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公述人(笹子豊治君) 私横浜興信銀行の笹子であります。現在全国銀行従業員組合連合会の書記長や
つております。私今日初めてこちらの
予算委員会に参りまして、本
年度の
予算につきまして、何か意見を吐けということでありますのですが、この
予算の
内容、或いは細目に亘
つていろいろ意見を述べるという、そのためにはいろいろを検討して見なければならん問題が沢山あるわけでありますが、現在そうした時間的な余裕もありませんし、又私考えますのに、
予算の本質を突く場合に、
内容の平面的な検討、ただそれだけでは駄目でありまして、やはり
予算の本質はその
政府の取
つているところの
政策、いわば今次民自党が政権の座に坐
つておりますけれども、民自党が現在何をしているか、又今後何をしようとしているかというような
政策面の上において理解するということが私は本質であろうと考えます。そういうことで、初めて今次
予算の七千四十九億に上るところの厖大な
予算のいわゆる階級性がはつきりすると私は考えるわけであります。それで終戦以来歴代の
政府の取
つてきた
政策、或いは又特に現在
政府が取
つておる
政策、又今後どういう形でそれが発展するかというような見通しの上に立ちまして、我々といたしましては一応こういうふうに理解しているわけであります。
先ず、外資導入の問題でありますが、
政府は外資導入、外資導入というようなことを盛んに言
つております。併し外資はただでよその国が
日本に呉れるものではないわけでありまして、その間のことにつきましては、先にマッカーサー司令部からも、
外国は何も
日本の国に対して慈善
事業をや
つているのじやないというふうなことによ
つてもはつきりと示されております。であるにも拘わらず、
政府が飽くまでも外資に縋るというふうなことにつきましては、我々
労働者といたしましては、
日本の国内における独占資本並びにそれに結びつくところの国際的な資本というものの二重の搾取、収奪の下に、われわれ
労働者階級をますます困窮の方向に持
つて行くというふうに理解するわけでありまして、併せてこれはマーシャル・プランによ
つてもはつきり窺えることでありますけれども、何らかの形の政治的な、或いは
経済的な譲歩なしには、
外国の援助というものは受け得られない、考え得られないのだというようなことは、我々は
労働者として特に最近痛感するところであります。延いてこの外資に頼り過ぎるという卑屈な態度は、やがて民族の独立を危殆に陥れるというような危険性を孕んでおるものとして我々は理解するわけであります。従いまして今次
予算に上程されましたところの千七百五十億の援助見返資金というものは、それがどうした形で管理されるか、又それがいつどういうような形で、又どういうレートの換算率によ
つて入
つて来るかというようなことがはつきりしない限り、余りそれに頼るというようなことは断じて許し得ないことであろうというふうに私は考えます。
貿易の面におきましても今までや
つておるところを見まするに、平たく申上げますと、各国の安い品物を高く買
つておる半面、国際価格よりも非常に安く
日本の品物を売
つております。こういうような形で飽くまでも一部独占的な資本の擁護をや
つておるのが今の
政府のやり方であろうというふうに我々は理解するわけであります。でその半面、
産業資本家或いは中小企業家、或いは
労働階級、こういう者の犠牲の上においてすべてそうした
貿易政策を通じてのマイナスを我々の
税金収奪、或いは勤労階級からの
国家財政によるところの収奪を通じて独占資本に奉仕しておるというような形が強く打出されておるように我々には感じ得られるわけであります。その他又価格
政策にいたしましても同様のことが言えると思います。労働
政策におきましては、我々
労働階級の実質的な
賃金の低下を策し、その間において労働法規を改悪し、日に日に我々を窮乏のどん底に叩き込んでおる、こういうような暴力的な
政策を現にや
つておるわけであります。その他皆さんも御承知の通り東宝の爭議の問題、或
るいは現在戦われておりますところの日教組の六・三制擁護の問題、こういう問題を見まするに、伝統的な
日本の民俗文化、これを発展させ、いわゆる民族文化を守り、或
るいは育て、或
るいは発展させる、その発展させる者が誰であるか、或
るいは又眞に民主主義的な
教育を擁護し、その立場に立
つている者は誰であるかということはすでにはつきりしておるわけであります。
政府は常に弾圧
政策を以ちまして、伝統的民族文化を
破壊するような行き方、或
るいは又民主的な
教育的基礎を
破壊するような行き方、こういうような行き方をや
つております。こういう一連の
政策によ
つて裏付けられるところの今時の
予算、而も七千四十九億の厖大
予算、これに対しましては、我々
労働者といたしましては断じて賛成することはできないわけであります。全国の労働組合、勤労
大衆、或いは又現時躍進しつつあるところの世界の民主主義的勢力、この名において我々としては断じて賛成することはいかないわけであります。
さて次に私は金融機関に従事しておりますので、現在の
政府の考えておる金融
政策につきまして一二私の常に考えておりますことを述べまして、且つ
政府に対して私の疑問とするところを開陳いたしまして、私の意見を終りたいと思います。私共は常に銀行内部に在りまして、銀行経営の民主化を通じ常に闘
つておるわけであります。と同時に我々が銀行経営の徹底的な民主化、これを闘うことによりまして、金融機関を社会化の方向に持
つて行くということを常に考えておるわけであります。ところが現在金融機関の一般的な傾向でありますが、非常に内部的に腐敗しております。この間青木大臣がインフレはすでに終息の過程を辿
つておるというようなことを言
つておられましたが、これは非常に私は楽観論であろうと考えるのであります。と申しますのは、大体
政府の
考え方を推察いたしまするに、インフレが終息過程に入つたという
考え方の裏付といたしまして、日銀の発行券高の非常に鈍化したということを主として挙げているようであります。併し日銀の発券高が鈍化の傾向を辿つたということは、何もインフレ終息の、インフレが安定期に入つたというような条件にはならんと我々は考えるわけであります。ということは日銀の発券高が鈍化したということは、
政府が
税金の面におきまして
重税による暴力的な
徴税をや
つております。これが
一つの
原因であります。それから又資金が非常に回転率を速めて貸出されているというようなこともその一の要因であろうと思います。或いは又手形の利用が非常に広範にな
つているということも言えると思います。特にこの手形の流用の面でありますけれども、これには信用制度の上に立
つておるところの金融機関といたしまして、非常に寒心すべき傾向が現在出ておるわけであります。いわゆる手形の悪用が一般化の傾向を辿
つております。これこそはそれが大きな社会的な犯罪の温床をなしておるという
意味におきましても、いわゆるインフレは終息の過程を辿
つておるのではなくて、そうした面におきましてむしろ内部的に悪化しているというふうに我々は考えておるわけであります。でよく
復金の問題が指摘されておりますけれども、
復金の問題は、いわば氷山に例えて申しますならば海面に僅かに出た頂点でありまして、全金融機関は規標の
大小を問わずいわゆる不正或いは不当こういうような形の融資が非常に多くな
つております。これに対しまして
政府はどういうような
政策を立てるのでありましようか、我々の疑問とするところであります。昨日の新聞の発表によりますと信用統制機関を強化するというような記事が出ておるようでありますけれども、官僚的な機構の下においての信用統制機構、そうした金融機関の現実の悪傾向の基礎を
破壊するというところまでには手が届かんじやないか、上滑りをしてしまうのじやないかというような危惧を我々は持
つております。これが今金融機関の一般的な動きとしては非常に好ましくない傾向であるわけです。それで我々は銀行内部において経営の民主化の一環といたしまして、融資、資金の適正な配分というようなこと主張しております。いわゆる民主的な融資をやれということでありますが、ところが我々の経営者に至りましては、いわゆる不当融資ということと不良融資ということをすり替えまして、中小企業に対して完全に財布の蓋を閉めておるような現状であります。成る程現在の
国家統制の下においての中小企業は実に悲惨な
状態にあります。恐らくは銀行が銀行のいわゆる資本の論理を貫くという立場に立つたときには、現在の中小企業にはおいそれと金は出せない現状でありまして、明らかに現在の中小企業は、その
意味においては不良貸出しということにならざるを得ないところの問題があろうと考えます。こういうような内部的なさまざまの矛盾は激化の一途を辿
つておるというふうに我々は理解するわけでありますが、何故こういうような
状態が、いわゆる目の前において打ち倒れるところの中小企業の健全な融資対象が奪われておるがために、融資市場が非常に狭隘化しつつあるというような現状の上に立
つて見殺しにしておる。そういうような矛盾した
状態、これは何によ
つて招来されるかということでありますけれども、これこそがいわゆる集中金融方式、
政府の採
つておりますところの独占的な大企業に注ぎ込む、独占的な金融資本の支配、そうした面において我々は理解するわけであります。我々として考えますのには、眞に銀行の経営を民主化して、その公共性を発揮させるためには、
政府の金融
政策そのものが飽くまでも独占的な行き方、独占的な企業の擁護、独占金融資本の覇権の確立というような方向でなくして、飽くまでも
産業資本家或いは中小企業家・我々勤労
大衆、こうした立場に立
つてやらない限りは、又そうした民主的な
方法を採らない限りは、なかなか救われんのじやないかというふうに我々は理解するわけであります。
これは
一つの
質問にもなるわけでありますけれども、昨日の新聞によりますと
大蔵省は省議によりまして、大体今二十四
年度におきまして貯蓄のを増額目標を二千五百億と推定し、そのうちの千八百億を
国家資金
計画に繰入れるというようなことを言
つております。併しここで
一つ考えて貰いたいことは、今まで救国貯蓄
運動というような名目、その他戦時中にもありましたけれども、頭から枠を決めて、各金融機関に割当てるというような行き方、こうした官僚的な行き方が、結局は金融機関を毒しておるという面をよくお考え願いたいと我々は考えるわけであります。、ことは割当が決りますと否でも応でもそこへ持
つて行かなければならん、又官僚機構によりましてそうした監督の仕方をいたしますので、どうしてもそこへ持
つて行かなければならん。
従つて現在の段階におきまして貯金の増強は
政府の還付資金も引受けるか、或いは又貸出という形を通じて、いわゆる水をさすことによ
つて入れるという
方法をとらない限りは、おいそれと貯金は増強しないものであります。こういうふうな頭から、上から枠を決めて押しつけるというような官僚的な生き方は是非止めてい行きたい、こういうふうに考えます。
それから又大体千八百億は
国家資金
計画に繰入れられるものであるかどうか、それだけ集まるかどうか。現在
経済安定推進本部におきまして貯蓄増強の促進に当
つておりますけれども、例えばこれは
大蔵省にこの前そうした
考え方があつたようでありますけれども、昨年金融
政策の名によ
つて、銀行員の給與は非常に高い、これはもつと
賃金ストップをやらなければいかんというような
考え方が出ておるようでありますけれども、我々の給與というものは決して高いのではないわけであります。例えば大銀行の給與と小さな銀行の給與は、その面においても随分段差があります。
従つて高い低いということは総体的に理解すべき性質のものでありまして、決して実質的な面においては我々は高いのではない、そのためのデータは幾らでも
政府にお見せすることができるというふうに考えております。そうした我々の
生活を上から押えつけるという行き方をする限りは、この貯金の増強
状況ということは私はどうもなかなかおいそれと
経済安定本部が鐘や太鼓を叩いても集まるものではないというふうに我々は考えるのであります。
それから又よしや二千五百億が或いは三千億が集まつたとしても、
国家資金に繰入れられるということが見通しの上に立
つておりましても亦
一つ問題があるのであります。これは他の
産業部門におきましても、独占的な大企業と、そうでない中小企業との対立、摩擦はますます激化の一路を辿
つております。それと同じように又金融機関内部におきましても、大銀行と中小銀行との経営上の対立摩擦は激化しつつあるのであります。恐らくは九大銀行が全銀行の貯金総額の七〇%強を現実に支配しておるのが実情であると考えております。ということはその中でも一、二……今日も出席なさ
つておるようでありますけれども、千代田銀行或いは富士銀行こうした財閥系の独占的な金融資本は全国的に店舗を持
つておるということと、それから又保主的な政治権力との結び着きを持
つておるということと、官僚どんなにでも
自分の手足の如く使えるというようなことにおきまして、そういう形を通じて
復金の事件にも見られますように、その独占的な支配力をますます強化しつつあるわけであります。
復金の融資が皆さん御承知のように一千三百億の貸出しが、大体中小企業に対しては僅か四%か五%ぐらい、他の大
部分は独占的な企業である。その企業の内訳を見ましても、例えば三井鉱山或いは三菱鉱業、
昭和電工、こういうようなところへ何十億という金が入
つておる。それは直ちにいわゆる大銀行の懐に入るというに我々は理解しても決して過言ではない、こういうふうに考えております。いわゆるそうした金融機関におきましても、独占的な資本とそうでない中小銀行との対立が激化しつつある。そうした独占的な大銀行は又独占的な大企業と結び付き、そういうような形を通じて現在の
日本の
経済はますます強引に
国家独占の性格を強くむき出しにしておるというに我々は理解するわけであります。特に九大銀行以下の約六十銀行と申しますのは、大体
地方産業において抜き差しならない地歩を占めておりますところのいわゆる小銀行であります。これらの小銀行は
政府の諸
政策が飽くまでも独占資本の擁護というような立場に立つ限りにおいては、資金或は資材面においても非常に大きな圧迫を受けておる。
従つてそうした民族
産業の基盤の上に立
つておるところの中小銀行というものは、併せて経営が苦しくな
つてくるのは当然であるわけであります。そこに大きな問題があります。そうした大銀行と
地方銀行との対立の問題、これを
政府はいかに統制しどういうふうにするかということについても、私は
大蔵省辺りの見解を聞きたいところであります。
最後に私は金融
政策の四つの基本線といたしまして、
大蔵省が考えておられるようでありますところの経営の民主化の問題、銀行経営の健全化の問題について少しくやはり聞きしたいところであるのですが、伺わして頂きたいと思います。銀行経営の健全化は只今までお話申上げましたような
状態におきましては、なかなかむずかしいように我々は感ずる次第であります。昨年新立法によるところの金融制度の全面的な改正指針というものがマッカーサー司令部から出されまして、その手段とするところは、今まで金融措置を通じて
国家財政の破綻の尻拭いをや
つておつた、こういうような因果
関係は断ち切らなければいかんという趣旨であつたようでありまして、
従つてこの構構改革も対象とされておつたのは日銀であります。又
大蔵省の貯金分辺りの機構も変えなければいかんというような御意見のようにも承わ
つております。ところがそれに対しまして
政府はいわゆる三
委員会—大蔵大臣、
安本長官、或いは日銀の一万田さん、これらを交えて三人
委員会を構成して、そうして改革を指示されておるところの、日銀或いはそうしたところの代表の方たちが集
つて三人
委員会を作
つて民主化の問題を討議されたということ、又それに対しまして経営者側から
一つの案を出したのに対して私共も又勤労者の立場に立
つて今後の金融機関はどうあらねばならないかという
意味におきまして、金融の改正案を出したわけであります。ところがそれが途中ですうつと消えてしま
つて国会上程というような問題もなくな
つてしまつた。ところが今度日銀を中心にいたしまして、日銀の機構の上に据えるものとしてクレジット・ボードの設立という問題が出ておるようであります。ちよつとこのクレジット・ボードの中には今打ち見たところ、
安本の長官や副長官、日銀の総裁、大蔵大臣或いは次官、それから金融界或いは
産業界というような形で
委員が任命されるような向きでありますけれども、
政府はこの中に真に金融機関の健全化を図るため、又民主的な金融
政策を打ち立てるために、我々
労働階級の代表或いは金融機関の代表、これを入れる意図があるかないかというようなことを、我々はお聞きしたい訳であります。
時間がなくなりましたので尻切れとんぼになりましたが、最後に大急ぎに今度の
予算面に出ておりますところの
国民金融公社の問題について皆さんにお考え願いたいと思います。ということは、
国民金融公社は庶民金庫並びに恩給金庫の二つを改廃いたしまして作る訳でありますが、
政府からは十三億の出資があります。ところでこの十三億のうち十一億七千万円は大体日銀に返済するという形にな
つておりまして、残りは僅か一億足らずであります。それに対しまして、厚生省の
予算によりますところの引揚者生業資金が約三億ばかり出ることにな
つておりますけれども、合計しても四億何ぼであります。これで今まで庶民金庫或いは恩給金庫おきましてはどういうような役割を持
つておつたかと申しますと、市街地信用組合、無盡、引揚者の救済資金、或いは困窮者というような一般庶民の金融の
機能を果たしておつた訳であります。それを
政府が一方的に止めにしてそうした実際仕事にも何にもならないような
予算を計上いたしまして、
国民金融公社を作る意図並びに
政府の言
つております中小企業に対する対策、それとの関連の上において、そうしたことによ
つて中小企業を果して救い得るかどうか、一般庶民金融というような面におきましても、大きな疑問を投げかけている訳でありまして、庶民金庫の組合員は現在その問題について闘
つております。大体首切りは二割、或いは片一方は六割というようなことを聞いておりますけれども、いずれにいたしましてもこの問題については重大な関心を示して闘う決意を持
つておる訳であります。
大分時間が取れまして尻切れとんぼになりましたけれども、私の言わんとする主眼は、今度の
予算は、あらゆる
政府の考えておる、現在持
つておる、今後やるであろうところのさまざまの
政策が非民主的であり、明らかにポツダム宣言或いは極東
委員会の原則並びに新憲法、こういうものの違反というような事項が非常に多いという
意味におきまして、我々としましてはどうしても賛成する訳にはいかん、反対いたします。反対するということを率直に申し上げまして私の
考え方を終ります。