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國務大臣(殖田俊吉君)
カニエさんの御
意見誠に御尤もな
意見でありまして、私共全く同感なのであります。
衆議院の
内閣委員会におきましても、
鈴木前法務総裁からほぼ同じような御
意見が出たのであります。この法務廳はこれができまして漸く一年でありまして、その経驗は必ずしも長いと申せないのであります。併しながらこの一年間に、殊に私が昨年十月末に就任いたしまして以來の経驗によつて考えまするのに、どうもこれは二つの長官でおきますよりも、
一つの長官にまとめた方がよりよくその目的を達することができるのではないかと、こう考えましたのであります。この二長官がありますことは
機構簡素という面からもかように
なつたのでありまするが、それよりも私は二長官をまとめた方が、法制長官と、
意見長官と二つを置いた
趣旨には一層よりよく適うとこう考えたのであります。それはこういうことであります。法制長官の方では御
承知のように新らしい
法律案、新らしい政令案、或いはその他の立法を日々審査をいたしております。各省から参りまする
法案を日々審査いたしております。ところがこれが純粹に
技術的に流れまして、肝腎な例えば憲法であるとかその他の根本法との照合し、或いはその精神を新らしい立法に繰入れるというようなことにおいて、ややともすれば欠けるのでありまして、急ぎます故もありますが、日々出て参りまする多くの立案は
意見長官が通りませず、直接法制長官のみによつて処理されまして、これはどうも
事務上どうしてもそうなり勝ちなのであります。ところが、その日々出て参りまする立法の中に、実は
意見長官を経てそうして新憲法の崇高なる精神と照合し、或いはこれは参照して行かなければならん面が非常に多いのであります。多いのでありますが、どうしてもそれが他の長官でありますために、そこに融和しにくいのであります。それを片方の
意見長官の手を通じますれば、それは、完璧になるのでありまするが、そのためには非常な時間と手数とを要する。おのおのの長官が厖大な
機構を持つておりますために、どうしても簡便に行かない。私は考えましたのに、これは若し一長官にまとめておれば、この長官が新らしい立案の案が出て参りましたときに、
法案を見ましたときに、これは
意見の方の
一つ意見を聽かなければならん。これは日々にそれが立派な成果を挙げて参ることができると思うのでありまして、現在のごときでありますると、例えば憲法の大きな問題、裁判所がどういう権限を持つかとか、或いはこの労働法規はこれは憲法とどういう
関係があるかとかいうような大きな問題が出ましたときは、
意見長官に相談をいたしまして、
意見長官の
意見が十分に
発言できるのでありまするけれども、さような場合でない極く小さい沢山の立法等は、
意見長官を経ずにどんどん進行いたします。これは非常な私は誤りであろうと思うのでありまして、然らばその誤りを取つておつて何故それを
從來是正しないか、こういうことになるのでありまするが、それは長官という大きな
機構が二つに別々に分れておりますために、どうしてもうまく
連絡が取れない。それよりも一長官にまとめましてやりまするならば、日々に
意見と
技術とがうまく調和が取れまして、却つて
意見長官というようなものを置きました本当の精神に適うゆえんではないが、こう考えておりましたので、そこでこの
行政整理の際にその考えを取入れまして一長官にまとまめたのであります。併しながらよく一長官にまとめまするというと、何だか
從來からありました法制長官だけが残つて、
意見長官はなくなるもののようにお考えになり勝ちであります。そうではないのでありまして、
意見長官と法制長官は対等に、どちらが上、どちらが下ということなしに、一長官にまとめた、長官が一人に
なつただけでございまして、中の
機構、
機能は全然損益がないのであります。全然
從來と同じにやつて行くつもりなのであります。これが
一つの考え方であります。これはもうこの機会でよく御経驗に
なつておると思いまするが、例えば古物商の取締の新らしい
法律、或いは地方税制の
法律、或いは沢山出て参つておりまする
法律が、ともすればこれは違憲ではないか、いや根本法に触れはしないかという御質問が沢山出るのであります。これが出ますのも、実際の運営におきまして、実は
意見長官を経ておらない。そのために
意見長官の
意見というものが十分に滲透しておらん。折角のこの新らしい法制が十分にその
機能を果しておらんとこう思うのであります。でありまするから、これは早くまとめましてそうして両方の
機能を渾然たる一体とならしめて、そうして日々のこの立法の上にこれを具現せしめる方が私は本來の目的に適うのではないかとこう考えました。
それからもう
一つは、今後は
國会というものが立法をなさるようになるのですから、段々この立法の部面は
國会が
從來よりも、今日よりも遥かに多い
仕事をされるようになると思うのでありますが、そういたしますれば、今、今日行
政府で立案しておりまする各省の立法事項は段々これは減少して参ります。そうして重荷は
國会の方へ移る。そういたしますると、法制
意見長官というものは
意見の方の
仕事の分量が非常に多くなる。法制という
技術的の部面は段々減つて行く。
將來におきましては私は法務廰の法制
意見長官というものは、今日の
意見長官のフアンクシヨンが非常に大きくなる、今日の法制長官のフアンクシヨンは減つて行く。それによつて初めてこの法務廰に法制
意見長官というものを置いた本來の目的が立派に輝いて來る、こう考えております。でありまするから、短い期間の経驗だけで申上げるのは甚だ何かと思いますが、どう考えてもその方が理屈だ、その方が実際に効果が挙る、こう考えまして、これは一長官にまとめたのであります。必ずしも
機構の簡素化、或いは便宜手段にのみ出たわけでもありません。それからともすれば
意見長官というものが十分に
活用をしておらない、であるから
意見長官というものは要らないのだ、だからそれを廃める、こういう形をとるのだという
意見がときどき出て参る。併しこれは私の絶対に採らざるところであります。私は全く
反対に考えているのであります。こういう
意味におきましてこの案を御覧を頂ければ仕合せだと思います。