○
岩間正男君 私はこの
法案に反対であります。その
理由はいろいろありますが、先程から述べられましたように、先ず財政的な裏付けがない、そうしてそのために先程
質問いたしましたように、日本の統一的な、
教育改革の系統的な発展の上にこれは立
つていない、そうしてそこに
計画性が非常にない、そういう形で一番重要な
教育の
内容を本当に培
つて行くところの裏付けとしての財的措置がないということが、基本的なこの
法案に対して反対せざるを得ない
理由であります。
先程から申述べましたように、六・三制で我々は実にもうああいうような無
計画、そうしてその置かないよりはある方がいい、一寸でも進むということによ
つて現実はどうかというと、実は何百歩か後退しておる、
教育内容は
最初の目標に対して接近するどころか非常に逆の傾向を辿
つておる、殊に六・三制の六の場合なんか、
教育の非常な重荷と破壞的な條件が起
つておるのであります。そういうような最中にありまして、地方財政を非常に圧迫するようなこの
法案の実施が、地方財政の混乱の中で、而も地方自治というような自治体の上に乘せて発生させるような形で、國庫からもこれは負担が非常に少いという本來の性格の下に発足させることはとても不安でたまらないのでありまして、我々はこの
大学の眞の発生、眞の育成を望むが故に、その第一点におきまして先ず反対の意向を持つ者であります。
第二点は、この
法案は、大体この
法案が成立する
過程を見ますというと、十分に御主的な寸法がとられていないということであります、先ず第一に、
設置基準というものが設定されておりますけれども、この
設置基準そのものは、多くの
関係者の意向を十分に聽き、その上に立
つてなされているのでなくて、実は
設置委員会なるものが、そのような人民の意思とい無
関係にいつの間にか作られ、そうしてその
設置委員会にこの問題の重要な、この問題を
解決する権能を與えまして、その中で
設置基準が設定され、更にこの
法案が立案されたというような形を辿
つておるのであります。この
委員会そのものの形、更にそれによ
つて作られたところの
設置規準というものは、十分にこれを御主的なものは我々は断定することはできない、こういう措置によ
つて急速に而も十分な自信がない形で、発足しないよりは発足する方がいいのだ、或る場合には不十分で自信が持てないが発足させる、こういうような形で発足することは非常に危險であります。そのことが今日の例えば今全國に起
つておりますところの学生盟休のようなものを惹起したところの主なる原因ではないか、こういうことが考えられるのであります。もつと当事者の要求というものを眞に聞き、把握し、これを
一つの立法措置の中に十分に含めるということは今後のこれは
教育行政の中で非常に重要な問題なんでありますが、そういうような措置が十分とられていない、だから從
つてこういうような天下り的な
法案に対しまして、今まで当事者の、殊にこの
大学に対して最もその將來立体的な立場をなすところの学生たちが、反対の運動というようなものを展開しておるというような形で現われておるのでありまして、この問題を
文部省が十分に取上げてこの問題を十分に
解決するというようなそういうような民主的な方法がとられなか
つたならば、たとえこのような
法案が実施されたとしても、今後の
運営において果して円滑を期し得るかどうかという点において非常に疑問を持たざるを得ないのであります。こういうような点を私は第二点の反対
理由とするのであります。
第三点ではこの
大学の一体、実はどうなるか、
内容はどうなるかという問題であります。即ち私は大体この
法案によりますというと、今までも述べて來たのでありますが、
内容は非常に低下するのではないか、いわば
從來の高等
学校に
ちよつと毛の生えたものに
大学という名前を付けて発足させる、成る程日本の各府縣に
一つ以上の
大学ができて喜ばしいというような形になるかも知れません、これは日本人が今まで持
つたところの
大学に対する迷信に近いような、信仰に近いような
一つの幻影、そういうようなものをこの國民が何といいますか非常に愛好してお
つた、そういうような心理と連関しまして、結局まあ
大学ができる、そういうことにおいて一應形においては喜んでおり、又それに努力をしたというようなことが見えるのであります。殊に去年あたりの請願を見ますというと、この部分が
大学設置に関するところの運動であ
つて、
各地方で爭奪戰が行われ、
名称についてもいろいろの問題が起き、それから更にこの中心の
学校を
運営する機関をどこに置くか等で爭奪戰が展開された、併しながらこういうような形でこの問題が小さい地方の方に段々累積されて、大きな基本的な問題がこういうようなものにすり替えられるという方向について、私は今後の
教育行政上これを警戒しなければならない、これは人民が
大学の
設置に対して非常に熱愛しておるというふうな、
文部省の若し考え方でこういうことを取上げておるとしたならば、私は更にそれに開きがあるのじやないかと思うのであります、それはそういうようなことではなくして
大学という名前が欲しいのであり、その実体については恐らくこれを実施して見れば私はそのような人たちの間に非常な不満が起るのではないかと思うのであります。從
つてこの專門的な
研究、
從來日本の学の中に持
つておりました、これはよい
意味も惡い
意味をも含めて言うのでありますけれども、よい面、そういうような專門的な
研究の方向において質的低下があるのではないか、学の尊嚴確立というものは殆んど維持されるような態勢にな
つておるかどうか、これには疑わしい点があるのであります。更に
大学院というようなものが当然この
法案の中で
規定され、そしてもつと高度な学の系統というものが打立てられることが望ましいのでありますが、そういうものに対する顧慮も十分にやる暇もなくて早急にこのような
法案で提出された、こういうことにつきましては私は第三の反対の
理由とするのであります。
その外の問題としましてはこの
法案の
設置に当りましていろいろな問題があると思いますが、例えば
名称の問題、こういうような点については先程からこれは心配がないのである、飽くまでも民主的に運用するのであるから、この点については何ら不安がないのだというような
文部省側の
答弁があ
つたのでありますけれども、併しながら今までの行政の中におきまして学生の自治を
相当彈圧する、そういうような行政措置がしばしば行われたのであります。こういうような不安が残
つておるからして今日やはり
文部省令によ
つて定められるということに対して学生たちは十分に心の底から承服することができない、こういうふうな不安がもつと明確にもつと
法律化される必要があると思うのでありますが、そういうような法制措置をとるだけの十分の時間もこの
法案の
審議のときには與えられなか
つたのであります。
こういうような以上の点を総合して考えてみますときに、どうもこの
法案を日本の
現実の態勢の中で発足させるということは、恐くら徒らに
大学という名目を掲げて、実は
内容のないところの実態に陥るということが余りに我我としては先が見られるのでありまして、そういう点におきまして我々文部のこの立法に携わ
つておる者としましては、このような見通しを持
つた法案に対しましてはこれは自分の職責におきまして俄かに今ここで
賛成するということは当然これはできない。もつともつとこの
法案を練り直して、もつともつと民主的な手段を講じ、そうして十分に
関係者の参加を望んで、そうしてこのような
法案が、本当にこれは人民大衆のものであるという形において発足することが望ましいのであります。こういう
法案の性格、並びに日本の経済的な
現実、こういうものとの連関におきましてこの
法案が持
つておる危險性を指摘して私は反対討論といたしたいと思います。