○
政府委員(
岡咲恕一君) 司法試驗法につきましては、
提案理由で概要御
説明申上げましたのでございまするが、
簡單に
法案の
内容について逐條御
説明を申上げたいと存じます。第
一條は司法試驗の性格を
規定いたした
規定でございまして、この司法試驗は、
法律專門家として必要な学識及び應用能力を有するかどうかを判定することを
目的といたすのでございます。そうして、この司法試驗に合格いたしました者は、先程の
裁判所法等の一部を
改正する
法律案で申上げました
ように、司法修習生になる資格の
一つを備えていることになるのでございます。即ちこの司法試驗に合格した者のうちから最高
裁判所が適当と思われる者を司法修習生に採用せられるわけでございます。そして
裁判所法の六十六條の二項におきまして、前項の試驗に関する
事項は、別に
法律で定めるとな
つておりまして、その別に
法律で定める。その
法律がこの本法に当るわけでございます。でその
趣旨が第
一條の二項に示されている次第でございます。この試驗の性格につきましては提案いたしました法務廳といたしましては、
一つの資格試驗であると、か
ように考えまして、第
一條の
規定を掲げたのでございまするが、この点につきましては、最高
裁判所におかれましては
見解を異にせられまして、むしろこの試驗は司法研修所への入所資格を檢定する試驗である、言い換えれば司法修習生として採用されることが主たる
目的である試驗である、か
ようにお考えになりまして、この試驗の性格に関しまして
裁判所と完全に
意見の一致を見られなか
つたことを遺憾といたしておるのでございます。
第
二條以下第六條まではこの試驗の
内容につきまして
規定を設けたのでございまして、司法試驗を分ちまして、第一次試驗と第二次試驗とにいたしております。第一次試驗は、第二季試驗を受けるのに相当な教養と一般的学力を有するかどうかを判定することは
目的といたしており、第二次試驗は、
法律專門家として必要な学識及び應用能力を有するかどうかを判定することを
目的といたすものでございます。そうして第一次試驗におきましては、受驗資格というものを全然
規定いたしませんで、関人でも第一次試驗を受けることができるという
建前を取
つておるのでございます。そうしてその第一次試驗の、試驗の
方法及びその試驗の
内容につきましては、
方法につきましてはこの司法試驗の管理を、司法試驗管理
委員会というもので行わせることにな
つておりますが、その管理
委員会でその試驗の
方法につきましては詳細な現定を規則で定めるということにいたしておりまして、この試驗の
内容とその根本的な点に関しましてのみ本法に
規定を設けてある次第でございます。即ち第一次試驗は学校教育法に定める大学卒業
程度におきまして、一般教養科目について筆記の
方法によ
つてこれを行うと、か
ように定めたのでございます。学校教育法に定める大学卒業
程度という表現が一見事明瞭を欠く
ようでございまするが、これはお手許にお配りいたしておりまするこの大学基準協会において檢討されました大学基準によりまして、一般教養科目として大学において履修いたしまする科目は、
参考資料の第二基準抄と書いてございまするが、人文科学
関係、社会科学
関係、自然科学
関係と相当廣範囲に亘る科目を履修いたすことにな
つておりまして、この教育を終りました
程度においてこれを試驗するということにいたしておる次第でございます。
現実の試驗の
やり方でございまするが、その点につきましては、人事院おきまして、公務員の採用試驗をせられました例もありますので、その成績、試驗の結果も承わりまして参酌いたしておるのでございまするが、將來いずれそれは試驗管理
委員会において細かく
方法を
規定せられるかと存じまするが、私共の考えておりまするところでは、細かい学科につきまして、一々いわゆる学術試驗をやるというふうな試驗はいたしませんで、この教養が受驗生の身についておるかどうかということを判定いたしまする
程度におきまして、本年度行われました人事院の公務員の採用試驗に近い
ような試驗が実施されるであろうと、か
ように予想いたしております。それから店一次の試驗の
目的が
只今申しました
ようなものであります
関係上、学校教育法に定める大学においてこの一般教養科目の学習を終
つた者、その他これに準ずべき者につきまして第一村試驗を免除するということは当然と考えまして、第四條にその第一次試驗を免除せられる者の範囲を
規定いたした次第でございます。これは今申上げました
ように、大学におきまして一般教養科目の学習を終
つた者、それから次にこれは経過的な
規定でございまするが、旧高等学校令による高等学校高等科、旧大学令による大学予科又は旧專門学校令による專門学校を卒業し、又は修了した者にもこの特典を與える。それから旧高等試驗令に定める予備試驗に合確した者、又はその免除を受けておる者、それから更に高等試驗管理
委員会の定めるところによりまして、
只今申しました試驗の免除を受けておる者と同等以上の教養と一般的学力を有するものと認められておる者、そういう者にはこの第一次試驗を免除することにいたしておるのでございます。
それから第二次試驗の
方法と試驗科目でございまするが、試驗科目につきましては、これを第六條の
規定がございまして、
憲法、民法、刑法、民事訴訟法、刑事訴訟法、これは必須科目必ず試驗いたさなければならない科目といたしました。それから商法、或いは行政料はこれはいずれも重要な科目でございまするが、甚だ試驗の範囲が廣い
関係もございまするし、いろいろ研究の結果先ず一科目を予め受驗生をして選択せしめるということにいたしたのでございます。それから更に商法、行政法の中で選択しなか
つた科目、それから破産法、労働法、國際私法、刑事政策、その中から受驗者の選ぶ科目について受驗せしめると、か
ようにいたしたのでございます。
試驗の
方法は筆記試驗と、それから口述試驗でございまして、これは口述試驗の方の学科目は
憲法、民法、刑法、民事訴訟法、刑事訴訟法の五科目について行うことにいたしたのであります。筆記試驗、口述試驗の
やり方につきましては大体從前の高等試驗の司法官試驗の例によるであろうと考えております。この
法案におきまして特に重要と考えまするのは、從前の高等試驗は
内閣におきましてこれを管理いたしまして、法制局長官が試驗
委員長にな
つてお
つたのでございまするが、試驗の成るべく公平な
やり方を保証いたします
建前から、司法試驗管理
委員会というものを設けまして、この管理
委員会をして試驗の事務を管理いたさせることにいたしたのであります。その管理
委員会は
法務総裁官房長、最高
裁判所事務総長と更に弁護士の中から弁護士会の推薦によ
つて法務総裁が任命いたしまする
委員、この三名によ
つて構成されました司法試驗管理
委員会において管理いたさせることにいたしたのでございます。そうしてこの司法試驗の試驗を
現実にいたします
機関といたしましては、司法試驗考査
委員というものをぢけましてこの考査
委員が試驗に当り、その考査
委員の合議によりまして司法試驗の合格者を定めるということにいたしたのでございます。そうしてその司法試驗の考査
委員の数は試驗科目一科目につきまして四人を起えてはならない、四人の範囲におきまして試驗
委員を、その考査
委員を選びまして、考査
委員をして試驗を直接に行わしめるということにいたしたのでございます。この司法考査
委員は
法務総裁が司法試驗管理
委員会の推薦に基いて試驗ごとに任命いたすことにいたしたのでございます。司法試驗の
委員会の庶務はこれは
法務総裁の官房において掌ることにいたしました。尚司法試驗の施行に必要ないろいろな細則を定めなければならないと思いまするが、これは司法試驗管理
委員会が規則を定めてその規則によ
つて行うということにいたしたのでございます。この
法案によりますると、この司法試驗を管理いたしまする司法試驗管理
委員会は
法務総裁の所轄に属するということにいたしたのでございます。この点は
政府といたしましては、第
一條のこの試驗の性格を申上げました
ように、これは
法律專門家として必要な学識及び應用能力を在するかどうかということを判断するところの國家試驗である、非常な廣い意味における
一つの資格試驗であると考えましたので、その性質はむしろ一般行政事務に属するであろう。そういたしますると、行政権を行いまする
政府の所管にいたすのが相当である。而も
政府の中のどの
機関をして行わしむるかと考えますと、法務を統轄しておるところの
法務総裁の所轄に属せしめるのが最も適当である、か
ように考えまして、司法
委員会の所轄を
法務総裁といたし、從いまして若し問題がある
ような場合には、
法務総裁或いは
内閣が國家に対して責任を負うと、その責任の帰属
関係を明瞭にいたした次第でございますが、この点につきましては最高
裁判所におかれましては、むしろこの試驗に合格した者の大多数は司法修習生として司法研修所に入所するのである。然るに司法研修所は
裁判所の管理を属しておる
関係上、むしろこの試驗を最高
裁判所が管理されることが、この試驗の運用なりその他の点においても極めて妥当であり合
目的的である、か
ような御
意見でございまして、最高
裁判所とこの試驗の管理の点につきまして試驗管理
委員会の所轄につきまして、
意見の一致を見なか
つた点は、又私共といたしましては遺憾といたしておる点でございます。でこれは
関係方面におきましても甚だ重要な関心をお持ちでございまするが、この最高
裁判所と
意見の一致を見なか
つた点につきましては、
國会におかれましても十分御檢討頂き、
國会において最も適当とお考えになります
ように御決定になることを、
政府といたしましても希望いたす次第でございます。
それから附則の点でございまするが、これまでしばしば受驗生から最高
裁判所或いは法務廳に、今年度の試驗のことについていろいろ
質問を受けておる
ような事態にあり、且つ試驗施行の期間を差し迫
つております
関係上、便宜特例を認めまして、
昭和二十四年度に限り、この第一次試驗は旧高等試驗令による高等試驗の予備試驗の例によ
つて行うことといたしたのでございます。それから昨年度に行われました高等試驗司法科試驗の筆記試驗に合格した者につきましては、その願によりまして、最初に行われる司法試驗の筆記試驗を免除するということにいたしております。
簡單でございまするが、以上を以て
法案の
説明を終ります。