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1949-11-16 第6回国会 衆議院 水産委員会 第9号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十四年十一月十六日(水曜日)     午後一時事五十三分開議  出席委員    委員長 石原 圓吉君    理事 川村善八郎君 理事 鈴木 善幸君    理事 夏堀源三郎君 理事 平井 義一君    理事 松田 鐵藏君 理事 佐竹 新市君    理事 林  好次君 理事 砂間 一良君    理事 小松 勇次君 理事 早川  崇君       小高 熹郎君    川端 佳夫君       田渕 光一君    玉置 信一君       冨永格五郎君    永田  節君       二階堂 進君    長谷川四郎君       中西伊之助君    奧村又十郎君  委員外出席者         参  考  人         (定置漁業協同         組合組合長) 加藤 貞吉君         参  考  人         (沿岸漁業者新         潟漁業協同組合         長)      柏原 正雄君         参  考  人         (静岡縣漁業協         同組合連合会主         事)      森野 富男君         参  考  人         (あぐり漁業         者)      笹生林之助君         参  考  人         (漁業労働組合         長)      松永 健哉君         專  門  員 齋藤 一郎君     ————————————— 十一月十六日  委員黒田寿男君辞任につき、その補欠として中  原健次君が議長の指名委員に選任された。 十一月十五日  沖の島漁漁港設費国庫補助請願平井義一  君紹介)(第三六〇号)  漁業法案の修正に関する請願鈴木善幸君紹  介)(第三六六号)  漁業制度改革に関する請願石原圓吉紹介)  (第三七八号)  漁業法の一部改正に関する請願八木一郎君紹  介)(第三七九号)  有明海区に漁業調整事務局設置請願平井義  一君紹介)(第三九二号)  水産業協同組合法並びに漁業法案改正に関する  請願鈴木善幸紹介)(第三九三号)  水産金庫設置に関する請願鈴木善幸紹介)  (第三九四号)  漁業災害補償制度設定に関する請願鈴木善幸  君紹介)(第三九五号)  漁業法制定に関する請願小高熹郎君紹介)(  第三九六号)  漁業法案の一部改正に関する請願石原圓吉君  紹介)(第四一〇号) の審査を本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した事件  漁業法案内閣提出、第五回国会閣法第一八六  号)  漁業法施行法案内閣提出、第五回国会閣法第  一八七号)     —————————————
  2. 石原圓吉

    石原委員長 これより水産委員会を開会いたします。  漁業法案及び漁業法施行法案を議題といたしまして、これより参考人各位より右両案について御意見を聞くことといたします。  なおこの際参考人各位に申し上げますが、参考人の御発言はその都度委員長よりの指名によること、参考人の一人当りの発言時間はおおむね十五分程度とすること、御発言発言台でお願いすることとし、御発言の際必ず御職業とお名前とを述べていただきます。なお委員諸君参考人に対する質疑は、各参考人意見発表後、ただちにその都度十分ずつといたしますから、以上あらかじめお含みを願つておきます。会議を進めるにあたりまして参考までに本日の予定参考人各位の御芳名を申し上げます。加藤貞吉君、柏原正雄君、寺田勝雄君、笹生林之助君、松永健哉君であります。  なお寺田勝雄君が都合により出席できかね、そのかわりとして静岡漁業協同組連合会主事静岡市追手町森野富雄君が参考人として出席されたいとの申入れがあります。また三國嘉平君が本日は都合がありますので、明十七日の委員会に、また十八日出席予定細木忠義君は明十七日に変更されたい旨の申入れがありましたが、それぞれ変更す事るに御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 石原圓吉

    石原委員長 異議なしと認めます。それではそうとりはからいます。  なお福岡県山門郡沖端沖端漁業会長古賀榮吉君を十七日、大分県宇佐郡長洲町大分漁村振興会委員長井廣夫君を十八日の参考人として追加したいと思いますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  4. 石原圓吉

    石原委員長 御異議なしと認めます。なお京都大学教授須貝脩一君より、出席参加の申出がありましたけれども、公述人は定員に満ちましたから、参考人として参加を求めたいと思いますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  5. 石原圓吉

    石原委員長 異議なしと認めます。それではさよう決します。  これよりまず参考人加藤貞吉君にお願いいたします。
  6. 加藤貞吉

    加藤参考人 私は神奈川県定置漁業協同組合会長加藤貞吉であります。今回国会に提案され、継続審議中であります漁業法案改正趣旨に賛意を表するものであります。そのうち私どもの考えておりますことを一応ここで申し述べまして御参考に供したいと存じます。  なかんずく定置漁業免許優先順位でありますが、この点につきましては、午前中堀部公述人から意見も発表されておりまして、ほぼ同様な意見でありますので、簡単に申し上げたいと思つております。この定置漁業免許優先順位につきましては、第十六條の六項ないし十項、に、非常にこまかく規定されておりまして、結局漁業協同組合に日取優先順位を與えるという方向に相なつておるようでありますが、この点につきましては、第五項の勘案事項に準拠いたしまして、調整委員会の決定に基く方向にされるよう考えておるわけであります。理由といたしましては、いわゆる漁業協同組合が最優先順位をもらつて漁業協同組合であれば、必ず漁業権免許を受けられるのであるという方向に置くこと自体がいいか悪いかという点については、十分検討をせねばならぬのではないか、かように考えるのであります。自営能力がありますいわゆる自営のできる協同組合、これは現在でも自営をやつておるのでありまして、また将来といえども十分自営ができるのであります。これはまた三重県におきましては九〇%が協同組合経営をやつておるというお話があつた通りでありまして、これは調整委員会勘案事項としまして、決定します際には、当然そこ事に決定されるものと考えられるのであります。また自営能力のない協同組合はどうすればよいかということは、多く問題になると思うのでありますが、この点につきましては、自営目能力がないために、かりに漁業権免許を受けても、これをどう行使するのかということになると、勢いそこに賃貸のような形をとるか、あるいは共同経営の形をもつて、そこに遂には、好ましからざる資本を招来するおそれがあるのではなかろうかと考えますとき、しいて協同組合なるがゆえに漁業権免許をするということに持つて行かなくてもよろしいのではないかと考えますので、この点につきましては、調整委員会が各都道府県ごとに、それぞれ異つておりまする事情をよく考えられましてその県県、土地土地に合いますような條件免許をするような方向に決定せられることが、一番妥当ではないかということを考えるものであります。  定置漁業権の、免許優先順位につきましては、一応その程度にいたします。  その次に協同漁業権について申し上げたいと思います。地方特殊事情によりまして、権利の内容とすることが適当と思われるような漁業があると思います。これは地方地方によつて特殊の事情がある。従つて法律で一本にきめないで、各方面のそれぞれの事情を加味いたしましてやつて行く。それには勢い漁業調整委員会意見を聞いて、そうして知事が免許ができるといつたような道を講じてもらうことがいいのではなかろうか、さように考えるのであります。たとえば、ぼさづけ、うなぎつぼ、たこつぼとかいつたような関係漁業権につきましては、そういつたような方向に持つて行かれることが一番いいのではなかろうかと考えるのであります。  なお漁業権存続期間の問題でありますが、前回お話に出ておりましたように、定置漁業権はぜひとも存続期間を十年ということに定めておいていただきたい。むろん期間満了後は、その権利者の申請によつて更新延長ができるという道が開ければ、なおけつこうだと思うのでございますが、この理由といたしましては、前回お話が出ておりましたので省略いたします。結局定置漁業経営はそう簡單なものでなく、かりに一箇所の場所を決定いたしましても、その場所だけがはたしていいかどうか、それを沖に出す、綱の位置を東へやり西へやるといつたことで、数年間研究しました結果、ここならば大丈夫だということにきまる。一箇所ずつやりましても四箇年間は必要でありますし、かりに本年は不漁でおつたが、来年はどこへ綱を張ればいいかということは、多くの場合三年、四年は同一経営者でありましても、いろいろ苦心さんたんするのであります。ことに漁業施設そのもの関係につきましては、論をまちません、相当互巨額の費用を投じまして、完全に経営をしなければならぬのでありまするから、どの面から考えましても、五年という期間は非常に短いのでありまして、ぜひともこれは十年間ということにお願いしたいと思います。  それからもう一つ、区画漁業権関係でありますが、これはぜひ七箇年間存続期間を置いていただきたい、かように申し上げるのでありますが、これはなぜ七箇年間にしなければならぬかについて一例を申し上げますと、貝類の養殖漁業にいたしましても、種まきは少くとも三年ないし四年間はかかるのでありまして、その後でなければ養殖効果はあがらぬのであります。でありますと、十分に養殖効果を発揮することはできないというのでありまして、少くとも七箇年間以上存続期間を続けてもらいたいというのが漁業者の要望であります。  大体以上申し上げましたのは、合同の漁業法改正に際して、衆議院の常任委員の方方に、お話申し上げて、ぜひともその線に漁業法改正せられますようお願いいたしたいという趣旨であります。
  7. 石原圓吉

    石原委員長 御質疑を願います。——御質疑がないようでありますから、次に移ります。柏原正雄君。
  8. 柏原正雄

    柏原参考人 本日われわれ漁民の最も大切なるところの漁業法案改正にあたり、特別の委員であらせられる石原委員長初め各先生方のお招きにあずかりして、われわれが県漁民を代表いたしまして、この漁業法案に対して多少でも意見をさしはさみまして、われわれの意が通るならば、まことに喜ばしい次第であります。午前中の公述者各位の御意見にも基き、われわれは参考人として意見をはさむだけでありますから、簡單に申し上げたいと思います。  漁業権に対しては、危くまでも協同組合が第一位にその順位を獲得せんければならぬのであります。それが法の建前であり、わが国の漁業民主化であり、当然これはそうあるべきものだと思います。いろいろの旧来の事情からいつて意見は異つていると思いますけれども、それは賢明なる委員長のお力によつて、あくまでもわれわれ、漁民の声によつて第一位を通して願いとうございます。  次に定置水深問題であります。先ほどお話があつたのでありますが、まず十五メーターと切つてあることであります。海によつてはむろん十五メーターも必要でありましようが、十五メーターではチヨッピリと出ただけで綱が立たぬという問題が起る。この水深は巾を持つていて、地区によつて水深は異つている。従つて私はどうしても二十メーター以内としてこれを制定願いたいと考えるのであります。  その次に漁業権免許料なり許可料において行政費を含めていることは、私は非常に遺憾に思います。われわれ漁民からしぼり上げたその料金によつて行政費をまかなうのはとんでもない話だと私は思います。そういう点を特にお改め願う必要があるのではないかと考えるのであります。  その次に第二種の区画漁業ですが、新潟県にこういう問題がある。たとえば協同組合がいろいろの増殖をしている。これは内水両の漁業なんですが、権利はどこにもない、だれがとつてもいいということで、奨励と指導の上では非常に困るという問題が起きている。こういう面も、あくまでも協同組合に全部加入させまして、組合がその漁業を営むことが当然であり、だれにでもとらしていいということはあまりにも不適当ではないかというように考えます。この点ひとつお願いしたいと思います。  それから特に本県のみにしかないかどうかわかりませんが、漁業法の制定されたときは明治三十四年と聞いておりますが、本県にはたらば慣行專用漁業権が現在おるわけです。ところがこれはほんとうに昔の、天保時代といつてもいいのですが、その時代からその漁業権あるわけだが、今でもその漁業権をもつている人がいろいろ文句言つている、そうして沖合でそれは毎日争つているわけです。ことにこの漁業法改正にあたりまして、むろんこれは改正になると思いますが、落度のないようにひとつ御注意をされまして、根本的にこれを解消しまして、ぜひこれはやはり協同組合にその漁業権というものを與えたければならぬと考えます。以上をもつて私の話を終ります。
  9. 石原圓吉

    石原委員長 御質疑を願います。
  10. 鈴木善幸

    鈴木(善)委員 柏原さんに御質問申し上げますが、第一点の、定置漁業権協同組合に第一優先免許せよという御意見は、政府原案通りでよろしという御趣旨でありますかどうか、念のためお尋ねしたのであります。
  11. 柏原正雄

    柏原参考人 原案通りぜひお通じ願いたいという意味です。
  12. 鈴木善幸

    鈴木(善)委員 十分御研究になつておると思いますので、念のためにお尋ねしたいのでありますが、政府原案では、自営する場合に限り第一優先免許する、自営できない場合は免許はされない、こういうことに協同組合に扱われておることは御承知の通りであります。この自覚する場合に限り第一優先ということによつて一体新潟県におきましては、多数の定置漁業権協同組合の手に免許されるお見通しであるかどうか、この点を重ねてお尋ねいたします。
  13. 柏原正雄

    柏原参考人 私の見解は、少し落ちておつたわけだが、第一順位で、あるということと同時に、やはり免許権というものを持つと同時に、私は意見書に出してありますが、もしその組合ができない場合は、やはり他に賃與する場合でその組合権利を取つて貸す。こういうことです。
  14. 鈴木善幸

    鈴木(善)委員 そういたしますと柏原さんの御意見は、要約すると、第一優先とか何とかいうのではなく、定置漁業権協同組合に與えろ、そうして自営できれば自営させればいいし、自営できない場合は組合員等に行使せればいい、こういう御趣旨と解釈してよろしゆうございますか。
  15. 柏原正雄

    柏原参考人 けつこうです。
  16. 川村善八郎

    川村委員 柏原さんの定置漁業の定義について、二十メートル以内といいうことをおつしやられたようですが、二十メートル以内において定置漁業を制定しろというのか、二十メートル以内は定置漁業を制定してはいけないというのか、この点を伺いたいと思います。
  17. 柏原正雄

    柏原参考人 二十メートル以内において制定してほしい、こういう意味でございます。
  18. 川村善八郎

    川村委員 そうすると、それ以上のものについては定置漁業でないという御見解ですか。
  19. 柏原正雄

    柏原参考人 先ほど申し上げたように、その海の水深によつていろいろあるでしようが、二十メートル以上なら、そう定置としてはないじやないかと、新潟県としては考えております。
  20. 川村善八郎

    川村委員 そういたしますと、柏原さんはただ單に新潟県のことのみお考えになつて、二十メートル以内で定置漁業を営むようにしろ、それ以上は新潟県ではないのだから、それはいらないというふうな解釈になるのですか。それとも、やはり最後に、二十メートル以内において地方実情に即してやれというような言葉があつたようでありますが、新潟県はこうであるけれども、地方実情に即しで定置漁業というものをやるべきである、こういうお考えですか。
  21. 柏原正雄

    柏原参考人 今川村さんのおつしやつた通り、その地方によつては相当に水深か違うという意味であります。
  22. 石原圓吉

    石原委員長 次に森町富男君にお願いします。
  23. 森野富男

    森野参考人 静岡県の漁業協同組合連合会森野富男であります。すでにいろいろ私の考えていることと同様なことが論議されているのでありますが、一応参考まで意見を申し述べたいと思います。  まず第一に漁業権保有主体について申し述べたいと思います。漁業権と申しましても、主として定置漁業、特に定置漁業権あり方、この点につきましては、これは漁村にとつても非常に大きな出題であろうと思うのであります。各漁村において漁民によつて組織されております漁業協同組合との関連性を考慮に入れたならば、もう少し検討する余地があるのではないかと考えるのであります。漁業法案と一体的た関係にあります水産業協同組合法におきましては、漁村における漁業協同組合の育成ということも強調しておりまして、さらに漁民の社会的経済的の地位の向上を熱望しておるにもかかわらず、本法案につきましては、これに対する援護措置がきわめて稀薄なように考えられるのであります。この定置漁業権あり方につきましても、ぜひともこれは漁業協同組合に與えていただきたいということをお願いしたいのであります。本法案によりますれば、漁業権経営能力のあるもの法人であると、個人で、あるとを問わず、日常の能力というものを一応問題にしておるのであります。しかし漁業権と優秀な漁場というものは、これは全般的のことではないのでありますが、主として地理的に非常に便利の悪い所、あるいは人的に稀薄な所、従つてそういう所は資金的に、あるいはその他の経営という面については、非常に能力がない所なんであります。もちろん、そういつた自然的な條件に合致した所に魚族が棲息する、あるいは海流の條件がよいということは、これは当然考えられるのでありますが、従つてそこにおける人の組織というものがきわめて脆弱なことは申すまでもないのであります。こういう面も二面考えられますとともに、現在の協同組合運動段階といたしましては、はたして現在定置漁業自営のできにる能力のある協同組合が幾つあるかと申しますと、これは曉大の星のように、きわめて寥寥たるものではないかと思うのであります。もちろん一般的な近代産業に比較して、原始産業というものは非常に遅れを見せておるのであります。しかし原始産業とは言いながら、農業に比して漁業遅れ方は、私ども遺憾ながら認めざるを得ないのであります。こうしたものに対して、今資金的にも困難な経済情勢のもとにあつて漁業自営をしろ、自営しなかつた漁業権を與えることはできないということになりますと、今までせつかく長い歴史的な過程においてできた協同組合が、得たところの漁業権というものは、いきおいここにおいて手放さなければならないこととなるのであります。そうして漁村において、漁業権というものが、力ある個人その他のものによつて独占されるということは、勢い漁村に強い支配力を植えつける、こういう結果を招きやすいおそれがあるのではないかと思うのであります。こうした意味におきましても、少くとも漁業権は、漁村における協同組織なり、漁業協同組合に與えてもらいたい。しかも自営能力のない協同組合の保有する漁業権は、これは賃貸を認めていただきたいことをお願いするものであります。賃貸はいけないという根拠がいずれにあるかということは、わからないのでありますが、少くともこれを農地改革と同じような考え方によりまして、これは不在地主によるところの不労所得である。こういう考え方といたしましたら、ある程度を得ていないのではないかと考えるのであります。漁村における協同組合の存立、あるいはその運動の展開というものは、主として経済的あるいはその他の面において、漁業権によつてこれが貫かれているということが考えられるのであります。従いまして、従来漁業協同組合漁業権によつて得たところのものは、あるいは協同施設となり、あるいは漁民組織の事業の運転資金となり、すでにそれぞれ漁民の血となり肉となつて漁業生産に役立つているのであります。こういう面を考えますとき、漁業権協同組合に與えてもらいたい。自営能力のない協同組合漁業権賃貸を認めてもらいたい。もちろん賃貸ということは、恒久的な最善の方法であるとは私も考えておりません。少くとも漁業協同組合自営能力ができ、完全なる近代産業段階に突入して、りつば自営ができるときになつて、初めて自営ということを問題にしていただきたいということを、お願いするものであります。  さらに共同漁業権の問題であります。第六條の五項におきまして「第一種共同漁業海草員数又は主務大臣の指定する定着性水産動物」とありますが、この点につきましては、いわゆる定着性という文字も一応考えられるのでありますが、浮魚という観念におきましても、漁場の場合ですと、もちろん形のうえではさば、あじ、むろというようなものは浮魚には違いないのですが、優秀な漁場さば漁場にしても、むろ漁場にしても、長い間漁師撒餌料を撒布する、あるいはに保護施設をする、そういうことによりまして、ある程度いわゆる優秀漁場として操業の対象になつているのであります。従つて一応こういうものを御破算にいたしまして、自由にこれを開放するという考えで行きますと、漁場の荒廃というものは非常に急速化するのではないかと思うのであります。従いまして、この主務大臣の指定ということは、でき得ればその土地事情がよくわかつておりますところの、その地方行政庁にこれをゆだれてもらいたい、あるいはその地区漁業調整委員会指示事項にしていただきたい、こういうことをお願いしたいのであります。  それから、先ほどお話がありました定置漁業権存続期間五箇年でありますが、これも漁業の実体から申しまして、漁業経営安全性から申しまして、はなはだ当を得ない期間ではないかと考えております。魚族の周期的な回遊とか、あるいは漁不漁ということは、きわめて長い日でながめて見なければ決定づけられないものであります。従いまして、従来の漁業経営というものは、長い目で見たどころの計画によつてこれが経営されているのであります。従いまして、一千万あるいは二千万の多額の資本を投下しましたところの定置漁業が、たつた五箇年で一区切りされますということは、非常にこの経営の安全を脅かすのではないかと考えるのであります。従いまして、これは少くとも十箇年は見ていただきたいと考えるのであります。さらにこの場合この法案によりますと、今度は免許料政府が徴収することになるのでありますが、こうした五箇年ということを区切りといたしましたならば、少くともその経営期間中におきますところの災害、あるいは不漁の場合は「免許料の軽減あるいは免ずる、こういう事項を一応明文化すべきではないかと思うのであります。  それから第六十五條におきます繁殖保護に関する事項でございますが、罰則規定の、この五号の「水産動植物に有害な物の遺棄又は漏せつに関する制限又は禁止」はきわめて軽いのであります。たとえば規則によつては六箇月以下の懲役、一万円以下の罰金または拘留科料ということになつており、省令によりますとさらに厳格に取扱われておりまして、二年以下の懲役、五万円以下の罰金拘留または科料ということになつておりますが、少くとも五号におきますところの漏泄に関する制限あるいは禁止は、省令におきまして発令していただきたいと思うのであります。  それから第七十一條におきまして水質の汚毒に関する問題でありますが、これは陸上におきますところの工業の発達によりまして、漁場そのものが非常に荒される、同時にそれがために漁業が非常に衰微する事態が往往にあるわけであります。もちろんこれはいろいろの面から水質毒防止ということは考えられるのでありますが、少くとも魚族繁殖保護という建前におきまして、水質毒防止に関する事項を、本法案に規定していただきたいと考えるのであります。  それから第七十五條におきますところの免許料の二につきまして、先ほど柏原さんの御説の通り調整委員会費用は、当然一般行政費から捻出していただきまして、免許料を多少とも軽減される方途をとつていただきたいと考えるのであります。  それから第八十五條におきます漁業調整委員会の專門委員に関する事項でございますが、漁業調整委員委員会におきます調整事項というものは、調整委員の選出の方法にも非常な問題があると思うのであります。従いまして限られたきわめて少数の方が委員として出られる、こうなりますと、勢いその人たちはいずれかの利益を代表するとか、あるいは地域的な両を代表するとかある程度のそういう利益代表的な性格を持ちやすいのではないかと思うのであります。この委員会におきます決定事項に対して現実に委員会自体が調査することは当然できないことでありまして、これはおそらく專門委員におきまして調整事項における資料はつくられるでしようと思うのであります。従いまして、この專門委員の任務は非常に重要性を持つて来ると思うのであります。純粋な技術的な面から、あるいはその他各種の公正な立場からの資料は、主として專門委員によつて収集される結果になるのではないかと思うのでありますが、この專門委員というものは現在この法案によりますと、單に「委員会に專門委員を置くことができる。」、こういうことになつておるのでありますが、少くともこの專門委員の性格は、もう少し明確にしていただきたいと思うのであります。これを見ますと、ちよつと感じだけでございますが、單なる調整委員会における職員というような感じしか受取れないのでありますが、これをもう少し根拠づけた專門委員組織にしていただきたいと思うのであります。それから漁業調整委員会における選挙管理でございますが、これは市町村あるいは縣の選挙管理委員会がこれを管理することになつております。これは法律的な技術上の面もあると思うのでありますが、従来の一般の選挙管理委員の方は、これは漁業というもので出ておるのではなくて、漁業からきわめて縁遠い人の方が、かえつて多く出ている現状ではないかと思うのであります。従つてこういう人たちが漁民として有資格者であるかどうか、資格認定にあたりましては、はなはだ心もとないものがあると思うのであります。でき得ればこの管理委員会のもとに、そうした認定する機関というものを法律的に根拠づけていただきたいと思うのであります。  以上はなはだ簡單でありますが、かいつまんで御参考までに供したいと思います。
  24. 石原圓吉

    石原委員長 質疑はありませんか。
  25. 鈴木善幸

    鈴木(善)委員 森野さんは定置漁業権協同組合に與えろ、そうして自営ができるまで賃貸の道を開けという御意見を、強調されておるのでありますが、そこでお尋ねしたいのは、農地改革の場合における一町歩の自作農、定置の場合は一箇統、二箇統をみずから漁業権を持ち、自営をしている、いわば一町歩の自作農というぐあいに認められる定置漁業権をも取り上げて、そうしてこれを協同組合に與えた方がいいか。それとも一町歩の自作は存置すべきであるか、この点を伺いたい
  26. 森野富男

    森野参考人 具体的に申しますと、小型定置の場合も協同組合で共有しろ、それまでの話かという意味でございますか。
  27. 鈴木善幸

    鈴木(善)委員 農地改革の場合は、一町歩程度の耕地を自作する場合は、これは買上げされないと認められたのでありますが、定置の場合におきまして、一箇統や二箇統の定置を自分が持つており、いわば一町歩の自作農と認められるような自営漁業権をも取消しをしてそれをも協同組合に與えるべきであるか、どうかということについて御意見を聞きたい。
  28. 森野富男

    森野参考人 もちろんこれは種種な漁業調整機構が委員会によつて運営されると申し上げましても、結局地元の漁場の管理ということは、協同組合が事実上の管理と申しますか、あるいは適切な言葉でないかもしれませんが、そのほかの事実上の保護、指導ということはやるのじやないかと思います。従いまして、たいとそういう小規模のものでありましても、一応協同組合保有主体となることが、私は望ましいと考えております。
  29. 小松勇次

    ○小松委員 鈴木君の今伺つたのは、一町歩というのは、農地の保有面積のことを例にして聞いたのだから、あなたはその質問を誤解している。鈴木君の言われたのは、大型定置でも、自分が漁業権を持ち、自営をしている人がある、それをも取上げて協同組合にその漁業権を移せという意味か、こういうのでしよう。
  30. 森野富男

    森野参考人 もちろんであります。私はできれば協同組合が一元的に保有主体になつて欲しいと思うのであります。
  31. 砂間一良

    ○砂間委員 ただいまの公述の中には入つておらなかつたように聞いておりましたが、優先順位と適格性を、政府原案によりますと、法律の明文をもつて定めることになつておりますが、これを削除いたしまして、漁業調整委員会勘案事項とするというようなことについては、どういうふうな見解を持つておられますか。
  32. 森野富男

    森野参考人 もちろん問題は、調整委員会の運営の内容で決定されるわけで、事前においてどつちがいいかということは、ちよつと私には考えられないのでございます。
  33. 石原圓吉

    石原委員長 質疑はないようでありますから、次は笹生林之助君。
  34. 笹生林之助

    ○笹生参考人 千葉縣安房郡保田町、あぐり漁業笹生林之助であります。  漁業法案ができるにあたりまして、私ども漁業者は、きわめてこの法案について関心を持ち、また私どもの将来の漁業に対する印象も深くなつて来るのであります。従つて私どもはこの漁業法案を見た場合において、やや物足りなく思いましたことが一つあるのであります。それはどういうことであるかというと、漁業法の第一條には、民主化ということが書いてありますが、私どもは民主化とあわせて水産資源の培養、保護というものがなければならぬ。これが絶対條件であると私どもは考えております。将来の漁業は、私の申し上げるまでもなく、十年以前の漁業の豊漁と今日の豊漁とは、豊漁の量の度合いが違つております。従つて将来の漁業に対しましては、漁民も文化の進むのに対して、科学を利用する漁業が行われて来るのじやないか、こういうことが考えられるのであります。従つてその場合に及んでは、どうしても資源の培養、保護という問題がなければ、漁業が成立つて行かないように私は考えるのでありまして、願わくは水産資源の培養、保護という條文を法案の中に織込んでいただきたい、こういうことを第二番にお願いする次第であります。  第一には、漁業法の第十六條であります。定置漁業権の問題でおりますが、定置漁業権優先順位は、あたかも漁業協同組合がやれるようなことにはなつておりますが、協同組合自営しなければやれない。こういうことがある。これはきわめて民主的でないのじやないか。漁業協同組合法案ができた場合に、漁業協同組合法案漁村民主化と経済の発展を企図してある。漁業法案の方においては、民主化と生産力の向上という問題が出ている。そこに相マッチすべきものであるけれども、今度はその先へ行くと、優先順位ということになると、協同組合というものは、自営化しなければ協同組合がやれない、こういうことになる。これは私ども違う。漁業協同組合自営をするかしないかということは、自営をさせるように持つて行くべきが当然であると思う。今は自営をさせるように持つてつていないのである。これではやれない。いろいろな資本関係においてやれない。これでは民主化ではない、やれるような線に法案の上において持つて行くべきである。そして優先順位は、協同組合にやるのだ。協同組合を助長させて、協同組合に裏ずけをして、漁業協同組合漁業法優先順位を與えていいのだ。こういうように私どもは考える。この点がやや物足りないと私どもは考えているのでありまして、願わくは協同組合にこれはやつてもらいたい。また一方においては、漁民は、漁業協同組合定置漁業権がなければ、ほかの漁業とのさしさわりが非常に強い。もしそうでない場合においては、他の漁業との障害がきわめて多くなつて来るのであつて、そのゆえからいたしましても、協同組合にやるべきが妥当である。国家はこの協同組合を育成させるために、自営をさせるごとく持つて行かなければならぬ。こういうことを法案の中に織り込んでいただきたい。  それから漁業法施行規則の第一條の中に、漁業権が三年後において消滅をするのであつて、二年間は現在のあれが残つている。これは新しき法案ができたのであるから、二年を待つべきものではない。二年ということを切らずに、でき得れば一日も早くこの法を適用して、従来の漁業権をなくして、新しい方途に向つて漁民に切りかえさてもらわなくちやならぬ。こういうように私ども考えております。  それからいま一つ、施行法案の十六條に、漁業権の補償は三十年後に金にかわるようなことに事なつておりまするが、三十年ということはきわめて長いのであります。漁業の進展はおそらく五年を期間とするのではないか、五年、ごとに波を打つているのではないか、それを三十年の後にこれを補償をして解消するということはきわめて長過ぎる。この線は最高限度十年くらいの線に形をつけるべきではないか、こういうふうに、私ども考えております。以上私の参考意見として申し上げた次第であります。
  35. 石原圓吉

    石原委員長 質疑を願います。
  36. 鈴木善幸

    鈴木(善)委員 笹生さんの御意見の中で、定置漁業権協同組合があくまで自営ができるように、金融措置その他の諸般の協同組合育成の措置を強力に裏づけすべきであるという御意見は、十分拝聽いたしたのであります。ただ一挙にそこへ参りませんで、いまだ全面的に全漁業協同組合自営をする力がつかないという段階においては、定置漁業権の取扱いをどうしたらいいかという点についての御意見を拝聽したい。
  37. 笹生林之助

    ○笹生参考人 ただいまの答弁をいたしますが、それは私どもが漁業をやつておる上において、定置漁業権をやつておる人でも、初めかち定置漁業権に経験があり、また資本があるのではないのでありまして、多年の間漁業をやつてつて資本も蓄積せられ、また漁業の経験もできて来たのであつて法案改正であるから、即座にとつて、そうして協同組合の育成に当れということがそこにあるのでありまして、すぐさま実行をしていいんじやないか、こういうように私どもは考えております。
  38. 鈴木善幸

    鈴木(善)委員 ただちに協同組合自営をできなかつた場合には、その間は協同組合定置漁業権を持つておいて、そして組合員等に行使させろという御意見を含んでの御趣旨であるか。
  39. 笹生林之助

    ○笹生参考人 そうであります。
  40. 鈴木善幸

    鈴木(善)委員 わかりました。
  41. 石原圓吉

    石原委員長 質疑がないようでありますから、次は松永健哉君
  42. 松永健哉

    松永参考人 私は長崎縣の三大漁場をたしております野母半島の末端で、漁民労働者の指導に当つておる者であります。  私どもの村は、非常に典型的な漁村でありまして、漁業以外に生きる道のない村でありますが、そこの漁民が、この漁業法を待望すること実に久しく油の煮つまるような思いをして待つていたわけであります。第一次案から第四次案、私どもから見ますと次第に改悪されて来るこの案に対して、非常にあせりを感じていたのであります。いよいよ今国会にこれが上程されるということを聞きまして、私は漁民たちの血の叫びを皆様に訴え、この法律の中に盛込んでいただく気持で参つたのであります。もう従来の專用漁業権内における漁民というものは、漁民ではありません。失業者であります。相ついで労働者に転落し、近くに資本漁業のないものは、あげて移住的な出かせぎに出向いております。この漁民をまのあたり見ましてこの政府の第四次案に対するところの私どもの不満は、多多あるのであります。ところが東京に着きまして、本日も私は第四次案によつて非常に制限されたところのこの漁民たちの願いを、何とか訴える気持で参つたのでありますが、東京へ着いたとたんに私が眼にしましたものは、二つの新聞で見ましたものは、水産委員会の小委員会案なるも事のであります。これはこの日本水産新聞にも載つている。政府原案、第一次から第四次にいろいろかわりはしましたけれども、その中で貫かれているところの五つの原則は、新聞その他で拝見しております関係方面の意向だとも承つております。その原則というものは、漁業権の全面的な再配分、第二に貸付を認めない。第三に優先順位を法文化する。第四に調整委員会は少くもそれぞれの実情に応じて、縣一つというようなことにしないで、縣を、四つか五つに割つた海区に設ける。第五に漁業権の内容をかえない。こういう五つの原則が、どういう形で具体的に現わされるか、この原則そのものにもいろいろ希望はありますけれども、この五つの原則が十分に生かされるならば、私どもは今日の漁民がなお救われる道があるかと思つてつたのであります。この原則はくずれない、またくずしてはならないと思つてつたのであります。ところがあにはからんや、水産委員会の小委員会で決定したというこの小委員会案なるものは、ことごとくこの五つの原則を踏みにじつているのであります。一体この小委員会の案なるものは、この改正案、政府原案、第四次案等といかなる関係にあるのか、明らかにこの小委員会の案なるものは大漁業資本家の野望であります。小委員会には、いろいろの立場の代表もおられるはずです。一体この小委員会なるものは、全会一致をもつてこういう案を、こしらえたのかどうか。まことに私ははらわたの煮えくりかえる思いがするのであります。
  43. 玉置信一

    ○玉置(信)委員 委員長発言中ですが、今の御意見は傾聽すべき点はありますけれども、もう少しそれはあとにいたしまして、本論を、先に言つてもらいたい。小委員会を論駁するというように聞えてしようがないのですが、もう少し本論を先に言つて、御意見はあとにまわしていただきたいと思います。
  44. 石原圓吉

    石原委員長 本案に対する御意見をお述べを願います。
  45. 松永健哉

    松永参考人 それでは私はこういう希望をもつて本論に入りたいと思います。それは小委員会の皆さんに対して、この小委員会案なるものを撤回を願いたい。そうして白紙をもつて政府原案に臨んで、この問題を私は審議をしていただきたい、そういう希望を申し上げて、次に政府原案に対する私の希望を申し上げます。  第一にこの政府原案を拝見いたしまして、非常におかしく感じますことは、日本の漁業法と銘打ちながら、その漁業の大宗であるところの沖合百漁業、あぐりだとかその代表的なものであります遠洋漁業、こういうものが全面的にとり入れられていない。この法案は沿岸漁民であるその辺の小漁師を対象としておる。このことがこの法案全体の持つているところの、非常に致命的な点であります。今日小魚つりの沿岸漁民にいたしましても、たとえばあぐりの集魚燈の問題、また長崎縣等においては、大村湾の中であぐりをやつている、あんなところであぐりをいたしましたら小縫切のきんちやくなんか立つて行きません。こういう乱暴なことをやつておる。また今日沿岸漁民が最も苦しめられておる問題は、底びきの沿岸荒しであります。このために長崎県におきましても、まさに血の雨を降らさんとするような大きな問題が起つておる。こういうふうに沿岸漁民そのものにつきましても非常に関連深いところのこの遠洋あぐり、その他の許可漁業というものを、全面的に取入れていない。この問題について不安と危惧を持つのであります。  次に漁業権の問題でありますが、この漁業権はやはり先ほど公述人からも申されました通りに、私は全面的に漁業協同組合に渡すべきだと思います。しかもこの漁業協同組合に渡すということにつきましては、非常に明確な、厳格な法文化をしてもらいませんと、長崎縣のきわめて有名な漁場におきましても、当然漁業会に渡るべき漁業権がボスと官僚との野望によつて漁民から奪い去られているという事実もあるのであります。そういうことはへいちやらであります。ですからこの問題については、十分な規定が必要だと私は思うのであります。従つて許可料その他の問題は、私、どもはこれは全廃を主張いたします。無料でこれを取上げ、無料でこれを貸し付ける。こういう前提のもとにならば、私は漁業協同組合が自立自営能力がないために個人に貸すという貸與制度もあるいは認めてよいと思うのであります。  しかしながらこういうふうにこまかいことを申し上げますれば、たとえば共同漁業権の中から浮魚をはずすというようなことも、現実に沿岸漁業に御経験のある方はおわかりになりますように、十五メートル以下の小定置漁業協同組合にもらいまして、その辺にとれるところのぼら、その他の浮魚を、やはり漁業権個人が持つということにたると、漁師はうつかりするともうえさのえびもとれないというような状態が、現実に起つて来るのであります。こういう点にも大きな矛盾があるのでありますけれども、問題はやはりこの法案の根底に横たわつておるもの、先ほど公述人の言葉のはしにも現われましたけれども、漁村民主化も大事ではあるけれども、増産も大事だ。この法律案の先頭にうたつてあります漁業の増産ということ、資源の愛護ということ、このことと漁業漁村民主化ということ、この二つの問題が立案者の頭で相矛盾しておる。はかりの一つのさらの上のもののように、一方を重んずれば一方を軽んずるというような考えから、この問題が取上げられておるということが考えられるのであります。これは私の憶測ではない。本年九月のこの水産委員会で、飯山長官みずから、漁村民主化漁業の増産の向上ということとは相いれないということを、明言しておるのであります。こういうところからこの法律案のいろいろな矛盾撞着が生れて来る。ところが現実に決してりくつやイデオロギーの問題ではありません。現在皆様方が漁村においでになつてつぶさにその実情を、ごらんになりますれば、漁村民主化こそが—漁村民主化を徹底させることが、行き詰まつた漁業の増産を打開する道だということが、おわかりになるはずであります。漁村民主化されない。日本のあらゆる社会面におきまして最も遅れた、最も封建的な、酋長然たる網元制のあの漁村においては、この法律案を読む力も、理解する力もない、何が何だかわからない。その痛い経験は前の漁業協同組合法によつてはつきりわかつております。そういう点で、この漁村民主化というものをはかりませんければ、技術の公開もなされない。資源の愛護もなされない。技術の向上もなされない。漁師は押えられ押さえられて、とつたぶりをぬすんで帰る、そういうふうな状態において、決して漁業のほんとうの向上というものはあり得ないのであります。その意味におきまして私はこの法案いろいろこまかい要求のその根底に、この法文の中に優先順位の一つとして、労働條件というものがあります。これは言葉だけあつて、内容はない。労働條件はどういうことを考案するのか、労働條件を見て優先順位をきめる、幸いこういう言葉がありますので、この言葉に内容をつけて行く。その内容とは何か、漁業協同組合に全面的に漁業権を渡しましても、今日の漁業協同組合の姿においては、絶対にその漁業協同組合は、その漁業権をほんとうに共同で行使はできません。漁業協同組合そのものがボスの巣窟であります。ボスの巣窟というような、言い方ならばそれで済むけれどもそれが漁業の大きな障害なんであります。そういう意味におきましてこの具体的な内容は、私は第一に沿岸漁民組織であるところの漁民組合、これが今日まつたく法的な基礎づけがありません。農民組合に対しては、前に極東委員会から、労働組合的な取扱いに対するサゼスチヨンもありましたけれども、漁民組合というものはまつたくほつたらかしであります。勤労漁民、働く漁民だけの組合、ボスの入らない働く漁民だけの漁民組合、これを法律的に裏づけていただく、これを育成していただく、その一方において漁業労働組合、この漁業労働者がやはり一船出労働基準法、船員法、こういうものの適用ははなはだあいまいであります。この二つの問題を解決していただきますれば、漁業協同組合はみごとに民主化します。そうしてその教育を通じて、漁村は明るく増産の一路をたどるのであります。このことが一つであります。  その次の具体的な問題としましては、この法案の最大の眼目は調整、委員であります。この調整委員に対して、ぜひ原案の修正をお願いしたいと思うのであります、第一に、調整委員は各町村ごとに設けていただきたい。海区や県のを設けるのもかまいませんけれども、まず各町村に設けることにはつて、ほんとうに目の前の利害が明らかな問題について漁民を啓蒙し、そこから問題を盛上げて行く。そうしませんと、いきなり県に設けましても、漁民には何が何だかわかりません。海区に設けてもわかりません。海区委員会で解決しなければ解決できないような漁業権は多うございます。多うございますけれども、それはむしろ町村委員会のお互いのそのときそのときの会議でもやつて行けるのでありまして、まずその町村の中で、漁業調整委員の民主的な選挙、運営、そういうふうな問題をまず検討していただきたい。ぜひ町村委員会を設けていただきたい。その次は農地委員と同じように、階層別にこれを選んでいただきたいという点であります。やはり農村と同じように働く漁民、小型動力船などに乗つておる乗組員、この小作人に匹敵する漁師がやはりおります。これからやはり選んでいただきたい。また自営漁民、これがやはりおります。漁業資本家これがやはりおります。数も多くして、各階履から五人ぐらい、十五人ぐらいで編成していただきたいと私は存じます。その次は学識経験者、これもやはり選挙にしてもらいたいと思います。そしてこれを單に知事の諮問機関としないで、これに決定権を持たせても官僚の支配というものをここでぶち切つてもらいたいと思うのであります。その次にせつかく選ばれましても、経済的な裏づけがなければ、この委員会の仕事には專念できません。おそらくこの委員会の仕事は非常に忙しい、非常に大事な仕事であります。従つてたとえば教育委員会などと同じように、金持の隠居仕事にされたらたまりません。だから委員に選ばれた限りは、最低の生活が立つて行けるだけの保障というものは、この委員に対してとつてもらいたいと思うのであります。  以上私どもの気持をこの法律の中で根本的に解決する一つの重大な点として、政府原案に対して申し上げますれば、ただいま申しましたように、漁村民主化を中心とする漁民組合漁業協同組合、この二つのものについて、労働條件という問題にもひつかけて、これを明確にしていただきたい。次には漁業調整委員会の構成は、ただいま申し上げましたように選び、運営していただきたい。以上であります。
  46. 奧村又十郎

    ○奧村委員 参考人に対して、ただいま御発言漁民組合についてお尋ねをいたしたいと思います。決して言葉じりをつかまえてお尋ねするのじやありません。全国的にこの漁民組合という名称が使われておりますので、その観念についてつつ込んでお尋ねしておきたいと思います。すでに実施になつておる水産業協同組合法によつて漁業協同組合ができておる。この漁業協同組合なるものは、私の見方から言えば、はなはだ民主的な—今日の漁村の現状から言えば民主的過ぎるとも言えると思う。すなわち一年を通じて何十日以上出漁する者、つまり真の漁民という者に特に重点を置いて、これのみを正会員とする、こういうふうな規定となつておる。また役員の選挙あるいは組合の総会における決議のとり方、そういうことから考えて、従来の漁業会と比べると非常に民主的になつておる。とこの漁業協同組合こそは、真に零細漁民の、働く漁民の幸福をはかるための法的組合であると私は考える。そのほかになお漁民組合をつくつて、特に法的に基礎づけをせねばならぬということは、どうも解釋ができない。あなたの言葉で言うと、漁民の労働條件を改善するための、団体交渉的な組織つたものをつくりたいというお気持のようにも伺えるが、これも今回の水産業協同組合では、労働條件などの団体的な交渉も、この組合として行うこともできることになつておる。そうすれば、あらためて漁民組合というものを法的につくらねばならぬことはないと思う。こういう観念が全国にあるということは、今後の漁村の中核である漁業協同組合運動に、非常に混乱を起すものであると思うので、ここでひとつあなたのお考えを承つておきたいと思います。
  47. 松永健哉

    松永参考人 混乱を起さないで、実はつくつた仏に魂を入れるべきだと思うのです。というのは、あなたのおつしやいます通り、そうあるべきはずなんです。しかし実はどこにも一つもありません。そうして現実に漁業協同組合がありながら、大体自営漁民を中心とする漁民組合、労働者漁民を中心とする漁業組合、日に月にそれをつくろうとする機運ができつつあるという事実がある。それは漁業協同組合だけでは働く漁民自営漁民、労働者漁民の教育は何もできない、利益が守れないということを、彼ら自身が自覚しつつある証拠なのであります。
  48. 奧村又十郎

    ○奧村委員 私どもの村で申しますと、たとえば春と夏はぶり大敷の漁夫として雇用される。これはいわゆる漁業労働者といえば言えるでしよう。しかし秋、冬になると、自分で小船を持つて自営する、あるいは二、三人組んで小定置経営する。従つて漁業労働者であり、また小規模な自営者でもある。その点はつきり労働者であるといつて区分のつくような漁業者は、はなはだ少いものである。これはおそらく全国的にそうであろうと思う。組合をつくつた場合、あるいは羽織漁師と申しますか、海に出漁せずに、單に資本をおろして経営する立場の人も、あるいは漁業協同組合に二三入るかもしれぬ。入るかもしれぬけれども、何といつても議決権は一戸一つです。従つて多数の零細漁民の主張がやはり総会の決議を支配し、総会の運営をやつて行けるはずです。従つて漁民の知識が向上し、文化が高まれば、この水産業協同組合法の規定によつて、あなた方の理想も達し得られると思うので、こういう点はお互いにもう少しつつ込んで話し合つて、そうしてできたもののほかに、別別に主張して行くことはいかぬのじやないかと思います。これは議論にならずにやりたいと思います。
  49. 松永健哉

    松永参考人 あなたが実情もごらんになつておるのですから、あなたの言う言葉は、あなたの主観として隠したものはないと思うのです。しかしながらお互い一票ずつ持つておる漁民がいかに無知で、いかに目の先の欲にばかり迷うて、いかにお互いにいがみ合つて、いざ選挙となれば、みんな自分たちを守る人間を選ばないで、権力の前に盲従する、それが実情だということはよく知つておると思うのです。それをなくすということは、やはり漁民組合をつくつて、その団体の中で教育して行かなければ絶対できません。
  50. 玉置信一

    ○玉置(信)委員 松永参考人にお伺いしますが、あなたは先ほど政府案によつて漁業権を買い上げて再配分するという点について、全部無料で取上げて無料で與える、こうすべきであるということでありますが、それは官僚と資本家の野合によつて労資の漁業権をみなとられてしまつておるのだという前提のもとにおけるお話でありました。そうしますと、無料で取上げて無料で與えるというのは、全部漁業協同組合にやれ、こういうことですか。
  51. 松永健哉

    松永参考人 そうです。
  52. 玉置信一

    ○玉置(信)委員 そうすると、取上げられた人がどういう形に置かれるのであるか。それをまず第一にお伺いいたします。
  53. 石原圓吉

    石原委員長 ちよつとお諮りいたします。時間がもう一ぱいですけれども、本日はこの参考人で終りでありますから、少し延長したいと思いますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  54. 石原圓吉

    石原委員長 それではそういたします。
  55. 松永健哉

    松永参考人 無料で取上げた漁業権を無料で渡す場合、現在漁業権を持つている人がどうなるか。それは漁業協同組合に、漁業権をやつても、定置のように非常に資本の大きい漁業は実際はやれない。先ほど公述人の話もありました通り漁業協同組合に全面的に漁業権をやるにつきましては、どうしても資材と資金の裏づけを、やはりはつきりやらなければだめなのであります。しかしそれが急にやれないとなれば、実情はどうなつて行くかと言いますと、私が先ほど申し上げました通りに、やはり漁業協同組合が資金と資材を持たないときは、漁業協同組合だけは個人に貸與権を認めてもいいということなのであります。
  56. 鈴木善幸

    鈴木(善)委員 松永参考人の御発言は、われわれが平素承つおります日本共産党の砂間委員の御意見と非常に似通つておるのであります。先ほど発言の中で、五原則とかいう原則があるということを言われましたが、その中に賃貸は一切いけない、その松永参考人がこれこそ堅持してもらわなければならぬと絶叫された点が、今の御発言によりますと、協同組合自営能力がつくまでは、漁業権を保留して、これを組合員等に行使させる道を開いてほしいという、まつたく前言と相矛盾したところの公述をなさつておるのでありますが、この点はいかがでございますか。
  57. 松永健哉

    松永参考人 ただいまの鈴木さんのお言葉に対して、最初に砂間さんと私の意見が似ているというお話でありますが、砂間さんとばかり似ているのではなくて、全勤労民と似ているのであります。その点どうぞ御了承ください。  ただいまの問題は、一見矛盾するようなことになりましようが、働く漁民の立場に立てばちつとも矛盾しないのであります。なぜかと申しますとただいま申し上げました通りに、全漁業権漁業協同組合に與えるについては、どうしても資金と資材を必ず與えるという保障がなければいけないのであります。しかしこの問題を今議会にお願いいたしましても、ただちに解決する見込みはない。これは火を見るよりも明らかでありますので、さしあたつてこの漁業法を通していただきたい。この差迫つた問題といたしまして、将来漁業協同組合は、貸し付けたものが資金と資材があれば貸付をやめて自営することもできます。従つてこの五原則なるもの—これは鈴木さんはそんなものがあるとかいう話であつたというふうに、非常にあいまいなお話でありますが、この五つの原則を御存じにならないで、鈴木さんが小委員会で、小委員会の案をきめたはずはないと思うのであります。ですから十分御存じの通りでありますが、その貸與権を認められぬという五原則の中の第二條は、個人で持つた漁業権不在地主的にだれかに貸すことはいけない。これを私は取定めたものだと思います。従つて漁業協同組合を構成するところの大部分の漁民は、その土地におる者でありまして、大体昔からのそうした一つの享有権、総有観念から、全部でもつてやれないという現実の問題にぶつかつた場合は、ある個人に対してそれを貸興するという権利を認めてよろしいのじやないかということであります。
  58. 鈴木善幸

    鈴木(善)委員 大体松永さんの御意見を掘り下げて承つておりますと、先ほど来の参考人の御意見と似た点がありまして、原則はみずから経営するものに定置漁業権を與えろ、しかしながら協同組合の場合には、かりにただちに自営ができなくても、これを組合員等に行使させる、つまり賃貸の道を開けという御趣旨のように承つたのであります。そういたしますと五原則とかに盛つておりますところの賃貸は、原則は尊重するが、協同組合に限り賃貸の道を開けという御趣旨と解釈してよろしうございますか。
  59. 松永健哉

    松永参考人 賃貸協同組合に限るのであります。
  60. 鈴木善幸

    鈴木(善)委員 わかりました。
  61. 玉置信一

    ○玉置(信)委員 さつきお尋ねしたことはまだはつきりいたしません。全部取上げて再配分するという、そうすると今の鈴木委員に対するお答えとちようと矛盾するように思うのですが、定置漁業権共同漁業権ともに無料で取上げて再配分するというのは全部協同組合に與えるいうことですか。
  62. 松永健哉

    松永参考人 すべての漁業権漁業協同組合に與えろ、そして現在漁業協同組合自営できない場合、従来までに経営していた人に行く可能性は非常に多いのであります。それはやむを得ないとも言えますし、また自然だとも言えると思うのであります。だから一切の漁業権は一応漁業協同組合に與える。
  63. 砂間一良

    ○砂間委員 二、三の点について松永さんに御質問したいと思うのであますが、その前に先ほどの御発言の中で、いわゆる小委員会案なるものの修正案について言及されましたので、あの修正案が小委員会における全員一致の修正案ではないということを、私ははつきり申し上げておきます。(「砂間君は出て来ないじやないか」と呼ぶ者あり。)私どもは出ていたときでも、私は反対の意見を述べておりますが、最後に正式に採決したことはないのであります。
  64. 石原圓吉

    石原委員長 その点についてはつきりしておきます。委員会を公報によつて招集をいたしまして、その委員会に諮つて認めたのであります。そのときにあなたは出席をいたされなかつたのであります。そういう厳然とした事実のあることを、今のように申されることははなはだよろしくないと思います。
  65. 砂間一良

    ○砂間委員 私は十日の日には出席いたしませんでした。しかしその日の採決は修正案を委員会の案としてこれを認めるかどうかという採決ではなくて、この修正案をもつて関係筋と内交渉をするというようなことについて採決されたのだということを、小委員長である鈴木善幸氏から私は聞いております。またそれを関係筋の方へ持つて行く場合におきまして、私は川村委員にはつきり申したのでありますが、私としては反対である、共産党としては反対であることをはつきり申しているのであります。その間のいきさつは、何かはつきりしないものがある。本来ならば、小委員会案が一応まとまつたならば、本委員会にかけまして、そしてそこで賛否の意見を問うのがあたりまえであります。それがとられてない。
  66. 石原圓吉

    石原委員長 この問題はここで論議すべき問題でありませんから、さらに委員会を開いてそのときにやられたいと思います。
  67. 砂間一良

    ○砂間委員 その時に譲りまして意見は保留しておきますが、とにかく小委員会満場一致の意見でないということを明確にしておきます。
  68. 石原圓吉

    石原委員長 共産党の御反対はこれはやむを得ないと思います。
  69. 砂間一良

    ○砂間委員 松永委員に次いで質問いたします。先ほど松永さんの御発言の中には、協同組合にすべての漁業権を與えましても、現在の協同組合実情のもとにおいてはこれは、このボスが支配しておつて、ほんとうに勤労漁民のため、漁村民主化という点からすれば、非常に隔たりのあるものがあるというふうな御発言がありましたが、私もその点については全国の漁業協同組合の現状におきまして、多分にその点があると思うのでありますが、何かその点につきまして、具体的な事実があるならば、先ほどの御発言を裏づける意味において、ひとつ実例をあげて御発言を願いたいのであります。
  70. 松永健哉

    松永参考人 先ほど委員会の問題はたいへんお騒がせしましたが、しかしあの残酷無残な小委員会案に対して、少くも一人は反対者がおつたということで私は了承いたします。その次の問題は……
  71. 石原圓吉

    石原委員長 委員長より松永君にただします。その小委員会案なるものの内容を御説明願います。五箇條ならば五箇條の内容を説明願います。違つてつたら許されませんよ。
  72. 松永健哉

    松永参考人 それはGHQの意向だとも承つておりますところの、そうして私どもが第一次から第四次にかわりはしたけれども、やはり常に貫かれておるところの精神としてとらまえております五つの原則—先ほど申し上げましたような漁業権は、決して今休んでおる漁業権あるいは今休漁中の漁業権というふうな部分的なものではなくて、漁業権は全面的に取上げてこれを再配分をするということ。第二に貸與を認めないということ。第三に優先順位—この漁業権をまずいかなる資格の者にやるか。この優先順位を、小委員会案のごとく、あるいは知事の、あるいは調整委員というふうな者の勘案に任されるというような危かしいものではなくて、法文化するということ。第四に漁業調整委員、これを町村にまでは無理であつたならば、県を四つか、五つにわける。非常に特殊な事情を持つておるところの海区によつては、これを四つか五つ置く、数多く置く。決して県にただ一つというふうなものにしないということ、第五に漁業権の内容—專用漁業権あるいは共同漁業権というふうに名前はかわりましても、漁業権の内容をかくさないということ。この五つの問題であります。この五つの問題にことごとく相反している。それが中心であります。現に漁業協同組合漁業権は部分的修正になつているではありませんか。全画的再配分になつていないじやありませんか。また貸付は、私が先ほどつた、働く漁民の立場から漁業協同組合だけに認める、しかしそれは漁業協同組合全部に漁業権をやるという場合であります。これもやはり例外規定が載つております。やはり知事の認可があれば、例外的に貸付を認める。第三に優先順位の問題、これも法文化しないで、調整委員会の勘案に任せることになつておる。第四の調整委員会を海区に置くという問題、これも一県單位になつております。  以上の通りこの原則に相反しておるのであります。こういう問題が私ども働く漁民の立場から見ましたならば、言葉は過ぎたかもしれませんけれども、まことにもうこれは殺人的であります。改正どころか、今持つておりますところの少しばかりの、この引揚者みたいな小財産まで取上げられてしまいます。以上であります。
  73. 玉置信一

    ○玉置(信)委員 どうも先ほどからいろいる松永参考人の話を聞いておると、矛盾を発見するのですが、もとよりこの漁業協同組合に與えるという政府案でありますが、その案には先般の公述人も申されたように、與えろということになつておるが、自営ということ—これはあなたの主張である漁業協同組合に全面的に漁業権を與える場合、自営という点についてはどうお考えになつておりますか、自営できるとお思いですか。
  74. 松永健哉

    松永参考人 漁業協同組合が今日ただちに自営できるかできないかは、よく御存じだと思います。大きな漁業はほとんどこのままではできません。ですからどうしても資金と資材の裏づけを国家でなさなければいけない。これは先ほどから申し上げた通りであります。しかしながら将来そうした権利を持つておりますれば、自営の道もおのずから考えます。
  75. 玉置信一

    ○玉置(信)委員 国家が資材も資金も與えてやらせるということはまことに望ましいことである、私もその点はあなたとやや同じ気持になつておりますが、しかし今日の敗戦下における日本の経済事情からして、それこそ、あなたも御承知の通り、おそらくできないことだと思います。この原案というか、この法案そのものを通せ、こういとになりますと、ただちにこれはあなたの主張通りに、やはり漁業会にみな移るわけでありますが、そうしてすぐできないという場面にぶつかりますが、そうするとやはり先ほど鈴木委員にあなたがお答えになつてつたように、場合によつて賃貸しなければならぬということをあなたに肯定されるわけですね。
  76. 松永健哉

    松永参考人 さようです。
  77. 鈴木善幸

    鈴木(善)委員 松永さんから小委員会なるものに対して、いろいろ御意見見があつたのでありますが、新聞等に一部報道されております部分的の大綱をとらえまして、しかもおなたのイデオロギーに照しまして、御批判をされておるように解釈されてならないのでありますが、この漁業法案は全條文密接不可分の関連があるのであります。従つて修正案におきましても、修正の全條項をつぶさに御検討にならなければ、真の修正案に対する結論はつかみ得ないのであります。御指摘になりましたところの、協同組合に限り賃貸の道を開くという問題についても、現在のわが国の漁村実情から見まして、私ども必要と認める面におきまして、原則を尊重しつつ実情に即する道を開いて、しかもそれは協同組合権利保有を尊重せんがためにそういう道を開いておるのであります。本日は参考人に対して、修正案の内容をつぶさに御説明することができないのでありますが、一例をあげますと、今申し上げた通りであります。全條文を御検討なさいました上で、委員会に対しましていろいろ御参考になる御意見を他日拝聽いたしたいと思うのであります。従いまして、新聞等に上がりました要項だけでいろいろ間違つた御批判をされますことは、本日の参考意見としては何ら私どもに大きな参考にならない。かえつて傍聽人その他に対して、混乱と誤解を與える以外の何ものでもないということを私は申し上げておきます。
  78. 川村善八郎

    川村委員 松永公述人にお尋ねします。先ほどから漁業協同組合に全面的に漁業権を與えよ、こういう御主張をなさつておるようでありますが、これにはある程度われわれも賛意を表する部面もあるのであります。そこで先ほどのあなたのお説の中に、漁業協同組合はまだ物足らたいというような御議論もあつたようでありますが、漁業協同組合というものは、御承知の通り零細漁民が多いのであります。また先ほど奥村君が言われましたように、働く漁民が一番重視されておるのであります。そこで漁業協同組合というものは、今日の漁村にとつては、最も漁業民主化を重点としており、しかも高度に漁場を利用して増産をし、そうして利益の均霑をはかつて、いわゆる漁民の生活の向上、あるいは社会的地位の向上をさすということにきめられてあるのでありまするから、この点にはおそらく松永君も私らも意見は決してかわつておらないと思うのであります。そうしたりつぱな団体に漁業権の多くを與えるということについては、もちろん私は同感であります、先ほどから聞いていますと、ボスボスという言葉を非常に使つておられますが、そうすると、そういう條件に置かれたりつぱな漁業協同組合が、今日いわゆる漁民全体によつて組織されておりて、そのボスは排撃されておるとかりに私は考えます。松永さんはボスという言葉の解釈について、特に研究をなさつておるかしれませんが、私は松永さんのボスという言葉の解釈に苦しむ点があるのであります。まずそのボスという言葉の解釈から承つておきます。
  79. 松永健哉

    松永参考人 お答えいたします。先ほど鈴木さんのおつしやつた新聞記事の件ばかりでなく、小委員会の案の全文について、時間もありませんので、先ほど申しあげました私の論旨、希望、考えをこまかに書きつづつたものをお渡しすることをお約束してもよろしゆうございます。決して、新聞記事の走り読みから生れたものではないということを一応お断りしておきます。  それからただいまのボスの問題であります。漁村のボスとはどういうものかということなのでありますが……
  80. 川村善八郎

    川村委員 漁業権とからんでどういうのをボスかというのですよ。
  81. 松永健哉

    松永参考人 言葉の争いにもなつてもつまりませんので、具体的な例を引いて御説明申し上げましよう。長崎県に民自党代議士の西村さんが持つておられる東洋第一のぶり大敷がございます。このぶり大敷に昭和二十二年の十月で許可が切れる。そのときの措置といたしまして、一応これは漁業会に返るはずのものになつていたのであります。従つて県の経済部長から、この問題について三井楽の漁業会に対して通牒が参りました。西村さんはこれを無償で漁業会に渡した。それについては西村さんに対して、漁業会は一定の口銭をとつて、これをお貸しするというようなことについて、総会を開いてきめてくれというような通牒をやつたのであります。そこで総会を開きまして、向こう十年間、この明治四年から持つておりましたところの西村さんのぶり大敷を漁業会の所有にする。そうして十年間口銭をとつて西村さんに貸與するという決議を持つて、四人の代表者が県に行つたのであります。結果はどうなつたかと言いいますと、この四人のうちの三人まで—一人は連絡つかずに待ちぼうけを食つたそうでありますが、この四人のうちの三人まで、長崎有名な丸山に連れ込まれてぐでんぐでんに酔つばらわされて、そうしてとりかわしたその覚書はどうかと言いますと、何のことはない、その漁業権は依然として西村さんの所有になつて、ただ口銭だけを三分やるという結果に終つたのであります。こういう存在、この四人のような存在、これは漁民が選んだ代表なんであります。漁民組合漁民労働組合があつて漁業協同組合が十分民主化されておれば、こういう代表は決して選びません。残念ながら今日の漁民はてんでん、ばらばら、お互いに目先の欲ばかりであつて、利己的にはどうにもならないのであります。こういう四人のような人をボスと言うのであります。
  82. 川村善八郎

    川村委員 松永さんはただ長崎県の一部の一問題にとらわれておるようであるが、一体日本の全経営者というものに対するお考えはどうか。
  83. 松永健哉

    松永参考人 全経営者といいますと、漁業経営者ですか。
  84. 川村善八郎

    川村委員 そうです。
  85. 松永健哉

    松永参考人 漁業経営者と申しましても、非常にぴんからきりまで、あるのであります。お尋ねの通り林兼のような非常に大きな経営者もございますし……
  86. 川村善八郎

    川村委員 私はボスとはどういうものか、さいぜんから聞いておるのです。(「その四人のほかのボスだよ」笑声)言葉をかえて言うと、経営者をボスと考えるかどうかというわけなんです。
  87. 松永健哉

    松永参考人 経営者が同じようなボス的役割をすることもおります。大体長崎県におきましては、最近のボスの役割は、私どもの村のような非常にいわしがとれる—化けもののようにとれます、去年の二倍とれます。それに対して村外から資本がどんどん村長入つておりますが、この村外から入つて来ておるところの資本のパイロットにつきまして、村の土地、綱ほし場、漁場経営するについてのいろいろな便利、そういうものを村で入手しておる。そういうふうなところで非常に大きな役割を、たくさんのボスが果しつつあります。私はやはり日本の全勤労漁民の利益の立場を代表したいという気持で一ぱいでありますが、何も私の村あるいは県の、そうしたボスの姿というものは、長崎県たから、決して例外だというようなものではないと思うのであります。しかし私はそういう人ばかりがいると言つてはおりません。そういうような者が漁村には特に多いということが、一般的には言えると思うのであります。
  88. 川村善八郎

    川村委員 そこであなたが視野を大きくせいといつたような御発言とは、まことに相違があるのであります。あなたこそほんとうにもう少し日本全対をにらんで、ボスはもちろん排撃しなければならぬが、りつば経営者であつて、労資協調ができてしかも働く漁民を最も尊重して経営するものであるならば、何らボスではないと言えるのであります。そこでもし漁業協同組合漁業権を與えて、しかもあなたの先ほどからのお説の通り、これに賃貸を許した場合においていわゆる漁業協同組合は、ただ左うちわで利益を搾取するのだから、まさしくボスと言えるが、この点はどうですか。
  89. 松永健哉

    松永参考人 漁業協同組合がボスだとおつしやるのですか。
  90. 川村善八郎

    川村委員 私が聞いているのは、あなたが賃貸をするというようなものとか、不当に利益をとつておる経営者があり、漁業経営者がおるのたが、これがボスだという御解釈のように聞いております。しからば漁業協同組合が営できず、その漁業権賃貸して賃貸料をとるに至つたならば、これは団体に名をかりたりつぱなボスではなかろうか、この解釈はいかん、こういうわけです。
  91. 松永健哉

    松永参考人 ひとつどうか川村さん、そういうボスをなくするために、漁業協同組合が一日も早く自営できるような資金と資材の獲得に、どうぞ御努力を願います。
  92. 平井義一

    平井委員 ちよつとお尋ねいたしますが、あなたの言われることは、働く漁民というのは、漁民組合組合員並びに漁業労働組合員以外は、働かない漁民であるというように聞えますが、働かない漁民、働かない協同組合員というものはどういうものであるか、私の所の例を申し上げますと、私の所は何も働いておらない人が漁民組合をつくらして—この人は全然水産のことも知らない、資材をただやるとか、漁民組合に入るとこういう得があるというような見地から、漁民組合をつくりまして、今度の改正に伴う協同組合をつくる場合におきましても、これが非常な混乱に陥れて、平和に行つてつた漁村を三つも四つもわけて、收拾のつかない状態に陥らしめているのであります。これは明らかに政党の拡張、政争の道具に使う、これこそがボスがあやつつて、この漁民組合組織しておると私は信じておるのであります。私は九州の豊前の海岸でありますが、聞くところによれば、私の所の海岸と千葉県と長崎、これをだんだん全国に広げて行こうという計画でふりましようけれども、今日民主的な協同組合ができました以上は、協同組合員はすべて働く漁民であると信じておりますから、もしふなたが日本漁業者を愛する気があるならば、この協同組合員をほんとうに育成指導して行つていただきたい。別に混乱させ、あるいは誤解を招くがごとき組合をつくり、自分は魚をとりに行かぬ者が、赤旗まで振つて漁民を応援しないでも、この法案によつてほんとうに育つて行く。これは全部ではありませんが、私の所は共産党の人が赤旗まで持つて漁村に来て、魚の名も知らぬような人が活躍しているような事実があります。この点におきましても、働かない漁民というのはどういう漁民であるか、あるいはあなたがおつしやる働く漁民はこれだけであるかどうか、この点から十分考慮していただきたいと同時に、その認識を改めていただきたいと考えるのであります。
  93. 小松勇次

    ○小松委員 一点お尋ねしますが、新漁業法案は、あなたの御承知のごとく、漁業民主化し、そして水産を発展させるということが、一つの目標になつていることはよくおわかりのことと思います。またあなたも漁業民主化を非常に強調された点から見ても、その点をいかに民主化するかということについての御理解があると思うのであります、そこでお尋ねいたしたいことは、漁業民主化するためには、漁民の団体に漁業権を與えるということが一つの方法であることは、私どもうなずかれるのであります。その漁民の団体なるものは、もちろん漁業協同組合漁民の団体だと私は思うのであります。水産組合ももりますが、法的根拠を持つたものはこの二つだ。しかるにこの協同組合があなたのお話によよりますと、あなたの地方にはボスが非常にこれを支配している、決して民主化されておらぬというお話であります。しかるにかかわらず、あなたは漁業権協同組合にこれを與えよとおつしやつている。民主化されておらない協同組合漁業権を與えて、真の法律のこの目的が達成されるか、あなたの御意見にいささか矛盾がありはしないか。あなたの県、あなたの地方を除いた全国の組合は、民主化されている協同組合であるから、かようなものに漁業権を與えていいかもしれないが、あなたの地方のようなボスの支配する協同組合漁業権を與えたならば、その民主化される目的に相反すると私は思う。あなたの御意見を伺いたい。
  94. 松永健哉

    松永参考人 そういうふうな考えじやちよつと困ると思うのです。それはおとならしくないと思う。なぜつて、わかりきつたことをただひねくりまわしているだけだと思うのです。私は漁業協同組合漁業権を與えろ、確かに言いました。同時にその漁業協同組合民主化するために、漁民組合の法制化を、一番大事なもののトップに私は置いたはずであります。だから現在のような民主化されない漁業協同組合に與えても、それはまずいと私は思うのであります。しかし、それでもこの漁業協同組合に與えておけば、いずれは民主化される機会もあります。必ず民主化します。やらずにおぐもんですか。必ずやりますが、今の個人に與えておいたらどうにもならぬ。だから、とにかくいずれはそういうときの来る漁業協同組合に與えろと言つているのであります。
  95. 平井義一

    平井委員 私先ほども申し上げた通り民主化されるのは漁民組合であるというふうに聞くのでありますけれども、私の所の漁民組合品は、さつぱり民主化きされておらない、ボスから支配されているということを私ははつきりあなたに申し上げる。この点は何回申し上げても見解の相違である。ただ認識を改めてもらいたい。
  96. 石原圓吉

    石原委員長 本日はこの程度で散会いたします。     午後三時五十分散会