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伊藤修君 御趣旨はよく分りましたのですが、ただ
嚴密の
意味から行きますというと未だ
法律でないものを法とい
つて表現するということは私は
誤りだと考えておる次第であります。ただ何々の
事項或いは
將來こういう
仕事をやる、こういう権限があるということは、
表現の
方法ならそれは正しいでしようが、ここに未だ
法律にな
つていないものを何々法という
表現をするということは正しくないと、こう考えるのです。それは今御説のような
將來あるべきことを予想して便宜上やられたのだということなら一應了承できると思います。
危險は伴うことだけは御了承願いたいと思います。一面においては、こういうことも考えられる。今問題にな
つておる
司法試驗法を、この
法律によ
つて法務廳の
所管に確定づける、予め確定づけてしまう、或いは
試驗法をどうしても
法務廳の
所管の中に入れなくとはならないように
國会が制約されるという虞れもあるのです。その点を私は憂えるから御忠告を申上げた次第であります。若し
試驗法を直そうといたしますれば、やはり
試驗法の方で、この
法律がたまたま先に
成立されます場合、その点を附則において賄わなければならん。こういう手数もかかるのであります。そういう点を慮か
つて申上げます。恐らく
法務総裁があとの
法律に対する
ところの制約をするために、有利の
地位を取るためにこの
法律を以てかように確定づけようというような、まあ御意図はないことは
重々承知をしておりますけれども、さような
考え方も見られるのであります。この点を十分に明かにしておきたいと思います。
從つて横々が審査する場合におきまして、決してこの
法案に拘束それないということを予め申上げておきます。それからこれを午前中にお尋ねして置きましたが、それを明らかにして置きたいことは、第十
七條の
関係でありまするが、これは御
承知の
通り、
檢察官はいわゆる
行政官に属しておりまして、
一般公務員の
行政官に対する
ところの
給與というものが定められております。にも拘らず
檢察官はいわゆる
裁判官と同じような
仕事をする場合、
裁判官に準ずる
ところの
地位にあるのであるから、特別にこれを
待遇しなくてはならんというので、第一
國会以來我々といたしましてもこれに協力いたしまして、いわゆる
檢察官は
裁判官に準ずる
ところの
待遇を承認いたしまして、現在における
ところの
檢察官の報酬に関する特別の
法律ができておる次第であります。それは飽くまでもいわゆる
裁判官に準ずる
檢察事務を行うという点に重点が置かれております。これに相
應わしいところの
待遇を與えなくては日本の
檢察官制度というものが維持できない。かように考えたからであります。然るにここに十
七條によ
つて、十三條の十二というものが引用されることになりますれば、いわゆるこの特別な職にあるがために特別な
待遇をするという、その
地位をそのまま今度は持ち込んで、
一般行政官としての
地位においてその
待遇を依然として受けるということにいたしますれば、これは
行政官の
一般の
待遇と非常な
矛盾を來たしまして、当時根本的の問題として
給與局長の如きは強く反対してお
つたのでありますが、数は九十人とは限定されたおりまするが、この
考え方というものは、私は是認できないと思うのです。若し
行政官の職務であるならば、それに相應わしい
一般の
國家の
待遇方法を以てすればよろしいのです。然るに特別な
檢察官の
待遇の
地位にある人をこの
地位に置く場合におきまして、尚
檢察官に與えておる
ところの特別な俸給をこの人に與えなくてはならんという
理論的根拠を私は発見できないと思います。又これならば
將來におきまして、いわゆる
檢察官が
法務行政の故におきまして、
一般に及んで來るという
一つの
危險をも多分に含むのです。本廳における
ところの優秀なる
司法官出の人、
檢察官出の人が本廳の特別の
機構或いは
檢務長官であるとか、或いは
行刑をするような
地位の人であるとか、そういうような特別の
地位に優秀な人をとるということは、
從來の慣行上あり得ることであります。この人に対しまして、その
地位に導くがために、
待遇は格段の差を生じて、
待遇上の低い
地位に置かれておるということは、我々としても忍び難い
ところであります。こういう
ところといざ知らず、然
らずして
一般の
法務行政の上に、この特別な
地位に相
應わしいところの
待遇を受けている人がそのまま就いていくことを根本的にこれは認めることになりますれば、外の
行政官との均衡というものは私はとれないと思う。又他面におきまして、
將來檢察官が
法務行政の
全般を握
つてしまうことは、いわゆる
檢事総長の息のかか
つた者が
法務行政の
全般を動かすというような非常な
危險をも私はここで予見しなければならんと思う。
法務総裁の
意見というものが率直に
下部まで届くということができないことになる。或る程度の制約を受けるということの
危險も亦考えられると思う。この
檢察官に対する
ところの特別の報酬をする根本的の理念にも反するし、又
將來のことを考えましても、私は多分に
危險を持
つていると思う。この点は九十名とかいう数の問題ではない。たとえこれが五十人とな
つても私は問題であると思う。その点を
一つ明らかにお伺いしておきたいと思います。