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1949-04-12 第5回国会 参議院 両院法規委員委員会 第6号
公式Web版
会議録情報
0
昭和二十四年四月十二日(火曜日)
—————————————
本日の
会議
に付した
事件
○
懲罰権
の
適用範囲
に関する件 ○
参議院議員選挙
に全國区制を存置す る
勧告案
に関する件
—————————————
午前十時四十一分
開会
藤井新一
1
○
委員長
(
藤井新一
君)
只今
より
参議院両院法規委員会
を開きます。問題が沢山ございますが、先ず
懲罰権
の
適用範囲
に関する件について、
懲罰委員長太田敏兄
君から昨今まで
研究
されたものについての御
意見
を伺いたいと思います。
太田敏兄
2
○
委員外議員
(
太田敏兄
君) 過日
藤井委員長
から、
両院法規委員会
で
懲罰権
問題について説明を求められました。実は
懲罰委員会
は、
目下懲罰権
の
適用範囲
に関する
調査
をいたしておる途中でありまして、まだ所期の
結論
に到達しておらんのでありますが、
從つて
本日は遺憾ながら確定的な
意見
を申し上げる段階に至
つて
おらないのであります。そこで本日は一應今日までの
調査
の経過と、審理中の主なる
意見
を申し上げまして御参考に供することにしたいと思います。先ず
懲罰権
の
適用
に関する
調査
を始めました
理由
でありますが、この
懲罰権
に関する
事項
は、御
承知
のように
憲法
第五十
八條
を初め、
國会法
及び
参議院規則
中に
規定
されておりますが、その中で、具体的にこれこれの
行爲
は
懲罰事犯
に該当するということが明らかにされておりまする
條項
もありまするし、又抽象的に表現されておるものもございまして、
解釈
上幾多の
疑義
がありましたので、今ここに
懲罰権
の
適用範囲
に関する
調査
を始めたようなわけであります。その主たる
疑義
の点は、
懲罰事犯
として取り上げるについての
内容
の問題と、それから時間的の問題及び場所的の問題というようなものがまあ附随して來るので、いろいろ
研究
を要する点ができたのであります。そうしてこの
懲罰事犯
が
國会法
の第百二十
一條
の
規定
に基きまして、
議員
の
動議
によ
つて
提起される場合のものは多くは
議場
内における問題であります。
從つて
比較的それは処理しやすいのでありますが、前に申しましたように、抽象的な表現を用いられておりまする
議院
の
品位
を傷つけたとか、或いは
議院
の
体面
を汚したというような場合のごときは、果してどういう
行爲
が、又どの
程度
のものがこれに当るかということになると、なかなか取扱上むづかしいのであります。而もそういう
行爲
が端的に、若しくは
衆人環視
の中で行われたような場合であり、そうしてそれが
國会開会
中のことであれば、
議員
から
動議
を提出するということになれば、簡單に処理できると思いますが、併しそういう今の
議院
の
品位
を傷つけたとか、或いは
体面
を汚したというようなことが隠微の間に行われた、そうして而もそれが
從つて
或る時間を経過した後にそういうことが
一般
に知れるというような場合は、最早や
議員
の
動議
として提出することはできないのであります。そうなると
議員
の
動議
は先程申しましたように、
事犯
のあ
つた
日から三日以内に提出するとこうな
つて
おりますので、すでにその
事犯
があ
つて
から三日以上経過しておりますと、もはや
議員
の
動議
としてこれを提出することができない。そこでもう
議員
の方からは
動議
を出せないから、今度は
議長
の発議で
懲罰委員
に付託されることになるのでありますが、ところがその
議長
が
懲罰委員会
に
職権
を以てこれを付託するという場合には別段の期日の定めはないので、いつでもできるのでありますが、その場合にも前に申しましたように、場所的な
関係
、或いは時間的な問題、そういうものが絡んで來るのであります。そういうような事情から、一應そうした
事柄
に対しまして、何らかの基準がなければならんということからこの
調査
が始ま
つたの
でありまして、
從つて
この
調査
の
範囲
はこれを三つの点に分けまして、第一は
懲罰事犯
の
内容
に関するもの、第二は場所的な
関係
、第三は時間的な
関係
、この三点に要約いたしまして
調査
をいたしておるのであります。で我々が前
國会
中に
委員会
又は打
合会
を開きまして、
研究
しました詳細のことはお
手許
に配付せられておると思いまするが、過日私の
手許
から
議長
の
手許
に出しました
調査報告書
と、それから
委員会
の
速記録
によ
つて
御了承願いたいと思うのでありますが。今ここにその大要を申上げたいと思います。 で、この
懲罰権
の根拠は、言うまでもなく
憲法
第五十
八條
の
規定
に基くのでありまして、同條の第二項に「両
議院
は、各々その
会議
その他の手続及び
内部
の
規律
に関する
規則
を定め、又、
院内
の
秩序
をみだした
議員
を
懲罰
することができる。」
云々
とありまして、
各種
の
懲罰事犯
もすべてこの
院内
の
秩序
ということにかか
つて來
るのであります。そうしてこの
憲法
第五十
八條
の
院内秩序
の維持ということを受けまして、
國会法
及び
参議院規則
中の
懲罰関係
の諸
條項
ができているのであります。 先ず問題の第一点であります
内容
の問題につきましては、先に申しましたように、
國会法
又は
参議院規則
で具体的に指示されておりまする
事項
は、これは
文字
通りに
解釈
すればいいと思うのでありますが、
從つて
問題ではありませんが、ここで一番問題となりますのは、
参議院規則
第二百四十
五條
の「
議院
の
体面
を汚し、」という一項がありまするし、それから
衆議院規則
の同じく二百四十
五條
では、
議院
の
品位
を傷つけたる者という
言葉
で現わされておるのでありますが、これにつきましては、
國会法
の第百十六條では「
議長
は、これを警戒し、又は制止し、」
云々
とあるのみで、別段
懲罰
に付すべきものとはしてないのでありますが、併しまあそうい
つたよう
な
行爲
が直接或いは間接に
憲法
第五十
八條
の
規定
の、
院内
の
秩序
をみだすということになるのでありますから、これは当然
懲罰
に付することができることになるのであります。まあそういうような
関係
で、この
内容
の問題が非常にむずかしい問題であると思うのであります。その
内容
をどの
程度
に限界して行くことがいいかどうかということが問題になると思うのであります。 次にこの
懲罰権
の
適用
の限界の問題でありますが、即ち場所的の問題から申しますると、
憲法
第五十
八條
は「
院内
の
秩序
」という
文字
を使
つて
おるのであります。これを受けまして、
参議院
の
規則
の第二百三十二條に「
会議
において
懲罰事犯
があるときは、」
云々
、同じく二百三十四條に「
会議
又は
委員会
において」
云々
、とありまして、大体この
法規
上明らかにな
つて
おりますのは、本
会議
の
議場
又は
委員会
の
議場
内で起
つた
事件
が
懲罰権
の
適用
を受けるということは、これは
條文
から見まして明らかでありますが、この
議場
以外で起
つた
事件
についてどうかということがここで問題となるのであります。
從來
の
衆議院
及び
貴族院
の
懲罰慣行
から申しますると、この場所的な
関係
を
両院
とも非常に狹く
解釈
してお
つた
というふうに考えられるのであります。最初はこの本
会議
の
議場
及び
委員会
の
議場
に
限つて懲罰事犯
に挙げられてお
つた
。ところが、いつのことでありましたか、
衆議院
で
議場
内の喧嘩が
廊下
にまで飛出しまして、そうして
廊下
で
乱闘騒ぎ
が起
つた
。そのときに
廊下
で起
つた
事件
が
懲罰権
の
適用
を受けるかどうかということが問題になりました。ところがまだ
廊下
で起
つた
事件
に対して
懲罰権
を
適用
した
先例
がなか
つた
というので、そのときまあ
衆議院
の方で
議院規則
を改正してか、或いは拡張
解釈
してかしまして、まあ
從來
の
議場
というのを
廊下
まで含むということにして、
廊下
における
懲罰事犯
を
懲罰
に付したということを聞いておるのでありますが、かようにしまして、
從來
は
懲罰事犯
と言えば本
会議
の
議場
若しくは
委員会
の中において起
つた
事件
に
限つて
お
つたの
であります。そういうふうに從前は空間的に非常に狭く解してお
つたの
でありますが、これの
理由
といたしましては、
議員
が與えられた
職権
を行使する場所は
議場
内である。故に
議場
内の
秩序
を維持するということが第一に考えられるわけなんでありまして、
從つて
この
懲罰権
の
適用
の
範囲
も主として
議場
内においての問題として考えられてお
つた
ということも一應無理もないことであると思うのでありますが、これはまあ
議員
の不
逮捕特権
、或いは
院外
の
免責特権
というようなものと関連して考えられるわけでありますが、まあそういうような観点から、今でも
院外
では
一般
の
刑法
が
適用
されることであるからその必要はないというふうな
議論
もあるわけであります。ところが最近ではこの
議院関係
の廳舍や
各種
の
建物
も多くなりましたし、又
院外
への出張も最近は非常に殖えておるのであります。又
帝國憲法時代
と違いまして、新
憲法
による
國会議員
の
地位
或いは
権限
というものは非常に大きくな
つて
おりまして、
從つて懲罰権適用
の
範囲
に関しましても、徒らに旧
憲法時代
の
先例
や
慣行
にのみなずんでその
範囲
を決定すべきものではないということも考えられるわけであります。殊にそういうふうに新
憲法下
における
國会議員
の
地位権限
に鑑みましても、
議員
の
品位
の問題は、これはただ
議場
の中でさえ保
つて
おれば、一歩
議場外
に出たら何をしても構わんというふうなわけにも行かないと思うのであります。言うまでもなく、今日の
國会議員
は
國民
の主権を代表しておる
國権
の
最高機関
のメンバーでありまするから、
從つて
それらの
國会議員
は
國民
から
有形無形
の大なる
信託
を受けておるわけであります。そうした國家的な
地位
にある
議員
が、いわば陋巷の匹夫にも劣るようなことをしてよいのであるかどうかというようなことも、つまりその
議員
の
行動そのもの
が
参議院
の、或いは
國会
の権威に関するような場合に、
國民
からその
議員
が
信頼
をせられないように
なつ
た場合には、即ち
國民
のその
國会
に対する
信頼
の念が薄く
なつ
た場合には、延いて
國政
の円満なる運営をする上にも大きなる故障になると考えるのであります。
從つて
私は、
議員
としての
品位
、
愼しみ
というものは、ただ單に
会議場
のみでなくして、
一般
的にも
議員
は
苟くも社会
から
指彈
を受けるような者であ
つて
はならないということも一應考えられると思うのであります。 これにつきまして、
外國
の
事例
を見てみましても、
アメリカ等
では相当そういう
議会
の
品位
という問題を大幅に取上げておるようであります。即ち
合衆國憲法
の第
一條
では、各院はその
議事規則
を定め、無
秩序
な
言動
を
理由
として
議員
を
懲罰
し、且つ三分の二以上の
同意
を以て
議員
を
除名
することができるとい
つたよう
に
規定
しておりまして、ここでは普通の
懲罰事犯
につきましては、
議事規則
を基礎としまして、
議場
内における無
秩序
な
言動
に対しては
議員
を
懲罰
することができると、これは
議場
内における
一つ
の
規律
でありまするが、且つ三分の二以上の
同意
を以て
議員
を
除名
することができるということにつきましては、必ずしも
議場
内とも
限つて
おらないと
解釈
できると思うのであります。学説的にも
議員
の
言動
を目して、
議員
が市民から負荷しておる
信託
と義務とに違背すると認める限り、如何なる非行についてもその
除名権
を行使することができる。各院は
理由
の如何に拘わらず
議員
を
除名
し得べき
権限
を持
つて
おる。例えば
議員
が
院外
で
破廉恥罪
を犯したというような場合にも、それが
議員
の
除名
の
理由
とされておりまして、そういう
事例
は幾多あるようであります。それから
英國
の
憲法
でも、
除名
に関しまして特別の
明文
はありませんが、併し御
承知
のように、
英國
の
憲法
は、
一般
に
慣習法
が発達しておる國でありまするから、
從つて
こういう
除名処分等
に関しましても、はつきりした
成文律
はなくとも、
從來
の
一つ
の
慣行
によ
つて
処置しておるようでありまして、
一般
に
議員
として議席を持つことを不適当たらしめる
犯行
、並びにたとえ処罰されないにしても、延いて
議会
に不信をもたらすがごとき
犯行
を
理由
として
除名
が実際行われておるようであります。でこの
英國
の場合ですが、
除名処分
を行う
條項
の中です。これは
明文
ではありませんが
公務員
又は
紳士
として、ふさわしからざる
行爲
というようなことを書いておるものがあるのでありますが、
公務員
若しくは
紳士
としてふさわしからざる
行爲
をした者は、これを
除名処分
をすることができる。こういうふうな
関係
にな
つて
おるようであります。
從つて
、先にも申上げましたように、この
内容
の問題は、どこまでを
紳士
として、若しくは
議員
として、或いは
國民
の代表としてふさわしから
ざる者
であるかという
内容
の問題がやはり問題となるのでありますが、そういうふうに、
アメリカ
でも、或いは
英國
でも
議員
として恥ずべきような、
國民
から
指彈
されるような
行爲
とした者は
除名
に値するというふうに、おのずから
内容
が
規定
されておるようであります。尚これらの問題につきましては、今
材料
を蒐集中でありまして、いづれ
英米
その他
欧洲関係
のこういう
処罰権
に関する
規定
なり、或いは
事例
の
材料
が揃いましたら、追
つて
詳細の具体的な
報告
を申上げる機会があると思いますが、先ずこれらの
英米
の
扱い方
から見ましても、場所的に何ら
制限
をいたしていない、即ち
從來
の
日本
の
両院
がや
つて
お
つたよう
に、必ずしもこの
建物
の中の本
会議議場
若しくは
委員会
の中でというような狭い
解釈
をしないで、極めて常識的に、
議員
は
國民
の重大な
信託
を受けるにふさわしい
品位
を保たなければならないというようなことが常識的にな
つて
おるようであります。そういうことに違反したような
議員
は、これを
除名処分
に付することができるというふうにな
つて
おるようであります。尚ここで、
日本
のそういう
内容
の問題に関しまして、
從來問題
となりますのは、
日本
の
憲法
第五十
八條
には、
院内
の
秩序
ということがありますので、
從つて
この
院内
の
文字
の
解釈
が、
一つ
の
ハウス
の、院というのを
一つ
の
ハウス
と解する。こういうふうな考え方が
從來
行われてお
つたの
じやないかと思うのであります。
從つて
この
懲罰権
の
適用範囲
は、この
ハウス
の中で起
つた
出來事
というように
解釈
されておるようでありまするが、併しこの英訳の
憲法
を見ますると、この
文字
を見ますると、
インターナル
という
文字
が使
つて
ありまして、この
インターナル
という
文字
の
解釈
を、これを
日本
では
院内
と訳して使
つて
おるようでありますが、併しこの
文字
は必ずしも
ハウス
の
内部
においてという
意味
でなくして、もつと本質的な意義を持
つて
いるのではないかと思うであります。即ち院それ
自身
においてとい
つたよう
な本質的な
意味
を含んでおるので、必ずしも
ハウス
という物理的なものではないと思われるのであります。この点を十分御
研究
願いたいと思うのであります。 最後に、この時間的の問題でありますが、これはいわゆる
会期
不
継続
の
原則
が
懲罰事犯
にも
適用
されるかどうかという問題でありますが、
國会法
の第六十
八條
の
規定
によりますると、「
会期
中に
議決
に至らなか
つた
案件
は、
後会
に
継続
しない。」と、こうありますのと、実は
会期
不
継続
の
原則
を主張する人は、その
会期
に起
つた
ことは、その
会期
中に処罰するのであ
つて
、
後会
に
継続
しないという、こういう主張をされるのでありますが、併しこの
國会法
第六十
八條
は、
会期
中に
議決
に至らなか
つた
案件
は、
後会
に
継続
しないということで、私はこれは
文字
通りに
解釈
しまして、その
会期
中に
審議
があ
つた
議案
は、
閉会
に
なつ
た場合は同時に
審議未了
で打切られて、そして
後会
においてはこれを
継続
しない。若し
後会
にこれを持出すならば、次の国会において採決すべきものである。こういうように
議事
が
継続
しないということを
規定
したものであ
つて
、必ずしも
懲罰事犯
のごときものが、前の
國会
に起
つた
事犯
は次の
國会
では問題とすべきでないというような、本質的に
制限
を加えた
條項
ではないと思うのであります。併しこの
会期
不
継続
の
原則
を主張する人は、
懲罰事犯
についてもそれが
適用
されるので、前の
國会
にあ
つた
事件
をこの
國会
において取上げるのは、
会期
不
継続
の
原則
の反するというようなことを主張する人もあるのであります。 それからもう
一つ
の問題は、
議員
の
懲罰
の
動議
は、
事犯
があ
つた
日から三日以内とな
つて
おりますが、それによ
つて議員
が
動議
を提出する場合の期間は明瞭に
規定
されておりますが、
議長
或いは
委員長
が、
議長
が本
会議
における
議場
において起
つた
こと、或いは
委員長
が
委員会
において起
つた
事犯
について、これを提起するものについては別段の
規定
が定めてないのであります。
從つて
そういう
懲罰事犯
が起
つた
ときに、
議員側
が
動議
を出す場合は、その
事犯
が起
つて
から三日以内において出さなければならないが、その
外議長
はその
職権
において出すことができる。こういうことになるのであります。こういう場合に
議長
が、前の
國会
においてあ
つた
事柄
を次の
國会
において
委員会
に付託することができるかどうかということが、この
会期
不
継続
の問題から問題にな
つて來
るわけであります。ところがこれは、そういうように
解釈
しますと、例えば
秘密漏洩事件
というようなことは、
会期
中に
秘密
を漏洩してはならないという
規定
はありませんので、
秘密漏洩
をその
議員
がしたというようなことはですね。これは
会期
中でなく、或いは
閉会
中にもあり得ることであります。又次の
國会
において、前の
國会
中の
秘密
を漏洩してお
つた
ということを発見することもあり得ると思います。そういうようなことがあとで分
つて來
る。或いは
議員
が派遣されて、不当の
行爲
があ
つた
と、こういうことも必ずしも直ぐは分らないで、後に分
つて來
る。そういうことが知れるためには相当の日子を要するということが考え得られることでありまして、そういう場合にも、前の
國会
に
秘密
を漏洩したと、或いは前の
國会
中に
派遣議員
が、いろいろ
懲罰事犯
に当るようなことをしでかしたというようなことについて、これも
後会
不
継続
で問題にし得ないということになると、私は非常に不自然なことが起
つて來
ると思うのであります。私はこの
後会
不
継続
の
原則
ということはそういう
意味
では問題にならないが、ただ前
國会
中にあ
つた
ことを次の
國会
でこれを問題として取上げ得るか否かということは、むしろ私は、問題それ
自身
の
大小軽重
によ
つて
特に取
扱い方
が分れるのではないかと思うのであります。例えば
酒氣
を帶びて入場したとか、或いは
暴言
を吐いたとか、或いは人をぶんなぐ
つた
というような、極めて
簡單明瞭
な問題は、その
國会
でできるだけ
処分
をする。次の
國会
若しくはその次々の
國会
で、去年の
國会
でこういうことがあ
つた
、人を殴
つた
とか、或いは
酒氣
を帶びて入場したというようなことを後の
國会
で
そつくり
それを提起して問題にするというようなことになりますると、いつまでもそういう不安が消されない。又こういう場合もあり得ると思うのであります。或いは
少数党
のときには問題にし得なか
つた
が、多数党に
なつ
たときに、それを急に問題にするというようなこともあると思うのであります。
反対派
の
議員
のそういう
事犯
に対して、
少数党
のときは默
つて
いて、いよいよ多数党に
なつ
たときにそれをやるというようなこともできると思うのであります。そういうようなことで、こうしたような
暴言
を吐いたとか、或いは人を殴
つた
とか、
酒氣
を帶びて入場したとかいうような
簡單明瞭
、直載的な
事犯
に対しては、これはでき得る限りその
会期
中に
処分
をして、そうしてその
会期
中に問題としなか
つた
ならば、それは一種の
時効
にかか
つた
ものであるというふうに考えて、後ではこれを取上げないということにすべきではないかと思うのでありますが、ただ問題は、そういうふうなことが、或いは
秘密漏洩
とか、或いは
院外
において重大な不都合があ
つた
というようなことが後で発言した場合、若しくは人格的に重大な問題であるというようなことは、そうしてそれが
議院
全体の
品位
を傷つける、或いは
議院
全体の
体面
を汚したというような問題は、必ずしもその
会期
中には
処分
できないでも、その後の
國会
におきましても、そういう
会期
にかかわりなく、これを提起し、処罰することができる、こうあるべきものではないかと思うのであります。これが考えられるわけであります。この点につきましてはいろいろ
議論
がありまして、まだ
結論
に到達していないのであります。そういう工合で、大体
懲罰権
の
適用範囲
に関する
調査
としましては、さつき申しましたように
懲罰対象
の
内容
の関する問題、それから時間的な問題、場所的な問題、この三点に要約したしまして
研究
いたしておりまして、
只今
申しましたごとく大雜把でございますので、質問がありましたら、後でお答えすることにいたしまして、大体この
程度
で打切りまして、皆さん のお
手許
におかれましても、十分御
研究
を願いたいと思うのであります。
藤井新一
3
○
委員長
(
藤井新一
君) 何か御発言はありませんか。ちよつとお伺いします。
イギリス
のことをあなたは例に取りましたが、
紳士
としてふさわしからざる
行爲
ということは、それは
議場
以外の、
英國國土
、その土地を踏んでいるときを
意味
するのですか。その
研究
は……。
太田敏兄
4
○
委員外議員
(
太田敏兄
君) その詳しい
材料
はまだ手に入れておりませんが、書いたものを見ましたので、大体そういうふうに了承いたしております。それから
アメリカ
でも
イギリス
でも、例えば詐欺であるとか、或いは横領であるとか、そういうことで裁判所で判決を受けて処罰された。そういうものは、
日本
では
議員
が失格するような
規定
がある、向うはそういうものは
除名
している。
藤井新一
5
○
委員長
(
藤井新一
君)
彈劾裁判
のごとき……。
太田敏兄
6
○
委員外議員
(
太田敏兄
君) 当然、その
規定
によ
つて
失格するのでなしに、そういう場合は
除名
している。
藤井新一
7
○
委員長
(
藤井新一
君) もう一度お聞きしますが、
閉会
中に
議員
が
刑法
上の
犯罪
を犯した場合は、それは次の
会期
において問題とすべきでありますか。
太田敏兄
8
○
委員外議員
(
太田敏兄
君)
日本
の場合ですか。
藤井新一
9
○
委員長
(
藤井新一
君) 例えばこの
会期
が
終つて臨時國会
との間の
閉会
中に、その間において
議員
が
刑法
上の
犯罪
を犯した、そういう場合には
閉会
中だから放りつぱなしにするというのですか。それは次の
会期
で
懲罰
として取上げて行くのですか。
太田敏兄
10
○
委員外議員
(
太田敏兄
君) そういうことは問題です。本
会議
若しくは
委員会
を狭義に
解釈
すると、
閉会
中という
言葉
から
言つて
問題にならない。併しそういう
事柄
が、そういう
行爲
が、
議院
の
品位
を傷付け若しくは
議院
の
体面
を汚すということになれば、当然問題として取上げるべきじやないかと思うのです。
藤井新一
11
○
委員長
(
藤井新一
君) どうですか、
田中
さん、あなたこの問題についてどうですか。
田中耕太郎
12
○
田中耕太郎
君 今
懲罰委員長
のお話のようなふうに僕も感じたのですが……。
会期
不
継続
の問題とはこれは全然
関係
のない性質のものです。
会期
不
継続
というのは、つまり法案その他実質的の審査の問題に
関係
するので、
会期
が改まれば情勢も亦いろいろ変る。政府も場合によ
つて
は変るということもあり得る。そういうような政策的な問題の決定と
懲罰
問題は、これは全然話は違うんじやないか、常識的に考えて現行の精神から
言つて
もそう言えるんじやないかというふうに僕は考えております。
新谷寅三郎
13
○
新谷寅三郎
君 私も
田中
さんと同じように考えておるのですがね。ただ
懲罰事件
が、例えば本
國会
で
審議
されるとしますね。それが本
國会
で
結論
に至らないで、そうして
閉会
に
なつ
たという場合には、やはり
懲罰事犯
、
懲罰事件
も
会期
不
継続
の
原則
のあの
條文
にかかるんじやないかと思うのですがね。とにかく
國会法
で行くと、非常に、
審議
された事案が……とあるので、その
内容
が決ま
つて
いないのですからね。その
懲罰事件
が
事犯
として
審議
された場合には、
会期
不
継続
の
原則
に引つかか
つて來
るように思うのですね。
藤井新一
14
○
委員長
(
藤井新一
君) その場合に政党の、多数党の場合は乗り切れますが、
少数党
の場合には乗り切れんと思います。
会期
不
継続
の問題に
なつ
たときに……。
太田敏兄
15
○
委員外議員
(
太田敏兄
君) 今の問題は、私はお説の通りと思うのですが、
議案
はやはり
閉会
と同時に
審議未了
にな
つて
しまいます。それを又
後会
へ出すならば、又改めて
後会
へ問題を提起するということになりますね。
田中耕太郎
16
○
田中耕太郎
君
只今
の
議案
は処理の問題については、やはり
会期
が改まれば、改めて提出し直すというふうに考える
新谷説
は僕は正しいんじやないかと思うのです。併しその場合に、前に起
つた
ことだから、これはもう
時効
によ
つて
消減しておるんだというふうな、そういうふうなことは言えないんじやないかという
意味
です。
太田敏兄
17
○
委員外議員
(
太田敏兄
君) 時間的の問題は、これは
研究
問題的にお話したのでありますが、今の人を殴
つた
、
酒氣
を帯びたというようなことは、実は今から三回前の
國会
で、奴を醉拂
つて
殴
つて
や
つた
というようなことを、今
國会
で取上げるのは本当はどうかと思うのですがね。そういう問題は、その
会期
中
議員
が
動議
を出さず、或いは
議長
も
委員会
に付託しなか
つた
ら、一應
時効
にかか
つた
ものとして、
時効
の生じたものといたしまして、これは民法でも
刑法
でも
時効
の問題は、或いは短い一年くらいのもある、五年くらいのもある、十年くらいのもあるが、
懲罰事犯
についてはその
会期
で問題にならなか
つた
ら、それは一應
時効
にかか
つた
ものとみなすというようなものもあり、それから併し
懲罰事犯
の
内容
によ
つて
は、必ずしもその
國会
中に提起しないでも、次の
國会
でも問題にし得るというように、
懲罰事犯
についても一種の
時効
の問題を考えてよいんじやないかと思うのです。
田中耕太郎
18
○
田中耕太郎
君
懲罰委員長
の御
意見
極めて常識的で妥当であると思うのですが、ただそれを
規定
の上に現わすということは、非常に煩瑣にな
つて
困難じやないかと思う。この場合にはやはり公平な常識、そういうような判断で以て、そういうものは取上げないという慣習で行くのですね。
太田敏兄
19
○
委員外議員
(
太田敏兄
君) 慣習でね……。
田中耕太郎
20
○
田中耕太郎
君 ええ、だから取計らいで処理したらよいじやないかと思うのです。
太田敏兄
21
○
委員外議員
(
太田敏兄
君) もう
一つ
今度は
議員
の
動議
の提出権ですが、これが前の
衆議院
の
参議院
の取扱いのように、本
会議
若しくは
委員会
におけるというような、非常に場所的に
制限
して考えた場合には、
議場
でどうしたとか、
委員会
でこうしたということが、
議員
、若しくは委員の目の前でできた場合には、それから三日以内に
動議
を出さなければ、それはもう不問に附したものとするというように
解釈
できるから、そういうふうに非常に場所的に狭く考えてお
つた
場合に、若しそういうふうに狭く
解釈
すべきものとすれば、
議員
の
動議
提出の期限は三日以内でよいのですが、これを場所的に、
ハウス
の中でなしに、或いは出張
議員
が、
派遣議員
が、東北若しくは九州で起した
事犯
であるとか、或いは出張先でなくても
議員
としてふさわしからんような
行爲
をしたという場合には、
事犯
後三日目というようなことになると、それ以後に大抵
議員
の耳に入る、
委員長
の耳に入るということが多いので、委員、若しくは
議員
は
事犯
として
動議
に付することができんということになりますし、そうするとその場合に
議長
が
職権
を以
つて
委員会
に付託するならなんですけれでも、そうでないと
議員
は少しも論議することができない、併し
議長
は付託することができる、そうすると
議長
の責任が非常に大きくな
つて來
る。それから
懲罰委員会
でも
議長
から付託されれば
審議
するが、
議長
から付託されないものは取上げることができないというような建前から行くとすれば、
議長
の責任というもうは非常に大きくなり、それに対して
議員
は何らの発言をすることもできないということになるので、
從つて
場所的にも或いは時間的にも廣く
事犯
を考えるということになれば、三日以内に
動議
という三日というものがあ
つて
、そうしてこれも今の直接的な行動である、殴
つた
とかどうとかいうような問題は三日以内に大体提起することだが、事苟しくも重大な問題については、それは必ずしもそういう期間の
制限
を置かないで、
議員
からも
動議
が提出し得るというふうにならなくてはいかんと思うのですが、私はそういうふうな手続上の
條文
が手に入
つて
おりませんからよく分りませんけれども、
外國
のこういう書いたものを見ましても、そういう重大な問題は必ずしも三日間というような期限でなしに、そういう重大なものについては、いつでも提起できるというふうにな
つて
いるのではないかと思うのですが、この問題は手続法を取り寄せまして、どこか探して見れば分ると思うのであります。
田中耕太郎
22
○
田中
耕太君 私も今
懲罰委員長
のお考えのような方向は非常に結構だと思うのですが、それには新たな制度の改正について考慮して頂きたいと、私個人的に思うのです。こういう点は問題になりませんか、
英國
式のさつきの問題について学ぶべきこと、
英國
で
紳士
たるべき
品位
を傷つけた場合には、三分の二以下で
除名
し得る。現在
日本
の制度を作
つて
行く場合において、
議員
としての行動、その資格で以て行動している場合と、そうでない全然
議員
としての行動に
関係
のない
一般
國民
としてや
つた
行動というものを区別して考えるべきかどうか、例えば出張先で
調査
中に不正なことだとか、或いは
品位
を傷つけるようなことがあ
つた
場合、
一般
の私生活上の全く
議員
としての活動に
関係
がない場合、つまり職務の執行に関してや
つた
場合と、関しない場合というようなことを区別すべきかどうかという問題が、ここにありはしないかと思うのですが。
太田敏兄
23
○
委員外議員
(
太田敏兄
君) 多少は考え方に区別があるでしようね。
田中耕太郎
24
○
田中耕太郎
君 その段階を考えるかどうか。
英國
式にゼントルマン・ライク……ということになれば、これは両方共包括してしま
つて
簡單明瞭
ですね。
太田敏兄
25
○
委員外議員
(
太田敏兄
君)
英國
あたりでは
一般
の刑事問題になり、裁判所が有罪の判決を行
なつ
た場合、そういうものは
議院
の
品位
を傷つけたというので
除名処分
に付しますね。
議員
としての処罰も加えるのですね。そういう場合があるし、又同時に裁判所では有罪にな
つて
、判決を受けて処罰されたが、
議院
としては何らそれに対して処置を加えないという場合もあるし、裁判所では無罪の判決を受けたけれども、その場合でもやはり
議院
としてそれに対して処罰を行
なつ
たという場合もありますね。やはり
議院
という観点から見て処罰する、ただ今の出張先における行動も、やはり
言葉
から起ることであ
つて
も、或ることが
議院
の
内部
であ
つた
ら些細なことでも問題になるが、向うでやれば多少
扱い方
が違うでしようから、その点を常識的に……。
田中耕太郎
26
○
田中耕太郎
君
議員
としての
品位
を害するような
行爲
があ
つた
ならば、例えば
委員会
においてなされた
行爲
と雖も、そして
議員
としての職責を遂行するに当
つて
なされた
行爲
でなくとも取上げることができるというふうなことになれば
國会議員
の
品位
を守るのに万全ではないか。
藤井新一
27
○
委員長
(
藤井新一
君) 同感ですね。私は
閉会
中と雖もや
つた
議員
はやはり次の
会期
に罰するということもいいと思いますがね。大野君どうですか。
大野幸一
28
○大野幸一君 私は
懲罰委員会
の
結論
に賛成しましたから……。
田中耕太郎
29
○
田中耕太郎
君 今の起訴猶予ですね、形式的には取上げなくても、こちらとしては
議院
ということの
品位
の問題として取上げるというふうにしたいと思う。
藤井新一
30
○
委員長
(
藤井新一
君) 私は
田中
君と同じ
意見
ですね。
太田敏兄
31
○
委員外議員
(
太田敏兄
君) 実はこういう
調査
を始めましたのは、実際問題としていろいろの問題がありましても、
議員
としてはその
事犯
があ
つて
から三日を経過した後に問題とな
つたの
だから、
議員
としては
動議
を提出しない。そうすれば
議長
は
職権
を以て付託し、我々はそれを
審議
する。そういう問題は殴
つた
とか何とかいう問題と違
つて
、
議院
の
品位
を傷つけることか、
体面
を汚すとかいう問題になりますと、それを
議長
が
職権
を以て
委員会
に付託するというふうになりますと、その結果は直ちに
除名
というような
処分
になる。そうするとこれは非常に重大問題で、それを
議長
が
職権
を以てなにするということもちよつとしかねる。ところで先程申上げましたような
内容
の問題、或いは時間的罰則によ
つて
、いろいろの個々の
議論
があるとしますと、
議論
があるとして……、そこでこういう
調査
をして、
一つ
のこういう場合はこうこうあるべきものだという基準ができますれば、それを、こういうことを
法規
委員会
の方でお決め願
つて
、條交の改正をされる場合もありましようい、或いは
條文
の改正まで行かんでも
一つ
の
内部
紀律として
一つ
の基準ができれば、その基準によ
つて
その基準を
議院
として承認して、そうしてその基準によ
つて
今後措置して行こうということになれば誠にいいと思いますが、何らかの基準を決めませんと、
議論
がいろいろあるので、そういうわけで、一定の
一つ
の基準を決められれば決めようじやないかということから、こういうことが始ま
つたの
でありまだす。
新谷寅三郎
32
○
新谷寅三郎
君 それから勧告を出された場合に今まで勧告を何遍されても一向勧告の効果が現われない、つまり採用されないのが大部分で殆んど見て呉れない人もあるじやないか、折角ここで
研究
して勧告を出された以上成べく実行して貰いたいと思う、それには
委員長
なり代理者が
関係
の常任
委員会
へ行
つて
その趣旨を十分説明して、成るべくこの勧告の趣旨に副うようにやはりこの
委員会
としても努力した方がいいと思うのです。前の勧告もありますけれども、これは
委員長
の方で適当に常任
委員会
への連絡についてお考を願いたい。
藤井新一
33
○
委員長
(
藤井新一
君) 了承いたしました。次回は金曜日の午後一時に開きますが、その折に
國会議員
の任期、選挙期日に関する件を議題といたしまして
審議
いたします。本日はこれにて散会いたします。 午後零時五分散会 出席者は左の通り。
委員長
藤井 新一君 理事
新谷寅三郎
君 委員 大野 幸一君
田中耕太郎
君 松村眞一郎君
委員外議員
懲罰委員長
太田 敏兄君