○鬼丸義齊君 今日の社会情勢から見まして、
犯罪者の激増、殊に初犯者の激増に対しましては何らかの
方法手段を取るにあらざればいけないことは私共も痛感をいたしておりまして、先に私は青少年に関する青年補導法というものを発議し、提案せんとして努力して参
つたのであります。
関係方面に対しましては二回のOKを取
つて前回の議会において提案し、
審議未了に終
つておりましたとき、たまたまこの
犯罪者予防更生法というのを
政府において
考えられておるから、これによ
つて大体青少年の犯罪、殊に初犯に対する青年補導法の狙いとするところも網羅せられることになるのであるから、これで以て賄い得るのじやなかろうかというようなことでありましたので、私もこれは大変結構な話だと思いまして、今議会に青年補導法の提案を取止めたのであります。ところがさて今日に
なつてこのような
状態にな
つております。
刑法の
改正もなく、そうして又十八歳未滿の者に対する者のみについて本法の対象となるといたしましたならば、私の青年補導法の狙いといたしておりましたものとは全然これは外れてしもう。私はむしろ青年補導法の対象となるべき者は少年法によらざる青年の初犯者をして、何とかこの再犯を犯さしめることなくして更生せしめて、一般の善良なる國民として立たしむるべきことを狙いとしてお
つたのであります。ところがこうな
つて來ますると、全然その方面は逃れてしまう。なくな
つてしまう。一番私が恐れておりますることといたしましては、現に私共扱
つておりまする青年の反則者について、
執行猶予をいたしますることになれば、そのまま身柄を釈放して、手放しに置くことになりますることによ
つて、往々にしてこの猶予期間中再犯を犯す例もある。それからと言
つて、一回の反則によ
つてそのまま体刑に持
つて行くことはこれ又惜しい。一度体刑に入れて前科者となしますることになりますと、もはや犯罪習癖者の卒業免状を貰
つたような、今日の行刑状況では結果しか見られることはできない。故にそうしたものを何とかして救
つて、そうして更生せしろようというのが狙いだ
つたのが、これで見るとすつかり拔けてしまう。若しそういうことでありましたならば、当時
政府におきましても、又
関係方面においても非常に適切なる
法案なりとして当時激励を受けてやりつつあ
つたのが、今度すつかりこれは拔けてしま
つたわけであります。敢えて私はかれこれ
自分の自案を守らんがために言
つている
意味ではありません。併し私はここに
政府の出されました統計によ
つて見ましても、若しこの予防更生法ということによ
つて再犯防止の國家施設となそうとするならば、ひとり
執行猶予のものに限らず、ここの統計によりますると、四十七万二千何ぼという起訴猶予者がある。私はこの資料をまだ頂いておりませんけれども、恐らく起訴猶予者が再犯を犯しまする率といたしましては、非常に大きな高率なものではないだろうかと私は思います。
執行猶予の
取消よりも、むしろ起訴猶予者の方が再犯の数においては驚くべき私は統計にな
つているのではなかろうかと思
つている。そこでこうしたような事実、この今日の社会
状態に即する本当に生きた施設になそうとするには、この面に対しましても私は深く考慮を拂い、何とか適切な
方法をお
考え願わなければならんじやないか。成る程これらの施設をなそうとするには相当な予算を要しまするが、併し戰爭のもたらしましたる結果として、青少年の受けまする被害というものを
考えて見ますと、これはむしろ戰爭ということを仕出かしました跡始末としては当然これは國家の義務として、こうした不良化に直面いたしておりまする者を防止することは、私は戰後の
事務処理の
一つとしても当然なさなければならんことではなかろうかと思う。
從つて予算の二億や五億の問題ではない。かように思
つてお
つたのでありますが、ところがそういう狙いによ
つて当時ルイス博士も頻りにこの面に対しては、
一つ万全の策を以て向はなければならんということで、
政府と研究を重ねられてできました案が今度の予防更生
法案でありまするが、それにしては余り前触ればかりであ
つて、実のない
法案にな
つてしま
つた。殊にこの
刑法の
改正ない限りにおきましては、先程も申上げました通りに、更生
法制定の殆んど対象となるべき大
部分というものが除かれることになりまするならば、全く声の
法案であ
つて、実を掴んでいないというようなことになるのではなかろうかと思うのであります。そこで起訴猶予というものに対する処置並びにこの
執行猶予に該当いたしまする者と雖も、観察に付するという一段進んだ
方法、手段を以てするならば、二十三年度において七万の
執行猶予者があるとするならば、この
制度によ
つて裁判所は必ずやこの新らしき
制度を活用されて七万が十四万、或いは二十万になるんじやなかろうか、こういうふうにも
考えられるのであります。ここで私はこうした当初狙いとされましたる
法案の
提案理由中にもありますることとは、著しき変化が生じて参りましたときには、もう一歩私は退いて、折角のこの案については完全と行かなくとも、せめてもの狙いとするところの大
部分を掲げて、そうしてこの案を活用するということに
政府としてお
考えになる意思なきや否やということをこの際お伺いしたいと思います。尚、ここの統計にありまするこの二十三年度の七万四百二十五人という
執行猶予というものは、これは二十三年の年に言渡しただけでなく、ずつと二十三年中において
執行猶予の処分を受けた者の累計じやないですか。これを
ちよつと、この統計だけじや分りませんから併してお答えを願いたい。尚、
政府の方のお
手許において
從來起訴猶裁に
なつたる者を、それが再犯を犯したという者がどのくらいあるか。又刑の
執行猶予の
取消がここにあ
つたようですが、この起訴猶予に対する場合と
執行猶予の場合との率の比較をお分りな
つておりましたらばお示しを願いたい。勿論起訴猶予の場合には
從來檢察廳の扱いの実際を見ますると、いわゆる廣き
意味においての不起訴、全然罪とならずして不起訴処分にした場合と、それから罪はあるけれども起訴を見合せるというような場合とあるようです。これが一体いつも明確でないのです。それがために本人としては一應の調べは受けたけれども、何にも咎められることなくして終
つたというふうに感じている場合が甚だ多い。これらについても何か適切なる
方法がありやしないか。定めてこの点は御研究に
なつたことと思いまするから、併してこの際伺えるならば仕合せだと思います。