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1949-08-22 第5回国会 参議院 法務委員会集団的暴力行為に関する小委員会 閉会後第1号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十四年八月二十二日(月曜日)    午前十時五十四分開会   ————————————— 昭和二十四年七月二十九日(金曜日) 法務委員長において、左の通り小委員 を選定した。            伊藤  修君            齋  武雄君            遠山 丙市君            深川タマヱ君            岡部  常君            松村眞一郎君 同日小委員長互選の結果左の通り決定 した。    委員長     伊藤  修君   —————————————   本日の会議に付した事件檢察及び裁判の運営に関する調査の  件(集團的暴力行爲に関する件)   —————————————
  2. 伊藤修

    委員長伊藤修君) これより法務委員会集團的暴力行爲に関する小委員会を開きます。本日は、この種犯罪に対するところの時別立法措置を必要とする考えからして、これに対するところ調査研究を進めておる次第でありますが、この種犯罪に対しまして第一線にお働き下さるところの当局から、実際面についての現行法上の隘路、又特別措置に対していろいろの御希望なり御意見を伺いたいと存じております。先ず國警本部桐山君からお伺いいたします。
  3. 桐山隆彦

    説明員桐山隆彦君) 御指名によりまして、國警本部といたしまして集團暴力犯罪等に関する捜査の問題について、只今考えておりますところの申上げます。御承知のように刑事訴訟法が変つて参りました関係上、捜査の面についていろいろと影響があるのでありますが、特に集團暴力犯罪のような、その関係面が深く、根ざすところが深いものにつきましては、いろいろと捜査に困難を來す面が多いのであります。その点を具体的に数点挙げまして、こういう点についての御考慮をお願いいたしたいという点を申上げたいと存じます。  第一の問題は、警察に対しまして捜査の主体であるという点を明確にするような立法的措置を御考慮願いたいという問題であります。具体的に申しますると、今日殆んど刑事事件の大部分というものは警察捜査をいたしております。集團暴力犯罪につきましてもこの点は変りはないわけでありまして、特に集團的な犯罪については、こちらも相当の員数を要します関係上、主として警察力がこれに当つておるのでありますが、この場合に警察捜査というものは時間的制約の上から殆んど伸び得ないような実情にあるのであります。即ち被疑者を逮捕いたしました場合には、四十八時間しか我々はこの捜査する権限を持つておりません。結局四十八時間の時間では捜査の端緒を掴んだ程度であります。殆んど実体に触れる間もなく終つてしまうような状況であります。早い話を申しますと、最も重大な指紋の照会すらこの時間の間にはでき得ないという状況であります。そのために、被疑者が從來どこそこにおいて、どういうことをやつて來人間であるかというようなことも掴み得ないような状況になつておるのであります。これは四十八時間の後に檢察官の下に被疑者の身柄を送りまして、爾後檢察官の手許で調べて頂くことになつておりまするが、御承知通り檢察官は今日左程人数の上において十分と申すわけには参りません。その関係上結局警察が送りましても、或いは檢察官の方でも手不足の関係から十分な捜査がして頂けないというようなことがあるのであります。多くの場合には送りましても、もう一度警察が引受けて尚自分の手で調べて見ようというようなことになつて來る場合が多いのであります。このことは結局何と申しますか、警察としては自分責任において、創意と工夫の下に捜査をやつて行くという態勢の上から見ますると、甚だ妙なことでありまして、何だか昔の刑事訴訟法時代と同じように、警察第一線捜査責任を持つておるがごとく、持たざるがごとくというような状況になつて、熱意の点においてもいろいろと惡影響があるように考えられるのであります。その意味におきまして警察官捜査権の時間の制約四十八時間の制約という点につきまして、どうか特にこの集團暴力事件等につきまして御考慮を願いたいと存じます。或いはこの点につきましては、檢察官に送りました後の被疑者匂留期間を延長するというような方法もあるかと存じまするが、檢察官の方に幾ら時間をお與えになりましても、それだけでは捜査は伸び得ない。やはり警察独自として最初から最後まで責任を持つてやらして行くという意味では、警察官の直接被疑者匂留請求権をお認め頂くことが大切ではないかと、かように考えておる次第であります。今日全國十二万五千の警察官の最も大きい悩みは、この捜査時間が四十八時間に制約せられておるという問題でありまするので、この点については特段に御同情ある御考慮をお願いいたしたいと存ずる次第であります。  第二の点といたしましては、供述拒否権に関する点を御修正願いたいと思うのであります。これは新らしい刑事訴訟法で初めて設けられた規定であります。勿論私共といたしまして、今日憲法に書いてあります通り被疑者に対して自白を実力を以て強要するがごときことは絶対に許されないということは、もう十二分に承知しておるところであります。でありまするから、いわばこれはもう日本國民のすべての頭に入つておることであり、警察官自身常識として知つておることでありますので、今一度取調べをいたします場合に、相手方に対して供述を拒否することができる旨を告げるというのは、やや私は行過ぎの感があると思うのであります。應急措置法の下におきますように、ただ日本國憲法規定を受けまして、被疑者不利益供述を強制されるものではないということを注意的に刑事訴訟法に書いて置いて頂けば、それで警察官に関する心構えとしても私は十分ではないか、かように考えておるのであります。ところが今日供述拒否権を告げるというようなことが明文で規定されております関係上、取調べの上に種々困難を來しておることは、すでに皆樣方も十分御承知のことと存ずるのであります。特に甚だしいのは、不利益な事実供述だけではなく、逮捕されましても氏名も告げず、住所も告げず、始めから終りまで一言も言わないというような事例相当あるのであります。そのために我々としてはどれだけこの短かい捜査時間の間に、捜査をやつて行く上に不自由を感じておるか測り知れないものがございます。特にこれは集團暴力犯罪だけではありませんけれども、その他の犯罪におきましても、むしろ惡質なもの程、この権利を高々と振りかざしておるというような傾きがあるのであります。この権利を行使するのは、はつきり申せば、殆んど改悛の意思を持つていないような人間限つてこれを使つておるというような状況であります。特に我々が感じまするのは、すでに明白な物的証拠のあるというようなものにつきましても、尚且つ供述拒否権を行使して、不必要に捜査を妨げておるというような実情にありますが、この規定あたり一つ刑事訴訟法中から削除せられるよう御考慮をお願いいたしたいと存ずるのであります。  次の問題は、第二百二十六條、第二百二十七條証人尋問警察官の関與し得る途を開いて頂きたいという問題であります。御承知のごとく捜査中の証人尋問といたしまして、二百二十六條、二百二十七條規定が設けられまして、特に二百二十七條規定集團的暴力犯罪につきましては利用せられることが極めて多いだろうと存ずるのであります。ところが二百二十七條、二百二十六條の証人尋問には、いずれも警察官が関與し得る途は開かれておらんのであります。捜査のために認められておりながら、而も捜査に当り警察官にはそれに関與する途は開かれておらない。はつきり申しますと、警察官から裁判官証人尋問をやつて頂きたいということを請求することは認められないという趣旨であります。檢察官だけがこの権限を持つておるということでありますので、若し警察官がこのことを檢察官に依頼いたしまして、証人尋問裁判官の方に請求して呉れということを申しましても、檢察官の方でその必要はないと言われれば、もうそれきりで、それ以後の捜査を延ばすわけには行かないのであります。それと同時に、その証人尋問をする席に檢察官は勿論出席を許されております。被疑者弁護人の方も場合によりましては裁判官許可を得て出席することができまするし、出席いたしました以上は、裁判官許可を得て証人に対していろいろ質問を向けることもできるのでありますが、警察官はその席に入ることすら許されておらない。そういたしますと、自分がやつと苦労をいたしまして捜査の結果、或る一つの事実を掴んだ、ところがこれが公判廷に行つて証言が引つくり返る虞れがあるというので、二百二十七條証人尋問請求して置きながら、悲しいかな、その証人尋問の席に出られませんために、話がどの方向に行つておるのか、それも知ることができない。そのときの空氣によりまして思わぬ方に話が行つてしまつた場合に、一番筋道と思われる点を突くには、どこを突いたらいいかということは、実際の取調べに当つた警察官が一番よく知つておるわけであります。併しこの者はその席におらないという実情にあります。このあたり、私は刑事訴訟法上のやはり一つの欠点であると考えますので、警察官にこれらに関與し得るようなふうに一つ御修正をお願いいたしたいと考えておるのであります。  その次の点は、弁護人交通権の問題であります。新らしい刑事訴訟法の第三十九條には、弁護人立会人なしに被疑者と会うことができるということが書いてございます。これは今度の訴訟法人権擁護という導を最も重要視しております関係上当然の規定であろうかと存じます。併しながら一面から申しますと、このために当然発見せらるべき眞実が発見せられないというような事例が甚だ多いのであります。  昔でありますると、被疑者を逮捕いたしまして取調べる場合に、むずかしいと思うような場合には直ちに接見禁止の処置をいたしまして取調をいたしました。ところが今度の刑事訴訟法ではこのことは許されております。ただに接見禁止が許されないだけでなく、接見させる場合に立会人を置くことは許されないのであります。こうなりますと一番問題になりますのは、共犯を調べる場合であります。今日物的証拠とか、人的証拠という証拠方面中心搜査をいたして來る関係になつて参りますと、共犯者相互の言葉というものは互いに証拠になる重要な資料であります。いわば共犯が何人かあります場合には、これを別々に取調べまして、その間に食違いがないかどうか、矛盾がありはしないかということを突きまして、それによつて次第に眞実の姿をはつきりして行くというのが搜査常識であります。又この方法を取りませんければ、集團暴力犯罪等の檢挙は到底行い得ないのであります。然るにも拘わらず、被疑者につきまして弁護人警察官立会なしに被疑者接見することが許されておりますので、すべて話を口を合わせてさせるように指導することができるのであります。即ち一人の弁護人が、今日は甲に会う、次は乙に会う、丙に会うというようにして、そのときのアリバイについて、皆でこういうような話をして置いて呉れ、何時から何時までこの会へ出て、何時にその家を出て、こういう所に行つて、そうして何時にここで解散した。そういうふうに皆で話を合わして置かなければまずいというようなことをやられますならば、これは結局発見せらるべき眞実が遂に発見せられないという結果を來すものであろうかと思うのであります。この弁護人交通権によりまして不当に証拠が湮滅せられましたり、搜査が妨害せられておるという事例は殆んど枚挙に遑がないのであります。その意味合で私共はこの交通権の問題につきまして、何とか適当な制限を置くような規定を設けて頂きたい。接見禁止のような激しい方法は我々としても別に必要はないのでありまして、場合によりましては裁判官許可を得たならば、被疑者弁護人との接見警察官なりその他の官憲が立会つてもいいというようなふうにお決めを頂ければ、それで十分だと思うのであります。このことによつて被疑者保護方面も欠けることがありませんし、搜査の面においても相当の貢献をして貰えるものだろうと、かように考えるのであります。  それから次に、緊急差押制度というものを許けて頂きたいということであります。これは緊急逮捕制度関連をするものであります。緊急逮捕制度そのものにつきまして、憲法上一時疑義があるやに傳えられたのでありますが、今日はもうこの点について解釈は帰一して、いささかも違憲ではないということになつておるのでありますが、その意味合から申しますならば、緊急差押制度もやはり違憲ではないという結論が出て來るだろうと存ずるのであります。先日東大の團藤教授の御意見を伺いましたが、やはりこの点については、そういうような御意見のようでありました。この緊急差押制度と申しますものの必要性は、次第に物の証拠というものを中心犯罪を固めて行くという今日の搜査体制になつて参りますと、だんだん重要性が増して來ておるのであります。即ち犯罪証拠となることがはつきりしておるものでありましても、それが令状がないために手が出せないというようなことが起つて來るのであります。で一度帰つて裁判官令状貰つて來たときに、その証拠物はすでにどこかに運ばれて跡形もない。聞いて見たけれども、そんな物は初めからなかつたと言われれば、それまでというような状況がありまして、みすみす固まるべき犯罪が固まらないという事例が多いのであります。先日或る地方におきまする、何と申しますか、暴力的集團不法行爲につきましても、こういうような事例があつたように聞いております。即ち証拠物となるべきものが或る家にあるというので、搜索差押許可状を頂きまして、そこを搜索いたしましたところ近所の家に運ばれておることがはつきりしておる。併しながら許可状の上にはその近所の家は書いてありませんので手が出せない。もう一度取りに帰るというようなことをしている間に、結局どこかへ運ばれてしまうというような事例があつたように聞いております。この点も一つ何とか御考慮を願いまして、緊急差押制度をお認め願いたいと思います。この点は旧刑事訴訟法におきましては、仮領置制度として設けられておりましたのが、今度の刑事訴訟法改正の機に、どういうわけでありまするか、落ちております関係もありまするので、どうかその点を御考慮をお願い頂きたいと思うのであります。  それから次の問題といたしましては、檢視権限警察官にも認められたいという問題であります。集團的な暴力犯罪につきましても、やはりそのために人が殺されるというような事例相当にあるかと思うのであります。この場合に変死者といたしまして、只今ところ檢察官檢視を受けることになつております。警察官が若しこういう変死者のあることを発見いたしましたならば、直ちに檢察官に連絡をいたしまして、その檢視をして貰う。然る後にその犯罪捜査に乘出して行くというような恰好になるのであります。勿論檢視の以前においても、犯罪捜査をしても差支えないのでありますけれども、何分にもこの死体というものをしつかり調べて、如何なる方法で殺されておるかというようなことが分りませんと、殆んど犯罪捜査は五里霧中で乘出せないというような状況の場合が多いのであります。ところがこの檢視権限が今日檢察官だけに認められております関係上、非常に不自由を來しておる例が多いのであります。御承知のように、捜査の第一次的責任というようなものは、今日警察官に與えられておるにも拘わらず、この檢視の点だけは檢察官権限として残されておりまするので、檢察官來着までは警察官は空しく手を拱いて待つておらんければならんというような事例があるのであります。而も檢察官に連絡いたしましても、丁度そのときにおられないとか、或いは公判立会中で出られないとか言われれば、非常に困るような事例があるのであります。最近の事例でも、やはり七時間、八時間かかつてやつと來着を見たというような事例があります。そのために貴重なこの捜査の初動時間というものを遅らせるというような事例相当にあるのであります。而もこの檢視は、檢察官自身自分死体をお調べになるわけではなくて、勿論医師使つて医師の檢察によつて、御自身意見をお書きになるわけでありますから、その意味で申しますと、警察官医師助けを得て檢視をするのも、檢察官医師助けを得て檢視をするのも、私は五十歩百歩であると思う。而も捜査の面では、甚だしい不自由を來すという場合においては、この際檢視権限警察官の方にお移しを願えれば、甚だあらゆる犯罪捜査に便宜であろうかと、かように考えるのであります。我我の方といたしましては、主としてこの刑事訴訟法の法文を中心に、集團不法行爲捜査に関して不自由な点を申上げたのでありますが、その外に尚一つ考えを頂きたいことは、いわゆる証拠物捜査の問題であります。今日刑事訴訟法等は変りまして、捜査がやりにくくなつておりますが、これと同時に、実体法手続法との関連の問題として、或る程度まで行つたら、この被疑者の方に挙証責任が轉換せられるような方途が講じて預けないものであろうか、このことを考えるのであります。特にこれは、時間の制約や何かがやかましい今日におきましては、非常に困難を來している点でありますので、是非ともこれは刑訴と別に御考慮を願いたい問題だと存じます。これは集團不法行爲につきまして、直ちに例を挙げよと仰せを頂きましても、今直ぐにいい例がないのでありますが、外例を挙げますると、窃盗の場合あたりに、明らかに臓品であると認められる物を持つている者を捕まえまして、緊急逮捕をいたしましても、その者が氏名不詳人間からそれを預かつた、臓物たる性質を知らずに預かつたんだと言われますと、今日の建前といたしまして、一應警察の方で、それは盗んだ物であるということは立証しなければならんことになつております。若し盗んでいる現場に指紋を残しましたとか、或いはそのときに家人に顔を見られているというような場合はよろしうございますが、そうでないような場合には、みすみす臓品であることが分つておりながら、これを窃盗罪として事件を固めて行くことが実際問題として極めてむずかしいというような実例があるのであります。その意味におきまして、こうした場合、明らかに臓品であるとはつきりしている物を持つてつた人間は、自分がそれを盗んだ者ではないということを逆に立証する責任があるんだ、そうでなければ窃盗罪で罰せられるんだというふうに、法律の形がなつて來ることが私は必要であろうかと思います。何と申しますか、捜査困難性に乘じまして、今日窃盗あたりは殆んどこういう言い逃れをいたしているような状況であります。このままに放置いたして置きますならば、善良な人々の権利はますます蹂躪せられて、不法な連中の横行を見るに至るであろうということは火を見るより明らかな事実でありますので、この点を十分に御考慮頂きたいと考えております。
  4. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 一番初めの四十八時間に対して御意見を伺いましたが、然らばどのくらいの時間を必要とするかということについて、御意見がありましたら、伺つて置きたい。
  5. 桐山隆彦

    説明員桐山隆彦君) 我々の考えといたしましては、その後に警察官から聞くと、勾留権を認めて頂いて、十日ぐらいの程度勾留請求できるようにして頂ければ結構だと存じます。
  6. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 何かお尋ねのことがありますか。御質問はあとで一括してお願いすることにいたします。  次に、群馬縣刑事部長森田信太郎君。
  7. 森田信太郎

    説明員森田信太郎君) 集團不法行爲事件であると、そうでないとを問わないで、私共第一線において捜査に当つておる者といたしまして、新らしい刑事訴訟法規定考えた場合に、非常に困る問題が数多くあるのであります。このことをお話申上げる前に、一言外のことを申して見たい。それはどういうことかと申しますと、大体警察官と申します者は、定められた法令なり、規定というものに対して、実に忠実にそれを守るという一つ性格と申しますか、傾向と申しますか、そういうものを持つておるのであります。それが如何に窮屈な枠でありましても、定められたものであるから、制定されたものであるからして、それに從わなければならん、それをまじめに守らなければならんこういうふうに考えておるものであります。從いまして新らしい刑事訴訟法が施行せられました当初におきましては、これでは困つた、こんなことではとてもできんというようなことを強く感じて、寄るとさわるとその話が出たものでございます。併しながら、それもいつしか今申しましたような性格の中に溶け込みまして、今では困難を困難とも思わないで、仕方なしに諦らめてやつておるというような立場になつておるのであります。併し私刑事部長立場にある者、その他上局にある者としては、それをそのままで置くということはとてもできないのであります。刑事の諸君が非常に困難な制約のうちに閉じ籠められて随分苦しんで仕事をしておる姿を見た場合に、これは國会のお力を以てしてでも、何とかしてこれを解決して、刑事仕事がし易いようにして頂かなければならんということを非常に強く感ずるものであります。  さてそういうふうな第一線におります体驗を通じまして、刑事訴訟法規定を見て工合が惡いと思います点を少しく申上げて見たいと思います。これは只今桐本課長から大体お話になりましたような点と一致するのでありますが、第一は、被疑者取調時間の制限が如何にも嚴格であるし、窮屈であつて非常に困る、それと関連する問題としまして、被疑者勾留請求権警察官に與えて頂きたい、こういう問題であります。現在では取調時間は非常に窮屈である、勾留請求権はない、こういう状態であります。殆んど大分部事件というものは、四十八時間という、そんな短かい時間で檢事さんに送つて、十分これで起訴して貰える、或いは起訴、不起訴を決定して頂けるというような資料を取揃えて頂くというようなことは、とてもできない相談であります。現に檢察官がその権限によつてなさいますところ勾留期間中に、警察取調をせざるを得ない、その間に十分証拠を集めて、そうして起訴して頂く、或いは起訴、不起訴を決定して頂くというようになつておるのであります。それから被疑者勾留についても、非常に不合理が少くない、この二百五條勾留というものは申すまでもなく檢察官が不起訴するか起訴にするかということを決定し、或いは公訴を維持する上に必要な取調をみずからするというための留置処分でございますが、実情は今申しましたように、專ら司法警察員捜査取調のための留置というようになつておるのであります。このことは何を意味するかというと、二百三條の時間制限の非常に無理であるということを立証するものであると同時に、法の規定実情に全く合つていないということを証明するものであろうかと思うのであります。檢察官が二百五條勾留期間中に御自分被疑者をお取調になるということは、勿論絶無ではありませんけれども、これに要する時間は極めて少いのであります。又檢察官が、我々司法警察員希望と申しますが、請求と申しますか、これを容れて勾留請求をして下さる場合はよろしいのでありますが、この警察員希望請求というものは、法律上何らの効力を持たないところ一つ希望であります。從いましてその希望檢事さんが容れて下さらなかつた場合には、余罪の追及もできず、不当に不正の徒輩のなすところを見逃すという結果になるのであります。而も一方四十八時間というきつい制限に從つたために、檢事さんをして留置の必要を認めさせるという程度の事実を明らかにしない、それにふさわしい証拠を提げて檢事さんにお送りするということができないという場合が非常に少くないのであります。このように取調の時間的制限は極めて窮屈且つ嚴格であります。その上に勾留請求権は與えられていないという現状は、警察に與えられました捜査の第一次的な責任を果すこともできないし、警察に與えられた捜査の主体性というものも、これによつて失われるのではないか、こう思うのであります。とにかく時間の制限から参りますところ捜査上の困難を、察檢官の持つておる勾留請求権にひたすら依存して、それによつて解決しておるという現状、人さんの持つておられる権限を当てにして仕事をするという状態は、速やかに改善されなければならん、こう思うものであります。結局時間の制限が大幅に緩和されますが、さもなければ警察がみずから勾留請求をするところ権限を與えられるか、いずれかして頂きたいというのが第一線の痛切なるお願いであります。この実例を示せということでありましたら申しますが、時間をとると思いますので、実例の方は省略します。  次の問題は、警察を以て捜査の主体とするところの精神、警察法に決められた精神に相反する刑事訴訟法中の規定について申して見たいと思います。新らしい刑事訴訟法警察法の規定と相俟つて警察を以て犯罪捜査の第一次的な責任者であるということにいたしまして、警察犯罪捜査の非常な重い責任を持たしたのであります。併しながら法の規定の中には、この警察が持つておる捜査の主体性を無視して……これは言葉が過ぎるかも知れませんが、無視して、それを法の規定自体が何と申しますか、抹殺しておるような点が少なくないのであります。特に二百二十六條、二百二十七條証人尋問請求権、二百二十九條の檢視規定のごときは、捜査実情に反する面が非常に少なくないのであります。二百二十六條、二百二十七條規定は、御承知通り第一回の公判期日前の証人尋問請求権を定めたものでありまして、犯罪捜査に当る者としまして極めて活用の價値のある規定でございますけれども、この請求権捜査の主体であるところ警察に與えられていないで、却つて公訴の実行機関であり、捜査については第二次的な責任者の立場にある檢察官にだけ與えられておるということは甚だしい矛盾ではないか、そればかりでなく、この規定捜査の遂行を妨げておるという事実は看過できない。即ち新法施行後、今日まで私の勤務いたしておりまする群馬縣では、この規定を活用した事例は数件に過ぎないのであります。從いまして檢察官にこの証人尋問をして下さいということを請求して拒否された、断わられた、そのため捜査がうまく行かなかつたという実例は一、二件を数えるに過ぎないのでありますが、そうした具体的な事件として起らない程度のものであつて檢察官に頼んで手続をして貰うという億劫なことをやつておるために、知らず識らずの間に警察官がこの手続をしないで済ましてしまうということになつておるということは、蔽て隠すことのできない事実であろうかと思うのであります。この捜査のために証人尋問請求権捜査の主体である警察になくて、檢察官にだけ與えられておる。警察はただそれに依存して初めてこれができる。言換れば先方が警察希望を容れなければどうにもならないという、できるも、できないも檢察官のお考え如何にかかつておるということは誠に不合理であり、捜査の遂行上も支障があつて、至急何とか改善をお願いしたい、こう思うのであります。  次は、二百二十九條の変死者又は変死の疑いのある死体に対する檢視の処分の問題でありますが、申すまでもなく、この変死体檢視という問題は、その死亡が犯罪によるものであるかどうかということを見きわめるための処分でありまして、犯罪によるものと断定されるか、若しくはその疑いがある場合には、直ちに捜査に著手しなければならないのでありまして、捜査に極めて接著した処分でありますが、法の規定はどうなつているかと申しますと、この処分をする責任檢察官に持たしているのであります。例外として檢察官司法警察員にこの処分をさせることができるということを規定しているに過ぎないのであります。この規定警察の持つている捜査の主体性に無視したものであることは申すまでもありませんが、新法施行後の実情に見ましても、この規定が如何に死文にひとしくなつているから立証して余りがあるのであります。即ち檢察官檢視の現場に立会うことはありましても、その多くの場合は單に立会うというだけでありまして、処分の実務というものはすべて警察官が行なつているのであります。本縣におきます統計を御参考までに申して見ますと、本年の一月から七月までの間に四十の死体に対する檢視を行なつたのであります。これは普通行政檢視と申しますが、明らかに犯罪によらないものであるということが分つているものに対しては、この刑事訴訟法の定めるところによる檢視は行わないのであります。刑事訴訟法によつて行いましたのは四十でありましたが、このうち檢事さんがお立会いになりましたのは十一件でありまして、残りの二十九件は檢事のお立会いがなく、警察官だけで檢視したものであります。尚、昨年一ケ年間の数を御参考に申して見ますと、檢視を行いました死体の数が五十六、そのうち檢察官立会われたものが二十二であります。残りの三十四体は警察官だけでやつたのであります。このように捜査の主体として、これに第一次的な責任を負わしめております以上、檢視処分の責任権限警察にこれを與えるのが至当であり、現在見られるような警察官に與えておられましても、殆んど行使されていないという実情にも合致するものである、こう思うのであります。  三番目は、弁護人交通権の問題でありますが……。
  8. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 成るべく重複は避けて頂いて、異つた意見があればお伺いすることにして……。
  9. 森田信太郎

    説明員森田信太郎君) それでは実例を申上げることにいたします。大体桐山課長のおつしやつた問題、殆んどであります。これは警察官全部のお願いであろうかと思うのでありまして、大体同じであります。三番目の弁護人交通権についてお話がありましたが、それを示す実例を一つ二つ拾つて申して見ますと、本年の七月二日の夜、群馬県の富岡町の警察の管内で、若い者が遊興費の支拂のことで爭をいたしまして、一緒にその場におつた三木という者にこいつをぶん殴れと言うて殴ることを唆かした。そうすると、それはその声に應じて直ぐその傍にいた相手をぶん殴りつけた。そして顏面に一週間ぐらいの擦過傷を負わせた。そうして殴つたやつを傷害罪、唆かしたやつを傷害助勢で、その警察で檢挙いたしたのでありますが、事犯が割合軽微でありましたので、在宅事件として任意捜査で調べたのであります。ところが呼出しを受けて出頭する途中で、被疑者の一人が或る弁護士のところに寄つて依頼いたしましたので、まだ捜査主任が調べないで、刑事が事情を聞いているうちに弁護士がやつて來まして、会わして呉れというので、しつこく申しますので、その被疑者の一人に会うことを許したのであります。そうしますと、その弁護士さんは、この傷あとはこの事件で殴られた傷じやないのだ、ずつと前によそのところで殴られたものであるというように言いまして、医者の診断書を取寄せまして、裁判所に対して証拠保全の申請をしたのであります。署ではそういう話をあとで聞きましたので、初めは起訴猶予意見で送ろうというように思つてつたのですが、そういう一つ捜査妨害にひとしいことになりましたので、正式に取扱いました結果、却つて略式命令で両名とも罰金千五百円ずつに処せられたのであります。それから、これは五月頃の事件でありますが、或る地区の警察署で「やし」で相当その土地では知られた「やくざ」の親分を恐喝罪で檢挙したのであります。五万円の恐喝事件で檢挙して取調べている間に、もう一つ二十万円の恐喝事件が出て來たのであります。かくしてはつきりした犯罪容疑がありましたので、逮捕状を得まして檢挙いたしまして留置している間に、或る弁護士さんが面会を求めて來まして、会わせましたところが、その被疑者から弁護士に対して、二十万円の方の取調を受けたけれども、あのことは向うから二十万円は借金したことにして置いて頂きたいということを弁護士さんに頼んで、弁護士さんはそれを引受けて、両方に話を通じて貸し借りの関係に作つてしまつたのであります。從いましてこの方の事件は幾ら被害者を取調べましても、いやあれは取られたのじやありません、私が貸したのだ、こういうように言うておりまして、十分な証言が取れなくて、これを事件として成立ができなかつたのであります。貸し借りということは、その土地の「やくざ」の親分が大きな土建業者のところ行つて借りた金が、果して正しい貸し借りであつたかどうかということは、深く論ずるまでもないことなんでありますが、併し法律上はそういうことで事件になし得なかつたのであります。それから、その次の四番目の緊急差押の問題で、こういうことがあれば助かるがなということを一つ申して見ます。今年の三月十日の夜、邑樂地区の警察署で、藏をやられまして、衣類その他数十点を盗まれたのであります。それでその被害に遭つた衣類を持つている朝鮮人を発見いたしまして、これを檢挙して調べましたところが、いや自分で盗んだのじやないのだ、これは館林町の或る友達のところ日本人から、名前も何も分らん日本人から買受けたのだ、こういうように申しておりまして、それに基きまして令状を頂きまして、その友達と称する男のところ捜査して見たのであります。果してその友達の家から臟品の大半を発見することができまして、それを押收いたしたのでありますが、その際にその前の十日の夜の被害品以外の臟品と思われるものが沢山そこに隱されているのを発見したのであります。それでそれを令状に書いてありませんので、現在の規定の下では強制力を以て持つて來ることができない、そこで任意提出を求めましたところが、向うでは令状に記載していないから渡すわけにはいかんと言うて堅くこれを拒みましたので、止むを得ずそこに刑事を張込ませて置いて、又令状を頂きに帰つて來ところが、その簡易裁判所の判事さんがお留守であつて、止むを得ずそれから更に十里程離れたところ行つて漸やく令状貰つて來て、出直して行つて押收することができたという実例があります。もう一つは、三月の二十八日の夜、邑樂郡の大箇野村という村がありますが、その村の或る家へ泥棒が入りまして、小麦、大豆、モーター、そういうものを取られたのであります。それでそれを捜査いたしておりました刑事が宇都木という被疑者を檢挙いたしました。そうして臟品の差押捜索令状の発行を受けて被疑者の宅を捜索をいたしましたところが、捜索の目的物であつた臟品の外にいろんなものが出たのであります。どういうものが出たかと申しますと、自轉車を数台解体したと思われるものが出て來た。それから女の赤革のハイヒールが一足出て來た。この臟品を発見いたしました刑事を飛び上つて喜んだのであります。それは何故かと申しますと、それより前に、二月二十八日の夜中に、管内の利根川の堤防の上で靜岡縣の或る婦人が或る暴漢に襲われまして、素つ裸にされて、衣類から全部取られて、その上強姦されて裸で放り出された。文字通り裸で放り出されたという事件があつたのであります。そのときの女の履いておつたハイヒールであります。その女を乘せてそこまで連れ出すために用いた自轉車、これも盗まれたものでしたが、そのエスパニーという自轉車です。その自轉車が出て來た。これで正しくこの靴があり、自轉車の解体したものがあるというところで、前の強盗強姦犯人の本人であるということは間違いなく認められたのでありますが、これ又令状に記載していないというために、直ぐその場で差押をして持つて來ることができない。又帰つて令状を貰つて、そうして又出直して改めて手続をして持つてつたという、廻りくどい手続をしたという例があるのであります。次に供述拒否権規定があるために非常に困るという例を一つ申して見たいと思います。これは本年の七月二日に、御承知の草津町の警察署の管内で起つた百万円詐欺事件でありまして、これは縣の捜査課で依頼を受けて捜査した事件であります。これは一ケ月余に亘つて苦心捜査の結果、被疑者が京都の方に行つておるということが分りまして、京都市の警察にお願いしまして、下加茂警察署で漸やく二人犯人を掴えて頂いて、わざわざ群馬縣まで連れて來て頂いたのであります。直ちに私の方の課員にこれを取調をさせましたところが、この主犯の千葉という男が非常に沢山の偽名を用いておる。これは事実本人を掴えて裁判所に送るときになつて初めて本名が分つた。私共手配するときでも、何でもみんな偽名でやつてつたのであります。本名を初めて送りました際に発見したという程の男であります。その外この百万円を詐欺するまでに一ケ月余に亘つていろいろな工作をしまして、手のこんだ工作をいたした事件でありました。そのためにこの主犯を取調べるのに四十八時間のうち、三十何時間という時間を費してしまいまして、この主犯と行動を共にしておつたこの主犯の内縁の妻、これは非常に重要な役割をしまして、或るときは会社の社長の奧さんになり澄まして見たり、いろいろな藝当をいたしたのでありますが、これを取調べる時間がなくなつてしまつて徹底的に調べる暇がなかつた。而も本人がこれは或る学校を出た教養のある女でありましたために、新らしい法律知識もありまして、供述拒否権を完全に行使いたしまして、碌に何も申して呉れなかつた。そのため完全否認のままに送りましたところが、檢察廳では、どうしたわけか、これを罪とならずという決定をいたしまして起訴して呉れなかつたのであります。その外桐山課長からお話になりましたような問題について、それぞれ立証する事例は沢山ございますけれども、若し御指示があれば、あとから申すことにいたしまして、この程度で終らして頂きたいと思います。
  10. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 次に國警本部の秦野章君。
  11. 秦野章

    説明員(秦野章君) 極く簡單に申上げますと、実体法的なものの中にいろいろな行政処分的な権限も書かれることだろうと思うのです。そういうような権限は仮に書かれても警察権限として貰わん方がいいのじやないかという点が一つ。それから今一つは、この暴力行爲等処罰に関する規程の中で多衆だとか、常習だとか、兇器を示すといつたようなものが一つの加重要件になつておるわけですが、まあああいつたような趣旨の規定も結局置かれることになろうと思います。何と申しますか、刑事責任の幅を拡げると言うか、共犯規定だけでは賄えないものがあると思うのです。こういつたような犯罪については共犯追求が非常にむつかしいので、特例的に推定規定と申しますか、擬制規定と申しますか、そういつた一定の場合には普通の共犯規定では刑事責任がないけれども、こういつた場合には刑事責任が発生するような規定を置いて貰う必要があるのじやないか、この問題は結局挙証責任の問題になろうかと思います。何かそういうお考えを願いたいと思います。それから甚だ抽象的で恐縮なんですが、次は自首減刑の問題ですが、現在の内乱罪の規定の中に「暴動ニ至ラザル前自首シタル者ハ其刑ヲ免除ス」という規定がございますが、ああいつた自首減刑の規定、それからあの規定の趣旨から鑑みまして、自白減刑と申しますか、そういつたものを考えて頂いたらどうかと思います。と申しますのは、暴力的な集團犯罪におきましては、極めて群集応理的に動く分子も相当あるわけであります。それでそういうものが自白を先んじてしたというような状況の場合には、その刑を免除して行くといつたようなことにすれば甚だ調べも容易になるというふうに考えられます。それから現在の騒擾罪の規定の中に、刑法百七條でございますが、公務員の解散権があるのであります。つまり暴動、集会に対する解散を命ずる公務員の権限を書いてあるわけですが、あの規定の解釈が今いろいろ分れてあります。刑法で公務員にああいつた解散権を與えているという解釈もおかしい、そうかといつて、外の立法で警察官などが解散権を持つているという解釈も、そういつた立法も現在のところございませんので、ああいうような点も明らかにして貰つた方がいいのじやないかというような考えを持つております。その外権利保釈の問題とか、默否権の問題等につきましては、先程來お話がございましたので、大体以上の点を申上げます。
  12. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 次は捜査第二課長の松本君にお願いいたします。
  13. 松本彊

    説明員(松本彊君) 警視廳の実際から申上げますが、最初桐山課長が意見を述べられました点が、我々実際に捜査に当つております者として全く全部同ど意見であります。特に今の暴力團等に関係して強調したい点は、保釈中の犯罪が非常に多いのでありまして、今年の一月から六月までの間に五百三十七名檢挙しておりますが、保釈中の者で更に再犯として檢挙された者が今の五百三十七名であります。一般の國民の受ける印象としては、保釈で出て來ている数が非常に多い。その上に相手が暴力團であるということで、非常に却つて恐れて、全然罪がなく出て來ているものと一般は思つているわけであります。余りに簡單に保釈をするという傾向が非常に強いので保釈をする際には現在の規定としては檢察官意見を聞くということになつておりますが、更に警察官意見も聞くように是非改正をお願いしたいのと、保釈を認めない欠格條項に府加えてお願いしたい点が、再犯を犯す虞れのある者と、それから逃亡の虞れのある者、この二つの点を是非附加えて頂きたいと思うのであります。それが特に暴力團について桐山課長が述べられたのに強調して附加えてお願いしたい点であります。  更に、一般の取扱いについての感じとしまして、当初述べられました点を繰返して恐縮でありますが、被疑者弁護人が自由に交通するという点、これは特に惡質な者については是非改正をして頂いて、立会人の下に交通するということを是非お願したいのであります。特に我々の扱つておる涜職犯とか或いは選挙の犯罪だとか、また知能犯的なものについては、立会人なく弁護人被疑者とが会うということは、殆んど証拠がもう当初のものより伸びないということの問題がはつきりしております。又たまたま洩れ聞くというと、言わせない、余計なことを言うなとか、或いは二十三日頑張れば絶対大丈夫だというふうなことを一般に言つておる事実があるのであります。こういうような点は徒らに惡質な者の、惡人の権利を擁護するような極めてまずい條項だと思うのです。  それから供述拒否権を告知する問題でありますが、これも眞実の発見のためにわざわざ呼んで置きながら、言わないでいいということをわざわざ告げたために、全然言わなくなつてしまうとかいうようなことが非常に多いのであります。こういうことも馬鹿げた條文であると思います。是非一つ改正をお願いしたいのであります。  それから四十八時間の問題、これもお話しになりましたように、とても四十八時間で徹底した捜査はできないことは誰が見ても明らかだと思うのであります。この点特に強く改正をお願いしたいと思います。簡單でありますが、以上であります。
  14. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 次は警視廳の手柴君。
  15. 手柴佐八

    説明員(手柴佐八君) 私は前に皆さんが述べられたのと大体同じ意見であります。何も申上げることはございません。
  16. 伊藤修

    委員長伊藤修君) それでは浦島君。
  17. 浦島正平

    説明員(浦島正平君) 私も同樣であります。
  18. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 何か御質問になることはありませんか……それではこれを以て一旦休憩いたします。午後は一時から続行いたします。    午前十一時五十六分休憩    —————・—————    午後二時十五分開会
  19. 伊藤修

    委員長伊藤修君) それでは午前に引続きまして会議を開きます。東京地檢の檢事勝田成治さんの御意見をお伺いします。
  20. 勝田成治

    説明員(勝田成治君) 私からは集團犯罪捜査につきまして、檢察官といたしまして現在の刑事訴訟の規定の下におきまして、どういうような不便、或いは困難を感じておるかということを申上げて見たいと思います。  現在の刑事訴訟法の下におきまして、集團犯罪と申します一般の犯罪捜査につきましても、いろいろ不便を感じでおる点はあるのでございますが、ここでは全般的のことには関連いたしませんで、できるだけ集團犯罪方面に限りたいと思います。併し一般的の普通の犯罪捜査につきまして感じております不便といつたようなものが、集團犯罪につきましては非常に大きくなつて現われておるということは、一般的に申してよいのじやないかと思つております。それから、これから私の申しますことが、直ちに捜査上不便であるから、そういう規定を止めてしまえとかいうようなことには、直ぐになるとは考えないのでありまして、本來法律というものがいろいろな理念とか必要とか、いろいろな方面の問題が交錯いたしまして、或る程度の妥協になつておるということは否定できないのでありまして、又現在の憲法規定の下において法律というものがあるということも当然でありますから、直ぐに私が申しますことが法律の改正の問題にまで希望しておるかどうかということは、又別個の問題であります。併しながらいろいろ考えて見まして、現在の憲法の下におきましても集團犯罪の特殊性に鑑みまして、もう少しゆとりのある規定ができないか。決して憲法規定に抵触するという問題でなしに、十分に憲法規定されております基本的人権の保障といつたことを考慮しながら、犯罪捜査上、もう少しゆとりのある考えはできないであろうかというような点を若干申上げて見たいと思うのであります。  先ず第一に、被疑者供述拒否権の問題でありますが、これは御承知のように、憲法第三十八條の不利益供述を強要されないというところから來ておる規定であることは明らかでありますが、刑事訴訟法規定におきましては、そういつた例外と申しますか、憲法も必ずしもそこまでは要求しておらないのじやないかというような規定になつておるように思うのであります。その一つの例としまして、百九十八條の第二項でありますが、この規定はいわゆる默祕権と称されておりますが、その默祕権があることを取調べの前に告げなければならぬという意味の言葉でありますが、被疑者に対しまして、予め供述を拒むことができることを告げなければならないという規定であります。先程申しましたように、憲法規定では不利益供述を強要されることがないという規定になつておりまして、この憲法の精神は、御承知のように被疑者自分で述べたことによつて自分が処罰を受けることのないようにという歴史的の沿革のある規定だと思うのでありますが、この刑事訴訟法規定はそれよりもむしろ廣くなつておりまして、頭ごなしに供述を拒むことができる旨を告げなければならない。從つてこの半面、被疑者は一切喋らないことができるということを規定した形になつておるのであります。一例を申しますと、例えば住所、氏名、職業、年齢といつたようなことも供述しなくてもいいということに、この規定からはならざるを得ないのではないかというように考えるのであります。果して憲法規定がここまでのことを要求しておりますかどうか、人を殺したり、物を盗つたとかいうことにつきましては、本人の口から聞こう、言わせようということは、それを強要してはならないということは十分の理由があると思うのでありますが、さような、そのことを喋ることによりまして、その者が処罰つれるというような何ら関係のない事柄につきましても、一言も喋らなくてもいいというような規定が、果してこの憲法の下におきましても、相当なものであるかどうかという点は、捜査官の立場から申しますと、いささか疑問を持たざるを得ないのであります。このために單独犯人でありますれば、仮に名前を申しませんでも、その者を起訴状に表示いたします場合には、特徴などでできますから、それを特定することはさまで困難ではないのであります。集團犯罰ということになりまして、数十人或いは何十名というものが、若し一様に住所も言わなければ、名前も言わない。これが黙秘権で当然だということになりますと、先ず第一に、その者の特徴を固める意味において捜査上非常に大きな手間が掛かるということになるのであります。從來も実例といたして、数名の犯罰につきまして住所、氏名が分らないために、いろいろな方法で番号を付けまして起訴をいたしたという事件も、東京ではございませんが、神戸あたりにあるのでございますが、これも数名程度なら或いはできるかも知れませんが、これが数十名或いは百名を超えるというような事件になつて参りますと、到底短時間の間にそれぞれの人間はつきり識別するような方法を講ずるということが非常に困難な場合が予想されるのであります。実例といたしまして、これは應急措置法の当時でありましたが、例の日本タイプライターの爭議の事件等におきましては、或る警察署に留置いたしました全部の者が申合せまして、名前も何も言わないということがあつたのであります。幸いにその際にはよく話をいたした結果、最後には住所、氏名を述べたのでありまして、問題は一應解決したのでありますが、すでにその当時、私は若しそのまま最後まで住所も氏名も述べないといつた場合には、どういう形で捜査を進めるかということについて、いろいろ考慮いたしました。これに時間的の制約等があります場合なら容易ならんことであるということを感じたのであります。私の申しておりますところの趣旨は、いわゆる黙秘権、或いは供述拒否権刑事訴訟法規定につきまして、必らずしも憲法が要求しておることでないものが規定されるのではないか、從つて少くともこの被疑者供述拒否権のあるものは、そのことを述べることによつて自分が罰せられる、そういつた事柄について黙秘権がある。その外の、これを設けました例として挙げましたような名前といつたようなものについては、いわゆる黙秘権の内容として入つておらないのではないかということがはつきりして頂ければ、相当そういう点の捜査上の困難は救済されるのではないかというような感じがいたします。勿論さような法律規定の発動がありましても述べない者はあると思います。從來の旧刑事訟訴法の下におきましても、最初から最後まで名前を言わなかつたような者もあつたのでありますが、併し少くとも被疑者権利であるとして、それを聞こうとすれば、職権の濫用であるといつたようなことは言われなくても済むのではないか、かように考えるのであります。從つてこのいわゆる被疑者供述拒否権の問題については、その点について御考慮をお願いしたいと考えております、それから今一つの問題は、予めそういうものがあることを被疑者に告げるという問題であります。これも憲法規定から直ちには出て來ないと私は考えるのであります。この憲法の趣旨を生かすために、こういう規定が必要なんだという理窟のあることは私も十分承知しておりますが、併しながらどうも調官の立場から見ますと、進んでみずから本当のことを述べようとしておる者に対して、わざわざ何も言わなくてもいいんだということ、或いは当初から頑強に否認して來ておりまして、何も言わない者に対しまして、又殊更何も言わなくてもいいんだぞということを告げなければならないという規定は、どうも少しまあ何と申しますか、おかしいような感じを持つておるのが実情でありまして、さような黙秘権といつたようなものが、黙秘権と申しますか、憲法の三十八條の規定にありますような精神が、國民全体の常識にないますれば、わざわざそれを取調べの手続きの過程におきまして言わなければならないというような規定までは、必要ないのではなかろうかというような感じを持つております。  それから次に第二に移ります。それは被疑者弁護人との接見交通の問題であります。これも被疑者権利の保証する、又は弁護権の本來の理由から考えまして、この立法理由も十分私は分るのであります。ただこのために実際問題といたしまして、捜査に支障を來す場合があるという事実だけは否定できないように思うのであります。多くの檢事が申しますことは、この被疑者の段階におきまして、弁護人の面会がありましたあとで、全部とは申しませんが、非常に多くの者が何と申しますか、今まで供述しておつたことを否定し、或いは取消し、或いは更に進んで供述しなくなつたと、いわゆる固くなるというように言つておりますが、さような例が相当ある。勿論実例といたしまして、弁護人のうちでわざわざ被疑者に会われた際に、かたくなな被疑者に対しまして、本当のことを述べた方がいいんじやないかというようなことを言われまして、その結果被疑者供述をするようになつたという例も私は存じております。從いまして抽象的に被疑者弁護人の交通が自由であり、又立会なくして交通が行われることが因ると言い切つてしまうわけに、私としてはいささか躊躇するのでありますが、往々にしまして、只今申しましたように、被疑者弁護人との接見の自由権が、率直に申しますれば濫用されまして、智慧を付けるようなチヤンスを與えるようなことになつておるのではないかという点が感ぜられるのであります。そのことが別に捜査上支障を來すと言いましても、直ぐに相手が被疑者でありますれば、相当のことが言われましても、使嗾教唆とか、証拠湮滅とかいうわけには參らないのでありまして、結局それも被疑者の黙秘権の中に入つて來ると言われれば、それまででありますが、被疑者自身としては、或は程度述べるような氣持になつております場合にも、外の被疑者との関係だとか、いろいろな事件の波及するところとかいつたようなことを考え直させられる機会が、こういう交通の場合に與えられておるのじやないかといつたような事例を見ておるのでありまして、この根本的の精神を私は否定するつもりは毛頭ありませんが、実際上の不便を感じておる点から申しまして、何らか交通権が濫用されないような適当なチエツクがなかろうか、むしろそれについて考えられますことは、立会といつたような問題でありますが、その限度は非常にデリケートな問題であります。私の結論といたしまして、そういう問題があるから被疑者弁護人立会の際には、必ず、立会をするような規定にして貰うというような点までは申しませんが、さような点も十分お考え願いたい一つであるということを申して置きたいのであります。殊に多数犯罪におきまして、被疑者が非常に関心を持つておりますことは、外の被疑者がどういうことを述べておるかという点でありまして、これが弁護人を媒介といたしまして、その取調の限度なり供述の内容が、大勢の被疑者の間に全部傳わるというようなことになれば、集團犯罪捜査といたしましては非常に困難なことになる、これは否定できないことでありまして、かような例が捜査上いろいろ不便を感じておる例の一つとして挙げざるを得ないと思うのであります。  それから第三点でありますが、これも憲法規定から來ておる規定でありますが、いわゆる勾留理由の開示手続というものがあります。勾留された者は何人でもその理由を公の法廷で開くことができる、これは憲法規定から來ておりまして、この規定も外國におきましては相当歴史的の沿革がありまして、いわゆる人権保障の建前からは十分理由のある規定なんでありますが、ただ刑訴上にそれをそのままの形で持つて來ました点につきまして、若干私は疑問を持つのでありまして、本來刑事訴訟手続におきまして、被疑者の逮捕勾留というようなものはすべて法律の手続で規定されておりまして、而も身柄の拘束に関しますことは終始裁判所がこれにタッチしておるのであります。從いまして余程手続上の過誤がありません限りは、刑事手続において勾留されておる被疑者につきましては勾留の理由があつて、又形式的には裁伴官の署名いたしまして勾留状が出ておりまして、それぞれをちやんと被疑者に示しまして、こういう被疑者事実について勾留するということは十分分つておるわけであります。而も勾留された場合には必らずその親族というような者に勾留したことも通知をすることになつております。從いましてさような場合に直ちに勾留理由の開示を請求するということが普通の場合として必要であるかどうかということを考えますと、むしろ被疑者自身は、自分がどういう理由で勾留されておるかということは十分承知しておると言わなければならないのじやないかと思うのであります。從いまして実際の例といたしまして、これまで勾留理由の開示の請求のあります事件というものは必ずしもそう多くはないのであります。大部分の事件につきましては、かような手続は請求がないのであります。最近爭議とか、ああいつたような事件関連いたしまして、この連続が非常に何と申しますか、活用されるようになつたのでありまして、実際の運用を見ておりますと、只今申しましたように、普通のこういうような犯罪の嫌疑で、こういうような勾留の理由で勾留してあるのだと、裁判所として一應の説明をいたしまして、私はそれでこの手続としては十分だろうと思うのでありますが、それに対しまして、まるで判決の際の弁論のような、一体どういう証拠があるのだ、犯罪の嫌疑は如何なる証拠に基いてさような檢挙をしておるのか、証拠湮滅の理由があるというのは、どういう根拠に基いてそういう判断をするのかといつたようなことが執拗に開示を請求されまして、それこそ開示を請求されまして、そのために本來の、恐らく憲法で要求しておりますところ勾留理由の開示といつたようなもの以上のものが、この勾留理由開示手続では行われなければならないといつたような実際の動き方になつておる傾向が見られるのであります。私はこの勾留理由の開示といつたようなものは、例の人身保護令ですか、ヘビアス・コーパスの制度と私は関連あるものと思うのであります。何ら法律上の手続を経ないで、法律上の権限なくして逮捕されているような場合に、最もこれは効果を発揮する規定ではないかと思うのでありますが、たまたまこの刑事訴訟の中に、憲法にはさような例外はございませんので、刑事訴訟法の手続の中にもこの規定が入つて來たわけでありますが、実際憲法が期待しておりましたところよりも、逸脱と言つて語弊があるかも知れませんが、いささかこの制度が違つた目的のために利用されているのではないかという感じを深くいたすのであります。併しそれも規定があります上は又止むを得ないかも知れませんが、実際問題といたしまして、このために勾留理由開示の手続が行われますために、一人一人の被疑者でありますれば時間もそうかからないのでありますが、十数名、数十名の被疑者についてこれを行うということになりますれば、勾留理由開示手続につきましても、先程申しましたように簡單に、かような勾留状が出て勾留されている、被疑事実はこうであつて勾留理由はこうであるという程度で済めば結構でありますが、それで済まないということになりますれば、理由開示手続だけにつきましても相当の時間がかかるのであります。先般の三鷹事件勾留理由開示手続におきましても、まる半日かかりましたが、あれは七人でありましたが、それが数十人ということになりますれば到底一日ではできない。これが限られた捜査期間の中から割かれるわけであります。而もその間捜査は全く中断されますのみならず、この理由開示の手続を通りますためには、裁判所はやはり記録を貸して呉れということを、まあ檢察廳に要求して來るわけであります。そのためにその当日のみならず、少くとも二、三日前、大部の記録になりますれば更にその前に、記録を全部裁判所へ貸す。その間檢察官の手許には捜査記録がないという不便があるのであります。それからこれは余り予期されておらなかつた効果ではないかと思いますが、集團犯罪等につきまして個々的に勾留理由開示をやるという建前を取つてしまえばいいのでありますが、先程申しました勾留理由開示手続を大いに利用しようという立場の人からは、必ずそういう場合に大勢の被疑者を同時に法廷に入れまして、同所にその手続をやつて貰うようにという請求があるのであります。そのために各被疑者捜査の過程におきましては分離いたしまして、相互の取調状況の進捗状況といつたようなものを、極力被疑者の間で分らないようにということに苦心しながら檢察官捜査を進めるのでありますが、これが勾留理由開示の際に一堂に会しまして、そこでいろいろ被疑者に対する尋問等によりまして、大体誰が今までどういうことを述べている、どういう態度を取つているとかいうことが、皆被疑者の間に分つてしまうのであります。更に進んではその機会にお互いに激励し合うというような実例もございます。と同時に、先程申しました勾留理由というものにつきまして、具体的な理由の開示を請求せられます場合に、場合によりましては裁判所におきまして、いわゆる証拠関係の説明を余儀なくされるといつたような事例もあつたのであります。そのためにこちらで切札として持つておりますような証拠が、捜査の途中において被疑者の前にさらけ出されるといつたようなこともあるのでありまして、これが捜査上非常な支障を來している場合があることは否定できないと思うのであります。捜査官の立場から申しますと、勾留理由開示手続は、少くとも被疑者として勾留中に勘弁して貰えないだろうかというのが率直な意見であります。これは先程申しましたように、憲法規定から参つておりますので、憲法違反になりはしないかという点が直ぐ考えられるかも知れませんが、刑事訴訟法規定によりましても、勾留理由開示の請求がありました場合には、建前としましては、五日以内に勾留理由開示をやらなければならない。併し例外がありまして、止むを得ない場合には五日過ぎてからでもいいということになつておりまして、法律によりまして、このような、今日あつたから今日しなければならないというような点につきましては、すでに例外が認められておるのでありまして、現在の限られました十日、或いは延長しまして二十日の勾留期間中につきまして、勾留理由開示手続はやらないという立法がありましても、私はあながち憲法違反ではないのではないかというように考えるのであります。從いまして十分意義のある制度ではありますが、その運用の実際並びにその効果等に鑑みまする場合に、又憲法との関係考慮いたしましても、少くとも捜査中の勾留理由開示の手続につきましては、今一度お考え願いたいというのが檢察廳のお願いであります。  それから第四点でありますが、これはまあ一般的の問題といたしまして、集團犯罪につきまして、刑事訴訟法の諸種の時間的の制限が何ら例外が認められておりませんために、非常に一般事件捜査に比べまして、集團犯罪捜査には困難を生じておるという点であります。これはもう殊更御説明いたさなくてもお分りだろうと思いますが、今度の三鷹事件の例を取りますと、あれは新聞にも書いてありますように、被疑者一人について檢事一人当つております。かようなことは異例の場合でありまして、聞くところによりますれば、平事件等におきましては、百名以上の被疑者に対しまして、檢察官檢事及び副檢事を合せまして十数名でやつているということを聞いております。そういたしますれば、一人の檢察官の担当は数名になるのでありまして、これを十日とか、二十日とかいう勾留期間制限で割つて参りますと、結局一人の被疑者に対しまして檢事が夜も寝ないで調べに当りましても、極く僅かの日数しか調べができないということになるのでありまして、被疑者一人に檢事一人というような普通の場合の考え方でありますれば、私は只今のような刑事訴訟法でも、忙しい忙しいとは申しながら、それ以上のことを望む氣持はないのでありますが、集團犯罪につきましては、何らかの形において例外が欲しいというのが実際の氣持であります。殊に警察官から要望があつたと思いますが、四十八時間或いは檢察官の手許において二十四時間というような時間にまで制限されております期間がありますが、この間に簡單な窃盗事件も二十四時間、百人以上の複雜な集團犯罪も二十四時間といつたような形では非常に無理でありまして、殊に最近のような思想的な、或いは政治的な背景のありますような事件になりますと、つい裁判所の方でも普通事件以上に愼重になるというのが実情でありまして、このために逮捕状を出すとか、拘留状を出すとかいう問題につきましても、一應証人を調べてからといつたようなことにもなるのであります。そうしますと、できるだけ檢察官としましても、裁判所が調べる前に或る程度証拠を集めて置かなければならない。証人も確保して置かなければならないといつたようなことにもなつて参りまして、この二十四時間といつたような制限については、少くとも多衆犯罪については何らか例外的な規定が欲しいと、かように思うのであります。現在でも拘留期間の延長につきましては、今度の新刑事訴訟法應急措置法で十日でありましたものが十日間だけ延長されるようなことになりまして、実際問題といたしまして相当むつかしい事件が、あとから顧みまして、十日間では絶対に捜査が完了できなかつたものが、十日間延長されたがために一應形の付くような捜査ができたというような実例も多々ありますので、あらゆる事件について更に勾留期間の延長を期待するというのではございませんが、多衆の犯罪等につきましては、多くとも或る程度勾留期間の延長といつたようなことも例外的にお考え願いたいと、かように考えるのであります。それから集團的犯罪という第五点でありますが、集團的犯罪ということから直ぐには参らないかと思いますが、次に暴力團のああいう組織的なものの犯罪に伴う関係人の扱いの点について御考慮願いたい点が一つあります。それは旧刑事訴訟法には、御承知と思いますが、法廷におきまして本当のことを言いにくいという証人がありました場合には、被告人などいないところで尋問するという規定があつたのであります。ところが今度、やはりこれも憲法によりまして、あらゆる証人について反対尋問の機会が與えられなければならないということになりました結果、右申上げましたような旧刑事訴訟法規定は削除いたしたのであります。これは憲法規定から止むを得ないと一應言わざるを得ないと思うのでありますが、実際問題といたしまして、例えば大きな恐喝團の被害者といつたような者は、法廷に出まして、しばしば実際と違つたことを言つた実例があるのであります。檢事檢事の調室において聞きます場合には本当のことを述べておりまして、それが法廷で宣誓までした上で証言するときになりますと、極めてぼやけた証言になつて來るという例があります。そういつた場合には、檢事が今一度その者を檢事の調室で聞いて見ますと、実はあすこで本当のことを言えばあとが怖いということを申すのであります。更にお尋た場合には、おどかされたといつたようなことを言う場合もあります。それで檢事としましては又その調書を作りまして、もう一度法廷で証人として調べて貰う手続きを取るのであります。二度目に又召喚状が参りますと、あわてて檢事ところへ参りまして、又法廷へ立たなければなりませんが、私はどうしても法廷では本当のことが言えませんということを言つて來るのがあるのであります。かような点につきまして、訴訟法上では証拠保全という手続がございます。法廷に参りまして供述を変える虞れがあり、而もその者の証言が有罪と判定するために、どうしても必要な場合には、裁判所に第一回の公判手続行に請求いたしまして、その者の証言を確保して貰うという手続はあるのでありますが、檢事ところでは非常にすらすら申しますために、まさかと、そこまでの手続も取らないで置きまして、さて公判が開かれますと只今申しましたようなことになつて参ります。そういう場合には非常に困難が生ずるのであります。まさかさようなものを一々僞証罪とするということも、いささか酷な場合もありまして、憲法下止むを得ないということは一應分りながら、今更この旧刑事訴訟法の、先程申しました規定が、如何にその人情の機微をうがつた規定であつたかということを痛感するのでありまして、かような点につきましても、一つ特に集團的な恐喝犯罪といつたような事件につきまして考慮をお願いしたいと、かように思うのであります。  その他細かい点もありますが、一應檢察官といたしまして考えております主な点を申上げて、私の説明を終りたいと思います。
  21. 高橋一郎

    説明員(高橋一郎君) それでは暴力的犯罪の取締に関する参考資料といたしまして、全國の各檢察廳から報告を受けましたものを項目的に申上げて見たいと思います。  先ず第一に、実体規定についてでありますが、一つは集團の一人に暴力行爲があれば、その余の者にも同樣の刑事責任を認め得るよう、集團犯罪については刑法の共同正犯の規定よりも廣い共同責任規定を設けられたい。第二は、集團暴力犯罪の謀議、教唆、煽動、その独立犯処罪規定を設けられたい。第三は、集團暴力犯罪の現場助成者及び附和随行者に対する処罪規定を設けられたい。第四は、正当な理由なく集團暴力犯罪の現場において公けの機関より退所を命ぜられ從わない者は、犯罪を行なつた者でなくとも処罰し得るものとせられたい。第五は、騒擾罪と暴力犯罪の中間的犯罪として、左記該当犯罪が多衆により行われたときは、その行爲の態樣によつて処罰し得るようにせられたい。即ち共同の威力によつて暴行、脅迫、傷害、毀棄、住居侵入等を犯した場合に、いわゆる首魁、率先助勢、現場助勢、附和随行をなした場合に、現場に居合わせた者は、反証なき限り或る程度の制裁を科し得るというようにされたい。第六は、暴力行爲等取締法を改正、その第二條の「財産上不正ノ利益ヲ得又ハ得シムル目的」以外の目的の場合をも含むこれらの行爲を謀議し、唆かし、又は煽つた者も処罰する規定を設けられたい。第七は、捜査妨害、又は犯人の奪還の目的を以て多数が集合して檢察廳、警察署、刑務所等に押し寄せる示威運動等の処罰又は責任の一般的立法をせられたい。第八は、故なく現場に参集した者に対する処罰規定を設けられたい。第九は、集團的暴力犯罪の法定刑を引上げられたい。第十は、現場における証言に関して暴行脅迫をした者に対しては重い刑を科するような刑の加重をせられたい。実体関係で、各檢察廳の意見を、そのままこれは項目として並べて御参考に供したものであります。  それから同じく手続関係につきましては、先程からいろいろ檢察廳或いは國警方面から詳しいお話がありましたので、項目的に並べて御説明するに止めたいと思うのでありますが、第一は、司法警察職員の逮捕から身柄送致までの期間を延長すること、その期間といたしましてはいろいろな意見がございますが、三日間乃至十日間という範囲になつております。第二は、檢察官が司法警察から被疑者を受取つたときから裁判官勾留状を請求するまでの期間を延長することといたしまして、これは四十八時間又は七十二時間という意見がございます。第三は、起訴前の勾留期間を延長すること、その期間といたしましては、これもいろいろございますが、大体現在の最長二十日間というのに対して、三十日乃至六十日くらいを考えているようであります。次に、勾留につきましては、勾留の理由に再犯の虞れを加え、これは刑事訴訟法の第六十條、第三表ということになろうと思いますが、且つ同條各号中の「疑うに足りる相当な理由」を削るというような意見でありますとか、次に権利保釈の適用を排除又は緩和すること、内容といたしましてはいろいろな程度がございます。次に、勾留理由の開示の規定の適用を排除し又は緩和すること、これにつきましては適用を全然排除すべしという意見や、又或いは勾留理由の開示の期日と、その請求の日との間には、現行五日となつておりますが、これはルールの関係でございます。これを十五日とすることというような意見や、それから先程東京地檢から話がありましたように、請求権者中の利害関係人の意義を明確化することというような意見がございます。  次に、被疑者供述拒否権の告示につきましては、その適用を排除し又は緩和すること。次に、身柄拘束中の被告人又は被疑者弁護人との交通権につきまして立会人を附することができるようにする、或いはその他の方法によつてその弊害を是正することという意見がございます。次に、身柄拘束手続の緩和につきまして、緊急逮捕の要件の緩和でありますとか、或いは準現行犯の場所的及び時間的の要件の緩和というような要望がございます。  それから檢察官の司法警察職員に対する指揮権について、いろいろな意見がありますけれども、その中で一致して要望しておりますところは、檢察官捜査上指揮をする場合には、司法警察職員を拘束している警察法上の管轄の制限を排除して貰いたいということであります。次に、証拠規定の緩和につきまして、これは可なり技術的になりますけれども、いろいろな要望がございます。次に、参考人、証人取調につきまして、現行刑訴第二百二十六條、二百二十七條等の要件を緩和いたしまして、旧刑訴の二百五十五條の強制の処分の請求というような場合と同じようにして貰いたいというような意見や、その他これに関連して同種の希望が出ております。その外の問題になりますところは、捜査上の秘密に保持が一つでありまして、例えば逮捕状によつて逮捕する場合には、逮捕するまで被疑者氏名及び犯罪事実の公表を禁止すること、その他の要望がございます。それから現在平事件をやつております福島地檢からの要望で、証拠に関しまして、多衆被告人の関連事件においては一つ事件証拠はそのまま他の関連事件証拠として援用し得るものとせられたいというのがございます。次に、身柄拘束の場所につきまして、逮捕した被疑者を拘置所にも留置し得るための明文を置いて貰いたい、或いは管内いずれの警察でも捜査上代用監獄として使用し得るような明文を置いて貰いたいというような要望がございます。尚、少年の取扱い或いは必要的弁護の緩和等につきましても若干の要望があるのであります。  大体各檢察廳の要望を取纏めました結果は、このようなことになつております。
  22. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 何かお尋ねになることはありませんか。松村さんよろしいですか……それでは本日はこの程度にして散会いたしまして、明日午前十時から開会いたします。    午後三時九分散会  出席者は左の通り。    委員長     伊藤  修君    委員            齋  武雄君            松村眞一郎君   説明員    法務事務官    (檢務局長)  高橋 一郎君    東京地方檢察廳    檢事      勝田 成治君    國家地方警察本    部警視長    桐山 隆彦君    國家地方警察本    部警視長    秦野  章君    國家地方警察群    馬縣本部刑事部    長       森田信太郎君    警視廳刑事部総    務課長     手柴 佐八君    警視廳捜査第二    課長      松本  彊君    警視廳捜査第三    課長      浦島 正平君