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西川証人 それは二種類あります。
昭和二十三年度の第一・四半期、つまり
昭和二十三年度の上半期の食用
油脂から発生したものと、その以後発生したものとは、
はつきり性質が違うわけであります。前者について御説明申し上げますと、大口分解用の
油脂と申しますのは、油がリスリンと死亡酸に分解されてせつけんになる油のことであります。従来そういうものは、すべて
日本の硬化油
工場というものが大きな企業体ばかりでありましたので、自由経済時代にも、硬化油
工場が
販売業者を経由しないで油を買うというのが通常の形でありましたので、
統制経済に入りましても取立業者を経由しないで、
統制機関の
販売価格で
取引をしてお
つたのであります。
従つてせつけん等の原価計算も
統制機関の
販売価格を基礎にして製品価格というものがきめられてお
つたわけであります。ところが戰争後小規模の製油、せつけん
工場が出て来ましたので、小規模のものに一々
公団が直接
販売をすることは非能率でありますので、そこに
販売業者が初めてこの分解硬化油に介在することにな
つたわけであります。従いましてせつけんの価格にも、
販売業者の
販売価格ということでせつけんの原価計算が組まれるに至
つたのであります。ところが実際問題といたしまして、大口の硬化
工場がほとんど
日本の硬化、分解を八割ないし九割やるのでありますが、そういうところに油が現実に受渡される條件を申し上げますと、
公団が売る場所、あるいは旭電化ならば旭電化、日産ならば日産の河岸に面したところには、
公団が自分のストツク・ポイントから油を横づけすれば、それが
販売価格の條件になるわけであります。ところが一方から申しますと、旭電化ならば旭電化という
工場から見て、
販売業者がかりに介在したといたしましても、
販売業者の
販売條件は、硬化
油脂業者の河岸に着けたときがやはり同じになるわけであります。そこでそういうぐあいに、
販売業者の
販売場所で
公団が油を受渡しするときは、
販売業者の
販売価格で
公団は売
つてよいという価格
統制令の中の
一般規則があるわけであります。そこで
昭和二十三年の第一・四半期の工業用
油脂と上半期の食用
油脂については、
公団がそういう解釈から、大口の硬化
油脂業者に対しては、
販売業者の価格、つまり
公団価格の七十八円増しの価格で売る。そうすれば中小業者と大
工場の間のせつけんの
原料油脂について差がないわけでありますから、片方は七十八円安で買
つて、中小業者を圧迫するということも避けられ、同じベースのもとに公正競争がなされるから、大口の硬化業者は
公団から直接は買うけれども、今の価格
統制令の中の
一般規則によ
つて、
公団が
販売業者の
販売條件で受渡しするのだから、七十八円増しの価格で買うべきではないかという問題が起
つたわけであります。ところが大口の分解
油脂業者から見ますと、価格の規定から見て、
公団の
販売価格というものは、消費者のもより駅渡し、あるいは岸壁渡しではないか、それにはちやんと
公団の
販売価格というものがあるではないか、たまたま受渡しする場所が同じだからと言
つて、
公団が
販売価格で売るということはけしからぬじやないかという問題が起
つたのであります。そうして今申し上げた第一・四半期の工業用
油脂並びに上半期の食用
油脂の金額が四千九百万円になるのでありますが、それについては問題が紛糾いたしまして、向うは拂わない、こつちはそれを要求するというようなことでもめてお
つたのであります。そこで大局的に見て、大
工場が中小
工場よりも原価を安く買い入れるということはどうしてもおかしいじやないか、もしこれをあなた方が安く買うとしても、その安く買うものは、
日本の
油脂産業の興隆のために使うというふうに行
つた方がよいじやないか。嚴密に言えば、その金自体については、
公団は
公団価格で売らなければならぬというりくつももつともだし、また同時に
販売価格で売らなければいかぬということももつともだ。だからこの四千九百万円については、趣旨から言えば大口の分解業者が
日本の
油脂産業のために寄付したものだ。そういうような
意味合いで、
関係当局をも入れて、
油脂産業興隆のためにこれを有効適切に使おうじやないかということに話がきま
つて、そういうふうなことならば出そうということで、大口
製造業者も七十八円分を出したわけであります。それで
公団としては今言
つたような趣旨にかんがみまして、これは
一般経費に充当すべきではないか、交渉の成立ちから言
つても、それは今言
つたような趣旨に合致さして行こうじやないかということで、農林省、大口分解業者、さらに
関係団体等の
意見もくみ入れまして、その四千九百万円については、それぞれ
油脂資源の増産
関係、あるいは新しくさなぎ油をつくるとか、あるいは
日本水産油脂協会というようなもので、
水産油脂の増産をやるものに使おうということにな
つたわけであります。それが第一の部類の大口分解用の差金であります。
第二の部類の差金と申しますのは、それ以後の、つまり食用
油脂であります。
昭和二十三年度の下半期の食用
油脂、工業用
油脂については第二・四半期以後のもの、それについてはそういうようなことであるけれども、大口需要者から見ますと、金詰まりの状態が非常にきつく
なつて来たので、受渡しについては必ずしも
販売業者の仲介を必要としないが、金融はやはり
販売業者を通した方がいいのだ。しかし
油糧の調整
規則で行きますと、
販売業者を通したとしても、
販売業者に直接売るということは、
公団としてもどうしても主張しかねるわけであります。そこで、しからば
販売業者を通して売りましよう、しかし実際の問題としては
工場の岸壁に
公団が着けてしまう。そうすると金融の面で
販売業者が機能を失するわけでありますから、七十八円という
販売業者の本来のマージン—これには
輸送費等を含んでいるわけでありますから、それを全部とるのは少しひどいではないかということでそういう場合には
公団は四十二円増し、あるいは條件によ
つては四十七円増しで
販売業者に売ることができるという、価格の引上げでありますとか、いろいろな條件が出たわけであります。ですから七十八円マイナス四十二円、大体三十円くらいのものがそれ以後の数量について発生するわけでありますが、それについては価格の調整等、必要な方面に使うべきであるという物価庁の指示がありまして、その分については
公団においてほとんど
保管しております。