○宮城タマヨ君
只今上程されました
出版法及び
新聞紙法を廃止する
法律案の法務委員会における
審議の経過並びに結果について御
報告申上げます。
昭和二十年九月二十七日の新聞言論の自由に関する追加
措置という覚書によりまして、
新聞紙法を初め十二法令の覚書に牴触する條項の廃止が日本
政府に命令せられ、
政府は右のうち
新聞紙法以外の十一の法名に対しましては、それぞれ概ね同年十月中又はその後に政令又は法律によ
つて正式に廃止の手続をと
つたのでありますが、
新聞紙法のみは、その
規定の全部が必ずしも檢閲、発禁処分その他言論の自由を抑圧するものばかりでもありませんでしたので、当時、内務省が司令部の了解を得て、同法及びその内容からしてこれと同列に取扱われるべき
出版法は、その効力を停止した状態に置いたまま、その正式の廃止の手続をとらずに今日に
至つたのでございます。その間、一昨年の刑法の一部
改正の際、猥藝罪の刑は相当嚴しくなり、又名誉毀損罪の
規定が
改正せられて、
從來の
新聞紙法、
出版法中に
規定されておつた事項の一部が採り入れられておりますので、この際覚書の
趣旨の
通り新聞紙法、
出版法を正式に廃止することにいたし、尚、予約
出版法中の
出版法を援用した部分を
改正したのでございます。委員会におきましては各委員より熱心な質疑が出たのでございますが、その詳細については省略させて頂きます。次に討論に移りまして、松井、大野、來馬の各委員より熱心な議論が行われましたが、これも速記録に讓ることを御了解願います。そうして採決の結果、満場一致を以て可決すべきものと決定いたしたのでございます。
次に
少年法の一部を
改正する
法律案につきまして、法務委員会における
審議の経過及び結果について御
報告申上げます。
本年一月一日から施行になりました新らしい
少年法の
運用の実際等に鑑みまして、
少年院法と兒童福祉法との間に調整を要する個所があり、又今
國会に提出の犯罪者予防更生法案との間にも調整を要する点があり、更に少年保議事件の身柄の取扱、証拠品の処理等について法の不備を補正する必要が認められますので、これらの点を
改正するために本
改正法が立案せられたのでございます。
改正の主な点は、先ず
少年院法との関係においては、家庭裁判所の決定の執行権のある者として少年観護所又は少年院の
職員である法務廰教官も加えることに改め、兒童福祉法との関係においては、家庭裁判所と都道府縣知事又は兒童相談所長との権限も明確にしまして、紛淆を防ぐために、先ず十四歳未満の者は、虞犯少年たると刑罰に触れる行爲をした少年であるとを問わず、すべて兒童福祉法の
措置に委ねまして、家庭裁判所としては都道府縣知事又は兒童相談所長の送致を受けたときに限りこれを取扱うことにいたし、虞犯少年中十四歳以上の者でも、警察
職員又は保護者の判断でこれを兒童福祉法の
措置に任じた方が適当であると認めるときには、その少年を直接兒童相談所に通告することができるという
規定も新設したのであります。又兒童福祉法を適用される少年について、たまたまその行動の自由を制限し、又はその自由を奪うような強制的な
措置をとることが必要である場合も予想されますが、かかる場合、現行法では、都道府縣知事又は兒童相談所長は、親権又は親権的
措置の範囲として認められる場合以外は強制力を用いることができないことにな
つておりますので、そうした強制力を用いなければならないという場合には、その事件を家庭裁判所に送致することができることにいたしまして、家庭裁判所が兒童福祉の
措置に関與する途を開いたのでございます。この場合には家庭裁判所ではみずから保護処分の決定をすることができるのでございます。又決定を以て保護の方法その他の
措置を指示して、事件を知事又は兒童相談所長に送致することもできるのでございます。更に犯罪者予防更生法案との関係では、少年観護所に身柄を收容中の少年の保護事件について家庭裁判所が処分を決定した場合、これを
地方少年保護委員会の保護観察に移し、又はその他の処置を適切円滑に
運用するためには、一時的に少年を引続き少年観護所に收容して置く必要のある場合もございますので、七月間以内に限り引続き收容して置くことができる旨の
規定を設けたのでございます。尚、刑法では、犯罪の組成物件、供用物件等の沒收の
規定があるのでございますが、家庭裁判所が少年の保護事件について処分を決定する場合に、それらのものを沒收することができる
規定がないので、今までは任意に放棄させるというような方法で処理して來たのでございますが、どうもぴつたりしませんので、今度それを法律上沒收できる
規定を新設いたしました。
以上が本
改正法の内容でございます。委員会におきましては愼重
審議いたし、各委員より熱心な質疑が出ましたが、これは速記録に讓りまして、討論は省略の上、採決の結果、満場一致可決すべきものとされたのでございます。
次に
少年院法の一部を
改正する
法律案につきまして、法務委員会におきましての
審議の経過並びに結果について御
報告申上げます。
現行
少年院法によれば、初等少年院は十四歳未満の少年もこれを收容することができることにな
つておりますが、
運用の実際の経過から見て、十四歳未満の少年を十四歳以上の少年と同一に取扱うのは適切でないので、このような少年はすべて兒童福祉法による
施設に入れることにして、少年院には收容しないことに改め、次に現在少年観護所の
施設が十分でなく、少年院の出張所や少年院の廳舍の一部を應急的に少年観護所として使用中なのでございますが、これでも尚不足なので、その
拡充強化と整備の完了を予定されますところの
昭和二十六年三月三十一日まで、應急的に拘置監の特に区別した場所を少年観護所に充て、犯罪少年であ
つて逃亡の虞れある者のみを收容することに改めたのが本
改正法案の内容でございます。
衆議院におきまして修正されました点は、特別少年院、これは犯罪的傾向の進んだ十八歳以上二十三歳未満の者を收容するところでありますが、これが
只今のところ全國にただ一ヶ所福島市の東北少年院だけでございますので、その特別少年院及び女子の医療少年院の
施設が不十分な点に留意しまして、
昭和二十六年三月三十一日まで應急的に、特別少年院の方は少年刑務所の特に区別した場所を、又女子の医療少年院として男子の医療少年院の特に区別した場所をこれに充てるよう修正されて参りました。委員会におきましては各委員より熱心な質疑があり、愼重
審議いたしましたのでございますが、その詳細は速記録を御参照願います。かくて討論は省略の上、原案及び衆議院の修正点につき一括して採決の結果、満場一致を以て可決すべきものと決定いたしました。
次には
檢察廳法の一部を
改正する
法律案の法務委員会における
審議の経過並びに結果につきまして御
報告申上げます。
本
改正法案は先ず第一に
檢察廳法と
國家公務員法との調整を図つたことであります。即ち本年一月八日
人事院規則一の三が施行になりまして、
國家公務員の任免に関する
國家公務員法第五十五條、第六十一條の
規定が一般の檢察官の任免に適用されることになりました結果、同法により当然法務総裁がこれを行うことになりますので、
檢察廳法の方もそのように改め、ただ檢事総長、次長檢事及び檢事長は認証官でありますので、その任免を
内閣がすることに改めました。又三級官吏の進退に関する権限の委任、檢察事務官等の支部勤務命令等に関する
檢察廳法の
規定は、
國家公務員法第五十五條第二項にその旨の
規定がありますので、これを削り、又檢察官の職務と
責任の特殊性に鑑みまして、その任免につき
國家公務員法と異なつた取扱をする必要がありますので、その任免手続、任用資格等に関する
從來の
檢察廳法の
規定は特例であるということを明記いたしました。次に
檢察廳法第二十三條の檢察官適格
審査会に予備委員を置くことは政令で定められておりましたが、この法律中に
規定することが適当と認められますので、各委員に対應した資格の予備委員を置くことにいたしたのでございます。その他、弁護士たる資格を有する者で朝鮮、台湾、関東州で弁護士をしていた人々について、在職三年以上の者には檢事となる資格を與える
規定を新設いたしました。以上が本法案の内容の主なる点であります。委員会におきましては愼重に
審議いたし、熱心な質疑が出ましたが、これは速記録により御了承願うことにいたします。討論は省略の上、採決いたしましたところ、
全会一致を以て可決すべきものと決定いたしました。
次に
民法等の一部を
改正する
法律案につきまして、委員会における
審議の経過及び結果について御
報告いたします。
本
改正法案は、先ず現行民法第三百六條、一般の先取特権の順位について、勤労者の生活権保護の建前から、葬式の費用と雇人の給料との順位を入れ換え、これに相應した條文の整理をいたし、又雇人給料の先取特権につき、現行法では雇人はその受くべき最後の六ケ月間の給料中、五十円を限度として先取特権があることにな
つているのですが、現今の
経済情勢に適合しないこの五十円の制限を廃止したのであります。更に現行民事訴訟法中第五百七十條第一項の有体動産に対する強制執行の制限につきまして、第六号には、官吏、神職、僧侶、教師等の俸給、恩給が挙げられておりますのに拘わらず、職工、労役者、雇人がその労力役務のために受ける報酬がこれに含まれていないのは不合理なので、改めて含ませるようにされました。尚、衆議院におきましては、民事訴訟法第六百十八條第二項において、同條第一項の差押禁止債権中、第一号の法律上の養料、第五号の官吏、神職、僧侶及び教師の
收入、恩給及びその遺族の扶助料、第六号の職工、労役者、雇人がその労力、役務のために受ける報酬につきまして、一ケ年に受くべき総額の四分の三を超過する部分は差押えることができることにな
つております点を改めまして、その支拂期に受くべき金額の四分の一に限り差押えることができると修正しまして、解釈上疑義が生じないようにいたしたのであります。委員会におきましては愼重に
審議いたし、若干の質疑もありましたが、これは速記録に讓ることにいたします。かくて討論を省略し、原案及び衆議院の修正案を一括採決いたしましたところ、満場一致を以て可決すべきものと決定されました。
次に公証人法等の一部を
改正する
法律案につきまして、法務委員会における
審議の経過並びに結果について申上げます。
今般
國会に法務廳
設置法等の一部を
改正する
法律案が提出せられ、法務廳の機構改組が予定せられておりますが、これに伴いまして公証人法の関係
規定を整備する必要に迫られ、本法案の提出を見るに
至つたのでございます。その内容は、先ず第一に、右関係
規定の整理、次に公証認証等の手続の簡素化、即ち現行法中煩瑣な手続を公証制度の
趣旨に反しない程度に是正したこと、第三に、公証人の任用資格等につきまして、現行法では所定の試驗及び実地修習を経たる者以外は判檢事及び弁護士たる資格を有する者のみが公証人となる資格を有することにな
つておるのでありますが、廣く適材を求める見地から
改正案はこの点を拡張しまして、多年法務に携わり、公証人の職務に必要なる学識経驗を有する者にして、公証人
審査会の選考を経た者も判檢事、弁護士と同樣に、又前述の試驗及び実地修習を経ないで公証人に任ぜらるることができるように
改正しておるのでございます。委員会におきましてはこの第三点に関しまして大分論議が出まして、かかる
改正によ
つて公証人の質が低下する虞れがあるのではないかとの有力な
意見が出ましたが、結局、多年法務に携わり、判檢事、弁護士に準ずる学識経驗者であ
つて、公証人
審査会の選考を経た者は、試驗及び実地修習を経ない者でも公証人に任用することができるが、このような者を任用するのは当分の間であ
つて、尚その上、法務局、
地方法務局、又はその支局の管轄区域内に公証人のない場合、又は公証人があ
つてもその職務を行うことができない場合に限るものとの制限を付することに修正いたし、尚、本法第十六條の公証人罷免理由の一つとして、公証人が年齢七十歳に達したときという項目を加え、又公証手続簡素化の見地から二三の手続
規定を修正いたしました。その他の質疑應答の要旨につきましては速記録によ
つて御了承願うことにいたします。討論は省略の上、採決いたしましたが、その結果、委員会の修正案及び原案の修正部分を除くその他の部分全部につきまして、いずれも
全会一致を以て可決すべきものと決定いたしました。
最後に
人権擁護委員法案でございますが、この法務委員会におきましての
審議の経過並びに結果について御
報告申上げます。
從來法務廳
設置法第十六條に基きまして、
昭和二十四年政令第百六十八号により全國に百五十人の人権擁護委員を設けまして、これらの委員は現在人権擁護局の事務を補助し、活動しておるのでございますが、今
國会に提出されました法務廳
設置法の一部を
改正する
法律案において右の第十三條が
改正され、政令で定める根拠がなくなりましたので、本法によ
つて人権擁護委員に関する
規定を定め、尚、政令当時よりはその規模を拡張することにな
つたのでございます。本法の要点について申しますならば、人権擁護委員は
國民の基本的人権が侵犯されることのないように監視し、若しこれが侵犯された場合には、その救済のため速かに適切な処置をとり、常に自由人権思想の普及高揚に努めることをその
使命とするもので、委員は各市町村の区域ごとに置き、その数は全國を通じて二万人以内、その選任は市町村長が社会
事業家、
教育者等、適当と認められる一般民間人の中から、その市町村議会の
意見を聽いて定員の倍数を推薦し、法務総裁がその中から都道府縣知事、弁護士会等の
意見を聽いて委嘱いたすことにな
つております。任期は二年で、
給與は支給いたしませんけれども、実費の弁償はいたすことにな
つております。尚、委員は一般民間人なる関係から、
國家公務員法の適用は受けませんが、刑法上は公務員として取扱を受け、法務総裁の監督を受けることにな
つております。その他、都道府縣内に数個の人権擁護委員協議会が設けられ、又都道府縣ごとにその連合会が置かれることにな
つております。委員会におきましては愼重に
審議いたしましたが、幾多の質疑中特に注意すべきものとしましては、人権擁護委員がボス化し、その職権を惡用する虞れがないかとの質疑に対し、
政府委員は法の
運用において十分かかる点は注意するとのことでございました。その他の質疑につきましては速記録を御覽願うことにいたします。討論は省略の上、採決いたしましたところ、満場一致で可決すべきものと決定いたしました。以上を以て
報告といたします。(
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