賛成できないのみならず、砂間君の全発言を見、彼の態度全部を見ても、一点として彼を懲罰に付するという理由はない。彼を懲罰に付することによつて、むしろ国会の権威が傷つけられると考えるがゆえに、われわれは国家の権威のために、砂間君を懲罰に付すべきでないという動議を提出する次第であります。
  252. 松木弘

    松木委員長 ただいま本懲罰事案につきまして井手光治君よりは、これに懲罰を科すべきものとし、国会法第百二十二條第二項による公開議場における陳謝を命ずべしとの動議、及び林百郎君より、本件は懲罰事案にあらずと決定すベしとの動議が、それぞれ提出されています。一括してこれを討論に付したいと思います。討論の時間は一人十分以内といたしたいと思いますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  253. 松木弘

    松木委員長 御異議なしと認めます。それでは時間は十分以内と決しました。  これより通告願によつて発言を許可いたします。佐々木秀世君。
  254. 佐々木秀世

    佐々木(秀)委員 ただいま林君よりは懲罰にあらずという動議があり、井手君よりは懲罰に該当し、しかもその懲罰国会法第百二十二條第二項に該当するものなりとの二つの動議は提出されておりますが、私は民主自由党を代表いたしまして、井手君の動議賛成を唱えるものであります。時間がありませんのでごく簡単に賛成理由を申し上げます。  この引揚げ問題は超党派的な問題であり、ことに国会内の問題ばかりでなく、全国民の問題であります。しかしてこうした決議案を処理するにあたりましても、国民の代表者たる国会議員は、その言動において、十分慎重を期さなければなりません。しかるに昨日砂間君が国会の本会議席上において、賛成なりとして発言いたしました、その賛成演説内容は、過般来いろいろ砂間君に対して質問等を申し上げまして、砂間君のお気持、あるいはその演説内容につきましては、十分にわれわれは検討いたしましたので、省きます。ことにまた井手君よりいろいろと各方面からそれに対する御意見がありましたので、重複することを避けますが、しかしこうした協議をするにあたりましても、その議員が表現いたしまする言葉自体にも注意しなければなりません。しかるに砂間君の演説の表現の言葉というものは、まつたく留守家族あるいは国民に対する大きな疑惑を感ぜしめるような表現があつたのであります。たとえば数字の問題にいたしましても、五十万いるものか、三十万いるものか、あるいは一人もいないかもしれないというようなことは、ほんとうは留守家族の立場から考えまするならば、いかばかりかこれに対して心痛をされるでありましよう。私も五箇年戦地に働いて参りました。やはり待つている人も、また帰る立場にある人も、国を離れてみなければ、国のあたたかさというものは知ることができません。そうして数字的にも問題になつている今日、たといそれが一つの表現であつても、一人もいないかしれないなどということに、これは私は言葉として用いるべきものでないと考えます。ことにまた——この表現の一々を申しあげませんが、先ほど砂間君が申された通り、こうしたのは政略的に、政治的に利用すべき問題でないと、砂間君個人から言われたのであります。しかるに砂間君の演説の中に、引揚げ問題に対して各党は全然やつていないじやないか、共産党のみが言行一致これに対して精進しているのだというようなことは、明らかにこの問題を利用して、政府を誹謗し、他党を非難し、しかもなおかつ、先ほど井手君が言われた通り国民の愛の運動までも誹謗したということは、明らかに共産党が、この問題をひつさげて党利党略、あるいは党宣伝の具に供したと言うも、決してこれに対する答弁が私はなかろうと思うのであります。  こうした問題をいろいろ考えますると、この砂間君の演説は穏やかでありません、ことにまた、ただいま林君から言われましたが、反ソ、反共に対しての御意見がありました。しかし国としての反ソ、反共ということはないかもしれませんが、個人々々の共産党に対する反対的な思想とか、あるいは各国々に対する個人の考え方というものを、そう抑圧すべきものではありません。私たちも当時の実情を考えるときに、ソビエトに対して一つの疑念を持つていることだけは事実であります。皆さん考えてごらんなさい。終戦の年の八月九日、二十四時間通牒なるものを一方的に突きつけて、あのいわゆるソ連国境から怒涛のごとく、なだれるごとく押し寄せて人つて来た兵隊は、どこの兵隊であります。皆さん、いわゆるポツダム宣言の第九條には、戦争の……。(発言する者多し)事実を言つておる。——ポツダム宣言の第九條には、少くとも、武装を解除された兵隊は、ただちに郷里に帰すべしという宣言があるのであります。しかるに戦争が終りましてから一年、二年、三年、四年、五年経つても、いまだに数十万のわが同胞が、帰らざる人がいるとするならば、どうしてソビエトは帰してよこさないのだろう、こうした疑念を持つことに、ただ反ソとかいう問題でなくして、どうしてソビエトには、日本人の気持というのを買つてもらえないのだろうかというような考えを持つのは、日本人とて私は当然だと思うのであります。そのこと自体を、反ソなり、反共なりという思想があるから引揚げが遅れているなどというがごとき表現を使うことは、まつたく私は許すことのでない表現であると思うのであります。いろいろと申し上げたい点はたくさんありまするが、昨日の砂間君の演説は、まさに国会の権威を傷つけたものであります。  皆さん、要するに国会の品位を傷つけるということは、国会法の百十六條にも該当いたします。あるいはまた国会議員に対しての侮辱をしたということも、これ国会方第百二十條に該当するものでありますから、井手議員の提出いたしました動議は妥当と認め、井手君の動議賛成の意を表するものであります。(拍手)
  255. 松木弘

    松木委員長 佐々木更三君。
  256. 佐々木更三

    佐々木(更)委員 私は、日本社会党を代表いたしまして、井手君の、砂間君を懲罰に付すべしという提案に対しましては、その提案理由である事実に対する立証が不十分である、かつ要件を具備していないと考えるがゆえに、反対意見を表明するものでございます。  この案件を処理するには、少くとも二つの條件が具備しなければならないと思うのであります。一つは、砂間君の昨日の演説内容が、いわゆる議会における言論の自由におきまして、許さるべきものかどうかということが第一点、第二点は、砂間君が共同一致の提案をするにあたつて、その協約を破つて、いわゆる信義を裏切つたかどうかという、議会道義に違反するかどうかという二つの点であるだろうと思うのであります。  私は、議会における言論の自由から申しまして、政府を攻撃する自由は、これは議員の自由であろうと私は確信して疑いません。問題は、砂間君が種々数字をあげたものが、政府数字を歪曲しておつたかどうかという事実であろうと思うのであります。この点につきましては、これは懲罰に付すべしという提案者の方で、十分に立証しなければなりません。その立証におきましては、先ほどから、これは民主自由党の諸君賛成いたしまして、この立証のために外務省から説明員を呼ぶことが成立しおるのでありますが、これを民自党諸君がみずから破つて、立証をなさないということは、事実の証明に対しまして、その権利を放棄したものと、私は考えないわけには行かないのであります。  次に、この協約を裏切つて、議会道義に反したかどうかということは、先ほども申し上げました通り、これは中山委員長との間に、いかなる約束があつたかということを立証しなければなりません。この点が解明されなければ、はたして砂間君が、いわゆる議会道義に違反して、他党との約束をほごにしたかどうかという立証は不十分であると思うのであります。その点におきましても、民主自由党の諸君は、一方的にこれらの証人の喚問を拒否して、いわゆる積極的に立証しておらないのであります。  こういう点から言いまするならば、この二つの條件とも、現在の井手君の主張においては証明不十分でございます。従つて社会党といたしましては、かかる証明不十分なものに対しまして賛成するわけには参りませんので、砂間君は懲罰に付すべからず、こういう考えをわが社会党は持つておるということを表明するものであります。
  257. 松木弘

  258. 大森玉木

    大森委員 私は、民主党野党派を代表いたしまして、井手君の動議賛成の意を表します。  昨日の議場においての砂間君の発言中に現われました言辞は、私はこういうふうに考える。引揚げに対しましては、各地においても引揚促進連盟などというようなものをつくつておりまするが、そういう席上あたりにおきましても——私はちようど共産党の代議士と一緒になつたことがあるのでありますが、そうい席上においていかなる言辞を弄せられるかと申しますると、大体数字に正確でない、九万五千人と発表したのに、何をもつてかくのごときことを言うのであるか。もしもそういうことを言うならば、この引揚げはまつたくできないのである。またそのうらにおいては、どういうことを言うかと言うと、そういうことで引揚げができると思うか、共産党にあらざれば、というがごとき言辞を弄されたのであります。私はそのときに参りまして、君は何を言うのだ、共産党員は日本人でないのか、ということを言つたのであります。そういうふうにいたしまして、私どもの地方において——私は石川県であるが、その石川県の引揚同胞促進連盟の席上へ私ども招待された。その席上においてただいま申し上げたような言辞を弄されたことがあるのであります。そのときに寄つておつた民衆はどうであつたか。民衆はいわゆる子供や夫、あるいは親を——その日は暑い炎天の日であつたが、一日も、一時間も早く帰してくれという念願に燃えて集まつた人たちの中においても、すでに党利党略のために、わが共産党であらざればという、かくのごとき言辞を弄されたのでありまするから、昨日の国会においてあの言葉が現われたことは、それらを意味しておるものであると私は思う。いろいろな点に対しましては、井手君から詳しく説明があつたのでありまするから、かよう申しまして、私は井手君の動議賛成の意を表する者であります。(拍手)
  259. 松木弘

  260. 春日正一

    春日委員 私は共産党を代表いたしまして、井手君の動議には反対、林君動議には賛成の意を表する者であります。  それで先ほど来、懲罰の不当ということについて、林君からも、動議趣旨の中で説明しましたけれども、この井手君の動議を見ましても、私ども一番先に考えられることは、私、この国会にこの前から初めて入つて来まして、とにかく何かと言えば懲罰というような形で言論を抑えることが、やじの中にもちよちよい見られておる。またそういうような形で事が運ばれて来る傾向が非常に強い。しかもこの国会という所は、国民各府の意見あるいは利害を代表して、相討論をする所でありまして、それぞれの代表する所なり、階級なりの意見が、十分闘わされなくちやならぬ。それをおれの意見に気に食わぬから懲罰にするということになれば、これは明らかに、多数の独裁になる。そこで今度のこの事実を調べて見ましても、先ほど来の砂間君のいろいろな陳述によりましても、この決議案が出るいきさつというものは、砂間君自体が自分の意見を持つており、そうして大局的な見地からこれに同意するけれども、自分の意見を述べる機会を與えてもらいたいということを言つて——先ほど来いろいろ調べたから繰返しませんけれども、その討論をすることになつたわけであります。そこで私がここではつきりさせたいこと、特にここにおる議員諸君にも考えてもらいたいことは、本会議決議案が出て、賛成の各党が討議をするということは、一体何を意味するか。全部が全部、案に盛られたことにお互いに一分のずれがなければ、各党こもごも立つて討論するということは、時間の空費にすぎないと思う。それぞれの各党が立つてそれぞれの趣旨を弁明することは、各党それぞれの賛成をする角度があり、態度がある。それだからこそ各党にやらせているのだ。そういうことになれば、共産党を代表した議員が、共産党の立場から引揚促進に対する意見を述べ、この角度から賛成するということは、これはきわめて当然のことである。それが他の諸君に気に入らないからといつて、これを懲罰に付するというようなことになるならば、これは小数党の意見を封ずるという、議会政治の精神に反する結果になつて来ると思う。このいきさつは先ほど来の通り、かくのごとくである。しかもその砂間君の意見なるものは、引揚げの人数の問題に限定をせられておつたことも、これは先ほど来の質問でも明らかになつたように——野党全部が十分間というように時間を極度に制限されたために、自分たちの主張したいことの最も大事な点だけに力点をおくために、前後の脈絡がどうしても簡単になつて来る。これはあり得ることである。冒頭において賛成すると言い、まじめにはつきりと、誠意と熱意を表明しているのに、どこに引揚げに不熱心ということがあるか。さらに……(「羊頭を掲げて狗肉を売るのだ」と呼ぶ者あり)羊頭を掲げて云々と言いますけれども井手君の動議説明を聞きますと、たとえば南方地方はゼロになつている。ゼロから帰つて来るのはけしからぬ。帰つて来るのがけしからぬという意見言つておりますけれども、砂間議員の先ほど来の説明を聞きましても、かくのごとくゼロのところから帰つて来るという、この数字のからくり、これがけしからぬ、と言うのであつて、帰つて来たのがけしからぬとか、帰つて来た者が不幸であるというようなことは、決して言つていない。ただゼロから出て来る、無から有が出て来るという、この事情を突いているだけであつて、帰つて来ること自体、帰つて来た人自体がけしからん。不幸であるということは言つていない。これらの論旨によつても明らかなように、事実の一言半句の言葉じりをとつて、故意に自分たち反対者を懲罰に付するというような態度は、これは大政党の態度でもなければ、決して民主的な態度でもないと思う、言葉のはしはしの一つ一つの言葉には、多少の言いそこないもあるし、言い過ぎもあることは、お互いあることでありますけれども、全体の論旨、こういうものを一貫して、前後の脈絡を考えて、そこに何を言わんとするかという本旨をつかみ出すことが議員として最も必要なことであつて、そういうわずかな言葉のしりをとらえて、先ほど言われたように、引揚げて来ることがけしからぬというように故意に曲げて、これをこじつけて来るということは、まつたく筋の通らない話である。さらに引揚者の現状あるいは愛の運動の問題につきまして、愛の運動を非難したとか、政府の怠慢を非難したと言うが、それでははつきりあなた方に考えてもらいたいことは、もちろん引揚者の中にも、帰つて来て行くべき家のある人もあるし、りつぱに生活の立つて行く人もあるけれども、しかも大多数が帰つて来るとたんに、わずかの金を與えられて、それで失業している。しかも現在全国の大部分の工場において、ソ連から帰つて来た者は雇わないということで、これを雇わないようにしている。職業安定所さえも——これはもちろん記録があるわけでもなく、証拠呼ばわりということになれば、証拠もないということになるけれども、一体引揚者に対して、ソ連から帰つて来た人は困るということもらしている。そういうことをやつている……(赤にしたのはだれだ」と呼ぶ者あり)赤にしようとしまいと、日本の憲法及び労働基準法において、人の信條、身分によつて差別してはしならぬということは、はつきりきまつている。赤であるから就職させないというようなことは、明らかに憲法の違反であり、労働基準法の蹂躙である。これを国会が問題にするならば、この憲法違反、労働基準法違反をまつ先に取上げて糾弾しなければならない。しかしこれは不問に付されている。そうしてこの悲惨なる引揚者の現状に対して失業保険の適用とか、就職のあつせんとか、あるいは生活の保障とかいうような措置をとらずしておいて、愛の運動というようなものを起して、駅に出迎えをするということだけをやつていることが非常に不満であることに、これは共産党の立場として当然言うべきことであるし、引揚者の中の大多数の者が、やはりこれと同じ関心を持つておる。それを国会議場において表明したということが、何で懲罰に値いするか、この点を十分考える必要があると思う。さらに事実かくのごとき数字の問題は、政府自身が言つておる。速記録に残つておる。このあいまいなる数字を明らかにすることなくして、司令部に懇請し、あるいは連合国に懇請するとしても、日本数字はかくかくだ、だからこれを何とかはつきりさせてくれ、早く帰してくれという、この基礎をつくる勢力を政府は一体どれだけしておつたか。この点を今国民言つておるのであつて、このしつかりした基礎の上に立つて引揚げの懇請でも何でもやりなさいと言うことが、一体何が引揚げ反対したことになるのか。断じて不当ではないと思う。しかもこのような明らかな問題が先ほど来の議事の運営を見ておりましてもわかるように、民自党諸君が質疑してしまつたあとで、質問は打切るとか、あるいは十分ぐらいにしてくれというようなことで時間が制限され、十分な審議ができなかつたということは、先ほど来社会党委員諸君の退場した事情によつても、これはひとり共産党員が当面の攻撃の的に立つておるからというのではなく、社会党諸君すらこの不当に対して、退場をもつて拒否しておる。この事実によつても、この委員会の審議は非常に多数派の意見によつてさえぎられ、公平な審判が行われていないということは言えると思う。要するにこの問題が議員国会発言において、しかもそうした印象を受けたというようなことによつて、どこのどの句が不当であるから取消せ、こういうことは方々でやつておることだしかもそういうことも示さずに、全体の印象反対であるからという感じによつて罰するというようなことは、議員討論を抑圧し、国会における自由なる討論を封鎖することになり、悪い習慣を残すことになると思う。
  261. 松木弘

    松木委員長 時間が参りましたから……
  262. 春日正一

    春日委員 もうすぐ終ります。——だから私は民自党諸君のためにも、井手君は自分の動議を憶測され、林君の動議賛成されんことを心から念願し、われわれの意見の開陳を終ります。(拍手)
  263. 松木弘

  264. 大西正男

    大西(正)委員 ただいま二つの相反する動議が提出されておるのでありますが、私は民主連立派を代表いたしまして、井手委員の提出されました動議に対して賛成の意を表するものであります。  国会におきまする言論に限りませず、すべて言論は自由であり、政府に対しまして批判をいたしますことが自由でありますことは申までもないことであります。しかしながら国会の規則に規定をされておりまするように、われわれ議員は、議員の品位を保持する線に従つて、その批判も、また言論の自由も、これを行使しなければならぬことは、これまた当然であります。しかるに砂間君の昨日の言動たるや、まことに遺憾なことでありまするが、われわれ議員として保持すべき責任を逸脱いたしたことは、私ども明白にこれを認めざるを得ないのであります。すなわちきわめて薄弱な論拠に立脚して、あるいはまた、きめて飛躍的な論理を作為いたしまして、そうして不当に政府を誹謗し、あるいはまた国民の熱願でありますところの海外同胞引揚げ決議に対して、けちをつけるがごとき言動をいたしましたことは、明らかにこの意味において懲罰の事犯に該当するものと思うのであります。     〔発言する者多し〕
  265. 松木弘

    松木委員長 静粛に願います。
  266. 大西正男

    大西(正)委員 私は一々こまかい点を申し上げません。     〔発言する者多し〕
  267. 松木弘

    松木委員長 静粛に願います。
  268. 大西正男

    大西(正)委員 このことは、砂間議員自身が、この委員会におきまする質疑に対する……     〔「委員外発言するとは何ごとだ」と呼び、その他発言する者多し〕
  269. 松木弘

    松木委員長 傍聴人に注意しますが、傍聴人から発言されますと退場させますから、あらかじめ申しておきます。
  270. 大西正男

    大西(正)委員 砂間議員御自身も、一身上の弁明におきまして暴露的な演説をやつて決議案にけちをつけるという印象を與えたと思うということを明白に言われたのであります。砂間議員はそれを取消されると言われたのでありますが、しかしながら一旦口を出たこの事実を取消すわけには参りません。この事実は、すなわち砂間君自身が昨日の討論において、自分がかような印象を與える討論をしたということを自認されておると私は思うのであります。さような意味合いにおきまして、事実はもう、おおうべからざる事実であると同時に、今砂間君が幾らかなりとも改懐の情を現わされておるものと私は確言をいたすのであります。かような意味合いにおきまして、私は井手委員の御提案に対しまして賛成の意を表すものであります。(拍手)
  271. 松木弘

  272. 笹森順造

    笹森委員 ただいま井手委員から砂間一良君を懲罰に処し、陳謝せしむべしという御意見と、林君の懲罰に付すべからずという発言と二つありますが、私は懲罰に付し陳謝せしむべしという井手委員発言結論的に賛成するものであります。(拍手)  理由を述べます。ソ連地区からの引揚完了に対しまする国民熱意を反映いたしまして、この国会がしばしば本議場においてその熱意を披瀝したことは皆様方御記憶の通りであります。これに呼応して、われわれ議員ができるだけ未復員の人のために、また留守家族のために、あるいはまた軍人ならざるもので満州国におりました者が、ソ連地区に抑留せられておりましたものに対する処遇等に対しましても、この国会熱意をもつてその給與を定め、あるいはまた留守家族の手当を定め、その後における待遇改善をして来たのは、われわれみなが国会において努力して来た事実なのであります。(拍手)この事実には共産党の方々も賛成せられたと記憶しておるのであります。従つて砂間一良君の言われましたように、実際のやり方は、ちつとも愛の運動になつておらないということを申しますならば、国民全体の運動に対し、国民を代表してこの国会が今までやつて参りました、共産党自身も賛成したことに対し、大いなる矛盾であり、また国会の侮辱であると私に認めるものであります。(拍手)この点は当然この発言において国会侮辱に対して責任を負うべきものと本員は考えるものであります。  第二の点におきまして、共産党を除くほかの者は反対であり、共産党だけという言葉を使つておりますが、言動一致であるということも、これまた共産党以外のわれらも、熱意をもつて引揚げに努力して参りましたことに対する侮辱であります。この点においてもやはり最初の発言で身上弁明をいたしましたときに、その心情を吐露しておることで明白であります。  さらに申し上げておきたいことは、もちろん政府に対します要望について、これが熱意が不十分であるということの感じを受けたということでありますが、これは政府責任をとつておりますものの態度と、またそうでない野党の態度については感じ方が違うでありましよう。しかしこの点においても、何ら引揚促進について誠意と努力の足りないことを私ども感じている、こういう何らということについても、これが極言であろうと思います。つまりこれが真実を歪曲したので、こういうぐあいにして国民一般に感ぜしめるというところに、やはり責任を負わなければならぬと考えます。  御承知の通りに、終戦以後において政府が何回もかわつておるのであります。そのかわつております政府のやり方が、無論できるだけ、もつともつと私どもが要望したい点がありましても、国の実情がこの程度にあつて努力して来たので、私は今日野党として、與党を特に支持しよう、この政党を支持しようというのではなくて、政府自体が今までとりました態度に対して、やはりはつきりした判断を国民に與えておく必要があると思うのであります。この点についても、砂間君が行き過ぎの言葉を吐いておつたということに対しては、これは認容しなければならぬと思います。(拍手)  さらに申し上げておきたいことに、数字の問題でありますが、これが問題の焦点であります。このことについては、私は多少民自党の方々と意見あるいは感じが違うかもしれません。先ほど佐々木秀世君が、政府当局の明快なる御説明を聞こうという御発言に対して、私は心から賛意を表したものであります。これによつてはつきりと事実が究明されて、そうしてわれわれの熱意ある結論が出て来なければ、われわれが三十万おると考えられたものが、九万いくらしかない、特別なる戦犯を除いてはそれだけしかないと言われたときに、約二十万の数の相違が出たのであります。これは今日日本国民がおそらく糾明したいと考えておるに相違ないのであります。従いましてこの機会ちようどいい機会でありますから、引揚促進の対象となります明確なる数字を知りたい。このことについて私どもがぜひ知りたかつたのです。しかしながら遺憾ながらそれは委員長が私の発言を取上げなかつた。しかしてこれが流れてしまつた。しかし問題はここにまだ残ります。将来この問題が残るのです。これは私はぜひともこの場所において考えて、しかもこの数字を問題にしておりますに際に、もう一度思いを深くして行きたい。そこで何と言われているかと申しますと、三十万いるか、五十万いるか、あるいは一人もおらないか云々といわれておるのでありまするが、ここに私が非常に心を痛める点があるのです。どうしてそういう数の食い違いが起つたのか、はつきりしない、これははつきりする必要がある。つまり御承知の通りに、先ほどからだんだんの方々がお話になつておりまするように、終戦の当時に関東軍の所属の者、すなわち満州におつた者が、その隊形を解かれて、まず上におりまするところの司令官が地位を失つて、隊伍がばらばらにこわされて、下級の指導者によつてそれが指揮せられて、しこうしてソ連地区に抑留せられたという事実、これに対しまして、私どもはどれだけの者がソ連に抑留せられたかという報告を、全然ソ連政府から受けたという報告を、どこからも入手しておらぬのであります。ここに問題がある。しかしおおよそその当時の編成を見まするならば、われわれが見当がつかぬこともないのです。しこうしてその見当をつけた者との間にこうした相違があるというのは、そのソ連地区のどこに何人抑留せられているかという報告がないがために、引揚げて参りましたところの数が合つても、行つたろうと思われる者との、その相殺したあとの数が、最後的に私どもは三十万ほどいると思つたものが、今相違を来たしたというところに、大きな穴があるのです。この穴をほんとうに究明するためには、おそらく政府要路の方々も、はつきりした数を言うことがなかなか困難でありましよう。ところが私がここに特に言わんとするものは、この砂間君の言動に対して、私は特に注意しなければならぬから申し上げるのでありますが、私どもソ連地区から引揚げて参りました人方の話をたんたんと聞くところによると、彼の地において死亡した者が非常な大きな数に上つているのであります。あるいは十万と称せられ、十三万と称せられ、十三万五千と称せられている話を聞くのであります。私どもはこれがはつきりしません。ソ連から報告がありません。私ども連合国から聞いておりません。日本政府発表しておりません。しこうしてこの死亡した数がもしありとしたならば、戦争によつて弾にあたつて死んだのではなくて、抑留せらるることの理解と約束のなかつた者が抑留せられて、しこうしてこれが死んだというならば、その責任はどこにあるかということを、私どもはどうしも知らなければならぬ。(拍手)その点が一人もおらないということになるならば、行つておらないということによつて、これがかりにそういうような判断を下されるということになれば、非常に大きな問題になるのであります。こういうようなことを申します言の一つ一つを拾い上げてみますると、全体を通じて、私どもはどうしても砂間君のこの発表が、やはりある意図を含んでいるものではなかろうかというような、非常に残念ながらそういう憶測をしなければならない。これを言うために結局こうしたような支離滅裂な砂間君の議論になるのであります。(拍手)この意味におきまして、私は当然砂間君の発表しておりますることは、どうしてもこの場合に当然国民の前にはつきりせしむるために、この懲罰委員会においても内容をつぶさに検討して見なければならない。しこうして椎熊君の言つておりまするのは、何と言つているかというと、ここでは不穏当なる言辞を弄しと言つております。これらはみな不穏当なる言辞と私は考える、このゆえに当然懲罰に付すべきものだと考えるのです。しかしここで特にこの議場内においても、あるいは本会議においても、たまたま私どもが野党的な立場として、やはり民自党諸君としても、全体に対してもう少し寛仁なる態度をもつて、今後のやり方をお願いいたしますならば、私どもはもつと円滑に解決するのではなかろうかと思う。この点においてあなた方ももう少し御反省なさいと言いたい。  結論的には井手君の動議賛成をし、林君の動議反対の意思を表明するものであります。(拍手)
  273. 松木弘

    松木委員長 浦口鉄男君。
  274. 浦口鉄男

    ○浦口委員 井手議員の提出せられました砂間一良君を懲罰に付し、陳謝せしむべしという動議に対しまして、公正クラブを代表いたしまして、遺憾ながら賛成の意を表する次第であります。  議会における政党あるいは議員の言論は自由である。いかなる言葉をもつて政府を攻肇するとも、当然自由であるわけであります。従つて日本共産党の方々が、その立脚せる世界観あるいは人生観、社会観において、その主義主張をここにいかなる形において発表されても、われわれは一応了承するのでありますが、ただこのたびの事件が、この懲罰事犯が起きたことについての取扱われたこの議案、決議案が、在外同胞引揚促進の議案であつたというところに、私はたいへん遺憾を感ずるのであります。実はこの議案が昨日の運営委員会において可決いたしましたときに、私も実は運営委員の一人として出ておりまして、それが先月の二十七日に、先ほど共産党の方からも申されたように、最初に別な決議案として出ていた。それが二十九日にまたあとから出た決議案と一緒に審議されて、一本にまとめられたというそのいきさつについてよく聞きまして、最初から何となく一つのこういうことの起きる原因をそこにはらんでいたということを、私は感じたのでありますが、しかし昨日の運営委員会においてには、全会一致ということにおいて賛成討論をやめよう、会期の関係もあるしという御意見がありましたが、そこに砂間議員がどうしても——その一本にまとめられたときの事情は、どうしても引揚促進について日本共産党とほかの党との間において、重点の観点が違うから、その点を、賛成の中において表明させてほしいと、こういう切なる御希望もありましたので、実は私はそれに対しましても運営委員会が終りまして、あとの小委員会において、ここに佐々木議員もおいでになりますが、そういう特別な観点に立つて賛成演説をされたいというのであるから、許してはどうであるかということを、実は私も提言をしたのであります。そうしましたところが、社会党の松井委員から、それならば社会党も最初に賛成演説を申し込んでおるのであるからどうしてもやらして欲しい、こういうことを申し出ましたので、それでは十分間ということを限定して、もし二人出るならば五分ずつわけるべきだ、こういうことを、佐々木委員も提示されたのでありますが、私は散会の間ぎわに、しかし最初から一人ということに決定しておるのであるからなるべく一人にすることが、先ほどの運営委員会決議を尊重する意味で、なるたけ一人にしてほしいということで小委員会をわかれたのであります。それは佐々木委員も御承知のはずであります。しかるにその後五人もやるといういきさつについては、私は実は議場内にいてそのいきさつを知らなかつたのでありますが、そういうことは別といたしましても、私は事が引揚促進に関する、しかも日本人であるならば、そこに主義主張あるいは階級、あらゆるものを超越して、わが子を帰したいというこの気持に対しては、日本共産党の方もある程度は言いたいこともがまんし、政府を攻撃するにしても、何とかそこにやんわりとやるとか、あるいはひにくたつぷりである、そういう程度であつてほしいということを、私も実は念願しておつたのであります。具体的なことについては重複いたしますから申し上げませんが、ああいう言葉をもつて、ああいう雰囲気をもつて述べられたということに対しては、私に党派を超越して見て、たいへん遺憾であるということを感ずるのであります。そういう意味合いにおきまして、この特殊な決議案に対して、国民各位に国会に空気が何となくここに一本でないという感じを與えたことは、今後の引揚促進にも、私は非常に一つの障害になつたのではないか、こういうことを考えまして、遺憾ながらここに井手議員懲罰動議賛成せざるを得ないのであります。  ただこれは今佐々木委員も申されたのでありますが、懲罰の取上げ方というようなことについては、運営委員会におきましてもこれはいつも議論になることで、あまりにもこれが軽々しく取扱われたということに対して、それから昨日の椎熊氏の動議の提出の仕方、またその採決の進め方においても、たいへんむりがあるということを一応われわれも考えるわけであります。ぜひそういう点につきましては、今後の懲罰動議の取扱いについて一般的な、われわれお互いの戒心事として希望する次第であります。
  275. 松木弘

    松木委員長 これにて討論は終局いたしました。  採決いたします。議員砂間一良君に対して懲罰を科すべしとの意見と、懲罰を科すべきでないとの意見がありますので、まずこれについて採決をいたします。砂間君に懲罰を科すべきものと決するに賛成の方の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  276. 松木弘

    松木委員長 起立多数。よつて砂間君に対して懲罰を科すべきものと決しました。  次に砂間君に対して国会法第百二十二條第二号の規定により、公開議場における陳謝を命ずべしとの動議賛成の方の起立を起めます。     〔賛成者起立〕
  277. 松木弘

    松木委員長 起立多数であります。よつて議員砂間一良君に対しては、国会法第百二十二條第二号により、公開現場における陳謝を命ずべきものと決しました。  次にお諮りいたしたいと思いますが、陳謝文案につきましては委員長に御一任願いたいと思いますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  278. 松木弘

    松木委員長 御異議なければ、陳謝文案は委員長において起草することに決定いたします。  なお委員会の報告書につきましては委員長に御一任願いたいと思いますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  279. 松木弘

    松木委員長 御異議がなければさように決しました。  本日はこれにて散会いたします。     午後八時五九分散会