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カニエ邦彦君 私は只今提案されました
行政機関職員定員法案に対しまして、
反対の
意思を表明したいと思います。
今回
政府は、
行政機関の
簡素化を図るという美しい名前の下に、この
機会こそ絶対のチヤンスとして
行政整理を断行せんといたしておるのでございますが、その目途としておるところは、
一般会計三割減、
特別会計二割減、
整知実員約十七万名を目標としておるのでございますが、この二割減の
基礎におきましても、三割減の
基礎におきましても、当然どこの
役所はどれだけ
機構の
改革をなし、
從つてどれだけの
人員を
整理するかという科学的な合理的な
基礎の下に立
つて作られたものでなければならないというにも拘わらず、
政府は一体何の
基礎でや
つたか、我々にはちんぷんかんぷん分らないのであります。我々はこの数十日來、口を酢つぱくする程いろいろなことを要求しておるのでございますが、これだけ沢山の
大臣が毎日出ましても、何らの、誰一人として我々に満足できるような回答を得ておらないのであります。強いて要求すると、
各省大臣は
政府から押付けられたから止むを得ずや
つたのだ、
首切りの総元締であるところの
本多國務相に聞けば、それぞれの
所管大臣からそれは
説明申上げますと言い、我々は今日まで到頭その本体を掴むことができずに
参つたのであります。要するに今回の
整理の
基準数というものは、何らさような
意味におきまして科学的な根拠によ
つたものでなく、それかと
言つて仕事の量からもこれを決めたものでもない、全くの憎むべき
天下り天引行政整理でありまして、我々
國民生活を全面的に破綻に導くところの
反動政策の一還として行われたものである。而も憲法に規定されておるところの
基本的人権を無視しまして、強引に断行せられたところの暴力的な
首切りのための
首切りでありまして、我々はこのような
行政整理には断乎
反対するものであります。
さて、然らば我が國の
官吏の数は、諸
外國に比して非常に多いと言われておるのでありますが、この実態はどうでしようか。これは時間もございませんから省略いたしまして、とにかく総
人口に対する、又
有業人口に対4る我が國の
官吏が決して多くないということは、これはもうしばしば堀君からも
説明があ
つたと思いますから、この点は省きまして、とにかく我が國の
官吏というものは、そう多いものでないということだけをここで申上げて置きたいのでございます。
次に、
戰後我が國の
官吏が急激に
増加したことは我々の認めるところではありますが、併し現在の我が國の状況よりいたしまして、
官吏を減らすことにおいて我が國の再建ができ得るとは私は考えておらないのであります。現在の各
官廳現場の
実情は、働く者が足りなくて、或いは
労働強化となり、
胸部疾患その他の
病氣で倒れる者が
増加の一途を現在辿
つておる
状態であります。又婦人の
労働者に対しましても、十分な休養を與えることにな
つておるにも拘わらず、休暇をとることもできず、而もこれらの人々は
予算の
関係ということで
オーヴアー労働に対するところの賃金も実は十分に貰
つていない
現状でございます。我が國の
官吏が終
戰後増加した原因はいろいろございますが、
官僚統制の
強化、
渉外事務の
複雜化、
民主的改革、或いは
現業の諸
施設の
老朽等によるものでありまして、
官僚統制の
強化は
戰後における
経済再編成の過程において、
政策的に強行されたので、
経済安定部、
物價廳、
経済調査廳等はそのために新設されたものでございます。その他の
各省廳共に
人員の
増加、或いは
機構の
拡充を招いたのでありまして、
地方出先機関の
増加もこの理由によるものがあろうかと思います。又
渉外事務の
複雜化は
占領下におけるところの
特殊的事情に基くものでありまして、
政府の
政策次第によ
つてはその
節減は可能と思われますが、
自主性と
責任性を失な
つておるところの現
政府の下では、ますますこの
渉外事務が殖えるばかりでありまして、
戰後において
民主的改革が行われた一例として、
各種の
行政委員会、或いは
審議会、
調査会等の設置、並びに
調査統計部門の
拡充、
各種の
社会保障制度に應ずるところの
機構の
強化新設等はすべてその現われでありまして、
戰後におけるところの急激なる
官吏の
増加は、
仕事の量はともかく飛躍的に
増加したことに原因しておるのでございます。ここに
從來の
定員が二割乃至三割減ぜられるといたしますれば、大体どうなるかについて、二、三の
現場について申上げますが、先ず郵政、
電信関係の
現場におきまして、
事業量が逐年
増加するに反しまして、
從業員は必ずしもこれに追いついておりません。例えば
保險年金業務におきましては、
昭和九年に比べまして
年金契約数は四倍に達しておるのに対しまして、
人員は僅かに三倍に達せず、而も
労働力の構成は、
労働の
強化と待遇の
劣惡から非常に不安定であり、
熟練者は年々減少し來る
現状でございます。のみならず、
戰災施設の復興及び
保全は極めて不良で、例えば戰災の
局舍の復旧せるものは
郵便局でも半数、
電信局で三分の一に過ぎません。
加入電話のごときも四〇%が罹災し、これの三・九%が僅かに復旧したのみという
状態でございまして、
保全について一例を言いますと六五%に過ぎません。又電比しまして六五%に過ぎません。又
電話故障率におきましても、
昭和十二年の八・一%に比しまして、二十三
年度は二七・四%に達し、
事業施設が如何に荒廃しておるかということを立証しておるのでございます。かくして
事業量の絶対的
増加、
施設の
能率低下が
從業員の上に
労働強化として蔽いかぶさ
つて來ており、このため
逓信事業における
結核罹病率は他
産業に比して最も高率を示し、東京三
中央局では療養を要する者一三%にも達しておるのでございます。又曾て
昭和五年には二十五
都市平均の電報の
所要時間は僅かに五十七分でありましたが、現在では約七時間を要しておる
現状でございます。
從つて逓信現場從業員の
労働條件を安定せしめ、
人員を
増加する
措置を講ずる以外に、この荒廃した
現場を救済することは不可能と信ずるのでございます。然るに本
予算節減のために、十名に一名の割合で
整理されるならば、
事業の完全に麻痺し、恐るべき亡國への道を辿るに過ぎないことは明らかでございます。更に
國鉄におきまして言うなれば、二十三
年度の
予算定員、いわゆる六十二万七千五百名を、五十万六千七百名に、約十二万名を
整理しようというので、この場合
現業は
平均一七%に止まるが、
管理部門は実に五〇%の
整理ということになるのでございます。又
現業中最も重要な
部門である
機関区、
電車区は実に三三%の
減員となることにな
つております。然るに一方
國鉄の
從業員諸君は、驚くなかれ年間を通じて八万名分の
超過勤務を余儀なくされておるのでございます。而も十分な
超過勤務手当は未だに受取
つておらない
実情でございます。然るにも拘わらず、十二万名を
整理せんとしておることは、五月十四日、我が
社会党政調会主催の
定員法案説明会では、
加賀山長官は婉曲に、今回の
首切り政策は失敗であるということを事前に認めておりまして、若しこれを強行するごときこととなれば、
電車区において
送電事務に重大な
支障を來し、或いは
通過列車監視の削減、中間駅、
信号係の
減員、
巡察員の
廃止、
外勤運轉係の
廃止等を結果し、今日すでに路線の荒廃はその極に達し、
國鉄の
現状を熟知せるところのいわゆる專門家は、安心して汽車に乘れないということまでも
言つておる
危險状態で、更にこれに
拍車をかけ、
交通事故は更に
増加することになるでございましよう。更に又小駅の
廃止、
駅裏口の
閉鎖、
出札窓口及び
改札窓口の一部
閉鎖、手荷物、
小荷物取扱機関の
制限等が行われる結果となりまして、
國鉄サービスは著るしく
低下することとなるのでございます。又測候所、
氣象台の
減員の問題であります。現在六千四百余名の
職員の、その三分の一の二千数百名を減らそうというのでありますが、現在の数においてすらその
所掌事項を遂行することが困難であるのに、三分の一の
減員となれば、農業、漁業、
海運業の発展のために科学的の資料は殆んど提供不可能の
状態となることは疑いなきところでございます。一端を述べましただけでもかかる
状態であります。必要欠くべからざる
民主主義の徹底に資すべき
方面は遠慮なく
整理いたし、その反面
海上保安廳とか、或いは
法務廳とかの
警察関係の
官吏は首切るどころか、
却つて人員を
増加しなければならんというのが今回の
整理の
実情でございます。
政府の言い分によりますと、
官吏が多過ぎると
言つて、まるで怠慢な
官吏が
役所でうようよしておるように聞えますが、現在におきましては四十八時間制と、そうして六・三ベースの鎖に繋がれておる、極度の
労働強化にな
つておることは前にも申した
通りでございます。
さて次に、今を
機会に
行政機構の
簡素化をやると
政府は
言つておるのでございますが、皆さま方も各省設置法で御
承知のように、今回の
行政機構は
事務の徹底的
簡素化を図
つたとは
言つておりますが、片鱗だにその跡は見受けられんのでございます。ただ現在の
機構を総花的に二割、三割の圧縮を行
なつただけであ
つて、却
つてそれがために不自然な形をなしておるのでございます。
行政機関の徹底的
簡素化は、でき得る限り二重三重の
行政事務を一体にして、そうして窓口を
一つに纒め、二重行政、判こ行政の弊を排除すると共に、各省廳の共管
事務を徹底的に
整理統合しなければならないのでございます。然るに依然として官僚の繩張り行政が行われておるのでございます。一例を申しますというと、建設業務にいたしましても、何ら建設省に一貫されておらず、敗
戰後におけるところの
機構や、設置、優秀なる技術者を各省に分散しまして、港湾は運輸省、河川は建設省に、港湾は農林省に、電源開発工事は通産省に、その他限りなく、同じ土建業務がそれぞれに分散されており。これによる國家の損失は莫大なものと言えましよう。又我々
労働者の保險行政にいたしましても、簡易生命保險は郵政省に、國民健康保險は厚生省に、健康保險、厚生年金保險、
失業保險、労災保險、船員保險、農業保險、山林保險、漁船再保險等々が、それぞれ運輸省に、或いは
労働省に、或いは農林省にばらばらでありまして、官僚繩張り行章をやる
政府は一向にお構いございませんが、やられる方の
労働者側、農民は全く迷惑千万な話でございます。又その他生
産業務を担当する糸や織物を農林省がや
つて見たり、又上屋、倉庫等の埠頭
施設の管理の
権限にいたしましても、大藏省、運輸省等におきまして繩張りをやり、貿易
関係の爲替管理にしましても、大藏省、通商
産業省の間に
権限の爭いがあり、公共
事業費の査定につきましても
経済安定本部と大藏省に重複する面があり、又観光行政にいたしましても、一部は運輸省でやり、一部は厚生省でやり、一部は建設省でやる。
労働行政におきましても
労働省がや
つたり、海運局がやり、輸送
機関の
政策に当りましては、造船は運輸省がやり、自動車は通産省でやり、その他限りない矛盾が重複し、そうしてこれを露呈されておるのでございます。かような
意味からいたしましても、今回の
行政機構改革は國家の利するところは蚊の涙程もございません。
次に、今回の
行政整理によ
つて、一体どれだけの國家財源が節約されるかと言いますと、
整理人員十七万一千三百人に対するところの
一般会計、
特別会計の本
年度の
予算節減額は、
政府の言明によりますと、七十億である。本
年度予算の
一般会計、
特別会計の支出から見ますと、この節約比率は〇・三%に過ぎません。我が國の総支出から見ますと余りに僅少でございます。これを
政府は緊急非常時突破の唯一の手段と
言つておるのでございますが、私はかような節約は我が國の
経済から見ましても、どこからでも搾り出せると確信を以て申上げたいのでございます。例えば
物價廳におきまして、物價調整補給金の本
年度の
歳出は二千二十二億円、同じく價格差益金の歳入が二十三
年度決定額におきまして二百五十四億六千万円、これらの
歳出、歳入の合計二千二百七十六億六千万円、これら取立或いは拂渡の業務に從業している者は僅か七百四十五人で、皆過重
労働の結果、勢い
歳出歳入の業務の疎漏を來している
現状でございます。それに
所要人員の二百人を
増加し、完全にこれを実施しようとしたなれば、そのことによ
つて一割の
節減をいたすなれば、このことだけでも二百二十七億円に相成り、今回の
行政整理による
節減額の三倍となるのでございます。かような点から見まして、
政府は國民の
基本的人権を奪い取りまして、そうして國家公務員法に保障されているところの公務員の
訴願権を剥奪し、十七万人の首を切り、その家族の生活権をも奪い取りまして塗炭の苦しみに追い込んで、敢てやらねばならないというところの、これが國家再建の最大にして唯一の
方針だと
言つているのでございます。かような点より見まして、
政府は國民の
基本的人権を奪い、國家公務員法に保障されているところの公務員の
訴願権を剥奪し、十七万名余りの首を切りまして、その家族の生活権まで奪い取り、塗炭の苦しみに追い込んでまで敢てやらねばならんのか、これが私は國家再建の
政府の最大唯一の方策なのかということに対しましては、今度の
政府のこのやり方に対しましては、一体人間としての一片の良心、一滴の血潮が流れているのかということを疑わざるを得ないのであります。我々はお互いに敗戰によりまして塗炭の苦しみにあるときに、かかる
措置が妥当であるかどうかガかようなことをいたすことにおいて今後の國の利益よりもマイナスが非常に多いということを憂えている次第であります。私は全國民のこの考えからいたしましても、こうい
つたようないわゆる暴力的な、暴力團的なこうい
つたいわゆる一方的なる
行政整理には断乎
反対をするものでございます。