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岡部政府委員 これから
職階法の
内容につきまして、できるだけ詳しく申し上げたいと存ずるのでありますが、
法案につきまして直接御説明申し上げます前に一言
職階制がどういうふうにしてでき上るかということについて申し上げておいた方がよろしいかと存じますので、お手元に差上げてございますパンフレットの八ページをお開きいただきたいと思うのでございます。八ページには
職階制施行前、すなわち現在の官職の
状況を図にしたものがございます。すなわち無数の官職が紛然雑然とある
状態でございます。この官職が現在どれくらいあるかと申しますと官職を
規定しております国家
行政組織法及びそれに基く定員法によりますと、一般職に属する官職は八十七万余でございますから、そのほかの
法律に基く官職を合せますと、約九十万の一般職に属する官職がある。それがこのように紛然雑然とした形にな
つているということを、ひとつ御了承いただきたいと思うのであります。
次にはその官職につきまして、これもお手元に差上げてありますような式の職務記述書、あなたの職務
内容はどういうものですかということを、詳しくフオルムの形にしてある職務記述書、これを各
職員に配付いたしまして、それを集集め、そうしてその職務
内容につきまして分析し検討して、そうしてこれらの多くの官職を大体同じような種類のものにわけ、それから同じような種類のものを今度は
程度によ
つてわける、こういうことになるのでありますが、次に九ページをごらんいただきますと、この雑然たる官職を今申し上げました手続によりまして、同じような種類のものにわけるわけであります。大体職群というようなものにわけてみますと、現在のところは八十七万、約九十万の官職を三十一の職群に現在わけてみております。これはもちろんかりのものでありますが、大体三十一の職群にわける。それはこの職群の例でおわかりの
通り、工学職群、理学職群、医学職群、技工職群、労務職群というように、非常に大きな分類でございます。これだけではあまりまだ大きすぎますから、さらにこの職群の中を、職務の類似性によ
つて幾つかにわけるわけであります。ここの例で申しますと、工学職群を電気工学、土木工学の二つにわけておりますが、これは必ずしも二つではないのであります。さらに幾つかの職種にわける。現在のところはこの職種を約五百の職種にわけているわけであります。すなわちこうなりますと、九十万の官職が職務の種類によりまして、約五百の縦のわくの中に入
つて参ります。
その次に今度は同じ職種、すなわち土木工学なら土木工学の職種に入
つております官職を、今度はその職務の
内容の複雑さとか、その
内容によりまして、大小に並べるわけであります。それが十ページの例であります。十ページの例では、単に点線で並べてありますが、これは職務の複雑さとか
責任の
程度とかで、序列的にこう並べてみるわけであります。
次に十二ページになりまして、並べられたものを今度は職務と
責任の
程度によりまして区わけするわけであります。この区わけの一つのますが職級となるわけであります。でありますから、お手元のパンフレットの中で、左の欄に「官職」とありまするが、これは間違いでありまして、「職級」の方が正しいのであります。このますが職級であります。でありますから、このますの職級の中には、同じような
責任の
程度の官職がたくさん入
つているのがある。あるいはきわめて少ないのもある。こういうような
状態でありまして、結局職級制というものは、このますをつくることによ
つてでき上る。これに今度はいろいろな個々の官職を当てはめて行く。そうしてこの職級を土台としてすべての人事行政をや
つて行く。すなわち
給与でも、任用でも、
試験でも、すべてこの職級を単位としてや
つて行くというのが、
職階制のねらいでございます。
大体ごく簡單に申し上げますと、
職階制というものはそのようなものであるのでありまして、この
職階制が
国家公務員法に基く人事行政の根本的な基準とな
つているわけでありまして、その根本的な基準の性質につきましては、すでに
国家公務員法の二十九條から三十
二條までに
規定せられているわけであります。その二十九條の第一項に「
職階制は、
法律でこれを定める。」ということにな
つておりますから、その
職階制を
法律で定めようとするのが、この
国家公務員の
職階制に関する
法律案でございます。以下この
法律案の
内容につきまして御説明申し上げたいと存じます。
この
法律案は四章十五條
附則四項からな
つているわけであります。第一章は総則でございまして、この
法律の目的に
職階制の意義及び
人事院の権限について
規定してございます。第二章は
職階制の根本原則を
規定しておるものでございまして、職種及び職級の決定、職級明細書の作成及び使用、官職の格付、その他
職階制の実施についての原則を
規定しておるわけでございます。次に第三章は
職階制の実施に関するものでありまして、いかにして
職階制を実施し、官職を格付し、または職種、職級をいかに
改正するかということについての
規定を設けてございます。第四章は罰則を
規定しております。さらに
附則におきましては、この
法律の施行に関し、必要な事項を定めておるわけでございます。
次に第一章から順を追いまして、御説明申し上げたいと存ずるのであります。
第一條は、この
法律の目的及び効力をうた
つておりまするが、特に申し上げるまでもなく、この
法律の目的は、公務の民主的かつ能率的な運営を促進するため、一般職に属する官職につきまして、
職階制を確立し、官職の分類の原則及び
職階制の実施について定めることにあるわけでございます。なお第二項は、この
法律は
国家公務員法を母法とするものである、
国家公務員法に基く
法律であるということを
規定すると同時に、またこの
職階制に関する
法律は、官職あるいは
職員の分類に関する基礎法でございまして、
職階制に基く分類に矛盾するような従前の官職——何といいますか、官職の分類に関するような
法律が、この
職階法によ
つて優先される。すなわち抵触する
範囲においては、その効力がないということを
規定しておるわけでございます。それからまた第一條の第三項は、
職階制の本質に基く
規定でございまするが、
職階制というものはあるいは
職階法というものは、決して官職を新設したりあるいは
変更したりまたは廃止したりする権限を
職階制の実施
機関に与えるものではない。すなわち職階というものは官職をあるがままに分類するものでありまして、ある官職がこれは無用であるから廃止すべきである、有用であるから設置すべきであるというような権限を実施
機関に与えるものではなく、そういうものを定めるべきものではないということを
規定しておるのでございます。
次に第
二條は、この
法律で言う
職階制の意義を特に定めておるものでございまして、その第一項におきまして、「
職階制は、官職を、職務の種類及び複雑と
責任の度に応じ、この
法律に定める原則及び方法に
従つて分類整理する
計画である。」こういうことを申しておるのであります。その
内容は一番最初に申し上げた
通りでありまするが、この
意味におきまして
職階制というのは、これは
制度というよりは、官職を分類整理する
計画というように御了承いただきたいと思うのであります。なおその第二項におきまして、
職階制の効用をうた
つておるのでありますが、
職階制と申しますものは、結局純粋に技術的な人事管理の面における道具または手段でございまして、いかようにも使用することができる。それ自身は純粋に無色な技術でありまして、この技術を利用して合理的な
給与制度を定め、合理的な任用、昇進方法をつくる。こういうことをうた
つておるわけであります。なおまた
職階制に関しましてはいろいろの効用が
考えられるのでございます。あるいは行政機構の
改善にも介することがございましよう。あるいは現在の
国家公務員法がねら
つておりますところの
国家公務員制度の実現に、寄与することにもなろうかと存ずるのであります。
次に第三條は用語の定義、この
法律においてしばしば現われて参りますところの用語の定義を定めておるものでございます。
次に第四條は
人事院の権限を
規定したものでございまして、
人事院がこの
職階制を実施する中心
機関である、実施する中央
機関であるということを
規定したものでございます。これは
国家公務員法に指針を受けておる
規定でございます。以上は総則でございます。
次に第二節におきましては、
職階制の根本原則を
規定しておりまするが、
職階制の根本原則と申しますのは、すでに
国家公務員法にも現われておるのでありますが、要するに
職員ではなしに、官職を分類する
制度であるということ、それから官職を分類するにあたりましては、これを職務の種類によ
つてまず縦にわける。それから職務の複雑さと、
責任の
程度によ
つてこれを横にわける。そうしてこの縦と横との交鎖点によ
つて生じたますの中に、それぞれの官職を当てはめて、そうしてこのますを単位といたしまして、すべての
職員の
試験、
給与、任用を定めて行く。一言で申しますればこういう原則をうた
つておるものでございます。でありまするから、第六條は官職の分類の基礎を申しております。すなわち官職の分類の基礎は、その官職を遂行すべき職務と
責任であ
つて、その官職を現に占めている
職員が、現在どんな資格を持
つておる者であるか、あるいはどういう成績をあげている者であるか、あるいはどういう能力を有する者であるかということを基礎としてはならないということを定めておるのでございます。次の第七條は、職級の決定、第八條は官職の格付、第九條は職級明細書、第十條は職級の名称、第十一條は職種とはどういうものかということを定めておるのでありまするが、結局これを逆に申し上げますると、雑然たる官職を、その職務の種類の類似性によ
つて、先ほど申し上げました
通り、職種を縦にわけるというのが第十一條の趣旨でございます。縦にわけた職種をさらにその職務の複雑さと
責任の度が類似している
程度によ
つて、これを横にわけて行く。そして縦と横にわけたますが職級である。職級というのは
職階制においては官職を分類する最小の単位である。こういうのが第七條の趣旨でございます。次にはこの隅々の官職を職級にあてはめることを官職の格付と申しておりまするが、第八條は官職の格付を
規定しております。官職を職級に格づけるにあた
つてはどうするかというと、ここに書いてありまするところの職務の種類及び複雑さと
責任の度を表す要素を基準として、職級に格付をしなければならない。しからばどういうものが要素かということにつきましては、また後に詳しく申し上げますし、お手元の
資料にもあるわけでありますが、それには官職の職務と
責任に
関係のない要素を考慮してはならない。現在その
職員がどれだけの月給をもら
つておるから、これを何級にいれるというのではなしに、現に担任しておる職務の
内容によ
つて、
内容を要素として格付する、こういうのが格付の原則でございます。
次にこの格付するにあたりましては、個々の職級につきまして明確なる書面をつく
つておかなければならない。それが職級明細書であります。その職級明細書というものは、各職級ごとに作成されるわけであります。そうしてその職級明細書に記載されております各職級の種類と、職務
内容を一方に
考え、それから個々の官職の職務の種類とその複雑さ、あるいは
責任の
程度を、その
職員につきましてとりました職務記述書の
内容、この両者を比較、検討、評価して当てはめて行くわけであります。そういう書類が職級明細書でありますから、この職級明細書をつくるということが、
職階制におきましては実に重要な点となるわけであります。
それから特に申し上げなければならないのは、職級の名称でありまして、職級にはそれに属する官職の性質を明確に現わすような名称がつけられるわけであります。その名称は、たとえば、まだ確定したものではございませんが、それぞれ従来の事務官、次官、長官というような漠然とした職務
内容を現わすものではなしに、約千八百、二千にもなるわけでありますから、きわめてはつきりした職務
内容を現わします。單に、事務官と
言つていたのを、あるいは財政職、会計職、人事職あるいは翻訳員、郵便書記というように具体的に現わして行くことになると思いますが、それらのそういう名称が職級につけられるわけであります。その職級の名称は、同時にその職級に属するすべての官職の公式の名称となるわけであります。すなわち二級郵便書記という職級ができますと、その職級に属するすべての官職はやはり二級郵便書記となるわけであります。そうしてまたその二級郵便書記という官職を担任しておる
職員も、その二級郵便書記という名称をもらうわけであります。あるいは二級郵便書記と申しますと、郵政省に専属いたしますが、人事職、二級人事書記という名称がありますと、どの省に勤務しておりましようとも、これはすべて二級人事書記ということになるわけでありまして、これがその
職員の公の名称になるのであります。今後その
職員に任用される場合においては、二級人事書記に任用される。あるいはそれが欠員になりますと、二級人事書記について
試験が行われ、あるいは二級人事書記の
給与は幾らだ、それから二級人事書記の職務
内容はどうか、あるいは二級人事書記が今後は一級人事書記になり、それが上にどう行くかということも、はつきり職級明細書によ
つてはつきり現われて来る、こういう趣旨になるわけであります。これらの二級人事書記というような職級の名称は、今後予算
給与簿、人事記録、その他官職に関する公式の記録及び
報告に、すべて用いられなければならないわけであります。もちろん今申し上げました
通り試験であるとか、その他にも用いられるわけであります。但しこの二級人事書記であるとか、あるいはもつとむずかしい名前がつくことがあるのでありますが、そういうのに対しまして、実はこれはアメリカの例でありますが、アメリカの
職階制においては、御
承知の
通りこれを呼ぶのに畧して呼んでおります。専門科学職、補助専門科学職、あるいは書記、会計、財政職というような分類がございますが、PSPあるいはCAF、それの何級と
言つておりますが、わが国におきましても、適当な畧称または記号を用い得るならば、これを用いてもいいのじやないかという趣旨から、その畧称を用いることができることにな
つております。
しかしながら次に特に申し上げておかなければならないことは、局長、課長あるいは長官、次官というような行政組織上の名称もあるわけであります。これは行政組織上の要請から来る名称でありますから、
職階制の方から来る職級の名称と併用してさしつかえないわけであります。局長、課長、係長、班長というような名称を用いることは妨げないわけであります。たとえば大蔵省の主賓局長の職は、これを分析した結果、一級財政職に各付されることになるだろうと思いますが、一級財政職の何の何がしが、今度は大蔵省主賓局長に任ぜられるということにな
つて参ろうかと思うのであります。
以上がごく簡單に申し上げました
職階制の原則であります。結局このようにして出来ました職級明細書に基きまして、個々の官職を格付して行くのが、とりもなおさず
職階制の実施であります。今回この
法律案の御
審議をいただきまして、御議決をいただきますならば、私
どもの
予定といたしましては、ただちに格付の作業に移
つて参りまして、本年度において約三分の一、来年度一ぱいにおいて残りの三分の二の格付をし終る
予定でおるわけでございます。
もちろんこの官職と申しますものは、国家
行政組織法あるいは定員法その他の
改正によりまして、絶えず変動するわけであります。新設もされ、廃止もされ、あるいは合併もされるということが多いのでありますから、
職階制というものは、絶えずそれに合せて行く手続がなければならないわけであります。すなわち
改正の手続、あるいはまた不当に格付された場合におきまして、これを格付し直す再審査、
改訂の手続もなければならぬのであります。そういうことにつきましては、十三條に
規定しております。なおこれは人事行政のすべての基礎になる文書でございますから、これを今後の
国家公務員志望者、あるいはこういう
職員がほしいという人たちのために、文書にしてこれを公示しておくことが必要でありますから、その文書を公示し、これを閲覧に共する手続を第十四條に
規定しておるわけであります。それからこの
規則の違反に対しましては、十五條に罰則の
規定がございます。
なおこの
法律は、公布と同時に施行してさしつかえないわけでありますが、ただ先ほど申し上げました
通り、この職級の名前をただちに予算あるいは人事記録に使うことは、予算編成その他の
関係がありまして、ただちにはできないと思いますから、これは
人事院規則で定める日から施行することにいたしまして、その他の
規定は、公布の日から施行していいと
考えております。ただ約百万に上る官職を実際に格付することは、一朝一夕にできることではないのでありまして、早くとも明年度一ぱいかかる
予定でございますから、逐次その格付は実施してよろしいのだということになるわけであります。しからば逐次実施して行く場合において、どういうことになるかと申しますと、ことに問題になりますのは、
給与の点であります。すなわちたとえば現在某省の事務官が一定の、二級郵便書記なら二級郵便書記に格付されるということになりますと、今度はすべて人事記録は二級郵便書記という資格で行われて行くことになるのであります。
給与の点はどうであるか。これは御
承知の
通り国家公務員法六十三條に基いて、新しく
給与準則ができることにな
つておりますので、この
給与準則は
職階制に適合したものでなければならないのでありますから、
職階制ができましてからほんとうの
給与法ができ上る。それができ上りますまでは、
給与に関する限りは今の新
給与実施法の級を本人が持
つているわけであります。たとえば大蔵省の事務官の現在十級に格付されている
職員が二級郵便書記になりましても、それは依然として新
給与実施法の十級の何号という
給与をもら
つております。それが今度はいよいよ
給与準則ができ上りますと、
給与準則によりまして、今度の八級あるいは九級というのに格付されるかもしれません。その場合におきましては、新しい
給与準則の九級、八級と、従来の
給与法の十級とは必ずしも
給与が同じでありません。上
つた場合にはあげますが、下
つた場合には本人の意思によらないで下げられるわけであります。それではかわいそうだから、新しい
給与準則に
従つて格付が行われることによ
つて、
給与が減るというような場合においては、現在持
つている
給与は新しい格付によ
つては減らないんだということを
規定しているのが、
附則の第四項であります。それによりまして
経過的にはさしあたり新しい
給与準則ができ上るまでは、現在の新
給与実施法の
給与でや
つて行く。そうして一応
職階制ができてから、今度はその
職階制に適合した
国家公務員法に基く
給与準則ができ上る。また私
どもこの
法律を急いでおります一つの理由を、さらにつけ加えて申し上げたいと存ずるのでありますが、
国家公務員法は御
承知の
通り国家公務員というものを
規定しておるわけであります。この
国家公務員というものは、
官吏、雇員、用人の区別を撤廃するものであります。
官吏、雇員、用人の区別は、何によ
つて現在あるかと申しますと、結局
官吏任用叙級令が官をわか
つて一級二級、三級とする。それに基いてあるわけであります。それから種類におきましては、現在の職務
内容を適当に表現しておらないところの、事務官、技官、教官というものに三大別されておりますが、この事務官、抜官、教官をわけているのは、
各省職員通則によ
つて行われているわけであります。この一級、二級、三級をわけておりますところの
官吏任用叙級令、それから事務官、技官、教官をわけておりますところの
各省職員通則、これはいずれも現在廃止されておるわけでありますが、しかし
職階制ができ上るまでは廃止したのでは支障が生ずるというので、
職階制が実施されるまでなお従前の例によるということにな
つております。従いまして一日も早くこの
職階制ができ上りまして、すべての官職が格付上それぞれの新しい職級に格付されることになりますと、ここで初めて
官吏、雇員、用人というような区別、事務官、技官というような区別が廃止されて、すべて
国家公務員法のもとにおけるそれぞれの
国家公務員ということになるわけであります。そういう
意味におきまして、
国家公務員法の
内容を実施するためにも、この
法律の制定が急がれているわけであります。
国家公務員法はまたその他
試験任用につきましても、いろいろな
制度を定めているのでありますが、すべて
職階制を基礎にしてやることにな
つております。そういう
意味におきまして、
国家公務員法が定める基礎的な
制度としまして、この
職階制の樹立ということがきわめて緊急なものとな
つております。
以上非常に取急いで申し上げましたが、これをも
つて御説明を終ります。