○木下源吾君 段々同僚各位からの
質問が出まして、大体
政府の
所信も明らかになりつつあるのでありますが、併しやはりこのいろいろなお話の多くは、
國民の大多数の働く者の側から見れば、何かこう二階で話をしているような氣がいたすのでありますので、私は我が党の立場、即ち勤労階級の立場から、二、三
総理大臣にお伺いして置きたい。これは私一人聞くのではなく、我が國の人口の最大多数を占むるところの勤労階級が聞いておるんだというお考えで、どうか共に
人類の幸福のために、又この國の平和安泰のために、
所信を吐露して、
首相のお答を願いたいと思うのであります。今までのいろいろのお答のように、木を噛んで捨てるような、そういうなんではなく、本当にまじめに
一つお願いをしたい、こう御注文申上げて置きます。(「
同感々々」と呼ぶ者あり)
私は第一に
政治の
責任であります。近代
政治は申すまでもなく
責任政治でありまして、そうしてこの
政党がその
政治を行う上において最も大切なことは、自分のやるということを
國民に訴えて、
國民が又自分の出しておる
税金やら負担をこの人に任せて置けば、ああい
つたように使
つて呉れるのだからという安心をして任せたわけであります。任せるわけであります。そこで近代
政治は
國民に対して
責任を負うところの
政治、そういう
政府でなければならないし、ポツダム宣言にもございますように、我が國に、
國民に
責任を負えるような
政府が確立したときには、占領軍が徹退せらるべし、かようなことが書いてあるのであります。でありますから、その
政府が
政治を行う上において、
國民に
責任を負えるかどうか、負
つておるかどうかということが、先ず我が國の当面せる重大な問題だと考えるのであります。さればこそ
民主自由党は、先の総
選挙において、
政策であります。綱領ではありません、先々の綱領ではありません。
政策というのは、当面行うところの具体的にやり得るところのものを示すのでありまして、この
政策を
示したことが思うように行われなか
つた。これは決して私は民自党又は
首相を責めるのではありませんが、そのことの事実は如何に蔽うべくしても全
國民が認めておる以上、率直にこれはやはり認めらるるが正しいと私は考えるのであります。このように民自党が與えた
公約が行われないという理由は、率直にやはり
國民の前に述べられなければならない。(「
國民はよく知
つている」と呼ぶ者あり)私はこれをただ一言で
総理大臣に
お尋ねするのでありますが、今回の予算を通じての
政策が
政府の
責任におい編成せられたと申しておりまするが、これが実行はです、連合國に負うのであるか、
國民に負うのであるかというこの
責任の所在であります。私は我が國の
政治は、從來しばしば占領下にある故にという、このことで非常に不明瞭にな
つておりましたので、どういう点は連合國に
責任を負うものである、どういう部分が
國民に対して
政府が
責任を負うかということを、この機会にお願いできれば明確にして頂きたいと、かように考えるのであります。現に行政整理の問題等につきましても、これが対象となるところの多数の公務員諸君には、一面からこれは司令部の何かサゼツシヨンか
方針だかのごときように傳えられておる向きもあるように聞いております。自由党は
選挙において、我が國の官僚のふしだら、官僚の腐敗、官僚の不親切、こういうような結果からして
國民が官僚を非常に嫌
つておる。この心理状態に乘じて行政整理をやる。首切りをやる。かように発表せられたことが非常に
國民の共感を得たように考えておりますが、これらの問題も、是非とも
政府の
責任においてこれを行うのであるか、將又
只今申上げたように、その筋の指図によ
つて、意図によ
つてこれを行うのであるか。都合の惡いことは向うさんにおつ被せ、都合のいいことは自分がやるのだというような
態度ではなく、やはりこれらの点も明瞭にして置かれるがよろしい、かように考えるのであります。さて
國民に対して
責任を負われるということであるならば、今や再び又
政府は手形を発行しております。こういうようなことを次々と重ねるのではなく、私は率直に、今やろうとすることを、この予算に盛られておる一切の
政策に対して、再び総
選挙、いわゆる解散をすることが一番私は賢明なことであり、
國民の仕合せになることと考えますが、そういうようなことはお考えにな
つておられるかどうか。いろいろの手続の煩瑣、或は時間的において困難であるというようなことであるならば、やはりそのことが正しいのだけれども、こうこういう
事情で行われない、こういうことをやはりお答えをおつしや
つて頂きたいのであります。そうでないと、今
吉田さんが
國民に
協力を強く望んでおりますけれどもが、
國民が
協力しなければ到底この難関を切抜けることはできませんし、あの予算を完全に九
原則の
精神に副
つて遂行することはできない、私はかように考えます。
総理大臣は外交上の問題につきまして、
日本の平和は
民主主義の徹底にある。こういう意味のことを御
答弁にな
つておるのでありますが、私は現在即ち現
段階における
日本の
事情、そういうものを絡み合せて、
民主主義の徹底というものは勤労大衆を主体にする
民主主義でなければならないと、かように考えております。そこで平和の問題でありますが、眞に今平和を望んでおる、平和を愛好しておる者は、言うまでもなく戰爭で大きな痛手、深刻な犠牲を蒙む
つた者が、心の中から平和を望んでおるのであります。この人々が
民主主義に徹底することなくして、私は平和は獲得できないと、かように考えておるのであります。
〔議長退席、副議長著席〕
資本家の自由のための
民主主義というものは、却
つて戰爭を誘発するものである。これは説明を要しない。近藤外務政務次官が平和を希求する余りかどうかは知りませんが、大西洋條約になぞらえて、そのような條約を、太平洋條約を結び、そうして占領下においても我が國はこの條約に参加することはできると放言をいたしております。又増田官房長官は一外字
新聞にこれに似たような意見を発表しております。又
総理大臣はこの壇上から、永世平和に対しては疑問を持
つておる、かように申されておる。これら一連の民自党並びに
政府の
思想は、私は遺憾ながら、資本主義の自由、資本家の自由のための
民主主義を体得して
政治を行な
つておるものと断ぜざるを得ない。(「詭弁だ、詭弁だ」と呼ぶ者あり)併しながらそれらの指導によ
つて我が國の平和が確立せられ、眞に
世界の平和に貢献することができ得るならば、私は敢て咎めませんけれども、決してそういうことはその
段階には止まるものではなく、いわゆる第三階級の自由解放の、その結果においてのみ平和が確保されるのである。終戰後我が國の
婦人の解放、農民の解放、労働者の解放、これら一連の
政策を連合國から示された点においても明瞭である。
首相は、永世平和に対する疑問というのは、又しても第三次
世界大戰の戰いをすることなくして平和は確立できない、確保できない、かようなお考えを持
つておるかどうか。そうしてそういう信念の下に、
確信の下に我が國の
國民を指導して行く、今後そういうような考えで
國政に携わ
つて行かれるのかどうかということを、この機会にお伺いいたします。
次に私は
政治道徳の問題でありますが、これはこの場合
お尋ねして置くことが適当と考えます。それは
吉田さんはどうも他党に対する
態度が嚴し過ぎる。我が
社会党に対して曾七四党協定の問題のときに、左の者は容共であるから切らなければいけんというようなことを申され、そのためにこそ
社会党には左右両派というものを植付けられたのであります。今日
吉田さんが育成しようと言われておる
社会党は、現在のように非常なる動搖を起しておる。それは外でもない。
吉田さんのあの左派切るべし‥‥(「冗談言うな」と呼ぶ者あり)私共は二大
政党の一に
社会党を選ばれる
吉田さんに対して、‥‥そのような左派が本当に共産党へでも行
つておるのでありましようか。又このたびにおいても
民主党に対してどういうことを具体的に言われたかは知りませんけれども、結果においては分裂を來たしておる。自分の好きなものでなければ、自分に氣を食わなければ、そういうようなことを、まあ陰謀ではありますまいけれども、そういう結果を及ぼすようなことをなされることは、果して
政治の道徳に適
つておるかどうか。私はこういうことをこの際
お尋ねして置きたいのであります。
時間もありませんから、あと
関係各大臣にお伺いします。安本長官におねしますが、この輸入補助金停止のために値上りするものができて來ます。例えば木綿の衣料等のごときもの、こういうものが第二次、第三次で吸收すると言われておるのですが、第二次、第三次で吸收するということは、私は言うまでもなく労働強化と思う。長時間労働か、或いは賃金低下でなければそれは行われないと思うのですが、この点に対してどういうようにお考えにな
つておるか。今又
主食も値上げになります。旅客運賃も上る。こういうようなことは一切又大衆の負担になるのでありますが、そういうことは安定のために余儀ないことと考えておるのであるか。こういう大衆負担において
日本の
インフレを克服するという方向以外に途はないのか。尚、流通秩序の問題を言われておりますが、流通秩序はただ單にあなた方のおつしやる統制の一部を強化することでは達せられない。町内会、部落会がなくな
つた代りに、やはり
生活協同組合というものがもりもりと自主的に起きなければならないと我々は考えておりますが、ただ
生活協同組合法ができておりますけれども、つまり金融等に対しては、ちつとも顧みられておらない。流通秩序確立のために、これらの改正法案を提出する意向があるかどうか。
次には信用制度の問題でありまするが、
援助見返り資金の長期産業資金運用計画を國会に提出するお考えがあるかどうか。今度はなかなかごまかされますまい。そこで何とかしてごまかす
方法を一生懸命考えれば考えられぬこともありませんが、千七百五十億円の、この從來は闇から闇に行
つた大金が、公然と表に出される以上は、これはやはり公然とその使途について、又それを使うところの産業に対しては、
國民がこれに十分な関心を持たなければならないのであります。中小企業の対策についてでありますが、自由に放任して置く、そうしてこれが再編成、或いは再整理、そういうことを持たれておるのか。今のお考えでは企業整備をやる。資金はやらない資材もやらない。まじめな者は倒れてします。統制の名に籍りて一部の者は保護される。こういう結果になるのでありますが、そうな
つたのでは堪らない、死ぬも倒れるも、くたばるも自由だ。こういう自由主義は我々は恐れるのであります。そこで、これらの中小企業の人々に、適当なみずからの力によ
つて再編成ができるように、いわゆる協同組合法というようなものを、計画生産のものは
政府が
責任を以て資金と資材を供給し、それらの人々のみずからの意欲によ
つて産業を
発展する、貢献するというような組織を作るという考えを持
つておらんかどうか。
大藏大臣が見えておりませんが、あとでもよろしいですが、安定帶物資に対する補給金が我々
國民の膏血から一千五百億円ばかり行くのでありますが、これに対してやはり
國民の使途に対する監視の機関が私は必要だと思う。これには労働者、農民、小市民等の代表を加えて、嚴に我々の膏血を使う場合における監視の機関を設ける意思があるかどうか。次に資本の蓄積を言われておりまするが、一部階級が儲けたものを自由に蓄積することを許すのであるか。私は今立たないところの事業に対しては、
國民の膏血でやるのでありますから、資本が蓄積された場合においても、この蓄積さるるところの資本は社会的に管理されなければならない。かように考えますが、この資本蓄積に対しては、やはり資本家の自由に委して置くつもりかどうか。
國有財産拂下でありますが、今や民自党
内閣ができてから、地方では相当な有力な連中は、何々を拂下げる。そのために拂下げたときにはお互いに株式会社に取ろうというので、
運動資金を集めて盛んに
運動をや
つております。この國有財産は我々
國民全体のものである。少くも一部の者にこの拂下によ
つて利益を與えるようなことは断じてあ
つてはならん。私はかように考えます。そこでこれらのものの拂下に対しては、地方であるならば公共團体、若しくは公共團体の意見を尊重してやるというような機関、そういう方式を採らなければならんと思うのであります。とにも
かくにも國有財産を拂下げるためには十分な警戒を要する。
次に賃金ベースは引上げられなければならない。当時のベースから見ると、
主食も上るし、物價も二、三割上
つておる。当然引上げなければならんが、そういう用意があるか、
大藏大臣。
農林大臣に対しては、第三次土地改革はやらなければいかんし、小作料は値上すべきものでない。それは今保有を許しておるのは、決して地主がそれによ
つて生活をするとか、その
收益によ
つてどうこうするために許しておるのではない、
精神は徹底的にこれは解放すべきものである。それは封建的のそういうものをなくするためにであります。持たれなくなれば、みずから國に返上すればよろしいのである。何か地主を温存して、古い封建勢力を温存するようなことを考えておるというような誤解を受けたのでは、司令部の折角農民解放の
精神に反すると思うが、この点についていろいろ申されておるが、大体
政府が生産命令を出して置いて、そうして例えば木材のごとき、坑木でも或いは枕木でも、薪炭でも、生産命令を出して置いて、そうして金を拂わないのはどういうわけか。これは命令というものは一方的に出し放しでいいものか。
本多國務相に対してでありますが、首切りの内容と
基準を
示して貰いたい。
政治的に氣に入
つた奴は残して置くし、氣に食わない奴はばつばつやるというような、そういう氣まぐれでなく、首切りの
基準内容を
科学的に檢討せられておるならば、それをはつきり出して貰いたい。そうしてこの首切りによ
つて生じた者は、一年間ぐらい先になれば産業が旺盛にな
つて吸收されるということを言
つておるが、少くとも一年間、これらの
生活保証をするという意味に解してよろしいかどうか。
文部大臣に大
学校についてでありますが、この國会に出すのかどうか。そこで
文部大臣に重ねてもう
一つお伺いして置きますが、我が國の
教育というものは、このような
経済的に非常に荒れ果てている中に、ひとり
精神的安泰を持
つておるのは
教育ということであるのである。労働者の子供でも自分が質に置いても
大学、こういうように考えておる、この信仰、こういう
一つの明るい窓、これを塞いでしまうということが眞に
日本の再建に、物資的再建にも役立つことであるかどうか。何か言えば予算がない。もうあれもない、これもない、
努力しますというだけでは
文部大臣は要らない。
政府全体にこのくらいの氣魄を持
つて、
日本の再建、自立も安定もこれだ、この氣魄を持
つて政府内部で闘わなければならない。
最後に、私は
総理大臣によく要望して置きますが、我が國の現状はおつしやる
通り非常に由々しい時期であります。この事態においてただ
指導者の考えるべきことは、私は一にして止まらぬ。沢山あろうと思いますが、何と言
つても労働者、勤労者、農民が、この人々の心からの生産意欲が上らなければならない。そのためには官吏は先ず粛正されなければならない。そのためには官吏の上にある
政治家が先ずみずからを清く正しくしなければならない。私は
國民に
協力を求め、生産意欲を高めようとすることは、決して白足袋や葉巻の煙の中からは断じてこれらの生産意欲は上らんということを申上げまして、私の
質問を終ります。(
拍手)
〔
國務大臣吉田茂君
登壇、
拍手〕