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衆議院法制局参事(
福原忠男君) 私衆議院の法制局第二部長の福原でございます。この
弁護士法の立案に際しましてお手傳いした関係から、
便宜只今委員長の御指名によりまして説明員として説明さして頂きます。逐條的に簡單に申上げたいと思います。
第一條、これはこの度の
弁護士法で新たに挿入しました部分でございます。これは
日本國憲法下における
弁護士の使命というものを特に強張する必要から第一項を設け、更に第二項は、これは從來第二十條で、
弁護士が誠実に職務を行うという点はあつたのでございますが、その誠実に職務を行うことを通じて
社会秩序の維持或いは
法律制度の改善という大目的に邁進するということを明示したものでございます。第二條は、これはやはり
現行法の第二十條に相当するものでございますが、その
弁護士の職務の
根本基準としての心構えを規定したものでございます。これも新らしい條文でございます。第三條は、
現行法第一條を大体踏襲したものでございます。尤もそのうちの訴訟に関する行爲というものに今度は
行政訴訟事件などが加わりましたので、その点明示してあるのでございます。第二項は、これは現在の
弁理士法乃至は
税務代理士法で、
弁護士は弁理士、
税務代理士の事務を登録することによつて行うことができるのでございますが、その登録というような事実をなくして、
弁護士は
弁護士としてそのままこれらの事務を行うことができるということにいたしたのでございます。
第二章は、
弁護士の資格でございますがこれは
現行法と大差はございませんが、これも逐條御説明申します。第四條は
弁護士となる資格の原則を示したものでございます。現在は
日本國民であるという要件をとつておるのでございますが、その点は多少
裁判所法或いは
檢察廰法でその資格を外しておるような関係、或いは
國家公務員法でその点の明示がないというようなところから、これを
弁護士法で特に改めて
日本國民である要件を加えることは如何かと思いますので、これを省いてあるのでございます。第五條は、只今の四條の原則の例外でありまして、これは
現行法の四條と大体考え方を同じうしておるのでございますが、新時代に即して改めたところがあります。先ず第一号は、「
最高裁判所の裁判官の職に在つた者。」とございますが、これらの方には
裁判所法によりまして判事たる資格を有しない方がなり得る地位でございますが、一体
最高裁判所の裁判官という地位にあられたならば、
弁護士となることを当然認めていいじやないかという考え方から新たに設けられた号でございます。第二号は、これは從來もなかつた点なんでございますが、
司法修習生となる資格を得た後
司法事務の根幹である業務に從事した、而もその從事の期間が五年以上もなされたならば
弁護士として職務をとるに十分であろうという考の下に置いたものでございます。第三号は、これは
從來三年以上
帝國大学の
法科大学の教授であられた方に認められた制度なんでございますがこれを拡充いたしまして、別に法律で定めまして、相当の高度の法律学の專攻をされる教授、助教授の方には五年以上在職なすつたならば認めてよろしいであろうというところから、こんなふうに改めたのでございます。四号は、これは二号、三号を兼職されたような場合の
年数通算の技術的な規定でございます。第六條は、これは
現行法の第五條と大体似ているのでございますが、これは第二号において、
彈劾裁判所の罷免の裁判という制度が新たに設けられました関係から、これを設けました。これから三号の
懲戒処分による制限と申しまするのは、これは他の
公認会計士法とか、或いは
弁護士法などにもございますが、それぞれ
懲戒処分を受けますと、
一定期間業務に就くことを制限されている規定がありますので、
弁護士においてもやはり
懲戒処分などを受けた者については、少くとも三年以内は
弁護士の重要な職責を取らせるには不適当であろうという考え方から、新たに置いたものでございます。第七條は
現行法の六條に相当するものでございますが、これは外國の
弁護士となる資格を有する者が日本において
弁護士の事務を取るということの特例を認めたのでございまして、一項においてはその外國の
弁護士となる資格を有する人が、
日本國の法律についても相当の知識を有する場合にほぼ
弁護士と同樣に、三條に規定する全般の事務を行うことができることといたしました。更に若しその方が
日本國の法律について相当な知識を有しない場合は、外國人又は
外國法に関してのみ
法律事務を行わせることができるというようにいたした次第であります。從來は日本人であつて、外國の
弁護士となる資格を有した者に対してはかかる特例は開かれていなかつたのでありますが、第七條においてはそのような人にもその特例が認められるようになりますのが新らしい制度なのでございます。尚この場合の承認については、
最高裁判所が試驗又は選考した上で認めるということとし、而もその承認或いは取消しの場合に
日本弁護士連合会の意見を聽くことを要件といたしておるのでございます。
第三章は、これは大体において
現行制度と似ているのでございますが、ただ
從來法務廰において取扱われました
弁護士の
登録事務というものを、挙げて
日本弁護士連合会に與えたというところが新法の狙いなのでございます。第八條、第九條、第十條、それから第十一條などはそれぞれ
現行法の第七條乃至十一條に相当する規定でございます。第十二條は、これは
弁護士会の
進達拒絶の規定でございまして、この点は
從來弁護士会の秩序若しくは信用を害する虞れのある者というものについてのみかような手続が規定されておるのを、それでは余り抽象的に過ぎるということでありましたので、可なり具体的にこれを掲げるという方針でかような規定ができたものでございます。從來通り
弁護士会の秩序若しくは信用を害する虞れある者については勿論これを含みますが、更に進達を求めた者が心身に故障があるとき、或いはさつき申上げました第六條第三号で、
弁護士であつて除名されたとか、或いは弁理士であ
つて業務を禁止されたとか、
公認会計士であ
つて登録を抹消されたとか、或いは
税務代理士であ
つて許可を取り消されたとか、
公務員であつて免職されたという者は、その処分を受けてから三年までは資格はないのでございますが、三年経つてから請求して來たときにも、尚これを
弁護士として職務を行わせるということが
弁護士事務の重要性から適正を欠く虞れがあると認められたときには進達を拒絶することができるということにいたしたのであります。更に第二項はこれは先に
委員長からも御趣旨の御説明がございました通り、判事、檢事の在職地における
弁護士開業の弊害ということが可成り世間でやかましくなつたのです。又現在においてもその声は多々あるのでございますが、さような
睨み合せから可なりこれは草案においてははつきりした形で、裁判官、檢察官について二年間は少くともその在任地で職務を取らせるということは不都合ではないかという趣旨の規定を置いたのでございますが、又そのような新らしい規定を置くことが
法曹一元化という観点から如何かというような点、更に裁判官、檢察官という表現を置くことも如何かという観点から第二項が出されたのでございます。尚この場合には請求前が一年以内にということに制限し、更にその職務を取らせることが特にその適正を欠く虞れがあるとして、第二号よりは多少條件を加重しておる表現をいたしたのでございます。尚この場合これは
弁護士としての資格のある者が
弁護士として開業することを現実としては拒否することになりますので、極めて大切な手続でございますので、これに対しては進達を受ける方からの
保護規定を置くことが是非とも必要だと考えられます。さような見地からかような登録の請求の進達を拒絶するという場合には、これは後に申上げますが、
資格審査会の議決を経ることを要件としております。尚この
資格審査会はその公正を可なり考慮いたしましてできておる
委員会でございます。更に又その
資格審査会の議決を経て、かような適正を欠くかどうかということの審査をする場合には後の五十五條において特別に
手続規定を設けております。更に又そのように登録又は登録換の請求をした者に対して進達を拒絶する場合は、速かにその旨を通知するという
保護規定を第三項に置いたわけでございます。第十三條は、
現行法の十二條にほぼ似た考え方でございますが、この度の第十二條で第一項、第二項において特殊の
進達拒絶の事項を掲げた観点から、この点について若し進達を求めた者、
請求者が虚僞の申告をしていた場合の考慮をする必要がございますので、十三條を特に設け、
登録取消の請求を
弁護士会がするという新らしい規定を設けた次第でございます。第十四條は、第十二條において進達の拒絶をされた者に対する
保護規定でございまして、その要は先ず
日本弁護士連合会に対して異議の申立をする、更に第二項においては
弁護士会において進達を認められて後三ケ月を経ても尚何らの手続しない場合は、
請求者としては大変迷惑のことでございますので、その場合の処置として
請求者はこれは進達の拒絶をされたものとみなして異議の申立ができるという
保護規定を設けたのであります。かような異議の申立がありますと、第三項において
日本弁護士連合会が適当に審査をいたしまして、それぞれ適当に進達を命ずるとか或いは
登録取消の請求を差戻すとか、又は場合によつてはその申立に理由がないと認めれば棄却するという
手続規定を置いたのでございます。第十五條は、今度は
弁護士会が進達をした分について、
日本弁護士連合会がこれを拒絶するという旨を規定してあります。そうして十六條では、かように
日本弁護士連合会がいたしました処分について尚不服である場合には、その処分を違法又は
不当理由として、
東京高等裁判所に訴を提起ることができるという最後の保護の規定まで設けたのでございます。この場合
高等裁判所に訴を提起することに限定いたしましたのは、これは
日本弁護士連合会が常に被告人となる第三項の規定と相俟ちまして、
東京高等裁判所にいたしましたことと事柄が相当重要な事項でございまするし、更に全國的に統一するという必要もございますので、これを一つの
裁判所の
專属管轄にいたした次第でございます。尚この訴訟は本質としては行政訴訟的のものと考えられますので、
行政訴訟特例法に
倣つて必要規定をこの十六條の三項乃至六項に規定いたした次第でございます。第十七條は、
登録取消の事由を列挙いたしましたが、これは
現行法と殆んど違いありません。ただ
國籍喪失の場合を除いたのでありますが、これは先程の第四條のとこに申上げた理由から削除したのでございます。第十八條は、
名簿登録取消の場合の
必要規定を設け、更に十九條においては、これを官報を以て公告するというふうにいたしたのでございます。
第四章の
弁護士の権利及び義務については、これは
現行法の第十八條以下とほぼ似ておるのでございまして、
違つた点だけ申上げます。第十二條で、特に今までは
弁護士の事務所というもので表現しておつたものを、特にこの法律で後に述べます
法律事務取扱の取締に関する法律を吸收した関係から、新たに
法律事務所という制度を置いて、
法律事務所というものを法定の名称といたしたのでございます。尚第二十一條以下で、これは御説明申すまでもないことだと思いますが、
監督権を
法律総裁から
日本弁護士連合会に引継ぎました関係から、それぞれの監督的な規定の場合に
日本弁護士連合会というものが出てきておる次第でございます。第二十五條も、これも
現行法の二十四條に相当する規定でございますが、その中に第三号だけは、これは新らしく入れた規定でございます。これも
弁護士の職責の公正さを維持するため入れたものでございます。第二十六條、第二十七條、これは新たに挿入した條文でございます。これはやはり
弁護士の職責の重要性に鑑みまして、その公正を維持するというところからその趣旨で入れたものでございます。最後に、第三十條の規定は、これも
現行法第二十七條と照合するものでございます。ただ違う点は
弁護士が從來は報酬ある公職を兼ねることができない、但し國会又は
地方公共團体の議会の議員その他官公署から特定の事項について嘱託された場合を例外としたのでございますが、
弁護士の職責が法律家としてますます各方面に
需要要求がありますし、且つ又
專門的知識によつて國家的な各方面に進出するということが望ましいという観点から、併しながら又一面あらゆる
公務員というものに就職することを認めれば、これは
公務員というものが無定量の
勤務義務を持つということと牴触するものがありますので、そのために常時勤務を要しない
公務員ならば、各般の委員とか顧問という形の
公務員であるならば、これを兼ねることができるというようにして、
弁護士の
活動範囲を拡めた次第でございます。
第五章は、
弁護士会の規定でございますが、これも
現行法と大体において似ております。その目的などは從來通りでございますが、これを第三十一條第一項で明示した次第でございます。第三十二條、第三十三條は特に申上げるところもないと思いますが、第三十四條は、これは新らしく設けました條文でございまして、
弁護士会は法人でありまして、
公法人的色彩を非常に持つておるので、これに対して、登記を必要とするということは如何かという説も成立つかと思うのでありますが、
弁護士会が從來に増していろいろな面で活動いたしますし、更に先程
弁護士会の
進達拒絶云々というような問題もありまして、
弁護士会の対外的な地位を確立させて置く必要があるというところから、この
登記制度を認めたのでございます。第三十五條、これは
弁護士会の会長を代表者とする規定でありまして、
現行法にもあるのでございますが、二項と三項について、特に明文を設けたのは、会長、副会長の職責が公務に從事する職員として極めて保護されると共に、その責務が加重されるということになる次第でございます。三十六條以下四十四條までは特段申上げることはございません。大体
現行法通りでございます。
第六章において
日本弁護士連合会の規定を置きました。これは全條新條文でございます。
弁護士の事務について、これをいわゆる官僚的な監督下に置くか、それとも
自治統制として制度をとるかということが基本的な問題でございますが、この法案で後の
自治統制をとるという形をとつておりまして、その
自治統制の
中央機関として
日本弁護士連合会というものを設けておるのでございます。第四十五條は、その設立の仕方、それからその目的、そうしてその法人としての人格が與えられておるということを明示したのでございます。そうして会則についてはこれは大体各地の
弁護士会と同様であつて、必要なものを列挙いたしたのでございます。そうしてその本日
弁護士連合会の会員というものは、四十七條において、各
弁護士と、それから
弁護士会というものが当然にこの会員になるということを明示いたしました。そうして四十八條では、
日本弁護士連合会の職責と
睨み合せまして、その
弁護士或いは
弁護士会の指導は、連絡、
監督事務について官公署その他に必要な
調査依頼の権限があるということを規定し、更に第四十九條では、これと対照的に
最高裁判所が必要と認める場合に、
日本弁護士連合会を通じて、その
弁護士或いは
弁護士会に関する調査をするとか、或いは
弁護士連合会そのものの行う事務についても報告を求められるということを規定したのでございます。それから五十條は、
弁護士会の中で必要な規定を準用しておるのでございます。
第七章の
資格審査会は、これ又全條新設條文でございます。これは
弁護士の
登録制度と相俟つて、登録をせしむる際の進達を各地の
弁護士会はいたしまするし、更に
日本弁護士連合会は
登録事務を取扱いますので、ここにおいて登録を拒絶するとか、進達を拒絶するという場合に、
必要機関としてこの
資格審査会を置いたのでございます。この
資格審査会は第五十二條においてその組織を明示してありまするが、会長には当然
弁護士会或いは
日本弁護士連合会の会長があることといたしまして、委員にはこれは
弁護士、裁判官と檢察官と、それから
学識経驗者の中から会長が委嘱することにいたしたのでございます。即ち委員には四種類あるわけですが、そのうち
弁護士と、それから
学職経驗者の委員は、これはその
弁護士会或いは
日本弁護士連合会の総会の決議で推薦いたしまするし、裁判官については、これは
高等裁判所若しくは地方
裁判所の推薦、或いは
日本弁護士連合会においては
最高裁判所の推薦ということにいたしました。檢察官についてはこれと照合いたしまして、
高等檢察廳の檢事長或いは
地方檢察廳の檢事正の推薦或いは
日本弁護士連合会につきましては
檢事総長の推薦したもの、それを土台として会長が委嘱するという形式をとりました。尚五十三條は、この
審査会の仕事が非常に重要なものでございますので、
予備委員を置き、更に
予備委員の構成も正委員と同じにいたして、
弁護士、檢察官、
学識経驗者からそれぞれの関係筋の推薦に基いて、或いは総会の決議に基いて選任するということにいたしました。第五十四條は、会長と或いは委員、
予備委員の地位、職責を規定したものでございます。第五十五條は、その
資格審査会が
弁護士の
自治統制機関としての最尖端の重要事務を行う関係から、審査に関して必要がありますならば適宜当事者、関係人は勿論、官公署その他に対しても陳述を求め、或いは説明を求め、資料の提出を求めるということができることを明記したのでございます。そうして第二項においては、これはそのような
資格審査会の審査によ
つて登録或いは登録の申立の拒絶というような大きな事柄が行われますので、これの
請求者に対して保護をする、余め保護の規定を置く必要がございますので、第二項においてはそれらの者に対しては、若し登録の請求を拒絶するとか、申立を拒絶するとか、或いは
登録取消の請求を可とする議決をいたします前に当事者に通知して、その当事者がそれに対しての弁明をする機会を與えようというのでございます。
第八章の懲戒は、これは大体現在の制度によつたものでございますが、現在までは懲戒
裁判所というものを控訴院の中へ設けていたのでございますが、控訴院の制度がなくなつてからは空文になつているかと思いますが、これはその考え方を大体土台にいたしましたが、これも
弁護士会自治の原則から、懲戒も他の機関に委ねるということは如何かと思われますので、これも自律的にみずから
弁護士会或いは
日本弁護士連合会がこれを一時的にするということの精神で規定したものでございます。そうしてこの
弁護士会或いは
日本弁護士連合会がいたすのでございますが、その場合には
弁護士会にあつても、それぞれ
弁護士会或いは
日本弁護士連合会に設置されてあります
懲戒委員会の議決を土台としてこれを行うことを明示したのでございます。先ず第五十六條で、懲戒権は第一次的にはその
弁護士の所属の
弁護士会が持つておるということを規定し、第五十七條では懲戒の種類を四種類といたしてあります。これは從來過料の規定がありましたが、これは國家機関でない関係から、これを課することが如何かというので除きまして、それに代つて退会命令を入れました。五十七條三号の退会命令というのはこれは新らしい制度であつて、從來の十二條の退会命令というものとほぼ似た制度をここに設けておるわけでございます。第五十八條は、これは
弁護士の職務が公務に準ずるような性質から、廣く一般に
弁護士の事務について懲戒の理由があるということを知悉した者は、何人でもこれが懲戒の請求ができるということを規定したのでございます。尤もこれは
委員長の御説明にもありました通り、日本の現状においては或いは濫用されるんではないかという虞れも十分ございますので、かような懲戒の請求がありました場合に、直ちに
懲戒委員会に付するということは行過ぎであろうというところから、第二項においては綱紀
委員会で一種の下調べと申しますか、調査をさせるということにいたしました。この綱紀
委員会というのは、後に述べます
懲戒委員会が大体さつきの審査
委員会と同樣に、極めて嚴格な組織の下にあるのと対比いたしまして、綱紀
委員会はこれは
弁護士会の会員相互の間から選任するという、いわば仲間うちのことを仲間うちで先ず調査しようという考えから綱紀
委員会というものができておるのでございます。そうしてこの綱紀
委員会で調査いたしまして、その上で請求があつたというようなものについて、やはりこれは懲戒することが相当だと認められた場合に初めて
懲戒委員会にかけるというふうにいたしたのでございます。第五十九條では、かような手続をして懲戒を受けた者について尚異議があれば、
日本弁護士連合会に異議の申立ができる、そういうことを規定し、
日本弁護士連合会では
懲戒委員会の議決に基いて、これに若し申立ての理由があれば処分を取消す、若し理由がないということになれば棄却するということにいたしたのでございます。更に第六十條で、
日本弁護士連合会においてみずから懲戒するということの権限を認めました。これは場合によつては各地の
弁護士会で殊更に懲戒に値するような
弁護士についてその処分権を発動しないというような場合を慮つての規定なんでございます。第六十一條は、
日本弁護士連合会がみずからした懲戒、或いは
弁護士会が懲戒した者について異議の申立てがあり、それに対して
日本弁護士連合会がこれを棄却したというような場合、それは棄却した場合にこれは
高等裁判所に出訴することができるという規定を六十二條に置いてあるのでございます。併しこれと対蹠的に、今度は懲戒の請求をした者、即ち五十八條で何人も
弁護士について懲戒の請求をすることができるのでございますが、この請求したにも拘わらず、
弁護士会がこれに相当する手続をしないというような場合には、
日本弁護士連合会にその懲戒を請求した者から異議の申立をすることができることにし、更に又
弁護士会の懲戒の処分が不当に軽いというときも亦
日本弁護士連合会に異議の申立をすることができるということにいたしました。この六十一條は五十八條の規定の趣旨を徹底させたものであります。尚六十三條、六十四條は
現行法にも同樣の趣旨の規定があるわけでございます。
第九章の
懲戒委員会及び綱紀
委員会は、かような懲戒の重要な職責を
弁護士会或いは
日本弁護士連合会が誤まりなく執行できるために設けられた制度なんでございまして、
懲戒委員会の組織は、これは大体において
資格審査会を全く準用しておるのであります。それから第六十七條では、
懲戒委員会の審査手続について規定を置いてありまして、この場合の懲戒を受ける
弁護士については、十分に陳述をする機会を與えなければならない旨の
保護規定を置いたのでございます。第六十八條は、これは判事懲戒法の五十四條などにもございます通り、懲戒が刑事手続と同時に進行しておるような場合には、刑事手続を先に進める方がいいと認められる場合は、懲戒の手続の方を中止して置くことができるという便宜規定であります。第六十九條では、この
懲戒委員会の組織等を
資格審査会の組織と全く同じにするための準用規定を設けたのでございます。第七十條と七十一條は、綱紀
委員会についての規定でございます。第七十條では、綱紀
委員会は、前に申しました
資格審査会或いは懲戒委員というものが、いわば
弁護士としては外部の裁判官、檢察官或いは
学識経驗者が加わるということと対比いたしまして、
弁護士会の会員みずからの互選でこの綱紀
委員会を構成するということが、第七十條の、今までの
委員会と異るところでございます。第七十一條では、この性質と相反しない限り、從前のこの
資格審査会の規定を準用する旨の規定を置いたのでございます。
第十章は、これは現在の
法律事務取扱の取締に関することを、この法律の第九十二條、末条で以て廃止いたしますが、これと同じ内容のものを第十章に盛り込んだのでございます。
第十一章は、罰則の規定でございます。このうち新たに設けられたものは第七十五條、それから第七十六條、第七十八條でございます。第七十五條は、
弁護士の公の信用ということを確保する必要がございますので、
弁護士となる資格を有しない者が、その資格について虚僞の申告をして登録されたというような場合には、これを嚴重に処分するという趣旨から置いたのでございます。尚これはに未遂罪を罰する規定を置きました。第七十六条は、これは
弁護士としては、官公吏のいわば涜職の規定と似ておるのでございますが、受任されておる事件の相手方から利益を受けたり、要求したり、又は約束をするということが、
弁護士の高い使命に鑑みて極めて排斥すべき行爲なのでございますので、これを重く処分することにいたしたのでございます。それから第七十七條では、二十七條、二十八條で、非
弁護士、
弁護士でない人を
弁護士が利用するとか、或いは係爭権利を讓り受けて、そうして事件を起すというようなことに対する取締りをする意味で、二十七條、二十八條に対する刑を加え、更に從前ありました七十二條、七十三條の規定の罰則を設けたのでございます。それから第七十八條は、これは例の両罰規定でございます。若し一定の使用人を使つてかような罰則行爲がありましたら、これについてその法人或いはその人までも処分をするという規定であります。それから第七十九條、これはやはり從前ありましたものをそのまま踏襲したのであります。尚この罰則については、從來七十七條については、「一年以下の禁錮又は千円以下の罰金」となつておりましたのを、「二年以下の懲役又は五万円以下の罰金」とし、更に七十九條の規定が、從來「千円以下の罰金」であつたのを、「五万円以下の罰金」にしましたのは、ほぼ刑法について罰金等臨時措置法により五十倍の罰金額といたしたことと
睨み合せまして、罰金額につき上げ、更にこれと照合する意味で、懲役刑についても多少の年限の延長を認めたわけであります。
それから附則は、これは大体において経過規定でございまして、それぞれ現行
弁護士法からこの法律に乘り移るまでの間における
必要規定を網羅したものでございます。そうして大体申上げますと、第八十條は、この法律を今年の九月一日から施行するということにいたしました。第八十一條では、從前の
弁護士の資格ある者は、全部的にこの法律においても
弁護士としての資格を持つということを明示したものでございます。それから第八十二條は、現在
弁護士試補である人についての特例を設け、この方々も勿論
弁護士として將來活動できるということを明示したのでございます。それから第八十三條は、これは第六條でいろいろと
弁護士の欠格事由を挙げましたが、この中ではそれぞれ新らしく最近に作られた法律の制度を掲げておりますが、それと照合する從來の
懲戒処分がございますので、それの一種の読替規定のようなものを置いたのでございます。即ち
公認会計士法の前身である経理士法においてやはり懲戒された者であるとか、或いは
國家公務員法で以て
公務員としての免職の
懲戒処分を受けた者は、從前の官吏懲戒令によつて免官の処分を受けた者とみなすというのがその趣旨でございます。それから八十四條から八十七條までは、
弁護士名簿その他が從前の法務総裁から
日本弁護士連合会に引継がれる関係から、必要なことを拾い上げておるのでございます。先ず
弁護士名簿の登録というものは変るわけですが、旧法ですでに
弁護士名簿に登録されておる方々については、又改めてこの法律で手続きをとるという煩瑣なことを避けまして、さつき申した八十一條で、当然從前の
弁護士の資格ある方は、新法においても
弁護士として活動できることなのでございますので、そのままこの法律による
弁護士名簿登録とみなし、そうして八十七條で、その
弁護士名簿等は從前法務府に備えられておりましたものを、
日本弁護士連合会の方に引継ぐことにいたしました。更に丁度この法律と乘移る頃に法務総裁に登録又は登録換の請求をしていたような者は、これは
日本弁護士連合会の方にその請求の進達があつたというように八十五條で決め、更に又從前の
弁護士の事務所をこの法律による
法律事務所であるということにしたのであります。それから八十八條は、これは現在ございます弁護会というものを、そのまま新法の
弁護士会とし、そうして現在ございます
弁護士会連合会の中で同じ
高等裁判所の管轄区域内の
弁護士会連合会ならば、これをこの法律による
弁護士会連合会と見るということにします。尚それに関連する必要な登記その他の規定を置きます。それから第八十九條は、この法律では第三十二條で一地方
裁判所区域に一
弁護士会という原則を掲げておるのでございますが、現在かような一地方
裁判所区域内に、特殊の事情に基きまして、二個の
弁護士会の存在するところがございますので、それでは從來の沿革と実績等を尊重いたしまして、そのままこれを存続させるということに第八十九條で認めたのでございます。尤もそのことはやはり第三十二條の原則から言えば例外的の措置なんでございますので、今若しかような二個以上の
弁護士会が將來合併或いは解散するという事態になるような情勢になりますれば、いつ何時でも三十二條の精神に則つて、合併又は解散することができるということを二項、三項で謳つたのでございます。それから九十條は、先程から申しましたように、法務総裁の從來取つております
弁護士に関する諸般の事務を
日本弁護士連合会が一手に引受けるという画期的な
連合会の設立というものが考えられるのでありますが、さような場合この九月一日に直ちに発足するということについては極めて時間的に困難と考えられますので、八十條でこの九月一日から施行するということの以前において、すでに準備手続を直ちに開始することができるような配慮から、九十條を設けたのでございます。それから第九十一條は、これは終戰後の特殊の事情から、外地から戻られた方などの
弁護士或いは
弁護士試補の資格の特例の法律がございますので、それを從前の通りこの法律がありましても生かして置くという規定でございます。尤もその法律の中に
資格審査委員会というものがありまして、そこでその審査することになつておるのですが、これは丁度
日本弁護士連合会の
資格審査会が行われることが最も妥当と考えますので、それに乘り移らしてあるのであります。それから九十二條は、さつき申上げました
法律事務取扱の取締に関する法律は廃止する規定を明示したのであります。それの違反事項については從前通り、この法律廃止後も從前の規定について刑罰を科することができるということを明示したのでございます。非常に簡略にお話し申上げたので、十分この趣旨の徹底しなかつたところがございますと思いますので、御質問に應じまして適宜お答え申上げたいと思います。