○栗山良夫君 私は一昨日以來の参議院のこの混乱に対して、極めて遺憾の意を國民の一人として表したいのであります。私は参議院が……、もう少し眞劍に聽くように注意して下さい。(「笑わせるな」と呼ぶ者あり)笑わせるなとは何だ……。私はこの混乱の最も大きな、最大の責任を果さなければならない人は、参議院
議長松平恒雄君であると思うのであります。それは國会法の第十九條に「各議院の
議長は、その議院の秩序を保持し、議事を整理し、議院の事務を監督し、議院を代表する」。と明確に示されておるのであります。私共は個人松平恒雄君の御立派な方であることについては、一言の
異議もないのであります。併し参議院議員といたしまして、参議院の代表者として、参議院が尊敬し、國民が尊敬し得るかということは、個人的問題ではなくて、この國会法の第十九條の職責を十分に果すかどうかということによ
つて決定すると思うのであります。(拍手)私は遺憾ながらこの点において、國会法或いは規則の運営において、或いは事務当局の監督において、或いは政府及び衆議院に対しまして、参議院の権威を守るためにとらるべき措置に対しまして、数々の落度のあることを認めざるを得ないのであります。私は時間の許す限り、その点について若干の説明を申上げ、そうして本
決議案に
賛成をいたしたいと思うのであります。
先ず第一に、会期の延長の取扱でありますが、政府は十六日を以て絶対に会期の延長はしないと、與党は何回となく説明をされておつたのであります。意思表示をされておつたのであります。然るにも拘わらず参議院において一週間の会期延長が行われたのでありますから、これ以上会期の延長が行われるとは國民も考えなかつた筈であります。然るに二十三日の深更に及びまして、政府は衆議院に会期二日間延長を決定させ、そうして参議院に送
つて参つたわけでありますが、このときに、参議院規則によりますると、
議長は会期の延長について衆議院の
議長と事前に相談をする、協議をしなければならないことにな
つておつたのでありますけれども、何らその事実はないのであります。衆議院で決定されたところの二日間の会期延長が、そのまま参議院へ持ち込まれまして、混乱の最も大きな原因を作つたのであります。この点につきまして、
議長はその職責を十分に果さなかつた明白なる事実となるのであります。又この会期延長の取扱のときに、今度のこの混乱の大きな原因を成しましたことは、政府の参議院軽視の態度であります。私は四月の初めにおける予算委員会におきましても、大藏大臣が予算の提案説明に際しまして、三月三十一日以前に行うのに丁度適当した原稿を持
つて参りまして、年度の変りました四月一日に参議院でそのまま原稿を読み上げられやのであります。一年間時期がずれたのでありますから、聞いておりますと全く話がとんちんかんであります。それについて徹底的に大藏大臣の参議院軽視の責任を追究したのでありますが、当時大藏大臣に二回に亘
つて、私の責任追究に対して平あやまりにあやまられた筈であります。こういうような態度、或いは参議院におきましは、総理大臣や……各大臣は衆議院の本議場を御覽になつた各議員
諸君は十分に御納得いけると思いますが、殆んどここへは列席されないのであります。我々が声を大にして重要法案に対して出席を求めて、やつと遅ればせに馳け付めるのが通例である。然るにどうである。昨日あれだけ混乱した直後の本
会議においては、総理大臣はお見えにならなかつたが、各大臣は殆んで全部揃
つていた。この一つの事実を見ても、参議院を如何に曾て軽視しておつたか、明白に物語
つておると私は思うのであります。(「大臣が議場の見物に來ておつた」と呼ぶ者あり)更に私は、事務当局の監督不行届きの点を責めたいのでありますが、先程中村君も天田君も指摘されましたように、今度の会期延長の問題に関して最も重要になりますることは、若し参議院が会期延長の議決をしなかつたときに、衆議院の議決の関係はどうなるか、この点に論爭が鬪わされたことは皆さん御承知の通りであります。そのときに事務総長小林君の説明がありましたけれども、法理論的に納得が行かないというので、
中村正雄君は徹底的に委員会で追究したのであります。そうして國
会議員として、國民の代表として自分が述べる意見は、一事務官僚の言うことなどは問題にならん。これを徹底的に採り上げて処理すべしと言つたのでありますが、その直後に小林事務総長が新聞記者に発表した言葉は実に重要である。ここに私は読みますが「私は
議院運営委員会で、参議院で会期延長の決議がなければ衆議院の議決通りとの学説を紹介したが
反対があり」、学説を紹介したという。「
反対があり、本
会議で決めようというので、委員長は二日間延ばすことをはかり、多少混乱があつたが決定したとみて散会した」。こういうことを述べておるのであります。議員の言葉を侮辱するも甚だしい。(「その通りだ」と呼ぶ者あり)何がその通りだ。國会として、参議院として結論の出ていないものを、事務総長が独断的に新聞記者にさようなことを発表するとは何事である。こういうようなことがあります。又「懲罰
動議は先議すべきではあるが、会期の問題は特に重要なため、これを先にきめる順序となり、」こういうことを言
つておる。このことも事務総長が、かようなことを参議院の意向のごとくして、これが発表をするというのは、怪しからん話である。このようなことを
議長が許したということも、我々には默過することができないのであります。更に二十三日のあの深更におきまして、
議院運営委員会でどのような
採決がなされたか。私共は殆んど傍聽しておつたけれども分らない。そうして俄かに本
会議場に議員がなだれ込んで來て、各議員が殆んど全部御起立にな
つて喧々囂々たるものである。
議長は向うの入口から入
つて來られた。このとき新聞によりますると、一部の議員が
議長の席に着くのを阻止したと言
つている。併しこれは大いなる誤まりである。私はこの点は極めて重要でありますから解明して置きます。阻止したのではない。小委員会を開かなければ本
会議は開けない今までのしきたりにな
つていた。從
つて小委員会を
議長は我々は開けと要求しておつたのであります。決して阻止したのではない。阻止したのは、ここに二十人ばかり溜つた衛視の
諸君である。(「そうだ」と呼ぶ者あり、拍手)我々はここに立
つていたのでありますけれども、こちらへ向けての力は殆んどかからなかつた。全部向うの力であつた。衛視
諸君が止めておつたのである。(「ノーノー」「違う」と呼ぶ者あり)そして仮に衛視がいたとしてもよろしい。
議長は衛視に対して命令権を持
つている筈である。何故それを解散を命じてここまで着かなかつたか。私はこれを行わないで國民に誤まらせるようなごとき発表を行うことは、誠に以て穏当でないと思うのである。(「その通り」と呼ぶ者あり、拍手)私はこの点は極めて重要な問題であるので(「違う違う」「そうだ」と呼ぶ者あり)はつきりと、ここで申上げて置く。大体時間が來たようでありますが、以上申述べました通り、まだ申上げれば限りがありません。一時間でも二時間でも申上げますが、とにかく要点だけ申上げて私の
賛成の言葉にする次第であります。(拍手)
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