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國務大臣(稻垣平太郎君)
民間外資につきましては、いろいろ噂はあります。そうして又実際に話合がされているのも非常に沢山承知いたしております。いずれ後で例示いたしますが、併しながら実際に本当に取引ができたというのは極く僅かでありまして、いろいろな支障のためにまだできていないというのが実情であります。その支障の主なる点はやはりレートが設定されていないということも
一つであります。又
日本の例の独禁法或いはその他の
統制法規等によりまして、なかなか投資した後の氣勢を心配している。それからして法人税が高いというような問題、それから
日本側の受入側から申しますと、先程ここで問題になりましたいわゆる資産の再評價の問題、これが
日本側にと
つて簿價が非常に安いという点が問題になると思うであります。又労働不安、こうい
つたようなことも
一つの原因にな
つておりまして、実際上に行われたものは本当に少いのであります。殊に今木村さんが御指摘のようにただ單にエーゼント式の短期のものしかできておりませんが、長期のものとしまして、最近締結されましたのは例の日石と東亞燃料の契約であります。これは御承知のように
日本の石油の
生産が
日本の全原油の約一〇%にしか当
つていないのでありますから、どうしても原油を輸入して精製するという仕事をやらなければならないわけであります。この精製が許されていなくた
つて何も
日本が精製しないでも精製したものを持
つて來るということであればいいじやないかということであ
つたのでありますが、今回今まで寢てお
つた東亞燃料の工場、或いは日石の工場というものを活かす
意味において原油を入れるということを條件としてスタンダードオイルあたりでここに契約を締結し、その何の株、東亞燃料なら東亞燃料の株の半分を取得したい。そうして原油を入れる。そうして持
つておりますところのタンクを利用さして貰う。タンクを利用するということは精製のための原油を入れるということと、尚同時にガソリンその他を入れるための埠頭におけるタンク場を利用するという
一つの便宜がありますために契約が成立したわけであります。だからいわゆる導入側から言えば、タンクを利用させて
貰つて日本にいわゆる石油を商賣するという利点も得る。それからして受入側から言えば、原油が貰えるので今まで寢てお
つたところのいわゆる精製事業をや
つて行くことができる。こういうことのために、今まで両工場とも実際は何もしていなか
つた、死んでお
つた、これが活きるということでありまするために、額面は五十円のパーで取引されたと承知いたしております。これはいわゆる簿價の
関係から言えば大いに議論があるところであろうと思いますけれども、併しながら簿價もこれが全然精製ができないで、動かせないことになれば死んでおると同じ
意味になりますから、その
意味から言えば五十円にしてい
つたということは、或いはよか
つたということも言えるのじやないか、こう思
つております。それからしていろいろ例を引いて
お話申上げますと、先ず第一には原料を入れて、そうしてこれを加工して加工品として出すという形の
外資導入、この話ができかかりまして、まだできずにおりますのが日軽であります。
日本軽金属であります。これは
アメリカのレーノルドの
会社と殆んど話ができかか
つておりましたのでありますが、これはボーキサイトを入れて、これをアルミナとして
向うに持
つて行く。そのまま内地向けにするのではありませんでいわゆる或る
意味において労働輸出であります。あそこを
日本の加工品工場として利用しよう、あの工場は余裕が多いからということであ
つたのでありますが、そのうちに南からビリトンのボーキサイトが入
つて來るように
なつたものですから、日軽としても、そう急がない、原料もあるのだ、それに
日本内地の
需要を充たすのに忙しいために交渉が停頓しておるということであります。それと、交渉の停頓のもう
一つの理由は、爲替レートの
関係があります。それからして第二の例といたしますというと、いわゆる技術機械を導入する、それに伴な
つていわゆる或いはその
会社の株を持つ、こういうことであります。例えば松尾鉱山などその例でありますが、これは御承知の
通り硫化鉱が
日本では非常に少ない、肥料の原料としての硫化鉱が欲しいというのでありますが、今の松尾鉱山の採掘方式ではなかなか俄かに殖やすわけに行かん。それでいわゆる段々掘式に掘
つて行つて段々に横へ坑道をつけて行くという方式があるのだそうですが、そうい
つたような機械技術を松尾鉱山に導入して、そうしてや
つて行こう。その代り硫黄のあれは御承知のように硫化鉱と共に硫黄が出る。硫黄の外國の一手販賣権を貰いたい。この條件でこれができ上らなか
つたのであります。この條件ででき上らなか
つたということは時の
日本政府……今日ではありません、時の
日本政府がこれを拒絶した。なぜならば、硫黄は内地の
需要が充たされないのであるから、硫黄を輸出されるということは困るということでありまして、私はこれは原料はやるが、今は
日本は内地で充たないのだから暫く保留ということで、この契約ができた方が
日本のためによか
つたろうと思います。これが第二
外資導入の
一つの型であります。
第三の型は、いわゆる普通に外資を導入するという型でありますが、この方の話はまだ起
つておるのを聞いておりません。大体そういうことでございます。