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説明員(齋藤弘義君)
獸医手が設けられました
理由は、戰時中外地の
獸医師の需要とそれから陸軍の
獸医師の需要が非常に大きか
つたために、内地の
獸医師が殆んど動員されまして、何とか内地の畜産擁護のために
獸医師を養成しなければならん。こういうようなことにな
つたのであります。併し御
承知のように
從來の
学校教育におきましても三ヶ年の
課程を
実習いたしませんとなれませんので、急にはそれに應ずることができなか
つたのであります。それで暫定的の手段としまして、
從來專門
学校程度の
課程を終了しなければ
獸医師の免状をやらないということにな
つていた外に、專門
学校を出ませんでも、專門
学校程度で中途退学二ヶ年とか、或いは中等
学校を出まして、
農学校で以て
一定の
解剖学を何時間とか或いは生理学が何時間というような、
一定の基準を設けた
課程を終了した者は、一應その
國家試驗の
受驗資格を與えて
獸医師とする。こういうような暫定
措置を講じたわけでありますが、それでも到底この厖大な需要を賄うことができない。それでこの
獸医手という
制度が始ま
つたのでありまして、それより先にこの
獸医師法が明治何年でありますか、大分前からや
つておりましたのですが、そのときは中等
程度の
教育であ
つたのであります。ところが段々と進歩するに從いまして、どうしても少くとも專門
学校程度でなければいけないというので、
昭和十五年に
改正されまして、そうして中等出の獸医
教育は、十二年の猶予期間を設けまして、大正十五年から十二年の間に全部專門
学校程度に昇格させる。そういうことに十五年の
法律で決まりましてそれでずつと行
つたわけであります。丁度全部が專門
学校になりましたのは日華事変の
ちよつと前に完成しました。それと同時に日華事変が始まりましたので、今申上げたような獸医の不足という事態にぶつか
つたわけであります。
それでこの
獸医手の
方法を採られたわけでありますが、これを始めますときにいろいろの議論がありまして、折角大正十五年の
法律で以て專門
学校ということに直したものを、更に又元へ戻すということは甚だどうも困ることでないかとか、いろいろ議論がございましたのですけれども、
只今申上げたように
獸医師の不足が非常に激しいので、どうしても暫定的に何とか
措置をしなければならん。それであの
獸医手の
法律ができました当時に、中央衞生会にも掛けたわけでありますが、その時にもこれは今申上げましたような專門
学校程度にや
つて完成したに拘わらず、すぐと又あと戻りするという点において甚だ困る、その点何か良い
方法はないかというようないろいろの議論が出まして、結局落着いたところは、陸軍の方でも相当強く要望しておるし、一應
獸医手のこういうような暫定的
措置を認めよう。併しこれはその当時は日華事変でありましたけれども、事変が終了すると同時に廃止すべきものだという
條件と、それから尚あの時時は百年戰爭とかいろいろそういう長期というような話がありましたので、これをなくなすのもそう急には行かん。併し無制限にこれを存続させるということはできない。一應十年ということを
限つて十年ごとに更新するようにしよう、そういうような
條件附で中央衞生会という所も通
つたわけであります。
それでこの
獸医手の
法律に関しましては終戰後すぐ占領軍が参りますと同時に我々の係の方に、あれは戰時
特例であるし、早急に廃止しなければいかんというような指示を貰
つております。現在問題にな
つておりますような
関係がありますので、急に廃止することがなかなかいろいろの点で困難でありましたので、いろいろと言訳をしまして
只今まで続いて來たわけでありますが、今度丁度六・三・三・四の新学制ができますと同時に、獸医
教育もその線に沿いまして完全に変
つてしまいましたので、尚新制の高等
学校を出ました者がそろそろ新制の獸医
学校に入らなければならない時期にな
つて來ております。新制
大学を始めなければならないというような時期にな
つておりますので、最近いろいろ
関係方面から強く要望されまして、
獸医師審議会というような民間の各方面の獸医
教育に
関係の者を
関係方面から集められまして、その
教育に何する案を三年越に獸医
教育はどうしたらいいかということを練られた。それで結局獸医
教育は四年の
課程をどうしても必要とするのだ、その線で行かなければならん。ですから六・三・三・四、尚薬剤師の
関係は六・三・三の次に一年の予備の
課程を置きまして、更にその第に四年と、医者はそのプレメデイカルというコースを、確か二年だと思いますが、その後で更に四年、そういうふうにそれぞれ……尚看護婦の養成、そういうような各方面の
学校教育の根本が
向うの
教育部、文部省その他で決定に
なつたわけで、
獸医関係の方もそれによらなければならない。どうしてもそうなりますというと
獸医師法の
関係も
改正しなければならない。それに伴
つてこの
獸医師法の廃止がどうしても止むを得ないというような
事情に
なつたわけであります。以上が大体の経過でございます。