○岩間正男君
反対の諸点はいろいろありますけれども、一番この中で重要視しなければならないのは、財政的な裏付けがないということであります。六十八の新制大学を新たに発足させようとしておるのでありますけれども、その運営費並びに新築費を含めて、九億四千万円というのがこのたび予算に計上された費用なのであります。これでは新らしい大学の機能を十分を発揮することができないことは余りに明白であります。一校当り大体一千四百万円というようなことになるのでありますけれども、新らしい時代の
教育の機能を十分にこの予算によつて達成するということは不可能であると断ぜざるを得ないのであります。從つてその結果は、今國会におきまして、たびたび問題になりましたところの
地方財政を勢い圧迫せざるを得ないということになるのであります。而も現在の
教育行政の状態を見ますときに、この二年間におきまして、いろいろな改革がなされている。六・三制を初めとしまして、更に新制高等学校、その中には勤労大衆の
教育を合理化しようとするところの定時制の高等学校の問題があり、更に過般通過を見ました社会
教育法案の制定によりまして、当然公民館を中心とするところの相当莫大な、これは我々の計算によりますと、約百二十億ぐらいの予算が必要とされている。こういうような形におきまして、
地方財政が
教育費の負担のために大きな圧迫を受け、或いは破滅を見、そのために政治的な責任問題まで起り、過般福岡縣とか
岡山縣におきましては、これら関係の町長、村長が自殺をしたという問題が傳えられているようなところに、又新たに大学が設けられまして、その負担が全面的に
地方に加重させられる。こういうような形になるのであります。その結果は、当然この大学そのものが十分にその運営をすることができない、更にその内容を豊かに培うことができないことは明らかであります。教員配置の面から見ましても、優秀な六十八の大学の教授を果してここで充足することができるかどうか。その他いろいろな面から考えまして、大学の質的な低下が経済的の裏付けの非常に少いことと相俟ちまして、ここに当然起るということは、余りに明白なのであります。
このようにしまして、日本の
教育改帯の全般を総合的に見ますときに、一應小学校から大学、更に社会
教育、更に盲聾唖学校の
特殊教育、これを結び付けられましたので、大体日本の
教育改革はなされたというようなことが傳えられ、これは世界にも恐らく宣傳されておるのであります。併しながらその具体的な内容において何が起つているかということを我々は冷嚴に現在の客観的な情勢を直視せざるを得ないのであります。例えば六・三制の予算が全面的に切られましたことによりまして起つているところのこの破壞的な事実、更に、ともすると目が新制中学だけに奪われておりますけれども、一番
教育の土台であり基礎であるところの小学校の部面におきましては、もつともつと大きな基本的な破壞が起つておるということを指摘せざるを得ないのであります。例えば全國におきまして、新制中学の校舎が不足のために、小学校の教室が新制中学に取られておる数は約二万七千に及んでおります。その結果勢い学級を、二学級を一つにするとか、二部、三部教授に追いやるとか、そういうようなことである。從つて一学級の兒童数が、七十人、八十人になるというようなことになるのでありまして、これでは、どのような新らしい民主的な
教育もできないのであります。そうして、このことは日本の多量生産的な
教育は、戰爭とも深い繋がりを持つているのでありまして、もつと一人々々の個性の尊嚴を認め、これに研究心、自主性を與えるところの、そのような新らしい民主的な
教育を作り上げなければならないのでありますが、それが破壞されているような現状の上に、いわば砂上に打建てましたところの土台のないところに、新制大学だけの一つの機構を形式的に定めましても、これはいわば形の上だけの
教育改革ということに終らざるを得ないのであります。こういう点を冷嚴に、我々は
教育の專門的の立場から見ましても、社会の現実の情勢から見ましても、経済の情勢から見ましても、もつともつと基本的な体系付けられた、そうしてそれを年度計画されたところの、そうして十分に予算と
資材の裏付けを十分に持つて、何年度には何をやる、何年度にはこの部面をやるというような一つの体系付けられた
教育改革が、日本民族の將來と睨み合せて考えるときには、非常に重要だと思うのであります。併しながらこのことなくして、日本の
教育改革は、すでに慌しい二ケ年の間に発足を見まして、而も今日のような大混乱が起つておるのである。我々は從いまして、これを形式的な面からだけ賛成をして見送るというような態度は愼まなくてはならない。我々は無論、よりよき大学の
設置を衷心から望むものではありますけれども、これには今申しましたところの手段と方法の全部を盡しまして適切にこれをやらなければならない。そういう点に立ちまして考えるときに、この大学のやり方は時期尚早であり、六・三制さえ現状のような状態に置かれておるときに、單に名目的に大学だけを発足させて何とか事態を糊塗するという態度は、眞に日本の現実に対しまして、更に將來に対しまして、徹底的な系統的な文教政策を遂行する上から考えまして、我々は基本的には賛成することはできないのであります。
又次にこの法案は、立法の措置におきまして十分に民主的な手段を盡したとは言うことができない。大学
設置の基準というものが大学
設置委員会によつて決められて、それによつて、すべて今度の大学の発足を見たのでありますけれども、この大学
設置委員会の構成の仕方、その基準の定め方、こういうような面におきまして、十分に関係者の意見というものを反映していないのであります。殊にもうこの一番深い関係を持つところの大学の学生諸君の意思というものが、相当今後の
教育行政におきましては、いわゆる
教育の民主化の立場から反映させることが必要である。ここにこそ学問の、更に
教育の民主化があると私は確信するものでありますけれども、このようなことは何らなされなかつた。從いまして、この大学の
設置に対しまして講座がどう作られるかというような問題、それから大学がどのように組織され、どのように運営されるかというような問題につきまして、從來の文部行政がともすると、まだ天下り的である、命令的である、そうして本当に現実の要求を採り上げていないという、こういうような非民主的な態度からしまして、この大学の運営並びに組織その他いろいろな面におきまして法律的な措置をとらない、政令によつて決められるということに対しまして、今日非常な不安が巻き起つて、全國的に学生諸君の
反対運動が展開されておるのでありまして、從いましてこのような法案が作られて、これが天下り的に施行されるとしましても、その結果、いろいろそこに摩擦が起るであろうじやないか。円満に果してこの運行ができるかどうかということは、今後の運営の面におきまして、多くの不安を感ぜざるを得ないのであります。こういうような点を総合して考えますときに、この法案は日本の現実には合わない問題であり、もつともつと十分にこの問題を檢討し、財政的な裏付け、万般の処置よろしきを得て、その時に見通しを以て発足すべき法案であるという立場におきまして、日本共産党はこの法案に対しまして
反対するものであります。(拍手)