○カニエ邦彦君 私は
只今上程いたされましたところの
行政機関職員定員法に対しまして、
日本社会党を代表いたしまして反対をするものであります。
討論に先立ちまして皆様に一言お断わりし、且つお願いして置きたい点がございます。後から出ますところの本法案の一部修正案を除いて、残り全部に対する修正案があるということを十分御了承願いたいのでございます。それから本法案は、我々労働者にとりましては最も重要な問題でございますので、十分に我々の
意見を述べさして頂きたいと思うのであります。只今
議長から時間の制限を受けているのでございますが、大体は先ず時間制限内にやれるものと思うのでございますが、多少延びるかも分りませんので、その点は皆さん
一つ御了承をお願いいたしたと思います。(「了承しないぞ」と呼ぶ者あり)
この法案の狙いとしているところは、皆さんも御承知の
通り、戰後の國の役所が非常に多く殖えたということ、從
つて役人の数が余りにも多過ぎるので、これでは國の世帶がや
つて行けないから、
一つ二重三重にダブ
つているような役所はこの際できるだけ整理をして、そうして人員も一般会計三割、特別会計二割を減らして、そうして國の財源を助け、現在の危機を乘切ろうと
言つているのでございます。これは理窟では非常に至極尤もなように聞えるのではございますが、事実は全くそうではないのでございます。法案の第一條に、先程説明されたように行政
機関とはどういうものを言うかということを規定しておりまして、第二條では、一應各省各廳の定員は何人ということを、即ち我が國の役人の総数を八十七万一千二百七十九人と規定しており、第三條では各省廳内の人員の融通が自由にできるというようなことに定められているのであります。第四條では、毎月行政管理廳長官……そこにおられる行政管理廳長官の手許に一々
報告をするという義務を規定しているのでございます。
終戰後我が國の
憲法は、労働者、勤労者の基本的人権を守ると共に、自由なストライキができ得るように、いわゆる罷業権をも認めているのでございます。ところが公務員法は、國の官吏であるという
立場から、一般の労働者や勤労者のように自由にストライキができないように公務員法で定められているのございます。即ちいわば両手を後手に縛り上げられているような形にな
つているのでございます。その代りに
一つ公務員法の八十九條から九十二條までの規定で、不当に首を切られた者は審査ができ得るよう、いわゆる訴願権が認められているのでございます。即ちせめて口だけでも
一つ……手は括
つておるが口だけでも自由に抗弁できるようにしてあるのであります。この法案の附則の第五項から第十項までの規定は、これら公務員の最後の命の綱とも頼むべき訴願権が取り上げられているのでございます。即ち口で物を言うだけ認められているやつが、その口の中に手拭を捻じ込まれて、そうして物も何も言えないように、この点でや
つているのでございます。こうなりますと、國家の公務員というものも実に哀れなものでございまして、手足は公務員法で後手に縛られておるし、而も今度の法律では猿ぐつわを口に嵌められている。昔から私は、どんな大惡党でも皆首を切る前には親切に教悔師と言いますか、坊さんが出て來て、そうして本人に対して丁寧に納得の行くように話をし、得心させた上で、而もその遺言の一言もしやべらせて、そうして首を切るのであると聞いておるのであります。而もその首を切るときには
日本刀の切れ味のよいので、ずばりつと切り落す。而も切る前には死骸の片附け方につきましても丁寧にちやんと準備がしてあると、こう聞いておるのであります。この法律の附則の第十一條では、肝腎の失業対策或いは退職金の問題はこれを政令で定めると
言つており、即ち死骸の処置については
政府が勝手に自分でお手盛りでや
つて行くというようなことにな
つておるのでございます。このことは
政府が首切りの
責任を我々
國会になすり付けて置いて、その
責任を我々に轉嫁せんとする以外の何物でもないのでございます。こうなると、手足を縛り上げられ、口には猿ぐつわを嵌められ、而も切れないところの鉈で首を叩き切
つて、死骸は足で蹴つ飛ばして、そうして首を木の上にさらして、そうしてさらし首にするようなものであ
つて、首を切られる公務員の沢山の人たちは恨めしうて、とても死んでも死に切れず、冥土へも行けないと思うのであります。(
拍手)而もこのむごたらしい首切りをする首切浅右衞門は、あすこに鎭座ましますところの本多國務大臣でございます。お顔は至
つてこう円満そうに見えるのでございますが、腹の中は至
つて薄情なものでございます。(笑声、
拍手)又このような残酷な首切りに賛成をされたところの内閣
委員の、民自党の諸君はともかくもといたしまして、中でも緑風会の官僚出身であるところの、ここにおられる鈴木、新谷の両先生のごときは積極的に大賛成をされておるのであります。私はこの緑風会の皆樣方が全部が全部かような、えげつない、血も涙もない人ばかりであるとは決して思
つておりません。
先ず、今回の二割、三割という基準でございますが、どこの役所をどれだけ機構を改革することによ
つて、又どれだけの仕事を減らすことにおきまして、どれだけの人員を整理するという科学的な又合理的な基礎の上に立
つてなされるのが当然だと思います。
政府は一体如何なる基礎によ
つてかかる基準を出したのか、私たちはここを数日來お互いに口を酸つぱくして追究しておるのでありますが、これだけ沢山両脇に大臣がおられて、ただの一人として満足な答弁をして頂いた方はございませんのであります。強いて追究されると、それは各省大臣は、
政府から無理押しに今度は押し込まれたので止むを得ずや
つておると言いますし、又首切りの総元締である本多國務相に聞けば、それぞれの主管大臣から御説明をそれは申上げますと言い、我々は今日まで到頭その本体を掴むことが実はできずに終
つたのでございます。
要するに、今回の整理の基準の数は何ら科学的根拠によるものではなく、それかと
言つて、仕事の量からこれを決めたものでもございません。全くの天下り天引行政整理であ
つて、我々は我々の國民生活を全面的に破綻に導くところの反動政策の一環として行われるものであ
つて、而も
憲法に規定されておるところの基本的人権を無視して強引に断行されるところの暴力的な首切りのための首切りであ
つて、我々はかような行政整理に対しましては断乎として反対するものであります。(
拍手)
さて、我が國の官吏の数は諸外國に比較いたしまして多いと
言つておられるのでございますが、実態はどうであるかと言いますと、アメリカ、イギリス、
日本の官吏の数を総人口及び有業人口との比率を最近の資料を以て見まするならば、次のようでございます。即ちアメリカが総人口一億四千四百万人、有業人口が五千七百九十四万七千人、官公吏の数は中央で百九十八万五千人、地方では三百六十六万八千名、合計で五百六十五万三千人、総人口に対して官吏の数は二五・四人に一人、有業人口に対しては十二人に一人、イギリスにおいては総人口は四千五百万人、有業人口は千九百十万三千人、これに対する官吏は中央は百八万一千人、地方は百十四万二千人、合計二百二十二万三千人、総人口に比して二〇・二人に一人、有業人口に対しましては、八・六人に一人とな
つており、一方我が國におきましては、総人口は七千九百万人、有業人口は三千六百二十万人、官公吏の数は中央で四十七万一千人、地方では百二十一万三千人、合計百六十八万四千人、総人口に対して四六・八人に一人、有業人口に対して二一・五人に一人という数字とな
つておるのでございます。(「鉄道は民営だ」と呼ぶ者あり)我が國の中央官吏のうち四十七万一千人の中には、鉄道、逓信、專賣等の特別会計に属するところの現業百二十万一千五百九人及び公團の職員十二万八千四百九十七人は、以上申述べましたアメリカ、イギリスの対比の上から除外しておるのでございます。アメリカ、イギリスについては各軍隊二百二十万と八十一万を除外いたしました。特別会計と公團とを含めた場合には、総人口に対して二十六人に一人となり、有業人口に対しましては十二人に一名以下でございます。只今申上げましたアメリカにおける資料は一九四七年十二月の資料であり、イギリスの場合は一九四七年七月の数字であります。我が國の有業人口は総理廳統計局による一九四八年十月の資料でございます。我が國の中央、地方官吏の数はおのおの二十三年三月一日の数字でございます。かくのごとく数字によりましても、アメリカ、イギリスのように行政のやり方がすべて機械化されて、そうして組織化されておる國々と比較して見ましても、決して多いとは言えないのでございます。戰後我が國の官吏は急激に増加したことは、我々の認めておるところでございますが、併し現在の我が國の状況よりして、官吏を減らすことにおいて我が國の再建ができ得るとは考えられないのであります。現在の各官廳並びに現場の実情は、働く者が足りなくて或いは労働強化となり、胸部疾患その他の病氣で倒れる者が増加の一途を辿
つておるのでございます。又
婦人の労働者におきましても、十分な休暇が與えられておるにも拘わらず休暇を取ることができず、而もこれらの
人々は予算の
関係でオーバー労働に対する賃金も十分には貰
つていない現状でございます。我が國の官吏が
終戰後増加した原因はいろいろあるのでありますが、官僚
統制の強化、渉外事務の複雜化、民主的改革、現業の諸施設の老朽等によるものでありまして、官僚
統制の強化は、戰後における経済再編成の過程において政策的に強行なされたものでございまして、経済安定本部とか或いは物價廳、或いは経済
調査廳等はそのために新らしく設けられたものでございます。その他各省廳ともに人員の増加、機構の拡充を招いたのでございます。地方出先
機関の増加もこの
理由によるものでありまして、渉外事務の複雜化は占領下におけるところの特殊的
事情に基くものでありまして、
政府の政策次第によりましては、その削減は可能と思われるのでございますが、現在のような自主性も亦
責任性も失
つているところの現
政府の下では、ますます渉外事務が殖えるばかりでありまして、戰後において民主的改革が行われた一例として、各種の行政の
委員会とか或いは
審議会、
調査会等の設置並びに
調査統計部門の拡充、或いは又各種の社会保險
制度に應ずるところの機構の強化新設等、すべてその現われでありまして、戰後における急激なる官吏の増加は、仕事の量が飛躍的に増加したことに実は原因しておるのでございます。ここに
從來の定員が二割乃至三割削減されるといたしますれば一体どうなるかについて、二三の現場について申上げて見たいと思うのであります。
先ず郵政電信
関係の現場におきましては、事業量は逐年ますます増加をするに反しまして、從業員は必ずしもこれに追い付いておるのではございません。例えば保險年金業務におきましては、
昭和九年に比べまして年金契約の件数は四倍以上に達しておるのに対しまして、人員は三倍にも達せず、而も労働力の構成は、労働の強化と待遇の劣惡から非常に不安定であり、又熟練者は年々減少しておる状態でございます。のみならず戰災施設の復興及び保全は極めて不良でありまして、例えば戰災局舍の復旧は、郵便局で約半数でございます。電信局で三分の一に過ぎず、加入電話のごときも四〇%が被災し、これの三九%が僅かに漸く復旧したのみという現状でございます。保全について一例を申しますと、郵便袋、いわゆる行嚢でありますが、その使用量は戰前に比べまして六五%に過ぎません。又電話故障率について見ましても、
昭和十二年の八・一%に比して二十二年度には二七・四%に達しており、事業施設が如何に荒れ果てているかということを物語
つておるのでございます。かくて事業量の絶対的増加、施設の能率低下が從業員の上に労働強化の形とな
つて蔽いかぶさ
つており、このために逓信事業におけるところの、先程も羽仁さんから話されました
通りに、結核罹病率は他産業に比べまして最もその高率を示し、東京三中央局では療養を要する者が一三%にも達しておるというのでございます。又曾て
昭和五年には二十五都市の平均の電報の所要時間は僅かに五十七分でありましたが、現在では約七時間を要しておる状態であります。從
つて逓信現從業員の労働條件を安定せしめ、そうして人員を増加する措置を講ずる以外には、この荒れ果てた現場を救済することは不可能と私は信ずるのでございます。然るに今や予算節減のために十人に対しまして一人の割合で整理されるならば、その事業は完全に麻痺し、恐るべき亡國への途を迫るに過ぎないことは明らかであります。
更に國鉄において言うなれば、二十三年度の予算定員の六十二万七千五百名を五十万六千七百名に、約十二万名を整理しようというのでありますが、この場合現業は平均一七%に止まるが、管理部門は実に五〇%の整理ということに相成るのでございます。又現業中最も重要な部門であるところの
機関区、電車区は、実に三三%の減員となることにな
つております。然るに一方國鉄の從業員諸君は、驚く勿れ年間を通じまして八万人分の超過勤務を余儀なくされているのでございます。而も十分な超過勤務手当は未だに
受取つておらない実情でございます。然るにも拘わらず十二万人を整理せんとしておることは、五月十四日に我が党の政調会主催の定員法案説明会において、加賀山長官は婉曲に今回の首切政策は失敗するということを事前に認めている。而もこれを強行するごときことになれば、電車区において送電事務に重大なる支障を來し、或いは通過列車監視の削減、中間駅信号係の減員、巡察員の廃止、外勤運轉係の廃止等を結果し、今日すでに路線の荒廃はその極に達し、國鉄の現状を熟知せる專門家の人たちは安心して汽車には乘れないというようなことを
言つておるのでございます。
危險状態に更に拍車をかけ、交通事故は更に今後増加することとなるであろうと思います。更に又小駅の廃止、それから今の駅の裏口の閉鎖、出札窓口及び改札窓口の一部閉鎖、手荷物小荷物取扱時間の制限等が行われる結果となりまして、國鉄のサービスは著しく低下することとなるでございましよう。
又測候所、氣象台の減員の問題でありますが、現在六千四百名の諸君のうち、その三分の一の二千数百名を減らそうというのでありますが、現在の数においてすら、その所掌事務を遂行することが非常に困難な状態にありまして、三分の一の減員となりますれば、農業、漁業、海運等の発展のための科学的資料は殆んど提供されることが不可能の状態となることは全く疑えない事実にあるのでございます。一端を述べましただけでもかかる状態でありまして、必要欠くべからざる民主主義の徹底に資すべき方面は遠慮なく整理をいたし、その半面、海上保安廳とか、或いは法務廳とか、警察
関係官廳は、首切りどころか却
つて増員せねばならぬというようなことを
言つているのでございます。今回の整理のかような実情で、
政府の言い分によりますと、官吏が多過ぎるとい
つて、まるで、なまくらな役人が役所の中をうようよしているような聞えるのでありますが、現在におきましては四十八時間制と、この六千三百円ベースの鎖に実は繋がれておりまして、極度の労働強化とな
つているのは前にも申上げた
通りでございます。
さて次に今を機会に行政機構の簡素化をやると
政府は
言つておるのでございますが、皆樣方も各省設置法案ですでに見られて御承知のごとく、今回の行政機構というものは、事務の徹底的簡素化を図
つたとは
言つておるのでございますが、その片鱗だにその姿が跡形も見えぬのでございます。ただ現在の機構を総花的に二割三割を圧縮して行な
つただけでありまして、却
つてそれがために不自然な形にな
つておるのでございます。行政
機関の徹底的簡素とは、でき得る限りの二重三重の行政事務を一体にして、窓口を
一つに纏め、二重行政或いはハンコ行政の幣を排除すると共に、各省廳の共管事務を徹底的に整理統合しなければならないのであります。然るに依然として官僚の繩張り行政が行われておるのでございます。一例を申上げますと、建設業務にいたしましても何ら建設省に一貫されておらずに、優秀な技術者を各省に分散をいたして、港湾は運輸省に、河川は建設省に、漁港は農林省に、又電源の開発は通産省に、その他限りなく同じ土建事業がそれぞれに分散されておりまして、これによる國家の損失は非常に厖大なものであろうかと思います。又我我労働者の保險行政にいたしましても、簡易生命保險は郵政省に、國民健康保險は厚生省に、健康保險、厚生年金保險、失業保險、労災保險、船員保險、農業保險、山林保險、漁船再保險等は、或いは運輸省に、或いは労働者に或いは厚生省に、或いは農林省にばらばらにな
つておるのでございます。官僚繩張り行政をやるところの行政の大臣方には一向にお構いはないのでございますが、やられる方の労働者農民は全く迷惑千万至極な話でございます。又その他生産業務を担当するところの糸や織物を農林省がや
つて見たり、上屋倉庫、埠頭施設の管理の権限につきましても、運輸省、大藏省等において権限の爭いをや
つて見たり、貿易
関係の爲替管理にいたしましても、大藏省、通産省両省間において権限の爭いがあ
つたり、公共事業費の査定におきましても、経済安定本部と大藏省に重複する面があり、又炭鉱行政におきましても一部は運輸省がや
つて見たり、一部は厚生省がや
つて見たり、或いは建設省がや
つて見たり、労働行政につきましても一般労働者の労働行政は労働者にあり、又海運局がや
つて見たり、運送
機関の施策に当りましても、船を作るのは運輸省がや
つて見たり、同じ輸送
機関でも自動車を作るのは通産省がや
つて見たり、その他数限りない矛盾が、重複が露呈しておるのでございます。かような
意味からいたしましても今回の行政機構の改革は何ら國家の利するところは蚊の涙程もないのでございます。
然るに今回の行政整理によ
つて一体どれだけの國家財源が節約されたかと言いますと、先程も大臣から説明があ
つたように、整理人員十七万一千三百人に対する一般会計、特別会計で、本年度の予算節減額は、
政府の言明によりますと七十億であります。本年度予算一般会計、特別会当三兆六百六億円の支出から見ますと、この節約額の比率は〇・二二に過ぎません。我が國の総支出から見ますると余りにも僅少でざいます。これを
政府は緊急非常時突破の唯一の手段であると
言つておるのでございますが、私はかかるような節約は我が國の経済から見てどこからでも実は搾り出せると確信を持
つて申上げたいのでございます。例えば一例を申上げただけでも、物價廳におけるところの價格調整補給金の本年度の歳出二千二十二億円、同じく物價差益金の歳入二十三年度決定額におきまして二百五十億六千万円、これらの歳出歳入の合計二千二百七十六億六千万円のこういうものの取立て或いは拂い渡しの業務に從事しておる者は僅かに合計七百四十五人で、非常に無理な過重労働の結果、勢い歳出歳入業務の疎漏を來しておる現状でございます。これに所要人員の二百人も配置轉換をいたしまして完全な実施をさすことによりまして、一割の節減をいたすことは決して難事なことではございません。このことだけでも二百二十七億円に相成りまして、今回の行政整理による節減額の七十億から見ますと約三倍にもなるのでございます。又現在の予算定員百六十五万六千九百三十人から、二十四万八百十一人もの現在欠員があるのでございます。かかる点から見ましても、ここ一、二年間新規の採用を見合わすだけでも、今回の首切り十七万人は、急がなくても病氣や或いは高齢者等の退職者で、放
つて置いても自然となくなると思うのであります。かような点から見まして、
政府は國民の基本的人権を奪い去り、國家公務員法によ
つて保障されておるところの訴願権をも剥奪し、十七万人の首を切り、その
家族の生活権をも奪い取り、塗炭の苦しみに追い込んでまで敢えてやらねばならないのか。或いはこれが國家再建の最大にして唯一の方策であるのでしようか。行政整理によるところの官吏の首切りは、單に十七万人の官吏とその
家族の死活問題ではない。資本家はすでに
政府のこの方針に倣いまして、各経営者、各産業において続々と首切りを強行しておるのでございます。これによ
つて恐らく二百万を超える失業者を生み、七百万に上るところの
家族をこのインフレのさ中に路頭に放り出すことになるのでございます。数百万の
同胞を失業と困窮のどん底に陥れてどこに経済の再建があるか。又これを経済復興と呼ぶことができるのでございましようか。(
拍手、「そうだ」と呼ぶ者あり)
政府は行政整理の強行によ
つて日本経済の混乱と國民生活の窮乏を、社会不安の招來をみずからの手によ
つて押し進めんとしておるのでございます。吉田内閣は勤労大衆の首に刄を擬しておるのでございます。首を切られた幾十万のこの官吏の人たち、それに続いて街頭に投げ出された数百万の労働者は、果して默
つてこの暴力的な馘首を堪え忍ぶでありましようか。勤労大衆の生きんがための闘いは必ずや廣汎に展開され、その波はやがて怒濤と化して、吉田反動内閣と、それが代弁する資本主義そのものをもやがて呑み盡す日が遠からず來るであろうと私は思うのであります。(
拍手)私は特に生活を奪われ、生命の脅威にさらされておる全労働者、勤労者を代表し、同僚
議員諸君の良心と良識に訴えて、本法案を否決されんことを切望いたしまして、本法案に反対するものでございます。(
拍手)