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法制局参事(
菊井三郎君) 命によりまして
参議院議員選挙の
選挙区として全國区を存置すべき
理由につきまして御説明申上げます。一つの考え方といたしまして、憲法上
二院制を採る建前からすれば、
参議院は
衆議院とその
性格を異にする必要があります。
参議院に解散がなく、
議員の
任期が
衆議院議員の
任期より長いという点、特に
参議院の二院的な
性格からして、
議員には
参議院の
構成員たるにふさわしい全
國的人材を得ることが特に必要であると考えられます。この観点から
選挙法制定当初、
参議院の
選挙区として全國区を置くことは最も適当な制度であるという結論に達して、今まで
実施せられて來ておるのであります。
二といたしまして、全國区制を採つた場合、
選挙人が
被選挙人を十分知り得ないことが多いということを非難し、この点を
根処といたしまして、全國区を数
地区に分ち、一地かを一
選挙区とすべきだとの
意見があります。全國区において
選挙人が
被選挙人を知り得ないことが多いという点を一應是認するといたしましても、この点につきましては
地区制は全国区と大同小異であつて、むしろ一
地区の
知名の士より全國的な
知名の士の方がより
國民に熟知されておるということもできるのでありますから、この点から全國区を廃止するということは適当でない、かように思われるのであります。若し仮に
地区を
選挙区とした場合、その
選出議員は
地区代表的な色彩を帶びることを免れないのでありまして、このため
参議院の
性格はより
衆議院に近似し、
参議院の
性格を稀薄ならしめる虞れがあると思われるのであります。この点から
地区制は俄かに採用し得ないものと一應考えられます。
三の問題といたしまして、全國区の
選挙においては
廣範な
組織網を地盤とする者が特に有利であつて適当でないという
意見が一部にあるようであります。全國区においてこのような者が特に有利であることは事実であろうと一應考えられます。併しこのことはすべての
選挙区に共通の問題でありまして、ただに全
國制のみが持つておる欠点だとは認められないのであります。又全
國選出議員の現在の定員及び
選挙可能の
得票見込数から推算いたしますれば、
選挙区としての
地区制を採用しても全國区制と大して異なる結果を予想されませんので、このような点から考えましても、全國区制を廃止しようとするのは結局無駄であるかのように思われるのであります。
第四の問題としまして、第一回の
参議院議員選挙に当りましては、全國区の
選挙の
実施については、
選挙運動及び
選挙管理の実際上の困難が予想されたのでありましたが、
実施の結果からいたしますれば、特に重大な
欠陷も認められませんし、概ね適当に
実施されたのでありまして、
選挙運動及び
選挙管理の実際面からは、全國区の
廃止論は一應
理由がないものと考えられるのであります。
以上のいずれの点からいたしましても全國区を今直ちに廃止する積極的な
理由ということは乏しいのではなかろうか、それよりはむしろ
参議院の
衆議院に対する特色を発揮せしめる意味におきまして全國区を從前のように存置することが妥当ではなかろうか、かように考えられましてこの案を一
應御参考までに作成した次第であります。