○森下政一君 先刻
総理大臣は、
講和会議が直ちに開かれないということは、客観的な情勢によるということでありましたが、誠にその通りであろうと私も存じます。今にも
講和会議が行われそうな、開かれそうな情勢にあ
つたのに、今日ではそれがいつのことか分らないような情勢に変
つて來た。
首相の言われます客観的情勢というものはいろいろあると思うのでありますが、中の
一つは米ソ間の緊迫した空氣というようなものも
考え得られると思うのであります。更に最近の調印を終
つたと傳えられている北大西洋條約、そうい
つたものができ上
つたということにつきましても、いよいよ米ソ間の緊迫した情勢ということが予想されるように思うのであります。先般
総理大臣の
施政方針演説の中で、いろいろな海外情報を軽々しく信じるなという
お話がございましたが、
日本の
國民といたしましては、無関心で到底おれることではないと思うのであります。殊に先頃、どこからか、米軍は
日本からその兵力を一部引揚げるかのごとき情報が傳わりました際に、これを否定するステートメントが再三ワシントンから発表されたように思います。その中には、若し万一
日本から攻撃を受けるということがあるならば、
アメリカは
日本において俄然として戦うというふうな
言葉がステートメントの一部にあ
つたかと思うのでありますが、私はこれを見ましたときに、この発表によ
つて日本の
國民というものは少しも安心感を得てはいないと思うのであります。長い間の
戰争の惨禍を体験いたしました
日本の
国民は、すでに新らしい
憲法によ
つて武器を放棄しておる。戦争と絶縁した筈である。從いまして、
日本の國土が再び戰場に化するということは、
如何なる場合におきましてもこれを回避したい。御免を蒙りたい。再び
日本の國土が兵火によ
つて蹂躙されるというふうな惨禍を見たくないというのが偽わらない今日の
日本の
國民の気持だろうと思うのであります。そこで私は
戰争を放棄したところの、武器を放棄して平和国家建設に一億邁進しておるところの
日本國の
総理大臣といたしましてああい
つた際に、平和を希求する
日本の
国民は、
日本の國が
如何なる事情にもせよ、
如何なる理由にもせよ、他國によ
つて戦場に化せられるというがごときことは断じて欲するところではないというくらいの声明をなさ
つて、
総理大臣として
日本國民全体の意思を代表して内外にこれを明らかにされる。そうして衷心
日本は平和国家建設を希求しておるのであるということを声明されるくらいのことはなさ
つていいのじやないか。又、して欲しか
つたとこういうふうに思うのでありまして、
如何に敗戦國とは言いながら、諸
外國の国際情勢の波のまにまに今日は東へ流れ、明日は西へ辿り着くとい
つたような人任せの
状態にお
つて、
文化国家建設などということを申しておりましても、甚だ心許ない
感じを
国民が持つのではないか。希くばああい
つたときに
総理大臣といたしまして、断乎、として
日本国民の意思を代表する衷心からの平和希求の声明をなさるということが適切でなか
つたかと、かように思うのでありまするが、御所信
如何でございましようか、これがお伺いいたしたい第一点であります。私は恐らく
國民の総意そうだろうと思いまするが、
日本の國土が
日本で戦うて貰うことによ
つて守れるということを誰も欲していない。希くば砲火の下に
日本の國土が晒されないということが衷心からの
国民の要求である、この点を
総理大臣は、平和國家建設に邁進しつつある
日本の國の
総理大臣は、常に内外にこれを声明されるということが極めて肝要なことではないか、かように存ずるのでありまして、その点に対する御所信を聽きたい。これが
質問の第一点であります。
それからもう
一つ私がお尋ねいたしたいと思いますことは、こういう点であります。
日本では新らしい
政府ができますると、その
反対党は新
政府の成立いたしましたその日から倒閣を声明し、倒閣運動に狂奔するとい
つたような傾きが今日まであ
つたと思うのであります。私は吉田
首相の率いられる民自党の
反対党である
社会党に属しておりまするけれども、私
自身の
考え方といたしましては、たとえ
反対党である民自党が新らしい
政府を作
つたにいたしましても、殊に今回のごとく不信任案を突きつけられて、
衆議院を
解散し天下に信を問うた民主自由党が過半数の議席を與えられるという審判が
國民によ
つて下された。その後にできました新らしい
政府のやりますことを、冷静にその施策を行わしめてこれを監視する、そうして
社会党の立場に立
つてこれを批判して行くという雅量は持
つてよいと、こう私は
考えるのであります。從いまして、直ちに倒閣運動に狂奔するという必要はないと、私個人としてはかように
考えるのでありまするが、それだけにです、民主自由党が
衆議院を
解散して過半数の議席を得るまでの
國民の
信頼をかち得たところの
政府といたしましては、常に
國民に対して極めて素直であ
つて、又
反対党に対してもいわゆる
答弁術によ
つてその場を切り抜けるとい
つたような
態度でなしに、本当に誠意を披瀝して、
政府としての所信を明らかにするという
態度をと
つて貰いたいと思うのであります。先刻木村禧八郎君が、民主自由党の主義
政策と今度提示しておられる
予算とは全く相容れられないものであると思うということを指摘されましたが、
総理大臣は、全然合致しておると言われる、私はそこに割切れんものを感ずるのであります。(「その通り」と呼ぶ者あり)民主自由党が過ぐる総
選挙において全国的に提唱し力説して来て、よく
国民の共感を得て過半数の議席をかち得たという事柄の中には、先刻中西君が指摘しましたように、民主自由党の党員の末々にまで恐らく配られたのであろう
選挙の巻が、何を民主自由党が主唱したかということを明らかに物語
つておると思うのでありまするが、その事柄が今度の
予算には盛られていない。
公約の実行をしないとか、
公約を盛
つていないとかいうこと随分いろいろ批判に上
つておるようでありますが、私は
公約が
予算に盛られていないということを徒らに批判しようとは思わない。恐らく盛りたか
つたというのが民主自由党の本心だ
つたと思う。ところがそれを盛ることができなか
つた。盛ることができなか
つたという事情につきまして、素直に民主自由党が、例えば九
原則に対する認識が足りなか
つたならば、これを
国民に詫びたらよい。詫びるということが若し
総理大臣のお心持にしつくりしないならば、釈明をされたらよかろうと思う。そうして、こういう事情で衷心やりたいと思うが、
選挙当時に声明したことが今直ちに実行することができないのだということを、素直な氣持で
國民に納得させるだけの釈明をする。これは私は民主自由党としてはちつとも恥しいことではない、又それを本当に誠意を以て吐露されるならば、
反対党と難も素直にこれを受入れることができると、かように
考えるのであります。希くば、苛くも
衆議院で過半数を占めるような大
政党が中心にな
つて組織しておる
政府でありまするから、そういう詐らざる誠意を披瀝したところの
政府であ
つて頂きたい。誠意を籠めた
政治のやり方であ
つて貰いたい。そういうやり方で臨むことが
國民をして納得せしむるものではないかと、こう思う者であります。ところが、今度の
予算と民主自由党の主義
政策はちつとも矛盾してはいないのだと言われると、これは單に数の力にものを言わして
反対党を抑圧して行くというだけの
政府でしかないという印象を受けることを、私は非常に悲しく思うのであります。そうい
つた誠意に欠ける
言葉と取れるようなことでなしに、本当に腹の底から眞相を傳えて
国民を納得せしめる、こういう
態度を今の
政府に取
つて貰いたいと思うのでありますが、それは私の要求が無理でありましようか。昨日も
地方行政大蔵
連合委員会が参議院であ
つたのでありまして、その際に
地方還付税率の減らされることについていろいろ論議がありました。たまたま、委員が大藏
大臣にこれは
地方財政法の第二條の法の精神に戻ると思うが、そうお
考えにならないかということを質したときに、極めてぶつきら棒な御
答弁でありまして、突つ撥ねたような何にも誠意のない
お答えでありました。同席しておられました木村國務相を捉えまして、私は今の大蔵
大臣の御
答弁をどう
感じられますか。間違
つておると思われんかと質したときに、その答えは保留さして貰いたいと言われる、そこで私は改めて木村國務相に対して、私の
考え方、即ち
地方還付税といつものが減らされることによ
つて地方民の負担というものはいよいよ苦痛を増して來る。今日
地方財政の膨脹しておるのは、公選知事或いは
市町村長の放漫
政策によ
つてではない。
政府が実施計画を立てて、実はその
費用は
地方民の負担にしておるというものが非常に多い。六三制然り、
地方自治体
警察の
警察費然り、或いは災害復旧にしましても、保健衛生の面においても、中央で実施計画を立
つて負担を
地方に移しておるものが多い。それがために非常に
地方民の困
つておる際に、還付税の減らされることは取も直さず
地方財政はいよいよ
窮乏して來る。
地方民の負担は重くなる。これは木村國務相として欲せざることであると思うが、而もその欲せざるところをよんどころなくしなければならなか
つたというところの事情をはつきりおつしや
つて頂きたい。おつしや
つて頂くことが
反対党である我々がもつとすつきり了得することができると思うと
言つたところが、それでは速記を止めてということで
お答えになられましたところが、本当に誠意を籠めて本心を吐露してお
つたと思うので、本当にその方が私共も理解しやすい、納得しやすいという氣持にな
つて、私共は釈然とすることができたのであります。先刻から繰返して申しますように、過ぐる
選挙に
國民の大多数の信任を得られ、
衆議院の過半数を制しておる大
政党、民主自由党が中心にな
つて組織しておる新らしき
政府が、今度提案されましたところの
予算は、民主自由党が少くとも
選挙の間に叫んだことと全く相背馳したものである。そうであ
つてもそれを素直に
國民に釈明するということが私は一番
國民をして納得せしめるゆえんであり、
反対党である我々を納得せしめるゆえんだと思うのであります。決して今からでも遅いとは思わない、この参議院の
予算審議のこの席上を通じて、私は天下に吉田
総理が釈明をされたらいいと思うのであります。かように思うのでありますが、これに対する
首相の御所信を質したい、これが第二点であります。