○松井道夫君
質問を通じまして、大体各
委員の政府に対して意図せられておりますところが分明したと存じますけれども、最後に討論の形式で要約して見たいと存ずるのであります。本法即ち出版、新聞新聞係を律する
法律の重大性に
考えまして、これを無
法律状態にいたしますることが甚だ当を得ないということは、これは論ずるまでもないと存ずるのであります。さきに占領軍の命令によりまして、
出版法及び
新聞紙法というものが廃止さるべきものであり、現在その効力を停止せられて、今回その廃止を見るという段取りになりましたことは、もとよりその然るべき
理由があるのでありますが、さきに各議員より指摘されましたごとく、苟くも廃止いたしますならば、新憲法下これに代るべき立派な代案がなければならないのであります。問題になりました覚書の中にも、出版、新聞紙、ラジオ等の
関係で公安に害するようなものを
取締るべき法規を制定することが
日本國政府の
義務である
趣旨のものがあ
つたのであります。もとよりその後種々の覚書が出まして、聊か解釈に苦しむ点がないわけではないのでありまするが、我々は
日本國の國民といたしまして、みずから自主的の判断を以て民主的に、或る行爲が果して公安を害するものなりや否や、決定すべき自主性を取得しなければならない、又そうあるべきなのであります。プレス・コードによりまして、進駐軍の権力の発動を弁々として待
つておるというようなことは甚だ法治國民といたしまして驚くべき、恥ずべきことであると我々
考えるのであります。もとよりさきに政府
委員より指摘されました勅令の第三百十一号と言われましたが、占領
目的を害するような行爲はこれを処罰することができるのでございまするが、これは実にその大まかな
立法でありまして、丁度先きに戰爭時代に軍が中國大陸その他におきまして、軍の
目的を害するというような法三章式のようなものをや
つておりましたものと何んら選ぶところがないのであります。國内法といたしまして、國民にそのよるべきところを示し、その限界を示して、それを超過するものを処罰するとい
つたような法治國の法治國たるゆえんのものを、かくのごとき漠然たるものを以て律して、以て他に対するがごときは我々のとるべきところではないのであります。須らく占領
目的に反するようなことは又勿論といたしまして、そうでないことにいたしましても、先きの
新聞紙法出版法におきましても、棄てるにはおしいような
規定があ
つたのであります。それは政府の方でも認められてお
つて、それ故にこそ廃止にならないで、停止にな
つてお
つたと思うのであります。我々は
國会議員といたしまして、この法案の審議に当ります責任上、この点を問題にいたさざるを得ないのであります。幸い今政府
委員より確たるお約束がございましたので、聊か安堵いたす次第であります。松村議員が適切に指摘されました
通り、
法律を
立案いたしますることは政府のみの責任ではないのであります。
立法府におきましても勿論この
法律を議決いたしまして、
國家の意思表示とするということの以外にこれを
立案いたしますることも亦その職能の
一つであるのであります。三年間も歴代の政府が何もしなか
つたのが怠慢ではないかということは、とりもなおさず又
國会も何もこの点について意をいたさなか
つたのは失態ではないかと言えるのであります。我々は何も政府の責任のみを追及しようとのみ思
つておらない。今日この両
法律が廃止せられるに当りましては、とにもかくにもこれに代るべき立派な
法律が近い
將來に誕生いたすという希望を獲得できたということについてただ満足の意を表するのであります。私はこの
出版法及び新聞令法の廃止に賛成いたしまするものでありまするが、更に政府は次の
國会に
立案、提出せられて、その責任を立派に果されんことをここに願うの共に、又我々もその代るべき立派な
法律を作りますることにおきまして、審議を盡し、又その責任を果すということの決意をここに表明いたしまして、討論の言葉といたしたいと存んずるのであります。