○
谷口弥三郎君
只今議題となりました
優生保護法の一部を
改正する
法律案並びに
國立身体障害者更生指導所設置法案につきまして御
報告申上げます。
先ず
優生保護法の一部
改正からその
提案の
理由を簡單に申上げたいと存じます。
優生保護法は昨年の第二
國会を通過いたして、昨年の九月十一日から施行されているのでございますが、その後の実績と社会情勢の急激なる変化に鑑みまして、或る程度人工妊娠中絶の施行
範囲を拡げる必要が起りましたこと、同時に、受胎調節に関する適切な方法の普及指導が必要にな
つて参りましたので、この
法律の一部
改正を
提案するに至
つたのでございます。
その内容を極く簡單に申上げますと、
優生保護法の第三條におきましては、これまで精神病学的分類法が幾らか旧式に流れてお
つたというようなところもありますので、成るべく精神病学的並びに遺傳病学的の方面によりまして、その分類方法を幾らか変更いたすことにいたしましたのでございます。尚、次にこの法案におきまして最も関係のありますのは第十三條、即ち
審査申請をいたしまして人工妊娠中絶をする法案の部分でございますが、その第一号の適用
範囲を拡大して配偶者に及ぼし、又これまでは遺傳性の精神病者とか遺傳性の精神薄弱者とありましたのを、「遺傳性」を取りまして、單に精神病又は精神薄弱の場合には
審査申請の上に人工妊娠中絶ができるというようにいたしたのでございます。
次にその十三條の第二号におきまして、從來は一年以内に更に妊娠したとか、又は現に数人の子を有する者が更に妊娠して母体の健康を著しく害する場合とかというようにいたしておりましたのを、そのために戸籍謄本などの関係から非常に手続が面倒でありますために、或る場合には何ケ月もかかるというような
状況に鑑みまして、一年以内とか、或いは現に数人の子を有するというのを除いてしまいまして、單に妊娠の継続又は分娩によりまして母体の健康を害する場合には、他の医師の意見書によりまして、地区の優生保護委員会が
審査をするということに
簡素化いたしたのでございます。尚その第三号におきまして、妊娠の継続又は分娩によりまして
生活が窮迫状態に陷る者という一項目を特に加えたのでございます。これまでは
優生保護法におきましては、優生学的、医学的並びに倫理的の見地からする人工妊娠中絶を認めてお
つたのでございますが、今回は更に
経済的方面までも進めまして、そうして人工妊娠の中絶の
範囲を拡げましたということは、これは急激な人口の
増加を抑制するためにも必要でありますし、又その
生活窮迫という程度を
生活保護法の適用線上に置くというようにいたしているのでございます。尚、第二十條におきまして、優生結婚相談所において科学的に受胎調節の指導普及をやらせようというようなことにいたしたのでございます。尤もこの場合におきましても、道徳的方面を特に考えまして、処女でありますとか、未亡人その他のような結婚関係に立至
つておりません者については、性道徳の頽廃などが起らないように特に注意をいたしまして指導をするというような
状況にいたしております。
以上が本案
改正の主なる点でございますが、この本案は参議院が先議でありまして、本委員会におきましては從
つて五月六日以來愼重
審議をいたしております。尚
一般の情勢を聽く必要上去る五月九日には各界の
代表者を喚問いたしまして、そうしてこの法案に対する意見の聽取などをいたしたのであります。かかるいろいろの質疑應答などにおきまして種々なる問題が出ましたが、その主なるもの一つ二つ申上げますというと、例えば
生活窮迫状態に陷るものについて妊娠中絶を許すという
改正案は、その
生活が窮迫に陷るというのは如何なる程度のものを言うかという御
質問がございましたが、これに対しまして、現に
生活保護法を適用されておるもの、又は妊娠の継続の結果失業などのために
生活が窮迫に陷るものまでも含む旨の答弁があ
つたのであります。又本案のように
生活窮迫状態に陷るものにも
素質のいい者がおるが、そのものまでも中絶をするのかというようなお尋ねがございましたのに対しまして、
素質が優秀なものを保存するというのは本法の
根本方針でございますので、本法を施行するに当りましても、特に優秀なる
素質を有する方方には人工妊娠中絶を成るべく行わずに、そうして妊娠を継続して、分娩後においてはあらゆる方法によ
つてそういう方をお助けする、救助をする、援護をするというような方面に進みたいということの返事があ
つたのでございます。その他重要なる
質問がございましたが、これにつきましては詳細なことは速記録を見て頂きたいと存じます。
次いで五月の十二日の委員会におきまして、質疑應答の終了後、討論に入りましたところが、一委員からいたしまして修正の
動議が提出されたのでございます。その修正の要点は、第十三條第一項の
改正規定中第三号の部分を、「妊娠の継続又は分娩によ
つて生活が著しく窮迫するもの」というように変えましたことと、第二には別表にいろいろの病名が挙
つておりますが、その病名に対しての一二の省略があ
つたのです。その病名は、やはり速記録によ
つて御覽を頂きたいと存じます。尚一委員からいたしまして、本修正案に対しては賛成であるが、本法案を実施する上において特に第十三條第一項第三号の「妊娠の継続又は分娩によ
つて生活が著しく窮迫するもの」という條文で人工妊娠中絶が行われます場合には、その手術又は治療費等は公けの
負担で行な
つて貰いたい、又同樣に貧困の状態にある者に対してもその医療費によ
つてこれを補助して貰いたい、又優秀な
素質を有するものに対しては特に注意して、民族の優秀なる
素質の保存に努めて貰いたいというような意見の関陳がございました。以上の御希望に対しまして
政府当局の意見を聽取しましたところが、本法案を実施するに当りましては、特に
優生保護法の目的に適うために、
素質の優秀なものには行わないようにいたしたい。又人工中絶を行うために
生活保護法の医療給付を受け得るよう、十分努力して御期待に副うという御答弁がございました。
ここで討論を終結いたしまして採決に入りまして、先ず修正案について賛否を諮りましたところ、全員一致で修正案は議決されました。次いで修正案を除く他の原案につきまして採決をいたしましたところ、これ又全員一致を以て可決されました。よ
つて本法案は全員一致を以て修正議決すべきものと決定いたしました次第でございます。これを以て御
報告を終ります。(
拍手)
次に
國立身体障害者更生指導所設置法案でございますが、これにつきまして極く簡單に御説明申上げます。
從來傷痍者に対しましていろいろの施設がございましたが、國立においてかかる施設ができておりませんので、それが保護をする上に特にこういうのが今回一ヶ所でありますけれども相模國立療養所内にできることにな
つたのでございます。これに対しましては、その医学的或いは医療的の処置は、厚生省方面からの関係を以ての療養所でできますが、これに対しまして或いは職業補導的の問題に対しましては労働省関係になりますので、この際、是非職業指導関係につきましては労働
大臣がその職能を委嘱するということにして貰いたいというようなことにいたしたのでございます。尚これに対しましては、一委員から修正の
動議がございましたが、その修正の
理由及び修正案を簡單に申上げますというと、本施設の使命は、病院から職場を一貫したものでなければその目的を達成しないので、これを明確にする必要があります。從
つてこの條項中、第二條中二項を三項として一項目を加えて呉れというのがございますが、これも省略いたしまして速記録を御覽を願いたいと
思います。
次いで討論を打切りまして採決に入りましたところが、先ず修正案は全員一致で可決いたしました。次に修正案を除く原案につきまして採決いたしましたところ、これ又全員一致を以て可決した次第でございます。よ
つて本案は修正可決すべきものと決定した次第でございます。簡單に御
報告申上げます(
拍手)
〔副
議長退席、
議長著席〕