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愛知政府委員 金詰まりの問題に対しましては、いろいろ解釈が
考えられると思うのでありますけれ
ども、これを概括的に申し上げますならば、金詰まりと一口に言われておりますけれ
ども、その中には金融で解決し得るものと、しからざる諸般の経済現象に基く問題と二つあると思うのであります。その金融政策をも
つて解決し得る問題に対しましては、まずも
つて金融機構を現在の状況に応じて改正すべきものは改正し、確立すべきものは確立しなければならないと思います。ことに昨年度を見ますれば、
復興金融金庫で設備資金が約六百八十億出ておるのであります。昨年度中の設備資金の総額は約千一百億
程度と思われるのであります。そのうちのほとんど大半は
復興金融金庫から出ておつた。今日の金詰まりの最も重点と思われますものは、
一つは設備資金が足りないということであると思います。その設備資金の不足を補いまするためには、社債増資というような自己資本の拡充ということに第一に用いるべきでありますが、金融機構といたしましては、現在の制度では
日本興業
銀行をどうしてもりつぱなものに、もう少し拡充しなければならないと思います。この興業
銀行は現在十億の資本で二十倍の債券の発行ができるわけでありますが、大体今日の予想では来年の三月ごろには、その限度一ぱいの債券の発行が終ることになります。最近毎月の実情から申しましても、大体十七、八億ないし二十億は毎月債券が発行されております。そういう状況で参りますれば、来年の三月までには限度一ぱいになる。そこで通常国会においては興銀の資本の増加と、それからでき得るならば債券の発行限度を、資本金に対して三十倍にするというようなことをまず第一に
考えます。
それから同じく設備資金でございますが、本国会でも毎々
お話が出ておりますように、農林中金、商工中金というような特殊の機関につきまして、同様やはり増資と債券の発行を
考えておるわけでありまして、農林中央金庫につきましては現在の資本金が四億円でありますが、これを八億に増加する。そうしてその二十倍の債券の発行を計画するということを
考えております。それから商工中金につきましては、現在一億五千万円の資本金でありますが、これを少くとも三億円に増資をして、やはり二十倍の債券の発行を計画する。まず現在の組織でも
つて活用し得るものとしては、以上申しましたようなものが設備資金の補給ということにな
つております。さらにそのほかに
日本の経済の
現状から申しますと、
担保物件としては不動産の占める地位が非常に大きいのでありますが、これを
担保にする金融が行われておりません。これを一般市中
銀行に期待することは、市中
銀行の資金の構成が預金外からできておるということと、また預金の大半は短期の預金でありますために、この不動産
担保の金融を大きく市中
銀行に期待することはできないというようなことで、不動産
担保銀行とでもいうべき
構想を、できればこれも一般の基準法としてぜひ立案をいたしまして、来国会応は御審議をいただきたいと
考えておる次第であります。ただ、これは長期の債券を発行する不動産
銀行であるということと、それから貸付が相当長期にわたるということで、従来の
考え方ならば、何らかの形で財政的な庇護をいたさなければ発達しなかつた経緯もございますので、かりに不動産
銀行法というようなものができましても、その
法律に基いてはたしてそういう形態が成り立つかどうかということは、まだ研究を積まなければならぬと思うのでございます。そういうような
関係からまだその案は十分には具体化しておりません。以上申しましたのは大体復金廃止に伴う
現状においての金詰まりの中の、最も問題になります長期の設備資金のことを申し上げたわけでございます。そのほか短期の運転資金等についても、午前のこの
委員会でも問題になりましたように、今後の
輸出入に伴
つて相当多量の運転資金も必要にな
つて参ると思いまするが、それらの問題はしばらくおくといたしましても、この年末等にさしかかりまして、できるだけ
日本銀行のマーケット・オペレーシヨンを活用しなければならぬと思
つております。ところが、今後の問題として債務償還が相当多額に行われる、国債をどんどん買い上げるということになりますと、それにかわる資金でも
つてどういうふうに円滑に必要な資金を流すかということが問題になりますと同時に、
日本銀行等につきましては発行の
保証というような問題も
考えなければならないので、やはり株式、社債等の有価証券と金融との結びつきということを、非常に重視して参らなければならぬと思
つておるわけであります。なおまた当然のことでございますが、見返り資金の活用については現在の状況にも応じまして、十分
関係方面の協力を頼まなければならぬと思
つております。
ただ最後に
一つつけ加えて申し上げたいと思いますることは、金融というものがいわゆるドツジ方策で
考えられ、進められておりまするが、その線に沿うて
考えますならば、いわゆる健全金融という線が非常にはつきりと出て来べきものだと思うのでありまして、金詰まりという言葉にもいろいろの意味があると思うのでありますが、必ずしも世俗一般に言われておりますような、金詰まりの全部が解決できるような金融政策というものは、ほとんどないのではなかろうかと
考えております。