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説明員(忠佐市君)
只今の御
質問に対してお答え申上げます。先ず第一点は、農家に対する所得税の課税をいたします場合に、一反歩当り幾らぐらいの所得があるというような計算
方法を取
つて課税をしておる。この行き方についての御見解のように承わります。この問題につきましては、私共
只今御指摘になりましたところの井上
経営課長の御見解と別に根本的には変らないと
考えます。と申しますのは、申告納税制度に相成りまして、農家が各自の收入
金額と、それから必要経費を計算いたしまして、そこに差額として所得が出て來る。この差額を個々の実際に合うように計算をいたしまして、申告をするということができますれば、これは勿論問題はないわけでございますが、その際に、現在の農家の大多数の状態を
考えますと、收支の計算が帳簿その他によ
つてはつきりと出にくいと、かような状況でございますので、そういう場合におきましては、平均的に通常の農家でありますれば、大体どのぐらいの收穫があるか。通常の経費としてどのくらいの経費がかかるものか。それを供出その他の状況を
考えまして、普通あり触れた農家であれば、これぐらいの所得になるだろうというような平均的な数字を一應想定いたしまして、これによ
つて課税をいたしておる次第でありまして、これは課税
技術上から申しまして、現在においては必要であり、而も大体負担の点から
考えまして、適当な結果を得ておるものと
考えております。成る程農家の個々の
事情が非常に違いますので、杓子定規の機械的な標準率では、個々の農家の実際の負担に相應しないというのが
実情でございますが、その收穫が特別に多か
つたり、或いは少か
つたり、それから経費が特に多くかか
つたり、少くかか
つたりいたします場合においては、個々的に調整する
方法を取
つておりまして、増減を加えるということをいたす
建前にな
つておりますので、標準率の扱い方の
技術的な巧拙が税務署間において多少あるとは思いますけれども、この点においては、現在の農家の
実情から申しますると、税務署のと
つておりまする方針といたしましては、これは御了解願えるものと
考えている次第でございます。これにつきましては、
経営課の方で、農家の簿記指導を一生懸命や
つておられまするので、この簿記指導が徹底いたしまして、正確な記帳ができて参りますれば、その正確な記帳の結果に基いて所得の申告ができる。こういうことに相成りますれば、税務署の所得標準率は必要がなくなります。私共も所得標準率の必要性がなくなりますことが一日も早く來らんことを切望しておるような次第でございまして、この点においては見解の相違はないものと
考えております。要するに問題となりまするのは、一反歩当りの標準
金額を何程と決める場合におきまして、その何程と決めた
金額にあるのではないかと思います。その
金額の点は後の方の御
質問にありまするところの、この收入すべき
金額の計算の仕方、税法の解釈の仕方にあろうと思います。この点につきましては、從來農林省から御
提案がございまして、いろいろ研究もいたしておる次第でございまするが、根本的の
考え方といたしますれば、私共は現在
考えておる
方法、つまり御指摘に相成りましたように、或年、一月から十二月までの間に收穫された物の價格によ
つて農家の所得を計算するのが一番妥当ではないかと
考えております。その点は明治二十年に所得税法が施行させまして以來、一貫してと
つておる方針でありまして、特に最近強く問題として取上げられましたのは、農産物の價格がインフレの影響を受けまして、毎年毎年飛躍的に上ると、
從つて農家におきましては、米作等につきましては、一年の終りの期間に收得されたものを翌年に持起して消費をする、その消費の分量を前の年の價格で計算すれば收入金が少くなるというので、この問題は具体的に取上げられたものと
考えております。併し
考えて見ますと、我が國の農家は申上げるまでもなく、機械化農業とか、大規模農業等が少いのでありまして、大体におきまして、家族農業というような小規模
経営が多いと思います。從いまして、農家の田畑の耕作その他に投下されます労働力が、即ち所得になるというようなことを
考えますると、
生産物の價格が即ち所得の実体を現わすもの、かように
考えた次第でございます。その点はこの
委員会でも申上げたことがあると記憶いたしておりまするが、我々雇傭
関係に立
つておりまする労務者は、賃金として金銭で対價を受取ります。ですからこれが所得の基本と相成りまするが、農家等におきましては、一年の労力が結局、化して農産物となり、從いましてその農産物の價格にその年の農家の労働力に対する金銭的な評價が出て参る、
從つて私共が一月から十二月までの俸給その他の收入によ
つて、課税を受けるのであれば、農家もその一年間の労働力に対して、金銭的な評價によ
つて納税をするということが、これが負担の公平という面からい
つて適当である、さように
考えておる次第でございます。で多少問題と相成りまするのは、農家と営業者との價格の値上りの
程度が同じであるか違うかという問題でございまして、この点は概括的には営業者は仕入れと賣上げとの期間が短い。農業は一ケ年間あるというところから、農家の方が酷な結果になるのではないかという御見解が一部にあるように
考えられておりますが、営業と申しましても商品の廻轉の
関係には千差万別でございまして、一概に取上げるというわけには参りません。さような
関係からいたしまして、所得税法の現在の基礎控除、扶養控除、それから税率と申しまするものが一應
只今のような所得計算をいたすものと決めておりまするので、私共は現在の解釈がよいのではなかろうかという
考えでありまして、特にこの点について改正するという意見は持
つておりません。このことを農林省の方へもお傳えいたしておるような次第でございますが、農家の負担といたしますれず相当大きな問題とは
考えておりますので、十分研究はいたしておりまするが、
只今のところ結論は出ておらないような次第でございます。