○砂間
一良君 御
質問がたくさんあり、頭が悪いのでときには忘れておることがあるかも知れませんが、こういう御
質問も起ろうかと思いまして、私の最初の身上の弁明のときに詳しく申し上げたかつたのでありますが、それを簡単にやれ簡単にやれということに
なつたものですから、その
趣旨が機能しなかつたと思うので、一応今の御
質問についてお答え申しておきます。
第一の
日本政府に
責任があるということでありますが、それはこういう
引揚げ問題というふうなことが起るような事態をつくり出したことについて、
日本政府に
責任があると、こういう広い
意味で申しておるのでありまして、もしあの戦争が始まらなかつたならば、
国民を海外に送らなかつたし、こういう
引揚げという問題も起らないのでありまして、従
つてこの
引揚げ問題というものを起したその事態の原因の
責任者は、
日本政府であるということを申したのであります。しかしこの終戦後、戦争が済んで、
日本は敗戦国にな
つて、連合軍が来て占領下にある。こういう事態にあ
つてまだ講和
会議も開かれておりません。
日本は外交上の正式な関係もありませんし、外国の国々と正式に交渉するような資格も権利もないわけであります。こういう場合におきまして、それでは海外に
残留者がおる。それを帰さない
責任はどこにあるということになりますと、これはなかなかむずかしい問題でありまして、先ほど浦口さんの御
質問のときにもお答えしましたように、
日本の
国民や
政府が、連合軍の特定の国を相手どりまして、
引揚げの遅延の
責任を追究して行くというふうな正当な権利が、
日本の
国民や
政府にあるかどうかということにつきましては、私は国際法の方に暗いのでありますからよくわかりませんが、とにかくここで私が、第一に
日本政府に
責任があるというふうなことを強調いたしましたのは、初めに申し上げましたような、そういう広い
意味で申し上げたのであります。その点を御了承願いたいと存じます。
それから第二に
数字の点につきまして、
政府の
答弁がでたらめでな
つておらないということは、これは
引揚げの特別
委員会でもしばしば問題にな
つて来たことでありますし、また先ほ
ども私の
説明の中にも一応申し上げたつもりであります。いかにでたらめであるかということは、先ほ
ども厚生省の
発表の
数字や、海軍省の
発表の
数字や、あるいは外務省が引揚特別
委員会に
発表しておるあの資料によ
つても、三いろの
数字が出ておるのでありまして、どれを信用していいかわからぬ。外務省の引揚渡航課で配付してある
数字にしましても、次々にかわり
つておる、あるいはゼロの所から人が帰
つて来たり、あるいは大連地区から帰
つて来たり、
——大連地区は
残留者ゼロとな
つておりますが、ここから帰
つて来た人なんかも、実は満州地区あたりから帰
つて来たのじやないかと思います。何となれば
残留者のあるのは満州地区、
ソ連地区以外にはないわけでありますから、もし
政府発表の
数字を信用いたしますと、ゼロの所から人が帰
つて来る道理がない。もしあるとすれば
残留者のある所から帰
つて来なければならないわけでありますが、それをゼロの所から二千何百人も帰
つて来たことにして、
あとからそれを修正して、また帰
つて来た人数をこれから差引いてゼロにするというような計算をや
つておるので、どうも私
どもは一ぺん
発表した
数字が、もう絶対に信用のおける正確な
数字であるというふうには受取れないのであります。しじゆう
政府発表の
数字がぐらぐらかわ
つておる。ゼロの所から人が帰
つて来たりするというようなことにつきましては、なかなか確信が持てないということを、そういうふうな言葉で表現したわけであります。
それから第三の美辞麗句を並べておるけれ
ども、
熱意と努力が足りないということにつきましては、私
どもは実際問題といたしましてそういう
感じを受けるのであります。たとえば
引揚げに対しましては
国民愛の運動とか、いろいろいわれておりますが、舞鶴へ上陸した
人たちの生活なんかを見ましても、隔離されて一人々々
一つ部屋に入れられて、その部屋の入口に警察官が二人も三人も監視しておりまして、便所に行くまでついて歩く、あるいは大勢入れております部屋の中に三人、四人の警察官が入
つておりまして、一々言動を注意しておるというふうなことは、
引揚げて来る
人たちを、あたかも犯罪者か囚人であるかのごとく扱
つておるのであります。こういう点がはたしてあたたかい、迎える
態度であるかどうか、長いことあの寒いシベリヤにおりまして、やつと
なつかしい母国へ帰
つて来た。それを迎えてくれる
態度がそういうような
態度である。あるいは十一月八日に永徳丸で帰
つて来た
人たちのうち、十二名が行方不明になりました。この行方不明の問題につきましては、私
どもは引揚援護庁へ参りまして援護庁長官にも、ぜひこの
人たちの消息を明らかにしてもらいたい。そうして留守
家族が待ちわびておる家庭へ、一日も早く帰してもらうようにしたいというので、何べんもお願いした。これは
引揚委員会でも問題にいたしました。ところが
政府側は
委員会におきまして知らぬ、存ぜぬの一点ばりなんです。そうしてお
つて調査してみますということを申しておりましたが、これは二十九日の
引揚委員会に出て来た援護局の宮崎次長が言うところによれば、本日やつと帰つたらしいと
言つておりました。しかし
あとから聞けば援護局の
議員と
日本の警察官が、汽車に同乗して一緒に東京まで連れて来て、市ヶ谷の復員局の宿舎に、警察の監視つきで入
つておつたのでありまして、この間の消息、いきさつについては、
政府当局は十分
知つておつたはずでありますが、それを知らぬ存ぜぬというようなことで、
国会に対して、
議員に対して、その詳細を
説明しないというような
態度、こういうふうな点につきましても、私
どもは
政府が
ほんとうにあたたかい愛情を持
つて、
熱意を持
つて、
引揚げて来る
人たちを迎えておるというふうには、どうしても考えられないのであります。あるいは帰
つて来た
人たちの就職の問題なんかにしましても、たとえば三菱の工場であるとか、あるいは
日本鋼管だとかいうところに出征前勤めておりまして、そこに籍のある
人たちも、今年の六月、七月ごろになると、みんな首にしておる。こういうことになりますと
帰還者の定着援護ということについて、
政府の措置があまり積極的ではないように思われるのであります。こういうことが私は、口の先では美辞麗句を
言つておるけれ
ども、実際においてはその施策において
熱意と努方に足りないような
印象を受けるということを申した
理由であります。もつともこれは
印象、
感じでありますから、皆さんは今の
政府の
態度がそうじやない、これは
政府は大いにや
つておるのだというふうにお
感じになることは御自由であります。
それから第四番目の三十万おるか五十万おるか、あるいは一人もおらぬかということでありますが、この点につきましては先ほど御
説明申し上げた
通りであります。一人もおらないかということは、これは全部の文章の経緯からしましても、かりにそういうことをあげた言葉の上の表現でありまして、海外に今日一人もおらないということを私が信じ切
つて、ここに断言したわけではないのであります。実際問題としてはおそらく海外に一人以上は残
つておるでありましよう。南方の
残留者はゼロという地域からでさえも、続々として大勢の人が帰
つて来ておるような実情でありますから、まだ
残留者のゼロという地域にもあるいはおるかもしれません。あるいは厚生省の岡村事務官の言葉を信用いたしますと、南方方面には三万人も残
つておる、そのほか戦犯関係の
人たちが、何千人も残
つておるというようなことを、
政府委員でさえも申しておるようなわけでありますから、私はまだ海外には未
引揚者が実際に残
つておると思います。
それから第五番目のつくり方が違
つておるということでありますが、これはもう先ほどからいろいろ御
説明申し上げておりますように、南方の
数字、満州地区、
ソビエト地区の
数字の場合におきましては、どういう根拠から、何を資料にして計算されてつくられたか私
どもは知らないのであります。どうも合点がいかない点がたくさん出て来るのであります。先ほ
ども読み上げましたように、
昭和二十年七月十六日、南方に向
つて出発した運送船が、二週間後に朝鮮海峡の沖合で魚雷攻撃を受けて、八千名の
人たちが全滅してしまつた。これは当時の部隊公報にも出ておるのでありますが、その戦没者の氏名について、舞鶴の援護庁の引場合帳の中には、
ソ連地区の未
帰還者として載
つておるというふうなことが出ておる。南方の方は次第に
引揚げが完了して
残留者は減るが、
そつちの方から実際にはまだ人が続々として帰
つておる。
ソ連にはたくさん残
つているというふうに言われておるのであります。たとえば大連地区からたくさんの人が帰
つて来ましても、それが満州地区や、その他の
残留者があるところからの
引揚げにはな
つておらない。
残留者がゼロとな
つておるところの地区から、わざわざ基本数を滅して、そしてゼロということにな
つておる。そういうふうにいろいろな
数字上の操作の点などを見ますと、どうも統計の
数字というものは、もとより
数字でありますから正確なものでなければならないと思うのでありますが、その
数字を構成する、いわゆるつくり方といいますか、そこに何か割切れないものを実際問題として感ずるのであります。
それからその次に第六の愛の運動でありますが、これは先ほどの
政府の美辞麗句と、
熱意と努力の足りない云々というところで申し上げたので、大体わか
つていただけるのではないかと思います。
それからその次の舞鶴援護局の中に監視づきにな
つておるということでありますが、これは事実であります。ただいま
木村さんの御
質問によりますと、帰
つて来る人の中でも、いろいろと当局をてこずらしたり、あるいはなかなか言うことをきかないような者もあるからして、そういう場合には監視するのも必要じやないかというふうなことも申されましたけれ
ども、しかし私は実際にこの
引揚げて来た人にも幾人も会
つております。それらの人からいろいろ経緯を聞いて見ますと、別に乱暴するとか、あるいは監視をつけなければならぬほどの危険人物であるようには、私の会つた
人たちからの
印象では思わないのであります。何のための監視だかよくわかりません。
その次に第八番目のきのうの私の一身上の
趣旨弁明のところで申し上げた言葉の中の、反ソ、反共的とかの言葉でありますが、私は
日本の国内に反ソ、反共的な人が一部分存在するということは、これは事実であろうと思います。もつともこの点につきましては皆様のお考えは御自由でございまして、反ソ、反共の人は一人もないというふうに確信されておる方もあるかもしれません。しかし私の感ずるところによれば、反ソ、反共的な一群の
人たちがあ
つて、そうしてこの
引揚げ問題なんかも何かそういう反ソ
宣伝、反共
宣伝の材料に利用し
——悪い言葉で言いますと、悪用しているというふうな
感じを、ときたま受けることがあるのであります。たとえば先だ
つてソヴエト大使館に
全国引揚連盟の方々が陳情に行かれたのでありますが、それはきのうも他の
議員諸君の御
発言を聞いておりますと、二十四時間徹夜をなさ
つて、実に涙のにじむような悲痛の思いで陳情に行かれたというのでありますが、しかしまたこれは半面から考えますると、何かソヴエト代表部に対する当てつけであ
つて、反ソデモに行つた。そうしてあそこの門前ですわり込みをや
つて、いわば集団的な脅迫、威迫によ
つて、何か陳情にことよせまして、強訴をや
つておるというふうに見られないこともないのであります。ことに陳情団の中には参議院
議員のマークをつけた人も混
つておりまして、別にそれらの
人たちが煽動したというふうなことはないでありましようけれ
ども、混
つておつたということも新聞なんかで見ております。こういうふうな問題はもう少し冷静に考えまして、特に
連合国のある特定の一国に対してだけ、
引揚げ問題を当てつけがましく持
つて行くというふうな行き方には、私
どもはどうも
賛成しかねるのであります。何も
日本共産党はソヴエトの手先でも何でもございません。私
どもはやはり
日本国民の一員としまして、私も静岡県の伊豆出身でございますが、先祖代々から純粋の
日本人でございまして、
日本の国をよくして、われわれの地位を引上げることにつきましても、いつも熱心に心配してや
つておるわけでありますから、決して特定の国の手先とか、あるいは特定の国のお先棒にかつがれるような、そういうふうなことは厳重に警戒しておりまして、また自分といたしましても、そんな意思は毛頭持
つておりません。ただしかし冷静に客観的に見た場合におきまして、どうも最近の
引揚げ問題の扱い方というものが、何かこの問題を反ソ、反共
宣伝の材料にしているような
感じを受けることは私の実感であります。これは
感じでありますから、皆さんはそれと
反対のお
感じを持たれる方があるかもしれませんが、それは主観の相違でありまして御自由でありますけれ
ども、私
どもはとにかくそういうような
感じを持
つているのであります。
最後の第九番目の政治的かけひき云云ということも、今の
説明で大体御
了解願えるのではないか。私
どもの希望するところは、この
引揚げの問題は非常に重大な
国民の関心事でありますから、これを国際政治
——と言つたら語弊があるかもしれませんが、とにかく政治的なあれに利用されたくない。これは
ほんとうに超党派的な立場からして一刻も早く全部
日本の国に帰
つてもらいたいというふうに念願しているものですから、それがほかの方面に、ほかの道に利用されるような形跡のあることにつきましては、
反対せざるを得ないから、ついそういうふうな言葉が出たわけであります。
あまり
木村さんの御
質問がたくさんありましたので、十分私の意を盡さなかつた点があるかもしれませんが、一応お答えを申し上げた次第であります。