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説明員(
長世吉君) 本日私共の方の
委員長が
公判で差支えておりますので、
公判が済み次第参ることにな
つておりますが、まだ参りませんので、甚だ不完全な
説明を申上げて恐縮でありますが、私から代理いたしまして御
説明申上げます。お
手許に國及び
地方公共團体の
各種選挙の
選挙運動方法の
改正要綱というのを差上げてある筈でありますが、その
要綱につきまして大体のことを御
説明申上げたいと思います。
御
承知のように、
選挙運動は、
選挙法の
選挙運動の章の
條項でありまするもの、その外大体におきましては、主としましていわゆる
特例法と申しておりまする
選挙運動等の
臨時特例に関する
法律、昨年発布になりました
法律によ
つてその
選挙運動の枠が定められ、又一面において
選挙の
公営が行われておるのでありまして、この
法律によります
制度は、御
承知のように最近の
衆議院の総
選挙におきまして、これが一回でありますが、先ず実驗済みなのであります。その実驗の結果によりまして、各
方面におきましていろいろの
批判を受けておるのであります。
從つてその
批判などに基きまして、これは
改正すべきものではないかという見当の下に全
國選挙管理委員会におきまして、その
改正すべき点を
研究調査いたしたのであります。これには各
地方の実際の
選挙に当りました者、学者或いはその他のいろいろな
方面の
意見をも聞きまして、つい最近でありますが、大体の
方針要綱としましてお
手許に差上げたようなものを一應決定した次第であります。
第一に
方針でありますが、
只今申上げたような点から
選挙法の
改正が考えられますので、今回問題となりますのは、
選挙運動というものをどういう枠にするのが適当であるかという問題が
一つと、今
一つはいわゆる
選挙の
公営であります。これを今までの
公営では適当でなく、
選挙運動の枠を見合せましても、又実際の面から見ましても、どういう
程度、どういう
方法の
公営をすべきであろうか。こうい
つたような
二つの観点から
研究いたしましたのであります。
そこで
選挙運動の
改正の
方針といたしまして、第一に
選挙運動の
方法に対する
各種の
制限は、これをできるだけ撤廃するということに決定いたしたのであります。これは
憲法の第二十
一條の
國民の
基本的人権としても表現の自由を保障するという点から考えましても、本
來民主主義國家の
選挙というものは自由であるべきであると私共は考えるのであります。これを
選挙の実際の面から考えまして、
選挙運動を自由に活溌にいたしますということによりまして、
候補者の政見なり、或いはその人となりというもの、或いはその属する
政党の政見というような点も十分に一般の
國民が知ることができるのでありまして、これを
制限するということはどうしても民主主義的な
選挙の
根本の思想と相容れないものと考えるものであります。更にこの
選挙運動の
取締りという面から見ますというと、これは長年の
経驗で皆
樣御承知のように、
取締りを嚴重にすればする程違反行爲が多くなりまして、いわゆる
脱法行爲が非常に盛んになりまして、
終いにはそれが極めて
惡質なる
潜行行爲にまで段々行くのであります。今回の
公営選挙、或いは
選挙運動の
制限につきまして、
非難の最も大きな点はこの点でありまして、先頃の
選挙は
惡質なる
潜行運動に段々
選挙運動を追い込んだという
非難が多か
つたのであります。そういう面から見まして、
選挙を
取締れば
取締る程
選挙が不明朗になり、且つ
費用も
相当にかか
つて來るということになると思うのであります。
更に又これは
均衡論でありますが、最近の
政党或いは
労働組合というものが非常に発達いたしまして、これがいろいろ政治的の
活動をいたしまして、これが
選挙に際していたします
運動というものは、これは
選挙運動と区別するということは実際上不可能なのであります。
從つてこれらの
運動を抑制するのは困難でありますのに、
候補者の
選挙運動ばかりをいろいろ
制限を設けるということは、これは甚だ
均衡を失するものであると考えるのであります。そうい
つた意味合におきまして、
只今申上げましたように、
選挙運動は
原則としてこれを自由にするということを
方針といたしたのであります。ただここにもありますように、無論自由と申しましても、
選挙の
公営、
公共の福祉に反しない限りにおいて自由にするのでありますし、又現下の
経済事情というようなものも考慮に入れる必要があるのでありますから、
選挙運動そのものの自由を束縛するのではなくして、何らかのそこに枠と申しますか、或る種の
制限とは見られないでありましようが、
一定の
原則というものを作り出すということは、これは必要であると考えますので、その点におきまして
選挙運動の
費用というものを、これを実情に即して
最高額を定めまして、その
範囲内において、自由に
選挙運動を行うことができる、こういうことにしたわけであります。
次に第二に
方針としまして、
公営でありますが、
選挙公営はこれはいろいろな御
議論もありますけれども、大体において
公営を必要とせられる
意見は大いに強いのであります。勿論現在の段階におきましては
公営は必要だと思うのでありまして、これは
選挙の自由ということは少しも矛盾することはないのでありまして、
選挙が自由になりますというと、
選挙運動が自由になりますと、
費用が
從つて嵩むという危險もあるのでありますが、これを側面から
選挙の
公営によ
つて救うということにいたしますので、むしろ
選挙運動の自由を助けるものでありまして、
選挙運動の自由と少しも矛盾するところないと思うのであります。そういうような
意味におきまして、
候補者に対しまして
一定の限度で
選挙運動の機会を保障するという
意味から、
只今行なわれておりますような窮屈なる
制度などはやめまして、例えばこの
文書によります
選挙運動などの
方法は全面的に
禁止されておりますが、そういうことを自由にいたします代りに
無料葉書の枚数を殖やすというような面なども考えまして、そういう改善の
手段によ
つて公営というものは存続して行く、これが第二の
方針であります。
そこで以上
二つの
方針によりまして、
選挙法をどういう
要領を以て
改正して行こうかということでありますが、これは第一に
選挙運動の問題でありますが、
選挙運動の
候補者届出前にやります
運動、いわゆる
事前運動でありますが、これは大正十四年以來
禁止されておるのでありますが、これについてはいろいろ御
議論もあると思いますが、この
事前運動というものはいわゆる
選挙区の培養というような
方法を以て合法的にいたしますもの、これは
民主國家におきましては、常に政治と
國民とが直結しなければならないのでありますから、むしろこれは必要なものと
認むるのであります。そういうふうなものがありまする場合に、これをいわゆる
事前の
選挙運動ということと区別するということは非常に困難でありまして、これら
禁止するということは全く無
意味であると思うのであります。
法律的に考えまして、この何が
事前の
選挙運動であるか、如何なるものが
事前の
選挙運動には属しない行動であるかということは、
法律的には困難であると思います。
從つてこれを
法律的に
禁止するということは無
意味であると考えるのであります。そこで今回は先程申しました自由の
原則によりまして、
選挙の
事前運動なるものはこれは
禁止しないということに
要領を定めたのであります。ただこれはいろいろな弊害も起り得るのでありまして、
禁止でなくして、ただこれを
自然國民の目によ
つて惡質なものがなくなるという点に狙いを置きまして、單にその或る期間の
費用を届出さして、これを公開するということにした方がいいのではないか、こういうふうに考えるのであります。
更に
選挙運動の中で大事なものは
言論による
選挙運動でありますが、これは
憲法二十
一條の精神から見ましても、これを
制限するということは甚だ
選挙運動の本質に戻ると考えるのでありますから、
選挙運動に対する
言論の点は全く自由にする。
個人が
演説会を開催する場合の回数とか、
街頭演説の場合は、その
候補者がその現場にいなければいけないというような、そういうふうな
制限は一切これを撤廃しまして自由にする、更に進んで第三者が
個人であろうと
團体であろうと推薦の
意味で以て
演説会を開くというような、
言論による
選挙活動というものも全く自由である。こういうことにいたしたのであります。更に
選挙運動の中で、これも又問題になる点と思うのでありますが、
戸別訪問による
選挙運動であります。これも今まで
禁止されておることは御
承知の
通りでありますが、これは実際の面を見ますというと、
地方などにおいでになりましてもお分りになりますように、いろいろな
手段を以て実行されておるのでありまして、これを公正なる
取締りをするということは実際上不可能でありまして、又他の
選挙運動を自由にするという
方針から考えますと、これだけを又
取締るということも甚だ
意味をなさないことでありますので、この
禁止は撤廃することが妥当であると認められるのであります。それから次に
文書図画によります
選挙運動でありますが、これは
制限されていることは御
承知の
通りでありますが、この頒布、掲示、その種類というようなものはすべてこれを自由にするということにいたしたのであります。この
文書によります
選挙運動というものは
候補者の選択の
資料を提供する
手段といたしましては最も有力なるものでありますが、又一面においては
経費が非常にかかるのであります。けれども、先程も
ちよつと申上げましたように、例えば
無料葉書の枚数を殖やすというようなことを
公営の而に持
つて行きまして、
國庫の負担とするというようなことで救
つて行きますというと、これは又実際に無
制限の
文書図画が配付されるということはないのでありますから、これをいろいろな面で以て窮屈に
禁止するということは
意味をなさないと思うのであります。且つ御
承知のように、新聞というものは
選挙に関しましては自由に報道するところの権利が、
憲法によ
つて保障されておるという点から、
均衡的に考えましても、これは自由にすべきものであると考えるのであります。
從つて文書図画の種類、数量、頒布の
方法とかというようなものは一切自由である、こういうことにしたのであります。ただこれを先程も申上げましたように、自然と或る枠を認めるということは、これは自由を
制限する
方法でないと考えますから、即ち法定の
選挙費用の枠内で以て自由にこれをするということにいたしたのであります。尚又細かいような点でありますが、これを掲示する場所というようなものにつきましても、或る種の
制限は、これは止むを得ないものでありまして、例えば國又は
公共團体の管理する建物にこれを掲示することを
禁止する、或いは又
個人の建物に掲示するという場合にはその承諾を得ることが必要である、こういうような
制限はこれは当然すべきものと思うのであります。
以上は
選挙運動につきまして大体の
要綱を御
説明申上げたのでありますが、次は
選挙運動の
公営に関することであります。
選挙運動の
公営は先程も申上げましたように、大体において
公営の必要は認められておるのでありまして、そのうちにも立会
演説会というものは最も適切なり
運動方法であ
つて、これは
候補者にとりましても、又
選挙民にとりましても非常に便宜な
方法であると言われておるのでありますから、これをただ前の
選挙の実際の鑑みまして、不都合な点、又
選挙運動の自由という点をも考慮に入れまして、適当なる
手段によ
つて公営をして行く、こういう考えなんであります。而してこの立会
演説会の
公営は、これは先般は取敢ず
衆議院議員の
選挙に行なわれたのでありますが、それを
地方の
選挙議員及び都道府縣知事の
選挙につきましてもこれを行うことにしたい、こう考えておるのであります。参議院の全國選出議員の
選挙につきましては、これは
選挙区の非常に廣いという関係上、これを行のうということが実際上技術的にも困難でありますので、参議院の全國選出議員の場合には行わず、その他の
選挙にこれを行うということにしたのであります。その他につきましては、例えば
個人演説会の
公営というようなものは、これは單に設備の
公営だけとして、回数であるとか、
費用をどうするというようなことはすべて自由にする、こういう考えであります。次にラジオ放送の問題でありますが、これは今の放送局というものは行く行く
一つの
團体としましてはいろいろの形をと
つて行くようでありますし、これは
政府機関でなく、民間の
團体なんでありますし、
從つてこれを
選挙法が以ていろいろな義務を負わせるということも適当ではなく、むしろ放送協会に一任するということの方が適当ではないか、又実際の面から見ましても、放送協会がいろいろな苦心をして
選挙に当
つての放送をいたすのでありますから、それに一任することによ
つて十分に目的を達し得る、こう考えるのであります。先程申上げましたように國
会議員、都道府縣知事の
選挙につきまして、
候補者に出します
無料葉書でありますが、これは
増加を図りますことによりまして、
選挙運動費の軽減を図るということがなし得るのでありまして、この点において非常に有効であると考えますので、そういう
意味の
公営をして行きたい、こういうふうに考えるのであります。それから新聞廣告の
公営でありますが、これは
地方の
事情によりましては、いろいろ新聞の経営があります。又
候補者が御選定になるにもいろいろな
事情がありますので、これも自由にする。ただ
参議院議員の全國選出議員の
選挙の場合には、これは
公営でされることが便利であろうかという考えからその場合に限
つて公営でこれを行う、こういうことにしたのであります。それから尚
文書による
選挙運動の
公営といたしまして、経歴公報は
候補者の経歴を
國民に知らせる最も適当な、重大なるものでありますが、現在のでは甚だ不完全なものでありますから、これをその掲載文の字数を千字
程度にまで増して発行することにしたい、こういう考えであります。
それから
文書、図画の掲示が自由になりますので、
公営によります氏名の掲示というようなものは、これをいちいち氏名の掲示を多くの場所にするというようなことは
公営でいたしますことは無
意味でありますから、こういうことも單に投票場の入口にすればいい。その他はすべて自由に委せる、こういうふうにしたのであります。
尚又更に
選挙運動費の軽減という目的を以ちまして、
公営としまして
選挙の場合に國有鉄道の無料乘車券を交付する。或いは又用紙や自動車用の燃料の斡旋をするというようなそういうような面を考えておるのであります。全体としましてこの
公営につきましては、
只今は二万円の負担金を納めることにな
つておるのでありますが、
公営を國家がするというのに、誠に一部分とはいいながらその負担金を
候補者から取るということは少し矛盾するように考えられるので、この負担金はこれを廃止する、こういう考えを持ちましたわけであります。
以上甚だ雜駁でありますが、今回の
委員会で一應決定いたしました
選挙運動の
方法に対する
改正意見であります。これは尚先程申上げましたように、いろいろな
方面の
意見を聽きまして、こういう案を作りましたのでありますが、こうや
つてできました案につきまして、更に又いろいろな民間、その他の
方面の
意見を聽いて檢討する点は檢討して行きたい、こういう考えを持
つている次第であります。