○松井道夫君 内容の御説明を申上げたいと思います。お手許に配付してありまする
司法試驗法案の一部
修正案というものを御覽下さいますれば分るわけでありますが、一応読み上げて見たいと思います。
第十二條中「法務総裁」を「最高
裁判所」に改める。
第十三條第二項を次のように改め、同條第四項中「法務総裁」を「最高
裁判所長官」に改める。
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委員のうち二人は、最高
裁判所事務総長及び法務総裁断房長をも
つて充て、他の
委員の一人は、最高
裁判所が
弁護士のうちから日本
弁護士連合会の推薦に基き任命する。
第十四條第一項、第十五條第一項中「法務総裁」を「最高
裁判所」に改める。
第十五條第三項中「法務総裁」を「最高
裁判所長官」に改める。
第十六條中「法務総裁官房」を「最高
裁判所事務総局」に改める。
附則に次の一項を加える。
5 第十三條第二項中「日本
弁護士連合会」とあるのは、
弁護士法(昭和二十四年
法律第 号)施行の日まで「日本
弁護士会連合会」と読み替えるものとする。
これから理由を申上げます。本法におきまして問題とな
つておりまする点に、この司法試驗の所轄を
法務廳にいたすか、或いは最高
裁判所にいたすかということが論議せられたのであります。最高
裁判所側、
弁護士会連合会側の
意見は最高
裁判所の所轄によるのがよろしいということであり、
法務廳側の御
意見は、
法務廳の所轄にするのがよろしいということにな
つております。よ
つてその双方の理由を檢討いたしまするに、私はどうも最高
裁判所の所轄にするのは正しいと思われる。又それが明白のことのようの存ぜられるのであります。先程
松村委員から、
裁判所法第六十六條の試驗、これはまあ
修正案が
提出されたのでございまするが、その
趣旨といたしまするところは、その御説明にありました
通りでありまするが、要するに司法試驗というものは、これは國家の試驗である。國家の人材を選定する試驗であるという
意味であ
つたかと存ぜられるのであります。ただその司法試驗を一体國家のどの機関の所轄にしたらよろしいかということが問題とな
つておるのであります。御承知の
通り現在國家の人材を選びまする試驗は、國家公務員法によりまして、人事院の施行するところとな
つておるのであります。
法務廳はこの試驗については何らの権限を有しておらないのであります。而して今の司法試驗により選別せられる者は、
將來裁判官、檢察官、
弁護士となる者でありまして、その選別の試驗をどこに置くか、これを
法務廳に置くという何らの根拠はないのであります。
法務廳は現在政府の一行政機関でありまして、司法の系統にありまする試驗をここに置くという必然的な理由は何もない。檢察官を選定いたすのは或いは
法務廳に帰属するということは
考えられるのでありまするが、これに加えまして
弁護士、裁判官を選別いたすという試驗を
法務廳に置くという理由はないと存ずるのであります。その檢察官も又これを司法の範囲に置くか、行政の範囲に置くかと言いますことは
相当問題がありまして、根本的の問題がありまして、確か弁画士会においては、以前からこの檢察というものは
一般行政の方に置かないで司法の方に置くべきだという
議論であ
つたと聞いておりますし、又現在
法務廳の下にありまするが、これとても國家公務員法の附則十三條によりまして、その特異の性格を認められて、
一般の公務員と別個の取扱をすることが認められておるのであります。要するに現在この司法試驗をどこに附属せしめるかということを
考えて参りますると、司法の畑でありまする最高
裁判所の所轄にいたすということが最も必然であるのであります。更にこういうことも
考えて見なければならないのであります。國家公務員法の
改正によりまして
將來裁判所職員は、
將來と申しましても、これはもうちやんと
規定されてありまして、昭和二十六年一杯で
一般職から除かれることにな
つておるのであります。
一般職から除かれるということは、要するに人事院の権限がないということでありまして、その際これらの職員の試驗をどこで行うかということを
考えて見ますると、どうしても
裁判所の職員であり、書記官であるのでありまするから、これを
裁判所の所轄にいたすというより外方法ないのであります。さよう
考えて参りますると、
裁判所に関して何らの司法行政も行な
つていないところの、そういう権限のないところの
法務廳に、ただ
一つこの司法試驗が残ると言いますことは非常な矛盾であります。この司法試驗を
裁判所に置くことにつきましてはいろいろ反対の御
意見もございまするが、その
一つは、これは行政
事務であるからして、これは
裁判所に置いてはならん。
裁判所は裁判だけをやるところだからという
趣旨の御
意見があるのでありまするが、御承知の
通り憲法七十七條によりまして、司法行政の権限は最高
裁判所に賦せられたということにな
つておるのでありまして、それ故にこそ例の司法研習所も
裁判所の所轄とな
つておるのであります。繰返して申しますが、
法務廳は法務行政はやりまするが、戸籍とか、登記とか、
裁判所に関しまする司法行政は一切新刑法によりまして、これを行わないことにな
つておるのであります。でありまするから、これが行政
事務に地方行政の性質を持
つておるからいけない、
裁判所にこれを置くのはいけないという
議論は理由がないと存ずるのであります。又先程も言いましたが、これは試驗とは
純然たる行政
事務と区別するべきものでございましよう。職員の研修でありますとか、又試驗でありますとかいうものは、これは國家の
一つの作用でありまして、それも
純然たる行政
事務とは区別すべきものであるかも知れませんが、少なくとも行政
事務に準ずべきものであると存ずるのであります。人事行政と言いますものは、行政の中で最も重要なものであるのでありまして、その基幹となりまする研修所、更にその又基礎となり基幹とな
つておりまする試驗というものは、これは觀念は別個でありまおるが、密接不可分な
関係がそこに認められるのではないかと存ずるのであります。さような
関係で、行政
事務であるから
裁判所に設置するのはいけないという
議論は理由がないと存ずるのであります。又最高
裁判所は非常に忙しいので、更に司法試驗を所轄したら、裁判官会議ということも兼ねて、本來の裁判
事務に專念することができないのではないかという御懸念の方もあるのでございまするが、併しながらこれは最高
裁判所の方からこの席で御答弁がありましたように、司法試驗は司法試驗管理
委員会というものがありまして、これが管理いたすのでありまして、個々の
裁判所がこれにタツチする
機会というものは殆んどない。このために裁判官会議が特に忙しくなるというようなことは想像できないということを述べたのでありまするが、私もこの司法試験
法案を拜見いたしまして、司法試驗管理
委員会があり、又司法試驗考査
委員会というようなものを置いて運営をして行くのでありまするから、最高
裁判所の言われたことは本当だと存ずるのであります。
次に、いろいろ御
意見がありまして、どうも
裁判所に試驗をやらす、……
裁判所というものはどうも陰氣臭くていけないということもあるのでありまするが、私も同感であります。どうも
裁判所ということになりますと、もともと被告人のような者が出入りをいたしまするので陰氣臭い、從
つてそれに関与いたしまするすべての人が陰氣臭くなるのは、又帰趨の免がれんところかも知れませんが、どうも陰氣臭いところがある。これは全くその
通りでありますが、
將來の
裁判所は國民の基本権を擁護いたすということに最善を盡されまして、朗かに國民から皆親しまれて、朗かに温く指導される
裁判所の空氣も、是非そういう工合になることを切望しておるのであります。どうか純理から申しまして、最高
裁判所の所轄とするのが正しいと信ずるのでありますから、この
法務委員会の昔からの美しい傳統で、純理によりまして解決するという大
方針に則られまして、どうか私の
修正案に御賛成を得たいと存ずるのであります。