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政府委員(齋藤邦吉君) それでは私供の今
考えております失業の数字並びに失業
対策につきまして、まだ決まらん点もございますが、大ざつぱな点を申上げさせて頂きたい、かように存ずる次第であります。ここ近い
將來においてどの程度の失
業者が出るかという問題から、私共事務当局といたしましていろいろな資料に基きまして、
研究をいたしておるものを御
説明申上げたいと思います。この近く発生を予想されると申しますのは、今までここ一年間程度の間に発生を予想されるというふうに
考えております数字でございます。ここ一年の間に発生を予想される離職者、この近く発生を予想されます離職者の数は結論的に申しますと約百二十万乃至百七十万の離職者が出るのではないかと推定をいたしておるのであります。この内訳につきまして簡單に申しますれば先ず第一に
行政整理の者があるのでございます。
行政整理にいわゆる中央官廳並びに
地方廳或いは市町村或いは鉱山、いろいろありますけれども、これも合せて申しまするとこの
行政整理によります離職者の総数は四十万という数字に相成
つております。これは先般
行政整理に関しまする閣議決定の二割、三割という線を嚴重にやるとすればという
前提の下の数字が四十万という数字に相成
つておるのであります。
次は企業合理化に伴う民間企業の問題があるのでありますが、これにつきましては三十万乃至六十万と推定をいたしております。この数字につきましては、いろいろと
意見はあると思
つております。大体のところ大ざつぱに申しまして、私共のこの三十万乃至六十万という数字を出しました
氣持を申しますと、現在の我が國の製造工業、鉱工業等の労働人口は昭和五—九年次の労働人口とほぼ同じであるのでございます。にも拘わりませず、生産力はどうかと申しますると、昭和八年から十年を一〇〇と計算いたしまして、昨年の九月の鉱工業その他の生産指数は六六・五%に相成
つておるのでございます。約七〇%と見て結構だと思
つております。即ちそこに形式的に判断いたして見ますると、昭和五—九年次と比較いたしまして、形式的に水増し雇傭は三〇%あると言えると思うのであります。併しながらこの三〇%が全部が全部私共水増し雇傭とも
考えていないのであります。即ちあの当時の産生の実情と今日の鉱工業の生産の事情はすつかり変
つております。機械も荒廃に帰しております。更に又
基準法の施行等によりまして、一人当りの労働時間も極めて短縮されておるという実情を
考えまして、昭和五—九年次程度の労働生産性を元にして
考えて見れば、大体のところ、あの当時のことを
考えて見れば、大体現在の労働人口の一〇%程度前後のものが純粹の過剩水増雇傭ではないだろうかということを言われております。経済安定本部等が昨年の暮にいろいろ
調査したものがありますが、これによると殆んどいろんな
理由によ
つて水増し雇傭がない、特に終戰後に会社
工場等の官廳
関係統計事務が非常に殖えたということも挙げられておるのでありますが、水増し雇傭が殆んどないのだということを言
つておりますが、私共の方としては一應三十万乃至六十万というものが企業合理化によ
つて出るのではないだろうかと、かように私共は今一應推定をいたしておるような次第であります。
それから第三番目には引揚人であります。引揚人が内地に帰
つて來ることも、これも
一つの過程において
考えておりますが、四月から引揚が再開されるといたしまして、四月から八ケ月間に毎月四万人程度の引揚者が帰
つて來ると仮定いたしまして、失業人口に入るものは二十万と推定いたしておるのでございます。
次に潜在失業の顯在化という問題であるのでございます。一昨年の十月の國勢
調査によりますると、農村
方面における潜在失業の数が約二百万程度と言われておりますが、これは部分就
業者という統計で出ておるのであります。二百万も潜在失業があると言われております。これが
將來の経済九原則の強行によりまして、或程度の顯在化というものが避け難き状態にあるのではないかと
考えております。その大体一〇%乃至二〇%が失
業者として現われるものと推定、仮定いたして、これが二十万乃至四十万と推定いたしておるのであります。それから次に新規学校卒
業者の問題でありますが、これは詳細は勿論不明でありまするけれども、私共の安定所の窓口におきまして、最近受付けた数字で掴んだ数だけで、つまり新規学校卒業としての中の未就職に終るものと想像されますものが、十万人と見込んでおるような次第であります。そうしますると、離職者の総数が百二十万乃至百七十万と相成るのであります。この百二十万乃至百七十万の離職の中、例えば
行政整理によるもの、企業合理化等によるものがその中心でありまするが、これは
行政整理、企業合理化によりまして、自分で田舍に帰
つて仕事をしようというものもありましよう。即ち労働人口として再就職を希望するものとして出て來る失
業者というものは、全部が全部だとは
考えられませんので、そうしたことをいろいろ統計的に計算いたしてみまして、この百二十万乃至百七十万の中から再就職を希望する眞のいわゆる失
業者という姿で労働市場に現われるものが百万乃至百四十万という数字に相成
つておるのであります。百万乃至百四十万という数字に一應推定をいたしております。この推定は申上げるまでもなく、大体何時どういう程度にこれが出るか、これは勿論分らんことでありますが、最高七十万—百二十万—、純失
業者として最高百四十万—百万という数字を予想いたしております。
行政整理等におきましても、そうしたことを
考えまして、次々にや
つて頂くようにお願いをいたしておりまして、一齊に労働市場に吐き出されるということのないようにできるだけお願いをいたしておりまして、そういう線で参
つております。それから引揚人等につきましても、逐次参るものであります。それから潜在失業の顯在問題につきましても、逐次出るところの数字であるのであります。勿論この数字が全部中るかどうか分りませんけれども、一應いろいろな統計に基きまして、そういう推計をいたしております。このはつきりは勿論出來ない推計に対しまして、私共が確実にここに
政府の政策として掴んでおる数字だけを具体的に申上げてみたいと思うのでありまして、これを受入れまするために、はつきり決ま
つておりまする数字は、
失業保險によ
つて大体四十二万を救済いたしたいという
考え方を持
つております。即ち先程
保險経済といたしましては帶にして五十万、それを一年間に分けますると、実人員の百万と申しておりまするけれども、これはそういう余力があるということを言うておるだけでありまして、即ち
失業保險の失業
労働者と申しまするのは、企業合理化に伴
つて出るところの失
業者のみが対象になるのであります。即ち企業合理化に伴
つて出る失
業者は三十万乃至六十万、その中、失
業者となるものは二十一万乃至四十二万と見るのでありますので、その企業合理化による失
業者は、一應
失業保險によ
つて仮りに賄うといたしまして四十二万というものがはつきり出ております。この問題につきましては、今回の國会の提出いたしたいと思いまして、いろいろ
失業保險の
内容の改善整備につきまして目下事務当局として
研究いたしまして、差当りこの人人が、先程門屋委員からも
お話がありました怠け者を作るなという
お話でありましたが、そういう
氣持じやなしに最低生活を保証するに足るような改善を加えて行く、こういうような
意味で今努力いたしておりますが、それによ
つて今四十二万ということを
考えております。
それかに二番目に政策としてはつきりいたしておりますのは、日傭失業
保險制度を創設して参りたいというので今事務当局で準備をいたしております。御
承知のように失
業者が深刻になりますれば日傭というものに落ちて参ります。日傭に落ちて参りますとなかなか救済をすることは困難でありまするので、何か日傭労働を救うために、日傭失業
保險制度というものを
考えて見たいというので目下努力をいたしておりますが、若しその日傭
保險制度が國会におきまして認められますると、それによ
つて十三万の日傭失
業者を一應救済するという計算にな
つております。これが
保險制度によりまして一應確実なる数字になりましてこれが五十五万となります。
次は
一般のいわゆる顯在化して行く失
業者、或いはそういつたものをどうするかという問題につきましては、あくまでこれは雇傭量の増大を図るということ以外にはないと
考えております。この雇傭量を拡大するということは、
一つは民間の企業の振興であり、
一つは財政的
負担におきまする雇傭量の拡充かと存ずるのでありまして、一方の民間企業につきましては、これは一應の推計でありますが、輸出産業その他民需産業のおける増加の雇傭量を大体約四十万程度と私共は見込んでおるのであります。御
承知のように、二十三
年度の我が國の貿易は二億五千万ドル、ドルとして二億五千万ドル輸出
計画を実施いたされておりますが、明
年度におきましては五億ドルの輸出
計画というものを二十四
年度に実行することに相成
つております。もとよりそれも
一つの
計画でありますが、それによりますと輸出産業の貿易は倍になるのでありますけれども、この貿易の倍ということによ
つて労務雇傭量が倍になるとは
考えておりません。そこで私共はこうした倍加の貿易
計画というものがありましても、雇傭量としてはせいぜいその程度の、二、三十万程度の雇傭量より増加は見込めない、むしろ昭和二十五年におきまして大体八十万程度の雇傭量の増加がある、二十四年はせいぜい二、三十万の雇傭量の増加、その他に、いわゆるその他の流通部門等の雇傭量の増加を多少加えますと、輸出産業振興その他の民需産業の雇傭量は四十万と、一應推定をいたしております。これは推定でございます。次が財政的
負担によりまして
施設をいたしておりまするものでありますが、これは勿論まだ國会に正式に提出されておりませんので、私どもが事務的に盛られておる数字を元にいたしまして
計画されておりますることを率直に申上げさして頂きますれば、今回の
予算に大体八億程度の失業
対策事業費というものが見込まれております。これは失業が先ほども申上げましたように、一齊に出るものじやない、徐々に出るものである。それから
失業保險によりまして五十数万というものが現実に確実に把握出來るという情勢である。失業が出たときは、もつと出すということにして、一應の基本的な
金額を見込もうというので、八億程度入
つているように承
つておりますが、これによりまして大体四、五万程度の
労働者を就労せしめることが出來るということに相成
つております。
それから
職業補導
施設の問題でありますが、この
職業補導
施設によりましていわゆる
將來の産業中堅層の養成という問題から、從來の
職業補導につきましての不評判或いはまずい点等をも是正いたしまして、本
年度中に大体
職業補導として五万人ほど吸收いたしまして、産業の中堅層の育成というものをもや
つて参りたい、こういうふうに
考えるのであります。こういうふうに
考えて見ますると、ここに一應百万という数字は完全に吸收出來る数字にな
つております。この百万という数字は産業の振興という雇傭量の増加、これは推定でありますが、残りは財政的に
裏付けられる確実なものだと私は
考えております。すなわち
將來の失業人口として予想されるものは百万乃至百四十万というのを一應推定いたしておりますが、これに対しましてほぼ確実に吸收し得るものとしては、まあ百十万程度のものが掴める、こういうことに相成
つておるのであります。尚、
將來失業の情勢が深刻になりますれば、その都度々々の情勢に應じた財政的な
支出というものをお願いいたしたいというふうに、私ども事務当局としては、目下のところ
考えておるような次第であるのであります。大体私どもが今事務当局として目下
考えておりますこと、勿論この中には
法律の改正をお願いしなくてはならぬ問題もあります。それから
予算等におきましても、國会にお願いをいたさなければならぬ問題でありますので、そうしたものが仮にという
前提もありますけれども、大体そうした失
業者としては百万乃至百四十万、受入れとしては最低百万乃至百十万というのがここにあるというふうに私どもは今事務的に準備を進めているような次第であります。