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1949-12-03 第6回国会 衆議院 大蔵委員会 第25号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十四年十二月三日(土曜日)     午前十一時三十分開議  出席委員    委員長 川野 芳滿君    理事 北澤 直吉君 理事 小峯 柳多君    理事 小山 長規君 理事 前尾繁三郎君  理事 川島 金次君 理事 早稻田柳右エ門君    理事 内藤 友明君       岡野 清豪君    佐久間 徹君       塚田十一郎君    苫米地英俊君       西村 直己君    三宅 則義君       宮幡  靖君    宮腰 喜助君       河田 賢治君    中村 寅太君  出席国務大臣         大 蔵 大 臣 池田 勇人君  出席政府委員         (証券取引委員         会事務局長)         大蔵事務官   湯地謹爾郎君  委員外出席者         專  門  員 黒田 久太君         專  門  員 椎木 文也君 十二月二日  委員林百郎君辞任につき、その補欠として志賀  義雄君が議長の指名で委員に選任された。     ————————————— 本日の会議に付した事件  証券政策に関する件     —————————————
  2. 川野芳滿

    川野委員長 これより会議を開きます。  まず証券政策に関する件を議題といたします。証券取引委員会事務局長湯地謹爾郎君がお見えになつておりますので、証券界現状を聽取いたしたいと存じます。湯地謹爾郎君。
  3. 湯地謹爾郎

    湯地政府委員 ただいま委員長からお話がありました最近の証券界、特に株式市場状況について、ごく簡単に御説明申し上げたいと存じます。  最近新聞等でもう十分御承知であろうと思いますが、この秋あるいは暮れごろには株の値段相当上るであろうという一般新聞などの論調もありますし、また証券業者も、あるいは株を持つておられる方々も、そういうような見方をしておつたのであります。しかもこれは大体毎年暮れから春にかけて、株の値段がだんだん上つて来ておるというような従来の経験から見ましても、一般にそういうふうに考えておつたわけであります。ところが実際におきましては、むしろ株の価格状況は本年の五月ごろが一番上つておりまして、それからだんだん下つて参りまして、それがまた八月から九月へかけて一時持ち直したような形になつてつたのでありますが、それがさらに九月末から最近まで、ほとんど低落の一途をたどつておるというような状況でありまして、これが一般証券業者あるいは株式を持つておられる方々に対しまして、非常な関心の的となつておるのであります。この原因といたしまして、われわれが考えておりまするのは……。
  4. 川野芳滿

    川野委員長 池田大蔵大臣がお見えになつておりますので、湯地事務局長証券界現状を聽取する件はあとまわしにいたしまして、この際質疑に入りたいと思います。
  5. 小峯柳多

    小峯委員 政府考えておる証券政策輪郭を、やや系統立つてぜひ大臣から伺いたい。と申しますのは、御承知のように金融機関の機能が正常化されつつありまして、短期資金の方は市中銀行へ、長期資金の方は株式社債、足りないところは特殊金融機関からというような原則が確立されつつあります。従つて証券市場流れというものが、よほど太く整備されなければならぬということが考えられるのでありますが、どうもまだその河川改修が十分行われていないような感じがいたします。御承知のように最近企業再建整備に関する増資の問題、これが非常にたくさん出ておりまして、今までとは少し違つた規模でもつて証券市場というものが運営せられなければならぬようになつておると思うのであります。そういう意味で今までと違つた構想でもつて証券政策のことを考えて行かなければ、産業の発展ひいては経済再建の線が意図通りに運び得ないだろう、そういう観点からぜひこの際政府当局においてもきつばりした証券制度を立てて、それを強力に推進していただかなければならない。幸い予算の審議を通しまして、衆議院においても参議院においても、大臣はそれぞれその線の発言をしているようでありますが、この機会にそういうものをまとめて大臣構想を伺つておけば、最近半恐慌をもつて呼ばれる市場現状に即しても有効であると思います。そこで大臣お話を伺いたい。ただその考え方の中には、当面すぐに手を打たなければならない応急策もあらうと思います。また証券市場が非常に大きく拡大しなければならないという国民経済的な要請から、恒久的な、少し先のことまで考えての対策と、おのずから二つあるだろうと思います。その辺のことも頭に入れていただいて輪郭を御説明願い、それに対して重ねていろいろの点を明らかにしたいと思います。どうぞお願いいたします。
  6. 池田勇人

    池田国務大臣 お答え申し上げます。最近証券事情相当低落のかつこうで、みなから心配されているのは事実であります。これが原因考えますと、株もたれが大きい一つ原因だと思うのであります。御承知通りに今年度におきましては、復興金融金庫長期資金貸出しがなかつたので、各会社自己資本の調達に努力いたしました。従いまして四月から九月までにおきまする増資は四百数十億円に上つている、しかもまた最近におきまして企業再建整備認許可の場合におきまして、増資条件にされておりまする関係上、将来相当の株が出て来るということを期待いたしまして、相当の株もたれがあるのであります。従いましてまず第一にその株もたれのないようにすることが緊要だと思うのであります。従いまして将来の株もたれになりまするところの証券処理調整協議会におきまして売り出します株につきましては、中止とまでは行きませんが、よほど手心を加えなければならぬと思います。御承知通りに第一・四半期、第二・四半期におきましても、二十数億円ずつ出しているのであります。第三・四半期にも同額程度予定いたしておりまするので、この証券処理調整協議会から出す分を極力先に延ばすということが、株もたれを緩和する一つ方法である。また企業再建整備の場合の増資条件とする認可につきましても、ただちに増資の手続をとることをしなくて、六箇月あるいは一年なりその準備期間を置く、こういう方法をとつて行きたいとただいま考えておる次第であります。  次に株もたれ以外の株価低落原因は、何と申しましても、証券金融につきましての制度が十分でないということによるのであります。従いましてこの実情を調べてみますと、四大証券会社におきまして五、六十億の株を持つておる。こういうようなことは証券に対しまして、大衆の消化力がなくなつたという一つの証拠でありますが、これが株価操作に非常に影響がありますので、証券会社の方に対しましてできるだけ金融の道をつけたいと思つておるのであります。この金融の道をつけますのに、証券金融公庫とか、一つの特別の機関を設けるという考え方もあるのでありますが、これはずつと将来を見通しまして、てこ入れ機関的なものを設けるということは策の得たものではないと思いますので、今ありますところの証券会社に極力資金を融通して行く。証券会社への資金の融通はやはり生命保険を通じてやるのが、本筋と思うのであります。私といたしましては、生命保険の各社が従来の証券引受け知識経験を持ち、また相当の資力もありますので、こういうものが出動して来ることを期待しておりますし、またこれに対しましては、できるだけの資金的援助をいたすべく用意し、またその実行にも移つておるわけでございます。またこれで足りないところは、市中銀行株式担保の貸出しをあまりこわがらずにある程度積極的にやつて行つて証券会社を育成するというような方向をとつて行くべきではないかと思うのであります。応急対策といたしましては、そういうように考えております。恒久的対策といたしまして、もちろん長期資金というものは自己資金でやるという原則をとつて行くのでありますが、あまり急激に株がふえて行きますことは、やはり消化の点から言つてもまた今の金融の点から申しましても、ある程度チエツクして、株式よりも社債の方に移つて行くべきではないかという考えを持つておるのであります。今社債発行をやりますのは、御承知の透りに特別の電力会社等を除きましては、払込資金限度を越えてはいけないということになつておりますので、この限度を拡張いたしまして、社債設備資金をまかなうというような方法を講じたいと思います。大体法務庁とも相談いたしまして、具体案を練りつつあるのであります。何と申しましても、金融につきまして、できるだけ処置をとらなければいけない。その意味におきまして株式よりも社債を持たす。また社債ばかりでも何でありますので、日銀の貸出しの担保、ずつと昔やつておりましたような相当の大会社株式担保にし得る制度をやつて行きたい。これにつきましては異論がありますが、関係方風も大体了解がつくのではないかと考えておる次第でございます。ただいま考えております恒久対策につきましては、以上申し上げた点であります。御質問によりまして足りないところは補いたいと思います。
  7. 小峯柳多

    小峯委員 構想を伺いまして、特に恒久対策の中で社債に重点を置かれるというお考えは非常にけつこうだと思います。今お話のありましたように、払込み資金の範囲に限定されておるということが直されますれば、よほど社債に対する長期資金的な役割も拡大されると思います。しかし先ほど大臣からお話がありましたように、とにかく最近の株もたれというものは非常に大きいのでありまして、私の調べたところによりますと、株式会社制度日本に施行されて以来、二十三年三月までの払込み資金の総額は約五百億弱である。ところが二十三年四月から二十四年三月までに約四百億ふえております。今年の二十四年四月から、これは実は今年の分でございますが、上半期はお説の通り四百億強、今後なお四百億くらいはふえるのではないかという見通しのようであります。そうしますと、株式会社制度が施行されてから二十三年三月までに五百億で、最近そのあとの二箇年間で千二百億ぐらいふえるような形になるわけであります。これは貨幣価値の低下の面もありましよう。いろいろな面もありましようが、何しろこれだけになるということは尋常一樣のことでは行かない。それからさつきお話の出ました証券金庫の問題もぜひ考えたいのでありますが、また大臣のお考え一つ見方でありましよう。しかしそれができないといたしますれば、これもお話にありましたが、日銀見返り担保制度はつきりここで確立することが、最も必要だと私は思うのであります。その線での御構想があるようでけつこうでありますが、しかし問題はそういう制度ができましても、現実にそれが働き出すかどうかにかかつていると思うのであります。最近の市中銀行建前としては、一応公式の上ではそういうことになつてはおりますが、現実の問題としましては、これがなかなか動いていないようであります。  株式金融は、こまかくわけますれば、業者に対する引受け金融だとか、あるいは新株式の払込み金融だとか、あるいは既発行株式に対する金融だとかいろいろありますが、ひつくるめていい株券を持つて行けば金融がつくというような道を、はつきり立てる必要があると思います。その建前のもとに、大蔵大臣はどれくらいの資金をわくとして年内に予定しておられるか。これはかなりデリケートな問題でありますので、御答弁しにくいと思いますが、一応そのくらいの目安を立てておきませんと、公式はいい、言つていることもいいが、実際がなかなか伴わないと思いますので、その点に関しまして御答弁いただければいいと考えるわけであります。
  8. 池田勇人

    池田国務大臣 年内にどれだけの証券金融日銀等を通じて出すかという問題は、ちよつとお答えしにくいのでありますが、大体相当程度出す。保険会社を通じて出す金額は腹には持つておりますが、しかし保険会社の方の意向も聞きませんので申しかねます。ただ今の状態をもう少し上向きにさしたいという気持もあります。しかしこれはやはり経済界人気でございますから、買う金自体よりも見返り資金の運用についても考えなければなりません。従いまして年末金融に対しましては、世間では非常に押えているということを聞くのでありますが、決して抑えてはいないのであります。見返り資金年内に四、五十億円くらいは出せるということも期待し得るのであります。こういういろいろな点を考えまして、適当な金額証券金融として出したい。今からたとえば十億出すとか、十五億出すとかいうことは申しかねますけれども、とにかく金融状況を見ながら、極力証券の貸出しに努力して行きたいと考えます。
  9. 小峯柳多

    小峯委員 しにくい答弁でありますが、しかしその場合に金額でなくて、たとえば優良な銘柄だけを選んで、その値段に関しては一定の限度市中銀行に貸し出す、そして金融日銀でめんどうを見るというような原則の確立については、どういうふうに考えておりますか。
  10. 池田勇人

    池田国務大臣 お話のようなことをいたしたいと考えております。これはやはり日銀あるいは市中銀行代表者会つて話をしなければ、押しつけるというわけには行きません。お話のような方向に行くように近々努力したいと考えております。
  11. 小峯柳多

    小峯委員 先ほどの御答弁の中にも、株式市場経済的ないろいろな意味集中性の表現だ、こうりう意味のことをおつしやつておりましたが、私はもちろんそういう意味株式市場を見ております。経済政策、特に池田財政政策を私は非常にいいものだと思つておりますから、そこから株式が下つているとは解釈したくないのであります。ただ株式市場内部機構と申しますか、先ほど来申しますように、非常に大きな流れを通すだけに、河川改修はできないという内部機構の問題を、実は相当重く見ておるつもりであります。そういう意味でお伺いしたのでありますが、ぜひそういう意味で当価の対策だけでなくて、国民経済的な角度から証券政策は必要だということをよく御認識願いまして事務当局に対しても積極的な研究と具体的な対策を進めるようにお願いしたいと思います。  なお証券民主化運動というのを大蔵委員が中心になつてつておりますが、この証券民主化運動というものは、国民に対する証券知識の普及ということかおもなる建前だと思いますけれども、実際問題といたしましては、今まで株式を持たないような人たち株式を買つてもらうような機会をつくつた。それがたまたま今の値段より高いところで持つてもらうようなことになつて、ラジオでもやつておりますが、そのために初めて株式を持つたが、値段が下つて損をしたと言つて——これはさか恨みのようにもなりますが、現実の問題としてはまさにそうなんでありまして、その点から申しましても、私どもはある意味では責任を感じておるようなわけであります。そういう意味で特定の業者の保護であつてはいけないと思う。広い国民経済的な立場から、証券市場というものを見直して、そういう面で今までと違つた行き方をしておるのだということを御認識願つて、重ねて熱烈な要望とともに御健闘をお願いして私の質疑を終ります。
  12. 北澤直吉

    北澤委員 聞くところによりますと、最近税務署証券会社を調べました結果、証券界に集まつておりましたいろいろの資金が分散しましてそのために証券に対する購買力大分減つて、その結果証券市場に不安を起したというふうなことを聞いておりますが、そういう事実がありましたかどうか。
  13. 池田勇人

    池田国務大臣 七、八の会社につきまして、法人税調査参つたのであります。証券会社調査はよほど慎重にやらなければなりませんので、私は証券会社調査年内にはしないで、年が明けてゆつくりやるように指示いたしておるのであります。調べました七、八の会社につきましては、経理上いろいろな問題があるのであります。私は証券会社の会計につきましては、こういうときでありますから、数十年来やり来たつたやり方に、ある程度改正を加えたいというので、調べました七、八の会社の結果を見まして、税務の取扱いにつきましても実際に沿つた改正をして行きたい、こういう気持を持つておるのであります、なかなか普通の会社とは違いますので、いろいろな問題があるのでありまするが、各会社の内容にわたることでありますので一応避けますが、こういう年末年始のときにおきましては、業界を刺激するようなことは差控うべき問題だと考え、しばらく全再的な調査はとめさせております。
  14. 北澤直吉

    北澤委員 もう一ぺん伺いたいのですが、ただいまも小峯委員からお話があつたのであります。証券の方でありますから、その価格にいろいろ動揺があるのはあたりまえのことでありますが、もしこの証券値段一般的にある程度以下に下るということになりますと、証券市場によつて長期設備資金を調達するということは、なかなか困難だと思うのであります。何か政府におきましてはある程度の目安をもつて、もしそれ以下に下る場合には、積極的にいろいろな方法を講じて買出しに出る。あるいは生命保険ですか、こういうものを通じて買出しに出る。そういうふうな場合にある目途を考えてそれ以下に下る場合は出るというようなお考えがあるかどうか、伺いたいと思います。ちようどアメリカでは、農産物が非常に下りましたので、ある程度以下に下つた場合には政府で買い取る、いわゆる支喜価格というものがありますが、証券につきましてもそういうお考えがあり得るかどうか、お伺いいたします。
  15. 池田勇人

    池田国務大臣 戦争中にそういう特別の機関をつくりまして、下つた場合に、てこ入れなんかを政府がやつたことがあるのでありますが、結果としてはあまりよくありませんでした。私もそういうやり方は好ましいやり方ではない。やはりこれは民間の証券業者あるいは証券保有会社等が、自分証券価値維持に出動するので十分で、しかしその自分証券価値維持に出動する金融につきましては、政府としては間接に援助したい、こういう考えでおります。
  16. 宮腰喜助

    宮腰委員 今の問題に関連してでありますが、証券売買の過程における差益税と言いましようか、こういう問題について証券会社方面では、実際は最後の名義書きかえまでの途中において、白紙委任状で転々と売買されまして、その中間の人が偽名のために、税の徴収に非常に税務署が困難を来しておるという話を聞いているのですが、これなども実際の証券売買差益税をとると、相当金額になると思うのであります。この問題について税務署長にもお話伺つたのですが、どうも中間白紙委任状売買されている人があり、また白紙委任状売買されているところへ差益税の問題で通知を出してやると偽名の人が多い、そのために税の徴収に困つているということが言われているのですが、そういう場合には何か特別の方法を大蔵省で考えておりましようか。
  17. 池田勇人

    池田国務大臣 これはむずかしい問題でございまして、お話通り株式譲渡所得に対しましては、その所得の半分を一般所得に加算して課税することになつておるのであります。しかしこの制度を施行いたしましても、実際面としては今お話のような点がありますので、なかなか課税の万全を期するわけには行かないのでりウます。従いましてシヤウプ勧告案におきましては、株式白紙委任状つき売買については、一箇月以内に会社に登録するようにという制度を勧告しておられます。私は一箇月以内に売買があつたときに登録するということは、今の日本状況から申しまして非常にむずかしいことじやないか。東京に本店のある銀行の株を、東京都内売買する場合事におきましてはできましようけれども、地方にいる方で、地方での売買を箇月以内にということは、なかなか困難な問題だと思いまして、シヤウプ勧告案も実は今検討いたしておるのであります。この株式譲渡益を根こそぎとるということになれば、そういうふうな方法も厳格にやつて行かなければなりませんが、株式譲渡益というものは、所得価格につきましても計算につきましても最もむずかしいもので、よほど慎重に考えなければならぬと思うのであります。ことにシヤウプ博士考えでは、今までのように譲渡所得を半分課税するというのでなしに、全額課税する、しかも五年なりにわけてうわづみで課税する、こういうようなことは世界中どこでも行われていない。アメリカでも大体譲渡益の四分の一を課税するということになつておるようでありますが、これも非常に議論の的になつております。慎重に今検討を続けておる状況であるのであります。お話のように今株式譲渡所得に対する事税はなかなか困難なので、十分には行つておりません。将来の問題として研究いたしたいと考えております。
  18. 川野芳滿

    川野委員長 ほかに御質疑ございませんか——なければ証券取引委員会事務局長より証券界現状の聽取を続行いたします。湯池謹爾郎君。
  19. 湯地謹爾郎

    湯地政府委員 先ほどちよつと申し上げました通り、株の値段関係におきましては、五月を最高として最近だんだん低落して参つておるのでありまして、これは昭和二十一年の八月を一〇〇にした数字で計算いたしますと、本年の五月、これはちようど取引所が再開された月でありますが、これは七〇〇という数字を示しております。それがこの十一月では四〇〇という数字になつております。しかもこの四〇〇というのは一箇月平均でありますから、月末におきましてはさらに少くなつておるというので、大体五月に対して半分程度になつておるというのが状況であります。この原因といたしましては先ほど大臣からもお話がありました通り、いろいろな原因があるのであります。もちろん根本原因といたしまして、日本経済というものの実力そのもの根本原因になつておるということはもちろんであります。輸出が必ずしもよくなかつた、さらにボンドの切下げというようなことがわが国経済に影響いたします点も非常にあつたということと、もう一つは株の人気と申しますか思惑と申しますか、ある程度業界あるいは投資、これは主として商売的に投資する人の間に大いにあると思うのでありますが、ポンド切下げ伴つて平価切下げもあるのじやないかというような見込でおつたのが、最近平価切下げはないということが明らかになつたために、それに対するいや気と申しますか、思惑に対するいや気と申しますか、それによつて株を売りに出るというような株の売買上の原因もあるのであります。しかし何といつてもこの原因の一番大きなものは、先ほど大臣の申された通り様の発行が多過ぎるということであります。今年の四月から九月までにすでに四百十億円の払込みが行われておるのであります。もつともこの時代は株価もある程度維持しておりました関係上、それらの増資も割合にスムースに行われて参つたのでありまして、ただ八月に紡績、繊維関係増資が幾らか不利になりました関係上、これを延期したというような関係で、これは九月ごろから相当その消化は困難になつて参つて、十月から年末までに約二百五十億ばかりの増資が行われる見込みであります。それにさらに一月から三月までの分を含めますと、本年中に約八百億から八百五十億の増資なり、会社の新設による株式発行が行われる。それだけを消化しなければならぬという状況でありまして、これを昨年に比べますと約三倍の増加になつております。そのほかに社債関係におきましても、この一年中に約百六十五億が発行される見込みであります。社債の方は相当消化がいいのでありますが、株の方は株価関係等によりまして、消化という問題が非常に大きくなつて参つております。しかも最近増資が多くなつた。ことにそれがいずれも十月あるいは十一月に重なつて参つた関係といたしましては、企業再建整備も大体大詰めに来た関係もあつてそれによる増資、あるいは八、九月ごろから相場の秋高、あるいは年末高ということを見越して、その時分に発行すれば相当のプレミアムを取得できるであろうというような見込みもありまして、そこに重なつて参つたということが非常に大きな原因になつておると思います。  それからいま一つは、大臣からお話がありましたいわゆる金詰まり関係であります。これは証券界におきましてもこの十月、十一月等にかけて相当増資払込みの株が出ております関係上、証券株式を持つている人々もその払込資金に充てる意味において従来持つてつた親株を売却して新株の払込みに充てる。あるいは証券業者の方といたしましても、この株式の引受けにつきまして、五、六月、ごろ非常にスムースに消化されておりました点もありまして、証券業者株式の引受けを相当競争して引受けをした。自分の実力以上に引受けるというような点もありまして、証券業者は株を抱いてそれが消化できないために、証券業者自体としての金融にも相当詰まつて来た。そのために株式市場におきまする価格がだんだんひた押しになつて行くということが、次の大きな原因であろうと思います。  いま一つ原因は、これは必ずしも表に出ておりませんが、最近東京業者におきましては、税金の納入のために検査を受けた会社はもちろんのこと、そのほかの会社も大体今までの申告した税金を再検討いたしまして、自分で自主的に修正申告を下ることになつたのでありますが、その資金の払込み期日が追徴税あるいは加算税等の関係で、できるだけ十一月までに修正申告をして、納めるという関係もありまして、納税資金を得るために優良な、いわゆる値がさ株を売却して、その資金に充てるというようなことも重なりまして、現在のような苦境になつておるとも思うのであります。その他一番基礎的な事実といたしましては、先ほどポント切下げ後におきまする輸出の関係、あるいは供出代金の出まわりが遅れておる等のいろいろな原因があろうと思いますが、直接の原因先ほど申し上げました通り株式の供給過多ということと、証券業者金詰まり並びに払込み資金を出す株式の所有者自体の金詰まりということが、大きな原因になつておるのではないかと思います。はなはだ簡単でございますが、一応以上申し上げて説明を終ります。
  20. 川野芳滿

    川野委員長 質疑があればこの際これを許します。
  21. 小峯柳多

    小峯委員 証券に関する政策の立案、推進といいますか、そういう部局は大蔵省内であなたのところでおやりになつておるのですか。
  22. 湯地謹爾郎

    湯地政府委員 大蔵省の中にあります証券取引委員会というのは、御承知通り、昨年制定されました証券取引法の実施監督ということが主たる任務でありまして、これは有価証券発行売買、いわば発行市場、流通市場の面におきます監督、あるいは法律の実施に当つておるのでありまして、むしろ証券政策自体の問題といたしましては、大蔵省といたしましては理財局という方面で担当しております。
  23. 小峯柳多

    小峯委員 今の御答弁でわかるように、証券政策を推進すると言うか、立案すると言うか、そういう部局に欠けておるように思うのであります。これは大臣にお願いすることですが、そういう意味証券政策を專管するように、あなたの方は証券取引法の実施監督という立場にあるので、そういうふうに持つて行かなければならぬと思います。なお先ほど大臣お話の中で株式の供給の方をチエツクするという話がありましたが、毎月の株式発行に関して抑えるというわけに行かぬでも、アジャストメントと言いますか、月別に振りあてるくらいのことは委員会でできるかどうか、伺つてお聞きしたい。
  24. 湯地謹爾郎

    湯地政府委員 お答え申し上げます。毎月々々の株式発行というのは、御承知通り証券取引法で、株式発行する際には委員会にあらかじめ届出をしてからでなければ、実施することができない建前になつておりますから、委員会といたしましては、大体この月にどのくらいの株式発行があるということがあらかじめわかる立場にあります。ただ委員会といたしましては、資金調整法というものが廃止されまして、増資あるいは会社の新設等について、これを資金の用途あるいはその他によつて制限するという権能は、今の法律ではないのであります。ただ届出書に書くいろいろな事項等について審査するのでありまして、いつころ発行されるかという数字はわかるのであります。その際に今小峯委員からお話のありました通り、この委員会といたしましても、最近の各発行会社見込み等によつて株式発行する時期につきまして、この委員会あるいは日本銀行、あるいは発行会社及び証券会社というものが寄りまして、大体当時の金融情勢なりあるいは資金の情勢なりを話すことによりまして、発行会社に対してその時期等に対します認識を深めるという意味において、いろいろ話合いするのがいいのじやないかというふうに考えております。これは実際問題といたしまして、社債発行等についてはこういうような自主的な話合いをする機会があるのであります。そういうような意味株式発行についてもやつてみることが必要であろう、こういうふうに考えておるのであります。
  25. 小峯柳多

    小峯委員 取引法の実施を監督するという面から考え先ほど北澤委員から大臣に質問がありましたが、正常な健全な取引を育てて行くという意味で、過当投機と言いますか、行き過ぎの堪合、同時にまた反対の不当に悲観したような場合に対して、何か取引委員会としてさしずする。——てこ入れという意味じやありませんが、これは少し行き過ぎておるのだ、これは少し不当に悲観しておるのだという方法でもつて、意思表示する方法はないか。と申しますのは、証券民主化運動で、今まで株式に縁のなかつた人が株式を持つております。そういう人たちは、高くなればなお高くなると思うでしようし、安くなれば底なしに安くなると考える。しよつちゆう株式に対して研究なりあるいは監視を続けて行くことのできないような人たちに対して、ある程度の幅を持つて一応権威筋から保護してやるという考え方は、しろうと考えかもしれませんか、必要と思うのであります。そういうときに健全なる取引を行わせるんだという建前委員会でもつて、これは少し行き過ぎておる、これは少し行き足りないという、何かそういうふうな具体的な行動でも、意思表示でもするような方法があるのか、またでき得るものかどうか。その点を伺いたいと思う。
  26. 湯地謹爾郎

    湯地政府委員 お答えいたします。証券取引法では大きな目的が二つありまして、一つ証券の公正な価格、適当な取引を実施する。いま一つは投資者の保護ということが大きな目的になつております。それで株の値段等が不当に高くなつた。これはなかなかむずかしい問題でありまして、これは不当に高いかどうかということは非常にむずかしい問題だと思いますが、取引先の中には、特に工作をして、増資等をする場合にプレミアムその他をかせぐという意味もあり、あるいは増資をスムースにするという意味もありまして、特別な工作で株価をつくり上げるというような場合、いわゆる工作に対しましては特別に禁止するという規定はないのでありますが、投資者を保護するという意味において、工作をやつておるのだということを明らかにしてやる場合、許されるわけであります。しかしそういうようなことをせずに、陰にまわつて工作をしておるというような場合に対しましては、これを禁止するという規定もありまして、それらに対してはそういう方面で処置できると思います。また不当に安くなるという場合も、考え方によりましては、この工作に関する規定の適用も適用し得る場合があるわけであります。しかし一応の建前といたしましては、自由な立場で取引所を通じてできる値段に対しては、これを制限するというようなことはできないと考えております。ただ別の意味におきまして、現在のような問題につきましては、現在の株式価格は本来あるべき価格ができるのが建前でありますが、それがたとえば金融上の問題とか特別の事由のために、本来あるべき価格に対して不当な差があるというような場合には、委員会といたしましても、それらの原因はできるだけ除去するという方面に努力すべきだと考えております。
  27. 小峯柳多

    小峯委員 今の話で了解しましたが、それでは現在の状況に対して、委員会として何か適当な措置をする必要があるとお考えになつておるか、またそういう措置を実施しつつあるか、その片のことを——
  28. 湯地謹爾郎

    湯地政府委員 現在の市況の問題に対しましては、これは私の考えでありまするが、やはり株価というものはほかの価格その他に比べまして、本来あるべき価格を必ずしも表現していないのではないか。言いかえれば安いのではないかというふうに考えております。その原因金詰まりというのが一つの直接の原因にもなつておりますから、これらの点が疏通し、ほんとうの意味の正常な取引ができるような立場に置かれることが、望ましいというふうに考えておるのであります。もつともそれがために、どういう処置をとつておるかという点につきましては、直接委員会としては金融の措置をつけることについて、銀行に働きかけるという措置はとつておりません。ただ大蔵省の内部におきまして、それらの政策を担当する部局に対しまして私どもはいろいろな意見を申し上げております。
  29. 三宅則義

    ○三宅(則)委員 時間がありませんからごく簡単に質問いたします。私は証券取引委員会株式増資等に対しまして、大分監督を厳重にし過ぎていろいろ手続上たいへんな迷惑を感じておるということを聞いておりますが、そんなことはないかどうか。とにかく五百万円の会社が二百万円、三百万円くらいの増資をするということになると、非常に厳重な監督をやられると聞いておりますが、その辺の事情を承りたい。  次に承りたいのは、上場する株式に対しましては、証券取引法によると公認会計士、計理士というようなもののサインをしたものが上場されることと聞いておりますが、どうなんですか。この二点について簡単にお答えを願います。
  30. 湯地謹爾郎

    湯地政府委員 お答えいたします。証券取引委員会会社増資その他に対して相当厳重な監督をしておるというお話でありますが、これは先ほどちよつと申し上げました通り、現在の会社増資をする際に、資金調整法というものがございませんから、その増資した金をどういうふうに使うとか、あるいは不急産業に使うからいけないとかいう権限はないのでありまして、証券取引法には有価証券届出制度というものがありまして、現在五百万円以上の増資、あるいは新しく会社をつくる場合には届出をしなければならぬ建前になつております。これはあくまで投資者を保護する観点からできておるのでありまして、ただ委員会としてその書類を審査する考えといたしましては、会社増資をする場合に会社の事業内容とかいろいろな条件とかいうことが、ほんとうにありのままに記載されておるかどうかという点を審査するのでありまして、この証券取引法がない時代には、会社増資等をする際には大体もくろみ書等を出しておりましたが、これはどちらかといえば増資等を容易にするために、会社に都合のよいような点を書くきらいがあつたのであります。そうすればそれを信じてよい会社だと思つて株を持つた人に迷惑をかけるという意味から、今度の証券取引法ではほんとうに会社のありのままを記載されておるかどうかという点を審査するわけでありまして、特別にむずかしくこれを制限するということはいたしておらないつもりであります。  それから証勢取引委員会へ出す書類、あるいは上場する株式の各個会社から発行届出をする書類について、あるいは公認会計士あるいは計理士等に対して、どういうふうに関与させるかという問題でありますが、これもやはり投資者保護という建前から、今の法律におきましても——もちろんその法律も実際問題としては今実施はしておりませんが、各個会社第から出す書類につきまして、権威のある公認会計士あるいはそういう経験のある方々の監査を経た書類を出してもらうということは、必要であるというように考えております。また事実法律はあるのでありますが、現在その法律をただちに実施することには少し解釈上問題もありまするし、この通常議会におきましてその点を改正していただきたいというふうに考えております。
  31. 三宅則義

    ○三宅(則)委員 そうするとその実施期は来年の四月からやるとか、あるいは明後年になるという意味ですか。
  32. 湯地謹爾郎

    湯地政府委員 そういう意味ではありませんで、単に監査証明を受けて書類を提出するように、委員会の規則できめることができるというような法律がありまして、これを実施する以上はどういう会計基準によらせるか、どういう形式によらせるかという、そこまで委員会規則できめられるという、法律上の権限を委譲してもらいたいというふうに考えております。
  33. 川野芳滿

    川野委員長 午後は軍債権関係工場を視察することになつておりますので、簡単に願います。
  34. 小峯柳多

    小峯委員 証券取引制度を復活する考えがあるかどうかということは、昔のような長期制度のことを言つているのではなく、アメリカ式のレギュラー・ウエイというような問題であります。貸株制度あるいは、コール市場を併設する方法をとれば、ある意味では短期清算取引市場のようなものが出て来ると思います。そういう方法も今度の新しい取引所の中では構想していると思いますが、それを実現される見通しがあるかという時期の問題についてお尋ねいたします。
  35. 湯地謹爾郎

    湯地政府委員 今の取引所の売買市場に関連して、貸株市場あるいはコール市場を併設する考えがあるかどうかというお尋ねでありますが、この問題は現在証券取引法自体が、従来の証券株式取引所とかわりまして、アメリカ制度を模範としてできているのでありまして、アメリカにおいては貸株市場、コール市場等を併設したいわゆるレギユラー・ウエイが行われているのであります。従つて法律においても将来そういうような完全な、いわゆるレギユラー・ウエイに移行するということが一つの大きな考え方になつております。しかし今ただちに実施できるかどうかというような問題もありまして、現在までは貸株市場、コール市場というものがないのであります。しかし貸株市場については、最近これを実施せしめるのがよいのではないかという考え方で、関係方面とも折衝して、その希望している市場に対してはこれをやらせるということに相なつたのであります。さしあたつて大阪の証券取引所におきましては、来週の月曜日からとりあえず実施することになつております。  それから信用供与の問題、これは同時にコール市場にも関連いたす問題でありますが、これはただいまのところすぐ実施するという運びにはなかなか困難でないかという見通しを持つております。
  36. 川野芳滿

    川野委員長 午前はこの程度にいたしまして、午後三時から再開することにいたします。   午後零参時三十一分休憩      ————◇—————     〔休憩後は開会に至らなかつた