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1949-07-29 第5回国会 参議院 法務委員会 閉会後第9号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十四年七月二十九日(金曜日)    午前十一時三十二分開会   —————————————   本日の会議に付した事件檢察及び裁判運営等に関する調査  の件(橋本金二事件集團的暴力行  爲の件、青少年犯罪防止の件) ○小委員会設置の件(二件)   —————————————
  2. 伊藤修

    委員長伊藤修君) これより法務委員会を開きます。最初大野君より発言を求められておりますから……
  3. 大野幸一

    大野幸一君 私は法務府の方に御調査を願いたいことをここに申上げます。  五月三十日午後八時頃、例の東京都の公安條例が上程された際、橋本金二君が墜落するとともに、警察官によつて頭部と首と下腹、左腹背部等を蹴られた、これによつて死の結果を生じたという事実があります。これについては未だ調査が迅速に行つていないようであります。ともすれば労働組合その他労働運動者関係から、労働者が官憲の不法行爲によつて死を生じた場合と、下山事件の総裁が、それも自殺か他殺か分らないにも拘わらず莫大なる國費を以て調査をしておることと対照すると、飽くまでも日本のまだ警察官及び警察界の人々は人権を平等に取り扱つておるのではないのであつて労働者に対しては甚だ不親切である、こういう非難を浴びておる今日におきまして、新民主主義國においては飽くまでも一人の権利、死を伴つた一人の権利は平等でなければならん、こういう意味おきまして、これに対する警察官捜査の迅速を求める者であります。ともすれば捜査中であるということで答弁を避けられるかも分りませんが、然らば下山事件その他の事件については相当鑑定の結果を公評せられておる、然るに本件について橋本金二君の死体解剖の結果については殊更にそれを隠蔽されるがごときように感じたという労働組合からの報告を受けました。その鑑定の一部を見ましても、その死は肝臓破裂によつて生じたということは明らかであります。この肝臓破裂は多数の間に揉み合つておる混雜中であつたために、その肝臓破裂するというよう可能性は少い、三四間の高所から落下した場合に肝臓破裂が起り得るが、本件はそのために生じたという確証がない、こういうことになつております。而も蹴られたとか踏みつけられたことの事実があればこれによる肝臓破裂が生じたと考えることが可能である。むしろこの鑑定の要旨を率直に素直に解釈するならば、何者かによつて蹴られたために、特に左腹背部を蹴られたために肝臓破裂したというように解釈するのが素直な解釈であるに拘われず、その後何らの檢察廳の動きがない。こういうことは下山事件と同樣、労働者の死に対しても公平に迅速に社会の不安を除却するようにされたいということであります。こういうことを私は希望し、尚この点についてできる限りの捜査経過、それは下山事件について檢察当局が発表せられると同じ程度捜査経過を、私は次期委員会において御答弁せられんことをお願いして置く次第であります。
  4. 横井大三

    説明員横井大三君) 檢察局の横井でございます。只今突然の御質問でございまして、私所管外で現在どの程度捜査が行われておるかという点につきましては。不幸にして存じませんので、後ほど帰りまして調査の上、然るべくお答えしたいと存じます。   —————————————
  5. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 次にお諮りいたしたいことがあります。御承知通り委員会におきましては、昨年來、暴力行爲に関する調査を続行して参つたのでありますが、その結果ここにありますがごとく、全國の暴力團実態というものが大体において把握できたのです。まだ詳細に調査すべき数個の事件が残されてはおりますが、ここに挙げられたもののみを数えましても、数千件に上るところ暴力團実態であるのです。これらのものが、例えば一例を取りますれば、私らがこの度九州において調査いたしました事案にこれを取りましても、荻島喬一家龍清治一家との出入りでありますが、このごときは常に両者が確執しておつて、遂に荻島一家龍一家を暗殺する計画を立てまして、或る日これを子分をして遂に暗殺したのでありますが、その後龍一家におきましては、勿論これを荻島一家計画に基くものである。かように固く信じておる結果、龍一家には九州一円の親分連中がこれにいわゆる「すけつと」と申しまして、應援に参つて、続々と柳同時に入り込み、日夜この荻島喬行動を監視して、これを時あれば暗殺しよう計画しておつたのです。その実情はこれらの九州一円から集まつところの者が二、三人ずつ隊を組んで、而も凶器を公然と携滯いたしまして、市中到る所彷徨して、荻島一家行動を監視し、その身内の者がありとすれば直ちに捕えてこれに対して暴行をしよう、若くはこれを殺害しようと企てておる。狙うところの者は荻島親分であるというので荻島の所在を追求しておつた。かような状況でして、町民は全く不安な状態に置かれ、商賣をもなし得ない。時たまたま花見時であつて九州で有名な櫻の名所であるそうでありますが、いつもならば賑うべきところ花見の祭においてすら非常な閑散なものになつたという実情であつて、これらの不逞の團体町民全体の幸せを破壞したのみならず、治安のありやなしやという点まで疑われるという実情に置かれ、その期間がいわゆる三、七、二十一日を期して行われるというような予想の下になされておつたのでありますが、その二十一日間それが継続しておつた、これに対して自治警察國家警察も何ら施すべき手段がなかつたというよう実情であつて、若しこれに対して相当処置を講じようとするならば、この両警察の人員というものも寡小にして到底これをなし得なかつたというよう実情にあつたのであります。遂に二十一日目に龍一家荻島の本拠に殺到いたしまして、爆彈を仕掛けて放火をし、家屋を破壞して侵入して、目指すところ荻島を殺戮せんといたしたのでありますが、遂に荻島は二階から逃走いたしまして、その目的を達しなかつたのでありますけれども、その子分らは数名殺傷されておるよう実情であります。その後におきまして、檢察廳の方の手入れがあつても、これらの龍一家の者は目指す荻島を死に至らしめなければ自分らとしては捕縛につくことができないというので、いずれも身を隠して捕縛するに至らなかつたのでありますが、その後その仕返しとして又荻島一家の者と龍一家の者とが大牟田で殺傷沙汰をしておつた。こういうのに対しまして、両家の爭いというものが常に事あるごとにいつかは爆発するという実情に置かれておるのであります。かよう事犯に対しましても現在の警察機構におきましては、十分これが手配をなすことができないので、たまたま両者のいわゆる身代り被告という者が名乘り出ますというと、それを捕えまして、その事犯の表面に現れた殺人事件としてこれが処理されておるというよう実情であります。実際にそれに加担したところの多くの暴徒、かよう法律を犯すことを意としないようなそのよう暴力團体構成員という者に対しまして、何らの処置が施されないというよう実情にあるのです。これはひとり柳川事件のみでありません。小倉におけるところのこの香月事件におきましても、やはりかようなことが言え得るのであります。これも暴力團暴力團の爭いでありまして、そうして相手方の首領を殺傷いたしまして、その後のおきまして、加害者の方はやはり身代り小分が名乘り出るというよう実情であつた。これは檢察廳の指揮のよろしきを得まして、或る程度までその背後関係を摘発し得たことは不幸中の幸いでありますけれども、この場合におきましてもその本体をなすところの、いわゆる蔭に隱れたところ実権者暴力團首領、勢力の中心を握るところ権力者、又金を供給するところ主要人物、こういう者に対しましては遂に手が及ばなかつたのであります。この者は曾ては炭鉱法案反対の場合におきましては、某々大臣を暗殺するために、その香月事件関係のあるところのこの暴力團構成員を上京せしめて暗殺を図つたとかどうかいうような噂もあるくらいであります。常にかような或る権力と金力を用いまして、こういう暴力行爲を敢てする者を使嗾いたしまして、そうして政治上の利益を追求する、或いは金銭上の利益を追求する、社会方の何らかの利益を追求するというよう行爲を公々然として行なつております。善良なる市民は常にこれらの暴力團被害に、その生活の安んじて送り得ないというよう実情に置かれております。私の郷里の岐阜におきましても、白晝公然山田一家村木一家というものが出入りをいたしまして、遂には岐阜一円の親分たるところ山田白晝これを射殺するというよう事犯も生じたのであります。この場合におきましても、三重縣及び愛知縣暴力團の連絡あるところの人人を招集いたしまして、前日から金華山に種々の凶器を携えて何十人が屯ろして、翌朝、朝起きぬけを襲うという計画を立てて、その特攻隊とも称せられる人が先ず目指す山田を射殺したというよう実情です。この場合におきましても、やはり身代り被告が一、二名檢挙せられたのみであつて、これらの凶器を携えて前日から金華山に屯ろしておるところの一團というものは、何ら毫も制裁を受くることなく今日に至つておるのであります。又その後におきましても、やはり岐阜の一番中心点柳瀬附近におきまして、白晝公然これらの者の出入りがあつて殺傷沙汰が行われておる。つい最近私が東京から帰つて三時半に岐阜駅に着いたしまして、岐阜の目抜きのいわゆる平和通りというところ通りまして、柳瀬交叉点に差掛りましたところが、その交叉点におきまして、一つ暴力團に属する者が他の暴力團に属する者をその路上において嬲り殺しにしておる。そうして市民は一町くらいの間隔を置きまして輪になつてこれを見ておる。何ら手の施しようがないというよう実情にあるのです。またまた警察官が参りますれば、その警察官を撲り飛ばして、ほうほうの態で逃げ去らしめるというような現状であるのです。全く今日の暴力團の跋扈というものは、いわゆる無警察状態と言うても敢えて差支えないと思われる実情であります。こうした考え方が廣く國民全般に及んで参るならば、又是認されるとするならば、又防任されるとするならば、致底民主主業再建というものは期することができないと思うのです。言論はこれによつて抑圧される。正しい行動はこれによつて阻止せられるというような結果を招來すると思うのです。何といたしましても、我々は民主主業國家再建のために、是非ともこの忌わしいところの、残存せられたところのこの暴力團の拂拭を図らなくてはならんと考える次第であります。かよう考えからいたしまして、今日まで一年近く全國の暴力團実態調査して参つて、ここの手許にあるだけでも何千の團体に上るのであります。これらを一々ここで申上げる暇はありませんが、いずれにいたしましたところが、只今一、二の例を申上げましたごとく、これらのものがすべて社会不安の根源をなしておるという事実を否定することはできないと思うのです。然らば今日の法制の下におきまして、かよう暴力團存在に対して如何なる法的措置ができるかと言いますれば、御承知通り自治体法におきましては、騒擾罪殺人罪傷害罪逮捕監禁罪脅迫罪恐喝罪、これらのよつて辛うじて賄い得るのでありますが、又特別法といたしましては、暴力行爲取締法決闘に関する罪、銃砲等所持禁明令團体等規正令、又は軽犯罪法の一部、かよう決行法規を通覧いたしまして、この現実の暴力團存在に足しまして十分な法的措置は講じ得ないということは明らかであろうと思いのです。例えば團体等規正令の場合におきましても、これは單にその團体構成運用、そういうものに対しまして解散を命じ得るというに過ぎないのでありまして、暴力行爲解締法におきましても、僅かに懲役三年を以てこれを賄つておるというよう実情であります。その他銃砲等所持禁止令とか、決闘に関する罪とか、こういうもののみを以ていたしましては、只今申上げますごとき暴力團に対するところの処理は到底十分ではなかろうと存じます。要するにこの暴力團の行為に対しまして、現れた事実のみもを捉えて以て処罰の対象とする場合におきましては、勿論実体法たる刑法においてこれは賄い得ると存じますが、要はその背後に隱れておるところ構成分子の力、仮装されたところ團体の力、或いはその指導者、こういうものに対しましても、相当なるところ法的措置を構ずる必要があるのではなかろうかと存ずる次第であります。又この場合におきして、その暴力行爲自体対象にいたします以上、これが極右たると極左たると、或いはその他の團体であるといずれを問わず、これが法の対象として相当の考慮を掛わなくてはならんと思うのであります。我々が調査いたしましたところによりますれば、かよう事犯に対しますところの現行の警察法及び刑事訴訟法においては、十分これが捜査、檢挙ということはその目的を達成し得ないという実情にあることは皆樣も御承知通りでありまして、これに対しましては相当なるところの、いわゆる捜査機関の特例を設けるとかいう必要もあり得るのではなかろうかと考え得るのであります。又かよう事犯に対するところ審理判決において御承知通り、その事犯裁判目的と一度なつた場合におきましても、後難を恐れまして、この関係者は容易に被害事実を証言しない。折角これが檢挙せられましても法廷においてこれが犯罪の証明はでき得ないというような結果になつて、遂には無罪その他の軽き罪を以て処断せられるというような結果になるということが、十分今日の裁判実情からも看取せられるのであります。又証拠を蒐集する場合におきましても、非常な難点がある、いわゆる被害事実を述べれば、それが処罰せられることよりも、むしろ自分の將來において受けるところの危害の方が多いという感じもあるし、又今日の警察法及び訴訟法建前からいたしますれば、いわゆる権利保障としてこれを許されておる。こういうよう関係からいたしまして、折角捜査機関がこれを送りましても、すぐこれらの者が釈放されて出て参る。そういたしますれば、彼らの常套的段といたしましてすぐお礼する。いわゆるお礼という言葉が結局は暴力を以てお礼するというよう威迫の観念を與えるというようなことにいたりまして、その実態を把握することは到底不可能である、又その目的を達成することも不可能な実情にあると考えられるのです。かよう点等考え合せまして、この際当委員会におきましては、この從來の調査を尚一段深く切下げまして、これに対しまして相当なるところの結論を得て、そうしてこれに対するところ立法措置研究いたしたいと考える次第であります。從つてこれにつきまして、特に小委員会を設けて、その調査研究に当りたいと存じますが、その点をお諮りいたしたいと存じます。で小委員会建前といたしまして、大体各派から御出席願うことにいたしたいと存じますが、小委員会は六名を以て構成し、小委員会名前集團的暴力行爲に関する小委員会、こういう小委員会を設けたいと存じますが如何でございますか。
  6. 大野幸一

  7. 伊藤修

    委員長伊藤修君) ……に関する小委員会
  8. 大野幸一

    大野幸一君 暴力行爲に関する立法措置の小委員会……
  9. 伊藤修

    委員長伊藤修君) それは入れずに……参議院規則がありますから、その建前からいたしまして……
  10. 岡部常

    岡部常君 委員長の御提案に賛成いたしますが、尚委員の氏名は委員長にお任せいたしたいと思います。皆さんの御賛成を得たいと思います。
  11. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 只今岡部君の御意見に御異議はありませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  12. 伊藤修

    委員長伊藤修君) ではさよう決定いたします。それでは委員長におきまして、只今の決定につきまして委員指名をいたします。  岡部君、松村君、遠山君、深川君、齋君、それから私、以上を以てこの委員会構成いたしたいと存じます。御異議ありませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  13. 伊藤修

    委員長伊藤修君) ではさよう決定いたします。   —————————————
  14. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 次に青少年犯罪に関する調査を從來行なつて参つたのでありますが、このたび我々が各地を調査いたしますと、当委員会におきまして手がけましたところのこの青少年に関する法律は非常に多くありまして、又新らしい機構といたしましても、保護観察所であるとか、少年鑑別所であるとか、少年観護所であるとか、少年法少年院法、いろいろな面におきまして新立法措置が行なわれたのでありますが、これらの法律運用及びそりの結果等におきまして、まだ立法目的が十分であるかどうかということに対しまして相当研究の余地もある。又その他の立法措置も必要であるとも考えられる次第でありまして、これにつきまして小委員会を設けまして、特に本問題に対しまして深く研究調査をお願いいたしたいと存じますが、これ亦小委員会を設けることに御異議ありませんでしようか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  15. 岡部常

    岡部常君 これも先程と同樣に委員長指名に願います。
  16. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 只今岡部君の御動議に御異議ありませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  17. 伊藤修

    委員長伊藤修君) ではさように決定いたします。この方の委員会名前青少年犯罪に関する小委員会と名付けます。小委員といたしまして、宮城君、鬼丸君、星野君、大野君、松井君、來馬君。以上六名の方にお願いいたしたいと存じます。御異議ありませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  18. 伊藤修

    委員長伊藤修君) では本委員会はこれを以て終了することにいたしまして、午後成るべくは第一回の各小委員会をお開き願いたいと希望する次第であります。別に他に御発言ありませんか。
  19. 大野幸一

    大野幸一君 私は集團暴力行爲に関する小委員会のお方に、概念として一つ御希望を申上げて置く次第でありますが、このところ新聞紙の報道するところによると、最初見出しを破壊行爲取締法というよう見出しになつておりましたので、ということと、近頃共産党に対する、いわゆる非難というようなものを應えて、この立法をややもすると共産党取締法ように誤解されることなしとしないのであります。我々は法律を以て特定の政党を絶対に禁止するということは憲法の大精神に戻るところである。ただそれが暴力行爲に走つた場合に、これは政党とは別個に考えにおいて処罰する、こういう意味で、そういう考え一つ進行して頂きたい。往年の予防拘禁法或いは又、これは試案でありましようが、未決拘留を長くするということは、やはり基本人権を傷付けることになる。これは必要にして最小限度の短期になるべきであると私はこう考えます。從つて決して社会に與える印象も、共産党法律で彈圧するというよう印象のなきよう、受けないよう十分の思慮と御注意を私は希望して置く次第であります。
  20. 伊藤修

    委員長伊藤修君) ではこれを以て散会いたします。    午後零時二分散会  出席者は左の通り。    委員長     伊藤  修君    理事            岡部  常君            宮城タマヨ君    委員            大野 幸一君            齋  武雄君            遠山 丙市君            深川タマヱ君            來馬 琢道君            松村眞一郎君   説明員    法務事務官    (檢務局調査課    長)      横井 大三君