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國務大臣(
森幸太郎君)
板野さんにお答えいたします。私はこの
供出制度の現在の
やり方については、決して完全なものと思うておりません。どうしてもこれは根本的にその
やり方を定めなければならないということは、曾て私が
農林委員をいたしておりました当時も今日も変らないのであります。併い根本的に
制度の
方針を変えるということにつきましては、
愼重に
考えて行かなければなりませんし、又相当の
調査も必要であるのでありまするから、殊に米穀
年度の途中においてこれを変更し、又は変更の
方針を
朧氣ながらもこれを示すということは、
供出の混乱を來すわけでありますので、その時期等も選ばなければならんと、かように
考えておるわけであります。殊に
超過供出に対しまして、これを法的に処置しなければならないということになりましたことは、今お述べになりました
通り、お察しの
通り、先方よりこういうふうにしなければならないという
覚書が交付されたのであります。これは前
大臣の時でありまするが、その
方針に基いて、今回法の放正を処置いたすことにいたしまして、皆樣の御
審議を仰いでおるわけでありまするが、そういう
事情をあからさまにその
提出の
理由に書いて、何だか威圧的にやるようではないか、又勘かすべからざるものならば、もはや
國会の
審議を必要としないではないかというふうな
考え、又御
意見が出ておるわけでありまするが、今日の
日本の
政治の
情勢は、私が今更申上げるまでもないのであります。
國会の
審議は飽くまでも民主的に、
國会の
意思によ
つて審議さるべきものであるということは申上げるまでもないのでありまして、
予算の
提出につきましても、勿論
政府が
責任を持
つて予算の編成をいたし、これを
國会に
提出することにな
つておるのであります。その他の
法案におきましても勿論
政府の
責任においてこれを法文化し、皆樣の御
審議を仰いでおるのでありまするから、この
日本の現在の
客観情勢をよく察知して頂いた上において
審議を進めて頂きたいと、かように
考えるのであります。さように
自分意思に副わないような
法律案を出して
責任を背負うということはいかんではないか、むしろそういう衝に当らない方がいいのではないかという御
意見でありまするが、今日の
日本の
食糧事情が、御
承知の
通り、
連合國から在る量を貰わなければ
需給が立たないという
段階におきましては、これを全然断り得る
日本に確信があれば勿論何でもないのでありまするが、いろいろ
増産方面に手を盡くしておりまするけれども、尚この
輸入食糧を断わるという
段階には進んでおりません。而もこの輸入しておる
食糧のために、
アメリカの
國民といたしましては、傳え聞くところによりますれば、一ドルの
税金が加重されておる。これはひとり
日本だけではありますまいが、
食糧を輸出しておる、そのために
アメリカの
市民諸君がそれぞれの
税金を特に負担されておるというような現
段階を聞きますときに、
日本に若し
食糧に
余裕が生ずるというような場合があ
つて、尚且つ安易として海外から
食糧を輸入して貰うということは、道義の上から申しましても申訳がないのであります。然るに、今日この
供出割当が、先程申しましたように、本当に合理化されておりませんために、中には苦しいいわゆる
裸供出をしなければならん場面がありますし、又中には、
供出をいたしましても尚且つ幾らかの
余裕もあり、又
農村の
氣持といたしましては
地方食をとりまして、そうして
自分の保有いたしました
食糧を余して行く、いわゆる節食、節米によ
つて食糧をここに出し得る余地を作
つて行くという点もあるのであります。
從來地方には
地方食というものがありまして、
地方独特り「
さつまいも」の
生産地は「
さつまいも」が主体となり、又その他の
雜殻の
生産される
地方においては、
雜殻を
主要食糧として、外の米なりそういうものを
補つてお
つたというような
地方も相当あるのであります。いわゆる
地方の
食事情というものは、
各地方々々においていわゆる適切なる
食糧の
事情をと
つて來たのであります。そういうふうな
立場に今日
農村が帰りますならば、一定の
保有米を除きました米を節米して、尚幾らかでもこれを
供出するという余力ができないとも計られないのであります。それが
超過供出をお願いいたした
意味でありまして、もとより本年は自主的に出して頂くということをお願いいたしたのでありまするが、
食糧事情等の
関係から、
関係方面の
考え方もありまして、
超過供出をする。今年は完全にできたが、こういうふうなことを若し
余裕があるならば、これを出し得るように法制化すべきであるということが、昨年の十二月でありましたか、こちらに
指令がありまして、そうしてこれを法制化いたすことにいたしたのであります。もとより
事前割当が合理的に行われ、
事前割当を
基礎といたしました
食糧事情がうまく
行つて、予定の
配給ができ得ることになりますれば、敢えて
超過供出を法制化いたしましても、これを強行する必要もなければ、又
超過供出に依存しなくても、当初の
事前割当を以て
配給が完遂されるのであります。そういう
氣持で、その
食糧事情によりまして、法制化して、完全に
集荷するということにしたいと、かように
考えておるわけであります。
本年は、御
承知の
通り、麦作も一部において植え変えをしなければならんような
事情もありますし、まだと
つて見ない「
さつまいも」、これからとるそういうふうな
食糧を併せて
需給推算を立てておるような
情勢でありますので、幸いに
超過供出も百三十万石は十分にできましたので、今年の
食糧事情については、先ず一應將來に対して樂観し得られるような
情勢であるのであります。併しながら、まだまだこれからさす「
さつまいも」でありますし、本年穫る早場米も含まれております。今日まだ青々といたしておりまする麦もその
食糧の中に加わ
つて行くのでありますから、而も
アメリカの
國会が七月から開かれまして、果して
日本の懇請いたしておりまする
食糧が、その
通りに
日本に輸入されるか、これも
未知数でありまするので、今日はただ
計画の上において決して
心配はないという
立場にはあるのでありまするけれども、決して油断はできません。それでありまするから、「い
さつまいも」等つきましては、特殊の貯藏法を
考えまして、これを一個でも粗末にしないようにして行きたい、
アメリカから
食糧を貰
つておるということを忘れずに、内地にできます
食糧はでるだけ
集荷の途を
考えて行かなければならない、こういう
情勢を
考えまして、これを法制化することにいたしたわけであります。君は
自分の心の中では
反対しながらそういう
法案を
責任を持
つて出すということはいけんではないかというお叱りを受けたわけでありまするが、今日の
事情といたしましては、この
供出制度が本当にまだ合理的にな
つておらない今日の
段階といたしましては、こういう
措置も止むを得ないではないかと、かように
考えておるわけであります。
尚二十四
年度の
農業計画につきましては、今申しました
通り、いろいろの
事情、又
未知数のものが沢山あるのでありまするが、あらゆる
施策を講じまして、そうして
食糧の
確保に努力いたしましたならば、
アメリカの好意と相合せて、現在
計画いたしておりまする
配給は決して
心配がないのではないかと、かように
考えておるわけであります。又
報奬物資に対しましても、昨
年度より以上の
報奬物資を
確保いたしまして、この
供出に対する感謝の
氣持を表したいと、かように
考えておるわけであります。御質問を一括してお答えいたしたような次第でありまするが、以上の
事情をお察し願いたいと思います。